(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の脱酸素装置では、被処理水中の溶存酸素を窒素ガスにより十分に吸収させることはできず、冷却水の循環系を構成する各装置や配管を腐食させている場合があり、さらなる溶存酸素濃度の低減が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、窒素ガスと被処理水中の溶存酸素との吸収効率を向上させることができる脱酸素装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の脱酸素装置は、(1)脱気ガスを被処理水に接触させることにより、被処理水中の溶存酸素を脱気ガスに吸収させ、被処理水中の溶存酸素濃度を低下させる脱酸素装置であって、下端が開口した容器形状をなし、処理対象となる被処理水の水面下に少なくとも下端が没して内部に密閉空間を形成する気液接触塔と、前記密閉空間内に脱気ガスを供給して該密閉空間内に脱気ガスを充満させる脱気ガス供給部と、供給される被処理水を前記密閉空間内で霧状に散布する被処理水散布部と、を有することを特徴とする。
(2)上記(1)の構成において、前記脱気ガスと前記被処理水は上方に向けて噴出することを特徴とする。
(3)上記(1)または(2)の構成において、前記気液接触塔は、被処理水を貯水する貯水槽内に設置することを特徴とする。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、前記気液接触塔の周壁の下部に、前記密閉空間内の気体を槽外に排気する排気開口部を設け、前記気液接触塔内おける被処理水の液面レベルを前記開口部よりも上方に設定したことを特徴とする。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、前記被処理水散布部に供給する被処理水中に、脱気ガスを予め混合させるエジェクターを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載された発明によれば、(1)窒素ガスと被処理水中の溶存酸素との交換効率を向上させることができる。
(2)本発明の請求項2に記載された発明によれば、霧状に散布された被処理水と脱気ガスとの接触時間を長くするとともに、密閉空間内に充満された脱気ガスを常にフレッシュな状態に維持することができる。
(3)本発明の請求項3に記載された発明によれば、貯水槽内で貯水される被処理水を溶存酸素の低い状態とすることができる。
(4)本発明の請求項4に記載された発明によれば、気液接触塔内を密閉空間とし、かつ霧状に散布された被処理水中の溶存酸素を吸収した脱気ガスを排気開口部から気液接触塔の外へと排出することができる。
(5)本発明の請求項5に記載された発明によれば、被処理水噴霧部より散布される被処理水の粒径を微細にし、脱気ガスと被処理水の接触面積を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、以下に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1の概略図であり、
図1(A)は、
図1におけるA部拡大図であり、
図2は第1実施形態の脱酸素装置4の概略図である。ここで、
図1(A)における粗いドットを霧状に散布された被処理水とし、細かいドットは貯水槽内に貯水されている冷却水(被処理水)とする。また、
図2において、構成を明確にするために、気液接触塔42を透明として、内部の被処理水散布部41が視認できるものとしてもよい。さらに、貯水槽3の長さ方向をx軸、貯水槽3の幅方向をy軸、貯水槽3の高さ方向をz軸とする。
【0012】
図1に示すように、冷却水循環システム1は、冷却水循環系11と脱酸素処理水循環系12とからなる。冷却水循環系11は、冷却対象設備2、冷却対象設備2を冷却する冷却水(被処理水)を貯水する貯水槽3、貯水槽3から冷却対象設備2へ冷却水を送水する循環ポンプ5、循環ポンプ5より送水された冷却水の流量を調節する第2流量調節弁73、冷却対象設備2から熱を吸収して暖まった冷却水冷却する冷却機6(熱交換手段)およびこれらの装置を接続する循環配管7からなる。この冷却対象設備2としては、例えばプレス成形機等が例示される。
【0013】
脱酸素処理水循環系12は、循環ポンプ5と第2流量調節弁73の間に位置する分岐接続配管71、分岐接続配管71から分岐された被処理水(冷却水)の流量を調節する第1流量調節弁72、第1流量調節弁72を介して流入する被処理水中の溶存酸素濃度を低下させる脱酸素装置4からなる。
【0014】
貯水槽3は、
図1に示すように、冷却水循環系11において循環する冷却水および脱酸素処理水循環系12において循環して溶存酸素濃度が低下した冷却水(被処理水)を内部に貯水する。この貯水槽3において貯水された冷却水および被処理水を循環ポンプ5によって、冷却対象設備2および脱酸素装置4へと送水する。なお、この循環ポンプ5から冷却対象設備2へ送水される冷却水の流量および循環ポンプ5から脱酸素装置4へ送水される被処理水の流量は、第1流量調節弁72および第2流量調節弁73の開口度を調節して、最適な流量となるように調節する。
【0015】
次に、本実施形態の脱酸素装置4に関して説明する。脱酸素装置4は、
図1に示す破線で囲んだ領域とし、被処理水散布部41、気液接触塔42および脱気ガス供給部43からなる。
【0016】
被処理水散布部41は、
図2に示すように、第1流量調節弁72の下流側における循環配管7に接続する散布接続配管411と、散布接続配管411に接続し、被処理水を密閉空間421内で微細な霧状にして散布する散布ノズル部412からなる。散布ノズル部412は、後述の気液接触塔42内に挿入した状態で、散布ノズル固定部材(不図示)により気液接触塔42に固定されている。この散布ノズル部412より被処理水を霧状にして散布することで、気液接触塔42内に充満した脱気ガスと被処理水の接触面積が大きくすることができる。
【0017】
この散布ノズル部412は、上方を向いた状態で気液接触塔42に固定した構成としても良い。この構成により、散布ノズル部412より散布された被処理水は上方への移動および下方への移動(自重落下)する際において、脱気ガスと被処理水を接触させて、被処理水中の溶存酸素を脱気ガスで吸収することができる。すなわち、本実施形態の脱酸素装置4は、単に水滴状の被処理水を落下させて、脱気ガスと被処理水を接触させるだけの脱酸素装置4に比べて、被処理水と脱気ガスとの接触距離(接触時間)を長くすることができる。このため、本実施形態の脱酸素装置4は、装置の高さを低く設定しても、貯水槽3内に貯水される被処理水の溶存酸素濃度を低くすることができる。
【0018】
気液接触塔42は、
図1、1(A)および2に示すように、下端が開口した容器形状をなし、処理対象となる被処理水の水面423下に少なくとも下端が没して内部に密閉空間421を形成するものである。具体的には、
図1および1(A)に示すように、気液接触塔42の内部に脱気ガスが充満した状態として、気液接触塔42の全部を、貯水槽3内に貯水した被処理水に水没させて、接触槽固定部材(不図示)により貯水槽3に固定する。このように貯水槽3に対して気液接触塔42を固定することで、気液接触塔42の下方に被処理水の水面423を形成し、気液接触塔42内を密閉空間421とする。この構成により、脱気ガスが気液接触塔42内に過剰に収容され、気液接触塔42内の圧力が高まった場合においては、気液接触塔42の下方に形成された被処理水の水面423を下方に押し下げて、気液接触塔42内の圧力が過度に上昇することを抑制することができる。なお、気液接触塔42の全部を貯水槽3内に貯水された冷却水に水没させた状態として説明したが、気液接触塔42の一部のみを貯水槽3内に水没させた状態としても良い。
【0019】
ここで、気液接触塔42の周壁の下部に、
図1(A)に示すように、密閉空間421内の気体を気液接触塔42外に排気する排気開口部422を設け、気液接触塔42内における被処理水の液面レベルを排気開口部422よりも上方に設定する構成とすると良い。この構成により、気液接触塔42内に密閉空間421を形成し、被処理水中の溶存酸素を吸収した脱気ガスを排気開口部422より排出することができる。また、排気開口部422のみから気液接触塔42内の脱気ガスを排出させるため、脱気ガスの気泡径を大きくして、気液接触塔42の外へ排出された脱気ガスを貯水槽3内に貯水した被処理水(冷却水)の水面に浮上させることができる。この構成により、貯水槽3内に貯水された冷却水を冷却対象設備2等に循環させる循環ポンプ5内に脱気ガスの気泡が流入することを抑制し、循環ポンプ5が損傷することを防ぐこともできる。
【0020】
脱気ガス供給部43は、脱気ガス生成部431と脱気ガス送気管432からなる。脱気ガス生成部431は、脱気ガスを生成する装置であり、例えば脱気ガスを内部に充填したガスボンベなども含まれる。脱気ガス送気管432は、脱気ガス生成部431の供給口に一端を接続し、他端を気液接触塔42内に挿入する状態として、送気管固定部材(不図示)により気液接触塔42に固定されている。この脱気ガス生成部431より生成される脱気ガスとしては、例えば窒素ガスなどの不活性ガスを用いることができる。また、脱気ガス送気管432を上方に向けて気液接触塔42に対して固定することで、気液接触塔42内における溶存酸素を吸収した脱気ガスを排出開口部422から容易に排出することができる。
【0021】
上記構成により、本実施形態の脱酸素装置4は、脱気ガス生成部431により生成された脱気ガスを気液接触塔42内に充満した状態で、被処理水を散布ノズル部412により霧状に散布することで、被処理水の水滴径が小さくなり、同一水量あたりの水滴の表面積を大きくすることで脱気ガスとの接触面積を大きくし、被処理水中の溶存酸素濃度を低くすることができる。
【0022】
また、本実施形態の脱酸素装置4は、気液接触塔42内に脱気ガスを充満した状態で、被処理水と脱気ガスとを接触させるため、貯水槽3内に貯水された被処理水(冷却水)中に脱気ガスの細かい気泡が発生しない。このため、気液接触塔42内の脱気ガスが、気泡として冷却水循環系11に循環させる循環ポンプ5に到達することはなく、このためキャビテーションが発生することがない。
【0023】
次に本実施形態を適用した冷却水循環システム1の脱酸素処理方法について、
図3を用いて説明する。初期状態は、気液接触塔42内に脱気ガスが充満しており、貯水槽3内に所定量の被処理水が貯水された状態とする(ステップS1)。また、第1流量調節弁72および第2流量調節弁73はそれぞれ開状態とする。
【0024】
まず、貯水槽3内に貯水された被処理水は、循環ポンプ5により第1流量調節弁72および第2流量調節弁73を通り、脱酸素装置4側および冷却対象設備2側のそれぞれに連続的に送水される(ステップS2)。脱酸素装置4側へ送水された被処理水は、散布接続配管411を通り、散布ノズル部412より気液接触塔42内に霧状に散布される(ステップS3A)。この霧状に散布された被処理水は、気液接触塔42内の脱気ガスにより溶存酸素を吸収され、被処理水の水面423へ落下する。また、この霧状に散布された被処理水の一部は、気液接触塔42の内壁面に付着し、気液接触塔42の内壁面を伝い、被処理水の水面423へ落下するまで、溶存酸素を脱気ガスに吸収させる。このようにして、散布ノズル部412で霧状に散布された被処理水に溶け込む酸素は、気液接触塔42内に収容された脱気ガスにより吸収されるため、貯水槽3内に貯水される被処理水中の溶存酸素濃度が低くなる。
【0025】
脱気ガス生成部431は、脱気ガス送気管432を介して、脱気ガスを気液接触塔42内に連続的に供給する(ステップS4A)。この脱気ガス生成部431からの脱気ガスの供給に伴い、被処理水に溶け込む酸素を吸収した脱気ガスは、気液接触塔42の下方に移動し、排気開口部422より気液接触塔42の外へと排出される。この構成により、気液接触塔42内の脱気ガスを、常にフレッシュな状態を維持して、気液接触塔42内における脱気ガスによる脱酸素処理を継続することができる。
【0026】
また、冷却対象設備2側に送水された冷却水(被処理水)は、冷却対象設備2へと供給され、冷却対象設備2内の熱を冷却水により吸収する(ステップS3B)。そして、この冷却対象設備2内の熱を吸収して暖まった冷却水は、循環ポンプ5により冷却機6へ送られて、冷却される(ステップS4B)。
【0027】
上記のように、散布ノズル部412から散布された被処理水および冷却機6により冷却された冷却水は、貯水槽3内に貯水される(ステップS5)。この貯水槽3内に貯水された被処理水(冷却水)は、循環ポンプ5により再度、脱酸素装置4および冷却対象設備2へと連続的に送水される(ステップS1およびS2)。
【0028】
このように、脱酸素装置4により貯水槽3内に貯水される被処理水の溶存酸素濃度を低くするとともに、溶存酸素濃度および温度が低い被処理水(冷却水)を冷却対象設備2へ循環させることで、冷却対象設備2、冷却機6および循環配管7が腐食することを防ぐことができる。また、これらの装置および循環配管7の腐食を抑制することで、鉄の酸化物が被処理水中に溶解して水の汚濁(赤水発生など)が発生することを防ぐことができる。
【0029】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態の脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1の概略図であり、
図5は第2実施形態の脱酸素装置4の概略図であり、
図6は第2実施形態におけるエジェクター44のx−z断面図である。座標系は第1実施形態と同じとする。
【0030】
第2実施形態の脱酸素装置4は、第1実施形態の脱酸素装置4において、第1流量調節弁72と散布接続配管411の間にエジェクター44を設け、脱気ガス送気管432の途中には、脱気ガス生成部431から生成された脱気ガスを、エジェクター44へ送気する第1脱気ガス送気管74と、気液接触塔42内に送気する第2脱気ガス送気管75とに分岐する送気分岐点76を有する。その他の構成については、第1実施形態の脱酸素装置4と同じであるため、同じ部材には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0031】
エジェクター44は、分岐接続配管71から供給される被処理水(冷却水)に微細な気泡状態の脱気ガスを混合するものである。具体的な構成としては、エジェクター44は、
図6に示すように、被処理水流入路441、脱気ガス流入路443および混合水流出路444を有する。
【0032】
被処理水流入路441の下流側は、先細りの縮径部442aと末広がりの拡径部442bとからなり、被処理水流入路441から流出する被処理水の速度を増加させる。この被処理水の速度増加に伴って、エジェクター44内を負圧とし、脱気ガス流入路443から脱気ガスをエジェクター44内に流入させる。この流入させた脱気ガスと速度が増加した被処理水とがエジェクター44内で混合することで、脱気ガスが微細な気泡状態で、被処理水と混合して、混合水流出路444から被処理水散布部41へと流出する。
【0033】
この構成により、被処理水散布部41からの被処理水の散布前において脱気ガスの混合により被処理水を細かくすることで、被処理水散布部41から散布された被処理水の粒径を、第1実施形態における被処理水散布部41から散布された被処理水の粒径よりもさらに微細にすることができる。これにより、被処理水散布部41から散布された被処理水と気液接触塔42内に充満した脱気ガスとの接触面積を大きくすることができる。
【0034】
また、散布ノズル部412より気液接触塔42内に霧状に散布された被処理水と混合した脱気ガスの気泡は、気液接触塔42の内壁面に付着する際、または気液接触塔42内の空間に散布される際に、被処理水から分離し、気液接触塔42内に放出される。また、仮に霧状に散布された被処理水が脱気ガスの気泡を含んだ状態で被処理水の水面423に落下した後においても、気液接触塔42の底部内壁面に規制されて、脱気ガスの気泡は徐々に気液接触塔42の上方へ浮上し、循環ポンプ5まで脱気ガスの気泡が到達することを抑制する。
【0035】
ここで、
図5に示すように、送気分岐点76と被処理水散布部41の間に第3流量調節弁45を設ける構成としても良い。エジェクター44内が負圧状態となるため、第2脱気ガス送気管75に送気される脱気ガスの量に比べて、第1脱気ガス送気管74に送気される脱気ガスの量が多くなる。このように、脱気ガス生成部431で生成された脱気ガスが多量に第1脱気ガス送気管74内に流入すると、第2脱気ガス送気管75を介して気液接触塔42内に供給される脱気ガスの量が少なくなり、気液接触塔42内において被処理水に溶け込む酸素を脱気ガスにより十分に吸収することができなくなる。このため、第1脱気ガス送気管74の途中に第3流量調節弁45を設けて、エジェクター44へ流入する脱気ガスの量を規制する。この構成により、気液接触塔42内に収容される脱気ガスの量を十分に確保した状態で、エジェクター44にも脱気ガスを送気することができる。
【0036】
また、
図5に示すように、第3流量調節弁45の下流に逆止弁46を設ける構成としても良い。この構成により、被処理水流入路441からエジェクター44内に流入する被処理水の量が、脱気ガス流入路443からエジェクター44内に流入する脱気ガスの量に比べて過剰に多くした場合においても、エジェクター44内に流入した被処理水が脱気ガス生成部431へ逆流することを防ぐことができる。
【0037】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態の脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1の概略図であり、
図8は第3実施形態の脱酸素装置4の概略図である。座標系は第1実施形態と同じとする。
【0038】
第3実施形態の脱酸素装置4は、第2実施形態における被処理水散布部41の構成に代えて吐出部47とし、第2実施形態における第2ガス送気管75を省略したものである。その他の構成は、第2実施形態の脱酸素装置4と同じであるため、同じ部材には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0039】
吐出部47は、
図8に示すように、一端をエジェクター44に接続し、他端を気液接触塔42内に位置させて上方に向けた状態で気液接触塔42に固定されている。第2実施形態で説明したように、脱気ガス生成部431から生成された脱気ガスおよび循環ポンプ5より供給された被処理水は、エジェクター44において、微細な気泡状態の脱気ガスと混入し、被処理水中に脱気ガスが混入した状態として、吐出部47へと送水される。この混入状態にある被処理水と脱気ガスは、吐出部47より吐出され、被処理水に混入された脱気ガスの一部は、気液接触塔42の密閉空間421内に放出される。また、被処理水中に残った脱気ガスの気泡についても、気液接触塔42の下部内壁面に規制され、気液接触塔42の外へ移動することが抑制され、気液接触塔42内に放出させる。この構成により、本実施形態の脱酸素装置4は、被処理水に脱気ガスの気泡を混入した状態においても、脱気ガスが気液接触塔42内において放出される構成であるため、循環ポンプ5まで微細な気泡状態の脱気ガスが流入することを抑制することができる。また、本実施形態の脱酸素装置4は、微細な気泡状態の脱気ガスをエジェクター44から吐出部47までの間で、混入させるため、被処理水に溶け込む酸素を脱気ガスで吸収して、貯水槽3内に貯水される被処理水の溶存酸素濃度を低くすることができる。
【0040】
なお、第3実施形態の脱酸素装置4においても、被処理水流入路441からエジェクター44内に流入する被処理水が逆流することを防ぐために、脱気ガス生成部431からエジェクター44の間に逆止弁46を設けても良い。
【0041】
(脱酸素性能比較確認試験)
第1実施形態乃至第3実施形態の脱酸素装置4における脱酸素性能を確認するために確認試験を行った。第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態における脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1を、
図1、4および7に示し、それぞれを第1実施例、第2実施例および第3実施例とする。但し、今回は脱酸素性能を確認することが目的であるため、冷却対象設備2および冷却機6を省略した。そして、第1実施例乃至第3実施例の脱酸素装置4における脱酸素性能を確認するために、
図9に示すように脱気ガス生成部431により生成される脱気ガスを直接貯水槽3に注入して脱酸素処理を行う脱酸素装置(以下、比較例という)についても脱酸素性能を確認する試験を行った。ここで、第1実施例乃至第3実施例および比較例における脱酸素装置4の試験条件としては、貯水槽3内に140[L]の水道水を貯水し、循環ポンプ5にクルンドフォス社のCH12−40を用い、脱気ガス生成部431より生成されるガスとして窒素ガスを用いた。そして、脱気ガス生成部431より貯水槽3へ流入する窒素ガスの流入量および貯水槽3から装置全体および脱酸素装置4へ循環する被処理水の循環量に関しては表1に示す通りとした。貯水槽3内に酸素濃度計を設け、10分毎に測定を行い、110分間計測を行った。
【0042】
上記のような試験条件の下に行った第1実施例乃至第3実施例および比較例における冷却水循環システム1の試験結果を
図10に示す。
図10を見て分かるように、第1実施例乃至第3実施例の脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1は、脱酸素処理を開始してから110分間で、被処理水における溶存酸素濃度が約2[mg/L]よりも低い値まで下がることが分かる。これに対して、比較例における脱酸素装置4を適用した冷却水循環システム1は、脱酸素処理を開始してから110分経過しても、貯水槽3内に貯水される被処理水の溶存酸素濃度が6.5[mg/L]までしか下がらないのが分かる。すなわち、第1実施例乃至第3実施例の脱酸素装置4は、110分間の脱酸素処理により、比較例における溶存酸素濃度の約半分以下にすることができる。
【0043】
上記試験結果より、単に窒素ガスを貯水槽3内に混入させる比較例に比べて、第1実施例乃至第3実施例の脱酸素装置4は、窒素ガスと被処理水との接触面積を増やすことで、貯水槽3内に貯水された被処理水の溶存酸素濃度を低くすることができる。
【0044】
本発明を第1実施形態乃至第3実施形態に基づいて説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。