特許第5953065号(P5953065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5953065-ハイブリッドシステム用モータユニット 図000002
  • 特許5953065-ハイブリッドシステム用モータユニット 図000003
  • 特許5953065-ハイブリッドシステム用モータユニット 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953065
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム用モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   H02K9/19 ZZHV
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-35156(P2012-35156)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-172556(P2013-172556A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】砂渡 聖明
(72)【発明者】
【氏名】長岡 学
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼井 抄太郎
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−016240(JP,A)
【文献】 特開2009−027800(JP,A)
【文献】 特開2002−165410(JP,A)
【文献】 実開昭61−205241(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸に連結されるロータを取り囲む環状のステータを有する油冷式のモータと、前記モータが収容されるモータ室が形成されたハウジングとを備えるハイブリッドシステム用モータユニットであって、
前記ハウジングは、前記出力軸を回転自在に軸支して該出力軸の軸方向で前記モータを挟む一対の軸支部と、前記一対の軸支部の外周部を互いに接続する筒状部とを有し、前記一対の軸支部と前記筒状部とによって前記モータ室が形成され、
前記ステータは、前記筒状部に内接する環状のヨーク部を有し、
前記モータ室は、前記ヨーク部に対する一方の前記軸支部側の領域であってオイルパンに連通する第1領域と、前記ヨーク部に対する他方の前記軸支部側の領域である第2領域とを有し、
前記ヨーク部は、前記軸方向に積層された複数の鋼板によって構成され、該軸方向に延びる挿通孔を有する積層体と、前記挿通孔に挿通され、前記積層体から突出する部位が拡開された筒状のかしめ部材と、前記かしめ部材の内周面によって形成され、前記出力軸に対する重力方向の部位に前記第1領域と前記第2領域とを連通させる連通路とを有し、
前記筒状部には、前記ヨーク部の内径よりも大きな内径を有し、前記軸方向で当接する前記ヨーク部が締結される締結部が一体的に形成されており、
前記締結部は、前記軸方向で前記かしめ部材が対向する部位に、前記ヨーク部から突出する前記かしめ部材が収容され、且つ前記出力軸側が開放された逃げ部が形成されている
ことを特徴とするハイブリッドシステム用モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータを駆動動力源とするハイブリッドシステムに適用されるハイブリッドシステム用モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、トラック等の大型自動車においても、エンジン及びモータを駆動動力源とするハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド自動車が増えつつある。こうした大型のハイブリッド自動車では、例えば、モータがエンジンとトランスミッションとの間に配設されており、エンジンのクランク軸にクラッチを介して連結された回転軸がモータの出力軸となっている。そして、発進時、加速時、登坂時等にエンジンの出力を補うようにモータが駆動される。
【0003】
一方、大型のハイブリッド自動車では、一般的な乗用車に比べて大型のモータが必要とされるため、駆動時におけるモータの発熱量も大きくなる。そのため、モータの冷却方式には、例えば特許文献1に記載のように、空冷式よりも冷却効率が高い方式であって、冷却媒体として絶縁性を有するオイルを用いた油冷式が採用される。
【0004】
特許文献1に開示されたハイブリッドシステム用モータユニットは、モータが収容されるモータ室が形成されたハウジングを備えている。ハウジングは、ベアリングを介してモータの出力軸を回転自在に軸支して該出力軸の軸方向でモータを挟む一対の軸支部と、一対の軸支部の外周部を互いに接続する筒状部とを有し、これら一対の軸支部と筒状部とによってモータ室が画定されている。
【0005】
一方、モータは、出力軸に連結されるロータと、ロータの外周部を取り囲む環状のステータとを備えている。ステータは、筒状部に内接した状態で該筒状部に対して固定されている。ステータは、筒状部に固定される環状のヨーク部とヨーク部の内周部からステータの内側に向けて突出する複数のティース部とを有するステータコアを有し、上記ティース部の各々にステータコイルが巻装されている。
【0006】
そして、筒状部に形成されたオイルパンのオイルがオイルポンプによって圧送され、オイルフィルタやオイルクーラ等を通じてモータ室に供給される。モータ室に供給されたオイルは、オイルパンへと戻る過程においてモータの冷却やベアリングへの給油を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−126320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1において、モータ室は、モータに対する一方の軸支部側の領域でオイルパンに連通しており、また、ステータコアのヨーク部は、ハウジングの筒状部に内接した状態で固定されている。そのため、モータ室の底部では、モータに対する一方の軸支部側の領域である第1領域と他方の軸支部側の領域である第2領域との間におけるオイルの流通がステータコアのヨーク部によって阻害されている。その結果、モータ室の底部には、他方の軸支部、筒状部、ステータコアのヨーク部によって意図しないオイル溜りが形成される。
【0009】
こうしたオイル溜りのオイルは、ステータコアにおける発熱の影響を受け続けるとともに、ヨーク部の内周面のうちで最も重力方向側に配置される部位と略同じ高さに液面を有している。そして、オイル溜りのオイルは、モータ冷却後のオイルが新たに供給されるに従って、ヨーク部の内周面を伝って第1領域へ流れ出ることになる。
【0010】
一方、大型のハイブリッド自動車においては、一般的な乗用車に比べて大型のモータが必要とされるため、モータの大型化にともなって径方向におけるヨーク部の幅も大きくなる。すなわち、オイル溜りの液面が上昇することとなり、上記オイル溜りの容積も大きくなる。容積が大きいオイル溜りでは、新たなオイルが供給されるにしても既存のオイルの温度変化が小さくなるため、ステータコアの温度と略等しい温度に維持されやすくなる。すなわち、モータ室の底部においてステータコアが冷却され難くなるため、上述したオイル溜りは、モータの冷却効率を低下させる要因となっていた。
【0011】
なお、こうしたオイル溜りは、例えば第2領域とオイルパンとを連通させるオイル通路が筒状部に形成されることによって解消されるものの、筒状部の形状や機械的な強度の観点からそのオイル通路を形成することが困難な場合もあった。また、こうした問題は、ハイブリッド自動車等の車両に限らず、ハイブリッドシステムを備えた建機や船舶において共通する問題である。
【0012】
本開示の技術は、モータ室の底部に形成される意図しないオイル溜りによってモータの冷却効率が低下することを抑えたハイブリッドシステム用モータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示におけるハイブリッドシステム用モータユニットの態様の一つは、出力軸に連結されるロータを取り囲む環状のステータを有する油冷式のモータと、前記モータが収容されるモータ室が形成されたハウジングとを備えるハイブリッドシステム用モータユニットであって、前記ハウジングは、前記出力軸を回転自在に軸支して該出力軸の軸方向で前記
モータを挟む一対の軸支部と、前記一対の軸支部の外周部を互いに接続する筒状部とを有し、前記一対の軸支部と前記筒状部とによって前記モータ室が形成され、前記ステータは、前記筒状部に内接する環状のヨーク部を有し、前記モータ室は、前記ヨーク部に対する一方の前記軸支部側の領域であってオイルパンに連通する第1領域と、前記ヨーク部に対する他方の前記軸支部側の領域である第2領域とを有し、前記ヨーク部は、前記軸方向に積層された複数の鋼板によって構成され、該軸方向に延びる挿通孔を有する積層体と、前記挿通孔に挿通され、前記積層体から突出する部位が拡開された筒状のかしめ部材と、前記かしめ部材の内周面によって形成され、前記出力軸に対する重力方向の部位に前記第1領域と前記第2領域とを連通させる連通路とを有し、前記筒状部には、前記ヨーク部の内径よりも大きな内径を有し、前記軸方向で当接する前記ヨーク部が締結される締結部が一体的に形成されており、前記締結部は、前記軸方向で前記かしめ部材が対向する部位に、前記ヨーク部から突出する前記かしめ部材が収容され、且つ前記出力軸側が開放された逃げ部が形成されている。
【0014】
本開示のハイブリッドシステム用モータユニットによれば、連通路は、ヨーク部のうちで出力軸に対する重力方向の部位に形成されることから、ヨーク部の内周面におけるどの部位よりも重力方向側に配置されている。そのため、モータ室の底部において第2領域から第1領域へと流れるオイルは、上記連通路を優先的に流れることになる。そのため、オイル溜りが形成されるとしても、該オイル溜りの液面をヨーク部の内周面よりもモータ室の底部側に設定することが可能である。その結果、連通路が形成されていない場合に比べて、オイル溜りの容積を小さくすることが可能である。それゆえに、オイル溜りによってモータの冷却効率が低下することを抑えることが可能である。
【0016】
本開示のハイブリッドシステム用モータユニットの態様の一つによれば、かしめ部材は、ヨーク部を構成する複数の鋼板を固定する固定部材、及び第2領域と第1領域とを連通させる連通路として機能する。そのため、ヨーク部が複数の鋼板による積層体であって、且つ複数の鋼板がかしめ部材によって固定される場合、連通路が別途形成される構成に比べて、ステータの構成を簡易なものとすることができる。
【0018】
本開示のハイブリッドシステム用モータユニットの態様の一つによれば、モータ室の底部において、締結部の内周面がヨーク部の内周面よりも重力方向側に配置されている。また、ヨーク部から突出しているかしめ部材が収容される逃げ部は、出力軸側が開放されている。すなわち、かしめ部材を通じて第2領域から流れてきたオイルは、逃げ部を通じて第1領域へと流れ出ることになる。その結果、例えば筒状部への圧入によりステータが固定される場合に比べて、オイル溜りの容積を小さくしつつ、筒状部に対してステータをしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示におけるハイブリッドシステム用モータユニットの一実施形態の断面構造を示す断面図であって、重力方向に沿った断面構造を示す図。
図2】一実施形態における供給槽の平面構造を示した平面図。
図3】一実施形態における連通路付近における断面構造を示した拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示におけるハイブリッドシステム用モータユニットの一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
図1に示されるように、ハイブリッドシステム用モータユニット10のハウジング11には、出力軸12を有するモータ13が収容されている。このモータ13の出力軸12は、一端部にエンジンのクランク軸が接続され、他端部にトランスミッションの入力軸が接続される。
【0021】
ハウジング11を構成する筒状部14は、モータ13の出力軸12の軸方向に延びる筒状をなしており、出力軸12の内挿される軸支部としての軸支壁15が中央部に一体的に形成されている。軸支壁15は、出力軸12に近づくにつれてモータ13に近づくような多段状に形成され、該出力軸12をベアリング16を介して回転自在に軸支している。軸支壁15には、該軸支壁15によって形成される凹部17の開口を覆うフロントリテーナ18が固定されている。フロントリテーナ18は、軸支壁15に連結される環状の鍔部19と、鍔部19の中心部からモータ13の反対側へ延びて出力軸12が遊挿される円筒部20とを有している。
【0022】
また、筒状部14には、モータ13に対する軸支壁15の反対側における端部に、出力軸12の内挿される軸支部としてのリアリテーナ25がガスケットを介して連結されている。ハウジング11を構成するリアリテーナ25は、出力軸12に近づくにつれてモータ13に近づくような多段状に形成され、該出力軸12をベアリング26を介して回転自在に軸支している。このリアリテーナ25には、該リアリテーナ25によって形成される凹部28の開口を覆うとともにオイルシール27を介して出力軸12が内挿されるオイルシールリテーナ29がガスケットを介して固定される。
【0023】
すなわち、ハウジング11には、これら筒状部14、軸支壁15、リアリテーナ25によって、モータ13が収容されるモータ室30が形成されている。このモータ室30は、モータ13に対して軸支壁15側の領域である第1領域31と、モータ13に対してリアリテーナ25側の領域である第2領域32とに仮想的に分割される。
【0024】
一方、モータ13を構成するロータ34は、永久磁石が埋設されており、出力軸12にスプライン結合されたロータフランジ35に連結されている。また、モータ13を構成するステータ36は、ロータ34の外周部を取り囲む環状をなしており、ハウジング11の筒状部14に固定されている。
【0025】
ステータ36のステータコア37は、筒状部14に内接する外周部を有する環状のヨーク部38と該ヨーク部38の内周部から内側へ向かって突出する複数のティース部39とを有しており、このティース部39の各々にステータコイル40が巻装されている。なお、図1では、説明の便宜上、ステータコア37のハッチングを省略して示している。
【0026】
このステータコア37は、ヨーク部38とティース部39とが一体形成された鋼板を出力軸12の軸方向に積層させた積層体である。ステータコア37は、出力軸12の軸方向に延びる挿通孔に挿通されたかしめ部材44によって、複数の鋼板が互いに連結されている。かしめ部材44は、出力軸12の軸方向における挿通孔の長さよりも長く形成されており、ステータコア37から突出する部分が拡開されることによって、複数の鋼板を互いに連結している。そして、このかしめ部材44の内周面によって、モータ室30の第1領域31と第2領域32とを連通させる連通路45が形成される。かしめ部材44は、ヨーク部38の周方向に所定の間隔で配設されており、そのうちの一つが、出力軸12に対する重力方向下方に配設されている。
【0027】
こうした構成のステータ36は、ヨーク部38に挿通されるボルト等の締結部材を用いて筒状部14の締結部47に対して固定される。筒状部14の締結部47は、ステータコイル40との干渉を避けるべく、筒状部14の内径をヨーク部38の外径よりも小さく且つヨーク部38の内径よりも大きな内径まで縮径させる段差であって、ステータコア37のヨーク部38が出力軸12の軸方向で当接する部位である。すなわち、ステータ36は、リアリテーナ25が取り外された状態で第2領域32側から筒状部14へと挿入され、やがて締結部47に当接することで軸方向の位置決めがなされる。そして、締結部材によって締結部47に締結されることによって筒状部14に対して固定される。この締結部47には、出力軸12の軸方向でかしめ部材44に対向する位置に、ヨーク部38から突出するかしめ部材44の端部を収容するとともに出力軸12側が開放された逃げ部48が形成されている。
【0028】
こうした構成のモータ13は、電動機として機能するときには、図示されないバッテリに蓄電された電力がインバータによって三相交流に変換され、その三相交流がステータ36に供給されることにより、ロータ34を介して出力軸12に回転トルクを与える。また、モータ13は、発電機として機能するときには、出力軸12の回転にともなうロータ34の回転によってステータ36に発生する三相交流をインバータで直流電流に変換してバッテリに供給する。
【0029】
モータ13の冷却に用いられるオイルは、モータ室30の第1領域31に形成されたオイルパン50に貯留されている。オイルパン50のオイルは、凹部17内に配設されるオイルポンプ51によって吸入される。オイルポンプ51は、該オイルポンプ51に内挿される出力軸12にスプライン結合される駆動ギヤと、該駆動ギヤに従動する従動ギヤとを有するギヤポンプである。そして、オイルポンプ51は、出力軸12の回転によって駆動ギヤが駆動されることによって、吸入配管52を通じてオイルパン50のオイルを吸入し、その吸入したオイルを、オイルフィルタやオイルクーラが配設された外部配管を通じて、筒状部14の頂部に形成された供給槽55に圧送する。
【0030】
供給槽55は、その上面開口部が上面カバー56によって密閉されており、モータ室30に供給される直前のオイルを一旦貯留する。筒状部14には、供給槽55に貯留されたオイルをモータ室30に供給すべく、供給槽55とモータ室30の第1領域31とを連通させる供給通路61と、供給槽55とモータ室30の第2領域32とを連通させる供給通路62とが形成されている。供給通路61,62は、供給槽55の底面から重力方向に沿って延びる通路であって、図2に示されるように、筒状部14には3つの供給通路61と3つの供給通路62とが形成されている。
【0031】
ここで、例えば第1領域31と第2領域32に対して互いに異なる配管部材でオイルを供給した場合には、各配管部材における圧力損失の違いに応じて、各領域31,32に対するオイルの流入圧にばらつきが生じてしまう虞がある。この点、モータ室30に供給されるオイルを一旦供給槽55に貯留させることによって、各供給通路61,62からモータ室30に供給されるオイルの流入圧が均一化される。そして、供給槽55に圧送されたオイルは、供給通路61,62からモータ13へ向けて滴下され、再びオイルパン50に戻るまでの過程において、ロータ34及びステータ36を冷却するとともにベアリング16,26への給油を行なう。
【0032】
次に、上述した構成のハイブリッドシステム用モータユニット10の作用について図3を参照しながら説明する。なお、図3では、説明の便宜上、ステータコア37のハッチングを省略して示している。
【0033】
図3に示されるように、供給通路62を通じてモータ室30の第2領域32に供給されたオイルは、モータ13のロータ34及びステータ36を冷却したのち、第2領域32におけるモータ室30の底部へ向かって流れる。第2領域32の底部には、ステータコア37、筒状部14、リアリテーナ25によってオイル溜り65が形成される。
【0034】
一方、このオイル溜り65は、かしめ部材44の連通路45を通じて、締結部47の逃げ部48に連通しているため、該オイル溜り65の液面65aは、ヨーク部38の内周面38aよりも重力方向下方に配置されている締結部47の内周面47aと同じ高さとなる。
【0035】
そして、新たなオイルがオイル溜り65に供給されると、オイル溜り65のオイルの一部がかしめ部材44の連通路45を通じて逃げ部48に移動する。これにより、オイル溜り65の液面65aが上昇して逃げ部48からオイルが溢れ出す。そして、その溢れ出たオイルがオイルパン50に流入する。
【0036】
すなわち、ヨーク部38に連通路45を設けることによって、第1領域31と第2領域32との間におけるオイルの流通がヨーク部38の内周面38aよりもモータ室30の底側で行なわれることになる。そのため、たとえオイル溜り65が形成されるとしても、その液面65aを、ヨーク部38の内周面38aよりもモータ室30の底側に設定することが可能である。その結果、オイル溜り65の容積を小さくすることが可能であることから、該オイル溜り65によってモータの冷却効率が低下することを抑えることが可能である。
【0037】
しかも、ヨーク部38のうちで出力軸12に対する重力方向の部位に連通路45が配設されていることから、該部位とは異なる部位に連通路45が形成される場合よりもモータ室30の底側で第1領域31と第2領域32とを連通させることが可能である。
【0038】
以上説明したように、上記実施形態のハイブリッドシステム用モータユニット10によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)ヨーク部38は、出力軸12に対する重力方向の部位に、第1領域31と第2領域32とを連通させる連通路45を有している。そのため、オイル溜り65が形成されるとしても、その液面65aをヨーク部38の内周面38aよりもモータ室30の底側に設定することが可能となる。その結果、連通路45が形成されていない場合に比べて、オイル溜り65の容積を小さくすることが可能であることから、該オイル溜り65によってモータ13の冷却効率が低下することを抑えることが可能である。
【0039】
(2)連通路45は、ステータコア37を構成する複数の鋼板を固定するかしめ部材44の内周面によって形成されている。そのため、ステータコア37が複数の鋼板の積層体であって、且つ複数の鋼板がかしめ部材によって固定されるという構成の下では、上記連通路45が別途形成される構成に比べて、ステータ36の構成を簡易なものとすることができる。
【0040】
(3)締結部47には、出力軸12の軸方向でかしめ部材44が対向する部位に、ヨーク部38から突出したかしめ部材44の端部を収容するとともに出力軸12側が開放された逃げ部48が形成されている。そのため、連通路45を通過したオイルは、逃げ部48を通じてオイルパンへ流入することになる。その結果、例えば、筒状部14への圧入によりステータ36が固定される場合に比べて、オイル溜り65の容積を小さくしつつ、筒状部14に対してステータ36をしっかりと固定することができる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・ステータコア37は、筒状部14に内接するヨーク部38を有していればよい。そのため、例えば、筒状部14に対するステータコア37の固定方法は、締結部47に対してステータコア37が締結される方法に限らず、例えば筒状部14に対してステータコア37が圧入されることによって固定されてもよい。
【0042】
・締結部47は、モータ13に対するオイルパン50の反対側に形成されていてもよい。こうした構成であっても、ヨーク部38の内周面38aよりも重力方向側に連通路45が形成されていることから、連通路45が形成されていない場合に比べて、オイル溜り65の液面65aをモータ室30の底側に設定することが可能である。
【0043】
・ステータコア37は、複数の鋼板を積層させた積層体でなくてもよい。
・連通路45は、かしめ部材44の内周面によって形成されているものに限らず、例えば鋼板の積層体がかしめ部材44とは異なる部材を互いに連結される場合には、ヨーク部38そのものに連通路45が貫通形成されていてもよい。
【0044】
・連通路45は、出力軸12に対する重力方向の部位に形成されていればよい。そのため、連通路45は、出力軸12の軸方向に沿って延びるものに限らず、例えば第1領域31における開口が第2領域32における開口よりもモータ室30の底側に形成されていてもよい。
【0045】
・また、連通路45は、ヨーク部38に形成されて第1領域31と第2領域32とを連通させるものであればよく、例えばヨーク部38の外周面に形成された溝であってもよい。
【0046】
・上記実施形態のモータユニットは、ハイブリッド自動車等の車両に限らず、エンジン及びモータを原動機とするハイブリッドシステムを備える建機や船舶に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…ハイブリッドシステム用モータユニット、11…ハウジング、12…出力軸、13…モータ、14…筒状部、15…軸支部、16…ベアリング、17…凹部、18…フロントリテーナ、19…鍔部、20…円筒部、25…リアリテーナ、26…ベアリング、27…オイルシール、28…凹部、29…オイルシールリテーナ、30…モータ室、31…第1領域、32…第2領域、34…ロータ、35…ロータフランジ、36…ステータ、37…ステータコア、38…ヨーク部、38a…内周面、39…ティース部、40…ステータコイル、44…かしめ部材、45…連通路、47…締結部、47a…内周面、48…逃げ部、50…オイルパン、51…オイルポンプ、52…吸入配管、55…供給槽、56…上面カバー、61,62…供給通路、65…オイル溜り、65a…液面。
図1
図2
図3