(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように芳香性をもたせることは、尿等の悪臭を放つ液体の吸収に用いられることがある吸水処理材において重要なものである。ところが、香料が添加された吸水処理材を製造すると、製造装置に香料が付着してしまう。装置に付着した香料がその後に製造される吸水処理材に移るのを防ぐためには、装置の清掃が必要となる。この清掃は、香料を含んだ材料・造粒物等が通過した部分の全体にわたって行う必要があるため、非常に手間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造後の装置の清掃を容易にしつつ、芳香性を有する吸水処理材を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による吸水処理材の製造方法は、複数の造粒物からなる吸水処理材を製造する方法であって、上記複数の造粒物を形成する工程と、上記造粒物を形成する工程において形成された上記複数の造粒物を包装袋に詰める工程と、上記包装袋内に香料を入れる工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この製造方法においては、包装袋内に香料が入れられる。この香料は包装袋内で造粒物に付着するため、芳香性を有する吸水処理材が得られる。このように包装袋内に香料を入れることにより、それよりも前の工程において製造装置に香料が付着するのを防ぐことができる。したがって、製造後の装置の清掃が容易になる。
【0007】
上記香料を入れる工程は、上記造粒物を包装袋に詰める工程よりも先に行われることが好ましい。その場合、包装袋内の全体に香料が行き渡った状態で造粒物を詰めることができるため、包装袋内の複数の造粒物に万遍なく香料を付着させ易くなる。
【0008】
上記製造方法は、上記包装袋が拡開するように、当該包装袋内に空気を噴射する工程を含み、上記香料は、上記空気と共に上記包装袋内に噴射されることにより、当該包装袋内に入れられてもよい。その場合、包装袋内に空気を噴射するための装置と別に、包装袋内に香料を入れるための装置を設ける必要がないため、製造設備の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造後の装置の清掃を容易にしつつ、芳香性を有する吸水処理材を製造する方法が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明による吸水処理材の製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[吸水処理材]
【0012】
図1は、本実施形態に係る製造方法により得られる吸水処理材を示す模式図である。吸水処理材1は、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物処理材であり、粒状芯部10、及び被覆層部20を備えている。被覆層部20の表面には、香料30が付着している。
<粒状芯部10>
【0013】
粒状芯部10は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はない。粒状芯部10の形状としては、例えば、柱状体(細長形)、扁平形等が考えられる。また、粒状芯部10を構成する材料(芯部材料)としては、保水性能を有している保水性材料であればよく、例えば、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥材質等を用いることができる。これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
紙類は、パルプを原材料としているものであれば種類は問わない。バージンパルプはもちろん、各種の廃材等を用いることができる。例えば、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーで発生するトリムロス、製紙メーカーで発生する紙屑等)、包装紙、板紙、使用済み切符、パンチ屑等を使用することができる。
【0015】
繊維類は、布等の原材料となる糸状の物質であり、種類は問わない。天然繊維であってもよいし化学繊維であってもよい。例えば、繊維工場から廃棄される繊維くず(木綿くず、羊毛くず、麻くず、糸くず、布くず、綿くず、くずまゆ、レーヨンくず、ナイロンくず、ポリエステルくず、ロープくず)等を使用することができる。
【0016】
木材類としては、各種廃木材(構造物の廃木材、木製品の製造で発生する廃木材、木製家具、木製パレット、鉋くず、おがくず、バーク類、梱包材くず、板きれ、廃チップ、伐採・伐根で生じた廃木材、剪定枝、木粉等)を使用することができる。
【0017】
植物類は、種類は問わず、例えば、ササ、竹、落葉、刈草はもちろん、植物性残渣等を使用することもできる。ここで、植物性残渣とは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業又は飲食店等において原料として使用した植物の固形状の不要物をいう。例として、ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、あめかす、海苔かす、でんぷんかす、豆腐かす、おから、あんかす、茶殻、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、米・麦粉、大豆かす、果実の皮・種子、野菜くず、薬草かす、油かす等が挙げられる。
【0018】
プラスチック類は、合成高分子化合物の固形状物質(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)、生分解性プラスチック等)であれば種類は問わない。プラスチック類として、各種廃材を使用してもよい。例えば、廃プラスチック類、廃ポリウレタン、廃スチロール(発泡スチロールを含む)、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくず、廃写真フィルム、廃ポリ容器類、電線の被覆くず、ライニングくず、廃ポリマー、塗料かす、接着剤かす、廃ベークランド(プリント基盤等)等を使用することができる。
【0019】
また、排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材(衛生材メーカーで発生する規格外品の紙おむつの外装体など)のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物、合成樹脂繊維廃材等を使用することもできる。
【0020】
また、排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材等を使用することができる。
【0021】
プラスチック類は灰分が少ないため、それを用いた場合、焼却処分後の減量化が可能となるとともに、焼却時における発熱量を高くすることができる。
【0022】
ゴム類は、伸縮性に優れた高分子材料であれば種類は問わない。天然ゴムであってもよいし合成ゴムであってもよい。ゴム類として、各種廃材を使用してもよい。例えば、廃タイヤ、合成ゴムくず等を使用することができる。
【0023】
有機性汚泥としては、例えば、工場廃水等の処理後に残る泥状物質、各種製造業の製造工程において生ずる泥状物質を用いることができる。例えば、製紙スラッジ、パルプスラッジ、下水汚泥、消化汚泥(余剰汚泥)、糊かす等を使用することができる。
【0024】
芯部材料として、性状が異なる2種類以上の保水性材料を適宜組み合わせた場合、それらの材料の相乗効果により、保水性能を効果的に向上させることができる。
【0025】
例えば、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)との組み合わせ、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)と木材類(木粉)との組み合わせ、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ、植物性残渣(オカラ等)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ、プラスチック類(塩化ビニル壁紙)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ等が考えられる。
【0026】
また、保水性能が低い保水性材料を用いた場合であっても、他の保水性材料と組み合わせることにより、高い保水性能を実現することが可能である。それゆえ、保水性能が低い材料であっても保水性材料として好適に用いることができるので、保水性材料の選択の幅が広がる。
<被覆層部20>
【0027】
被覆層部20は、粒状芯部10を覆っている。本実施形態において被覆層部20は、粒状芯部10の表面全体を覆っている。
【0028】
被覆層部20は、使用時に尿等の液体を吸収した吸水処理材1どうしを付着させて塊状にする機能を有する。被覆層部20を構成する材料(被覆材料)としては、例えば、接着性材料及び紙粉の混合物を用いることができる。
【0029】
接着性材料としては、公知の各種の物質を用いることができ、例えば、糊料、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、吸水性樹脂等が存在する。具体的には、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0030】
紙粉としては、例えば、薄葉紙、薄葉紙廃材、衛生用紙、衛生用紙廃材、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、化粧紙用紙、化粧紙廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙綿、紙綿廃材、紙タオル、紙タオル廃材、便座シート廃材、機械パルプ、機械パルプ廃材、化学パルプ、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、木材パルプ、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉等を用いることができる。これらの2種類以上の材料を混合して使用してもよい。何れも、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用される。
[製造方法]
【0031】
図2(a)及び
図2(b)並びに
図3を参照しつつ、本発明による吸水処理材の製造方法の一実施形態を説明する。この製造方法は、複数の造粒物からなる吸水処理材を製造する方法であって、造粒物形成工程、空気噴射工程、香料添加工程、及び袋詰め工程を含んでいる。
【0032】
<造粒物形成工程>
造粒物形成工程は、複数の造粒物を形成する工程である。本実施形態において造粒物形成工程は、造粒工程、被覆工程、分粒工程及び乾燥工程を含んでいる。
【0033】
造粒工程は、粒状芯部10を形成する工程である。本工程においては、芯部材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された芯部材料を所定の割合でミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水した後、当該芯部材料を造粒機によって押出造粒することにより、粒状芯部10を形成する(
図2(a))。
【0034】
被覆工程は、粒状芯部10を覆うように被覆層部20を形成する工程である。本工程においては、コーティング装置等を用いて、粒状芯部10の周囲に被覆材料を散布又は噴霧することにより、被覆層部20を形成する。このようにして、複数の造粒物1aを形成する(
図2(b))。
【0035】
分粒工程は、造粒物1aの寸法が所定の規格になるように分粒する工程である。本工程においては、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された造粒物1aを通過させることにより、所定の規格を満たす造粒物1aのみを抽出する。
【0036】
乾燥工程は、前工程で抽出された造粒物1aを乾燥機で乾燥させる工程である。粒状芯部10の含水率が高過ぎると、吸水処理材1の保存時にカビ等が生じる原因となる。それゆえ、本工程においては、造粒物1aの含水率が3重量%以上12重量%以下の範囲内となるように乾燥させることが好ましい。
<空気噴射工程、香料添加工程>
【0037】
空気噴射工程は、包装袋40が拡開するように、包装袋40内に空気60を噴射する工程である。本工程においては、ノズル50から包装袋40内に空気60を噴射することにより、包装袋40を膨張させる。これにより、包装袋40が拡開する(
図3)。
【0038】
香料添加工程は、包装袋40内に香料30を入れる工程である。本実施形態において香料30は、空気60と共に、ノズル50から包装袋40内に噴射される。これにより、包装袋40内に香料30が入れられる。なお、香料30としては、公知の各種の物質を用いることができる。
<袋詰め工程>
【0039】
袋詰め工程は、造粒物形成工程において形成された複数の造粒物1aを包装袋40に詰める工程である。本工程においては、香料30が入れられた包装袋40に、所定の量の造粒物1aを詰めた後、包装袋40の開口部を封止する。包装袋40内で、造粒物1aの表面に香料30が付着する。これにより、袋詰めされた複数の吸水処理材1が得られる。
[作用効果]
【0040】
本実施形態の製造方法においては、包装袋40内に香料30が入れられる。この香料30は包装袋40内で造粒物1aに付着するため、芳香性を有する吸水処理材1が得られる。このように包装袋40内に香料30を入れることにより、それよりも前の工程において製造装置に香料30が付着するのを防ぐことができる。したがって、製造後の装置の清掃が容易になる。よって、製造後の装置の清掃を容易にしつつ、芳香性を有する吸水処理材1を製造する方法が実現されている。
【0041】
これに対して、造粒物形成工程において香料を添加した場合、製造装置の広い範囲に渡って香料が付着するため、清掃に手間がかかる。もし装置に香料が付着したままの状態で吸水処理材の製造を続けると、その後に製造される吸水処理材に当該香料が移ることにより、過剰な量の香料が吸水処理材に付着しかねない。そうなると、吸水処理材の芳香が強くなり過ぎるばかりか、吸水処理材中の材料(例えばポリマー)に影響を及ぼすことさえある。本実施形態によれば、かかる問題を回避することができる。
【0042】
香料添加工程は、袋詰め工程よりも先に行われている。これにより、包装袋40内の全体に香料30が行き渡った状態で造粒物1aを詰めることができるため、包装袋40内の複数の造粒物1aに万遍なく香料30を付着させ易くなる。
【0043】
香料30は、空気60と共に包装袋40内に噴射されることにより、包装袋40内に入れられている。これにより、包装袋40内に空気60を噴射するための装置と別に、包装袋40内に香料30を入れるための装置を設ける必要がないため、製造設備の簡素化を図ることができる。
【0044】
香料30を包装袋40内に噴射しているため、香料30を包装袋40の外で噴射する場合(例えば、包装袋40に詰められる前の造粒物1aに噴射する場合)に比べて、無駄になる香料30の量を少なくすることができる。
[本発明の他の実施形態]
【0045】
本発明による吸水処理材は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、空気60と共に香料30を噴射する例を示した。しかし、香料30は、空気60とは別に包装袋40内に噴射されてもよいし、噴射以外の方法により包装袋40内に入れられてもよい。また、空気噴射工程を行うことは必須ではなく、包装袋40の拡開は、その他の方法により行ってもよい。
【0046】
上記実施形態においては、香料添加工程が袋詰め工程よりも先に行われる例を示した。しかし、香料添加工程は、袋詰め工程よりも後に行われてもよいし、袋詰め工程と同時に行われてもよい。すなわち、香料30は、造粒物1aを詰めた後に包装袋40内に入れられてもよいし、造粒物1aを詰めるのと同時に包装袋40内に入れられてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、粒状芯部10が被覆層部20で覆われた複層構造の吸水処理材1の例を示した。しかし、被覆層部20を設けることは必須ではなく、吸水処理材1は単層構造であってもよい。