【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人 電子情報通信学会主催「電子情報通信学会2012年総合大会において「モバイルネットワークのパケット通信網におけるP2P実現方式提案」2012年3月22日に発表、及び一般社団法人 電子情報通信学会主催、2012年3月20日〜2012年3月23日 「電子情報通信学会2012年総合大会において「モバイルネットワークのパケット通信網におけるP2P実現方式提案」電子情報通信学会2012年総合大会講演論文集 B−6−51 51頁 2012年3月6日発行、に発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年のネットワーク通信および情報機器の発達に伴い、携帯電話機やパーソナルコンピュータなどの従来の通信端末以外にも、通信可能な端末が広く普及している。例えば、通信モジュールを具備するゲーム機器が普及し、オンライン上でほかのゲームユーザと対戦することが可能となっている。
【0003】
また、このような通信モジュールを具備する端末間で、パケット通信を利用したP2P(ピアツーピア:Peer to Peer)接続も普及している。このP2P接続は、携帯電話機やスマートフォンなどの通信規格である3GPP(3rd Generation Partnership Project)においても用いられている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0004】
3GPPにおいてP2P接続を実現する際、コア/無線ネットワークでパスを設定した後、PDN(Public Data Network:公衆データ網)を介してサーバでパケットを折り返し、接続先の端末にパケットを着信させる。具体的には
図10の通信システム907を参照して説明する。発信端末901aから着信端末901bに接続する際、パケットは、発側基地局902a、発側加入者パケット交換機903a、発側中継パケット交換機904a、アプリケーションサーバ906、着側中継パケット交換機904b、着側加入者パケット交換機903b、着側基地局902bを介する。
【0005】
ここで発信端末901aは、発側中継パケット交換機904aでIPアドレスの払い出しを受け、着信端末901bは、着側中継パケット交換機904bでIPアドレスの払い出しを受けることにより、互いに通信する。
【0006】
コアネットワークでは、IP接続による発信端末901aの接続先の端末を把握することができない。そこで、アプリケーションサーバ906が、メールアドレス等の着信端末901bの識別子を受信し、着信端末901bの識別子に基づいて着信端末901bを探索し、IPアドレスをマッチングする方法がとられている。
【0007】
各装置を3GまたはLTEの仕様にあてはめると、発側基地局902aおよび着側基地局902bは、RNC(Radio Network Controller)またはeNodeB(evolved Node B)などに相当する。発側加入者パケット交換機903aおよび着側加入者パケット交換機903bは、SGSN(Serving GPRS Support Node)またはS−GW(Serving Gateway)およびMME(Mobility Management Entity)などに相当する。発側中継パケット交換機904aおよび着側中継パケット交換機904bは、GGSN(Gateway GPRS Support Node)またはP−GW(PDN Gateway)などに相当する。
【0008】
ここで、3GPPにおけるアーキテクチャは、非特許文献1の5.4章に記載され、発信処理については、非特許文献1の9章、特に9.2.2章に記載されている。また、LTEにおけるアーキテクチャは、非特許文献2の4章に記載され、発信処理については、非特許文献2の5.3.2章および5.3.4章に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0023】
(通信システムの概要)
本発明の実施の形態に係る通信システム7は、発信端末1aおよび着信端末1bのピアツーピア通信を支援する。通信システム7は、PDNまでパケットをルーティングさせることなく、コア/無線ネットワーク内でルーティングを完結させることにより、ネットワークリソースを有効に活用する。本発明の実施の形態においては特に、ダイレクトトンネルを適用しない、インダイレクト方式による通信方法を説明する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る通信システム7は、
図1に示すように、発信端末1a、着信端末1b、発側基地局2a、着側基地局2b、発側加入者パケット交換機3a、着側加入者パケット交換機3bおよび加入者情報管理サーバ5を備える。
図1に示す例においては、発側中継パケット交換機4aおよび着側中継パケット交換機4bも記載されているが、本発明の実施の形態に係る発信端末1aおよび着信端末1bのP2P接続においては、中継パケット交換機4はなんら作用しなくても良い。
【0025】
本明細書において、発信端末1aおよび着信端末1bを区別しない場合、単に端末1と記載する場合がある。発側加入者パケット交換機3aおよび着側加入者パケット交換機3bを区別しない場合、単に加入者パケット交換機3と記載する場合がある。発側中継パケット交換機4aおよび着側中継パケット交換機4bを区別しない場合、単に中継パケット交換機4と記載する場合がある。
【0026】
端末1は、P2Pの通信モジュールを備える情報端末であって、例えば、携帯電話機、スマートフォン、ゲーム機などである。基地局2は、端末1に無線ネットワークを提供し、端末1および加入者パケット交換機3間で、パケットを中継する。加入者パケット交換機3は、基地局2、中継パケット交換機4およびほかの加入者パケット交換機3間で、パケットを中継する。
【0027】
加入者情報管理サーバ5は、HSS(Home Subscriber Server)などの、加入者情報を管理するサーバである。本発明の実施の形態において加入者情報管理サーバ5は、端末1の位置情報として、この端末1を収容する基地局2に接続する加入者パケット交換機3のアドレスとを対応づけて保持する。
【0028】
図1に示す通信システム7は、発信端末1aおよび着信端末1bをダイレクトトンネルを適用することなく、P2P接続する際の制御プレーンパスおよびユーザプレーンパスを説明する。発信端末1aと発側基地局2aとの間、発側基地局2aと発側加入者パケット交換機3aとの間、発側加入者パケット交換機3aと着側加入者パケット交換機3bとの間、着側加入者パケット交換機3bと着側基地局2bとの間、および着側基地局2bと着信端末1bとの間に、それぞれ、PC11ないしPC15の5つの制御プレーンパスと、PU11ないしPU15の5つのユーザプレーンパスが張られる。
【0029】
これにより、本発明の実施の形態に係る通信システム7は、
図10に示す場合と比べて、一つのユーザプレーンパスを削減することができる。
【0030】
(通信方法)
図2ないし
図4を参照して、本発明の実施の形態に係る通信方法を説明する。
【0031】
まず着信端末1bは、加入者情報管理サーバ5に着信端末1bの位置を登録する。具体的には着信端末1bは、ステップS101において着側加入者パケット交換機3bに、着信端末1bの電話番号とともに、位置登録要求を送信する。着側加入者パケット交換機3bは、着信端末1bから位置登録要求を受信すると、ステップS102において加入者情報管理サーバ5に、着側加入者パケット交換機3bのアドレスおよび着信端末1bの電話番号とともに、位置登録要求を送信する。
【0032】
加入者情報管理サーバ5は位置登録要求を受信すると、ステップS103において、加入者識別子をキーに、加入者の在圏交換機アドレスを登録する。ここで加入者識別番号は、例えば、着信端末1bの電話番号である。加入者の在圏交換機アドレスは、着側加入者パケット交換機3bのアドレスである。
【0033】
着信端末1bの位置登録が完了すると、ステップS104において加入者情報管理サーバ5は、ステップS102に対する位置登録応答を着側加入者パケット交換機3bに送信する。ステップS105において着側加入者パケット交換機3bは、ステップS101に対する位置登録応答を着信端末1bに送信する。
【0034】
このように着信端末1bの在圏交換機アドレスが、加入者情報管理サーバ5に登録される。
【0035】
発信端末1aが着信端末1bとP2P接続する際、
図3にしめすように発信端末1aは、ステップS201においてパケット発信要求を発側加入者パケット交換機に送信する。このパケット発信要求は、発信端末1aの電話番号、着信端末1bの電話番号およびP2P発信である旨の情報を含む。このパケット発信要求に伴い、PC11およびPC12の制御プレーンパスが設定される。
【0036】
パケット発信要求を受信すると、発側加入者パケット交換機3aは、ステップS202においてパケット発信要求を分析する。ここでパケット発信要求は、発信端末1aが、着信端末1bとP2P接続を希望していることを示す。従って、ステップS203において発側加入者パケット交換機3aは、加入者情報管理サーバ5に、着信端末1bの在圏を問い合わせるために、在圏問い合わせ要求を送信する。この在圏問い合わせ要求には、発信端末1aおよび着信端末1bの電話番号を含む。ステップS204において加入者情報管理サーバ5は、着信端末1bの在圏交換機アドレスを検索する。ここで検索される在圏交換機アドレスは、
図2のステップS103で登録された着側加入者パケット交換機3bのアドレスである。在圏交換機アドレスが検索されると、ステップS208において加入者情報管理サーバ5は、発側加入者パケット交換機3aに、着信端末1bの在圏交換機アドレスを送信する。
【0037】
一方発側加入者パケット交換機3aは、ステップS202において発信分析をした後、ステップS205において、発側基地局2aに無線ベアラ設定要求を送信する。ステップS206において、発信端末1aと発側基地局2aとの間で無線ベアラが設定されると、ステップS207において発側基地局2aは、無線ベアラを設定した旨の応答を発側加入者パケット交換機3aに送信する。これにより、PU11およびPU12のユーザプレーンパスが設定される。
【0038】
その後、ステップS209において発側加入者パケット交換機3aは、着側加入者パケット交換機3bに、パス設定要求を送信する。このパス設定要求は、ダイレクトトンネルフラグ、発側交換機アドレス、着側在圏交換機アドレス、発側基地局アドレスおよびP2P接続である旨の情報を含む。
図3に示す例において、ダイレクトトンネルフラグは、「否」に設定される。発側交換機アドレスは、発側加入者パケット交換機3aのアドレスであって、ユーザプレーンパスPU13および制御パスPC13を設定するために用いられる。着側在圏交換機アドレスは、着側加入者パケット交換機3bのアドレスであって、ステップS208で取得したアドレスである。発側基地局アドレスは、発信端末1aを収容する基地局のアドレスであって、発側基地局2aのアドレスである。ここで、発側基地局2aのアドレスは、発側が設定したダイレクトトンネルフラグが「否」の場合、パス設定要求に含まれなくても良い。
【0039】
パス設定要求を受信すると、ステップS210において着側加入者パケット交換機3bは、ステップS209で受信したパス設定要求が、ダイレクトトンネルを適用するフラグを有しているか否かに基づいて、ステップS211において着側基地局2bに無線ベアラ設定要求を送信する。ここでは、ダイレクトトンネルを適用しない場合の処理を説明する。
【0040】
ダイレクトトンネルを適用しない場合、この無線ベアラ設定要求は、着側在圏交換機アドレスと、着信端末1bの電話番号を含む。着側在圏交換機アドレスは、着側基地局2bおよび着側加入者パケット交換機3b間でPU14のユーザプレーンパスを設定するために用いられる。着信端末1bの電話番号は、着信端末1bおよび着側基地局2b間で無線ベアラを設定するために用いられる。
【0041】
ステップS212において、着信端末1bおよび着側基地局2b間で無線ベアラが設定されると、ステップS213において着側基地局2bは、無線ベアラを設定した旨の応答を着側加入者パケット交換機3bに送信する。これにより、PC14およびPC15の制御プレーンパスおよびPU14およびPU15のユーザプレーンパスが設定される。
【0042】
ステップS214において着側加入者パケット交換機3bは、ステップS209に対するパス設定応答を、発側加入者パケット交換機3aに送信する。ここで、パス設定応答は、着側在圏交換機アドレスを含む。発側加入者パケット交換機3aが、パス設定応答を受信すると、PC13の制御プレーンパスおよびPU13のユーザプレーンパスが設定される。ステップS215において発側加入者パケット交換機3aは、ステップS201に対するパケット発信応答を、発信端末1aに送信する。
【0043】
このようにPU11ないしPU15についてリソースを割当て、これらのユーザプレーンパスが設定されると、
図4の処理に進む。具体的には、ステップS301において着信端末1bはDHCPサーバ機能を起動し、ステップS302において発信端末1aはDHCPクライアント機能を起動する。
【0044】
ステップS303において発信端末1aは、着信端末1bにDHCP Discoverコマンドを送信する。これに対して、ステップS304において着信端末1bは、発信端末1aにDHCP Offerコマンドを送信する。さらにステップS305において発信端末1aは、着信端末1bにDHCP Requestコマンドを送信する。これに対して、ステップS306において着信端末1bは、発信端末1aにDHCP Ackコマンドを送信する。
【0045】
ここでステップS303ないしステップS306において、PU11ないしPU15の5つのユーザプレーンパスで、データが送受信される。このような処理により、発信端末1aおよび着信端末1bにIPアドレスが払い出され、IPアドレスに基づいてP2P接続を実現することができる。
【0046】
図4に示す例において、着信端末1bがDHCPサーバ機能を起動し、発信端末1aがDHCPクライアント機能を起動する場合を説明したが、これに限られない。例えば、発信端末1aがDHCPサーバ機能を起動し、着信端末1bがDHCPクライアント機能を起動しても良い。
【0047】
(通信システムの概要)
図5を参照して、本発明の実施の形態に係る通信システム7の各装置の機能ブロックを説明する。通信システム7の各装置は、コンピュータがプログラムを実行することにより実現する。
【0048】
加入者情報管理サーバ5は、交換機アドレスデータ51、位置登録手段52および交換機アドレス応答手段53を備える。
【0049】
交換機アドレスデータ51は、記憶装置に記憶されるデータであって、端末1の識別子と、端末1の位置に対応する加入者パケット交換機3の識別子とを対応づけたデータである。ここで端末1の識別子は、MSISDNなどであって、具体的には電話番号である。
図2に示すように、交換機アドレスデータ51は、着信端末1bの電話番号と、着側加入者パケット交換機3bのアドレスとを対応づける。
【0050】
位置登録手段52は、加入者パケット交換機3の要求に基づいて、端末1の識別子と、要求元の加入者パケット交換機3のアドレスとを対応づけて、交換機アドレスデータ51に記憶する。加入者パケット交換機3のアドレスは、例えばIPアドレスである。位置登録手段52の処理は、
図2のステップS102ないしステップS104に相当する。
【0051】
交換機アドレス応答手段53は、加入者パケット交換機3の要求に基づいて、加入者パケット交換機3から端末1の識別子が入力されると、交換機アドレスデータ51から入力された端末1の識別子に対応する加入者パケット交換機3の識別子を取得する。さらに交換機アドレス応答手段53は、取得した加入者パケット交換機3の識別子を、要求元の加入者パケット交換機3に送信する。交換機アドレス応答手段53の処理は、
図3のステップS203、S204およびステップS208の処理に相当する。
【0052】
加入者パケット交換機3は、交換機アドレス処理手段31、無線ベアラ設定要求手段32およびパス設定手段33を備える。加入者パケット交換機3は、発側の場合と着側の場合とで異なる動作をする。
【0053】
交換機アドレス処理手段31は、加入者情報管理サーバ5に加入者パケット交換機のアドレスを登録したり、加入者パケット交換機のアドレスを取得する。
【0054】
加入者パケット交換機3が着側の場合、交換機アドレス処理手段31は、着信端末1bの電話番号と着側加入者パケット交換機3bのアドレスとを加入者情報管理サーバ5に送信して、交換機アドレスデータ51への登録を要求する。この処理は、
図2のステップS102ないしステップS104に相当する。
【0055】
加入者パケット交換機3が発側の場合、交換機アドレス処理手段31は、加入者パケット交換機3が収容する基地局2から、ピアツーピア通信の発信端末1aの識別子と着信端末1bの識別子を受信すると、加入者情報管理サーバ5から、着信端末1bを収容する基地局2に接続する加入者パケット交換機3のアドレスを取得する。具体的には加入者パケット交換機3は、着信端末1bの電話番号を加入者情報管理サーバ5に送信して、交換機アドレスデータ51に登録された着信端末1bの着側加入者パケット交換機3bのアドレスを取得する。この処理は、
図3のステップS203、S204およびS208に相当する。
【0056】
無線ベアラ設定要求手段32は、P2P接続する際、端末1および基地局2間に無線ベアラを設定するよう要求する。この処理は、
図3のステップS205およびステップS207、またはステップS210およびステップS212に相当する。
【0057】
パス設定手段33は、加入者パケット交換機3間でパスを設定する処理である。加入者パケット交換機3が発側の場合、パス設定手段33は、交換機アドレス処理手段31が取得したアドレスに対応する、着側加入者パケット交換機3bに、パス設定要求を送信する。また加入者パケット交換機3が着側の場合、パス設定手段33は、発側加入者パケット交換機3aから受信したパス設定要求に基づいて無線ベアラを設定する。この処理は、
図3のステップS209、ステップS214およびこれらに付随する処理に相当する。
【0058】
さらにパス設定手段33は、ダイレクトトンネルを適用するか否かに基づいてユーザプレーンパスを設定する。本発明の実施の形態においてダイレクトトンネルは適用しない。従ってパス設定手段33は、パスの設定の要求元の加入者パケット交換機3と自身の加入者パケット交換機3との間に、ユーザプレーンパスを設定する。具体的にはパス設定手段33は、着側加入者パケット交換機3bおよび発側加入者パケット交換機3a間にPU13のユーザプレーンパスを設定するとともに、着側基地局2bおよび着側加入者パケット交換機3b間にPU14のユーザプレーンパスを設定する。
【0059】
基地局2は、端末1からのデータを加入者パケット交換機3に送信するとともに、加入者パケット交換機3からのデータを端末1に送信する。さらに基地局2は、加入者パケット交換機3からの要請に基づいて、端末1と無線ベアラを設定する無線ベアラ設定手段21を備える。この処理は、
図3のステップS206またはステップS211に相当する。
【0060】
端末1は、パケット送受信手段11とIPアドレス処理手段12を備える。
【0061】
端末1が発信端末1aの場合、パケット送受信手段11は、着信端末1bとピアツーピア接続する際、端末1の識別子および着信端末1bの識別子を、この端末1を収容する基地局2を介して、基地局2に接続する加入者パケット交換機3に送信する。具体的には、発信端末1aは、発信端末1aの電話番号および着信端末1bの電話番号を、発側基地局2aを介して、発側加入者パケット交換機3aに送信する。さらに、発信端末1aおよび着信端末1b間にユーザプレーンパスが設定されると、パケット送受信手段11は、発側加入者パケット交換機3aから、発側基地局2aを介して、パケット発信応答を受信する。この処理は、
図3のステップS201およびステップS215に相当する。
【0062】
IPアドレス処理手段12は、ピアツーピア接続する際、通信先の端末1にIPアドレスを割り当てる。このとき、IPアドレス処理手段12は、既に設定されたユーザプレーンパスを介して、IPアドレスを割り当てる。IPアドレス処理手段12は、DHCPサーバ機能またはDHCPクライアント機能を実現することにより、通信先の端末1にIPアドレスを割り当てる。
【0063】
例えば発信端末1aがDHCPクライアント機能を実現し、着信端末1bがDHCPサーバ機能を実現する場合、着信端末1bのIPアドレス処理手段12が、発信端末1aにIPアドレスを割り当てる。この処理は、
図4のステップS301ないしステップS306に相当する。
【0064】
逆に、着信端末1bがDHCPクライアント機能を実現し、発信端末1aがDHCPサーバ機能を実現しても良い。この場合、発信端末1aのIPアドレス処理手段12が、着信端末1bにIPアドレスを割り当てる。
【0065】
このように本発明の実施の形態に係る通信方法は、各端末1が、DHCPのサーバ機能またはクライアント機能を搭載することにより、端末1間でIPアドレスの付与を実現する。また本発明の実施の形態に係る通信方法は、発側加入者パケット交換機3aと着側加入者パケット交換機3bとでユーザプレーンパスを設定する。これにより、発信端末1aと着信端末1bとのP2P接続におけるパスを、コアネットワーク内で折り返すことができる。
【0066】
この結果、本発明の実施の形態に係る通信方法は、ユーザプレーンパスの数を、削減することができる。具体的には、従来方式では、
図10に示すように、6本の制御プレーンパスと、8本のユーザプレーンパスとを要していたところ、本発明に係る通信方法は、5本の制御プレーンパスと、5本のユーザプレーンパスとで足りる。これにより、ネットワークリソースを有効に活用することができる。また、従来方法と比べて通信経路を短くすることができるので、回線速度の向上が期待できる。
【0067】
さらに本発明の実施の形態に係る通信方法は、加入者パケット交換機3間でユーザプレーンパスを設定するので、同一キャリア内のP2P接続にも、異なるキャリアとのP2P接続にも適用することができる。
【0068】
(変形例)
図6および
図7を参照して、本発明の変形例に係る通信方法を説明する。本発明の変形例に係る通信システム7aは、本発明の実施の形態に係る通信システム7と同様に、PDNまでパケットをルーティングさせることなく、コア/無線ネットワーク内でルーティングを完結させることにより、ネットワークリソースを有効に活用する。本発明の変形例においては、ダイレクトトンネルを適用する、ダイレクト方式による通信方法を説明する。
【0069】
本発明の変形例に係る通信システム7aは、
図6に示すように、
図1に示した本発明の実施の形態に係る通信システム7と同様の構成を備えるが、パスの設定が異なる。
【0070】
図6に示す通信システム7aは、発信端末1aおよび着信端末1bをダイレクトトンネルを適用して、P2P接続する際の制御プレーンパスおよびユーザプレーンパスを説明する。発信端末1aと発側基地局2aとの間、発側基地局2aと発側加入者パケット交換機3aとの間、発側加入者パケット交換機3aと着側加入者パケット交換機3bとの間、着側加入者パケット交換機3bと着側基地局2bとの間、および着側基地局2bと着信端末1bとの間に、それぞれ、PC11ないしPC15の5つの制御プレーンパスが張られる。さらに、発信端末1aと発側基地局2aとの間、発側基地局2aと着側基地局2bとの間、および着側基地局2bと着信端末1bとの間に、PU11ないしPU13の3つのユーザプレーンパスが張られる。
【0071】
これにより、本発明の変形例に係る通信システム7aは、
図10に示す場合と比べて、
1つの制御プレーンパスと、5つのユーザプレーンパスを削減することができる。
【0072】
(通信方法)
図7を参照して、本発明の変形例に係る通信方法を説明する。ここで、
図2を参照して説明した処理は、本発明の変形例に係る通信方法においても、同様に実行されるので、説明を省略する。また、
図7に示す本発明の変形例に係る通信方法において、ユーザプレーンパスが異なるものの、そのほかの処理は、本発明の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
図7に示す本発明の変形例に係る通信方法は、ダイレクトトンネルを適用してユーザプレーンパスを設定する。従って、本発明の変形例に係る通信方法は、
図3に示すステップS212以降の処理が異なる。
【0073】
パス設定要求を受信すると、ステップS210において着側加入者パケット交換機3bは、ステップS209で受信したパス設定要求が、ダイレクトトンネルを適用するフラグを有しているか否かに基づいて、ステップS211において着側基地局2bに無線ベアラ設定要求を送信する。ここでは、ダイレクトトンネルを適用する場合の処理を説明する。
【0074】
ダイレクトトンネルを適用する場合、この無線ベアラ設定要求は、発側基地局アドレスと、着側在圏交換機アドレスと、着信端末1bの電話番号を含む。発側基地局アドレスは、着側基地局2bおよび発側基地局2a間でPU12のユーザプレーンパスを設定するために用いられる。着側加入者パケット交換機アドレスは、着側交換機3bおよび着側基地局2b間でPC14の制御プレーンパスを設定するために用いられる。着信端末1bの電話番号は、着信端末1bおよび着側基地局2b間で無線ベアラを設定するために用いられる。
【0075】
ステップS212において、着信端末1bおよび着側基地局2b間で無線ベアラが設定されると、ステップS213において着側基地局2bは、無線ベアラを設定した旨の応答を着側加入者パケット交換機3bに送信する。これにより、PC14およびPC15の制御プレーンパスおよびPU13のユーザプレーンパスが設定される。
【0076】
ステップS214において着側加入者パケット交換機3bは、ステップS209に対するパス設定応答を、発側加入者パケット交換機3aに送信する。ステップS215において発側加入者パケット交換機3aは、ステップS201に対するパケット発信応答を、発信端末1aに送信する。このとき、発側基地局2aがパケット発信応答を受信すると、着側基地局2bとの間で、PU12のユーザプレーンパスが設定される。
【0077】
このようにPU11ないしPU13についてリソースを割当て、これらのユーザプレーンパスが設定されると、
図8の処理に進む。
図8に示す処理は、
図4を参照して説明した処理と同様である。但し、ステップS303ないしステップS306において、PU11ないしPU13の3つのユーザプレーンパスで、データが送受信される。このような処理により、発信端末1aおよび着信端末1bにIPアドレスが払い出され、IPアドレスに基づいてP2P接続を実現することができる。
【0078】
本発明の変形例に係る加入者パケット交換機3は、ダイレクトトンネルを適用したパスを設定するので、
図5の加入者パケット交換機3のパス設定手段33の処理が異なる。具体的には、変形例に係るパス設定手段33は、ダイレクトトンネルを適用したパスの設定が要求された場合、発信端末1aを収容する発側基地局2aと着信端末1bを収容する着側基地局2bとの間に、ユーザプレーンパスを設定する。
【0079】
このように本発明の変形例に係る通信方法は、発側基地局2aと着側基地局2bとでユーザプレーンパスを設定する。これにより、発信端末1aと着信端末1bとのP2P接続におけるパスを、コアネットワーク内で折り返すことができる。また、本発明も変形例に係る通信方法においても、各端末1が、DHCPのサーバ機能またはクライアント機能を搭載することにより、端末1間でIPアドレスの付与を実現する。
【0080】
この結果、本発明の変形例に係る通信方法は、ユーザプレーンパスの数を、削減することができる。具体的には、従来方式では、
図10に示すように、6本の制御プレーンパスと、8本のユーザプレーンパスとを要していたところ、本発明に係る通信方法は、5本の制御プレーンパスと、3本のユーザプレーンパスとで足りる。これにより、ネットワークリソースを有効に活用することができる。また、従来方法と比べて通信経路を短くすることができるので、回線速度の向上が期待できる。
【0081】
本発明の変形例に係る通信方法は、基地局2間でユーザプレーンパスを設定するので、同一キャリア内において、顕著な効果を得ることができる。ここで、同一キャリア内の接続においては、本発明の変形例に係る通信方法で示すダイレクト方式を適用し、異なるキャリアとの接続においては、本発明の実施の形態に係る通信方法で示すインダイレクト方式を適用するなど、任意に組み合わせても良い。
【0082】
(実装例)
図1ないし
図8を参照して、本発明の実施の形態および変形例に係る通信システムを説明した。ここで、
図9を参照して、これらの通信システムを、3GまたはLTEに適用した場合の実装例を説明する。通信システムをどのように実装するかは、例えば、加入者の契約形態や、加入者の所有する端末1が搭載する機能に依存する。
【0083】
図9(a)は、加入者が3Gにのみ契約しており、端末1が3G機能のみを搭載している場合の実装例である。また
図9(a)に示す例では、加入者が3Gにのみ契約しており、端末1が3G機能とLTE機能を搭載している場合や、加入者が3GおよびLTEに契約しており、端末1が3G機能のみを搭載している場合にも適用することができる。
【0084】
図9(a)に示す例では、基地局2はRNC、加入者パケット交換機3はSGSN、中継パケット交換機4はGGSNが相当する。ここで、GGSNは、3G契約者のためのゲートウェイであって、SGSNは、RNCの無線リソースの接続を制御する装置である。
【0085】
図9(b)は、加入者が3GおよびLTEに契約しており、端末1が3G機能およびLTE機能を搭載している場合の実装例である。
図9(b)は、加入者がLTEにのみ契約しており、端末1が3G機能およびLTE機能を搭載している場合にも適用することができる。
【0086】
図9(b)に示す例において、基地局2は、RNCおよびeNodeBのいずれも適用することができる。S−GWおよびP−GWは、ユーザデータが通過する装置であって、MMEが、制御装置となる。従って、加入者パケット交換機3は、SGSN、またはS−GWおよびMMEが相当する。中継パケット交換機4は、P−GWが相当する。
【0087】
なお
図9(b)に示す例において、端末1がRNCに接続した場合、制御プレーンパスは、RNCとSGSNの間、SGSNとMMEの間、およびMMEとS−GWの間に設定される。またユーザプレーンパスは、ダイレクトトンネルを適用しない場合、RNCとSGSNとの間およびSGSNとS−GWの間に設定される。端末1がeNodeBに接続した場合、制御プレーンパスは、eNodeBとMMEの間、およびMMEとS−GWの間に設定される。またユーザプレーンパスは、ダイレクトトンネルを適用しない場合、eNodeBとS−GWの間に設定される。
【0088】
図9(c)は、加入者がLTEにのみ契約しており、端末1がLTE機能のみを搭載している場合の実装例である。
図9(c)に示す例では、基地局2はeNodeB、加入者パケット交換機3はS−GWおよびMME、中継パケット交換機4は、P−GWが相当する。
図9(c)に示す例では、
図9(b)を参照して説明した通り、端末1がeNodeBに接続すると、制御プレーンパスは、eNodeBとMMEの間、およびMMEとS−GWの間に設定される。またユーザプレーンパスは、eNodeBとS−GWの間、およびS−GWとP−GWの間に設定される。
【0089】
図9を参照して説明した実装例は、本発明の実施の形態または変形例に係る通信システムを実装するための一例であるので、これ以外の実装例が含まれる場合があることはもちろんである。また、標準化の変更や新たな標準化についても、本発明の実施の形態または変形例に係る通信システムを適用することができる。
【0090】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態とその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0091】
例えば、
図2ないし
図4、
図7および
図8に示すシーケンス図で説明した処理順序は一例であって、矛盾しない限り、どのような順序で実行されても良い。
【0092】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。