【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0058】
(実施例1)
第1実施形態と同様の構造を有するマルチコアファイバ2を複数本準備して、内側保護層31、外側保護層32を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ2は、クラッド20の直径が185μmであり、それぞれのコア11の直径が9.8μmであり、コア間距離は49.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは43μmであった。
【0059】
このマルチコアファイバ2を2本一組として、サンプル1−1〜1−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ2の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。整形ステップS2では、整形後において、端面50における先端部分APから端面50とクラッド20の側面とが接する部位EDまでのマルチコアファイバ2の長手方向に沿った距離Xが、それぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル1−1〜1−4におけるXとYの比(X/Y)を表1に示す。次に、上記実施形態と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ2を接続してマルチコアファイバ接続体1とした。このときそれぞれのサンプル1−1〜1−4において接続条件を同じとした。
【0060】
次に、それぞれのコア11に光を入射して、接続損失を測定した。接続損失は、OTDR法(光時間領域反射測定法)という方法で測定した.測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表1に示す。
【表1】
【0061】
ここで、表1に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を
図7に示す。
図7において、実線は、それぞれのサンプル1−1〜1−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、
図7の破線は、接続損失が0.5dBを示す。
図7における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.518であった。
【0062】
(実施例2)
図8は、本実施例において接続するマルチコアファイバを示す図である。なお、
図8に示すマルチコアファイバ3の説明において、
図2に示すマルチコアファイバ2と同一又は同等の構成については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、マルチコアファイバ3はいわゆるトレンチ型のマルチコアファイバとされる。本実施例のマルチコアファイバ3は、コア11を含むコア要素10が配置される点において
図2に示すマルチコアファイバ2と異なる。それぞれのコア要素10は、コア11がコア11よりも低屈折率の内側クラッド12で被覆され、内側クラッド12が内側クラッド12及びクラッド20よりも低屈折率のトレンチ部13で被覆される構成とされている。また、それぞれのコア要素10はクラッド20で被覆されている。
【0064】
このようなマルチコアファイバ3を複数本準備して、内側保護層、外側保護層を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が185μmであり、それぞれのコア11の直径が9.8μmであり、コア間距離は49.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは43μmであった。つまり、マルチコアファイバ3におけるクラッド20の直径、コア11の直径、コア間距離、外周クラッド厚Yは、それぞれ実施例1のマルチコアファイバ2における対応する構成の大きさ同様であった。
【0065】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル2−1〜2−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル2−1〜2−4におけるXとYの比(X/Y)を表2に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル2−1〜2−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0066】
次に、サンプル2−1〜2−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表2に示す。
【表2】
【0067】
ここで、表2に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図
9に示す。図
9において、実線は、それぞれのサンプル2−1〜2−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図
9の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図
9における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.502であった。
【0068】
実施例1,2の結果より、実施例1のようにコア11が直接クラッド20に包囲されている場合であっても、本実施例のようにコア11がコア要素10の一部とされるトレンチ型のマルチコアファイバ3であっても、接続損失が0.5dBとなるX/Yに大きな差は生じなかった。従って、実施例1や本実施例のようにYが43μmの場合には、例えば、X/Yが0.50以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0069】
(実施例3)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が160μmであり、それぞれのコア11の直径が8.9μmであり、コア間距離は45μmであった。また、外周クラッド厚Yは35μmであった。
【0070】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル3−1〜3−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル3−1〜3−4におけるXとYの比(X/Y)を表3に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル3−1〜3−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0071】
次に、サンプル3−1〜3−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表3に示す。
【表3】
【0072】
ここで、表3に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図
10に示す。図
10において、実線は、それぞれのサンプル3−1〜3−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図
10の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図
10における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.462であった。
【0073】
従って、本実施例のようにYが35μmの場合には、例えば、X/Yが0.45以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0074】
(実施例4)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が210μmであり、それぞれのコア11の直径が10.9μmであり、コア間距離は55μmであった。また、外周クラッド厚Yは50μmであった。
【0075】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル4−1〜4−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル4−1〜4−4におけるXとYの比(X/Y)を表4に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル4−1〜4−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0076】
次に、サンプル4−1〜4−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表4に示す。
【表4】
【0077】
ここで、表4に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図
11に示す。図
11において、実線は、それぞれのサンプル4−1〜4−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図
11の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図
11における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.560であった。
【0078】
従って、本実施例のようにYが50μmの場合には、例えば、X/Yが0.56以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0079】
(実施例5)
図8に示すマルチコアファイバ3を複数本準備した。本実施例におけるそれぞれのマルチコアファイバ3は、クラッド20の直径が140μmであり、それぞれのコア11の直径が7.8μmであり、コア間距離は45μmであった。また、外周クラッド厚Yは25μmであった。
【0080】
このマルチコアファイバ3を2本一組として、サンプル5−1〜5−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ3の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル5−1〜5−4におけるXとYの比(X/Y)を表5に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ3を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル5−1〜5−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0081】
次に、サンプル5−1〜5−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。測定した外周側のコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表5に示す。
【表5】
【0082】
ここで、表5に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図
12に示す。図
12において、実線は、それぞれのサンプル5−1〜5−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図
12の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図
12における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.423であった。
【0083】
従って、本実施例のようにYが25μmの場合には、例えば、X/Yが0.42以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0084】
(実施例6)
図
13は、本実施例において接続するマルチコアファイバを示す図である。なお、図
13に示すマルチコアファイバ4の説明において、
図8に示すマルチコアファイバ3と同一又は同等の構成については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0085】
本実施例のマルチコアファイバ4は次の点において
図8に示すマルチコアファイバ3と異なる。すなわち図
13に示すように、マルチコアファイバ4は、クラッド20の中心にコア要素10が配置されておらず、
図8における外周側のコア要素10よりも更に外周側に6つのコア要素10が配置されている。
【0086】
このようなマルチコアファイバ4を複数本準備して、内側保護層、外側保護層を剥離した。それぞれのマルチコアファイバ4は、クラッド20の直径が230μmであり、それぞれのコア11の直径が9.9μmであり、コア間距離は44.5μmであった。また、外周クラッド厚Yは38μmであった。
【0087】
このマルチコアファイバ4を2本一組として、サンプル6−1〜6−4とした。そして、それぞれのマルチコアファイバ4の端面を上記実施形態と同様の整形ステップS2により整形した。本実施例においても、整形ステップS2において、整形後における距離Xがそれぞれのサンプル毎に異なるように加熱を行った。それぞれのサンプル6−1〜6−4におけるXとYの比(X/Y)を表6に示す。次に、実施例1と同様にして、それぞれのマルチコアファイバ4を接続してマルチコアファイバ接続体とした。このときそれぞれのサンプル6−1〜6−4において接続条件を実施例1と同じとした。
【0088】
次に、サンプル6−1〜6−4のマルチコアファイバ接続体のそれぞれのコア11に光を入射して、実施例1と同様にして接続損失を測定した。接続損失を測定するコアは、最も外周側に位置するコアとした。測定したコア11の接続損失の平均をそれぞれのサンプル毎に表6に示す。
【表6】
【0089】
ここで、表6に記載のXとYの比(X/Y)と接続損失の平均との関係を図
14に示す。図
14において、実線は、それぞれのサンプル6−1〜6−4における上記関係を示す点を最小二乗法を用いて近似した直線である。また、図
14の破線は、接続損失が0.5dBを示す。図
14における実線と破線の交点、すなわち、接続損失が0.5dBとなるX/Yは0.478であった。
【0090】
従って、本実施例のようにYが38μmの場合には、例えば、X/Yが0.48以下であれば、接続損失を低減してマルチコアファイバ3を接続することができることが分かった。
【0091】
次に、実施例1〜6におけるYと接続損失が0.5dBとなるX/Yとの関係を図
15に示す。すると、実施例1〜6におけるYと接続損失が0.5dBとなるX/Yとの関係を示す点は、略直線上に並ぶことが分かった。そこで、最小二乗法によりこの直線の傾きを求め、少なくとも一つの点がこの傾きの直線上に位置し、他の点が当該直線よりも上側に位置する場合の直線の式を求めた。この直線は、下記式(3)で示される。
X/Y=0.0054Y+0.268 ・・・(3)
【0092】
従って、X/Yが式(3)で示される直線以下の領域に位置するように整形を行えば、接続損失が0.5dB以下となることが分かった。
【0093】
以上より、整形ステップS2において、上記式(2)を満たすように加熱を行えば、接続損失を低減することができることが示された。なお、Yが20μmよりも小さい場合には、接続部におけるクラッドの外周面の歪みがコアまで影響し、接続損失が大きくなると考えられる。