(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953172
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】屋外構造物基礎構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-172605(P2012-172605)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-31644(P2014-31644A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502231096
【氏名又は名称】株式会社サムシング
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】飯田 孝次
(72)【発明者】
【氏名】神村 真
(72)【発明者】
【氏名】前 俊守
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−190645(JP,A)
【文献】
特開平04−161610(JP,A)
【文献】
特開2000−212949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/12
E02D 27/00−27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外構造物の基礎部と、
該基礎部の下方であり且つ浅層地盤に構築される、外周を形成する連続状の外壁と、該外壁で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁とからなる不透水地中連続改良壁と、
該基礎部と該不透水地中連続改良壁間に構築される透水層と、を有し、
該透水層は、該一部の内壁上に、当該一部の内壁の幅寸法より大の幅寸法とすることで、該内壁で区画される2つの室を連通させ、且つ一端が外壁上に延出するように構築されることを特徴とする屋外構造物基礎構造体。
【請求項2】
該一部の内壁が、該内壁の交点部を含み、該透水層は、該内壁で区画される少なくとも3つの室を連通させることを特徴とする請求項1記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項3】
上端が該透水層に接続する透水性縦杭を、更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項4】
該内壁は、該外壁で囲まれる内側を格子状に分割することを特徴とする請求項1記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項5】
該透水性縦杭は、砕石杭、砂利杭又は穴開きパイプ杭であることを特徴とする請求項3記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項6】
該透水層は、砕石層、栗石層又は砂利層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項7】
該透水性縦杭は、深さ方向において、該不透水地中連続改良壁を越えて下方に延びていることを特徴とする請求項3又は5に記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項8】
該屋外構造物は、建築物、庭園または駐車場であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の屋外構造物基礎構造体。
【請求項9】
該基礎部は、該屋外構造物が建築物の場合、ベタ基礎であることを特徴とする請求項8記載の屋外構造物基礎構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤面下における液状化被害を未然防止する屋外構造物基礎構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の液状化現象は、大地震や巨大地震の際、広範囲の地域で発生する。液状化現象のメカニズムの解明や対策は、地盤の状況や地震の規模に左右されるため、非常に難しいのが現状である。住宅等の建物において、地震で一番怖いのは振動より揺れの大きさであり、建物に地震被害をもたらす要因となっている。このため、建物の耐震、制震、免震等、構造性能を高めて強い建物づくりが進んでいる。しかし、住宅等の小規模な構造物が建設される浅層地盤については、地震対策がほとんど行われていない。住宅等の建設予定地では、地盤強度等の調査を行い、軟弱地盤に対しては地盤改良を施すものの、液状化対策についてはほとんど無策の状態である。
【0003】
特開昭57−209334号公報には、基礎杭を所定位置に打設し、その後基礎杭上部に砂利を敷きつめ、次にこの砂利層上にフーチングを基礎杭に対して非連結状態で築造することを特徴とする構造物基礎の築造方法(請求項1)が開示されている。また、特開昭57−209334号公報の第2頁右下欄第10行〜第12行には、「実施例のように基礎杭間に充填した砂利壁と上部の砂利層とが連設しているため間隙水圧の上昇を防止することとなり」と記載されている。
【0004】
また、小規模の個人住宅などの屋外構造物の建設予定地が軟弱地盤である場合、該軟弱地盤である基礎構築部分の近くに例えば
図9に示すような田の字形状の不透水地盤改良壁100を構築し、地盤の不同沈下を抑止する浅層地盤改良工法が知られている(例えば特開2004−60290号公報、特開2009−275358号公報等)。また、地盤に構築される上端が透水層に接続する透水性縦杭は、例えば、特開平10−18314号公報、特開昭55−142815号公報等に記載されている。
【0005】
また、本出願人は、先に、屋外構造物の基礎部と、該基礎部の下方であり且つ浅層地盤に構築される、外周を形成する連続状の外壁と、該外壁で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁とからなる不透水地中連続改良壁と、該基礎部と該不透水地中連続改良壁間全面に構築される透水層と、該内壁で分割された複数の室の少なくともひとつの地盤に構築される、上端が該透水層に接続する透水性縦杭と、を有することを特徴とする屋外構造物基礎構造体に係る発明を出願している(特願2012−39890号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−209334号公報
【特許文献2】特開2004−60290号公報
【特許文献3】特開2009−275358号公報
【特許文献4】特開平10−18314号公報
【特許文献5】特開昭55−142815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開昭57−209334号公報には、不透水地中連続改良壁は開示されていない。また、特開2004−60290号公報などの従来の不透水地中連続改良壁は、ベタ基礎などの基礎部と直接、接するものであり、地中連続改良壁と基礎部間に透水層を介在させることまでは開示されていない。このため、従来、地中連続改良壁と基礎部間に透水層を介在させた基礎構造体における液状化被害を軽減する目的において、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減するような必要最小限の透水層の配置設計はされていなかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、液状化被害を軽減すると共に、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減する屋外構造物基礎構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、屋外構造物の基礎部と不透水地中連続改良壁間に透水層を構築し、該透水層を、該一部の内壁上に、当該一部の内壁の幅寸法より大の幅寸法とすることで、該内壁で区画される複数の室を連通させ、且つ一端が外壁上に延出するように構築した屋外構造物基礎構造体であれば、液状化被害を軽減すると共に、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、屋外構造物の基礎部と、該基礎部の下方であり且つ浅層地盤に構築される、外周を形成する連続状の外壁と、該外壁で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁とからなる不透水地中連続改良壁と、該基礎部と該不透水地中連続改良壁間に構築される透水層と、を有し、該透水層は、該一部の内壁上に、当該一部の内壁の幅寸法より大の幅寸法とすることで、該内壁で区画される2つの室を連通させ、且つ一端が外壁上に延出するように構築されることを特徴とする屋外構造物基礎構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液状化被害を軽減すると共に、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における屋外構造物基礎構造体の平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態における屋外構造物基礎構造体の平面図である。
【
図9】従来の不透水地中連続改良壁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態における屋外構造物基礎構造体(以下、単に「基礎構造体」とも言う。)を
図1〜
図4を参照して説明する。基礎構造体10は、屋外構造物の基礎部1と、基礎部の下方であり且つ浅層地盤に構築される複数の室を有する不透水地中連続改良壁(以下、単に「改良壁」とも言う。)2と、基礎部1と改良壁2間に構築される透水層3と、を有し、透水層3は、一部の内壁221上に、一部の内壁211の幅寸法より大の幅寸法とすることで、内壁22で区画される複数の室を連通させ、且つ一端が外壁21上に位置するように構築されるものである。なお、
図1は改良壁2と透水層3の配置関係を判り易く描写したため、基礎部1は二点鎖線で簡略して描いた。
【0014】
基礎構造体10において、改良壁2は、基礎部1の下方であり且つ浅層地盤に構築されるもので、外周を形成する連続状の外壁21と、外壁21で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁22とからなるセメント系固化材を撹拌混合した改良土質である。改良壁2は不同沈下を防止し、且つ地震などの水平力に対抗することができる。外壁21で囲まれる内側を内壁22で区画する区画形状としては、特に制限されず、格子状および中央に矩形状の室を有する不定形状のものが挙げられる。格子状の場合、縦横の壁で格子状に区画される室の個数としては、小規模住宅の場合、例えば2個以上、好ましくは4個〜12個程度である。
図1〜
図4は20個の例であるが、これは透水層3の設置形態を1つの図面で説明するため多くなったものである。また、改良壁2は、中央に矩形状の室(区画部)を有する不定形状のものであってもよい。改良壁2の平面視の形状は、上下対称、左右対称および非対称のものが挙げられ、この中、上下対称且つ左右対称であるものが、地盤を均等に拘束する点で好ましい。
【0015】
改良壁2は外壁21を連続壁とし、外壁21の内側を内壁22で区画することで、地盤を拘束して一体化し、基礎部1を介して屋外構造物の荷重を均一に地盤に伝えるため、建物等の構造物基礎および地盤強度が向上し、屋外構造物全体の安定力が増す。本発明において、改良壁2の高さは最大2.0m、概ね0.3〜1.8mである。
【0016】
基礎構造体10において、屋外構造物としては、小規模住宅、店舗、工場などの建築物、庭園、私道または駐車場が挙げられる。小規模住宅とは、「小規模建築物基礎設計指針(日本建築学会)」で規定する小規模建築物であり、地上3階以下、建物高さ13m以下、軒高9m以下及び延べ面積500m
2以下の条件を満たす建築物を言う。屋外構造物の基礎部としては、小規模住宅の場合、例えばベタ基礎であり、店舗、工場、庭園、私道または駐車場のような大面積の屋外構造物の場合、例えばアスファルト舗装層である。
図1〜4は小規模住宅の場合であり、ベタ基礎1が、一部に透水層3を有する改良壁2の上に形成されている。
【0017】
基礎構造体10において、透水層3は、基礎部1と改良壁2間の一部に構築される。すなわち、透水層3は、一部の内壁221上に、一部の内壁221の幅寸法より大の幅寸法とすることで、内壁22で区画される複数の室を連通させ、且つ一端が外壁21上、すなわち、外壁21の外側端にほぼ位置するように構築される。すなわち、透水層3は、見かけ上、改良壁2の一部に組み込まれるように形成されるものである。なお、基礎構造体10において、透水層3が内壁で区画される2つの室を連通させる形態が、
図1の透水層3cであり、内壁の交点部を含み、内壁で区画される少なくとも3つの室を連通させる透水層は、
図1の3a、3b、3d及び3eである。
【0018】
このような透水層3の一例を
図1を参照して説明する。透水層3aは、平面視が略L字形状の内壁221上に、内壁221の幅寸法w
1より大の幅寸法w
2の透水層を形成したものである。略L字形状の内壁221は、室aと室bを区画する壁、室eと室fを区画する壁および室eと室iを区画する壁、室iと室jを区画する一部の壁、室jと室fを区画する一部の壁、室fと室bを区画する一部の壁及びそれらの交点部を含んで結ぶ連続壁である。また、略L字形状の内壁221の一端31a及び他端32aは、外壁21の外側端にまでほぼ延出している。透水層3aの上面は、透水層3が形成されていない改良壁2の上面と面一である(
図2参照)。また、透水層3aの高さ(深さ)は、改良壁2の高さより小である。このため、透水層3aの下方に当たる改良壁2の高さは透水層3aの高さ分低い。このような、透水層3aは、内壁221で区画される6つの室a、b、e、f、i、jを連通する。
【0019】
透水層3bにおいて、透水層3aと同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。すなわち、透水層3bは、略L字形状の内壁222上に、内壁222の幅寸法w
1より大の幅寸法w
2の透水層を形成したものである。略L字形状の内壁222は、室gと室rを区画する壁、室gと室mを区画する壁、室nと室rを区画する一部の壁、室mと室nを区画する一部の壁およびそれらの交点部を含んで結ぶ連続壁である。また、略L字形状の内壁222の一端31b及び他端32bは、外壁21の外側端にまでほぼ延出している。このような、透水層3bは、内壁222で区画される4つの室m、n、q、rを連通する。
【0020】
透水層3cにおいて、透水層3aと同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。すなわち、透水層3cは、平面視が略I字形状の内壁223上に、内壁223の幅寸法w
1より大の幅寸法w
2の透水層を形成したものである。内壁223は、室dと室cを区画する壁である。また、内壁223の一端31cは、外壁21の外側端にまでほぼ延出しており、他端32cは、内壁223上に位置している。このような、透水層3cは、内壁223で区画される2つの室c、dを連通する。
【0021】
透水層3dにおいて、透水層3aと同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。すなわち、透水層3dは、平面視が略L字形状の内壁224上に、内壁224の幅寸法w
1より大の幅寸法w
2の透水層を形成したものである。内壁224は、室hと室lを区画する壁、室kと室lを区画する壁、室gと室kを区画する一部の壁、室gと室hを区画する一部の壁およびそれらの交点部を含んで結ぶ連続壁である。また、内壁224の一端31dは、外壁21の外側端にまでほぼ延出しており、他端32dは、内壁224上に位置している。このような、透水層3dは、内壁224で区画される4つの室g、h、k、lを連通する。
【0022】
透水層3eにおいて、透水層3aと同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。すなわち、透水層3eは、平面視が略L字形状の内壁225上に、内壁225の幅寸法w
1より大の幅寸法w
2の透水層を形成したものである。内壁225は、室sと室tを区画する壁、室tと室pを区画する壁、室sと室oを区画する一部の壁、室oと室pを区画する一部の壁およびそれらの交点部を含んで結ぶ連続壁である。また、内壁225の一端及び他端31e、32eは、外壁21の外側端にまでほぼ延出している。このような、透水層3eは、内壁225で区画される4つの室o、p、s、tを連通する。
【0023】
基礎構造体10において、透水層3は、液状化に伴う過剰間隙水圧により上がってくる上昇水を通し、建物の外側に排水する機能を有する。透水層3としては、砕石層、栗石層、砂利層が挙げられる。すなわち、透水層3は、液状化発生の際、砂質土を含んだ上昇水である噴砂流の中、上昇水は通すが、土砂は通さないものである。透水層3の高さは、上記機能を奏する高さで適宜決定されるが、概ね10〜50cm程度である。
【0024】
このように、基礎構造体10は、大地震、液状化発生の際、砂質土を含んだ上昇水である噴砂流の上昇(方向性)を制御できる。液状化による噴砂流は、通常、改良壁の全区域に発生するものではなく、その一部に発生する。例えば、室a、b、e、f、i、jのいずれか又はそれらの複数箇所に発生した噴砂流は、
図2の矢印で示すように、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水層3aを通り、6つの室内において拡散すると共に、水平方向に誘導されて改良壁の外側へ排出される。この場合、土砂の流出は透水層3aにより阻止されるため、室内の地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。改良壁の外側に誘導された上昇水は、下水道へ流れるようにすることがより好ましい。
【0025】
また、例えば、室m、n、g、rのいずれか又はその複数箇所に発生した噴砂流は、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水層3bを通り、4つの室内において拡散すると共に、水平方向に誘導されて改良壁の外側へ排出される。この場合、土砂の流出は透水層3bにより阻止されるため、室内の地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。
【0026】
また、例えば、室c、dのいずれか又は両方の室に発生した噴砂流は、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水層3c通り、2つの室内において拡散すると共に、水平方向に誘導されて改良壁の外側へ排出される。また、例えば、室g、h、k、lのいずれか又はそれらの複数箇所に発生した噴砂流は、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水層3dを通り、4つの室内において拡散すると共に、水平方向に誘導されて改良壁の外側へ排出される。また、例えば、室o、p、s、tのいずれか又はそれらの複数箇所に発生した噴砂流は、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水層3eを通り、4つの室内において拡散すると共に、水平方向に誘導されて改良壁の外側へ排出される。
【0027】
基礎構造体10によれば、液状化被害を軽減すると共に、基礎部1と改良壁2の全面に透水層を形成する場合に比べて、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減できる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態における基礎構造体を
図5〜
図8を参照して説明する。
図5〜
図8の基礎構造体10aにおいて、
図1〜
図4の基礎構造体10と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、基礎構造体10aにおいて基礎構造体10と異なる点は、上端が透水層に接続し、下方に延びる透水性縦杭4を形成したこと、透水性縦杭4が形成される透水層3部分を拡幅としたことにある。なお、本発明において、透水性縦杭が形成される透水層部分の拡幅は、必須ではなく、任意の構成要素である。
【0029】
基礎構造体10aにおいて、透水層3fは、透水層3aにおいて、室a、b、e、fを区画する内壁の交点部を拡幅にすると共に、当該交点部に透水性縦杭4を形成したものである。透水層3gは、透水層3bにおいて、室m、n、q、rを区画する内壁の交点部を拡幅にすると共に、当該交点部に透水性縦杭4を形成したものである。透水層3hは、透水層3cにおいて、室c、dを区画する内壁のほぼ中央部を拡幅にすると共に、当該拡幅部に透水性縦杭4を形成したものである。透水層3iは、透水層3dにおいて、室k、lを区画する内壁の中央部を拡幅にすると共に、当該拡幅部に透水性縦杭4を形成したものである。透水層3jは、透水層3eにおいて、室s、tを区画する内壁の中央部を拡幅にすると共に、当該拡幅部に透水性縦杭4を形成したものである。
【0030】
基礎構造体10aにおいて、透水性縦杭4は、上端が透水層3に接続し、深さ方向において、いずれも、改良壁2を超えて下方に延びている。透水性縦杭4は、液状化に伴う過剰間隙水圧を吸収して上昇水を透水層3に導く機能を有する。すなわち、透水性縦杭4は、液状化発生の際、砂質土を含んだ上昇水である噴砂流の中、上昇水は通すが、土砂は通さないものである。透水性縦杭4としては、砕石杭、砂利杭、穴開きパイプ杭が挙げられる。穴開きパイプ杭は、上下が貫通するパイプの周面に、多数の貫通穴を形成したものである。貫通穴はパイプ内への土砂の浸入を防止する一方、上昇水は通すものである。また、穴開きパイプ杭の深部側の先端部は、土砂が詰まり先端開口を塞いでいる。これはパイプを地中に打ち込んだ際、土砂が浸入してくるからである。そして、パイプの先端部を除くパイプ内は中空であっても、砕石などが詰まっていてもよい。パイプとしては、鋼管、塩化ビニル管等が使用できる。
【0031】
透水性縦杭4の深さ(高さ)は、地盤の地質により一概に決定できないものの、従来の地盤補強を目的とした砕石杭ほど深くする必要はなく、具体的には、最大高さが改良壁の壁深さ(高さ)の3倍、好適には2倍であり、具体的には、最大で4m、好ましくは最大で3m、特に好ましくは最大で2.5mである。また、地表面から深さ方向に、液状化しない良好地盤層、砂混じりの液状地盤層が存在する地盤の場合、透水性縦杭4の下端が液状地盤層に達するものであればよい。このような透水性縦杭4であれば、液状地盤層において、液状化に伴う過剰間隙水圧を吸収して上昇水を透水層3に導くことができる。すなわち、基礎構造体10a、基礎部下の一部に透水層を設け、該透水層と透水性縦杭4を接続したため、液状化に伴う上昇水は、良好地盤中、良好地盤に影響を与えることなく、垂直ルートを確保しつつ上昇し、次いで水平方向に流れ、建物の周囲4方向に排水するため、早期に減圧が図れ、液状化被害を防止することができる。また、透水性縦杭4自体が、軟弱地盤の改良杭になるため、地震後の地盤沈下に対しても有効な杭効果を発現する。
【0032】
透水性縦杭4の形成位置は、上記位置に限定されず、透水層3と接続する位置であれば、何処であってもよく、ブロック化された1つの透水層に対して、1つ又は複数形成してもよい。また、透水性縦杭4の断面形状としては、円形断面の他、矩形断面、矩形断面であって深さ方向に向けてやや先細りとなる逆台形断面、楕円形断面、2つの円の一部が重なり合った断面、3つの円の一部が重なり合った断面、不定形断面などが挙げられる。
【0033】
次に、基礎構造体10aの造成方法の一例について説明する。先ず、所定の位置に透水性縦杭4を構築する。透水性縦杭4は、ユンボのような小型掘削機械や深堀掘削機械で所定の深さまで掘削後、砕石等を充填することで造成することができる。なお、透水性縦杭4を造成する前段階として、予め地質調査により液状地盤の深さを把握しておくことが好ましい。これにより、透水性縦杭4の深さ(高さ)を決定することができる。次いで、透水層構築予定箇所に、透水層の平面積を有し透水層3の高さ分の土壌を除去する(鋤き取り工程)。鋤き取りの際、透水性縦杭4の頭は、鋤き取ってもよく、あるいは一部又は全部を残しておいてもよい。透水性縦杭4の頭が一部又は全部残っていれば、透水層3との接続が容易となる。次いで、改良壁2が造成される予定地(軟弱地盤)に例えば、
図9の形状の溝を地中に形成する。この際、改良壁2の外壁21及び内壁22と鋤き取り部との位置関係に注意を払いながら、溝を形成する。次いで、溝内にセメント系固化材を撹拌混合した改良土質を埋め戻す。その後、改良土質部分をランマー等で転圧して土質強度と靭性をもたせた改良土質による改良壁を構築する。次いで、改良壁1の上面の凹部に、砕石、栗石あるいは砂利地業を行い透水層3を構築する。これにより、透水層3は、透水性縦杭4と接続すると共に、所定の厚みを有して、透水層3の上面及び改良壁2の上面は略面一となり、地表に表われることになる。次いで、透水層3の上に、例えば基礎部として、ベタ基礎であるコンクリートを打設して基礎構造体10の造成を完了する。
【0034】
基礎構造体10の造成方法は、基礎構造体10aの造成方法において、透水性縦杭4を造成する工程を省略したこと以外は、同様の方向で行なえばよい。
【0035】
基礎構造体10aにおいて、液状地盤層で液状化が発生すると、透水性縦杭4が、液状化に伴う過剰間隙水圧を吸収して上昇水を透水層3に導くことができる。上昇水は、良好地盤中、透水性縦杭4である垂直ルートを保持しつつ上昇し、次いで透水層3内において水平方向に流れ、建物の外側に排水する。このため、早期に減圧が図れ、液状化被害を防止することができる。また、透水性縦杭4自体が、軟弱地盤の改良杭になるため、地震後の地盤沈下に対しても有効な杭効果を発現する。また、基礎構造体10aにおいて、基礎構造体10と同様に、基礎部1と改良壁2の全面に透水層を形成する場合に比べて、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減できる。
【0036】
なお、屋外構造物が、店舗、工場、私道、庭園や駐車場のように大面積の場合、改良壁内を内壁で区画する方法としては、格子状に数十〜数百の多数の室を形成する方法、改良壁1を1ユニットとして、当該同ユニットを横並びに複数配置する複数配置方法、あるいは同ユニット及び異なるユニットを複数組み合わせて配置する複数混合配置方法などが挙げられる。屋外構造物が大面積の場合、改良壁内を内壁2で区画する室の数は、小規模住宅に比べて当然多くなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、液状化被害を軽減すると共に、現地盤土の置換数を減らして、残土処分を軽減できる。また、本発明によれば、液状化に伴う過剰間隙水圧を透水性縦杭で吸収して部分的に構築された透水層を介して減圧排水することができる。このため、液状化被害を防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 基礎部
2 不透水地中連続改良壁
3、3a〜3j 透水層
4 透水性縦杭
10、10a 屋外構造物基礎構造体