特許第5953180号(P5953180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953180金属板の折り曲げによる箱の製造方法及び該方法に用いる金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953180
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】金属板の折り曲げによる箱の製造方法及び該方法に用いる金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20160707BHJP
   B21D 5/02 20060101ALI20160707BHJP
   B21D 11/08 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B21D5/01 T
   B21D5/02 W
   B21D5/02 Y
   B21D11/08
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-183766(P2012-183766)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-39952(P2014-39952A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】原 英夫
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−89788(JP,A)
【文献】 特表2012−515088(JP,A)
【文献】 特開2000−335683(JP,A)
【文献】 特開2000−322459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/01
B21D 5/02
B21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の金属板素材から、長方形の底板と、この長方形の底板の一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板及び第2の側板と、前記底板の他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板及び第4の側板と、を有する展開形状のブランクを切り出し、この切り出したブランクの前記各側板を、該各側板の基端と前記底板との境界線を曲げ線として90°内側に折り曲げて、前記底板を底壁とし、前記各側板を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱を製造するに当たり、先に折り曲げた前記第1の側板及び第2の側板の各内面に、後から折り曲げる前記第3の側板及び第4の側板の側縁の端面を当接させた片引き曲げ構造の金属板製の箱を製造する金属板の折り曲げによる箱の方法において、
前記第1の側板及び第2の側板の基端の各曲げ線を、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の位置よりも所定寸法だけ、前記第1の側板及び第2の側板の各先端に近くなる位置に設定し、
前記第3の側板及び第4の側板の基端の各曲げ線を、前記第1の側板及び第2の側板の側縁の位置よりも所定寸法だけ、前記第3の側板及び第4の側板の各先端から遠くなる位置に設定し、
前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端に、該第3の側板及び第4の側板を曲げ線の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さのスリットを、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端から該側縁の延長線に沿って形成すると共に、
前記第3の側板及び第4の側板の曲げ線上の両側縁に連続する前記スリットの側壁に、該第3の側板及び第4の側板を前記曲げ線の位置で折り曲げた際に、第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁に発生する膨らみを吸収するための凹みを予め設けた状態で、前記ブランクを切り出すことを特徴とする金属板の折り曲げによる箱の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属板の折り曲げによる箱の製造方法であって、
前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端に、該第3の側板及び第4の側板を曲げ線の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さのスリットを、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端から該側縁の延長線に沿って形成する際に、
前記各スリットの先端に、該先端から、前記スリットに対して所定寸法だけ離間した位置にある前記第1の側板及び第2の側板の基端の曲げ線に向けて延長し、先端が該第1の側板及び第2の側板の基端の曲げ線に到達する延長スリットを形成することを特徴とする金属板の折り曲げによる箱の製造方法。
【請求項3】
1枚の金属板素材から、長方形の底板と、この長方形の底板の一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板及び第2の側板と、前記底板の他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板及び第4の側板と、を有する展開形状のブランクを切り出し、この切り出したブランクの前記各側板を、該各側板の基端と前記底板との境界線を曲げ線として90°内側に折り曲げて、前記底板を底壁とし、前記各側板を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱を製造するに当たり、先に折り曲げた前記第1の側板及び第2の側板の各内面に、後から折り曲げる前記第3の側板及び第4の側板の側縁の端面を当接させた片引き曲げ構造の金属板製の箱を製造する金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置において、
前記第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の膨らみ形状を算出する曲げ膨らみ形状算出手段と、前記第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の干渉する領域に凹みを形成するためのスリットを割り付けるスリット割付手段と、前記スリットの形状を算出するスリット形状算出手段とを備えたことを特徴とする金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚の金属板から切り出したブランクの折り曲げにより、直方体形状の箱を形成する場合の箱の製造方法に係り、特に、片引き曲げで箱を加工する場合の加工精度を向上することができる金属板の折り曲げによる箱の製造方法及び該方法に用いる金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属板を折り曲げて直方体形状の箱を形成する方法として、互いに直交する側壁の角部において、一方の側壁の内面に他方の側壁の側縁の端面を当接させる片引き曲げ構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は片引き曲げ箱の構成を示す図で、図6(a)は完成した箱の斜視図、図6(b)は展開図、図6(c)はその要部Xの拡大図である。
【0004】
1枚の金属板素材から、図6(a)に示すような直方体形状の箱10を製作する場合、まず、金属板素材から図6(b)に示すような展開形状のブランク1Aを切り出す。このブランク1Aは、長方形の底板10Aと、長方形の底板10Aの一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板11及び第2の側板12と、長方形の底板10Aの他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板13及び第4の側板14と、を有するものである。
【0005】
次に、切り出したブランク1Aの各側板11〜14を、各側板11〜14の基端と底板10Aとの境界線を曲げ線21〜24として90°内側にプレスブレーキ等の曲げ加工機で折り曲げて、底板10Aを底壁とし、各側板11〜14を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱を製造する。この際、金属板には肉厚があると共に、曲げ加工した際にスプリングバックが発生するので、先に折り曲げた第1の側板11及び第2の側板12の各内面に、後から折り曲げる第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの端面を当接させている。このように構成した箱が片引き曲げ箱である。
【0006】
この場合、展開形状のブランク1Aでは、材料の厚み及び曲げによる伸び量を考慮して、第1の側板11及び第2の側板12の基端の各曲げ線21,22を、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの位置よりも所定寸法d2だけ、第1の側板11及び第2の側板12の各先端に近くなる位置に設定し、第3の側板13及び第4の側板14の基端の各曲げ線23,24を、第1の側板11及び第2の側板12の側縁11a,12aの位置よりも所定寸法d3だけ、第3の側板13及び第4の側板14の各先端から遠くなる位置に設定している。
【0007】
ところが、このように第3の側板13及び第4の側板14の基端の各曲げ線23,24の位置を内側に設定した場合、そのまま曲げると無理が発生してしまう。そこで現状では、図7及び図8に示すように、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの基端に、第3の側板13及び第4の側板14を曲げ線23,24の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さRのスリット30を、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの基端から該側縁13a,14aの延長線に沿って形成した上で、曲げ加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−55570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図7に示すような形状のブランク1Bを作成し、第1〜第4の側板11〜14のバッグゲージ位置を同じに設定して、プレスブレーキ等の曲げ加工機で曲げてみると、図9に示すように、第1の側板11及び第2の側板12の高さT1の方が、第3の側板13及び第4の側板14の高さT2よりも高くなる現象が発生した。つまり、先に曲げる第1の側板11及び第2の側板12の高さT1が目標より高くなり、後に曲げる第3の側板13及び第4の側板14の高さT2が目標より低くなってしまう現象が発生した。
【0010】
図7では、第1の側板11及び第2の側板12が短辺、第3の側板13及び第4の側板14が長辺となっているので、この例について述べると、例えば、短辺は、曲げ高さ目標値が20.00mmであるのに対し、曲げ高さ実測値が20.25mmであった。また、長辺は、曲げ高さ目標値が20.00mmであるのに対し、曲げ高さ実測値が19.73mmであった。短辺高さと長辺高さの差異は0.53mmであり、一般公差±0.15mmに対して不適合となる。なお、この例の評価条件は次の通りである。
【0011】
・材質:SPCC
・厚さt:3.2mm
・製品寸法:100mm(L)×50mm(W)×20mm(H)
・使用曲げ金型:ダイ V18 DA:88 DR:2.5 L:90
パンチ PR:0.6 PA:88 L:90
・曲げ順:短辺(第1の側板11)⇒短辺(第2の側板12)⇒長辺(第3の側板13)⇒長辺(第4の側板14)
この現象を調べてみたところ、第1の原因は、第1の側板11及び第2の側板12(短辺)を曲げ線21,22を基準に曲げた際に、本来は、曲げ線21,22の位置で曲がってほしいのに、実際は、材料がバックゲージから滑ることで、弱い力で曲がりやすいスリット30の位置で曲がってしまうことにあることが分かった。その結果として、第1の側板11及び第2の側板12(短辺)が、目標高さより高くなってしまう現象が生じるのである。
【0012】
また、第2の原因は、次に述べるようなことであることが分かった。
【0013】
即ち、曲げ加工の順番は、図10(a)に示すように、第1の側板11及び第2の側板12を先に曲げた後で、第1の側板11及び第2の側板12の間に嵌まるように、後から第3の側板13及び第4の側板14を曲げるという順であるが、その際に次のような現象が起こる。
【0014】
例えば、図11に示すように、肉厚のある金属板を曲げ線23,24の位置で曲げると、曲げ部の内周側には図中矢印のような圧縮応力が発生するので、曲げ部の両側縁に膨らみfが発生する。つまり、第3の側板13及び第4の側板14(長辺)を曲げると、第3の側板13及び第4の側板14は、曲げ部の側縁13a,14aに膨らみfを発生しながら曲がっていく。この段階では既に、第1の側板11及び第2の側板12(短辺)が直角に曲がっているので、第3の側板13及び第4の側板14は、両側縁13a,14aに発生する膨らみfを第1の側板11及び第2の側板12(短辺)の側縁11a,12aに干渉させながら曲がっていくことになる。これにより、第3の側板13及び第4の側板14(長辺)の曲げ位置が、本来の曲げ線23,24から逃げた位置になる。その結果、第3の側板13及び第4の側板14(長辺)の曲げ高さが目標値より低くなってしまう現象が生じる。
【0015】
このように、側板11〜14の曲げ高さの差異が生じることから、現状では、一度試し曲げを行い、短辺高さ及び長辺高さを測定し、曲げ高さ補正値をを入力して、バックゲージ位置を補正することで、図10(b)に示すように、短辺と長辺の曲げ高さが揃うように対応している。しかし、この場合、試し曲げが必要なため、その分の製品が必要となる。
【0016】
本発明は、上記事情を考慮し、計算値のバックゲージ位置で側板の目標の曲げ高さが得られ、試し曲げが不要となる金属板の折り曲げによる箱の製造方法及び該方法に用いる金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、1枚の金属板素材から、長方形の底板と、この長方形の底板の一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板及び第2の側板と、前記底板の他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板及び第4の側板と、を有する展開形状のブランクを切り出し、この切り出したブランクの前記各側板を、該各側板の基端と前記底板との境界線を曲げ線として90°内側に折り曲げて、前記底板を底壁とし、前記各側板を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱を製造するに当たり、先に折り曲げた前記第1の側板及び第2の側板の各内面に、後から折り曲げる前記第3の側板及び第4の側板の側縁の端面を当接させた片引き曲げ構造の金属板製の箱を製造する金属板の折り曲げによる箱の方法において、前記第1の側板及び第2の側板の基端の各曲げ線を、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の位置よりも所定寸法だけ、前記第1の側板及び第2の側板の各先端に近くなる位置に設定し、前記第3の側板及び第4の側板の基端の各曲げ線を、前記第1の側板及び第2の側板の側縁の位置よりも所定寸法だけ、前記第3の側板及び第4の側板の各先端から遠くなる位置に設定し、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端に、該第3の側板及び第4の側板を曲げ線の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さのスリットを、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端から該側縁の延長線に沿って形成すると共に、前記第3の側板及び第4の側板の曲げ線上の両側縁に連続する前記スリットの側壁に、該第3の側板及び第4の側板を前記曲げ線の位置で折り曲げた際に、第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁に発生する膨らみを吸収するための凹みを予め設けた状態で、前記ブランクを切り出すことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載の金属板の折り曲げによる箱の製造方法であって、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端に、該第3の側板及び第4の側板を曲げ線の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さのスリットを、前記第3の側板及び第4の側板の側縁の基端から該側縁の延長線に沿って形成する際に、前記各スリットの先端に、該先端から、前記スリットに対して所定寸法だけ離間した位置にある前記第1の側板及び第2の側板の基端の曲げ線に向けて延長し、先端が該第1の側板及び第2の側板の基端の曲げ線に到達する延長スリットを形成することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、1枚の金属板素材から、長方形の底板と、この長方形の底板の一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板及び第2の側板と、前記底板の他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板及び第4の側板と、を有する展開形状のブランクを切り出し、この切り出したブランクの前記各側板を、該各側板の基端と前記底板との境界線を曲げ線として90°内側に折り曲げて、前記底板を底壁とし、前記各側板を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱を製造するに当たり、先に折り曲げた前記第1の側板及び第2の側板の各内面に、後から折り曲げる前記第3の側板及び第4の側板の側縁の端面を当接させた片引き曲げ構造の金属板製の箱を製造する金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置において、前記第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の膨らみ形状を算出する曲げ膨らみ形状算出手段と、前記第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の干渉する領域に凹みを形成するためのスリットを割り付けるスリット割付手段と、前記スリットの形状を算出するスリット形状算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明の金属板の折り曲げによる箱の製造方法によれば、第3の側板と第4の側板の側縁に連続するスリットの側壁に、曲がりにより発生する膨らみを吸収する凹みを予め設けるので、膨らみが先に曲げた第1の側板及び第2の側板の側縁に干渉するのを防止することができる。従って、計算値のバックゲージ位置で側板が曲がることにより、補正無しで側板の高さを目標値に精度よく近づけることができ、試し曲げが不要となる。
【0021】
請求項2の発明の金属板の折り曲げによる箱の製造方法によれば、スリットの先端に延長スリットを設けたので、先に曲げる第1の側板及び第2の側板の実際の曲がり位置を、予め設定した曲げ線の位置にすることができる。
【0022】
請求項3の発明の金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置によれば、第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の膨らみ形状を算出する曲げ膨らみ形状算出手段と、第3の側板及び第4の側板の曲げ部の側縁の干渉する領域に凹みを形成するためのスリットを割り付けるスリット割付手段と、スリットの形状を算出するスリット形状算出手段とを備えたことにより、ブランクの切り出し時に、第3の側板と第4の側板の曲げ部の側縁に、曲がりにより発生する膨らみを吸収する凹みを予め形成することができ、膨らみが先に曲げた第1の側板及び第2の側板の側縁に干渉するのを防止することができる。従って、計算値のバックゲージ位置で側板が曲がることにより、補正無しで側板の高さを目標値に精度よく近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態の箱の製造方法の説明図で、(a)は箱の展開形状を示す平面図、(b)は第1の側板及び第2の側板の曲げ位置を本来の曲げ線の位置に戻すための対策を示す(a)の要部Xに相当する部分の拡大図、(c)は第3の側板及び第4の側板の曲げ位置を本来の曲げ線の位置に戻すための対策を示す(a)の要部Xに相当する部分の拡大図、(d)は両方の対策を盛り込んだ本実施形態の構成の詳細を示す(a)の要部Xの拡大図である。
図2】本発明の実施形態のより具体的な構成を示す要部の拡大図である。
図3図2の構成を持つブランクを曲げることで作成した箱の角部を下面側から見た斜視図である。
図4】(a),(b)は本発明の実施形態のより具体的な構成の他の例を示す要部の拡大図である。
図5】本発明の実施形態の製造方法に用いる切断データ作成装置のブロック図である。
図6】一般的な片引き曲げ箱の構成を示す図で、(a)は完成した箱の斜視図、(b)はその基本展開図、(c)はその要部Xの拡大図である。
図7】(a)は図6の展開図に改良を加えた現状の展開図、(b)はその要部Xの拡大図である。
図8図7の改良を加えた部分の曲げ加工状態を示す部分斜視図である。
図9】現状の箱の問題点の説明に使用する斜視図である。
図10】現状の箱の折り曲げ順番を示す図で、(a)は第1の側板及び第2の側板を先に曲げた状態を示す斜視図、(b)はその後で第3の側板及び第4の側板を曲げた状態を示す斜視図である。
図11】金属板を曲げた際に、肉厚の影響で側縁に膨らみができることを説明するための斜視図である。
図12】現状のブランクを曲げた場合の問題点の説明図で、(a)は展開形状を示す平面図、(b)は第3の側板及び第4の側板を曲げた場合にそれらの側板の側縁に膨らみが発生することを示す(a)の要部Xの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は実施形態の箱の製造方法の説明図で、図1(a)は箱の展開形状を示す平面図、図1(b)は第1の側板及び第2の側板の曲げ位置を本来の曲げ線の位置に戻すための対策を示す図1(a)の要部Xに相当する部分の拡大図、図1(c)は第3の側板及び第4の側板の曲げ位置を本来の曲げ線の位置に戻すための対策を示す図1(a)の要部Xに相当する部分の拡大図、図1(d)は両方の対策を盛り込んだ本実施形態の構成の詳細を示す図1(a)の要部Xの拡大図である。
【0026】
この実施形態の製造方法では、1枚の金属板素材からブランク1を切り出す際に、現状の構成に対し、二つの対策を加味している。
【0027】
そこで、先に現状の製造方法の全体について述べる。まず、レーザ加工機等による切断工程において、1枚の金属板素材から、図1(a)に示すように、長方形の底板10Aと、長方形の底板10Aの一方の対向辺に連設された各長方形の第1の側板11及び第2の側板12(短辺)と、底板10Aの他方の対向辺に連設された各長方形の第3の側板13及び第4の側板14(長辺)と、を有する展開形状のブランク1を切り出す。
【0028】
次に、切り出したブランク1の各側板11〜14を、各側板11〜14の基端と底板10Aとの境界線を曲げ線21〜24として90°内側にプレスブレーキ等の曲げ加工機で折り曲げて、底板10Aを底壁とし、各側板11〜14を全て一定の高さの側壁とした直方体形状の箱10を製造する。
【0029】
この際、先に折り曲げた第1の側板11及び第2の側板12の各内面に、後から折り曲げる第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの端面を当接させた片引き曲げ構造の箱とする。
【0030】
この場合、曲げ加工内容を規定するプログラムの段階で、図1(d)に示すように、第1の側板11及び第2の側板12の基端の各曲げ線21,22を、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの位置よりも所定寸法d2だけ、第1の側板11及び第2の側板12の各先端に近くなる位置に設定する。また、第3の側板13及び第4の側板14の基端の各曲げ線23,24を、第1の側板11及び第2の側板12の側縁11a,12aの位置よりも所定寸法d3だけ、第3の側板13及び第4の側板13の各先端から遠くなる位置に設定する。
【0031】
また、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの基端に、第3の側板13及び第4の側板14を曲げ線23,24の位置で曲げた部分の曲率半径に応じた長さRのスリット30を、第3の側板13及び第4の側板14の側縁13a,14aの基端から該側縁13a,14aの延長線に沿って形成する。
【0032】
ここまでが現状の構成である。この現状の構成に対し、ブランク1の割り付け段階で、次の2つの工夫を加味する。
【0033】
1つは、図1(b)に示すように、各スリット30の先端に、該先端から、スリット30に対して所定寸法d2だけ離間した位置にある第1の側板11及び第2の側板12の基端の曲げ線21,22に向けて延長し、先端が第1の側板11及び第2の側板12の基端の曲げ線21,22に到達する延長スリット31を形成するというものである。
【0034】
また、もう1つは、図1(c)に示すように、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ線23,24上の両側縁13a,14aに連続するスリット30の側壁に、第3の側板13及び第4の側板14を曲げ線23,24の位置で折り曲げた際に、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aに発生する膨らみf(図12参照)を吸収するための凹み35を予め設けておくというものである。
【0035】
両方の対策を加味した実施形態のブランクの構成は、図1(d)に示すようになる。
【0036】
即ち、スリット30の先端に第1の側板11及び第2の側板12の基端の曲げ線21,22に向けて円弧状の延長スリット31を設けたので、先に曲げる第1の側板11及び第2の側板12の実際の曲がり位置を、予め設定した曲げ線21,22の位置にすることができる。また、第3の側板13と第4の側板の側縁13a,14aに連続するスリット30の側壁に設けた凹み35が、曲がりにより発生する膨らみf(図12参照)を吸収するので、膨らみfが先に曲げた第1の側板11及び第2の側板12の側縁11a,12aに干渉するのを防止することができる。従って、計算値のバックゲージ位置で側板11〜14が曲がることにより、補正無しで側板11〜14の高さを目標値に精度よく近づけることができ、試し曲げが不要となる。
【0037】
図2は、より具体的な実施形態の構成を示す要部の拡大図である。この図2に示すように、実際にレーザ加工したスリット40は、図1(d)に示した計算上のスリット30よりも幅広に形成される可能性がある。そこで、このスリット40に、前述した2つの対策に相当する要素を盛り込む。即ち、スリット40の先端に、曲げ線22に到達する延長スリット41〔図1(d)の延長スリット31に相当〕を形成し、スリット40の側壁に凹み45〔図1(d)の凹み35に相当〕を形成する。この場合のレーザ加工は外周(例えば側縁13a)の切断に続いて所謂一筆書きの要領で凹み45を加工し、引き続き延長スリット41の加工をし、曲げ線22に到達する位置でUターンして戻りスリット40を加工し、引き続き側縁12aの加工を行うことで形成することができる。
【0038】
こうすることで、バックゲージの位置を補正しないでも、図3に示すように、側板12,13の曲げ高さを揃えることができる。
【0039】
なお、曲げ部の膨らみfの量は材質や板厚等により変化するので、それに対応させて凹み35,45の大きさを決定するのが望ましい。また、金属板の材料の種類は問わない。例えば、SPCC、SPHC、SS、AL、SUS等のすべての金属に適用することができる。
【0040】
また、スリット30,40及び延長スリット31,41の割り付けや凹み35,45の割り付けは、NC装置で行ってもよいし、CAMシステムで行ってもよいし、CAD図面の作成時に行ってもよい。また、手動割付であっても、自動プログラム装置による自動割付であってもよい。
【0041】
さらに、図4(a),(b)は、より具体的な実施形態の構成の他の例を示す要部の拡大図である。
【0042】
図2に示す実施形態では、レーザ加工による1枚の金属板素材の外周切断の時にスリット40,41を同時に形成したが、図4(a)で示す例では、まず、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ線23,24上の両側縁13a,14aに連続するスリッ50〔図1(d)のスリット30に相当〕を形成し、次に、第3の側板13及び第4の側板14を曲げ線23,24の位置で折り曲げた際に、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aに発生する膨らみf(図12参照)を吸収するための凹み55〔図1(d)の凹み35に相当〕を形成する円弧状の延長スリット51〔図1(d)の延長スリット31に相当〕を曲げ線22に到達する位置まで形成して、スリット50の側壁に凹み55を形成する。また、図4(a)で示す例では、凹み55と延長スリット51より先にスリット50を形成する加工方法を説明したが、図4(b)で示す例のように、先に凹み55と延長スリット51を形成し、その後にスリット50を形成してもよい。
【0043】
さらに、図4(b)で示す例では、凹み55と延長スリット51を同時に形成する場合について説明したが、通常、スリット50と延長スリット51を同時に形成し、凹み55の形成を単独で行うことも可能である。またそれぞれの加工はどちらを先に行っても順番は逆でもよい。
【0044】
このように、幅広のスリットを形成する場合は、図2に示すように、1枚の金属板素材の外周切断の時に同時に一筆書きで形成したり、図4(a),(b)に示すように、2回の切断加工により形成してもよい。この場合、図2に示す一筆書きで形成した方が外周切断に連続してスリットの加工ができるので、別途ピアス加工が必要な図4(a),(b)に示す場合に比べて加工効率は良い。
【0045】
図5は本発明の実施形態の金属板の折り曲げによる箱の製造方法に用いる切断データ作成装置のブロック図である。
【0046】
図5に示すように、金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置60は、CPU61に連なるデータバス62にRAM63及びROM64を備え、このデータバス62には、CAD図面を取り込む入力手段65と、CRTの如き出力手段66が接続してある。また、このデータバス62には、プログラムを記憶するプログラムメモリ67と、金属平板素材の材料情報(板厚、材質)を記憶する材料情報メモリ68と、金属平板素材の曲げ情報(曲げ角度、伸び情報、曲げ線情報)を記憶する曲げ情報メモリ69と、プレスブレーキ等の金型の情報(V幅、先端R)を記憶する金型情報メモリ70が接続してある。
【0047】
さらに、切断データ作成装置60のデータバス62には、CAD図面からデータを作成する図面(CAD)データ作成手段71と、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aの膨らみ形状を算出する曲げ膨らみ形状算出手段72と、スリット30,31,40,41,50,51の形状を算出するスリット形状算出手段73と、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aの干渉する領域に凹み35,45,55を形成するためのスリット30,31,40,41,50,51を割り付けるスリット割付手段74と、NCプログラムを作成するNCプログラム作成手段75が接続してある。なお、図面(CAD)データ作成手段71に代えて、入力手段65からCADデータを取り込んでも良い。
【0048】
曲げ膨らみ形状算出手段72は、第3の側板13及び第4の側板14を曲げ線23,24の位置で折り曲げた際に、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aに発生する膨らみfを演算する。
【0049】
スリット形状算出手段73は、スリット30,31,40,41,50,51の形状を演算する。
【0050】
スリット割付手段74は、折り曲げ加工後の干渉を回避すべく第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aの膨らみfを吸収するための凹み35,45,55を予め設ける。なお、手動で割付位置を画面を見ながら選択してもよく、また自動でもよい。
【0051】
以上、金属板の折り曲げによる箱の切断データ作成装置60によれば、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aの膨らみ形状を算出する曲げ膨らみ形状算出手段72と、スリット30,31,40,41,50,51の形状を算出するスリット形状算出手段73と、第3の側板13及び第4の側板14の曲げ部の側縁13a,14aの干渉する領域に凹み35,45,55を形成するためのスリット30,31,40,41,50,51を割り付けるスリット割付手段74とを備えたことにより、ブランク1の切り出し時(ブランク1の折り曲げ前)に、第3の側板13と第4の側板14の側縁13a,14aに連続するスリット30,40,50の側壁に、曲がりにより発生する膨らみfを吸収する凹み35,45,55を予め形成することができ、膨らみfが先に曲げた第1の側板11及び第2の側板12の側縁11a,12aに干渉するのを防止することができる。従って、計算値のバックゲージ位置で側板13,14が曲がることにより、補正無しで側板13,14の高さを目標値に精度よく近づけることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ブランク
10 箱
10A 底板
11 第1の側板
12 第2の側板
13 第3の側板
14 第4の側板
11a〜14a 側縁
21〜24 曲げ線
30 スリット
31 延長スリット
35 凹み
40 スリット
41 延長スリット
45 凹み
50 スリット
51 延長スリット
55 凹み
60 切断データ作成装置
72 曲げ膨らみ形状算出手段
73 スリット形状算出手段
74 スリット割付手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12