特許第5952854号(P5952854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952854マルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952854
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】マルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/25 20060101AFI20160630BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   G02B6/25
   G02B6/255
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-98684(P2014-98684)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-215500(P2015-215500A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】安間淑通
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−210602(JP,A)
【文献】 特開平04−184401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/25
G02B 6/255
G02B 6/02
G02B 6/036
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバ同士を接続するマルチコアファイバの接続方法であって、
それぞれのマルチコアファイバの接続される端面を加熱してそれぞれの前記端面の形状を整形する整形ステップと、
整形されたそれぞれ前記端面を互いに融着する融着ステップと、
を備え、
前記マルチコアファイバは、最もクラッドの外周側に位置するコアの中心から前記クラッドの側面までの距離をYμmとする場合に、
Y≧20
を満たし、
前記整形ステップでは、整形後の前記端面における前記マルチコアファイバの長手方向の最も端に位置する部分から前記端面と前記クラッドの側面とが接する位置までの前記長手方向に沿った距離をXμmとする場合に、
0<X/Y≦0.0054Y+0.268
を満たすように前記端面を加熱する
ことを特徴とするマルチコアファイバの接続方法。
【請求項2】
前記整形ステップの前に一方の前記マルチコアファイバのそれぞれのコアと他方の前記マルチコアファイバのそれぞれのコアとが所定の間隔をあけて互いに対向するように、それぞれの前記マルチコアファイバの前記端面同士を突き合わせる突き合わせステップを更に備え、
前記整形ステップは、前記端面同士が突き合わされた状態で行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバの接続方法。
【請求項3】
前記整形ステップから前記融着ステップまでそれぞれの前記マルチコアファイバの前記端面を連続して加熱する
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチコアファイバの接続方法。
【請求項4】
前記マルチコアファイバは、
Y≧25
を満たし、
前記整形ステップでは、
X/Y≦0.42
を満たすように前記端面を加熱する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの接続方法。
【請求項5】
前記マルチコアファイバは、
Y≧35
を満たし、
前記整形ステップでは、
X/Y≦0.45
を満たすように前記端面を加熱する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの接続方法。
【請求項6】
前記マルチコアファイバは、
Y≧43
を満たし、
前記整形ステップでは、
X/Y≦0.50
を満たすように前記端面を加熱する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続損失を低減することができるマルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバ1本当たりの伝送容量を増大させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いてそれぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。また、光ファイバ通信システムにおいては、長距離の光通信を行うために複数の光ファイバを接続して用いる場合があり、マルチコアファイバを用いる光ファイバ通信システムにおいても、複数のマルチコアファイバを接続して用いる場合がある。
【0004】
下記特許文献1には、マルチコアファイバの接続方法が記載されている。この文献に記載の接続方法では、接続されるマルチコアファイバの端面同士を突き合わせた接続部位が一対の電極間に配置され、この一対の電極間に放電がなされることにより、それぞれの光ファイバの端面同士が融着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−210602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光ファイバを接続する場合、一般的に、光ファイバのそれぞれの接続端面が整形された後に、当該端面同士が融着される。この整形では、それぞれの接続端面が軟化するまで加熱されることで、端面における細かい凹凸が除去される。
【0007】
しかし、このような加熱による整形を行うと、端面とクラッドの側面との縁が徐々に丸みを帯び、端面の中心が突出して、端面の形状が凸面状となる傾向がある。シングルコアファイバであれば、端面が凸面状に整形される場合であっても、接続後の光ファイバにおける接続損失を抑制することができる。しかし、マルチコアファイバの場合、接続損失が大きくなる場合があることが見出された。
【0008】
シングルコアファイバの場合に接続損失が低減できる理由は、接続時に凸面状の端面が変形しながら融着される場合であっても、凸面の最も突き出た部分にのみコアが位置するため、コアが端面の変形による歪みの影響を然程受けないためと考えられる。しかし、マルチコアファイバの場合、クラッドの中心以外にもコアが配置される。端面が凸面状になると、クラッドの中心以外に位置するコアの端面上の部位であるコア面は、傾斜面上に位置することとなる。このコア面の傾斜角が大きい場合や、端面の最も突出する部分からコア面までのマルチコアファイバの長手方向に沿った方向の距離が大きい場合、マルチコアファイバ同士を融着する際にコアの接続面が歪むことが考えられる。この歪みにより上記接続損失が大きくなると考えられる。
【0009】
そこで、マルチコアファイバの端面を整形する際に、側面観察を行いコア面の傾斜角や、端面の最も突出する部分からコア面までの上記距離を計測しながら整形を行い、当該傾斜角や当該距離が一定以下となるように整形を行うことが考えられる。しかし、マルチコアファイバの側面観察を行う場合、コアの位置を正確に把握することが困難な場合が多い。このため、このような観察を行うことで当該傾斜角や当該距離が一定以下となるように整形を行うことは困難である。従って、側面観察を行い適切な端面の整形を行って、マルチコアファイバの接続を行うことは困難である。
【0010】
そこで、本発明は、接続損失を低減することができるマルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、クラッドの側面と融着される端面とが接する位置を把握することで、整形時にコアの位置を正確に把握せずとも、接続損失を低減してマルチコアファイバ同士を接続することができることを見出し、本発明をするに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、マルチコアファイバ同士を接続するマルチコアファイバの接続方法であって、それぞれのマルチコアファイバの接続される端面を加熱してそれぞれの前記端面の形状を整形する整形ステップと、整形されたそれぞれ前記端面を互いに融着する融着ステップと、を備えるものである。
【0013】
また、本発明は、複数のマルチコアファイバが接続されて成るマルチコアファイバ接続体であって、それぞれの前記マルチコアファイバは、それぞれの前記マルチコアファイバの接続される端面が加熱されてそれぞれの前記端面の形状が整形される整形ステップと、整形されたそれぞれ前記端面が互いに融着される融着ステップと、を経て接続されて成るものである。
【0014】
そして、上記のマルチコアファイバの接続方法及びマルチコアファイバ接続体において、前記マルチコアファイバは、最もクラッドの外周側に位置するコアの中心から前記クラッドの側面までの距離をYμmとする場合に、
Y≧20 ・・・(1)
を満たす。更に、前記整形ステップでは、整形後の前記端面における前記マルチコアファイバの長手方向の最も端に位置する部分から前記端面と前記クラッドの側面とが接する位置までの前記長手方向に沿った距離をXとする場合に、
0<X/Y≦0.0054Y+0.268 ・・・(2)
を満たすように前記端面が加熱されることを特徴とするものである。
【0015】
本発明者は、マルチコアファイバの端面を整形する際にこのような条件が満たされることで、接続後における接続損失を低減することができることを見出した。このように接続損失を低減することができる理由は次のように考えられる。すなわち、式(1)を満たすことにより、融着時において、接続部分におけるクラッドの側面に歪みが生じる場合であっても、この歪みがコアまで影響することを抑制することができると考えられる。また、式(2)を満たすことにより、整形される端面上に位置するコア面の傾斜角や、端面の最も突出する部分からコア面までのマルチコアファイバの長手方向に沿った方向の距離を所定の大きさよりも小さくすることができ、接続時にコアが歪むことを抑制することができると考えられる。
【0016】
こうして、本発明によるマルチコアファイバの接続方法及びマルチコアファイバ接続体によれば、コアの歪みを抑えることができると考えられ、接続損失を小さくすることができる。
【0017】
また、前記整形ステップの前に一方の前記マルチコアファイバのそれぞれのコアと他方の前記マルチコアファイバのそれぞれのコアとが所定の間隔をあけて互いに対向するように、それぞれの前記マルチコアファイバの前記端面同士を突き合わせる突き合わせステップを更に備え、前記整形ステップは、前記端面同士が突き合わされた状態で行われることが好ましい。
【0018】
互いに接続されるマルチコアファイバが互いに突き合わされた状態で整形されることで、互いに接続される2本のマルチコアファイバの端面を略同一条件で整形することができ略同一の形状に整形することができる。
【0019】
この場合、前記整形ステップから前記融着ステップまでそれぞれの前記マルチコアファイバの前記端面が連続して加熱されることが好ましい。
【0020】
整形から融着まで連続して加熱されることにより、整形と融着との間において、マルチコアファイバの端面が固化することを防止することができる。つまり、融着されるマルチコアファイバの端面が、加熱、冷却による軟化と固化とを繰り返すことを防止でき、マルチコアファイバの端面の変形を抑制することができる。
【0021】
また、前記マルチコアファイバは、
Y≧25
を満たし、前記整形ステップでは、
X/Y≦0.42
を満たすように前記端面を加熱することとしても良い。
【0022】
また、前記マルチコアファイバは、
Y≧35
を満たし、前記整形ステップでは、
X/Y≦0.45
を満たすように前記端面を加熱することとしても良い。
【0023】
また、前記マルチコアファイバは、
Y≧43
を満たし、前記整形ステップでは、
X/Y≦0.50
を満たすように前記端面を加熱することとしても良い。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、接続損失を低減することができるマルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態におけるマルチコアファイバ接続体を示す図である。
図2図1に示すマルチコアファイバの断面図である。
図3】マルチコアファイバを接続する方法を示すフローチャートである。
図4】突き合わせステップ後の様子を示す図である。
図5】整形ステップの様子を示す図である。
図6】整形ステップ後のマルチコアファイバの端面近傍の様子を示す図である。
図7】実施例1におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図8】実施例2に用いるマルチコアファイバの断面図である。
図9】実施例2におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図10】実施例3におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図11】実施例4におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図12】実施例5におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図13】実施例6に用いるマルチコアファイバの断面図である。
図14】実施例6におけるX/Yと接続損失の関係を示す図である。
図15】実施例1〜6におけるYと接続損失が0.5dBとなるX/Yとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るマルチコアファイバ接続体の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールが互いに異なる場合がある。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るマルチコアファイバ接続体を示す図である。図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ接続体1は、複数のマルチコアファイバ2が接続部CPにおいて接続されて成る。このマルチコアファイバ接続体1は、光通信に用いるものである。
【0028】
図2は、図1に示すそれぞれのマルチコアファイバ2の断面図である。図2に示すように、互いに接続されるそれぞれのマルチコアファイバ2は互いに同じ構成とされ、複数のコア11と、それぞれのコア11の外周面を囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する内側保護層31と、内側保護層31の外周面を被覆する外側保護層32と、を備える。
【0029】
本実施形態においては、コア11の数が7つとされ、中心に1つのコア11が配置されると共に、他の6つのコア11が外周側に互いに等間隔に配置されている。つまり、コア11が1−6配置されている。こうして複数のコア11は三角格子状に配置されている。このように配置された複数のコア11は、クラッド20の中心軸に対して対称とされている。
【0030】
コア11の直径は、例えば10μmとされる。なお、それぞれのコア11の直径は互いに等しい大きさでも良いが、互いに隣り合うコア11の直径が、例えば1.0%〜2.0%程度異なるようにされても良い。このように、互いに隣り合うコア11の直径が、物理的に僅かに異なっていても、コア11を伝搬する光にしてみれば、それぞれのコア11の直径は、殆ど変わらず、略同等の光学特性となる。また、クラッド20の直径は、例えば185μmとされる。この場合、例えば、それぞれのコア11の中心間距離(コア間距離)が49.5μmとされ、外周側のコア11の中心とクラッド20の外周面との距離(外周クラッド厚)が43μmとされる。なお、この外周クラッド厚の大きさをYμmとする場合に、それぞれのマルチコアファイバ2は、下記式(1)を満たす。
Y≧20 ・・・(1)
【0031】
外周クラッド厚が20μm以上とされることで、通信用の光ファイバにおいて、外周側のコア11を伝搬する光の外周側の部分が内側保護層31に掛かって吸収されることを抑制することができる。
【0032】
また、それぞれのコア11の屈折率は、クラッド20の屈折率よりも高くされている。コア11は、例えばゲルマニウム(Ge)等の屈折率を高くするドーパントが添加された石英から成り、この場合、クラッドは、例えば純粋な石英から成る。なお、それぞれのコア11の屈折率は互いに等しくても良いが、互いに隣り合うコア11の屈折率が、例えば1.0%〜2.0%程度異なるようにされても良い。このように、互いに隣り合うコア11の屈折率が、物理的に僅かに異なっていても、コア11を伝搬する光にしてみれば、それぞれのコア11の屈折率は、殆ど変わらず、略同等の光学特性となる。
【0033】
このようなマルチコアファイバ接続体1においては、例えば、それぞれのコア11を光がシングルモードで伝搬する。
【0034】
次に、マルチコアファイバ2を接続して、マルチコアファイバ接続体1とする方法について説明する。
【0035】
図3は、図1のマルチコアファイバ2を接続してマルチコアファイバ接続体1とする方法を示すフローチャートである。図2に示すように、マルチコアファイバ2を接続する方法は、それぞれのマルチコアファイバ2の端面同士を突き合わせる突き合わせステップS1と、それぞれの端面の形状を整形する整形ステップS2と、端面同士が付き合わされたそれぞれのマルチコアファイバ2同士を融着する融着ステップS3とを、主な段階として備える。
【0036】
<突き合わせステップS1>
まず、図1のマルチコアファイバ2を複数準備する。図4は、本体を図示しない融着器に準備されたマルチコアファイバ2がセットされた様子を示す図である。なお、それぞれのマルチコアファイバ2が融着器にセットされる前に、それぞれのマルチコアファイバ2の接続されるべき端面50近傍の内側保護層31及び外側保護層32を剥離しておく。従って、図4では内側保護層31、外側保護層32が記載されていない。それぞれのマルチコアファイバ2の接続されるべき端面50の角度は、それぞれのクラッド20の中心軸に垂直な面に対して1度以下のずれであることが、融着ステップS3でそれぞれのマルチコアファイバ2を接続するときに、より適切に接続する観点から好ましい。本実施形態では、融着器は、接続されるそれぞれのマルチコアファイバ2が水平に配置されるものであり、マルチコアファイバ2の端面50を加熱する一組の放電電極60を備える。
【0037】
図4に示すように、それぞれのマルチコアファイバ2の接続される端面50が、所定の間隔をあけて互いに対向する状態で、それぞれのマルチコアファイバ2を融着器にセットする。そして、それぞれのマルチコアファイバ2のクラッド20の中心軸CAを一致させる。つまり、それぞれのマルチコアファイバ2のクラッド20の中心軸CAが同一の直線上に位置するようにそれぞれのマルチコアファイバ2を配置する。なお、マルチコアファイバ2の中心軸を合わせるには、例えば、それぞれのマルチコアファイバ2を側面観察して、それぞれのマルチコアファイバ2のクラッド20の外周面が面一となるようにすれば良い。
【0038】
なお、図4に示すように、融着器に装備されている一対の放電電極60のそれぞれの先端を結ぶ直線SLが、マルチコアファイバ2の融着されるべき端面50の間に位置することが好ましい。
【0039】
次に、少なくとも一方のマルチコアファイバ2を軸中心に回転させて、一方のマルチコアファイバ2のそれぞれのコア11と他方のマルチコアファイバ2のそれぞれのコア11とが、互いに対向するようにする。このとき、一方のマルチコアファイバ2の端面50と他方のマルチコアファイバ2の端面50とがなす角度が0.5度以下であることが、融着ステップS3でそれぞれのマルチコアファイバ2を接続するときに、より適切に接続する観点から好ましい。
【0040】
こうして、それぞれのマルチコアファイバ2同士が突き合わされる。
【0041】
<整形ステップS2>
次に整形ステップS2を行い、マルチコアファイバ2の接続されるべき端面50の形状を整形する。
【0042】
図5は本ステップの様子を示す図である。端面50の整形は、それぞれの端面50を加熱することで行う。具体的には、図5に示すように、それぞれのマルチコアファイバ2同士が突き合わされた状態で、融着器の放電電極60を上下方向に繰り返し揺動運動するように振動させる。この放電電極60の振動により、放電電極60の先端同士を結ぶ直線SLが、それぞれのマルチコアファイバ2のクラッド20の中心軸CAに垂直な面を描いて移動する。そして、放電電極60の先端が上下方向に往復運動している状態で、一対の放電電極60間に高電圧をかけて放電を行う。このとき、放電電極60が互いに同期して揺動運動をすることが好ましい。この場合、それぞれの放電電極60の先端が互いに水平な相対的位置を保つため、放電による熱の分布が把握し易い。
【0043】
こうして放電電極60からの放電によるエネルギーが、熱に変換されて、互いに突き合わされたそれぞれのマルチコアファイバ2の端面50が軟化する。このとき、まず、端面50の縁、すなわち端面50とクラッド20とが接する部分が軟化して丸みを帯びる。更に放電による加熱を続けることで、軟化した端面50は表面張力により整形され、端面50の細かい凹凸が除去される。図6は、整形された後のマルチコアファイバ2の端面50近傍を示す図である。整形後の端面50は、凸状の曲面となる傾向があり、中心軸CAとの交点となる部位が最も突出した形状となり易い。つまり、端面50の中心部分がマルチコアファイバ2の長手方向の最も端に位置する先端部分APとなる傾向がある。
【0044】
ここで、図6に示すように、整形後において、端面50における先端部分APから端面50とクラッド20の側面とが接する部位EDまでのマルチコアファイバ2の長手方向に沿った距離をXμmとする。このときマルチコアファイバ2は、下記式(2)を満たす。
0<X/Y≦0.0054Y+0.268 ・・・(2)
つまり、本ステップでは、上記式(2)を満たすように端面50を加熱する。Yの値は、事前に計測することが可能である。従って、加熱中にマルチコアファイバ2の端面を観察して、上記式(2)を満たすXとなるように端面50を加熱すれば良い。
【0045】
こうして、それぞれのマルチコアファイバ2の端面50が整形される。
【0046】
<融着ステップS3>
次にそれぞれのマルチコアファイバ2の端面50同士を融着する。具体的には、整形ステップS2と同様にそれぞれの放電電極60を振動させながら放電を行う。そして、互いに対向している端面50が互いに接触するようにそれぞれのマルチコアファイバ2を移動する。そして、それぞれのマルチコアファイバ2が適切に融着されたところで、マルチコアファイバ2の移動、及び、放電を止める。
【0047】
なお、整形ステップS2から本ステップまでそれぞれのマルチコアファイバ2の端面50を連続して加熱しなくても良いが、連続して加熱したほうが好ましい。連続して加熱することで、端面50が軟化した状態を維持することができる。このように整形、融着を端面50が軟化した状態を維持して行うことで、マルチコアファイバ2の端面50が、加熱、冷却による軟化と固化とを繰り返すことにより変形することを抑制することができる。
【0048】
こうして、それぞれのマルチコアファイバ2が接続され、それぞれのマルチコアファイバ2のそれぞれのコア11同士が光学的に結合され、図1に示すマルチコアファイバ接続体1を得る。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ2の接続方法によれば、マルチコアファイバ2が式(1)を満たし、さらに、整形ステップS2において式(2)が満たされることにより、接続損失を小さくすることができる。従って、マルチコアファイバ接続体1は接続損失を低減することができる。このように接続損失を低減することができる理由は、明確とされていないが、次のように考えられる。すなわち、式(1)が満たされることにより、融着ステップS3において、接続部分におけるクラッド20の側面に歪みが生じる場合であっても、この歪みがコアまで影響することを抑制することができると考えられる。また、式(2)が満たされることにより、整形される端面50上に位置するコア面の傾斜角や、端面50の最も突出する先端部分APからコア面までのマルチコアファイバ2の長手方向に沿った方向の距離を所定の大きさよりも小さくすることができ、融着時にコア11が歪むことを抑制することができると考えられる。
【0050】
また、本実施形態の整形ステップS2は、突き合わせステップS1の後において、それぞれのマルチコアファイバ2が突き合わされた状態で整形されるため、2本のマルチコアファイバの端面を略同一条件で整形することができ略同一の形状に整形することができる。例えば、上記のように整形を放電により行う場合、1回の放電で2本のマルチコアファイバ端面をほぼ同一に整形することができる。
【0051】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記実施形態おいて、コア11が1−6配置される例を示したが、コアの数や配置に特に制限はない。
【0053】
また、上記実施形態では、それぞれのマルチコアファイバ2及び一対の放電電極60がそれぞれ水平に配置されたが、本発明では、マルチコアファイバ2及び一対の放電電極60は、融着出来る限りにおいて水平に配置されなくても良い。
【0054】
また、上記実施形態のマルチコアファイバ2では、それぞれのコア11がクラッド20で隙間なく包囲される構成とされた。しかし、本発明はこれに限らず、マルチコアファイバはいわゆるトレンチ型のマルチコアファイバであっても良い。トレンチ型のマルチコアファイバは、それぞれのコア11がコア11よりも低屈折率の内側クラッドで個別に被覆され、それぞれの内側クラッドが更に低屈折率のトレンチ部で個別に被覆される。このコア11と内側クラッドとトレンチ部とから成る要素はコア要素と呼ばれる場合がある。そして全てのコア要素がトレンチ部よりも高屈折率でコアよりも低屈折率のクラッドで被覆される構造とされる。
【0055】
また、上記実施形態では、互いに接続されるマルチコアファイバ2の端面50が突き合わされた状態で、整形ステップS2が行われたが、突き合わせステップS1を行う前に整形ステップS2を行っても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、端面50の整形及び接続を放電による加熱で行った。しかし、本発明はこれに限らず、整形ステップS2及び融着ステップS3の少なくとも一方を他の加熱により行っても良い。この加熱の手段としては、例えば、酸水素バーナやレーザ照射等を挙げることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0058】
(実施例1)
第1実施形態と同様の構造を有するマルチコアファイバ2を複数本準備して、内側保護層31、外側保護層32を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ2は、クラッド20の直径が185μmであり、それぞれのコア11の直径が9.8μmであり、コア間距離は49.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは43μmであった。
【0059】
このマルチコアファイバ2を2本一組として、サンプル1−1〜1−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ2の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。整形ステップS2では、整形後において、端面50における先端部分APから端面50とクラッド20の側面とが接する部位EDまでのマルチコアファイバ2の長手方向に沿った距離Xが、それぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル1−1〜1−4におけるXとYの比(X/Y)を表1に示す。次に、上記実施形態と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ2を接続してマルチコアファイバ接続体1とした。このときそれぞれのサンプル1−1〜1−4において接続条件を同じとした。
【0060】
次に、それぞれのコア11に光を入射して、接続損失を測定した。接続損失は、OTDR法(光時間領域反射測定法)という方法で測定した.測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表1に示す。
【表1】
【0061】
ここで、表1に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図7に示す。図7において、実線は、それぞれのサンプル1−1〜1−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図7の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図7における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.518であった。
【0062】
(実施例2)
図8は、本実施例において接続するマルチコアファイバを示す図である。なお、図8に示すマルチコアファイバ3の説明において、図2に示すマルチコアファイバ2と同一又は同等の構成については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、マルチコアファイバ3はいわゆるトレンチ型のマルチコアファイバとされる。本実施例のマルチコアファイバ3は、コア11を含むコア要素10が配置される点において図2に示すマルチコアファイバ2と異なる。それぞれのコア要素10は、コア11がコア11よりも低屈折率の内側クラッド12で被覆され、内側クラッド12が内側クラッド12及びクラッド20よりも低屈折率のトレンチ部13で被覆される構成とされている。また、それぞれのコア要素10はクラッド20で被覆されている。
【0064】
このようなマルチコアファイバ3を複数本準備して、内側保護層、外側保護層を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が185μmであり、それぞれのコア11の直径が9.8μmであり、コア間距離は49.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは43μmであった。つまり、マルチコアファイバ3におけるクラッド20の直径、コア11の直径、コア間距離、外周クラッド厚Yは、それぞれ実施例1のマルチコアファイバ2における対応する構成の大きさ同様であった。
【0065】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル2−1〜2−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル2−1〜2−4におけるXとYの比(X/Y)を表2に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル2−1〜2−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0066】
次に、サンプル2−1〜2−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表2に示す。
【表2】
【0067】
ここで、表2に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図に示す。図において、実線は、それぞれのサンプル2−1〜2−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.502であった。
【0068】
実施例1,2の結果より、実施例1のようにコア11が直接クラッド20に包囲されている場合であっても、本実施例のようにコア11がコア要素10の一部とされるトレンチ型のマルチコアファイバ3であっても、接続損失が0.5dBとなるX/Yに大きな差は生じなかった。従って、実施例1や本実施例のようにYが43μmの場合には、例えば、X/Yが0.50以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0069】
(実施例3)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が160μmであり、それぞれのコア11の直径が8.9μmであり、コア間距離は45μmであった。また、外周クラッド厚Yは35μmであった。
【0070】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル3−1〜3−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル3−1〜3−4におけるXとYの比(X/Y)を表3に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル3−1〜3−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0071】
次に、サンプル3−1〜3−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表3に示す。
【表3】
【0072】
ここで、表3に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図10に示す。図10において、実線は、それぞれのサンプル3−1〜3−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図10の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図10における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.462であった。
【0073】
従って、本実施例のようにYが35μmの場合には、例えば、X/Yが0.45以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0074】
(実施例4)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が210μmであり、それぞれのコア11の直径が10.9μmであり、コア間距離は55μmであった。また、外周クラッド厚Yは50μmであった。
【0075】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル4−1〜4−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル4−1〜4−4におけるXとYの比(X/Y)を表4に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル4−1〜4−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0076】
次に、サンプル4−1〜4−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表4に示す。
【表4】
【0077】
ここで、表4に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図11に示す。図11において、実線は、それぞれのサンプル4−1〜4−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図11の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図11における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.560であった。
【0078】
従って、本実施例のようにYが50μmの場合には、例えば、X/Yが0.56以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0079】
(実施例5)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が140μmであり、それぞれのコア11の直径が7.8μmであり、コア間距離は45μmであった。また、外周クラッド厚Yは25μmであった。
【0080】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル5−1〜5−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル5−1〜5−4におけるXとYの比(X/Y)を表5に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル5−1〜5−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0081】
次に、サンプル5−1〜5−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表5に示す。
【表5】
【0082】
ここで、表5に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図12に示す。図12において、実線は、それぞれのサンプル5−1〜5−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図12の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図12における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.423であった。
【0083】
従って、本実施例のようにYが25μmの場合には、例えば、X/Yが0.42以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0084】
(実施例6)
13は、本実施例において接続するマルチコアファイバを示す図である。なお、図13に示すマルチコアファイバ4の説明において、図8に示すマルチコアファイバ3と同一又は同等の構成については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0085】
本実施例のマルチコアファイバ4は次の点において図8に示すマルチコアファイバ3と異なる。すなわち図13に示すように、マルチコアファイバ4は、クラッド20の中心にコア要素10が配置されておらず、図8における外周側のコア要素10よりも更に外周側に6つのコア要素10が配置されている。
【0086】
このようなマルチコアファイバ4を複数本準備して、内側保護層、外側保護層を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ4は、クラッド20の直径が230μmであり、それぞれのコア11の直径が9.9μmであり、コア間距離は44.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは38μmであった。
【0087】
このマルチコアファイバ4を2本一組として、サンプル6−1〜6−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ4の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル6−1〜6−4におけるXとYの比(X/Y)を表6に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ4を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル6−1〜6−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0088】
次に、サンプル6−1〜6−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。接続損失を測定するコアは、最も外周側に位置するコアとした。測定したコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表6に示す。
【表6】
【0089】
ここで、表6に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図14に示す。図14において、実線は、それぞれのサンプル6−1〜6−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図14の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図14における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.478であった。
【0090】
従って、本実施例のようにYが38μmの場合には、例えば、X/Yが0.48以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0091】
次に、実施例1〜6におけるYと接続損失が0.5dBとなるX/Yとの関係を図15に示す。すると、実施例1〜6におけるYと接続損失が0.5dBとなるX/Yとの関係を示す点は、略直線上に並ぶことが分かった。そこで、最小二乗法によりこの直線の傾きを求め、少なくとも一つの点がこの傾きの直線上に位置し、他の点が当該直線よりも上側に位置する場合の直線の式を求めた。この直線は、下記式(3)で示される。
X/Y=0.0054Y+0.268 ・・・(3)
【0092】
従って、X/Yが式(3)で示される直線以下の領域に位置するように整形を行えば、接続損失が0.5dB以下となることが分かった。
【0093】
以上より、整形ステップS2において、上記式(2)を満たすように加熱を行えば、接続損失を低減することができることが示された。なお、Yが20μmよりも小さい場合には、接続部におけるクラッドの外周面の歪みがコアまで影響し、接続損失が大きくなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明よれば、接続損失を低減することができるマルチコアファイバの接続方法及びこれを用いたマルチコアファイバ接続体が提供され、光通信の分野等において利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1・・・マルチコアファイバ接続体
2,3,4・・・マルチコアファイバ
10・・・コア要素
11・・・コア
12・・・内側クラッド
13・・・トレンチ部
20・・・クラッド
50・・・端面
60・・・放電電極
S1・・・突き合わせステップ
S2・・・整形ステップ
S3・・・融着ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15