(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952882
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】カバン用緩衝機能付きキャスター
(51)【国際特許分類】
A45C 5/14 20060101AFI20160630BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
A45C5/14 A
B60B33/00 X
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-240945(P2014-240945)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101308(P2016-101308A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2015年12月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503290465
【氏名又は名称】アイシン通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】相馬 正明
(72)【発明者】
【氏名】野田 章文
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−100560(JP,A)
【文献】
特開2010−132266(JP,A)
【文献】
特開2003−159905(JP,A)
【文献】
米国特許第06789810(US,B2)
【文献】
米国特許第05365635(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 1/00−15/08
A45F 3/00
3/02
3/04
3/12
B60B 33/00−33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバンの底部に垂直軸を軸として回動自在とされた上部フォークと、
車輪を軸支し上部フォークに水平軸を軸として回動自在とされた下部フォークと、
を備え、
前記水平軸の周囲にコイルスプリングを巻回し、コイルスプリングの一端を前記上部フォークに固定し、他端を前記下部フォークに固定することにより、前記下部フォークを前記水平軸を軸とした一方の回転方向に付勢し、上部フォークに下部フォークの一方の方向の回転側の厚みを下部フォークの他方の方向の回転側の厚みより厚くした仕切部を形成し、一方の方向の回転に付勢された下部フォークの一端が、上部フォークの仕切部の一方の方向の回転側の厚みの厚い部分と係合し、下部フォークの一方の方向に付勢された回転が阻止され、仕切部の他方の回転方向の厚みは薄くした部分が下部フォークのコイルスプリングの付勢力に抗した他方の方向の回転を許容することを特徴とするカバン用緩衝機能付きキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行カバン、スーツケース、トランク等のカバンの底部に取り付けられる緩衝機能付きキャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
旅行カバン、スーツケース、トランク等のキャスター付きカバンは、移動中、道路の凹凸や、段差部により衝撃が加わる。このような衝撃を和らげるために、緩衝部材を取り付けたキャスターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−101650号公報
【特許文献2】特開2005−192760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の緩衝部材付きカバン用キャスターは、構造が複雑であり、部品点数も多く組み立て工程に時間を要し、その結果コストが上昇するという問題を有する。
【0005】
本発明は、従来技術のもつ課題を解決する、構造が簡単で、部品数が少なく、組み立てが容易で低コストで製造が可能なカバン用緩衝機能付きキャスターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカバン用緩衝機能付きキャスターは、前記課題を解決するために、カバンの底部に垂直軸を軸として回動自在とされた上部フォークと、車輪を軸支し上部フォークに水平軸を軸として回動自在とされた下部フォークと、を備え、前記水平軸の周囲にコイルスプリングを巻回し、コイルスプリングの一端を前記上部フォークに固定し、他端を前記下部フォークに固定することにより、前記下部フォークを前記水平軸を軸とした一方の回転方向に付勢し、上部フォークに下部フォークの一方の方向の回転側の厚みを下部フォークの他方の方向の回転側の厚みより厚くした仕切部を形成し、一方の方向の回転に付勢された下部フォークの一端が、上部フォークの仕切部の一方の方向の回転側の厚みの厚い部分と係合し、下部フォークの一方の方向に付勢された回転が阻止され、仕切部の他方の回転方向の厚みは薄くした部分が下部フォークのコイルスプリン
グの付勢力に抗した他方の方向の回転を許容することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のカバン用緩衝機能付きキャスターは、前記上部フォークに前記下部フォークの付勢された回転方向の回動を前記下部フォークの一部と係合して阻止するストッパー部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
カバンの底部に垂直軸を軸として回動自在とされた上部フォークと、車輪を軸支し上部フォークに水平軸を軸として回動自在とされた下部フォークと、を備え、前記水平軸の周囲にコイルスプリングを巻回し、コイルスプリングの一端を前記上部フォークに固定し、他端を前記下部フォークに固定することにより、前記下部フォークを前記水平軸を軸とした一方の回転方向に付勢することで、簡単な構成で衝撃を効率良く吸収可能で、部品点数が少なく組み立てが容易で低コストで製造が可能で、緩衝手段であるコイルスプリングを水平軸に巻回して配置するので無駄なスペースを省略することが可能となる。
上部フォークに下部フォークの付勢された回転方向の回動を前記下部フォークの一部と係合して阻止するストッパー部を形成することで、上部フォークと下部フォークの一部形状を加工するだけで別の部材を使用することなく下部フォークの一方の回転方向の回動をストップすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図5】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1に示されるように、本発明のカバン用緩衝機能付きキャスター1は、旅行カバン、スーツケース、トランク等のカバン2の底部2aに取り付けられる.
【0011】
図2は、本発明のカバン用緩衝機能付きキャスター1の側面図であり、
図3は正面図である。カバン用緩衝機能付きキャスター1は、カバン底部2aに垂直軸を軸として回動可能に設置される上部フォーク3と、上部フォーク3に水平軸5を軸として回動可能にされ車輪6を軸支した下部フォーク4をそなえている。
【0012】
図4(a)(b)は、上部フォーク3の正面図と側面図であり、
図5(a)(b)は、下部フォーク4の正面図と側面図である。
【0013】
上部フォーク3は、カバン底部2aに形成された孔に挿入され垂直軸を軸として回動可能な軸部3aを有する。軸部3aとカバン底部2aの孔間には軸部3aの回転をスムーズにする軸受が配置される。軸部3aの上部には雌ねじ部3bが刻設される。軸部3aの下部に軸部3a及びカバン底部2aに形成された孔より大径な仕切部3cが形成される。仕切部3cの下部に両側壁部3dが形成される。両側壁部3dには、水平軸5を挿入し固定する水平軸用孔3eが形成される。上部フォーク3の軸部3a、仕切部3c、両側壁部3dは一体に形成される。
【0014】
上部フォーク3の軸部3aを軸受が配置されたカバン底部2aの孔に挿入し、軸部3aの上部の雌ねじ部3bにナット3fを螺着し、上部フォーク3を垂直軸を軸として回動可能とし、仕切部3cとナット3fにより上下動不能に設置する。左右の側壁部3dの上端部を連結し補強部3gを形成し、補強部3gに必要に応じて開口部3hを形成する。仕切部3cの詳細については後述する。
【0015】
下部フォーク4は、上部フォーク3の両側壁部3dを収容する両側壁部4aを有する、両側壁部4aには、水平軸5を回転自在に軸支する水平軸用孔4bと、車輪6を軸受を介して回転自在に軸支する車軸6aの両端が下部フォーク4に形成された車軸用孔4cに固定される。両側壁部4aの上端を連結した上部補強部4dと中間部を連結した中間補強部4eが形成される。
【0016】
下部フォーク4の両側壁部4a間に上部フォーク3の両側壁部3dを位置させ、上部フォーク3の両側壁部3d間に固定した水平軸5を水平軸用孔4bに軸支し、下部フォーク4を上部フォーク3に対して水平軸5を軸として回動可能に取り付ける、
【0017】
上部フォーク3の両側壁部3dに固定された水平軸5の周囲にコイルスプリング7を巻回して配置する。コイルスプリング7の一端部7aを下部フォーク4の中間補強部4eに固定し、コイルスプリング7の他端部7bを上部フォーク3の仕切部3cの下部に固定する。コイルスプリング7のそれぞれの端部を上部フォーク3と下部フォーク4に固定する。コイルスプリング7の巻回し方向にもよるが、
図1に示される実施形態では、下部フォ
ーク4は、コイルスプリング7の弾発力により矢印のように、水平軸5を軸として時計方向に回転するように付勢される。
【0018】
上部フォーク3の仕切部3cは、
図1及び
図4(b)に示されるように、下部フォーク4の時計方向の回転側の厚みが、反時計方向の回転側の厚みより厚くしている。時計方向の回転に付勢された下部フォーク4の一端が、上部フォーク3の仕切部3cの時計方向の回転側の厚みの厚い部分と係合し、下部フォーク4の時計方向に付勢された回転が阻止される。一方、仕切部3cの反時計方向の厚みは薄く、下部フォーク4のコイルスプリン7の付勢力に抗した反時計方向の回転を許容する。
【0019】
このように構成されたカバン用緩衝機能付きキャスター1の使用状態を説明する。滑らかな床面等を走行中は、水平軸5を軸として時計方向に回転するように付勢され、下部フォーク4の一端と上部フォーク3の仕切部3cの厚みの厚い部分との係合により時計方向の回転が阻止された下部フォーク4に軸支された車輪6がスムーズに回転し安定して走行することが可能となる。
【0020】
表面が凹凸な路面や、段差のある部分を走行中は、下部フォーク4に軸支された車輪6の凹凸、段差による衝撃は、一端部を下部フォーク4に固定され他端部を上部フォーク3に固定されたコイルスプリング7の弾発力による下部フォーク3の反時計方向の回動と戻りの回動により吸収される。
【0021】
このように構成された本願発明のカバン用緩衝機能付きキャスターによれば、簡単な構成で衝撃を効率良く吸収可能で、部品点数が少なく組み立てが容易で低コストで製造が可能で、緩衝手段であるコイルスプリングを水平軸に巻回して配置するので無駄なスペースを省略することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1:カバン用緩衝機能付きキャスター、2:カバン、2a:カバン底部、3:上部フォーク、3a:軸部、3b:雌ねじ部、3c:仕切部,3d:両側壁部、3e:水平軸用孔、3f:ナット、3g:補強部、3h:開口部、4:下部フォーク、4a:両側壁部、4b:水平軸用孔、4c:車軸用孔、4d:上部補強部、4e:中間補強部、5:水平軸、6:車輪、6a:車軸、7:コイルスプリング、7a:コイルスプリングの一端部、7b:コイルスプリングの他端部