(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加工助剤が、システイン、グルタチオン、亜硫酸水素、亜硫酸、アスコルビン酸、これらの塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【背景技術】
【0002】
加水分解穀類タンパク質は、非常に高い商業的価値を有する。これらのタンパク質は、例えば、グルー又は染料などとして、食品、飼料、化粧品、及び工業用途などに広範に使用される。
【0003】
加水分解穀類タンパク質は、例えば、欧州特許第0 363 771号に記載の酸加水分解により、あるいは酵素加水分解により製造できる。
【0004】
酵素加水分解は、例えば、国際公開第02/32232号に記載のように、基質を含有しているタンパク質の水性懸濁液に酵素を加え、このブレンドをインキュベートすることで実施できる。
【0005】
酵素加水分解は、導入タンパク質材料を液化する液化工程と、実際に加水分解を行うインキュベート工程と、からなる、2工程法によっても実施できる。典型的には、この手法のいずれの工程も、連続的な逆混合を含む。いずれの工程においても、逆混合は不都合なものである。
【0006】
液化工程では、逆混合を用いることで、導入タンパク質の一部は連続的に再循環されることから、その結果、所望される時間よりも長期にわたって液化工程にとどまり続けることになる。一方、他の導入タンパク質材料は、逆混合を回避して、あまりにも早い段階で液化工程を終えてしまう。このような材料は、液化されていない状態でインキュベーション工程に移ることになる。
【0007】
インキュベーション工程では、逆混合を行うことで、一部の材料は連続的に再循環され、所望される時間よりも長期にわたってインキュベートされることから、その結果、非常に加水分解を受けた、非常に低分子量のタンパク質が生成されることになる。一方、他の材料は、あまりにも早い段階でインキュベーションを回避して、それにより加水分解度が乏しくなってしまう。
【0008】
したがって、現行の加水分解法は、最終製品(加水分解物)が含有している加水分解タンパク質の加水分解度が均一にならないという不利点を有し、特に出発物質が小麦バイタルグルテンなどの、粘弾特性を有する場合に、及び加水分解すると塊を形成する場合に、加水分解度が均一にならないという欠点を有する。加水分解物は、所望の分子量を持つ加水分解タンパク質以外に、典型的には、加水分解度が低い、又は全く加水分解されていない、高分子量のタンパク質と、低分子量から、アミノ酸などのように超低分子量の、非常に加水分解されたタンパク質と、を含有する。
【0009】
加水分解物の低分子量画分は、加水分解物に対し苦味を付与する場合があり、食品及び飼料用途に望ましくない。多くの場合、高分子量画分は、加水分解物を懸濁させる際の相分離の原因となる(例えば、沈殿に起因して相分離する)。これは、特に、加水分解物を使用して、乳様のエマルション挙動を模倣させる必要のある生成物を生成する際に望ましくない。
【0010】
粘弾特性を有するタンパク質は、加水分解に応じ塊を生成することから、加水分解することが非常に難しい。これまでのところ、塊の生成は、乾燥小麦バイタルグルテンを、例えば、加工助剤を含む溶液に加えた場合にのみ回避することができる。
【0011】
その他に、加工量及び加工時間を多くとる必要があることも、既存の方法の欠点である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
驚くべきことに、適切に液化し、すなわちタンパク質材料を実質的にかつ次第に液化させて、均一な液化された
均質化生成物を生成し、続いて管理下でインキュベートすることで、加水分解度が同程度である加水分解穀類タンパク質が生成されることが判明している。好ましくは、液化は逆混合を用いずに実施され、液化に必要な時間は、既存の方法と比べ大幅に減少している。驚くべきことに、液化方法を複数の二次工程に分割することで、各工程がより容易に行われ、より効率よく液化できることが判明している。
【0020】
本発明は、好ましくは粘弾特性を有し、かつ加水分解時に塊を生成する、小麦バイタルグルテンなどのタンパク質材料に関する。
【0021】
本発明では、液化は、全ての導入タンパク質の液化時間を同一にするために、好ましくは連続するプラグ流で実施する。既存の方法とは対照的に、本発明の液化は、先入先出法に基づくものであり、非常に効率的であり、かつ非常に迅速である。
【0022】
第1態様では、本発明は、穀類タンパク質の液化方法に関する。本液化方法は、
a)1種以上の穀類タンパク質を含む組成物を提供する工程であって、前記組成物が、組成物の5〜40重量%の乾燥物質を含む工程、次に、
b)1種以上の加水分解酵素及び/又は加工助剤を組成物に加える工程、次に、
c)所望により組成物を事前調整する工程、次に、
d)組成物を
均質化する工程、を含む。
【0023】
液化方法の継続時間は典型的には5分〜60分である。好ましくは、液化方法の継続時間は5〜50分、更により好ましくは5〜40分、更により好ましくは5〜30分、更により好ましくは5〜20分、更により好ましくは5〜10分である。
【0024】
工程a)では、1種以上の穀類タンパク質を含む組成物を提供する。
【0025】
組成物は、組成物の5〜40重量%(w/w%)、好ましくは15〜38w/w%、より好ましくは25〜35w/w%、更により好ましくは28〜32w/w%の乾燥物質を含む。
【0026】
組成物は、60〜95w/w%の水を含む。好ましくは、水は特に加工などしていない水道水である。
【0027】
好ましくは、組成物に含まれる乾燥物質の、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、及び最も好ましくは少なくとも80%はタンパク質である。
【0028】
好ましい実施形態では、組成物は、1つ以上の粘弾性の塊形態である。より好ましくは、組成物に含まれる一部又は全てのタンパク質は、粘弾特性を有し、かつ加水分解した際に粘弾性の塊を形成する。最も好ましい実施形態では、組成物は、一般的な小麦デンプン−グルテン分離法により得られる水性の小麦バイタルグルテン塊である。
【0029】
本発明の目的に関し使用される穀類タンパク質は、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、米、スペルト小麦、アワ、ソルガム及びライ小麦、並びにこれらの混合物に由来する任意の穀類タンパク質であり得る。好ましくは、穀類タンパク質はグルテンである。グルテンは、バイタルグルテン又は失活させたグルテンであってよい。バイタルグルテンは、乾燥形態又は一般的なデンプン−グルテン分離法により得られる新鮮なバイタルグルテンの形態であってよい。好ましくは、穀類タンパク質は、一般的な小麦デンプン−グルテン分離法により得られる、小麦バイタルグルテンである。
【0030】
グルテンは、穀類グルテンの分離に関し当該技術分野において既知の任意の手法により、穀類から得ることができる。好ましい実施形態では、グルテンは、一般的な小麦デンプン−グルテン分離法により得られる、小麦バイタルグルテンである。
【0031】
しかしながら、一般的な小麦デンプン−グルテン分離法で小麦に関し実施される通りに、他の穀類からグルテンの分離を開始することが好ましいものの、本発明の目的にはグルテンの分離は必須ではなく、本発明の組成物は、例えば、グルテンを含む穀類粉の加水分解物であってよい。更に、グルテン量の異なる小麦粉を使用することもできる。このような場合、グルテンは小麦粉から液化されることになるであろう。次に、グルテンは、当該技術分野で既知の任意の手法により回収することができる。加えて、この液化組成物は、本発明の第2態様の方法に使用できる。
【0032】
工程b)では、1種以上の加水分解酵素及び/又は1種以上の加工助剤を、穀類タンパク質を1種以上含む組成物に加える。
【0033】
本発明に使用することのできる加水分解酵素は、一般的に、プロテアーゼとしても既知のペプチダーゼである。ペプチダーゼは、α−アミノ−アシル−ペプチド加水分解酵素(EC 3.4.1.)、ペプチジル−アミノ酸加水分解酵素(EC 3.4.2.)、ジペプチド加水分解酵素(EC 3.4.3.)、ペプチジルペプチド加水分解酵素(EC 3.4.4.)、アミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.)、ペプチジルアミノ酸加水分解酵素(EC 3.4.12.)、ジペプチダーゼ(EC 3.4.13.)、ジペプチジル−ペプチダーゼ及びトリペプチジル−ペプチダーゼ(EC 3.4.14.)、ペプチジル−ジペプチダーゼ(EC 3.4.15.)、セリン型カルボキシペプチダーゼ(EC 3.4.16.)、メタロカルボキシペプチダーゼ(EC 3.4.17.)、システイン型カルボキシペプチダーゼ(EC 3.4.18.)、ωペプチダーゼ(EC 3.4.19.)、セリンエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21.)、システインエンドペプチダーゼ(EC 3.4.22.)、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ(EC 3.4.23.)、メタロエンドペプチダーゼ(EC 3.4.24.)、スレオニンエンドペプチダーゼ(EC 3.4.25.)からなる群から選択される。同様に、アルカリペプチダーゼも、本方法で使用するのに好適な部類の酵素である。
【0034】
ペプチダーゼは2つのサブクラス、すなわち、ペプチド末端加水分解酵素のサブクラス及びエンドペプチダーゼのサブクラスに分類される。好ましくは、本発明の目的に有用な酵素は、微生物、動物又は植物に由来する。酵素には、例えば、遺伝子組み換え手法により得られる、組み換え酵素も包含される。
【0035】
本方法は、好ましくは、少なくともエンドプロテアーゼ活性を利用して実施されるが、エンド及びエキソプロテアーゼ活性の両方を有するプロテアーゼを使用することもできる。あるいは、エンドプロテアーゼと、エキソプロテアーゼと、エンド及びエキソプロテアーゼとの混合物を使用することもできる。
【0036】
本発明の方法に使用できる酵素としては、枯草菌由来の微生物プロテアーゼ、クロコウジカビ由来の酸性エンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼ、耐熱性微生物プロテアーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス由来の耐熱性中性プロテアーゼ、パパイン、バチルス菌種由来の中性微生物プロテアーゼ又はエンドプロテアーゼ、バチルス・アミロリケファシエンス由来の中性微生物プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ(真菌、微生物)、エンドプロテアーゼ(セリン型;サブチリシンA、バチルス・リケニフォルミス)、コウジカビ由来のエンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合体、バチルス・アミロリケファシエンス由来の微生物メタロプロテアーゼが挙げられる。
【0037】
タンパク質資源には炭水化物材料が含有されることから、好ましくは、組成物には、1種以上のカルボヒドラーゼも添加する。好適な酵素としては、例えば、α又はβアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ペントサナーゼが挙げられる。
【0038】
1種以上の加工助剤を、1種以上の穀類タンパク質を含む組成物に加えることもできる。本発明の目的に好適な加工助剤は、システイン、グルタチオン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤は典型的には、加工助剤は、0.001%〜5%(組成物の乾燥重量に基づく)の量で加える。好適な加工助剤の一例は、亜硫酸ナトリウムであり、例えば、投与量0.06%で加える(組成物の乾燥重量に基づく)。加工助剤は、タンパク質の立体構造及び物理化学特性に作用させて、組成物を軟化させる目的で加える。加工助剤は、穀類タンパク質が小麦バイタルグルテンである場合に、特に有用であり得る。小麦バイタルグルテンの場合、例えば、加工助剤が作用することで、異なるグルテン分子間のジスルフィド結合(S−S)が還元されて、スルフヒドリル基(−SH)になる。
【0039】
他の実施形態では、タンパク質を1種以上含む組成物には、酵素及び加工助剤を両方加えることができる。酵素及び加工助剤を同時に加えることは好ましくないものの、これらを組成物に連続的に加えることで、酵素が加工助剤により不活化されるのを予防することができる。
【0040】
工程c)において、組成物を事前調整することもできる。この工程は、組成物の粘度を低下させるために実施することができ、これにより、続く
均質化工程に必要とされるエネルギー量が低下し、
均質化工程が容易になる。このような処理は、組成物の軟化と呼ばれる。事前調整は、最終製品の仕様を調整するために、特に、pHを調整するために実施することもできる。この目的に加え、事前調整は、反応条件を酵素の至適条件に調整するために実施することもできる。
【0041】
この事前調整は、以降の処理
−組成部を加熱する処理、
−組成物を混合する処理、
−組成物のpHを調整する処理、
−加工助剤を組成物に加える処理、のうちいずれか1つを含み、又は2つ以上を組み合わせて含む。
【0042】
これらの処理は、同時に、又は連続的に実施できる。加熱及び混合は、同時に都合よく実施できる。
【0043】
組成物の加熱は、当該技術分野において既知の、任意の好適な加熱法により実施できる。好ましくは、加熱は、静的加熱器を用い間接的に加熱され得る。加熱処理と混合処理を組み合わせる場合、この処理は、静的加熱−混合器を用い便利に実施できる。静的加熱器及び静的加熱−混合器は、非常に低粘度〜非常に高粘度の材料を加熱するのに好適である。加熱溶媒としては、任意の好適な溶媒を使用できるが、水が好ましい。加熱溶媒の温度は、加熱後に組成物の温度が40〜55℃、好ましくは45〜52℃、より好ましくは50℃になるような温度である。組成物が工程c)前に既に最低温度40℃になっている場合、加熱処理は必須ではない。好ましい実施形態では、穀類タンパク質は小麦バイタルグルテンであり、加熱処理時の温度は55℃に到達しない。55℃以上になると、小麦バイタルグルテンの構造が損傷を受ける恐れがある。
【0044】
静的混合器型の装置を用い、混合を実施することもできる。上記のように、静的加熱器−混合器を用い、混合と加熱を同時に実施することもできる。静的ミキサーは、2種(以上の)流動性材料を混合するための装置である。装置は、ハウジングに収容された1つ以上の非可動式混合器からなる。例えば、ハウジングは、円筒形又は四角形であり得る。非可動式混合要素は、一連のバッフルである。2種(以上)の流動性材料は、静的ミキサー内を通過するに伴い、非可動式混合要素により連続的に混合される。例えば、ダイシステムなどの、任意の他の好適な種類の混合装置も使用できる。この混合工程は、続く
均質化工程に必要とされるエネルギーを低下させ、
均質化を可能な限り効率化するという目的のみで必要とされる。好ましい実施形態では、穀類タンパク質が小麦バイタルグルテンである場合、前処理には、
均質化前に混合する工程が含まれる。混合は、好ましくは静的ミキサーにより実施される。例えば、混合要素を3つ備えるSMX DN 50、混合要素を7つ備えるSMX DN 65、混合要素を10備えるSMX plus DN 80を取り付けた、Sulzer SMX TM plus DN 80型の静的ミキサーを使用できる。
【0045】
pHの調整は、酵素の至適条件を用意するにあたって必須なものである場合がある。当業者は、使用する酵素又は酵素混合物をもとに、調整すべきpHを容易に判断するであろう。
【0046】
同様に、最終製品のpHは、この調整工程により影響を受ける。最終製品の使用され得る用途に応じて、当業者は、必要とされるpHを容易に設定するであろう。
【0047】
pHの調製は、当該技術分野で既知の任意の好適な手法により実施される。好ましくは、組成物のpHは、HCl又はNaOH水溶液を添加して調整されるが、これに加え、あるいは代替え的に、限定するものではないが、クエン酸、リン酸、酢酸、硫酸及び硝酸などの酸性溶液を添加して調整してもよく、限定するものではないが、NaOH、KOH及びCa(OH)
2などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物を添加して調整してもよく、並びにこれらの組み合わせを添加して調整してもよい。当業者であれば、所望のpHを得るために加える量を判断できるであろう。
【0048】
これまでに記載したものなどの加工助剤は、工程c)の任意選択的な事前調整時に添加してもよい。
【0049】
当業者であれば、組成物の品質、最終製品に所望される仕様及び/又は酵素の至適条件をもとに、事前調整が必要であるか否かを容易に決定できるであろう。
【0050】
最も好ましい実施形態では、穀類タンパク質は、一般的な小麦デンプン−グルテン分離方法により生成される小麦バイタルグルテンである。その結果、ほとんどのグルテンは、水性塊の形態である。液化方法は、
a)小麦バイタルグルテンを含む組成物を提供する工程であって、前記組成物が、組成物の5〜40重量%の乾燥物質を含む工程、次に、
b)1種以上の加水分解酵素を加える工程、次に
c)組成物を前処理する工程、次に
d)組成物を
均質化する工程、を含む、方法。
【0051】
事前調整では、温度を45℃〜52℃に加熱し、静的ミキサーで混合する。
【0052】
方法の工程d)で、組成物を
均質化する。工程d)に移行する前、組成物は少なくとも2相の主要な相、すなわち、水和タンパク質相、及び水和に使用されていない液体相(典型的には水相)からなる。非水和水は、タンパク質材料が自然に、及び実質的に水相に溶解していないことにより生じる。これは小麦バイタルグルテンについて特にあてはまる。
均質化により、ある相又は成分(この場合、タンパク質材料)が、通常であれば不混和性である主要な連続層(この場合、水)に分散される。
均質化後、組成物は単相として存在し、塊は存在せず、連続流として容易に注ぐことができる(塊を含有している組成物とは対照的に、スラリー、ミルク又は水様に注ぐことができる)。
【0053】
好ましい実施形態では、
均質化は、動的混合により得られる。動的混合は、1m/s〜100m/s、好ましくは5m/s〜15m/sのチップ速度で稼働する少なくとも1つのローターを備えた、任意の種類の好適な装置により行うことができる。この目的で使用される好適な装置としては、高せん断ミキサー、遠心ポンプ、ブレンダー、コロイドミルが挙げられる。しかしながら、本発明の目的で使用するのに好ましい装置は高せん断ミキサーである。
【0054】
高せん断ミキサーは、通常は電気モーターにより電力供給を受ける回転インペラ又は高速ローター、あるいはこのようなインペラ又はインライン式ローターを一揃い利用して、流動及びせん断を生成している。ローター外径での流体粘度は、ローター中心部での粘度よりも高く、これによりせん断力が生成される。静止部分をローターと組み合わせて使用してもよく、この場合静止部分はステーターと呼ばれる。高せん断ミキサーはバッチ式高せん断ミキサー又はインライン式高せん断ミキサーであってよい。好ましくはインライン型高せん断ミキサーを使用する。最も好ましくは、長方形の構造を有し、強い乱流を生成するインライン式高せん断ミキサーを使用する。インライン式高せん断ローター/ステーター型ミキサーでは、一端には導入口及び他端には排出口を備えるハウジング内に、ローター/ステーター型アレイが収容される。インライン式高せん断ミキサーは、より制御された混合環境を提供でき、省スペースであり、かつ連続工程の一部として使用できる。
【0055】
液化方法の全ての工程はバッチ式、連続式、又は連続するプラグ流式に実施できる。好ましくは、液化方法は、連続するプラグ流式で実施する。連続するプラグ流式の設計では、反応器は、典型的にはパイプ、カラム形状を有する。生成物は連続的に反応器の一端から導入され、他端から連続的に排出される。工程に導入される全ての生成物には同様の時点で同様の処理がなされ、この工程は先入れ先出しの原則に基づくものである。先入れ先出しの原則に従うとは、全てのタンパク質が同様の処理時間を有するよう、工程に最初に導入されたタンパク質が工程から最初に排出されることを意味する。したがって、本発明の液化方法から排出された生成物は液化されかつ
均質化されており、もはや塊は存在していない。液化工程は粘弾性塊を含んでいる組成物を液化する際に特に好適である。既存の方法では、塊の生成は避けられない。既存の方法とは対照的に、本発明の方法では塊の生成を避ける必要はない。
【0056】
本発明の第2の態様は、加水分解穀類タンパク質の製造方法に関する。この加水分解法では、加水分解度の分布が狭い範囲に収まるよう加水分解を実施することが可能である。同様に、驚くべきことに、本発明の第2の態様の方法では、消化性の優れた加水分解穀類タンパク質が生成されることが判明した。
【0057】
本発明の加水分解方法は、
i)上記に開示された液化工程に従って、1種以上の穀類タンパク質を含む組成物を液化する工程、次に
ii)所望により組成物を前処理する工程、次に、
iii)50〜85℃の温度にて、少なくとも5分にわたって組成物をインキュベートする工程、を含む。
【0058】
液化した組成物は、工程ii)において前処理してもよい。
【0059】
前処理には、液化した組成物を50°〜85°、好ましくは65℃〜75℃及び更により好ましくは68℃〜72℃の温度に加熱することが含まれる。加熱時間は15分以内、好ましくは10分以内、好ましくは5分以内、及び好ましくは3分以内である。
【0060】
加熱は、当該技術分野において既知の任意の好適な手法を用い実施できる。好ましい実施形態では、加熱は直接蒸気を導入することで実施できる。液化した組成物に蒸気を直接導入する。液化した組成物と蒸気との接触時間は、所望の温度に到達しつつ、組成物に含まれる1種以上の穀類タンパク質が変性せず、かつ存在する場合には酵素が失活しないような時間である。蒸気は100℃〜200℃、120℃〜190℃、150℃〜180℃の温度であり得る。驚くべきことに、直接蒸気を導入し加熱することにより、液化組成物に対する微生物汚染を相当減少できることが判明している。これに加え、加水分解物の消化性も優れていることが判明している。
【0061】
前処理には、1種以上の加水分解酵素を組成物に加えることを含んでもよい。本発明の液化方法において記載される通り、液化時の酵素添加は必須ではない(加工助剤が添加されるならば)。液化時に酵素を添加しなかった場合、酵素は前処理工程ii)で加えることができる。液化工程について記載したものと同様の酵素を使用できる。
【0062】
工程iii)において、液化した組成物は50℃〜85℃の温度でインキュベートする。好ましくは、インキュベーション温度は55℃〜75℃、更により好ましくは65℃〜75℃、及び最も好ましくは68℃〜72℃である。インキュベーション時間は、当業者により決定されるが、少なくとも5分である。インキュベーションの継続時間は、使用する酵素の種類、酵素投与量、出発物質の量をもとに当業者により決定し、所望の加水分解度(DH)が得られるよう実施すべきである。加水分解小麦タンパク質の使用を意図する場合、所望のDHは用途によって異なる。タンパク質のDHは、ペプチド結合が切断された割合として定義される。加水分解タンパク質、及び特に酵素による加水分解タンパク質は、低粘性、泡立ち性能の向上、起泡性、及び高溶解性などの機能特性を保有しており、これらの特性から、数多くの用途において、特に食品及び飼料用途において有効に使用できる。DHは、タンパク質加水分解物の官能性にも相関する。最終生成物のDHは、OPA法により割り出すことができる(Shmidt,D.G.,Tobben,A.J.P.M.,VMT,19,13〜15,1993)。
【0063】
加水分解方法の液化段階、及び所望により前処理は、好ましくは連続するプラグ流(工程i)及びii))で実施する。
【0064】
工程iii)(インキュベーション工程)は、バッチ式、セミバッチ式、連続式、連続するプラグ流式で実施できる。しかしながら、好ましくは、加水分解方法のインキュベーション段階は、複数の反応器を用い連続的に、あるいは連続するプラグ流により実施する。この方法は、残留時間、並びにインキュベータ中のタンパク質の残留時間のばらつきに効果がある。本発明の目的に関し、各設計に根ざす原則は、インキュベーション時に、可能な限り先入れ先出しインキュベーションが行われるような傾向をもたせるというものである。先入れ先出しの原則に従うとは、全てのタンパク質がインキュベータにおいて同様の残留時間を有するよう、工程に最初に導入されたタンパク質が工程から最初に排出されることを意味する。先入れ先出し原則は良好に適用され、タンパク質の残留時間のばらつきが少ないことから、加水分解物の加水分解度の分布が狭い範囲内に収まる。
【0065】
バッチ式設計では、規定量の生成物を反応器(この場合、インキュベータ)に導入し、生成物の導入を停止し、反応器内の生成物を所定の時間にわたってインキュベートする。
【0066】
セミバッチ式設計は、工程を多くの反応器に分割させたバッチ式設計である。生成物の導入は、停止させずに、他の反応器が充填された後に充填される複数の反応器に対し行う。好ましくは、複数の反応器は同一の設計(容量、形状、残留時間、加熱能)を有する。反応器が充填されたなら、生成物を所定の時間にわたってインキュベートする。連続するプラグ流は、無限数の反応器により設計する。セミバッチ式設計の一例としては、一連のメリーゴーランド式反応器が挙げられる。
【0067】
反応器を1つ以上有する連続式反応器設計は、生成物を連続的に反応器に供給し、生成物を連続的に反応器から排出するという設計である。複数の反応器を有する連続式反応器設計は、複数の反応器に分割して設計する。連続するプラグ流は、無限数の反応器により設計する。このような設計の一例としては、カスケード式タンクシステムが挙げられる。
【0068】
連続式プラグ流設計は、生成物を反応器の一端から連続的に導入し、かつ反応器の他端から連続的に排出する設計である。典型的には、反応器はパイプ、カラム形状を有する。
【0069】
本発明の方法を、穀類タンパク質が小麦バイタルグルテンに相当する最も好ましい実施形態について例示する。この場合、本発明の加水分解法は典型的には次の通りのものである。
【0070】
1.小麦バイタルグルテンを含む組成物を提供する工程であって、この組成物が、組成物の5〜40重量%の乾燥物質を含む工程、次に、
2.1種以上の加水分解酵素及び/又は加工助剤を組成物に加える工程、次に、
3.組成物を前処理する工程、次に、
4.組成物を
均質化する工程、次に、
5.工程4で得た組成物を前処理する工程、次に、
6.50〜85℃の温度にて、少なくとも5分にわたって組成物をインキュベートする工程、を含む。
【0071】
インキュベーション後に得られる加水分解物を更に精製して、加水分解タンパク質を回収することもできる。例えば、加水分解物は、例えば、粉末又はペーストの形態のタンパク質濃縮物を得る目的で、繊維分離工程及び/又は濃縮工程及び/又は酵素非活性化工程及び/又は乾燥工程にかけることができる。
【0072】
繊維分離は、当業界で既知の任意の手法により実施できる。例えば、繊維分離は、便利にはデカンテーションにより実施できる。
【0073】
当業界で既知の任意の手法により濃縮することもできる。一般的に、濃縮は、強制循環式蒸発器、流下液膜式蒸発器、上昇薄膜蒸発器、きさげ加工表面蒸発器、プレート式蒸発器、及び任意の他の種類の好適な蒸発器などの任意の種類のエバポレーターを用い実施できる。
【0074】
酵素の非活性化も、酵素を非活性化させるのに十分な温度に加熱するなどといった当業界で既知の任意の好適な手法により実施してよい。
【0075】
乾燥は、噴霧乾燥機、気流乾燥機、リング式乾燥機、ロール式乾燥機、流動床式乾燥機、又は任意の他の好適な種類の乾燥機により実施してよい。乾燥により、典型的には生成物の湿分含量は10重量%以下になる。
【0076】
本発明の第3の態様は、本発明の加水分解法により得ることのできる、加水分解穀類タンパク質に関する。加水分解穀類タンパク質は、例えば、粘性あるいは沈殿特性により特性評価することができる。
【0077】
本発明の第4の態様は、本発明の加水分解方法により得ることができる加水分解穀類タンパク質を含む食品又は飼料組成物に関する。組成物には、更に、糖、脂質、ミネラル、ビタミン、及び少数元素などの成分を含有させてもよい。本発明の組成物は粉末、ペースト又は液体であってよい。組成物は、粉末、ペースト、液体などの異なる形態にできる。本発明の組成物はペレット状に圧縮させてもよい。
【0078】
一実施形態では、本発明の組成物は、ペレット状に圧縮される。
【0079】
本発明の第5の態様は、本発明の組成物の、食品及び飼料への使用法に関する。組成物は、タンパク質サプリメントとして、あるいは食品又は飼料配合物に含まれる動物性タンパク質を一部又は全て置き換えるために使用できる。
【0080】
一実施形態では、組成物は、仔牛用代用乳配合物に含まれる乳タンパク質を一部又は全て置き換えるために使用できる。仔牛用代用乳配合物は、液体給餌期間の仔牛に給餌する際に使用される配合物である。本発明の加水分解タンパク質は、優れた消化性を有し、かつ特に約40℃下で、仔牛用代用乳を摂取させる際の適切な時間にわたって懸濁液のまま維持するのに好適である。
【0081】
他の実施形態では、組成物は、魚飼料中のタンパク質源として使用される。魚飼料組成物は、典型的には、タンパク質、油、結合剤、抗酸化剤、ビタミン及びしばしば糖を含有する。
【0082】
更に他の実施形態では、組成物は特殊飼料に使用される。特殊飼料は、特に、子豚などの、市販目的で飼育されている若齢伴侶動物及び若齢動物、病気の動物又は病気から回復した動物、あるいは高齢の動物を対象とするものである。これらの特殊飼料は、高栄養性であり、易消化性であるに違いない。本発明に記載の通り、本発明の加水分解方法は、優れた消化性を有する加水分解穀類タンパク質のものである。
【0083】
本発明は、以降の例により説明されるであろう。
【実施例】
【0084】
実施例1:加水分解小麦タンパク質を製造する際の連続するプラグ流による方法
小麦バイタルグルテンを次の通りに液化した。一般的な小麦植物から生成した小麦バイタルグルテン(VWG)を用意した(乾燥物質30%、37℃及びpH5.8)。次の酵素をインラインで添加した。
【0085】
1.Corolase(登録商標)2TS(AB enzymes):0.022重量%(酵素重量/VWG乾燥重量)
2.Ban(登録商標)480LS(Novozymes):0.06重量%(酵素重量/VWG乾燥重量)
3.Rohalase(登録商標)Sep(AB enzymes):0.03重量%(酵素重量/VWG乾燥重量)
小麦バイタルグルテン及び酵素組成物を、4段階式モノポンプにより流速400l/hでユニットに供給し、ユニット中で、組成物を最初に50℃に加熱した。加熱溶媒には温度60℃の水を使用した。加熱は、静的加熱ミキサー(SMR DN 150 plus、製品番号CT−1810)により実施した。次に、組成物を、静的ミキサー(混合要素を3つ備えるSMX DN 50、混合要素を7つ備えるSMX DN 65、混合要素を10備えるSMX plus DN 80を取り付けた、Sulzer SMX TM plus DN 80型)により混合した。次いで、組成物はインライン式高せん断ミキサー(2 DT混合ブレードと、11kワットのモーターを装備させた、Typhoon HSI20)を用い、チップ速度11m/sで、1500rpmで
均質化した。
【0086】
連続するプラグ流による液化工程から排出された生成物を、次に、最大12bar(1.2MPa)の蒸気が供給される、直接蒸気を導入する手法(Hydro Thermal heater M103/03)により71℃に加熱し、次に、断熱した保持コイル(DN 250、長さ22.5m)を通過させてインキュベートし、約3時間のインキュベーション時間を得た。
【0087】
生成物のインキュベート試料を凍結乾燥し、解析した。
【0088】
加水分解度:4.8%乾燥重量
タンパク質の消化性:99.2%
沈殿:170/200(pH6.2)
加水分解タンパク質の解析方法
加水分解度:OPA法(Shmidt,D.G.,Tobben,A.J.P.M.,VMT.19,13〜15,1993)
タンパク質消化性:Dierick及びHendrickx(1990)に記載の通りのin vitro消化性試験に従った。
【0089】
沈殿:45℃の12g湿潤生成物(30%w/w乾燥物質)+188g脱塩水を500mlビーカーに入れて、全ての生成物が懸濁されるまで磁気撹拌機により撹拌した。0.1N NaOHによりpHを6.2に調整する。懸濁液の温度が40℃になるまで、撹拌せずにビーカーを水浴(水温40℃)に配置した。懸濁液を水浴から取り出し、振盪し、インホフ・コーンに移した。2分後に、懸濁液/水の分離度を読み取る。
【0090】
実施例2:加水分解小麦タンパク質を製造する際の連続するプラグ流による方法
一般的な小麦植物から生成した小麦バイタルグルテン(VWG)を用意した(乾燥物質30%、38℃及びpH5.7)。実施例1に記載のものと同様の酵素及び酵素投与量で添加した。実施例1に記載のものと同様の液化条件を適用し、グルテン及び酵素組成物を液化した。
【0091】
連続するプラグ流による液化工程から排出された生成物を、最大12bar(1.2MPa)の蒸気が供給される直接蒸気を導入する手法(Hydro Thermal heater M103/03)により71℃に加熱し、撹拌しながら1時間かけて700lの容器に回収し、70℃に維持しつつ3時間インキュベートした。
【0092】
インキュベーション開始から2時間後に第1試料(A)を回収し、3時間のインキュベーション後に第2試料(B)を回収した。試料を凍結乾燥し、解析した。
【0093】
【表1】
実施例3:加水分解小麦タンパク質の製造方法
一般的な小麦植物から生成した小麦バイタルグルテンを用意した(乾燥物質30%、37℃及びpH5.5)。亜硫酸水素ナトリウム(Sigma−Aldrich,カタログ番号24,397−3)を、インラインで0.06重量%(亜硫酸水素ナトリウム/VWG乾燥重量)で添加した。取り扱い易さのため、亜硫酸水素ナトリウムを希釈して10%水溶液とした。
【0094】
4段階モノポンプにより小麦バイタルグルテン及び添加物の組成物を、流速400l/hでユニットに供給し、加熱溶媒として57℃の水を用い、組成物を37℃〜47℃に予熱した。加熱は、静的加熱ミキサー(Sulzer SMR DN 150 plus、製品番号CT−1810)により実施した。次に、組成物を、静的ミキサー(混合要素を3つ備えるSMX DN 50、混合要素を7つ備えるSMX DN 65、混合要素を10備えるSMX plus DN 80を取り付けた、Sulzer SMX TM plus DN 80型)により混合した。次いで、組成物はインライン式高せん断ミキサー(2 DT混合ブレードと、11kワットのモーターを装備させた、Typhoon TM HSI20)を用い、チップ速度11m/sで、1500rpmで
均質化した。
【0095】
連続するプラグ流による液化工程から排出された生成物を、最大12bar(1.2MPa)の蒸気が供給される、直接蒸気を導入する手法(Hydro Thermal heater M103/03)により加熱して45℃〜50℃の温度範囲に維持し、30分かけて700Lの撹拌容器に回収した。生成物の回収から10分後に、続いて酵素を加えた。
【0096】
1.Corolase(登録商標)2TS(AB enzymes):0.026重量%(酵素重量/VWG乾燥重量)
2.Ban(登録商標)480LS(Novozymes):0.07重量
%(酵素重量/VWG乾燥重量)
3.Rohalase(登録商標)Sep(AB enzymes):0.035重量%(酵素重量/VWG乾燥重量)
撹拌開始から10分後、研究室スケールでインキュベーションを実施するために、70℃にて、撹拌容器にタンクから2Lの試料を移し入れた。
【0097】
生成物のインキュベート試料を凍結乾燥し、解析した。
【0098】
インキュベーション開始から2時間後の加水分解度:5.6%
インキュベーション開始から3時間後の加水分解度:6.6%