(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押し棒の上端側に設けられた操作手段と、前記押し棒の下端側に設けられて前記ロック部材を動作させる動作手段と、前記操作手段と前記動作手段を接続する接続手段とを有し、前記操作手段に入力される操作に応じて前記ロック部材を前記いずれかの位置にする動作機構をさらに備える、請求項3または4に記載の折り畳み式乳母車。
前後方向に延び、前端が前記前脚の下端部に回動可能に連結し、後端が前記後脚の下端部に回動可能に連結する一対の前後方向フレーム部材をさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載の折り畳み式乳母車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、不使用時には一層縮小することができるような折り畳み式乳母車が要望されている。すなわち乳母車は不使用時にコンパクトに折り畳まれて、自家用車や公共交通機関の中でなるべく場所を取らないことが望まれる。特に、近所への外出の他、多くの荷物を持参して遠出する場合には、旅客機の蓋付き荷物棚にも収納可能な、不使用時に一層縮小する乳母車が重宝される。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑み、折り畳み状態で従来よりも一層縮小することができる乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明による乳母車は、一対の座席フレーム部材と、座席フレーム部材から上方へ延びる一対の押し棒と、座席フレーム部材から下方へ延びる一対の前脚と、
上端領域が枢軸を介して座席フレーム部
材と連結
し座席フレーム部材を超えて前方へ延びるとともに下端側が座席フレーム部材から下方へ延びる一対の後脚とを備える。そして押し棒は、折り畳み状態で座席フレーム部材側に移動し、前脚は、折り畳み状態で座席フレーム部材側に移動するよう構成される。
【0008】
かかる本発明によれば、乳母車の上部を構成する押し棒と、乳母車の中央部を構成する座席部分と、乳母車の下部を構成する前脚とのうち、乳母車の上部および乳母車の下部が乳母車の中央部側に移動することから、折り畳み状態で乳母車を従来よりも一層縮小することができる。なお、前脚と座席フレーム部材と押し棒との連結構造は入れ子式を利用した構造であってもよいし、アリ溝を利用した構造であってもよい。好ましくは、押し棒と、座席フレーム部材と、前脚とが略等しい長さにされ、これら3個の部材が折り畳み状態で略一致するまで重なるように縮小される。これにより、乳母車の上下方向寸法を略1/3まで縮小することができる。後脚は例えば、前脚に連結されて折り畳み時に前脚とともに座席フレーム部材に引き込まれてもよい。あるいは後脚は、座席フレーム部材に連結されて折り畳み時に座席フレーム部材に沿うよう回動してもよい。
【0009】
本発明の一実施形態として、押し棒と、座席フレーム部材と、前脚は、互いに平行に延び、押し棒および前脚は、折り畳み状態で座席フレーム部材と重なるようスライド移動して、押し棒の上端から前脚の下端までの上下方向寸法が縮小する。かかる実施形態によれば、スライド構造を採用することによって、押し棒と、座席フレーム部材と、前脚とを折り畳み状態で略一致するまで重なるように縮小することができる。他の実施形態として、押し棒と、座席フレーム部材と、前脚との少なくとも1個が、残りの部材に対して異なる向きに延びてもよく、押し棒および前脚が非平行のままスライド移動して座席フレーム部材に移動してもよい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態として、乳母車の展開状態で押し棒と座席フレーム部材と前脚との相対移動を規制する展開状態ロック機構をさらに備え、展開状態ロック機構は、座席フレーム部材に設けられて、第1位置で押し棒および前脚と係合し、第2位置で押し棒および前脚と非係合になるロック部材を有する。かかる実施形態によれば、乳母車の展開状態を保持することができる。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態として、ロック部材は、第3位置で押し棒と係合するとともに前脚と非係合になる。かかる実施形態によれば、押し棒のみを座席フレーム部材側から上方へ移動させておきながら、前脚を座席フレーム部材側に移動させておくことが可能になる。このような状態の効用として、乳母車の操作者は押し棒を掴んで牽引することによって、乳母車を運搬することができる。なお展開状態ロック機構は、いずれか一方の座席フレーム部材に設けられてもよいし、各座席フレーム部材にそれぞれ設けられてもよい。
【0012】
本発明の展開状態ロック機構は、様々な形態で実現可能である。そして乳母車の操作者はロック部材を手で直接操作してもよいし、別な動作機構で遠隔操作してもよい。本発明は一実施形態に限定されるものではないが、押し棒の上端側に設けられた操作手段と、押し棒の下端側に設けられてロック部材を動作させる動作手段と、操作手段と動作手段を接続する接続手段とを有し、操作手段に入力される操作に応じてロック部材をいずれかの位置にする動作機構をさらに備えてもよい。かかる実施形態によれば、2個一対の展開状態ロック機構を備える場合に、1個の動作機構で2個の展開状態ロック機構を同時に操作することが可能になり、操作性が向上する。
【0013】
乳母車の車輪は通常、一対の前脚および一対の後脚に分離不能に取り付けられてもよい。あるいは他の実施形態として本発明の乳母車は、前脚および後脚の下端部に着脱可能に取り付けられた車輪をさらに備えてもよい。かかる実施形態によれば、折り畳み状態で車輪を乳母車から分離することにより、乳母車を一層縮小することができる。したがって乳母車の置き場所を一層小さくすることが可能になり、乳母車を旅客機の蓋付き荷物棚に収納することができる。
【0014】
一対の座席フレーム部材間に設けられる幼児用座席は、座部と背もたれ部を最低限備える他、幼児の後頭部を支持するヘッドレスト部をさらに備えていてもよい。そして乳母車の展開状態でヘッドレスト部を起こして使用し、折り畳み状態でヘッドレスト部を倒して折り畳むとよい。一実施形態として後脚は座席フレーム部材と回動可能に連結し、一対の座席フレーム部材よりも後方で上下方向に延びる背もたれ部と、背もたれ部の上端に回動可能に連結するヘッドレスト部と、ヘッドレスト部と後脚とを接続するリンク部材とをさらに備えてもよい。かかる実施形態によれば、折り畳み操作の際、後脚の回動に伴ってリンク部材がヘッドレスト部を下方へ引っ張り、ヘッドレスト部を自動的に折り返すことができる。したがって乳母車の操作性能が向上する。
【0015】
本発明の乳母車は、複数のフレーム部材を備える。一実施形態として本発明の乳母車は、前後方向に延び、前端が前脚の下端部に回動可能に連結し、後端が後脚の下端部に回動可能に連結する一対の前後方向フレーム部材をさらに備える。かかる実施形態によれば、展開状態で前脚と後脚との間隔が確りと保持されて、簡易な構成で乳母車の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明は、折り畳み状態で乳母車の上下方向寸法を従来よりも格段に縮小することができる。したがって自家用車や公共交通機関の中でなるべく場所を取らずに済み、多くの荷物を持参して遠出する利用者の便に供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になる折り畳み式乳母車を模式的に示す側面図であり、
図2は、
図1に対応する正面図であり、これら
図1および
図2は乳母車の展開状態を表す。また
図3は、同実施形態の折り畳み途中状態を模式的に示す側面図である。
図4は、
図3に対応する正面図である。
図5は、同実施形態が運搬状態にされた様子を模式的に示す側面図である。
図6は、
図5に対応する正面図である。
図7は、同実施形態が完全に折り畳まれた様子を模式的に示す側面図である。
図8は、
図7に対応する正面図である。これら
図7および
図8は乳母車の折り畳み状態を表す。
図1、
図3、
図5、および
図7は乳母車の幅方向にみた様子を示す。
図2、
図4、
図6、および
図8は乳母車の前後方向にみた様子を示す。
【0019】
乳母車は、
図1および
図5を対比して、あるいは
図1および
図7を対比して明らかなように、上下方向および前後方向の寸法が縮小して折り畳まれる押し棒スライド式乳母車である。乳母車は、一対の前脚11と、一対の座席フレーム部材12と、一対の後脚14と、一対の押し棒15と、ハンドル部材16と、一対の前後方向フレーム部材17と、幅方向フレーム部材18,19,25といったフレーム部材を含む。
【0020】
各前脚11は、上下方向に延びる直線状のパイプ材であり、その下端部に枢軸23を介して連結部材13が回動可能に連結される。連結部材13には前輪11wが着脱可能に取り付けられる。各前脚11の上端部は各座席フレーム部材12とスライド移動可能に連結する。座席フレーム部材12は、上下方向に直線状に延び、幼児用座席31の背もたれ部33を支持するとともに、幼児用座席31に着席した乳幼児の側方を保護する。座席フレーム部材12は、その下端部12aから前脚11を受け入れ、その上端部12bから押し棒15を受け入れる。各押し棒15は、上下方向に延びる直線状のパイプ材であり、その下端部が座席フレーム部材12とスライド移動可能に連結し、その上端部がハンドル部材16と連結する。ハンドル部材16は幅方向に延び、幅方向一方および他方に配置された一対の押し棒15の上端同士を連結する。
【0021】
各後脚14は、上下方向に延びる円弧曲線状パイプ材であり、その下端部が枢軸24を介して連結部材21と回動可能に連結する。連結部材21には後輪14wが着脱可能に取り付けられる。各後脚14の上端領域は、前後方向にも延び、座席フレーム部材12の下端部12aに枢軸22を介して回動可能に連結されている。そして
図1に示すように、後脚14の上端部が座席フレーム部材12を超えて前方へ延びる。枢軸22よりも前方および後方に延在する各後脚14の上端領域は、幼児用座席31の座部(図示せず)を支持する。
【0022】
各前後方向フレーム部材17は前後方向に延びる直線状のパイプ材であって、その前端が前脚11下端部の連結部材13に固定され、その後端が後脚14下端部の連結部材21に固定される。
【0023】
幅方向フレーム部材18は、幅方向に延びる直線状のパイプ材であって、一対の後脚14の中央部同士を連結する。幅方向フレーム部材19も幅方向に延びる直線状のパイプ材であって、枢軸23と略同じ位置で、一対の連結部材13同士を連結する。幅方向フレーム部材25も幅方向に延びる直線状のパイプ材であって、枢軸24と略同じ位置で、一対の連結部材21同士を連結する。
【0024】
図2に示すように、乳母車には展開状態ロック機構41が設けられている。展開状態ロック機構41は、座席フレーム部材12に設けられたロック部材42と、前脚11の上端部に形成された被係合部43と、押し棒15の下端部に形成された被係合部44とを有する。ロック部材42は座席フレーム部材12の長手直角方向に変位可能に取り付けられて、
図2に示す第1位置と、
図4に示す第3位置と、
図6および
図8に示す第2位置とに順次変位可能である。
【0025】
乳母車の展開状態において、前脚11の上端部は座席フレーム部材12に収容され、前脚11は座席フレーム部材12の下端部12aよりも下方へ延びる。また展開状態および後述する運搬状態において、押し棒15の下端部は座席フレーム部材12に収容され、押し棒15は座席フレーム部材12の上端部12bよりも上方へ延びる。したがって展開状態で、前脚11は座席フレーム部材12から下方へ最大に繰り出され、押し棒15は座席フレーム部材12から上方へ最大に繰り出される。
【0026】
前脚11を下方へ最大に繰り出した位置で、ロック部材42は被係合部43と対向する。押し棒15を上方へ最大に繰り出した位置で、ロック部材42は被係合部44と対向する。かかる状態でロック部材42を
図2に示す第1位置にすると、ロック部材42は被係合部43および被係合部44の双方と係合する。これにより前脚11は座席フレーム部材12に対する長手方向のスライド移動を禁止される。押し棒15についても同様である。その結果、乳母車は
図1および
図2に示す展開状態を保持することができる。第2位置および第3位置については後述する。
【0027】
一対の座席フレーム部材12間には幼児用座席31が配置される。幼児用座席31は、ヘッドレスト部32と、背もたれ部33と、図示しない座部とを有する。また各座席フレーム部材12は、座部の両側縁から上方へそれぞれ延び、一対の座席フレーム部材12間に乳幼児を受け入れるよう、幼児用座席31のための側部を構成する。したがって例えば各座席フレーム部材12には、幼児用座席31のための一対の側壁が設けられる。あるいは各座席フレーム部材12には各側方ガード部材が設けられてもよい。側方ガード部材は例えば座席フレーム部材12と背もたれ部33の側縁に張り渡された布地であってもよいし、あるいはクッションであってもよい。
【0028】
図示しない座部は、一対の後脚14の上端領域に張り渡された布地であり、略上向きの座面を構成して乳幼児の尻、太腿を支持する。そして座部は幅方向フレーム部材18まで後方に広がる。背もたれ部33は幅方向フレーム部材18から上方へ延びる面一なフレーム体あるいは略平坦な板材であり、乳幼児の背中を支持する。なお、一対の座席フレーム部材12にはリクライニングベルト36が張り渡されている。このように一対の座席フレーム部材12はリクライニングベルト36を介して幼児用座席31の背もたれ部33を支持する。また背もたれ部33はリクライニングベルト36の長さ調節によって幅方向フレーム部材18回りに回動し、リクライニング角度を調整される。
【0029】
ヘッドレスト部32は背もたれ部33の上端からさらに上方へ延びる面一なフレーム体あるいは略平坦な板材であり、乳幼児の頭部を支持する。そして一対の座席フレーム部材12は乳幼児の身体の左側および右側をそれぞれ保護する。
【0030】
図1に示すように、座席フレーム部材12の一対の上端部12bには、幌37が架設される。幌37は例えば逆U字状の幌骨と、幌骨同士間に掛け渡された幌布とで構成される。複数本の幌骨は、その下端同士を枢軸26で互いに連結される。かかる枢軸26は上端部12bに取り付けられる。幌骨を枢軸26回りに回動させて開いたり閉じたりすることにより、幌37は前後方向寸法の調節が可能である。あるいは幌37は、一対の上端部12bに脱着可能に架設されてもよい。あるいは幌37は、一対の押し棒15に着脱可能に架設されてもよい。そして幌37は、幼児用座席31を上方から覆い、幼児用座席31に着席する乳幼児を陽射しや雨等から保護する。
【0031】
次に乳母車の折り畳み動作につき説明する。
【0032】
乳母車の展開状態で、
図1に示すように前脚11は座席フレーム部材12から下方へ延びている。乳母車を折り畳む際、各前脚11は
図3に示すように座席フレーム部材12側に移動し、
図5〜
図8に示すように各前脚11の下端が各座席フレーム部材12の下端部12aに近づく。
【0033】
また乳母車の展開状態で、
図1に示すように後脚14は前脚11に対し所定角度で開いている。乳母車の折り畳む際、各後脚14は
図3に示すように各座席フレーム部材12に近づく方向に回動し、
図5および
図7に示すように各後脚14と各前脚11とはほぼ重なるように延び、後輪14wは前輪11wの上方に位置する。
【0034】
また乳母車の展開状態で、
図1に示すように押し棒15は座席フレーム部材12から上方へ延びている。乳母車を折り畳む際、各押し棒15は
図7に示すように座席フレーム部材12側に移動し、
図7および
図8に示すように各押し棒15の上端が各座席フレーム部材12の上端部12bに近づく。
【0035】
折り畳み動作を詳細に説明すると、乳母車の操作者はまずロック部材42を
図2に示す第1位置から一段階変位させて、
図4に示す第3位置にする。ロック部材42は第3位置で、被係合部43と係合しないが、被係合部材44と係合する。これにより、前脚11はスライド移動を許容され、前脚11は座席フレーム部材12側に移動する。これに対し押し棒15はスライド移動を禁止される。
【0036】
前脚11が座席フレーム部材12と重なるようスライド移動する動作に伴って
図3に示すように、後脚14が枢軸22回りに回動して座席フレーム部材12に近づくとともに、前後方向フレーム部材17が枢軸23回りに回動して前脚11に近づく。さらに枢軸24と中心とする後脚14と前後方向フレーム部材17との角度が小さくなる。
【0037】
前脚11が座席フレーム部材12に最も引き込まれると、各前脚11の上端部が各座席フレーム部材12の上端部12bよりも上方へ突出し、乳母車は
図5および
図6に示す運搬状態に縮小される。
【0038】
展開状態と比較して、運搬状態で乳母車の前後方向寸法および上下方向寸法は縮小される。このように運搬状態は、折り畳み状態に準じて縮小された状態である。また運搬状態では幌37のすべての幌骨を上端部12bよりも下方に回動させ、幌37の前後方向寸法を縮小して座席フレーム部材12に沿って折り畳んでおくと良い。また運搬状態ではヘッドレスト部32を折り返して背もたれ部33に重ね、幼児用座席31の上下方向寸法を縮小すると良い。
【0039】
乳母車の操作者は、前輪11wおよび連結部材13を地面に接地させて乳母車を地面の上に立てておくことができる。これにより運搬状態で、乳母車は場所を取ることがない。また操作者はハンドル部材16を掴み、乳母車を傾けて前輪11wのみを接地させ、ハンドル部材16を牽引することにより、運搬状態で乳母車をスーツケースのように運搬させることができる。これにより運搬状態で、乳母車を折り畳んだまま容易に移動させることができる。
【0040】
なお運搬状態から展開状態に戻すときは、上述した操作と逆の手順で乳母車を展開するとよい。また、運搬状態では、図示しない連結具を用いて座席フレーム部材12と前後方向フレーム部材17とを束ねておく等の措置をして、前脚11が座席フレーム部材12から飛び出すことがないようにすると良い。
【0041】
乳母車の操作者は次にロック部材42を
図4に示す第3位置からさらに一段階変位させて、
図6に示す第2位置にする。ロック部材42は第2位置で、被係合部43および被係合部材44の双方と係合しない。これにより、押し棒15もスライド移動を許容され、座席フレーム部材12と重なるようスライド移動して引き込まれる。
【0042】
図7および
図8に示す折り畳み状態で、前脚11および押し棒15の双方が座席フレーム部材12側に移動する。このため、
図5および
図6に示す運搬状態と比較して、乳母車の前後方向寸法はそのままで、上下方向寸法はさらに縮小される。運搬状態および折り畳み状態において、前脚11の上端部は座席フレーム部材12の上端部12bよりも上方へ突出するとともに、前脚11の下端部に連結された連結部材13は、座席フレーム部材12の下端部12aよりも下方へ突出する。また折り畳み状態において、押し棒15の下端部は座席フレーム部材12の下端部12aよりも下方へ突出するとともに、押し棒15の上端に連結されたハンドル部材16は、座席フレーム部材12の上端部12bよりも上方へ突出する。前脚11、座席フレーム部材12、および押し棒15の長さを略等しくすることによって、乳母車の上下方向寸法を略1/3まで縮小することができる。
【0043】
また、折り畳み状態では、図示しない連結具を用いて前脚11の上端と押し棒15の上端とを束ねておく等の措置をして、押し棒15が座席フレーム部材12から飛び出すことがないようにしても良い。
【0044】
前輪11wはブラケット11bの下端に回転自在に取り付けられている。またブラケット11bの上端は例えば連結部材13に形成された図示しないソケットに差し込まれて図示しないピンで固定されている。同様に後輪14wもブラケット14bの下端に回転自在に取り付けられている。またブラケット14bの上端は例えば連結部材21に形成された図示しないソケットに差し込まれて図示しないピンで固定されている。
【0045】
そこで折り畳み状態においてこれらのピンを引き抜いて、
図7に二点鎖線で示す各前輪11wを各連結部材13から取り外すとよい。同様に各後輪14wも各連結部材21から取り外すとよい。これにより乳母車を一層縮小して、旅客機の蓋付き荷物棚などに収納することができる。
【0046】
なお折り畳み状態から運搬状態に戻すときは、上述した操作と逆の手順で押し棒15を上方へ繰り出すとよい。また、ロック部材42を第1位置から第2位置にして、前脚11および押し棒15を同時に移動することにより、展開状態から折り畳み状態にすることも可能である。
【0047】
ところで本実施形態によれば、乳母車が一対の座席フレーム部材12と、座席フレーム部材12から上方へ延びる一対の押し棒15と、座席フレーム部材12から下方へ延びる一対の前脚11と、座席フレーム部材12と連結する一対の後脚14とを備える。そして、押し棒15は折り畳み状態で座席フレーム部材12側に移動し、前脚11は折り畳み状態で座席フレーム部材12側に移動するよう構成される。これにより、乳母車の上下方向寸法を従来よりも縮小することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、押し棒15と、座席フレーム部材12と、前脚11は、互いに平行に延び、押し棒15および前脚11は、折り畳み状態で座席フレーム部材12と重なるようスライド移動して、押し棒15の上端から前脚11の下端までの上下方向寸法が縮小する。これにより、スライド移動によって3個のフレーム部材(押し棒15と、座席フレーム部材12と、前脚11)を1つにまとめることができる。
【0049】
また本実施形態によれば、乳母車の展開状態で押し棒15と座席フレーム部材12と前脚11との相対移動を規制する展開状態ロック機構41をさらに備える。そして、展開状態ロック機構41は、座席フレーム部材12に設けられて、第1位置で押し棒15および前脚11と係合し、第2位置で押し棒15および前脚11と非係合になるロック部材42を有する。したがって乳母車を
図1および
図2に示す展開状態に保持することができる。
【0050】
また本実施形態によれば、ロック部材42は、第3位置で押し棒15と係合するとともに前脚11と非係合になることから、乳母車を
図5および
図6に示す運搬状態にすることができる。
【0051】
また本実施形態によれば、前脚11および後脚14の下端部に着脱可能に取り付けられた前輪11wおよび後輪14wをさらに備えることから、折り畳み状態において前脚11および後脚14から前輪11wおよび後輪14wを取り外して乳母車を一層縮小することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、前後方向に延び、前端が前脚11の下端部に回動可能に連結し、後端が後脚14の下端部に回動可能に連結する一対の前後方向フレーム部材17をさらに備えることから、前脚11、後脚14、および前後方向フレーム部材17が三角フレームを構成する。したがって簡易な構成で乳母車のフレーム剛性を向上させることができる。
【0053】
次に本発明の他の実施形態を説明する。
図9は本発明の他の実施形態を示す側面図であり、折り畳み式乳母車の展開状態を表す。
図10は、座席フレーム部材等を取り出して示す側面図であって
図9に対応する。これら
図9および
図10は乳母車の幅方向外方から観察した状態を表す。
図11は、座席フレーム部材等を取り出して示す背面図であって
図9に対応する。他の実施形態につき、上述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態では、ヘッドレスト部32と後脚14を接続するリンク部材38と、ロック部材42を動作させる動作機構51を備える。
【0054】
後脚14は枢軸22で座席フレーム部材12と回動可能に連結する。背もたれ部33は、一対の座席フレーム部材12よりも後方で上下方向に延びる。ヘッドレスト部32は、背もたれ部33の上端に回動可能に連結する。リンク部材38は、上下方向に延び、その上端がヘッドレスト部32と接続し、その下端が枢軸22よりも前方で後脚14の上端部と接続する。リンク部材38は、紐ないしベルトであってもよいし、幼児用座席31の側部を区画する布であってもよいし、あるいは容易に折れ曲がらない棒部材であってもよい。
【0055】
図9に示すように乳母車の展開状態で、ヘッドレスト部32は背もたれ部33から起き上がって使用される。これに対し乳母車の折り畳み状態で、ヘッドレスト部32を倒して折り畳むとよい。この実施形態によれば、折り畳み操作の際、後脚14の上端部が枢軸22を中心として下方へ回動する。かかる後脚14の回動に伴ってリンク部材38がヘッドレスト部を下方へ引っ張り、ヘッドレスト部を自動的に折り返すことができる。
【0056】
動作機構51は、摺動部材52と、ワイヤ53と、操作子54と、ばね57,60とを有し、乳母車の操作者が操作子54に入力する操作に応じてロック部材42を第1〜第3位置のいずれかの位置にする。
【0057】
図12は、
図10に対応する座席フレーム部材等を拡大して示す縦断面図である。
図13は、
図11に対応する座席フレーム部材等を拡大して示す縦断面図である。
図14は、
図12および
図13に対応するロック部材の横断面図である。
図9〜
図14は乳母車の展開状態を表す。特に
図12および
図14はロック部材の第1位置を表す、
図15は、ロック部材を取り出して示す断面図である。摺動部材52は押し棒15の下端部に内蔵され、押し棒15の長手方向に摺動可能である。摺動部材52の側面には、窪み55と、窪み55の底面であって押し棒15の長手方向に対して傾斜する傾斜面56とが形成されている。
【0058】
摺動部材52の上端はワイヤ53の下端と結合する。動作機構51の接続手段であるワイヤ53は、押し棒15およびハンドル部材16に沿って延び、ワイヤ53の上端はハンドル部材16の幅方向中央に設けられた操作子54と接続する。乳母車の操作者が、動作機構51の操作手段である操作子54を全く押し込まないときと、1段階押しこむときと、2段階押しこむときとに対応して、ワイヤ53が摺動部材52を上方へ段階的に引き上げ、摺動部材52はロック部材42を後述するように第1位置と、第3位置と、第2位置とに順次変位させる。なお図示はしなかったが、一対の座席フレーム部材12のそれぞれに動作機構51および展開状態ロック機構41を設ける場合であっても、一対のワイヤの上端同士を1個の操作子54と接続すればよく、操作子54は1個で足りる。
【0059】
押し棒15のうち摺動部材52よりも上方の箇所には、境界壁61が形成される。境界壁61は押し棒15の内部空間を上下に区画する。境界壁61にはワイヤ53が通るために十分な内径を有する孔が形成され、境界壁61と摺動部材52との間にはばね60が縮設される。ばね60は摺動部材52を下方へ付勢する。
【0060】
一対の後脚14の間には座面シート35が張り渡されている。座面シート35は幼児用座席の座部を構成する布地であって、枢軸22よりも前方から後方まで跨る後脚14の上端領域に巻き付けるように固定されている。また座面シート35は、背もたれ部33の下端縁と接続する。
【0061】
座席フレーム部材12は前脚11および押し棒15の2本を受け入れるために十分な断面積を有する細長い箱体である。座席フレーム部材12の両端には前脚11が通過するための孔12c,12dと、押し棒15が通過するための孔12e,12fがそれぞれ形成される。
【0062】
座席フレーム部材12の上端部12bに配設されたロック部材42は、展開状態において、押し棒15の下端部の外周と対向する。ロック部材42は
図15に示すように、プレート42pと、プレート42pの両端からそれぞれ突出する長突起42aおよび短突起42bを有する。プレート42pは
図14に示すように、座席フレーム部材12の外周に付設された動作機構カバー58の内部に収容される。そしてプレート42pは、動作機構カバー58の内部に縮設されたばね57によって、座席フレーム部材12に近づくように付勢される。
【0063】
座席フレーム部材12の外周のうち動作機構カバー58が付設された箇所には2つの貫通孔12h,12jが形成される。貫通孔12h,12jは長突起42aおよび短突起42bをそれぞれ受け入れる。
【0064】
長突起42aおよび短突起42bは、
図14に示すように互いに間隔を空けて平行に突出して、座席フレーム部材12の長手方向と直交する方向に延びる。これらのうち長突起42aは、
図12に示すように、押し棒15の下端部の外周に形成された被係合部44(孔)を貫通するよう係合し、その先端が窪み55まで延びている。展開状態において、長突起42aは窪み55の最も窪んだ箇所と対向し、ロック部材42はばね57によって摺動部材52へ付勢されるため、長突起42aの先端は窪み55の最も窪んだ箇所まで進入している。これによりロック部材42は押し棒15に最も近い第1位置にされる。かかる第1位置において、ロック部材42の短突起42bは
図14に示すように、前脚11の上端部に形成された被係合部43(孔)を貫通するよう係合する。
【0065】
図16は、他の実施形態が運搬状態にされた様子を示す側面図である。運搬状態の乳母車は連結部材13および前輪11wを地面Gに接地して自立することができる。したがって自立時の前後方向寸法が縮小され、乳母車の置き場所を小さくすることができる。なお
図16において幌37は押し棒15に沿って折り畳まれている。この他、幌37を座席フレーム部材12に沿って折り畳んでもよい。乳母車の操作者がハンドル部材16を掴んで傾斜させると、前輪11wのみが地面Gに接地する。したがって傾斜したまま前輪11wのみ回転することで、運搬状態の乳母車はスーツケースのように運搬可能である。
【0066】
図17は、座席フレーム部材等を拡大して示す縦断面図である。
図18は、
図17に対応する動作機構およびロック部材の横断面図である。
図17および
図18はロック部材の第3位置を表す。上述したようにロック部材42は展開状態で第1位置にされているところ、乳母車の操作者が操作子54を一段階押し込むと、ワイヤ53が摺動部材52を1段階引き上げる。
【0067】
摺動部材52はワイヤ53によって一段階引き上げられて上方へ摺動すると
図17および
図18に示す位置になり、これに伴って長突起42aの先端が傾斜面56に沿って滑り接触して、傾斜面56が長突起42aを押し棒15の外側へ後退させる。これによりロック部材42は第3位置に変位する。
【0068】
ロック部材42はばね57によって摺動部材52に向けて付勢されていることから、
図17に示すように長突起42aは貫通孔の被係合部44を貫通し、その先端が傾斜面56と接触し、ロック部材は第3位置にされる。
【0069】
すなわちロック部材42の第3位置においてロック部材42の長突起42aは貫通孔である被係合部44を貫通して、互いに係合する。またロック部材42の短突起42bは貫通孔である被係合部43から抜け出し、互いに係合しない。
【0070】
図19は、他の実施形態が折り畳み状態にされた様子を示す側面図である。折り畳み状態で、押し棒15が座席フレーム部材12に重なるように引き込まれ、幌37が座席フレーム部材12に沿って折り畳まれ、乳母車の寸法が一層縮小されている。折り畳み状態の乳母車であっても前述した運搬状態のように連結部材13および前輪11wを地面Gに接地して自立することができる。前輪11wを回転自在に軸支するブラケット11bは連結部材13から分離可能である。また後輪14wを回転自在に軸支するブラケット14bは連結部材21から分離可能である。したがって、折り畳み状態の乳母車から前輪11wおよび後輪14wを取り外すことにより、乳母車の寸法をさらに縮小することができ、乳母車の不使用時には置き場所をとらないという点で大変有利である。
【0071】
図20は、座席フレーム部材等を拡大して示す縦断面図である。
図21は、
図20に対応する動作機構およびロック部材の横断面図である。
図20および
図21はロック部材の第2位置を表す。乳母車の操作者が操作子54をさらに一段階押し込むと、ワイヤ53が摺動部材52をさらに1段階引き上げ、摺動部材52が
図17および
図18に示す位置から上方へ一段階摺動して
図20および
図21に示す位置になる。このとき長突起42aの先端が傾斜面56に沿って滑り接触して、傾斜面56が長突起42aを押し棒15の外側へ後退させる。これにより長突起42aは窪み55から退出し、ロック部材42は第2位置に変位する。
【0072】
摺動部材52はワイヤ53によってさらに一段階引き上げられて上方へ摺動し、これに伴って長突起42aの先端は傾斜面56よりも下方の摺動部材側面59と対向する。ロック部材42はばね57によって摺動部材52に向かって付勢されていることから、
図20に示すように長突起42aの先端は側面59と接触し、摺動部材52はロック部材42を外側(動作機構カバー58側)へさらに一段階変位させる。これにより、ロック部材は第2位置にされる。
【0073】
第2位置においてロック部材42の長突起42aは貫通孔である被係合部44から抜け出し、互いに係合しない。またロック部材42の短突起42bも貫通孔である被係合部43から抜け出し、互いに係合しない。
【0074】
上述したように動作機構51によって、ロック部材42は第1位置から第3位置を経て第2位置に変位される。乳母車の操作者は、上述した操作と逆の手順で操作子54を操作することにより、摺動部材52はばね60によって下方へ付勢されて、ロック部材42を第2位置から第3位置を経て第1位置に復帰させることができる。
【0075】
ところで上述した他の本実施形態によれば、動作機構51が、押し棒15の上端側に設けられた操作手段としての操作子54と、押し棒15の下端側に設けられてロック部材42を動作させる動作手段としての摺動部材52と、操作手段と動作手段を接続する接続手段としてのワイヤ53を有する。そして動作機構51は、乳母車の操作者が操作子54に入力する操作に応じて、ロック部材42を第1〜第3位置のいずれかの位置にする。したがってハンドル部材16を把持する操作者は、展開状態ロック機構41を遠隔操作することができ、操作性が向上する。
【0076】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。