(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持材は幅方向の少なくとも一方の端部が、前記断熱材の側面を覆うとともに前記枠体上面と前記面材との間に挟持されている請求項8〜10のいずれか1項に記載の床断熱構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の床用断熱材100においては、施工途中の降雨等より、断熱板101に水が含まれる場合があり、不織布を用いて水分を排出させることで断熱板101の乾燥を早めているものの、きびしい降雨により多量の水に曝される場合に、より迅速に水分を排出することが十分でない場合があった。
【0007】
したがって、本発明は、前述したような従来の問題を解決するためになされたもので、迅速に水分を排出することが可能な床用断熱材、床断熱構造及び床断熱構造の施工方法及び床断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(床用断熱材)
本発明の床用断熱材は、マット状の断熱材の底面にシート状の支持材が貼着された床用断熱材であって、前記支持材が透湿性を有し、且つ前記支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されていることを特徴とする。
【0009】
この構成により、施工途中で断熱材に雨がかかった場合などでも、断熱材に浸入し下方に移動した水分が支持材面から容易に排出され、断熱材中の乾燥を早めることができる。
【0010】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材は、前記親水剤を噴霧、塗布又は含浸させることにより得られたものが好ましい。
【0011】
これによれば、支持材の表面に親水剤が付着しているので、支持材の排水性が向上するものである。
【0012】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材が、有機繊維を含む不織布であることが好ましい。
【0013】
これによれば、支持材に不織布を用いることにより排水性と強度を両立することができ、不織布に有機繊維を用いることで、軽量性、取り扱い性に優れる。
【0014】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材は、前記断熱材の両側面を覆い、フランジ状に延出して耳部を構成できる長さを有することが好ましい。
【0015】
これによれば、支持材が断熱材の下面から両側面を覆うとともに耳部がフランジ状に延出しているので、耳部を固定することにより、根太間、大引間に容易に断熱材を施すことが可能となる。
【0016】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材の耳部には前記親水剤が付与されていないことが好ましい。
【0017】
これによれば、支持材の耳部には親水剤を付与していないので、根太又は大引等の床組と床板での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0018】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材の耳部及び前記断熱材の両側面を覆う部分には前記親水剤が付与されていないことが好ましい。
【0019】
これによれば、支持材の耳部および断熱材の両側面には親水剤を付与していないので、根太又は大引等の床組と床板での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0020】
また、本発明の床用断熱材では、前記支持材の耳部、前記断熱材の両側面を覆う部分、前記断熱材下面の端縁から5mm以内には親水剤が付与されていないことが好ましい。
【0021】
これによれば、支持材の耳部、断熱材の両側面および断熱材下面の端縁部には親水剤を付与していないので、根太又は大引等の床組と床板での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0022】
(床断熱構造)
本発明の床断熱構造は、枠体と、前記枠体間に充填された断熱材と、前記断熱材の下面を支持しかつ枠体に固定された支持材と、前記枠体及び前記断熱材の上部を覆う面材と、を有し、前記支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されていることを特徴とする。
【0023】
この構成により、支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されているので、施工途中で断熱材に雨がかかった場合などでも、断熱材に浸入し下方に移動した水分が支持材から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、断熱材中の乾燥を早めることができる。
これにより、面材や枠体への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0024】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材は、前記親水剤を噴霧、塗布又は含浸することにより得られたものが好ましい。
【0025】
これによれば、支持材の表面に親水剤が付着しているので、支持材の排水性が向上するものである。
【0026】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材が、有機繊維を含む不織布であることが好ましい。
【0027】
これによれば、支持材に不織布を用いることにより排水性と強度を両立することができ、不織布に有機繊維を用いることで、軽量性、取り扱い性、施工性に優れる。
【0028】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材は幅方向の少なくとも一方の端部が、前記断熱材の側面を覆うとともに前記枠体上面と前記面材との間に挟持されていることが好ましい。
【0029】
これによれば、支持材の端部で断熱材の下面から側面を覆うとともに、枠体上面と面材との間に挟持するので、支持材を介して断熱材を枠体に確実に取り付けることができる。
【0030】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材は、前記枠体の下面又は内面側に固定されていることが好ましい。
【0031】
これによれば、支持材が断熱材に接しないいわゆる延出部を有していることにより、枠体への固定が容易となり、根太間、大引間に容易に断熱材を施すことが可能となる。
【0032】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材は、枠材と当接する部分には親水剤が付与されていないことが好ましい。
【0033】
これによれば、枠材と当接する部分には親水剤を付与していないので、根太又は大引等の枠体や面材での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0034】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材は、前記枠材と当接する部分及び前記枠体側の端縁から5mm以内には親水剤が付与されていないことが好ましい。
【0035】
これによれば、枠体、断熱材の両側面および断熱材下面の端縁部に当接する部分には親水剤が付与されていないので、根太又は大引等の枠体と面材での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0036】
また、本発明の床断熱構造では、前記支持材が前記断熱材の下面を帯状に支持していることが好ましい。
【0037】
これによれば、支持材により断熱材を支えることができると共に支持材が断熱材の全面ではなく部分的に配置されているため、断熱材に浸入し下方に移動した水分が支持材面と断熱材面から容易に排水することができる。
【0038】
また、本発明の床断熱構造では、枠体と、前記枠体間に充填された断熱材と、前記断熱材の下面を支持する支持材と、前記枠体及び前記断熱材の上部を覆う面材と、を有し、前記支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されており、前記支持材が前記面材に取り付けられていることを特徴とする。
【0039】
これによれば、支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されているので、施工途中で断熱材に雨がかかった場合などでも、断熱材に浸入し下方に移動した水分が支持材から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、断熱材中の乾燥を早めることができる。
これにより、面材への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0040】
(床断熱構造の施工方法)
本発明の床断熱構造の施工方法は、支持材において親水剤が付与された部分が枠体間に位置するように該支持材を枠体に固定する工程と、前記枠体間に断熱材を充填する工程と、前記枠体の上部を面材で覆う工程と、を有することを特徴とする。
【0041】
これによれば、最初に軽量で取り扱い性が容易な支持材を枠体に施工するので、比較的容易に取り回しや位置決めができ、親水剤が付与された部分を枠体間に確実に配置することができる。そして、枠体間に断熱材を充填し、枠体及び断熱材の上部を面材で覆うので、容易に施工できる。
【0042】
(床断熱パネル)
また、本発明の床断熱パネルは、断熱材と、前記断熱材の下面及び両側面に当接されかつ該両側面から延出した耳部を有する支持材と、前記断熱材の上面に当接され当該上面よりも拡寸の面材と、を有し、前記支持材の耳部と前記面材とが固定されており、かつ前記支持材は前記断熱材に当接する面の少なくとも一部に親水剤が付与されていることを特徴とする。
【0043】
これによれば、予め床板等の面材と断熱材と支持材が一体となっているため、枠体の上に載置すると同時に枠体内へ断熱材が充填することができ施工が極めて容易になる。
また、支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されているので、施工途中で断熱材に雨がかかった場合などでも、断熱材に浸入し下方に移動した水分が支持材から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、床断熱パネル中の乾燥を早めることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明では、支持材に親水剤が付与されていることにより、断熱材に含まれた水分が下方へ移動してきたときに速やかに支持材から水分を排出して断熱材の乾燥を早めることができる。これにより、面材や枠体への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができるという効果を有する床用断熱材、床断熱構造及び床断熱構造の施工方法及び床断熱パネルを提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1実施形態の床用断熱材)
以下、本発明にかかる第1実施形態の床用断熱材について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、第1実施形態にかかる床用断熱材10は、住宅等の床組11の間に取り付けて、主に断熱を図るものである。例えば、床組11を構成する大引12の間や、大引12の上の根太と根太の間に取り付けて使用することができる。
【0047】
図2に示すように、第1実施形態にかかる床用断熱材10は、床用断熱材10の底面24に、シート状の支持材25を貼着したものである。
【0048】
支持材25は、床用断熱材10の底面24全面を覆う底面部251と、床用断熱材10の端面を覆う厚み部252と、断熱材20の幅方向両側に延長された耳部253とを有する。耳部253は、床用断熱材10を大引12間に取り付けた際に、大引12の上面を覆うので、この耳部253を大引12の上面に固定することにより、床用断熱材10は受け材を用いずに、容易に床組11に取り付けることができるため、取付作業の効率を向上させるとともに、部品点数を減少させてコストダウンを図ることができる。
【0049】
支持材25としては透湿性を有することを必須とする。支持材25の形態としては透湿性を有していれば特に限定せず、例えば、不織布、織物、メッシュ、ネット、有孔フィルムなどが挙げられ、排水可能な程度に支持材25に孔を有していることが好ましく、排水効率を高めるために更にこれらに孔を開けることができる。
支持材25の耳部253を床組11に取り付ける場合は、特に排水性、引裂き強度、屈曲性、経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。
【0050】
支持材25として不織布や織物など繊維を用いる場合は、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の有機繊維や、セルロース、パルプ等の天然繊維や、ガラス繊維等の無機繊維などを、接着、溶着等の手段でシート状に成形したものが使用できるが、引裂強度、耐屈曲性、経済性などの観点から、特に有機繊維を利用したものが好ましく使用される。
【0051】
また、本発明の支持材25としては支持材25の少なくとも一部に親水剤が付与されていることを必須とする。支持材25は断熱材20の両側面21を覆い、フランジ状に延出して耳部253を構成した場合は、根太又は大引12に接する支持材25の耳部253、更には断熱材20の両側面21を覆う厚み部252に、親水剤が付与されていないことが、根太又は大引12への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができるため好ましい。更に支持材25は断熱材20の底面24の側辺から5mm以上離れて親水剤が付与されていることが好ましい。更にまた、支持材25は幅方向の中央部にのみ親水剤を付与し、床組11と接する部分に親水剤を有さないことも好適に採用される。
【0052】
支持材25に親水剤を付与する方法は特に限定しないが、支持材25の基材に親水剤を噴霧、塗布又は含浸させる方法や、繊維をバインダーを用いて結着させる場合はバインダーと共に親水剤を加えて用いる方法や、予め支持材25を構成する有機繊維など親水剤を練り込んだもの等を用いることができる。なかでも支持材25の基材に親水剤を噴霧、塗布又は含浸させて得られる方法を用いることが、親水性効果を発現させやすく、また初期の性能に優れるためより好ましく採用される。
【0053】
上記親水処理に用いる親水処理剤としては、特に限定は無く、従来公知の親水処理剤を用いることができ、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等が好ましく挙げられ、これらの親水処理剤を、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0054】
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。上記両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド加物等のポリエチレングリコール型、ショ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の多価アルコール型が挙げられ、これらを単独又は複数の組合せにより用いることができる。これらのなかでもポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等を含むことが好ましい。そして、親水処理剤の繊維への付与量は、親水処理剤の種類によって異なるので特に限定はしないが、繊維に対し、固形分換算で0.02〜5質量%付与することが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%であり、もっとも好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0055】
断熱材20としては、例えば、グラスウールやロックウール等の無機繊維系断熱材、ポリエステルウール(PETウール)やセルロースマットなどの有機繊維系断熱材、羊毛等の天然繊維系断熱材、発泡系断熱材などが挙げられ、材料コストや難燃性等の点から、特に無機繊維系断熱材が好ましく使用できる。
断熱材20の形態としては、マット形状、ボード形状、シート形状などが適宜採用される。
断熱材20としては早期の乾燥を図るために少なくとも一部が撥水性を有することが好ましい。さらに断熱材20の上層部以外が撥水性を有していることが好ましい。撥水剤として、例えばオイル型、エマルション型、溶剤型等のシリコンやフッ素を用いることができる。
【0056】
床用断熱材10を製造するには、断熱材20の底面24に所定の大きさの支持材25を貼着する。接着剤は特に限定しないが従来使用されるものを適宜使用することができる。
【0057】
(実施例)
床用断熱材10として、PET繊維からなる目付30g/m2の不織布(支持材25)に2級脂肪族アルコールのポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物を含む親水剤を噴霧して乾燥した不織布を、撥水処理した24kg/m3、厚み80mmのグラスウール(断熱材20)に貼着し、寸法300mm×300mmの床用断熱材の試験体を作成した。この試験体の上面に水を800g注入し、下面(不織布側)より排水が開始されるまでの時間及び5分後の排水量を測定した。
【0058】
(比較例)
実施例で用いた不織布に親水剤の処理を施さなかった以外は、実施例と同様の床用断熱材10の試験体を作成した。
【0061】
表1に示すように、親水性を有する不織布を貼着した床用断熱材は、親水性を有さない場合に比較して排水量が多く、排水開始時間も早い。
【0062】
以上、説明した発明に係る床用断熱材10によれば、親水剤を付与した支持材25を貼着した床用断熱材10は、支持材25が排水を妨げることなく、雨水等が浸入した場合にも初期の排水性を高め、早期の乾燥を図ることができる。
なお、本発明の床用断熱材10は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0063】
(第2実施形態の床断熱構造)
以下、本発明にかかる第2実施形態の床断熱構造について、図面を用いて説明する。
図3に示すように、第2実施形態にかかる床断熱構造1は、住宅等の枠体11の間に床用断熱材10を取り付けて、主に断熱を図るものである。床用断熱材10は、枠体11を構成する大引12の間や大引12の上の根太と根太の間に取付けられ、床用断熱材10の上を覆うように、面材13が取り付けられる。
なお、以下の説明においては、大引12の間に断熱材20を取り付ける場合について説明する。
【0064】
図4乃至
図6に示すように、第2実施形態にかかる床断熱構造1に使用される床用断熱材10は、断熱材20と支持材25を有しており、断熱材20は支持材25を介して大引12の間に取り付けられる。
【0065】
図4に示す床断熱構造1Aでは、支持材25は、断熱材20の下面24全面に当接する底面部251と、幅方向両側に断熱材20の側面21に当接する厚み部252、252と、大引12の上面123に当接する耳部253、253を有しており、両耳部253、253は大引12の上面123に固定されている。
また、
図5に示す床断熱構造1Bでは、支持材25は、断熱材20の下面24全面に当接する底面部251と、幅方向一方の側に厚み部252を有し、さらに幅方向両側に耳部253、254を有する。一方の耳部253は大引12の上面123に固定され、他方の耳部254は大引12の下面121に固定されている。
また、
図6に示す床断熱構造1Cでは、支持材25は、断熱材20の下面24全面に当接する底面部251と、幅方向両側に耳部254、254を有しており、両耳部254、254は大引12の下面121に固定されている。
さらに、
図7に示すように、前述した床断熱構造1A、1B、1Cにおいて、支持材25が断熱材20の下面24に帯状に当接するように配置することもできる。なお、
図7には、床断熱構造1Aに適用する場合が示されている。
【0066】
以下においては、
図4に示した床断熱構造1Aについて説明するが、他の床断熱構造1B、1Cについても同様である。
図4に示すように、支持材25は、断熱材20の水分を排出させることができる透湿性、断熱材が含水したときに水を通過させることができる排水性を有することが好ましい。支持材25の形態としては特に限定せず、例えば、不織布、織物、メッシュ、ネット、有孔フィルムなどが挙げられ、排水可能な程度に支持材25に孔を有していることが好ましく、排水効率を高めるために更にこれらに孔を開けることができる。
支持材25の耳部253を枠体11に取り付ける場合は、特に排水性、引裂き強度、屈曲性、経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。
【0067】
支持材25として不織布や織物など繊維を用いる場合は、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の有機繊維や、セルロース、パルプ等の天然繊維や、ガラス繊維等の無機繊維などを、接着、溶着等の手段でシート状に成形したものが使用できるが、引裂強度、耐屈曲性、経済性などの観点から、特に有機繊維を利用したものが好ましく使用される。
【0068】
また、本発明の支持材25は、少なくとも一部に親水剤が付与されていることを必須とする。親水剤は断熱材20に接する部分に付与されていることが好ましい。
支持材25は断熱材20の両側面21を覆い、フランジ状に延出して耳部253を構成した場合は、根太又は大引12等の枠体の上面123に接する耳部253、更には断熱材20の両側面21を覆う厚み部252に、親水剤が付与されていないことが好ましい。これにより、枠体12への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
更に支持材25は枠体11の側辺から5mm以上離れて親水剤が付与されていることが好ましい。更にまた、支持材25は幅方向の中央部にのみ親水剤を付与し、枠体11と接する部分に親水剤を有さないことも好適に採用される。
【0069】
支持材25に親水剤を付与する方法は特に限定しないが、支持材25の基材に親水剤が均一に付与することが望ましい。具体的には、噴霧、塗布又は含浸させる方法や、バインダーを用いて繊維に結着させる場合はバインダーと共に親水剤を加えて用いる付着させる方法や、予め支持材25を構成する有機繊維など親水剤を練り込んだもの等を用いることができる。なかでも支持材25の基材に親水剤を噴霧、塗布又は含浸させ、乾燥させて得られる方法を用いることが、親水性効果を発現させやすく、また初期の性能に優れるためより好ましく採用される。
【0070】
上記親水処理に用いる親水処理剤としては、特に限定は無く、従来公知の親水処理剤を用いることができ、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等が好ましく挙げられ、これらの親水処理剤を、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0071】
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる、上記両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド加物等のポリエチレングリコール型、ショ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の多価アルコール型が挙げられ、これらを単独又は複数の組合せにより用いることができる。これらのなかでもポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等を含むことが好ましい。そして、親水処理剤の繊維への付与量は、親水処理剤の種類によって異なるので特に限定はしないが、繊維に対し、固形分換算で0.02〜5質量%付与することが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%であり、もっとも好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0072】
断熱材20としては、例えば、グラスウールやロックウール等の無機繊維系断熱材、ポリエステルウール(petウール)やセルロースマットなどの有機繊維系断熱材、羊毛等の天然繊維系断熱材、発泡系断熱材などが挙げられ、材料コストや難燃性等の点から、特に無機繊維系断熱材が好ましい。
断熱材20の形態としては、マット形状、ボード形状、シート形状などが適宜採用される。
断熱材20としては早期の乾燥を図るために、少なくとも一部に撥水剤が付与されていることが好ましい。撥水剤として、例えばオイル型、エマルション型、溶剤型等のシリコンやフッ素を用いることができる。
【0073】
次に、床断熱構造1の施工方法について説明する。なお、前述した床断熱構造1A、1B、1Cを用いる場合について同様に適用できるので、床断熱構造1Aを用いる場合について、
図4に基づいて説明する。
まず、支持材25の親水性を有しない耳部253を枠体11の大引12に固定して、大引12間の空間に支持材25の親水性を有する底面部251を配置する。
そして、大引12間に断熱材20を充填し、断熱材20の下面24を支持材25の底面部251で支持する。
その後、大引12及び断熱材20の上部を面材13で覆う。
なお、支持材25の大引12への固定は、大引12の上面123に固定する方法、大引12の下面121に固定する方法を適宜採用することができる。また、大引12以外の枠体11にも、同様に適用できる。
【0074】
以上、説明した床断熱構造1によれば、支持材25の少なくとも一部に親水剤が付与されている。このため、施工途中で断熱材20に雨がかかった場合などでも、断熱材20に浸入し下方に移動した水分が支持材25から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、断熱材20中の乾燥を早めることができる。
これにより、面材13や枠体11への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0075】
また、支持材25は、親水剤を噴霧、塗布又は含浸することにより得られているので、支持材25の表面に親水剤が付着しており、支持材25の排水性が向上する。
【0076】
また、支持材25に不織布を用いることにより排水性と強度を両立することができ、不織布に有機繊維を用いることで、軽量性、取り扱い性、施工性に優れる。
【0077】
また、支持材25の厚み部252及び耳部253で断熱材20の下面24から側面21を覆うとともに、枠体11上面と面材13との間に支持材25を挟持するので、支持材25を介して断熱材20を枠体11に確実に取り付けることができる。
【0078】
また、支持材25が断熱材20に接しない耳部253、254を有していることにより、枠体11への固定が容易となり、根太12間、大引間に容易に断熱材20を施すことが可能となる。
【0079】
また、支持材25において枠材11と当接する部分には親水剤を付与していないので、根太12又は大引等の枠体11や面材13での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0080】
また、支持材25は、枠材11と当接する部分及び枠体11側の端縁から5mm以内には親水剤が付与されていないので、根太12又は大引等の枠体11と面材13での保水及び吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0081】
また、支持材25が断熱材20の下面を帯状に支持している場合には、支持材25により断熱材20を支えると共に支持材25が断熱材20の全面ではなく部分的に配置されているため、断熱材20に浸入し下方に移動した水分が支持材25の底面部251及び断熱材20の下面24から容易に排水することができる。
【0082】
また、以上説明した本発明の床断熱構造の施工方法によれば、最初に軽量で取り扱い性が容易な支持材25を枠体11に施工するので、比較的容易に取り回しや位置決めができ、親水剤が付与された部分を枠体11間に確実に配置することができる。そして、枠体11間に断熱材20を充填し、枠体11及び断熱材20の上を面材13で覆うので、容易に施工できる。
【0083】
(第3実施形態の床断熱パネル)
次に、本発明にかかる第3実施形態の床断熱パネル30について説明する。なお、前述した第2実施形態にかかる床断熱構造1と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0084】
図8に示すように、第3実施形態にかかる床断パネル30では、断熱材20の下面を支持する支持材25の耳部253が、断熱材20よりも拡寸の面材13の下面に取り付けられて、床断熱パネル30を形成しており、この床断熱パネル30を枠体11間に取り付ける。
なお、支持材25の少なくとも一部に親水剤が付与されていることは、第2実施形態の床断熱構造1と同様である。
【0085】
以上、説明した床断パネル30によれば、予め床板等の面材13と断熱材20と支持材25が一体となっているため、枠体11の上に載置すると同時に枠体11内へ断熱材20を充填することができ施工が極めて容易になる。
また、支持材25の少なくとも一部に親水剤が付与されているので、施工途中で断熱材20に雨がかかった場合などでも、断熱材20に浸入し下方に移動した水分が支持材25から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、断熱材20中の乾燥を早めることができる。
これにより、面材13への吸水およびこの吸水による劣化やカビの発生を防止することができる。
【0086】
また、本発明の床断熱パネル30によれば、支持材25の耳部253と面材13とが固定されており、かつ支持材25は断熱材20に当接する面の少なくとも一部に親水剤が付与されている。従って、予め床板等の面材13と断熱材20と支持材25が一体となっているため、枠体11の上に載置すると同時に枠体11内へ断熱材20を充填することができ施工が極めて容易になる。
また、支持材25の少なくとも一部に親水剤が付与されているので、施工途中で断熱材20に雨がかかった場合などでも、断熱材20に浸入し下方に移動した水分が支持材25から容易に排出され易く、迅速に水分を排出して、床断熱パネル中の乾燥を早めることができる。
さらに、面材13を、断熱材20の面に対して横幅及び縦幅よりも広くすることで、枠体11に安定して載置することできる。
【0087】
(実施例)
PET繊維からなる目付30g/m
2の不織布(支持材25)に2級脂肪族アルコールのポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物を含む親水剤を噴霧して乾燥した不織布を支持材25として、内寸が300mm×300mmの木枠体(11)の長手方向に支持材25をタッカーで固定し、床用断熱材10として24kg/m
3、寸法300mm×300mm×厚み80mmのグラスウール(断熱材20)と、前記支持材25を挟み込むようにして前記木枠体(11)に充填した構造体を作成した。この試験体の上面に水を800g注入し、下面(不織布側)より排水が開始されるまでの時間及び5分後の排水量を測定した。
【0088】
(比較例)
実施例で用いた不織布(25)に親水剤の処理を施さなかった以外は、実施例と同様の床用断熱材10の試験体を作成した。
【0089】
上記結果は、先の表1に示したとおりである。
【0090】
表1に示すように、親水性を有する不織布(25)を貼着した床用断熱材10は、親水性を有さない場合に比較して排水量が多く、排水開始時間も早い。
【0091】
以上、説明した発明に係る床用断熱材10によれば、親水剤を付与した支持材25を貼着した床用断熱材10は、支持材25が排水を妨げることなく、雨水等が浸入した場合にも初期の排水性を高め、早期の乾燥を図ることができる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明は係る床用断熱材、床断熱構造及び床断熱構造の施工方法及び床断熱パネルは上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0093】
本発明は、住宅等の建築物における床断熱構造において、迅速に水分を排出して断熱材の乾燥を早めることができ、特に湿度の高い環境においても住宅等の建設促進、高寿命化に役立つものである。