(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有し且つ内腔壁に検出試薬が付着した2以上の管状中空材を、長手軸方向及び矩形の向きが一致し且つ隣り合う管状中空材の1つの側壁面同士が略接触するように配列し、配列した管状中空材の両外側に、板状非中空部材を、長手軸方向が一致し且つ隣り合う板状非中空材及び管状中空材の側壁面同士が略接触するように更に配置して保持する工程、
(b)隣り合う側壁面同士を接着剤で接着して管状中空材の集合体を形成し、同時に又は続いて、隣り合う管状中空材間で接着面の上方及び/又は下方に生じ得る凹部に接着剤を充填する工程、
(c)管状中空材の集合体の上面及び下面を透明フィルムで被覆する工程、
(d)管状中空材の集合体を管状中空材の長手軸方向に1箇所以上で所望の長さに切断して複数個のキャピラリアレイを得る工程
を含み、板状非中空材の長手軸に垂直な横断面における配列方向の幅を、製造されるキャピラリアレイの外形寸法の幅が配列する管状中空材の数に関わらず同一となるように設定することを特徴とする、請求項3に記載のキャピラリアッセイ用キットに含まれるキャピラリアレイを製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<アッセイ用キャピラリアレイの製造方法>
本発明の製造方法は、内腔壁に検出試薬が付着した2以上のキャピラリからなるアッセイ用キャピラリアレイの製造方法であって、下記の工程
(a)長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有し且つ内腔壁に検出試薬が付着した2以上の管状中空材を、長手軸方向及び矩形の向きが一致し且つ隣り合う管状中空材の1つの側壁面が略接触するように配列して保持する工程、
(b)隣り合う側壁面同士を接着剤で接着して管状中空材の集合体を形成し、同時に又は続いて、隣り合う管状中空材間で接着面の上方及び/又は下方に生じ得る凹部に接着剤を充填する工程、
(c)管状中空材の集合体の上面及び下面を透明フィルムで被覆する工程、
(d)管状中空材の集合体を管状中空材の長手軸方向に1箇所以上で所望の長さに切断して複数個のキャピラリアレイを得る工程
を含むことを特徴とする。
【0013】
<工程(a)>
工程(a)は、長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有し且つ内腔壁に検出試薬が付着した2以上の管状中空材を、長手軸方向及び矩形の向きが一致し且つ隣り合う管状中空材の1つの側壁面が略接触するように配列(並置)して保持する工程である(
図1a、2a及び3a)。
【0014】
本発明の製造方法で使用する管状中空材は、アッセイ(例えば、イムノアッセイ(特にELISA)、核酸プローブを使用するアッセイ)で使用する光に対して透過性である材料で構成される。管状中空材を構成する材料の例としては、ガラス及びプラスチックが挙げられる。ガラスの具体例としては、シリカガラスが挙げられる。プラスチックの具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。管状中空材はガラス、特にシリカガラスで構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法において工程(a)で使用する管状中空材は、その長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有する。
内腔の横断面(長手軸に垂直な横断面)は、特に制限されず、円形を含む任意の形状であり得るが、矩形であることが好ましい。
【0016】
本発明において、「矩形」とは「方形」と同義であり、矩形の他、略矩形も包含するものとする。「略矩形」とは、矩形の4つの角のうち少なくとも1つが丸みを帯びているか又は面取りされている形状、及び、当該分野(管状材製造の分野)において実質的に「矩形」と認識される形状(例えば辺が円弧状のもの)を意味する。
外形が矩形であることで、管状中空材同士の接着面積が大きくなり、製造されたキャピラリアレイの機械的強度が増大する。また、外形及び内腔が矩形であることにより、製造されたキャピラリアレイにおいて、アッセイに利用する光の取り扱いが容易となる。すなわち、キャピラリ内腔への照射光(例えば、励起光)の照射及び/又は内腔からの射出光(例えば、蛍光又は化学発光)の検出が容易となる。横断面は正方形(略正方形を含む)であり得る。
【0017】
外形の横断面の一辺は、特に制限されないが、例えば50〜2000μm、好ましくは100〜1000μm、より好ましくは200〜500μmである。ここで、外形においていずれか角が丸みを帯びているか又は面取りされている場合の辺の長さは、いずれの角も丸みを帯びておらず面取りもされていない仮想の四角形についての辺の長さとする(内腔についても同様とする)。
配列すべき複数の管状中空材は、略同一の外形寸法を有していることが好ましい。「略同一の寸法」とは、同一の寸法、及び差が管材製造の分野において許容される程度であるものを意味する。
【0018】
内腔の横断面の一辺は、特に制限されないが、例えば10〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは50〜300μmである。内腔の横断面は正方形(略正方形を含む)であり得る。
管状中空材の長さは、特に制限されないが、例えば、一方の端の開口部から液体を内腔に毛細管現象により全長にわたって導入することが可能な長さであり得る。例えば、管状中空材は10cm〜1m程度の長さであり得る。
【0019】
本発明の製造方法に使用する管状中空材はまた、内腔壁に検出試薬が付着している。
内腔壁に付着された検出試薬は、内腔壁表面に固定されていてもよいし、されていなくてもよい(すなわち、内腔に試料等の液体が導入されたとき、内腔壁から該溶液中に放出されてもよい)。検出試薬は、内腔壁の表面(該表面が活性化されている場合も含む)に直接付着していてもよいし、内腔壁表面(少なくともその一部)に形成される層(この層は、検査対象の試料溶液に可溶であり、好ましくは水溶性である)中に保持されていてもよい。
【0020】
検出試薬は、検出すべき対象物と相互作用(例えば、結合又は錯体形成)することにより該対象物を捕捉し得る物質であってもよいし、検出対象物質と反応してそれ自体検出可能な物質(蛍光物質や化学発光物質)を生じ得る物質であってもよい。検出試薬は、例えば、タンパク質、(ポリ又はオリゴ)ペプチドや(ポリ又はオリゴ)ヌクレオチドなどの生体分子(特に、生体高分子)であり得る。検出試薬のより具体的な例としては、抗体又はその抗原結合部位を含むフラグメント(例えば、Fab、F(ab')
2、Fab'、Fv)、抗原、酵素基質(例えば、ベンゾイル-L-アルギニン 4-メチル-クマリル-7-アミドのようなペプチジル-MCA)、核酸(DNA若しくはRNA、又はPNAやLNAのような人工核酸)プローブ、アプタマー、レクチン、レセプターリガンド、イオノフォア(例えば、Na
+、K
+、Ca
+、Cl
-のイオノフォア)が挙げられる。
2以上の管状中空材の内腔壁はそれぞれ、種類及び/又は濃度(量)に関して異なる検出試薬が付着されていてもよい。
本発明の製造方法は常温常圧で実施し得るので、管状中空材の内腔壁に予め付着させた試薬(特に、生体分子)が製造過程で変性することを回避できる。
【0021】
内腔壁への検出試薬の付着は、当該分野において公知の手法により行うことができる。
例えば、付着は、検出試薬と内腔壁表面との間の相互作用(疎水性や静電力)を利用して該試薬を該表面に直接吸着させることにより行うことができる。この手法は、管状中空材がガラスで構成されている場合に特に適切である。付着はまた、活性化処理した内腔壁面と検出試薬が有する官能基との間で共有結合を形成することによっても行うことができる。表面の活性化は、例えば、アミノ基、メタクリル基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、アルデヒド基、SH基などの官能基を少なくとも1つ有する化合物(例えば、シランカップリング剤又はシランカップリング剤と他の化合物との組合せ)を用いる官能化であり得る。
【0022】
或いは、付着は、内腔壁表面に、検出試薬を含む親水性高分子(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロースなど)の層を形成することによって行うことができる。
いずれの場合にも、検出試薬と必要に応じて親水性高分子とを含有する溶液(溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノールなど)を内腔に充填した後、溶媒を乾燥(例えば風乾)等により除去することで、該試薬を内腔壁面に付着させることができる。溶液の内腔への充填は、例えば、毛細管現象を利用して容易に行うことができる。
【0023】
よって、本発明の製造方法は、1つの実施形態において、工程(a)の前に、管状中空材の内腔に、検出試薬を含有する溶液を充填し、次いで該溶液の溶媒を除去することにより検出試薬を内腔壁に付着させる工程を更に含む。
特にELISAに使用する場合には、アッセイ時に試料中の検出対象以外のタンパク質やペプチドが内腔壁に非特異的に吸着することを防止するために、検出試薬の付着後、内腔壁面に対して、ウシ血清アルブミン(BSA)などを用いるブロッキング処理を行ってもよい。
【0024】
工程(a)では、上記のような2以上の管状中空材を、長手軸方向及び矩形の向きが一致し且つ隣り合う管状中空材の1つの側壁面が略接触するように配列して保持する。
ここで、「矩形の向きが一致するように配列する」とは、管状中空材を配列させる基準面に、いずれの管状中空材も、外形(矩形)の長辺を構成する面が対向するように配向させるか又は短辺を構成する面が対向するように配向させて並置することを意味する。外形が略正方形である管状中空材は、いずれの面(両端面を除く)を基準面に対向させてもよい。
また、「略接触」状態とは、接触状態及び極近接した状態(例えば、間隙が毛細管現象により呈する程度のもの)を意味するが、但し、接触面間に接着剤を(例えば毛細管現象を利用して)供給できない程度にまで密着している状態を除くものとする。
【0025】
所望するアレイの数に等しい本数の管状中空材を配列する。このとき、それぞれの内腔壁に種類及び/又は濃度に関して異なる試薬が付着されている場合には、所望の順序で配列する。配列する管状中空材の数は、2以上であれば特に制限されず、例えば2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜40、より好ましくは5〜40、より好ましくは10〜40である。
【0026】
また、配列した管状中空材の少なくとも一方の外側(長手軸に垂直な方向に関して)に、板状非中空材を、長手軸方向が一致し且つ隣り合う板状非中空材及び管状中空材の側壁面同士が略接触するように更に配列(並置)してもよい(
図2a'及び3a')。
板状非中空材を構成する材料の例としては、管状中空材を構成する材料について上記したものが挙げられる。板状非中空材は、接着性、切断の容易性及び切断面のきれいさの観点から、管状中空材と同じ材料で構成されていることが好ましい。
【0027】
板状非中空材の横断面は、特に制限されず、三角形(その3つの角のうち少なくとも1つが丸みを帯びているか又は面取りされている三角形及び当該分野において実質的に三角形と認識される形状(例えば辺が円弧状のもの)である略三角形を含む)、台形(その4つの角のうち少なくとも1つが丸みを帯びているか又は面取りされている台形及び当該分野において実質的に台形と認識される形状(例えば辺が円弧状のもの)である略台形を含む)であり得るが、矩形であることが好ましい。
板状非中空材の横断面において、隣接する管状中空材に対向する面に対応する辺の長さは、該管状中空材の横断面において該板状非中空材に対向する面に対応する辺の長さとほぼ等しいことが好ましい。
【0028】
板状非中空材の横断面の幅(キャピラリ配列方向の長さ)は、任意である。板状非中空材の横断面の幅を適宜調整することで、配列する管状中空材(又はキャピラリ)の数が異なっても同一の外形寸法(特に、キャピラリ配列方向の幅)を有するキャピラリアレイを製造することが可能となる。キャピラリアレイの寸法の規格化は、固定/保持に使用するデバイス(例えば、後述するコネクタ)・装置自体やその位置等を変更する必要がなくなるので、好都合である。よって、板状非中空材はキャピラリアレイの外形寸法調整部材として機能し、その幅(長手軸に垂直な横断面における管状中空材の配列方向の幅)は、配列した管状中空材及び板状非中空材の全ての幅(配列方向の長さ)の合計が、製造されるキャピラリアレイにおいて所望する幅(規格化された幅;
図2及び3において長さL)と一致するように設定され得る(
図2d及び3d)。
【0029】
管状中空材の保持は、当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。例えば、管状中空材は、その長手軸方向に少なくとも2箇所(例えば両端部)を、接着/粘着テープで固定するか又は上下方向から挟持することにより保持することができる。或いは、管状中空材は、その配列方向に関して最も外側の2つの管状中空材(又は最も外側の2つの板状非中空材、又は最も外側の管状中空材及び板状非中空材)を挟持することにより保持することができる。後者の挟持の場合、最も外側の管状中空材及び/又は板状非中空材を、管状中空材の長手軸方向に少なくとも2箇所(例えば両端部)で挟持してもよいし、長手軸方向に全長にわたって挟持してもよい。
【0030】
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で配列・保持された2以上の管状中空材(該当する場合、及び板状非中空材)の隣り合う側壁面同士を接着剤で接着して管状中空材の集合体を形成し、同時に又は続いて、隣り合う管状中空材間で接着面の上方及び/又は下方に生じ得る凹部に接着剤を充填する工程である(
図1b、2b、3b)。該当する場合、工程(a)で、管状中空材と板状非中空材との隣り合う側壁面同士も接着し、同時に又は続いて、該側面同士の接着面の上方及び/又は下方に生じ得る凹部にも接着剤を充填する。
【0031】
接着剤は、当該分野において公知のものから、管状中空材を構成する材料に応じて適宜選択できる。接着剤の主成分は、例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などであり、好ましくは塩化ビニル系樹脂である。
接着剤には可塑剤が含まれていることが好ましい。可塑剤は、特に制限されず公知のものを使用できるが、例えば、フタル酸エステル、トリメット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、正リン酸エステル、安息香酸エステルなどである。可塑剤の具体例としては、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)が挙げられる。可塑剤は、主成分たる樹脂100重量部に対して、例えば、30〜300重量部である。
本発明において最も好ましい接着剤は、主成分がポリ塩化ビニルであり、可塑剤がフタル酸-2-エチルヘキシルであり、溶剤がテトラヒドロフランであるものである。
側壁面同士の接着に際しては、接着剤を毛細管現象により供給することが好ましい。よって、接着剤(溶液)の粘度(濃度)は、毛細管現象により流動可能な粘度であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、外形が略矩形である管状中空材が使用され得るので、単に側壁面同士を接着しただけでは、管状中空材間であって接着面の上方及び/又は下方に(丸みを帯びたか若しくは面取りされた隅部又は円弧状の辺に起因する)凹部が生じ得る。この凹部は、製品たるキャピラリアレイに存在すると、そこに入り込んだ試料や検出系の試薬等により検出系に干渉することでアッセイに影響を与える虞がある。よって、この段階で、存在し得る凹部を埋めておくことが好ましい。
凹部の埋め込みは、接着剤を充填することによって行うことができる。
過剰の接着剤は、ヘラ又はワイパー等を用いて、除去することが好ましい。
【0033】
乾燥は、当該分野において任意の方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥)により行うことができる。自然乾燥は、例えば5分間〜60分間行い得る。送風乾燥は、例えば1分間〜10分間行い得る。真空乾燥は、例えば10分間〜2時間行い得る。
【0034】
<工程(c)>
工程(c)は、工程b)で得られた管状中空材集合体の上面及び下面を透明フィルムで被覆する工程である(
図1c、2c、3c)。該当する場合、板状非中空材の上面及び下面も透明フィルムで被覆することが好ましい。管状中空材集合体(該当する場合、板状非中空材)の側面もまた被覆されてよい(
図2c、3c)。
【0035】
透明フィルムに関して「透明」とは、少なくとも内腔に固定した検出試薬の光学的検出に用いる光(例えば、励起光、蛍光、化学発光及び/又は燐光)の波長に関して透明であることを意味するものとする。透明フィルムは、好ましくは無色透明である。
透明フィルムは、公知のものから適宜選択して使用することができる。例えば、透明フィルムを構成する材料としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)、セロハンが挙げられる。
【0036】
透明フィルムは、接着/粘着テープの形態で使用することができる。
被覆は、1枚のフィルムを折り曲げて管状中空材集合体を挟み込むように行なわれてもよいし、2枚のフィルムの間に管状中空材集合体を挟むように行なわれてもよい。
被覆の後、ラミネート加工を行なってもよい(
図1c')。
この透明フィルムは、製品たるキャピラリアレイにおいて補強材として機能すると共に、後述するコネクタに接続した際のシーリング材としても機能し得る。
【0037】
<工程(d)>
工程(d)は、工程(c)で得られた被覆された管状中空材集合体を管状中空材の長手軸方向に1箇所以上で所望の長さに切断して複数個のキャピラリアレイを得る工程である(
図1d、2d、3d)。
切断により得られるキャピラリアレイの長さ(キャピラリ管長)は、特に制限されないが、例えば0.5〜10cm程度、好ましくは0.5〜5cm、より好ましくは0.5〜2cm、より好ましくは0.5〜1cmである。
例えば、切断は、キャピラリの長手方向に対し垂直方向に、ダイアモンドカッター又はダイアモンドソーを用いて行う。
【0038】
<コネクタ>
本発明のコネクタは、第1の開口部と第2の開口部を備え、第1の開口部はキャピラリアレイの一方の端部を受容可能な溝状構造部の開口部であり、第2の開口部は溝状構造部の底部に連通し、そのことにより、溝状構造部がキャピラリアレイを受容しているとき、第2の開口部から陽圧を印加することで、キャピラリアレイの全ての内腔からの流体の同時排出が可能であることを特徴とする。
本発明のコネクタは、キャピラリアレイ(好ましくは上述の方法で製造されたキャピラリアレイ)の全ての内腔から、存在し得る流体を同時に排出するために使用される。
【0039】
本発明のコネクタを
図4及び5を参照して説明する。
第1の開口部(401、501)は、溝状構造部(403、503)の開口部であり、キャピラリアレイの接続口として機能する。第1の開口部の形状及び寸法は、キャピラリアレイの一方の端部を受容可能な形状及び寸法である限り、特に制限されない。
溝状構造部は、その内壁が、深さ方向に少なくとも一箇所(又は一区間)において、受容したキャピラリアレイ端部の外周と密着可能であり、その底部がキャピラリアレイの端部開口部(内腔の開口部)をいずれも閉塞しない構造を有する。
【0040】
溝状構造部は、その底部の寸法(深さ方向に垂直な横断面における寸法)が長軸及び/又は短軸方向についてキャピラリアレイの寸法より小さくなっていることによってキャピラリアレイを係止する構造であり得る。例えば、溝状構造部は、その長軸及び/又は短軸方向の横断面において、内壁の間隔が深さ方向に狭くなる形状(テーパ状)であり得るし、所定の深さまで一定であり、以降はテーパ状となる形状であり得る。テーパ状は2段以上であってもよい。
溝状構造部はまた、キャピラリアレイの一方の端部を受容(保持)したとき、少なくとも他方の端部が該溝状構造部外に露出(突出)するような構造及び寸法を有する。
【0041】
第2の開口部(405、505)は、溝状構造部の底部と直接連通していてもよいし、(例えば、横断面が四角形(特に矩形)又は円形の)流路を介して連通状態にあってもよい。
第2の開口部の形状及び寸法は特に制限されないが、例えば、形状は多角形又は円形であり得る。
第2の開口部は、形状が円形である場合、円錐状、円錐台状又は円筒状の凹部の開口部であり得るし、円錐台状又は円筒状凸部の端面に設けられた開口部であり得る。形状が多角形である場合、第2の開口部は、円錐台状又は円筒状凸部の端面に設けられた開口部であり得る。
【0042】
1つの実施形態において、第2の開口部は円錐台状凹部の開口部であり、該円錐台状凹部の底部は溝状構造部の底部と直接接続している。具体的な実施形態において、円錐台状凹部はマイクロピペッタの先端部(チップ装着部)若しくはチップ又は注射器(シリンジ)の先端部(注射針取付け部)を受容可能な寸法である。この場合、ピペッタ又は注射器を用いて第2の開口部から陽圧を印加することができる。
第2の開口部が円錐台状又は円筒状凸部の端面に設けられた開口部である場合、該凸部にはチューブが装着され得、該チューブの他方の端部は陽圧を付与できる装置に接続され得る。
【0043】
コネクタには、第1の開口部及び第2の開口部と連通する第3の開口部(507)が存在していてもよい(
図5)。第3の開口部は、溝状構造部の底部と直接連通していてもよいし、第1の開口部と第2の開口部を接続する流路と連通していてもよい。
第3の開口部の存在により、キャピラリアレイはコネクタに装着された状態で、毛細管現象を利用してキャピラリ内腔中に流体を導入することができる。すなわち、キャピラリ内腔中の流体を排出する際には、第2の開口部を通じて印加された陽圧がキャピラリアレイ端部開口部(内腔開口部)に付与されるように第3の開口部は閉塞され、キャピラリ内腔中の流体を毛細管現象により導入する際には、第3の開口部は開放状態にされる。
第3の開口部の形状及び寸法は特に制限されず、開放状態でキャピラリアレイの毛細管現象を妨げない形状(例えば、円形)及び寸法である。
【0044】
コネクタを構成する材料は、特に制限されず、例えばガラス及びプラスチックが挙げられ、好ましくはプラスチックである。プラスチックの具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジフェニルシロキサン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチルなどが挙げられる。コネクタを構成する材料は、好ましくはシリコン樹脂であり、より好ましくはPDMS又はポリジフェニルシロキサンであり、更に好ましくはPDMSである。
【0045】
次に、
図6を参照して、本発明のコネクタ(610)の機能を簡潔に説明する。
コネクタ(610)に接続されたキャピラリアレイ(620)の各キャピラリ内腔(621)は、コネクタの溝状構造部(603)の底部を介して第2の開口部(605)と連通状態になる。換言すれば、第2の開口部(605)は、キャピラリアレイ(620)の全てのキャピラリ内腔(621)と連通する。よって、第2の開口部(605)に陽圧を印加することにより、キャピラリアレイ(620)の各内腔(621)のコネクタ挿入側開口部に陽圧が付与され、その結果、全てのキャピラリ内腔から存在し得る(試料や洗浄液のような)流体が同時に押出される。
本発明のコネクタ(特に、第3の開口を有する実施形態)は、キャピラリアレイのホルダーとしても機能することができ、キャピラリアレイを使用する自動化アッセイにおける使用に好適である。
本発明のコネクタは、第2の開口部へ陰圧を付与することにより、受容するキャピラリアレイの全ての内腔への流体の同時導入に使用することも可能である(が、通常は、流体の導入は毛細管現象を利用する)。
【0046】
本発明のコネクタは、個々のキャピラリの外形寸法は同一であるが配列された数が異なる2種以上のキャピラリアレイに使用可能である。ここで、前記2種以上のキャピラリアレイは、各々が、長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有する2以上のキャピラリからなるキャピラリ集合体と該キャピラリ集合体の少なくとも一方(好ましくは両方)の側方に接して配置された非中空部材とを備え、よりキャピラリ数が少ないキャピラリアレイにおける非中空部材の幅(キャピラリ配列方向;2つの非中空部材が配列されている場合にはその合計)とよりキャピラリ数が多いキャピラリアレイにおける非中空部材の幅の差が、該よりキャピラリ数が多いキャピラリアレイにおけるキャピラリ集合体の幅(キャピラリ配列方向)と該よりキャピラリ数が少ないキャピラリアレイにおけるキャピラリ集合体の幅の差と一致する。キャピラリアレイは上述の製造方法によって製造することができる。
【0047】
<キャピラリアッセイ用キット>
本発明のキャピラリアッセイ用キットは、(i)長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有する2以上のキャピラリからなるキャピラリ集合体と該キャピラリ集合体の少なくとも一方(好ましくは両方)の側方に接して配置された非中空部材とを備える少なくともキャピラリアレイと、(ii)上記で説明した本発明に係るコネクタとを含むことを特徴とする。
【0048】
キャピラリアレイ(i)のキャピラリの長手軸に垂直な横断面は、コネクタの溝状構造部が受容できる限り特に制限されないが、好ましくは矩形(略矩形を含む)である。
キャピラリアレイ(i)におけるキャピラリの数は、2以上であれば特に制限されず、例えば2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜40、より好ましくは5〜40、より好ましくは10〜40である。
キャピラリアレイ(i)において、キャピラリ及びその内腔の外形(長手軸方向に垂直な横断面の外形)は、円形であっても矩形であってもよいが、外形は矩形であることが好ましい。より好ましくは内腔も矩形である。キャピラリ及びその内腔の外形が矩形である場合、その寸法は上記製造方法について記載したものであり得る。
キャピラリの長さは、特に制限されないが、例えば0.5〜10cm程度、好ましくは0.5〜5cm、より好ましくは0.5〜2cm、より好ましくは0.5〜1cmである。
【0049】
非中空部材は、キャピラリアレイ外形のキャピラリ配列方向の幅を、キャピラリの数に関わらず、コネクタの第1の開口部の幅に相当する規定値(規格化された幅;例えば
図2(d)及び3(d)における「L」)とするためのものである。よって、キットがキャピラリ数の異なる2種以上のキャピラリアレイを含んでなる場合、それら2種以上のキャピラリアレイ間で、非中空部材の幅が異なることにより外形の幅(キャピラリ配列方向の幅)は同一である。
【0050】
キャピラリ集合体の両側に配置された非中空部材は、長手軸方向の長さが、キャピラリ集合体の長さと同じであっても、より短くてもよいが、同じであることが好ましい。
キャピラリアレイ(i)の内腔壁には、検出試薬が付着されていることが好ましい。検出試薬は、上記製造方法について記載したものであり得る。
キャピラリアレイ(i)において、キャピラリの材料は、上記製造方法において管状中空材について記載したものであり得る。
【0051】
キャピラリアレイ(i)は、その外周(長手軸方向の両端面を除く)に透明フィルムを備えていることが好ましい。透明フィルムを備えることにより、キャピラリアレイ(i)がコネクタの溝状構造部内に挿入されたとき、キャピラリアレイ(i)の外周と該溝状構造部の内壁面との密着性(気密性)を確保でき、このことにより、コネクタの第2の開口を通じて印加された陽圧がキャピラリアレイ(i)の内腔に効率的に付与される。また、コネクタがキャピラリアレイ(i)を安定的に保持することにも寄与することができる。透明フィルムは、上記製造方法について記載したものであり得る。
キャピラリアレイ(i)は、上記の製造方法により製造することができる。
【0052】
<アッセイ法>
本発明は、アッセイ用キャピラリアレイを用いて、試料中の対象物質を検出することを含むアッセイ法も提供する。
より具体的には、
長手軸に垂直な横断面が矩形である外形を有し且つ内腔壁に検出試薬が付着した2以上のキャピラリからなるキャピラリ集合体と該キャピラリ集合体の少なくとも一方の側方に接して配置された非中空部材とを備える少なくとも1種のキャピラリアレイと、
第1の開口部と第2の開口部を備え、第1の開口部はキャピラリアレイの一方の端部を受容可能な溝状構造部の開口部であり、第2の開口部は溝状構造部の底部に連通し、そのことにより、溝状構造部がキャピラリアレイを受容しているとき、第2の開口部から陽圧を印加することで、キャピラリアレイの全ての内腔からの流体の同時排出が可能であるコネクタと
を使用し、前記キャピラリアレイの内腔において、試料中の対象物質を検出することを特徴とする、キャピラリアッセイ法が提供される。
【0053】
キャピラリアレイは、キットについて記載したとおりであり、本発明の製造方法で製造されたものであることが好ましい。
試料は、対象物質の存在が疑われる試料であれば特に限定されない。試料は、被検体(ヒト、家畜動物や実験動物を含む動物)からの生物学的試料であり得る。生物学的試料としては、血液(血清、血漿を含む)、リンパ液、髄液、腹水、組織滲出液又は分泌液、唾液、痰及び尿を含む体液;器官又は組織(そのホモジネート、溶解物若しくは抽出物);細胞(その溶解産物及び抽出物を含む)が挙げられる。試料はまた、細菌感染が疑われているような食品サンプルであってもよい。試料には、防腐剤、凝固防止剤、界面活性剤などの添加剤や緩衝液が添加されていてもよい。
【0054】
本発明のアッセイ法は、上記のアッセイ用キャピラリに試料を導入することにより行うことができる。試料のキャピラリアレイ内腔への導入は、一方の端面に位置する内腔開口部を試料中に浸漬することにより行うことができる。試料は、毛細管現象により内腔中に導入される。
検出試薬は、上記製造方法について記載したものであり得る。
検出試薬が、抗体若しくはそのフラグメント(一次抗体)又は抗原である場合、検出はELISA法により行うことができる。ELISA法による検出工程は、例えば、以下のとおりである。
【0055】
導入された試料は、内腔壁に付着した一次抗体又は抗原が、試料中に存在し得る検出対象物質と反応又は結合するに十分な時間及び温度にて内腔内に保持する。保持時間は、例えば5分間〜1時間、より好ましくは10〜30分間であり、温度は、例えば20〜40℃、より好ましくは25〜38℃である。
反応後、検出試薬に結合しなかった物質を除去するために、キャピラリ内腔を洗浄液(例えば、PBS、TBSのような緩衝液)で洗浄する。内腔中の試料又は洗浄液の排出は、キャピラリの一方の端面の内腔開口部に陽圧を付することにより行うことができる。このとき、上記の本発明のコネクタを用いることで、キャピラリアレイの全てのキャピラリ内腔からの試料又は洗浄液の排出を同時に行うことができる。洗浄液のキャピラリ内腔への導入は、毛細管現象を利用することができる。洗浄は、1回又は2回以上の複数回であり得る。
【0056】
洗浄後、対象物質と特異的に結合する標識二次抗体(検出試薬が一次抗体である場合、一次抗体が結合する部位とは異なる部位で結合する抗体;検出試薬が抗原である場合、検出対象物質である抗体(例えば、Fc領域)に特異的に結合する抗体)を含有する溶液を、キャピラリ内腔中に導入する。標識二次抗体のキャピラリ内腔への導入は、毛細管現象を利用することができる。
標識は、当該分野で公知であり、使用する検知の方法に応じて適宜選択できる。標識としては、酵素、発色色素、蛍光色素、化学発光色素、吸収色素、放射性同位体、スピン標識、電気化学的標識などを用いることができるが、好ましくは酵素、発色色素、蛍光色素又は化学発色色素である。
【0057】
酵素は、酵素活性により他の分子の化学発光を誘導できる酵素であり、例えばペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホスファターゼなどが挙げられる。発色色素としては、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、メチルグリーン、N-エチル-m-トルイジン誘導体(例えばN-ヒドロキシスルホプロピル誘導体(TOOS))と4-アミノアンチピリン(4-AA)の組み合わせなどが挙げられる。蛍光色素としては、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red)、p-ヒドロキシフェニル酢酸、チアミンなどが挙げられる。化学発光色素としては、ルミノールなどが挙げられる。
【0058】
二次抗体含有溶液は、二次抗体と一次抗体に捕捉された検出対象物質(試料中に存在する場合)とが反応(結合)するに十分な時間及び温度にて内腔内に保持する。保持時間は、例えば5分間〜1時間、より好ましくは10〜30分間であり、温度は、例えば20〜40℃、より好ましくは25〜38℃である。
その後、結合しなかった二次抗体を除去するため、キャピラリ内腔を、上記のとおり洗浄液で洗浄する。このとき、本発明のコネクタを用いることで、キャピラリアレイの全てのキャピラリ内腔を同時に洗浄することができる。
【0059】
この時点で、使用した標識が既に検出可能である場合には、標識に起因する信号の検出・測定を行う。
使用した標識を検出するためには別の試薬(例えば酵素基質など)との反応が必要である場合、該試薬を含有する溶液をキャピラリ内腔中に導入して当該反応に十分な時間及び温度にて保持した後、標識に起因する信号を検出、測定する。
検出・測定は、分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光光度計、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管などを使用して行うことができる。
【0060】
検出試薬が、核酸プローブ(一次プローブ)である場合、検出は、例えば下記のとおり行うことができる。
【0061】
導入された試料は、内腔壁に付着した検出試薬が、試料中に存在し得る検出対象物質(核酸)と特異的にハイブリダイズするに十分な時間及び温度にて内腔内に保持する。保持時間は、例えば5分間〜1時間、より好ましくは10〜30分間であり、温度は、例えば40〜60℃、より好ましくは50〜60℃である。
反応後、一次プローブにハイブリダイズしなかった物質を除去するために、キャピラリ内腔を上記のように洗浄液で洗浄する。洗浄後、対象物質と、特異的にハイブリダイズする標識二次プローブ(一次プローブがハイブリダイズする部位(例えば、一方の端部)とは異なる部位(例えば、他方の端部)でハイブリダイズするプローブ)を含有する溶液を、キャピラリ内腔中に導入する。標識二次プローブのキャピラリ内腔への導入は、毛細管現象を利用することができる。
標識は、ELISAについて上述したとおりである。
【0062】
二次プローブ含有溶液は、二次プローブと一次プローブに捕捉された検出対象の核酸(試料中に存在する場合)とが特異的にハイブリダイズするに十分な時間及び温度にて内腔内に保持する。保持時間は、例えば5分間〜1時間、より好ましくは10〜30分間であり、温度は、例えば40〜60℃、より好ましくは50〜60℃である。
その後、結合しなかった二次プローブを除去するため、キャピラリ内腔を、上記のとおり洗浄液で洗浄する。このとき、本発明のコネクタを用いることで、キャピラリアレイの全てのキャピラリ内腔を同時に洗浄することができる。
【0063】
この時点で、使用した標識が既に検出可能である場合には、標識に起因する信号の検出・測定を行う。
使用した標識を検出するためには別の試薬(例えば酵素基質など)との反応が必要である場合、該試薬を含有する溶液をキャピラリ内腔中に導入して当該反応に十分な時間及び温度にて保持した後、標識に起因する信号を検出、測定する。
検出・測定は、分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光光度計、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管などを使用して行うことができる。
【0064】
本発明のコネクタ(特に、第3の開口を有する実施形態)を使用することで、キャピラリアレイ内腔への試料の導入から標識検出反応(例えば発色反応)の終了までを、キャピラリアレイをコネクタに装着したままで行うことができ、したがってアッセイの自動化が可能になる。
また、発明のコネクタ/ホルダを備え、本発明のキャピラリアレイを用いるアッセイを実行するための自動アッセイ装置は、検査すべき項目数が異なる2以上の試料を連続してアッセイすることができる。すなわち、検査すべき項目数が変わり、そのために使用するキャピラリアレイが変わる(キャピラリ数が変化する)たびに、コネクタ/ホルダを交換する必要がない。
【実施例】
【0065】
実施例1
外形の横断面が300μm×300μmの略正方形、内腔の横断面が100μm×100μmの略正方形である長さ約18cmのシリカガラス製管状中空材Square Flexible Fused Silica Capillary Tubing (Polymicro Technologies;WWP100375)を使用した。
先ず、管状中空材の内腔壁表面を洗浄した。簡潔には、内腔に1N NaOHを導入して30分間静置した後、十分な量の純水でNaOHを洗い流し、次いでアセトンを導入して水分を除去し、70℃のオーブン中で30分間乾燥させた。
【0066】
次いで、23本の管状中空材の内腔に、試薬としてフルオレセインを、ポリエチレングリコール(PEG;分子量20000)を300mg/mL溶解したメタノール中5000μMの溶液で、一方の端部の開口部を溶液中に浸漬させることにより毛細管現象を利用して導入した。その後、内腔の一方の開口部から空気を穏やかに注入し、次いで約24時間自然乾燥させた。こうして、矩形内腔の隅部に、フルオレセインを含有する可溶性PEG層を形成した。
上記のように内腔壁に検出試薬を付着させた管状中空材を、基準面上に、隣り合う側壁が略接触するように配列し、端部を粘着テープ(メンディングテープ;Scotch)で固定して保持した(
図8a)。
接着剤として、テトラヒドロフラン(THF)中にポリ塩化ビニル(PVC;15w/v%)及びフタル酸-2-エチルヘキシル(可塑剤;30w/v%)を含む溶液(PVC溶液)を用いた。この接着剤を、長手軸方向に沿って、側壁接触面にその上方から滴下した。アクリル板(約30mm×約30mm×約2mm)を用いてワイプすることにより、過剰のPVC溶液を除去した(
図8b)。その後、送風乾燥により5分間乾燥させた。
【0067】
得られた管状中空材の集合体の上下両面にラボ保護テープ(5-5045-01,AS ONE)を接着した(
図8c)。その後、ラミネート加工を行った(Pouch Laminator DS320P,日本GBC)(
図8d)。
ダイアモンドカッター(96800-01,大成化光株式会社)により、長手軸方向の長さ約10mmごとに切断し、18個のキャピラリアレイを製造した(
図8e)。
得られたキャピラリアレイの端面(ダイアモンドカッターによる破断面)は、きれいであり、内腔の開口部はいずれも塞がれているようなことはなかった(
図9)。
【0068】
PVC溶液を用いて側壁間を接着しないこと以外は、上記と同様にして製造したキャピラリアレイを、比較例として製造した。
製造した実施例及び比較例のキャピラリアレイについて、一方の端部を溶液中に浸漬させて、毛細管現象を利用して内腔中に溶液を導入する操作を行った。この際、比較例のキャピラリアレイでは、間隙(接着面並びに及びその上方及び下方の凹部)への溶液の導入(液漏れ)が観察された一方、本発明のキャピラリアレイでは、液漏れは観察されなかった(
図10)。
【0069】
実施例2
実施例1と同様にして、10本のキャピラリを有するキャピラリアレイ(ただし、内腔壁に検出試薬は未付着)を製造した。
コネクタとして、
図11に示すコネクタを用いた。
コネクタの接続口にキャピラリアレイを装着し、キャピラリアレイの端部(接続口に挿入されていない側の端部)を1%BSA-FITC溶液に浸漬すると、毛細管現象により内腔中に1%BSA-FITC溶液が導入された。キャピラリアレイにフィルター(470/40nm)付き水銀ランプを照射すると、内腔に対応する位置に強い蛍光(約520nm)が観察された(
図12)。
【0070】
コネクタのピペッタチップ接続口に、ピペッタチップを装着した注射筒を接続し、注射筒内の空気(一部)をコネクタを通じてキャピラリ内腔開口部から内腔中に送り込むと、全ての内腔中の1%BSA-FITC溶液が同時に押出された。この時点で、キャピラリアレイにフィルター(470/40nm)付き水銀ランプを照射すると、内腔に対応する位置に極弱い蛍光が観察された(
図12)。
コネクタの接続口にキャピラリアレイを装着したまま、キャピラリアレイの端部を緩衝液(50mM,pH7.0)に浸漬すると、毛細管現象により内腔中に該緩衝液が導入された。この時点で、キャピラリアレイにフィルター(470/40nm)付き水銀ランプを照射すると、内腔に対応する位置に弱い蛍光が観察された(
図12)。
【0071】
再び、コネクタのピペッタチップ接続口に、ピペッタチップを装着した注射筒を接続し、注射筒内の空気(一部)をコネクタを通じて送り込むと、全ての内腔中の緩衝液が同時に押出された。この時点で、キャピラリアレイにフィルター(470/40nm)付き水銀ランプを照射すると、蛍光は観察されなかった(
図12)。
再度、キャピラリアレイの端部を緩衝液に浸漬して内腔中に緩衝液を毛細管現象により導入した。この時点で、キャピラリアレイにフィルター(470/40nm)付き水銀ランプを照射すると、蛍光は観察されなかった(
図12)。
以降、2回の緩衝液の導入及び押出を繰り返したが、フィルター(470/40nm)付き水銀ランプ照射による蛍光は観察されなかった(
図12)。
【0072】
20本及び30本のキャピラリをそれぞれ有するキャピラリアレイについても同様の実験を行った。結果は、10本のキャピラリを有するキャピラリアレイで観察された結果と同様であった(
図13)。
したがって、本発明のキャピラリアレイは、2〜3回の洗浄操作により洗浄できることが示された。また、洗浄に際して、本発明のコネクタを用いることで、キャピラリアレイの全てのキャピラリ内腔を同時に洗浄できることが示された。
【0073】
実施例3
実施例1と同様にして、6本のキャピラリを有するキャピラリアレイ(ただし、内腔壁に検出試薬は未付着)を製造した。
1つのキャピラリアレイのキャピラリ内腔に、0.005、0.05、0.5、5、50、500μMのフルオレセイン(蛍光試薬)溶液を充填した。
一方、別のキャピラリアレイのキャピラリ内腔に、300mg/mLでポリエチレングリコール(PEG;分子量20000)を溶解したメタノール中0.05、0.5、5、50、500、5000μMのフルオレセイン溶液を充填した。その後、内腔の一方の開口部から空気を穏やかに注入し、次いで約24時間自然乾燥させた。こうして、矩形内腔の隅部に、フルオレセインを含有する可溶性PEG層を形成した。
【0074】
2つのキャピラリアレイ(後者のキャピラリアレイについては内腔に水を導入後)をフィルター(387/28nm)付き水銀ランプ照射下に置き、蛍光(460nm)の画像データを取得した。データを画像処理ソフトウェア(ImageJ;http://rsb.info.nih.gov/ij/で入手可能)で処理して蛍光強度変化を求めた。結果を
図14Aに示す。図において、縦軸は蛍光強度変化を表し、横軸はフルオレセインの濃度(logスケール)を表す。
蛍光試薬としてフルオレセインの代わりに、アミノメチルクマリン(AMC)を用いて、上記と同様の実験を繰り返した。使用した試薬濃度は、0.005、0.05、0.5、5、50、500μM、並びに300mg/mLでポリエチレングリコール(PEG;分子量20000)を溶解したメタノール中0.05、0.5、5、50、500、5000μMであった
結果を
図14Bに示す。図において、縦軸は蛍光強度変化を表し、横軸はAMCの濃度(logスケール)を表す。
【0075】
いずれの蛍光試薬を使用した場合も、キャピラリ内腔に形成した色素含有可溶性層中の色素濃度に依存する蛍光強度の変化は、キャピラリ内腔に導入した色素溶液中の色素濃度に依存する蛍光強度変化と一致した。このことから、本発明のキャピラリアレイは、キャピラリ内腔壁に検出試薬含有可溶性層が形成されたキャピラリアレイにおいて、可溶性層中の検出試薬濃度の最適化のためのキャリブレーションに使用できることが理解される。また、本発明のキャピラリアレイが検量線(蛍光強度vs濃度)の作成に使用できることも理解される。