(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953002
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】熱交換器のヘッダの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
F28F9/02 301A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-5896(P2011-5896)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-145306(P2012-145306A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】手塚 綾典
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−099584(JP,A)
【文献】
特開昭59−109789(JP,A)
【文献】
米国特許第05226490(US,A)
【文献】
米国特許第05062476(US,A)
【文献】
特開2007−198721(JP,A)
【文献】
特開2008−267693(JP,A)
【文献】
特開平02−097705(JP,A)
【文献】
特開平07−035491(JP,A)
【文献】
特開2006−214656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が溝状に形成されたヘッダ本体(1)の両縁と、全体が溝状に形成されたヘッダプレート(2)の両縁とを互いに嵌着して、その嵌着部を接合してなる熱交換器のヘッダの製造方法において、
前記ヘッダ本体(1)の両縁部が他の部分よりも肉厚に形成されると共に、その肉厚部(3)の端面に凹陥した小溝(4)が形成され、その小溝(4)の内面側の内側壁(5)の厚みが外面側の外側壁(6)のそれよりも厚く形成されて、その厚い内側壁(5)が、外側壁(6)のカシメの際に変形防止の支持材を構成し且つ、外側壁(6)はその全長がヘッダプレート(2)の外周に対向すると共に、その長さが内側壁(5)の長さより長く形成され且つ、その厚みがその根元部(6a)より先端部(6b)が次第に薄く形成されて、その中間部より先が容易に変形可能に形成され、
前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)の先端部(6b)の内面に、ヘッダプレート(2)の外面の曲折部(2b)に整合するように内方に曲げられる変曲点(6d)を形成し、
前記ヘッダプレート(2)はその溝状の両側壁部(2a)の断面が拡開形成され、その先端部(2c)が内面側にその外面を変化させた前記曲折部(2b)を有し、
前記外側壁(6)の長さは、前記曲折部(2b)を充分超えて延長されると共に、その外壁部(6)の前記次第に薄く形成された先端部(6b)がその曲折部(2b)に対向し、
前記ヘッダプレート(2)の両側壁部(2a)の先端部(2c)の向きと、前記ヘッダ本体(1)の一対の前記小溝(4)の向きとが一致するように構成し、
前記ヘッダ本体(1)の前記小溝(4)に、前記ヘッダプレート(2)の両側壁部の先端部(2c)が嵌着される工程と、
前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)のみがヘッダプレート(2)の外面に沿って接するようにカシメられて、その内面(6c)がヘッダプレート(2)の外面に接触し、その先端部が前記変曲点(6d)から内側に曲がって、それが前記ヘッダプレート(2)の先端部(2c)の曲折部(2b)を超え、その外面を抜け止め抱持するようにされる工程と、
その状態で、ヘッダ本体(1)とヘッダプレート(2)との間をろう付けする工程と、を有する熱交換器のヘッダの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器のヘッダの製造方法において、
前記ヘッダプレート(2)はその溝底が平坦な面に形成され、その平坦面(2d)に直交するように、その両側壁部(2a)の先端部(2c)が形成され、
前記ヘッダ本体(1)は横断面円弧状に形成され、その円弧の直径線dに共に直交するように、一対の前記小溝(4)の内側壁(5)および外側壁(6)の内面が形成され、前記カシメの前の状態で、その内側壁(5)および外側壁(6)の先端部が拡開された熱交換器のヘッダの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の熱交換器のヘッダの製造方法において、
前記ヘッダプレート(2)の前記曲折部(2b)が弧状に形成され、その曲折部(2b)の先端側および曲折部(2b)に対して、その反対側は断面外周が直線に形成され、
その曲折部(2b)を前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)の先端が超え、前記反対側の直線部に達するように、前記カシメを行った熱交換器のヘッダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝状に形成された一対のアルミニウム製材どうしを互いに嵌着し、筒状に形成し、その両端に一対の端蓋を配置して熱交換器用ヘッダを構成すると共に、一方の溝状材に多数のチューブ挿通孔を形成し、そこにチューブ端を嵌着し、全体を一体的にろう付け固定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製材によるヘッダは、一例として
図4に示す如く、形成されている。このヘッダは、ヘッダ本体1の両端部に段付き部9を形成し、その段付き部9にヘッダプレート2の両端部を嵌着する。なお、ヘッダプレート2には多数の挿通孔8を穿設しておき、そこに偏平チューブ7を挿通する。なお、各ヘッダ本体1、ヘッダプレート2の表面には予めろう材を被覆しておくか、或いは接合部にろう材を配置し、それを溶融する。なお、そのろう付け前に、ヘッダ本体1とヘッダプレート2との嵌着部は予め点溶接あるいはカシメを行い、両者が分離しないようにしておく。次いで、ヘッダ本体1、ヘッダプレート2の継目および偏平チューブ7とヘッダプレート2との嵌着部を、炉内でろう付け固定する。また、このヘッダの長手方向両端には図示しない端蓋が嵌着され、その嵌着部も同様にろう付け固定される。
【0003】
さらに、下記特許文献1に記載の熱交換器用ヘッダは、タンク本体の両側壁の端面を溝状に形成し、そこにヘッダプレートの両側壁の端を嵌着し、そのタンク本体の溝状の外側の壁面をカシメて仮固定し、全体を高温の炉内でろう付けする提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−99584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示す、一対のヘッダ本体1、ヘッダプレート2の嵌着部間を仮溶接してろう付けするヘッダは、工程数が多くなり量産性に欠ける欠点があった。
また、特許文献1のように、ヘッダ本体1の両端部を二股に形成し、そこにヘッダプレート2を嵌着し、その二股の外側をカシメて仮固定しているものは、本発明者の実験によれば、そのカシメの際にヘッダプレートおよびヘッダ本体に変形が生じ、ヘッダの耐圧性を低下させると共に、チューブ挿通孔とチューブとの嵌着部に、その変形の影響を与え、チューブの嵌着部のろう付け不良を起こすおそれがあった。
そこで、本発明はかかる問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、全体が溝状に形成されたヘッダ本体(1)の両縁と、全体が溝状に形成されたヘッダプレート(2)の両縁とを互いに嵌着して、その嵌着部を接合してなる熱交換器のヘッダ
の製造方法において、
前記ヘッダ本体(1)の両縁部が他の部分よりも肉厚に形成されると共に、その肉厚部(3)の端面に凹陥した小溝(4)が形成され、その小溝(4)の内面側の内側壁(5)の厚みが外面側の外側壁(6)のそれよりも厚く形成されて、その厚い内側壁(5)が、外側壁(6)のカシメの際に変形防止の支持材を構成し且つ、外側壁(6)はその全長がヘッダプレート(2)の外周に対向すると共に、その長さが内側壁(5)の長さより長く形成され且つ、その厚みがその根元部(6a)より先端部(6b)が次第に薄く形成されて、その中間部より先が容易に変形可能に形成され、
前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)の先端部(6b)の内面に、ヘッダプレート(2)の外面の曲折部(2b)に整合するように内方に曲げられる変曲点(6d)を形成し、
前記ヘッダプレート(2)はその溝状の両側壁部(2a)の断面が拡開形成され、その先端部(2c)が内面側にその外面を変化させた前記曲折部(2b)を有し、
前記外側壁(6)の長さは、前記曲折部(2b)を充分超えて延長されると共に、その外壁部(6)の前記次第に薄く形成された先端部(6b)がその曲折部(2b)に対向し、
前記ヘッダプレート(2)の両側壁部(2a)の先端部(2c)の向きと、前記ヘッダ本体(1)の一対の前記小溝(4)の向きとが一致するように構成し、
前記ヘッダ本体(1)の前記小溝(4)に、前記ヘッダプレート(2)の両側壁部の先端部(2c)が嵌着され
る工程と、
前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)のみがヘッダプレート(2)の外面に沿って
接するようにカシメられて、その内面(6c)がヘッダプレート(2)の外面に接触し、その先端部が前記
変曲点(6d)から内側に曲がって、それが前記ヘッダプレート(2)の先端部(2c)の曲折部(2b)を超え、その外面を抜け止め抱持するようにされ
る工程と、
その状態で、ヘッダ本体(1)とヘッダプレート(2)との間をろう付け
する工程と、を有する熱交換器のヘッダ
の製造方法である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器のヘッダ
の製造方法において、
前記ヘッダプレート(2)はその溝底が平坦な面に形成され、その平坦面(2d)に直交するように、その両側壁部(2a)の先端部(2c)が形成され、
前記ヘッダ本体(1)は横断面円弧状に形成され、その円弧の直径線dに共に直交するように、一対の前記小溝(4)の内側壁(5)および外側壁(6)の内面が形成され、前記カシメの前の状態で、その内側壁(5)および外側壁(6)の先端部が拡開された熱交換器のヘッダ
の製造方法である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の熱交換器のヘッダ
の製造方法において、
前記ヘッダプレート(2)の前記曲折部(2b)が弧状に形成され、その曲折部(2b)の先端側および曲折部(2b)に対して、その反対側は断面外周が直線に形成され、
その曲折部(2b)を前記ヘッダ本体(1)の外側壁(6)の先端が超え、前記反対側の直線部に達するように、前記カシメを行った熱交換器のヘッダ
の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換器のヘッダ
の製造方法は、ヘッダ本体1の両端部に形成された小溝4に、ヘッダプレート2の先端部2cが嵌着された状態で、そのヘッダ本体1の外側壁6がヘッダプレート2側にカシメられて、それによってヘッダプレート2の先端部2cの曲折部2bを抜け止め抱持する。そして、その状態でろう付けされるから、ろう付け中にヘッダ本体1とヘッダプレート2との相対移動が生じることがなく、ろう付けの信頼性を向上できる。それと共に、カシメられるヘッダ本体1の外側壁6の厚みが、それに対向する内側壁5の厚みより薄く且つ、その先端部6bが次第に薄く形成されているから、そのカシメ時に、ヘッダが変形することを防止し、信頼性の高いろう付け構造を提供できる。
【0012】
さらに、ヘッダプレート2の側壁部2aの先端部2cの向きとヘッダ本体1の一対の小溝4の向きとを一致させ
たので、両者の嵌着を容易に行ないうる。それにより、量産性の高い熱交換器のヘッダを提供できる。
さらに、外側壁6の長さを、曲折部2bを充分超えて延長されると共に、その外側壁6を次第に薄く形成し、その先端部6bがその曲折部2bに対向させたので、カシメが円滑に行われ、信頼性の高いヘッダとなる。
【0013】
請求項2に記載のように、ヘッダプレート2の溝底を平坦に形成し、それに直行するように側壁部2aの先端部2cを形成すると共に、ヘッダ本体1の小溝4の内側壁5および外側壁6内面をヘッダ本体1の横断面円弧の直系線dに直行するようにした場合には、ヘッダ本体1の先端部とヘッダプレート2の先端部との嵌着をより正確に行ないうる。それと共に、耐圧性の高いヘッダを提供できる。
【0014】
請求項3に記載のように、ヘッダプレート2の側壁の曲折部2bを弧状に形成し、その曲折部2bの先端側および反対側の断面外周を直線に形成し、ヘッダ本体1の外側壁6先端がその曲折部2bを超え、直線部に達するようにカシメた場合には、ヘッダ本体1とヘッダプレート2とのカシメ状態をより確実にし、ろう付け時に両者が相対移動することを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の熱交換器のヘッダの組立ての第1工程を示す要部縦断面図。
【
図3】同ヘッダの第2工程のカシメ状態を示す要部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
本発明のヘッダは、ヘッダ本体1とヘッダプレート2とその両端に嵌着される図示しない端蓋とからなる。
ヘッダ本体1は、横断面が半円以上の円弧状に形成され、その両端縁部に肉厚部3が形成されている。この肉厚部3は、それ以外のヘッダ本体1の肉厚よりも厚く形成されている。そして、その肉厚部3が横断面二股状に形成され、そこに小溝4を構成する。その小溝4は、その向きが直径線dに直交し、内側壁5と外側壁6とが対向する。
内側壁5はヘッダの内面側に位置し、外側壁6は外面側に位置する。そして、内側壁5の厚みを外側壁6のそれよりも厚くする。これは外側壁6をカシメる時、それを容易にカシメると共に、ヘッダ全体が内側に変形しないように、厚い内側壁5が変形防止の支持材を形成するものである。内側壁5は
図2に示す如く、その内面5aが先端に向かって円弧状に拡がっており、それがヘッダプレート2の先端部2cを嵌着する際の、ガイドをなす。
外側壁6はその根元から先端に向かって次第に肉厚を薄くし、その先端部6bの先端内面6cに内方へわずかに曲がる変曲点6dを有する。
【0018】
次に、ヘッダプレート2は全体が溝状または樋状に形成され、その溝底に平坦面2dを形成する。そして、その平坦面2dに多数の挿通孔8が穿設されている。なお、挿通孔8は平坦面2dを超えた側壁部2aまで形成してもよい。ヘッダプレート2はその横断面が台形状に形成され、その先端部2cが平坦面2dに直行して配置されている。先端部2cの外面は平坦に形成され、それに次いで円弧状の曲折部2bを介し、平坦な側壁部2aに連続する。そして、側壁部2aの根元部で湾曲し平坦面2dに連設される。
【0019】
ヘッダ本体1の外側壁6の横断面長さは、ヘッダプレート2の断面の曲折部2bを超える長さとされる。これに対して内側壁5の横断面長さは、ヘッダプレート2の断面の先端部2c程度の長さとする。ヘッダプレート2の先端部2cの厚さは小溝4の幅よりも僅か小に形成されている。
この例では、少なくてもヘッダ本体1およびヘッダプレート2の外表面にろう材が被覆または載置されている。
【0020】
次いで、
図3の如く、ヘッダ本体1の溝4の外側壁6をヘッダプレート2の外表面側にカシメる。この時、外側壁6の全体はその先端に向かって次第に薄肉に形成されているため、その中間部から先端部が容易に変形し、その内面がヘッダプレート2外表面に密着する。この時、外側壁6の先端はヘッダプレート2の平坦面2dを超える。この例では、円弧状に形成された曲折部2bはsからmまである。
【0021】
そして、
図2において、外側壁6の内面6cに変曲点6dが形成されることにより、カシメの際、
図3に示す如く、変曲点6dより先端がヘッダプレート2外面にわずかに食い込み、ヘッダ本体1がヘッダプレート2を抜け止め抱持する。そして、並列された多数の挿通孔8にそれぞれ偏平チューブ7を嵌着し、ヘッダの長手方向両端に図示しない端蓋を被着する。そして、全体を組立てた状態で、高温の炉内に挿入し、一体的にろう付け固定して、熱交換器を完成する。
【符号の説明】
【0022】
1 ヘッダ本体
2 ヘッダプレート
2a 側壁部
2b 曲折部
2c 先端部
2d 平坦面
3 肉厚部
4 小溝
5 内側壁
5a 先端内面
【0023】
6 外側壁
6a 根元部
6b 先端部
6c 先端内面
6d 変曲点
7 偏平チューブ
8 挿通孔
9 段付き部