(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に関わる殺菌装置1及び殺菌方法の構成を、
図1乃至
図5を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る殺菌装置1の構成を模式的に示す説明図、
図2は同殺菌装置1を用いた殺菌方法に用いるDHv値を算出するための濃度及び湿度並びに時間の関係の一例を示す説明図、
図3は殺菌方法に用いるDHv値と殺菌効果Dとの関係、及び、所定の殺菌効果Dを得られる閾値の一例を示す説明図、
図4は、殺菌装置1を用いた殺菌方法の一例を示す流れ図、
図5は、殺菌方法を用いた密閉空間の殺菌の効果の一例を示す説明図である。
【0015】
図1に示すように、殺菌装置1は、密閉された室内等の密閉空間100に接続される。殺菌装置1は、密閉空間100又は密閉空間100に配置された装置や容器等の殺菌対象を過酸化水素ガス(VHP:Vapor Hydrogen Peroxide)により殺菌可能に形成されている。
【0016】
なお、密閉空間100とは、室内が密閉された空間が好ましいが、密閉空間100内の過酸化水素ガスが外部に漏洩しても、当該過酸化水素ガスの濃度等の低下が少ない気密性の室内も含まれる。また、殺菌装置1は、密閉空間100の過酸化水素ガスの濃度が低濃度帯での殺菌に用いられる。ここで、低濃度帯とは、例えば、密閉空間100の過酸化水素ガスの濃度が20ppmから150ppmの範囲である。
【0017】
なお、本実施形態における殺菌は、滅菌であって、無菌性保障レベル(Sterility assurance level:SAL)を採用する。また、本実施形態における殺菌は、無菌性保障レベルSAL≦10
−6となるレベルを示す。なお、当該レベルを、殺菌効果Dとして、その表示を>6Dとして以下説明する。ここで、6Dの「6」とは、冪数(対数)を示しており、殺菌効果Dとして、例えば、SAL≦10
−5は5Dを、SAL≦10
−4は4Dとして以下説明するとともに、同様に、SALの値の冪数を殺菌効果Dと用いて以下説明する。
【0018】
殺菌装置1は、過酸化水素ガスを発生させる発生装置11と、過酸化水素ガスを密閉空間100に供給するガス供給装置12と、密閉空間100内に配置された検出器13と、発生装置11、ガス供給装置12及び検出器13に信号線S等を介して接続される制御手段14と、を備えている。
【0019】
発生装置11は、外郭部材21と、タンク22と、供給手段23と、プレートヒータ24と、を備えている。外郭部材21は、密閉空間100と、ガス供給装置12の後述する配管31を介して連通する。発生装置11は、密閉空間100の過酸化水素ガスの濃度が低濃度帯となるように、過酸化水素ガスを発生可能に形成されている。
【0020】
タンク22は、過酸化水素水を貯留可能に形成されている。なお、本実施形態において、過酸化水素水は、その濃度が35w/w%の過酸化水素水が用いられる。
【0021】
供給手段23は、タンク22内の過酸化水素水を所定の量だけプレートヒータ24上に供給可能に形成されている。例えば、供給手段23は、過酸化水素水を霧状に噴霧可能なスプレーや、過酸化水素水を滴下するノズルである。プレートヒータ24は、150℃以上に加熱され、供給された過酸化水素水を蒸発させて、過酸化水素ガスを発生可能に形成されている。
【0022】
ガス供給装置12は、発生した過酸化水素ガスを供給可能に外郭部材21及び密閉空間100間を接続する配管31と、配管31を介して外郭部材21内で発生した過酸化水素ガスを密閉空間100に供給するブロア等の圧送手段32と、を備えている。また、ガス供給装置12は、配管31を開閉する開閉弁等を有していても良い。圧送手段32は、制御手段14に、信号線Sを介して接続される。圧送手段32は、例えば、外郭部材21内に配置される。
【0023】
検出器13は、密閉空間100内の過酸化水素ガスの濃度、及び、密閉空間100内の湿度を検出可能に形成されている。また、検出器13は、検出した濃度及び湿度の情報を制御手段14に送信可能に形成されている。検出器13は、複数設けられていても良い。なお、本実施形態においては、湿度は相対湿度を示す。
【0024】
制御手段14は、発生装置11及びガス供給装置12を制御可能に形成されている。制御手段14は、供給手段23の過酸化水素水の供給及び停止を制御可能に形成されている。制御手段14は、圧送手段32の運転及び停止を制御可能に形成されている。
【0025】
また、制御手段14は、記憶手段41を有している。記憶手段41には、密閉空間100内の所定の殺菌効果D(>6D)を満たす閾値であるDHv0値が記憶されている。
【0026】
また、制御手段14は、以下の機能(1)〜(4)を有している。
【0027】
(1)過酸化水素ガスを発生させて、密閉空間100に供給する機能。
【0028】
(2)検出された濃度及び湿度から密閉空間100の殺菌効果Dの状態を示すDHv値を算出する機能。
【0029】
(3)算出したDHv値と、記憶手段41に記憶されたDHv0値との比較を行う機能。
【0030】
(4)DHv値がDHv0値よりも大きい場合に、過酸化水素ガスの供給を停止させる機能。
【0031】
次に、これら機能(1)〜(4)について説明する。
機能(1)は、制御手段14が供給手段23を制御し、発生装置11により過酸化水素ガスを発生させ、圧送手段32を駆動して発生させた過酸化水素ガスを、配管31を介して発生装置11から密閉空間100に供給する機能である。
【0032】
機能(2)は、制御手段14が、検出器13により検出された濃度及び湿度の情報を受信し、当該濃度及び湿度の情報に基づいてDHv値を算出する。DHv値は、以下の数式(1)により求められる。
【数1】
【0033】
具体的には、DHv値は、
図2に示す密閉空間100内の濃度の変化から求められる関数f(x)を時間xで積分することで求められる第1積分値、及び、密閉空間100内の湿度の変化から求められる関数f′(X)を時間xで積分することで求められる第2積分値を積算して求められる。このDHv値は、殺菌効果Dの基準となる閾値であるDHv0値と比較することで、殺菌効果Dを推測する値である。
【0034】
機能(3)は、制御手段14が、機能(2)で算出されたDHv値と、記憶手段41に記憶された殺菌効果Dが>6Dを満たすDHv0値とを比較する機能である。
【0035】
機能(4)は、機能(3)で比較した結果、DHv値がDHv0値よりも大きい(DHv>DHv0)場合には、密閉空間100の所定の殺菌が終了したものと判断し、発生装置11を停止させる機能である。
【0036】
次に、記憶手段41に記憶された、殺菌の終了の基準となるDHv0値について、
図3を用いて説明する。
DHv0値は、所定の条件下において複数回の条件で複数回、密閉空間100を殺菌して上述の数式(1)からDHv値を求め、これら求めたDHv値のうち、殺菌効果Dが>6Dを得られるDHv値を閾値として設定したものである。
【0037】
具体的には、先ず、密閉空間100に、バイオロジカルインジケータ(以下、「BI」として説明)を複数配置させる。なお、本実施形態においては、過酸化水素ガスの耐性指標の一でとして、Apex Laboratory,Inc.製Geobacillus stearothermophilus ATCC1298(菌数10
6cfu/disc)のBIを用いた。
【0038】
なお、密閉空間100は、容積や形状等が異なる空間を行う。なお、
図3に示すように、本実施形態においては密閉空間100として、異なる空間A及び空間Bを用いた。
【0039】
次に、過酸化水素ガスの濃度、密閉空間100内の湿度及び殺菌時間を複数の異なる条件として、それぞれで密閉空間100の殺菌を行う。殺菌開始から所定の経過時間で、密閉空間100内のBIの生残菌数測定により評価を行い、殺菌効果Dが>6Dであるか否かを評価する。
【0040】
次に、
図3に示すように、殺菌の複数の条件下における殺菌効果DとDHv値との関係を求める。
図3に示すように、殺菌効果DとDHv値の関係から、略確実に密閉空間100内を殺菌効果Dが>6Dで殺菌できる、DHv値の下限値を求める。このDHv値の下限値を、殺菌効果Dが>6Dとなる閾値であるDHv0値とする。
【0041】
なお、
図3は、上述した殺菌を複数回行って求められた殺菌効果DとDHv値との関係を示しており、
図3中実線は殺菌効果Dの平均値(ave.)を、破線は標準偏差(+σ、−σ)をそれぞれ示している。
【0042】
本実施形態においては、
図3に示すように、密閉空間100内を殺菌効果Dが6Dで確実に除菌できる閾値として、平均値及び標準偏差がともに殺菌効果Dが6Dを満たすDHv値を閾値(DHv0値)とし、このDHv0値は
図3に示すように、55,000以上であることが求められた。
【0043】
次に、このように構成された殺菌装置1を用いた殺菌方法について、以下、
図4に示す流れ図を用いて説明する。
先ず、密閉空間100に配管31を介して発生装置11を接続する。次に、制御手段14により発生装置11を駆動して過酸化水素ガスを発生させ、ガス供給装置12により密閉空間100内に過酸化水素ガスを供給する(ステップST1)。これにより、密閉空間100内の殺菌が開始される。次に、検出器13により、密閉空間100内の過酸化水素ガスの濃度及び密閉空間100内の湿度を、殺菌の開始時から連続して検出し(ステップST2)、制御手段14に送信する。なお、検出器13による濃度及び湿度の検出は、所定の時間毎に検出してもよい。
【0044】
制御手段14は、検出器13により検出された濃度及び湿度の情報を受信すると、当該情報及び殺菌を実施している時間から、数式(1)を用いてDHv値を算出する(ステップST3)。
【0045】
次に、制御手段14は、算出したDHv値とDHv0値を比較する(ステップST4)。DHv値がDHv0値よりも小さい(DHv<DHv0)場合(ステップST4のNO)には、密閉空間100内に過酸化水素ガスの供給を継続する(ステップST1)。
【0046】
DHv値がDHv0値よりも大きい(DHv>DHv0)場合(ステップST4のYES)には、制御手段14は、密閉空間100内の殺菌効果Dが>6Dを満たしており、殺菌が終了したと判断する。これにより、制御手段14は、供給手段23及びガス供給装置12を停止し、過酸化水素ガスの供給を停止させる(ステップST5)。これらの工程により、殺菌装置1を用いて、殺菌効果Dが>6Dを満たす密閉空間100の殺菌が行われる。
【0047】
次に、このような殺菌装置1及び殺菌方法を用いた殺菌の実施例を、以下に示す。なお、本実施例は、下記実施例1乃至実施例12の条件において、上述の殺菌方法を用いて密閉空間100の殺菌を行い、実施例1乃至実施例12の条件における、殺菌効果D及びDHv値を求める。
【0048】
本実施例は、DHv値及びDHv0値との比較により、DHv値及び殺菌効果Dの評価を行う。なお、殺菌効果Dが>6Dである場合のDHv値と、上述したDHv0値の関係を評価するために、DHv0値は、その下限値であるDHv0=55,000とする。また、実施例1乃至実施例12における腐食性についても併せて評価する。
【0049】
(実施例1)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は20%とする。なお、本実施形態において、湿度とは、相対湿度を示す。
【0050】
(実施例2)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は30%とする。
【0051】
(実施例3)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は40%とする。
【0052】
(実施例4)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は50%とする。
【0053】
(実施例5)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は60%とする。
【0054】
(実施例6)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分6gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は70%とする。
【0055】
(実施例7)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は20%とする。
【0056】
(実施例8)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は30%とする。
【0057】
(実施例9)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は40%とする。
【0058】
(実施例10)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は50%とする。
【0059】
(実施例11)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は60%とする。
【0060】
(実施例12)
供給手段23によりプレートヒータ24に毎分12gで過酸化水素水(35wt%)を供給し、過酸化水素ガスを発生させる。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は70%とする。
【0061】
これら実施例1乃至実施例12を用いた殺菌方法の詳細な条件及び評価方法について、以下説明する。
【0062】
密閉空間100を450m
3の空間とし、密閉空間100の過酸化水素ガスの濃度を低濃度帯とするとともに、密閉空間100内に複数のBI、及び、腐食を確認する金属片を配置する。
【0063】
培養容器は、殺菌開始から2時間、4時間、6時間の経過時に密閉空間から回収し、生算菌数測定を行い、殺菌効果Dの評価を行う。
【0064】
金属片は、鉄材料、例えば普通鋼を用いる。金属片は、殺菌開始から2時間、4時間、6時間の経過時に密閉空間から回収し、ガス曝露環境外、本実施例では室内環境下に24時間放置後、目視により腐食の有無を評価する。
【0065】
また、制御手段14により、実施例1乃至実施例12のDHv値をそれぞれ算出する。
【0066】
次に、これら条件下における実施例1乃至実施例12の結果を示す。なお、
図5に実施例1乃至実施例12の結果を示す。
(実施例1)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは0.6Dであり、DHv値は4,312であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0067】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0068】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは1.8Dであり、DHv値は23,496であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0069】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0070】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果D=3.5Dであり、DHv=64,304であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0071】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしていないが、DHv>55,000であった。
【0072】
(実施例2)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは1.0Dであり、DHv値は7,437であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0073】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0074】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは4.1Dであり、DHv値は49,011であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0075】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0076】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は77,858であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0077】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0078】
(実施例3)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは2.7Dであり、DHv値は49,243であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0079】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0080】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは5.5Dであり、DHv値は49,243であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0081】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0082】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は91,222であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0083】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0084】
(実施例4)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは4.4Dであり、DHv値は10,291であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0085】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0086】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は56,569であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0087】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0088】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は81,791であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0089】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0090】
(実施例5)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは5.2Dであり、DHv値は9,599であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0091】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0092】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は69,796であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0093】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0094】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は97,652であった。なお、金属片に若干のくすみが見られた。
【0095】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0096】
(実施例6)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は12,182であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0097】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしているものの、DHv<55,000であった。
【0098】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は57,105であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0099】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0100】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は110,586であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0101】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0102】
(実施例7)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは3.4Dであり、DHv値は9,881であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0103】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0104】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは5.6Dであり、DHv値は43,504であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0105】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0106】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は83,297であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0107】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0108】
(実施例8)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは4.8Dであり、DHv値は14,273であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0109】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしておらず、DHv<55,000であった。
【0110】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は57,545であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0111】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0112】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は101,218であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0113】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0114】
(実施例9)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は19,656であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0115】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしているものの、DHv<55,000であった。
【0116】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は77,547であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0117】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0118】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は156,463であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0119】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0120】
(実施例10)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は23,056であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0121】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0122】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は97,000であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0123】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0124】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は188,000であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0125】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0126】
(実施例11)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は42,083であり、金属片に腐食は見られなかった。
【0127】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0128】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は135,902であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0129】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0130】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は254,288であった。金属片に明らかな錆が見られた。
【0131】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0132】
(実施例12)
殺菌開始から2時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は59,204であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0133】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0134】
殺菌開始から4時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は164,442であった。金属片に若干のくすみが見られた。
【0135】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0136】
殺菌開始から6時間においては、殺菌効果Dは>6Dであり、DHv値は266,266であった。金属片に明らかな錆が見られた。
【0137】
要求される殺菌効果(D>6D)を満たしており、且つ、DHv>55,000を満たしていた。
【0138】
なお、実施例1において、6時間殺菌してDHv値がDHv0値よりも大きい値(DHv=64,304)と得られたものの、殺菌効果Dが>6Dを満たしていなかった。実施例7において、6時間殺菌してDHv値がDHv0値よりも大きい値(DHv=83,297)と得られたものは、殺菌効果Dが>6Dを満たしていた。
【0139】
これらの実施例によれば、実施例1及び実施例7のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が20%の環境下においては、実施例7のように、過酸化水素ガスの濃度を上げて殺菌時間を長く確保することで、所定の殺菌効果Dを得られる。しかし、過酸化水素ガスの濃度が低い条件下においては、所定の殺菌効果Dを得られることができない場合がある。
【0140】
例えば、実施例1及び実施例7において、過酸化水素水の供給量又は殺菌時間を増加することで、所定の殺菌効果Dを得ることが可能であるが、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は、20%よりも高いことが望まれる。
【0141】
実施例2及び実施例8のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が30%の環境下においては、DHv>DHv0の条件下で、殺菌効果Dは>6Dを確保することができた。
【0142】
実施例3及び実施例9のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が40%の環境下においては、DHv>DHv0の条件下で、殺菌効果Dは>6Dを確保することができた。なお、実施例9で6時間殺菌を行った場合には、金属片に若干のくすみが確認できたものの、4h時間殺菌を行った場合にも、殺菌効果Dは6Dを確保するとともに、DHv>DHv0を満たしている。このため、本実施形態の殺菌方法により、DHv0値を55,000とし、制御手段14により、DHv>DHv0を判断後に発生装置11を停止させることで、腐食を防止可能となる。
【0143】
実施例4及び実施例10のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が50%の環境下においては、DHv>DHv0の条件下で、殺菌効果Dは>6Dを確保することができた。なお、実施例10で4時間及び6時間殺菌を行った場合には、金属片に若干のくすみが確認できたものの、4h時間殺菌を行った場合には、DHv=97,000である。このため、本実施形態の殺菌方法により、DHv0値を55,000とし、制御手段14により、DHv>DHv0を判断後に発生装置11を停止させることで、腐食を防止可能となる。
【0144】
実施例5及び実施例11のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が60%の環境下においては、DHv>DHv0の条件下で、殺菌効果Dは>6Dを確保することができた。なお、実施例5で6時間、並びに、実施例11で4時間及び6時間殺菌を行った場合には、金属片に若干のくすみが確認できた。しかし、実施例5で4時間殺菌を行った場合には、腐食が見られなかった。また、実施例11で2時間殺菌を行った場合には、DHv=42,083であって、4時間殺菌を行った場合には、DHv=135,902である。このため、本実施形態の殺菌方法により、DHv0値を55,000とし、制御手段14により、DHv>DHv0が判断後に発生装置11を停止させることで、腐食を防止可能となる。
【0145】
実施例6及び実施例12のように、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が70%の環境下においては、DHv>DHv0の条件下で、殺菌効果Dは>6Dを確保することができた。なお、実施例6で4時間、並びに、実施例12で2時間及び4時間殺菌を行った場合には、金属片に若干のくすみが確認できた。また、実施例12で6時間殺菌を行った場合には、金属片に明らかな腐食が見られた。殺菌開始時の密閉空間100内の湿度が70%の環境下においては、DHv>DHv0であれば、殺菌効果Dは>6Dを得られるものの、金属片の腐食が発生する虞が高い。このため、金属等の腐食の防止が必要な環境下においては、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は70%よりも低いことが望ましい。また、湿度が70%以上では、より腐食が発生するものと思料できる。
【0146】
これらのように本実施の形態に係る殺菌装置1を用いた殺菌方法においては、実施例1乃至実施例12の結果にも記載したように、DHv>DHv0の範囲であって、且つ、殺菌開始時の密閉空間100の湿度は20%より高く、70%以下であることが好ましい。さらに言えば、湿度は、金属の腐食を防止するためには、DHv0値を、例えば上述のように、55,000とした場合には、30%から60%の範囲内が好ましい。また、さらに言えば、腐食を確実に防止するためには、殺菌開始時の密閉空間100内の湿度は、30%から50%の範囲内がよく、当該湿度を30%から50%とする場合には、例えば、DHv0値を、55,000よりも高く設定しても、殺菌効果Dを確実に>6Dを満足でき、且つ、腐食を防止できる。
【0147】
このように構成された殺菌装置1によれば、殺菌効果Dは、密閉空間100の相対湿度が30%以上であって、且つ、DHv0値が55,000以上であれば、過酸化水素ガスの濃度を必要以上に上げることなく>6Dを満たすことが可能となる。
【0148】
また、殺菌装置1を用いた殺菌方法として、密閉空間100の殺菌条件である、室内空間100内の過酸化水素ガスの濃度、密閉空間100内の湿度及び殺菌時間に基づいて数式(1)から求められるDHv値が、閾値であるDHv0値よりも大きい場合に、発生装置11を停止させる。このように、殺菌方法は、殺菌を行う条件に基づいて、DHv値及びDHv0値に基づいて管理することで、容易に殺菌効果Dを得ることが可能となる。
【0149】
上述したように本発明の一実施の形態に係る殺菌装置1及び殺菌方法によれば、予め設定されたDHv0値及び殺菌の条件から求められるDHv値の関係に基づいて発生装置11を停止させることで、殺菌効果を容易に管理することが可能となる。
【0150】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、殺菌装置1を用いた殺菌方法では、記憶手段41に記憶されたDHv0値は、55,000であって、このDHv0値を、殺菌条件で求められるDHv値と比較して、殺菌の継続及び停止を判断する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、DHv0値は、55,000よりも大きい値であってもよい。例えば、55,000を超えれば、適宜設定可能である。しかし、腐食性を考慮すると、殺菌開始時の湿度を30%以上50%以下とした閾値は、DHv0=55,000とすることが望ましい。
【0151】
また、上述した例では、殺菌効果Dが>6Dを満たすDHv0値として、55,000以上である旨を説明したが、これに限定されない。例えば、殺菌効果Dが、5Dであれば良い場合には、当該5Dを満足できるDHv0値を求め、当該求めたDHv0値をDHv値が超えた場合に、殺菌が完了したと判断すればよい。同様に、殺菌効果の基準も、無菌性保障レベル(Sterility assurance level:SAL)を採用するのではなく、他の規格を採用してもよい。即ち、過酸化水素ガスを用いて密閉空間100を殺菌する構成であれば、本実施形態のように、過酸化水素ガスの濃度及び密閉空間の湿度を管理し、閾値を求め、当該閾値と実際の殺菌時のDHv値とを比較して、DHv値が閾値を超えた場合には、殺菌が完了したと推測すればよい。
【0152】
また、上述した例では、発生装置11は、供給手段23で供給した過酸化水素水をプレートヒータ24で蒸発させて過酸化水素ガスを発生させる構成を説明したが、過酸化水素ガスを発生可能であれば、これら構成に限定されない。
【0153】
また、上述した例では、ガス供給装置12は、圧送手段32を発生装置11の外郭部材21内に配置する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、配管31内に配置する構成であってもよく、また、複数設ける構成でもよい。また、ガス供給装置12は、密閉空間100内に、過酸化水素ガスを効率よく循環させる装置や、均一に分布させる装置を有する構成であってもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 密閉空間に過酸化水素ガスを供給するガス供給装置と、
前記密閉空間内の前記過酸化水素ガスの濃度、及び、前記密閉空間内の湿度を検出可能な検出器と、
前記密閉空間内の所定の殺菌効果が得られる閾値を記憶する記憶手段と、
前記密閉空間内に供給された前記過酸化水素ガスの濃度の変化の経過時間による第1積分値、並びに、前記密閉空間内の湿度の変化の経過時間による第2積分値の積を算出し、前記算出した前記第1積分値及び前記第2積分値の積を前記閾値と比較し、前記第1積分値及び前記第2積分値の積が前記閾値以上の場合に、前記密閉空間内が前記所定の殺菌効果を有すると判断する制御手段と、
を備えることを特徴とする殺菌装置。
[2] 前記密閉空間内の、前記過酸化水素ガスの供給の開始時の湿度は、相対湿度で30%以上70%以下であることを特徴とする[1]に記載の殺菌装置。
[3] 前記閾値は、前記密閉空間の所定の殺菌効果が得られる、前記第1積分値及び前記第2積分値の積を算出し、前記算出した前記第1積分値及び前記第2積分値の積であることを特徴とする[1]に記載の殺菌装置。
[4] 前記制御手段は、前記密閉空間内が前記所定の殺菌効果を有していると判断後、前記供給装置を停止させることを特徴とする[1]に記載の殺菌装置。
[5] 前記密閉空間内の前記過酸化水素ガスの濃度は、低濃度帯であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の殺菌装置。
[6] 過酸化水素ガスを密閉空間に供給し、
前記密閉空間に供給された前記過酸化水素ガスの濃度、及び、前記密閉空間内の湿度を検出し、
前記密閉空間内に供給された前記過酸化水素ガスの濃度の変化の経過時間による第1積分値、並びに、前記密閉空間内の湿度の変化の経過時間による第2積分値の積を算出し、
前記算出した前記第1積分値及び前記第2積分値の積を前記閾値と比較し、
前記第1積分値及び前記第2積分値の積が閾値以上の場合に、前記密閉空間内が所定の殺菌効果を有すると判断する
ことを特徴とする殺菌方法。
[7] 前記密閉空間内の、前記過酸化水素ガスの供給の開始時の湿度は、相対湿度で30%以上70%以下であることを特徴とする[6]に記載の殺菌方法。
[8] 前記閾値は、前記密閉空間の所定の殺菌効果が得られる、前記第1積分値及び前記第2積分値の積を算出し、前記算出した前記第1積分値及び前記第2積分値の積であることを特徴とする[6]に記載の殺菌方法。
[9] 前記密閉空間内が前記所定の殺菌効果を有していると判断後、前記供給装置を停止させることを特徴とする[6]に記載の殺菌方法。
[10] 前記密閉空間内の前記過酸化水素ガスの濃度は、低濃度帯であることを特徴とする[6]乃至[9]のいずれかに記載の殺菌方法。