特許第5953059号(P5953059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953059
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/04 20060101AFI20160630BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H02K23/04
   H02K13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-23765(P2012-23765)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-162664(P2013-162664A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
(72)【発明者】
【氏名】蟹谷 智憲
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−303362(JP,A)
【文献】 特開2001−167917(JP,A)
【文献】 特開平08−265994(JP,A)
【文献】 特開2007−335676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/04
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークと、前記ヨーク内に固定される永久磁石と、整流子を有し、前記ヨーク内で回転可能に支持されるロータと、前記整流子に摺接して前記整流子に電流を供給するブラシと、を備える電動モータであって、
前記永久磁石の表面には、電気絶縁性の被膜が形成されると共に、前記電気絶縁性皮膜上に、前記電気絶縁性の皮膜より動摩擦係数が低い低摩擦抵抗性の被膜が形成され、前記電気絶縁性の被膜は、前記低摩擦抵抗性の被膜よりも厚く形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記低摩擦抵抗性の被膜は、フッ素樹脂の被膜であることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記ヨークの内面形状に沿う外面形状を有し、前記ヨーク内に挿入される磁石ホルダをさらに備え、
前記永久磁石は、前記磁石ホルダに保持されて、前記ヨーク内に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁抵抗の低下を防止できる電動モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きの電動モータは、永久磁石を固定したヨーク(ケース)内に、ベアリングを介して回転可能に支持されたロータを有し、ロータに備えた整流子にブラシから電流を与えることによりロータを回転させるものである。
【0003】
このような電動モータでは、ロータの回転に伴ってブラシが整流子により磨耗し、この磨耗粉が電動モータ内に蓄積する。磨耗粉は導電性があるため、これがブラシや整流子の周囲に付着すると、ロータのシャフトを支持するベアリングとブラシや整流子との間の絶縁抵抗が低下するという問題が生じうる。
【0004】
このような問題に対して、ベアリングと整流子との間に設けられモータの内部空間をベアリング室と整流子室とに区画する隔壁シートを設けたモータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−350457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術は、ブラシと整流子との摺動により発生する磨耗粉がベアリング室等へ侵入することを防止して、ブラシ又は整流子とロータとの間の絶縁性を確保している。
【0007】
ところで、ブラシ又は整流子とヨークとの間の絶縁抵抗は、ヨークの表面に塗装等の被膜を形成することにより確保されることが一般的である。
【0008】
一方で、従来、永久磁石の表面には絶縁処理はされていなかった。そのため、ブラシが整流子により磨耗し、この磨耗粉が電動モータ内に蓄積すると、ブラシと永久磁石との間に磨耗粉による導通経路が形成され、ブラシと永久磁石との間に絶縁抵抗が低下してしまう。このような状況において、ヨークの内周面に永久磁石を圧入する等の作業により永久磁石がヨークの内周面を擦り、ヨークの内周面の被膜が削られていた場合は、削られた部分に接する永久磁石とヨークとの間の絶縁抵抗が低下する。この結果、ブラシとヨークとの間の絶縁抵抗が低下するという問題があった。
【0009】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたものであって、ブラシの磨耗粉により絶縁抵抗が低下することを防止できる電動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ヨークと、ヨーク内に固定される永久磁石と、整流子を有し、ヨーク内で回転可能に支持されるロータと、整流子に摺接して整流子に電流を供給するブラシと、を備える電動モータであって、永久磁石の表面には、電気絶縁性の被膜が形成されると共に、電気絶縁性皮膜上に、電気絶縁性の皮膜より動摩擦係数が低い低摩擦抵抗性の被膜が形成され、電気絶縁性の被膜は、低摩擦抵抗性の被膜よりも厚く形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、永久磁石の表面には、永久磁石側から電気絶縁性の被膜と低摩擦抵抗性の被膜とが順に積層される。電気絶縁性の被膜は永久磁石の表面を絶縁して、ブラシとの間の絶縁抵抗を確保する。また、低摩擦抵抗性の被膜は、永久磁石とヨークとの間の摩擦抵抗を低減するので、永久磁石をヨークの内部に挿入するときに永久磁石によってヨークの表面(例えば表面に施された絶縁性の被膜)が削られることが防止される。このような構成により、永久磁石とヨークとの間の絶縁抵抗を確保できるので、ヨークの内部にブラシの磨耗粉が蓄積した場合にも、ブラシとヨークとの間の絶縁抵抗が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の電動モータの回転軸方向の断面図である。
図2】本発明の実施形態の電動モータの図1におけるA−A断面図である。
図3】本発明の実施形態の電動モータの図2におけるB−B断面図の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の電動モータ1の回転軸方向の断面図である。
【0015】
本実施形態の電動モータ1は、円筒形状であって一方の端部が開口された有底形状を成す金属性のヨーク10と、このヨーク10に回転可能に支持されるロータ20とを備える。ヨーク10は、電動モータ1のケースを構成する。
【0016】
ヨーク10の内周面には、永久磁石11が装着される。ヨーク10の開口部分には、樹脂等の絶縁性素材で形成されたブラケット12が装着される。
【0017】
ロータ20は、ロータシャフト21と、ロータシャフト21に固定される整流子22と、ロータコア23とを備える。ロータコア23は、薄板状の電磁鋼板が回転軸方向に積層されて構成される。ロータコア23には巻線24が巻回されている。ロータシャフト21は、ヨーク10の底部側に固定されるベアリング13とブラケット12に固定されるベアリング14とを介して、ヨーク10に対して回転可能に支持される。
【0018】
整流子22の外周側には、複数の電極22aが固定される。電極22aには、それぞれ巻線24が接続される。電動モータ1では、ブラケット12に装着されるブラシ15と整流子22の電極22aとが摺接しており、ブラシ15を介して巻線24に電流が供給される。これにより、巻線24に電流が流れ、ロータコア23に発生する磁力と永久磁石11の磁力との反発力が回転方向に働いて、ロータ20が回転駆動される。
【0019】
ブラシ15は、ブラケット12に形成されたブラシホルダ31に支持される。ブラシ15は、ブラシホルダ31に内装されたバネ32により整流子22側に押し付けられて電極22aに摺接する。図示しない電源からの電流はハーネス33、リードプレート34、銅編み線35を介してブラシ15に供給され、ブラシ15に摺接する整流子22の電極22aを介して巻線24に供給される。ブラシ15は、一般に、カーボン又はカーボンと銅とを主成分とする導電性材料により形成される。なお、ブラシ15の数や整流子22の電極22aの極数は、電動モータ1の特性や性能に応じて適宜設定される。
【0020】
ブラケット12は、例えば樹脂により形成される。ブラケット12には、ブラシホルダ31と、ベアリング14のアウターレース(外輪)41が嵌合するベアリング取付部12aと、が形成される。ロータシャフト21の外周面にはベアリング14のインナレース(内輪)42が嵌合されており、ロータシャフト21の先端部はブラケット12の軸穴を介して外側に突出している。
【0021】
ヨーク10の内周面には、図2に示すようにセグメント形状の一対の永久磁石11(11a、11b)が互いに向かい合って装着される。永久磁石11は、磁石ホルダ50に装着された状態でヨーク10の内部に圧入固定される。永久磁石11は、例えばフェライト磁石により構成される。なお、永久磁石11の表面には、後述するように電気絶縁性の被膜110aと低摩擦抵抗性の被膜110bとが形成されている。
【0022】
次に、電動モータ1の構成を、図2及び3を参照して説明する。
【0023】
図2は本発明の実施形態の電動モータ1の図1におけるA−A断面図であり、図3は電動モータ1の図2におけるB−B断面の斜視図である。なお、図2及び図3では、ロータ20は省略されている。
【0024】
磁石ホルダ50の外形は、ヨーク10の内周面形状に沿うような円筒形状を有する。磁石ホルダ50の側壁部には、セグメント形状の永久磁石11が装着される一組の窓状の磁石装着部51a、51bが形成されている。磁石装着部51a、51bに一組の永久磁石11a、11bが装着されることで、永久磁石11a、11bが磁石ホルダ50に固定される。
【0025】
永久磁石11a、11bは、それぞれ、略同一形状のセグメント形状(C形状)を有している。永久磁石11a、11bの外周側(セグメント形状の膨出側)の曲面は、ヨーク10の内周面形状に沿うような形状となっている。永久磁石11a、11bそれぞれの表面には、後述するように電気絶縁性の被膜110aと低摩擦抵抗性の被膜110bとが形成されている。
【0026】
磁石ホルダ50に一組の永久磁石11a、11bを装着した場合には、この磁石ホルダ50の外周面の形状は、ヨーク10の内周面の形状と略一致する。このような形状とすることで、磁石ホルダ50がヨーク10の内周面に圧入固定される。
【0027】
なお、磁石ホルダ50の一端側はヨーク10の底部へと向かう絞り構造となっており(図1参照)、この絞り構造の中央部には、ベアリング13のアウターレース43の外周面に嵌合するベアリング取付部50aが形成されている。
【0028】
本実施形態の電動モータ1は、次のような手順により組立てられる。
【0029】
まず、磁石ホルダ50の磁石装着部51a、51bのそれぞれに、永久磁石11a、11bが装着される。そして、永久磁石11a、11bが装着された磁石ホルダ50がヨーク10の内部へと挿入される。
【0030】
図3の点線で示すように、ヨーク10の開口部から磁石ホルダ50がヨーク10の内部へと挿入される。磁石ホルダ50は、その底部がヨーク10の底部に突き当たるまで挿入される。このとき、磁石ホルダ50及び永久磁石11の外周面が、ヨーク10の内周面を滑りながらヨーク10の底部に突き当たるまで挿入される。
【0031】
ヨーク10の内部に永久磁石11を装着した磁石ホルダ50が圧入されることにより、ヨーク10の内周面に永久磁石11の外周面が密着する。これにより、一組の永久磁石11a、11bの磁力がヨーク10により結合される。なお、磁石ホルダ50とヨーク10との間に、予め接着剤を塗布しておいてもよい。
【0032】
次に、予めベアリング13が装着されたロータ20が、ヨーク10の内部に挿入される。磁石ホルダ50の底部のベアリング取付部50aには、このベアリング13が装着される。
【0033】
次に、リードプレート34、銅編み線35、ブラシ15、ベアリング14等が予め装着されたブラケット12が、ヨーク10の開口部に装着される。その後、ブラケット12とヨーク10とが、例えばボルト及びナットにより固定される。
【0034】
このように構成される電動モータ1において、従来、次のような問題が発生していた。
【0035】
電動モータ1が回転するときに、整流子22の電極22aとブラシ15とが摺接するので、電極22aよりも軟質の材質であるブラシ15が磨耗する。ブラシ15の磨耗により発生する磨耗粉は、ヨーク10の内部に蓄積する。
【0036】
電動モータ1の組立て時に、磁石ホルダ50は、その外面がヨーク10の内面をすべりながら圧入される。ヨーク10は導電性の金属で形成されているので、漏電を防止するために、ヨーク10の表面には、電気絶縁性の被膜(例えばカチオン電着塗装による被膜)が予め形成されている。ここで、従来は、磁石ホルダをヨークに圧入するとき、ヨークの内周面の形状の公差、表面の塗装の微細な凹凸、磁石ホルダや永久磁石の外周面の公差、磁石ホルダの圧入時の傾き等の原因により、磁石ホルダに装着された永久磁石がヨークの内周面の被膜を削ってしまう可能性があった。
【0037】
このような従来の構成では、ヨークの内周面の被膜が削られると、ヨークを形成する金属が露出するので、ヨークの金属部分が露出した箇所と永久磁石との間の絶縁抵抗が低下する。永久磁石はフェライト等の導電性のある材質で形成されているので、ヨークと永久磁石との間の絶縁抵抗が低下する。このような状況で、ブラシの磨耗粉が蓄積すると、ブラシと永久磁石との間に電気の導通経路が発生して、ブラシとヨークとの間の絶縁抵抗が低下する虞があった。
【0038】
そこで、本発明の実施形態では、磁石ホルダ50をヨーク10内に圧入するとき、ヨーク10の金属部分が露出することがないように、次のように構成した。
【0039】
前述の電動モータ1の組立てに先立って、永久磁石11の表面(外周面及び内周面)には、電気絶縁性の被膜110aと低摩擦抵抗性の被膜110bとが積層される。まず、電気絶縁性の被膜110aは、永久磁石11の表面にカチオン電着塗装を行うことによって形成される。
【0040】
カチオン電着塗装とは、水溶性のカチオン塗料を満たした電着層に被塗装物を浸漬して、被塗装物を陰極とし、電着層中に設置した陽極との間に電流を印加することにより被塗装物の表面に塗料を析出させて被膜を形成するものである。電気絶縁性のカチオン塗料を用いることによって、被塗装物に電気絶縁性の被膜110aを形成することができる。
【0041】
永久磁石11には、その表面にカチオン電着塗料による電気絶縁性の被膜110aが形成される。この被膜110aの厚さは、永久磁石11とヨーク10との間の絶縁抵抗を十分に確保できる程度の厚みに設定される。具体的には、電動モータ1の定格電圧に対して絶縁性を確保するために必要な厚さであり、さらに、コストや製造工程の効率を勘案した適切な厚さ(例えば30[μm])とする。
【0042】
なお、カチオン電着塗装に限らず、永久磁石11の表面に電気絶縁性の被膜110aを形成するものであればよく、例えば電気絶縁性の塗料を永久磁石11の表面に吹き付け塗装を行って被膜110aを形成してもよい。また、アルミ酸化膜のように永久磁石11の表面に化学的な処理を行って電気絶縁性の被膜110aを形成してもよい。
【0043】
カチオン電着塗装による電気絶縁性の被膜110aを形成した後、永久磁石11の表面に低摩擦抵抗性の被膜110bをさらに積層して形成する。本実施形態では、永久磁石11の表面に形成された電気絶縁性の被膜110aの上層に、フッ素樹脂による被膜110bを形成する。
【0044】
低摩擦抵抗性の被膜110bを形成するフッ素樹脂には、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・バーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン共重合体樹脂(ETFE)等が用いられる。
【0045】
このようなフッ素樹脂による被膜110bを永久磁石11の表面にさらに形成することにより、永久磁石11の外周面の摩擦抵抗(動摩擦係数)が低減される。特に、フッ素樹脂は、カチオン電着塗装による電気絶縁性の被膜110aよりも摩擦抵抗が小さい被膜110bを形成することができる。また、カチオン電着塗装による電気絶縁性の被膜110aよりも表面硬度が高い被膜110bを形成できる。
【0046】
永久磁石11の外周面の摩擦抵抗を低減することにより、永久磁石11の外周面とヨーク10の内周面との摩擦抵抗が小さくなり、ヨーク10の内部に磁石ホルダ50を圧入するときのすべり性が高くなる。これにより、永久磁石11の外周面がヨーク10の内周面を摺動しやすくなり、ヨーク10の内周面の被膜が削られてしまうことや、永久磁石11の外周面の被膜(110a、110b)が削られてしまうことが防止される。
【0047】
フッ素樹脂の被膜110bは、電気絶縁性の被膜110aの表面の摩擦抵抗を低減できる程度の厚みに形成することが望ましい。具体的には、コストや製造工程の効率により適切な厚さ(例えば1[μm]〜5[μm])とする。なお、フッ素樹脂の被膜110bの形成方法は、吹き付けや塗布など、永久磁石11の表面に低摩擦抵抗性の被膜110bを形成できるものであればどのような方法でもよい。
【0048】
このように、永久磁石11の表面にカチオン電着塗装による電気絶縁性の被膜110aを形成し、さらに低摩擦抵抗性の被膜110bを積層して形成することにより、磁石ホルダ50の圧入時のすべり性が高くなり、磁石ホルダ50に保持された永久磁石11の外周面がヨーク10の内周面の被膜を削ってしまうことや、永久磁石11の外周面の被膜(110a、110b)が削られてしまうことが防止される。
【0049】
以上のように、本発明の実施形態の電動モータ1は、ヨーク10と、ヨーク10に固定される永久磁石11と、ヨーク10内で回転可能に支持されるロータ20と、を備えるブラシ付きの電動モータである。永久磁石11の表面には、永久磁石11側から電気絶縁性の被膜110aと低摩擦抵抗性の被膜110bとが順に積層されている。永久磁石11の表面に電気絶縁性の被膜110aが形成されることにより、永久磁石11とヨーク10との間の絶縁抵抗が確保される。また、永久磁石11の外周面に低摩擦抵抗性の被膜110bが形成されることにより、永久磁石11がヨーク10の内部に圧入されるときの摩擦抵抗が低減されて、永久磁石11の外周面がヨーク10の内周面の被膜を削ってしまうことや、永久磁石11の表面の被膜(110a、110b)が削られてしまうことが防止される。
【0050】
このように構成することで、ヨーク10の内周面の被膜と永久磁石11の外周面に形成された電気絶縁性の被膜110aとが損なわれることなく、ヨーク10の内部にブラシ15の磨耗粉が蓄積した場合であっても、ブラシ15とヨーク10との間の絶縁抵抗が低下することを防止できる。
【0051】
電気絶縁性の被膜110aはカチオン電着塗装より形成される被膜であり、低摩擦抵抗性の被膜110bはフッ素樹脂の被膜である。これらの被膜は従来の手法を用いることによって形成することができるので、電動モータ1の製造コストを上昇させることがない。
【0052】
また、永久磁石11は、ヨーク10の内面形状に沿う外面形状を有する磁石ホルダ50に保持されて、ヨーク10の内部に圧入される。複数の永久磁石11を磁石ホルダ50によって一度の作業によりヨーク10内に挿入することができるので、電動モータ1の製造コストを低減できる。
【0053】
なお、本発明の実施形態では、電動モータ1を例として説明したが、これに限らず、発電機等の回転電機にも適用することができる。
【0054】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0055】
1 電動モータ
10 ヨーク
11a、11b 永久磁石
12 ブラケット
13 ベアリング
14 ベアリング
15 ブラシ
20 ロータ
21 ロータシャフト
22 整流子
22a 電極
23 ロータコア
24 巻線
50 磁石ホルダ
51a、51b 磁石装着部
110a 被膜
110b 被膜
図1
図2
図3