(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断用導線部は、前記ボビンに巻回された前記電磁コイルの巻き終わり部分を、前記ボビンの径方向外側から前記第1壁部と前記第2壁部との間に架渡した後、前記ボビンの径方向内側から第1フランジ面上を前記ボビンの径方向外側に向けて横断させて前記ボビンの径方向外側へと引き回すことにより、第1壁部と第2壁部間に架渡されて形成される請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
前記ボビンの第1フランジ面上に、前記熱応動素子の回転方向に向けて高くなる傾斜面を形成し、前記傾斜面の終端部と前記第1フランジ面とで形成される段差部を案内壁として、この案内壁に沿って前記ボビンの径方向内側から第1フランジ面上を前記ボビンの径方向外側に向けて電磁コイル部分を横断させた請求項3に記載の電磁クラッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような熱応動素子と切断用導線による通電遮断装置では、ロータと電磁コイルユニットとの間の狭い空間に熱応動素子と切断用導線を相対するように配置しなければならない。このため、電磁クラッチの軸線方向、即ち、熱応動素子の変位方向における熱応動素子と切断用導線との間の相対的な距離を精度良く管理しないと、切断用導線を切断すべき状況で切断しなかったり切断すべきでないときに切断したり等、通電遮断装置が誤作動する虞れがあるという問題がある。熱応動素子はロータに固定されているので、電磁クラッチの軸線方向における熱応動素子の位置は、ロータ及び軸受の寸法とロータが位置決め固定される従動機器のハウジングの寸法によって設計的に決定され、また、熱応動素子の変位量は材料の選定や寸法等の設計的要素で決定される。一方、電磁クラッチの軸線方向における切断用導線の位置は、電磁コイルユニットのロータ側端面に切断用導線をどのように取付けるのか、その取付け構造によってその位置精度が影響を受ける。切断用導線の取付け構造が適切でないと、電磁クラッチの軸線方向における切断用導線の位置のばらつきが増大し、前述のような誤作動を招き通電遮断装置の信頼性が損なわれる虞れがある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電磁クラッチの通電遮断装置については、電磁コイルの巻き終わり部分を、ボビンに設けたフックに係合して切断用導線とすることが記載されているだけであり、電磁クラッチの軸線方向における切断用導線の位置の管理をどうのようにしているのかは開示されていない。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、電磁クラッチの軸線方向における切断用導線の位置が容易に管理でき、通電遮断装置の信頼性を高めることができる電磁クラッチを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、駆動源の動力で回転駆動されるロータを有し、従動機器のハウジング端面に設けたボス部に回転可能に支持されたロータユニットと、前記ロータの励磁により当該ロータと磁気吸着するアーマチュアを有し、前記ボス部を貫通する前記従動機器の回転軸に固定したアーマチュアユニットと、円筒部の両端に第1及び第2フランジを有し、両フランジで挟まれた円筒部外周面に通電により前記ロータを励磁する電磁コイルを巻回するボビンと、前記ロータに形成された環状凹部に収納される環状のボビン収納部を有するリングケースと、を有し、前記リングケースを、前記ボビン収納部の開口端側を前記ロータ側に向けて前記従動機器の前記ハウジング端面に固定した電磁コイルユニットと、を備え、前記ロータユニット側に取付けられて所定温度を超えたときに電磁コイルユニット側に向けて変位する熱応動素子によって、前記電磁コイルユニット側に前記熱応動素子の移動領域を横切るように取付けられた電磁コイルの一部をなす切断用導線部を切断して前記電磁コイルへの通電を強制的に遮断する電磁クラッチであって、
前記ボビンに、前記ボビン収納部内で前記開口端側に位置させた第1フランジから、前記ロータ環状凹部内の前記熱応動素子が取付けられた底壁に向けて、互いに対面させてそれぞれ延設した第1及び第2壁部と、前記第1壁部の延設側端部から前記ボビン収納部の内周側開口端縁方向へ延設した内側当接部と、前記第2壁部の延設側端部から前記ボビン収納部の外周側開口端縁方向へ延設した外側当接部とを設け、前記ボビン収納部の内外開口端縁に前記内側当接部と前記外側当接部を当接させて、前記ボビンを前記ボビン収納部に収納する構成とすると共に、前記切断用導線を、前記第1壁部と第2壁部の端面から所定距離の位置においてこれら両壁部間に架渡すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁クラッチによれば、リングケースのボビン収納部の開口端縁にボビンに設けた内側当接部と外側当接部を係止させて、電磁コイルを巻回したボビンをボビン収納部内に位置決めして収納するので、ボビン収納部内におけるボビンの電磁クラッチ軸線方向における位置を規定でき、ボビンに形成した第1壁部と第2壁部間に架渡した切断用導線の電磁クラッチ軸線方向における位置を精度良く設定できる。従って、電磁クラッチ軸線方向の切断用導線の位置を精度良く管理でき、通電遮断装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電磁クラッチの一実施形態の構成を示している。
本実施形態による電磁クラッチ10は、例えば車両用空調装置を構成する圧縮機に組み込まれ、駆動源としての車両用のエンジンやモータから従動機器としての前記圧縮機への動力伝達を断続する。即ち、電磁クラッチ10は、前記エンジンや前記モータから前記圧縮機への動力の伝達とその遮断とを切り換える。前記圧縮機は、前記エンジンや前記モータからの動力が伝達されることによって作動し、前記エンジンや前記モータからの動力の伝達が遮断されるとその作動を停止する。前記圧縮機は、例えば斜板式可変容量圧縮機を採用することができる。尚、その他の形式の可変容量型圧縮機や、スクロール式、ベーン式等の固定容量圧縮機のいずれの形式のものを採用してもよい。
【0011】
図1において、電磁クラッチ10は、ロータユニット20と、アーマチュアユニット30と、電磁コイルユニット40と、を備えると共に、更に、通電遮断装置50を備えて構成されている。
【0012】
前記ロータユニット20は、エンジンやモータの動力で回転駆動されるもので、ロータ21と、摩擦部材22と、軸受23と、を備えている。
【0013】
前記ロータ21は、環状に形成されており、その内周面が軸受23を介して圧縮機のフロントハウジング1端面のボス部1a外周面に回転可能に支持されている。ロータ21の外周面には、エンジンやモータからの回転駆動力を伝達するベルトを掛ける溝が形成されている。より具体的には、
図2及び
図3に示すように、ロータ21は、ベルト溝が形成された前記外周面を有する外側円筒部21aと、前記内周面を有する内側円筒部21bと、前記外側円筒部21aと前記内側円筒部21bとを接続する端面部21cとを一体化して構成されている。外側円筒部21a、内側円筒部21b及び端面部21cは、強磁性材料(具体的に例えば鉄系材料)で形成され、これらによって電磁コイルユニット40側の後述する電磁コイル42を収容するための環状凹部21dを形成している。端面部21cには、電磁コイル42で発生する磁束を迂回させる円弧状スリット21e、21fが形成されている。また、端面部21cの環状凹部21d内の底壁側端面21c2の円弧状スリット21e、21f間の部位には、後述する通電遮断装置50のバイメタル51を取付けるための環状溝21g(
図2、
図11、
図12に図示)が形成されている。端面部21cの環状凹部21d内の底壁側端面21c2とは反対側の端面は、摩擦面21c1となっている。この摩擦面21c1には、摩擦係数を増加させるため環状の非磁性材からなる摩擦部材22が取付けられている。前記軸受23は、
図1に示すようにその内輪側がフロントハウジング1のボス部1a外周面に位置決めされてスナップリング4によって固定されており、ロータ21をフロントハウジング1端面のボス部1a外周面に回転可能に支持している。
【0014】
前記アーマチュアユニット30は、電磁コイル42への通電でアーマチュア33がロータ21に磁気吸着されることで、エンジンやモータからの動力を圧縮機へ伝達するもので、
図4に示すように、ハブ31と、ラバーユニット32と、アーマチュア33とを備えている。
【0015】
前記ハブ31は、フランジ部31aを有し、圧縮機の回転軸2先端部にナット5(
図1参照)によって固定されている。前記ラバーユニット32は、内側リング32aと、外側リング32bと、内側リング32aと外側リング32bとの間に介装され両リング32a,32bに加硫接着された環状のラバー32cとで構成され、内側リング32aが、ハブ31のフランジ部31aにリベット34で固定されている。前記アーマチュア33は、一端面にロータ21の摩擦面21c1に所定の隙間を介して対峙する摩擦面33aが形成された環状板部材であり、ラバーユニット32の外側リング32bにリベット35で固定され、環状のラバー32cにより弾力的に支持されている。このアーマチュア33は、強磁性材料(具体的には鉄系材料)で形成され、ロータ21と共に磁気回路を構成し、電磁コイル42への通電によりロータ21と磁気吸着し、通電の遮断による磁気吸着力の消失によりロータ21から離間するようになっている。
【0016】
電磁コイルユニット40は、ロータ21を磁化して磁気吸着力を発生させるもので、ボビン41と、ボビンに巻回された電磁コイル42と、電磁コイル42が巻回されたボビン41を収容するボビン収納部としての環状凹部が形成されたリングケース43と、リングケース43に固定され、電磁コイルユニット40の他端面となる円環板状の固定部材44と、車両側の外部電源と電磁コイル42とを接続する接続部45とを備えている。
【0017】
前記リングケース43は、
図5に示すように、外側円筒部43aと、内側円筒部43bと、外側円筒部43aと内側円筒部43bとを接続する端面部43cとを一体化して電磁コイル42が巻回されたボビン41を収容し、ロータ21の環状凹部21d内に相対回転可能に開口端側をロータ21側に向けて収納される環状凹部が形成されている。外側円筒部43a、内側円筒部43bは、圧縮機の回転軸2の軸線と同軸であり、端面部43cは前記回転軸2の軸線と直交している。外側円筒部43aの端面43a1(外周側開口端縁)及び内側円筒部43bの端面43b1(内周側開口端縁)は回転軸2の軸線と直交する同一平面にある。外側円筒部43a、内側円筒部43b及び端面部43cは、強磁性材料(例えば鉄系材料)で形成されて磁気回路を構成する。
【0018】
前記ボビン41は、
図6に示すように、円筒部41aと、円筒部41aの両側からそれぞれ径方向外側に向けて互いに対面させて延設された第1フランジ41bと第2フランジ41cとを有し、両フランジ41b,41cで挟まれた円筒部41a外周面に電磁コイル42が巻回される。また、ボビン41には、第1フランジ41bの基端部と先端部からそれぞれロータ21の環状凹部21dの底壁21c2に向けて互いに対面させて延設された第1壁部である内壁41dと第2壁部である外壁41eが形成されている。前記内壁41dは、第1フランジ41b基端部の略全周囲に亘って形成されており、その先端部(延設側端部)から径方向内側に向けてボビン収納部である環状凹部の内周側開口端縁に当接可能に延設された内側当接部41fが同じく略全周囲に亘って形成されている。また、前記外壁41eは、
図7に示すように第1フランジ41b先端部の所定部位(電磁コイル42の巻き終わり部分となる位置)近傍のみに形成されており、その先端面(延設側端部)から径方向外側に向けてボビン収納部である環状凹部の外周側開口端縁に当接可能に延設された外側当接部41gが形成されている。更に、ボビン41の外壁41eには、
図8に点線で囲んで示すように、先端面(外側当接部41g上面)から所定距離、言い換えれば、所定深さh2(外側当接部41gの厚さ分)を有する第1スリット41e1が形成されている。また、ボビン41の内壁41dには、
図9に点線で囲んで示すように、先端面(内側当接部41f上面)から所定距離、言い換えれば、第1スリット41e1と同じ深さh2(内側当接部41fの厚さ分)を有する第2スリット41d1と、先端面(内側当接部41f上面)から第1フランジ面41b1まで切れ込んだ第3スリット41d2とが形成されている。前記ボビン41は、円筒部41a、第1フランジ41b、第2フランジ41c、内壁41d、外壁41e、内側当接部41f及び外側当接部41gが、例えばポリアミド樹脂等の合成樹脂材で一体形成されている。
【0019】
電磁コイルユニット40は、ボビン41がリングケース43の環状凹部に収容されている状態で、ボビン41とリングケース43との隙間から樹脂を流し込み、電磁コイル42の絶縁性能を確保している。ボビン41は、
図5に示すように、ボビン41の外側当接部41gがリングケース43の外側円筒部43aの端面43a1に当接し、内側当接部41fがリングケース43の内側円筒部43bの端面43b1に当接し、リングケース43内に収納することにより、リングケース43の環状凹部内に位置決めされて収納固定される。そして、電磁コイルユニット40は、端面部43cの環状凹部内の底壁側と反対側の端面に固定した固定部材44が、
図1に示すようにフロントハウジング1の端面に位置決めされてスナップリング3で固定されることにより、フロントハウジング1の端面に固定される。
【0020】
前記通電遮断装置50は、ロータ21とアーマチュア31の相対滑りによる発熱が生じたときに、電磁コイル42への通電を強制的に遮断するもので、熱応動素子として例えばバイメタル51と、電磁コイル42の一部をなす切断用導線部であるブリッジ導線部52とを備える。
【0021】
前記バイメタル51は、略長方形をなし、ロータ21に形成された環状凹部21dの底壁21c2部分に形成された環状溝21gに収容され、一端側がリベット53で固定され、他端側がロータ21の回転方向に差し向けられている。尚、バイメタル51をリベットではなく、例えばボルト等の他の固定部材で固定してもよい。バイメタル51を環状溝21g内に収容して位置決めすることにより、バイメタル51がブリッジ導線部52と係合したときに、ブリッジ導線部52から反力を受けてロータ21の回転方向に対して左右方向にバイメタル51が傾くことを防止できる。バイメタル51は、温度を感知して所定温度を超えると電磁コイルユニット40側に向けて所定距離を越えて変位する。尚、バイメタル51としては、例えば所定温度で反転動作するスナップアクションタイプのものが好適である。スナップアクションタイプのバイメタルは反転温度(反転動作する温度)より低い温度ではあまり変位せず、反転温度を超えると大きく変位するので、この反転動作を利用してブリッジ導線部23を切断する。車両空調装置用の圧縮機においては、電磁クラッチ10の温度は通常150℃までは考慮する必要があり、従って電磁コイル42の通電を遮断するための反転温度としては例えば180℃〜190℃の範囲に設定するとよい。
【0022】
前記ブリッジ導線部52は、ボビン41に巻回された電磁コイル42の一部である電磁コイル42の巻き終わり部分(電磁コイル42のアース側)で形成されており、ロータ21の環状凹部21d内の底壁21c2に対向配置された電磁コイルユニット20の一端面に、ロータ21の回転によりバイメタル51が通過する領域(バイメタル51の移動領域)を横切るように且つ所定距離を越えて変位したバイメタル51が係合するように架渡されている。具体的には、
図7〜
図10に示すように、ボビン41に巻回された電磁コイル42の巻き終わり部分を、内壁41dと対面する外壁41eの対面側と反対の面側(ボビン41の径方向外側)から第1スリット41e1に挿通し、外壁41eと内壁41dと第1フランジ41bとで囲まれた空間部を横切って第2スリット41d1に挿通して架渡し、両スリット41e1,41d1の端面で位置決め支持する。この架渡した導線部分がブリッジ導線部52となる。その後、外壁41eと対面する内壁21dの対面側と反対の面側(ボビン41の径方向内側)から内壁21dの第3スリット41d2に挿通し、第1フランジ41bの面41b1上に形成された案内壁41b2(
図10に示す)に沿って外壁41e方向へ第1フランジ41bの面41b1を案内して横断させ、ボビン41の径方向外側に引出すように引き回すことにより、第1フランジ41b上方を横切って外壁41eと内壁41dとの間に架渡されたブリッジ導線部52を形成している。内側当接部41f及び外側当接部41gは、第1フランジ41bの面41b1からの高さが同じに設定されており、第1スリット41e1の深さと第2スリット41d1の深さは同じ深さh2に設定されているので、ブリッジ導線部52は第1フランジ41bの面41b1から所定高さで平行に架渡されている。
【0023】
また、ボビン41の第1フランジ41bの面41b1上には、
図10に示すように、バイメタル51の回転方向に向けて高くなるように傾斜させた傾斜面41b3が形成されている。傾斜面41b3の終端部と第1フランジ41bの面41b1と形成される段差部を前記案内壁41b2として、電磁コイル部分47を第1フランジ41bの面41b1上を前記ボビン41の径方向内側から径方向外側に向けて横断させる。段差部の高さ、言い換えれば案内壁41b2のフランジ面41b1からの高さは電磁コイル47の外径と略同等か僅かに高く設定されている。
【0024】
ここで、本実施形態の電磁クラッチ10による圧縮機に対する通常の動力の断続動作及び通電遮断装置50の動作について簡単に説明する。
エンジンから出力される回転駆動力によりロータ21が回転している状態で、電磁コイルユニット40の電磁コイル42に通電すると、ロータ21が励磁されて電磁力によりアーマチュア33がロータ21に磁気吸着されてアーマチュア33がロータ21と同期回転する。アーマチュア33の回転力は、ラバーユニット32及びハブ31を介して圧縮機の回転軸2に伝達されて圧縮機が動作する。この状態で、電磁コイルユニット40の電磁コイル42への通電が遮断されるとロータ21が消磁され、ラバー32cの復元力によりアーマチュア33がロータ21から離れ、ロータ21の回転力はアーマチュア33へ伝達されず回転軸2の回転が停止して圧縮機が停止する。正常状態では、ロータ21の端面部21cの温度は、バイメタル51が所定温度(所定距離を越えて変位するまでの温度)には至らず、
図11及び
図12に示すようにバイメタル51はブリッジ導線部52に接触することなくロータ21と一体に回転移動する。
【0025】
一方、例えば、圧縮機の内部部品の破損等により回転軸2に通常のトルクを大幅に上回る過大なトルクが作用すると、ロータ21とアーマチュア33との接触面間で相対滑りが発生し、その摩擦熱によりロータ21の端面部21cの温度が急上昇する。端面部21cの温度が急上昇すると、
図13及び
図14に示すようにバイメタル51の自由端側が電磁コイルユニット40側に向かって変位し、所定温度を超えるとバイメタル51の自由端側が所定距離を越えて変位してブリッジ導線部52に係合し、ブリッジ導線部52が切断される。これにより、電磁コイル42への通電が強制的に遮断されてアーマチュア33がロータ31から離れ、エンジン側に過大な負荷が作用することが回避されてベルトの損傷等が防止でき、車両の安全な走行が確保される。
【0026】
かかる本実施形態の電磁クラッチ1によれば、ボビン41に形成した外側当接部41gと内側当接部41fが、リングケース43の外側円筒部43aの端面43a1と内側円筒部43bの端面43b1に当接して、ボビン41がリングケース43の環状凹部内に位置決めされて収納される。また、内側当接部41f及び外側当接部41gは、第1フランジ41bの外周面41b1からの高さが同じに設定されており、更に、外壁41eの端面から第1スリット41e1の端面までの深さと内壁41dの端面から第2スリット41d1の端面までの深さは同じ深さh2に設定されているので、ブリッジ導線部52は第1フランジ41bの外周面41b1から所定高さで外周面41b1に対して平行に架渡されている。このため、フロントハウジング1側の固定部材44の取付け端面(基準面)からリングケース43の外側円筒部43aと内側円筒部43bの端面43a1、43b1までの高さh1(
図5に示す)と、外壁41e及び内壁41dの端面から第1スリット41e1及び第2スリット41d1の端面までの深さh2を精度良く管理することによって、ブリッジ導線部52の電磁クラッチの軸線方向の位置を精度良く位置決めできる。同様に、ボビン41の第1フランジ41bの面41b1の位置もリングケース43のボビン収納部である環状凹部内において精度良く位置決めできる。従って、電磁クラッチの軸線方向における位置が設計的に規定できるバイメタル51とブリッジ導線部52との間の相対的な距離を精度良く管理することができる。
【0027】
また、バイメタル51の変位量が大きい場合、ボビン41の第1フランジ41bの面41b1上を横断する電磁コイル部分47にバイメタル51の変位端が当接し、このときにバイメタル51が破損する虞れがあるが、本実施形態では、第1フランジ41bの面41b1に傾斜面41b3を形成したので、この傾斜面41b3によってバイメタル51の変位端が案内されて電磁コイル部分47を乗り越える。従って、バイメタル51の変位端が電磁コイル部分47と係合することを確実に回避でき、バイメタル51の破損を防止できる。従って、電磁クラッチの軸線方向におけるバイメタル51とブリッジ導線部52との間の相対的な距離を精度良く管理することができ、バイメタル51が大きく変位したときのバイメタル51の破損も防止できるので、通電遮断装置の信頼性を大幅に高めることができる。
【0028】
更に、内壁41d、外壁41e、内側当接部41f及び外側当接部41gが、ボビン41に一体形成されているので、ボビン41に電磁コイル42を巻回する工程でブリッジ導線部52を容易に形成できるため、通電遮断装置を備えることによる電磁クラッチ1のコストアップを抑制できる。
【0029】
尚、上述の実施形態では、熱応動素子としてバイメタルを用いた例を説明したが、例えば形状記憶合金等の他の熱応動部材を使用しても良い。
また、上述の実施形態では、車両用空調装置に使用される圧縮機に装着される電磁クラッチの例を説明したが、これに限定されず、他の用途に使用される電磁クラッチであっても良い。