特許第5953240号(P5953240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953240
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】モータ制御装置及び電動コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20160707BHJP
【FI】
   H02P29/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-12166(P2013-12166)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143879(P2014-143879A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大根田 洋介
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−186259(JP,A)
【文献】 特開平7−325629(JP,A)
【文献】 特開2002−315306(JP,A)
【文献】 特開2012−205445(JP,A)
【文献】 特開2010−96123(JP,A)
【文献】 特開2012−205459(JP,A)
【文献】 特開2012−207641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源にコネクタを介して接続された電動コンプレッサのモータを制御するモータ制御装置であって、
所定の時間周期で前記モータに検知電流を供給する検知電流供給部と、
前記検知電流供給部によって前記検知電流が供給されたときに、前記電源からの電圧を平滑する平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧の変化によって前記コネクタの挿抜を判定する挿抜判定部と
を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記挿抜判定部は、前記平滑コンデンサの両端電圧が所定値以上低下した場合に前記コネクタが離脱したと判定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記挿抜判定部によって前記コネクタが離脱していると判定された場合に、前記平滑コンデンサを放電して前記平滑コンデンサの両端電圧を規定値以下まで低下させる放電部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載されたモータ制御装置を備えた電動コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアコン等に用いられる電動コンプレッサのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動コンプレッサは、車内空調を行うために、冷凍サイクルの中で冷媒を圧縮して供給するものであり、一般的には車両のエンジンルーム内に配置されている。このような電動コンプレッサは、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、圧縮機構部のロータを回転させるモータと、モータに電力を供給して駆動するインバータとを備えており、これらがケース内に設置されている。電動コンプレッサのケースにはコネクタが接続されており、電源であるバッテリからの電力が供給されている。
【0003】
ここで、電源に接続されたコネクタが活線状態において抜かれると、電源からの電圧供給が停止するので、平滑コンデンサに蓄えられた電圧はインバータ内部の素子からの漏れ電流によって放電する。しかし、放電量が小さいため、平滑コンデンサの電圧が安全な値まで低下するにはタイムラグが発生し、感電する恐れがあった。そこで、このような感電を防止するために、従来では特許文献1が開示されている。この特許文献1に開示された電源装置ではコネクタに挿抜検知回路を設け、コネクタが抜けている状態を検知すると、平滑コンデンサに蓄えられた電圧を放電していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−325629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された電源装置では、コネクタに挿抜検知回路を設けていたので、コネクタ自体が大型化して構造が複雑になり、これによって高コストになってしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、コネクタの大型化及び複雑化を防止してコストを低減することのできるモータ制御装置及び電動コンプレッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、電源にコネクタを介して接続された電動コンプレッサのモータを制御するモータ制御装置であって、所定の時間周期で前記モータに検知電流を供給する検知電流供給部と、前記検知電流供給部によって前記検知電流が供給されたときに、前記電源からの電圧を平滑する平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧の変化によって前記コネクタの挿抜を判定する挿抜判定部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記挿抜判定部は、前記平滑コンデンサの両端電圧が所定値以上低下した場合に前記コネクタが離脱したと判定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明であって、前記挿抜判定部によって前記コネクタが離脱していると判定された場合に、前記平滑コンデンサを放電して前記平滑コンデンサの両端電圧を規定値以下まで低下させる放電部をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載されたモータ制御装置を備えた電動コンプレッサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定の時間周期でモータに検知電流を供給し、このときの平滑コンデンサの電圧の変化によってコネクタの挿抜を判定するので、コネクタに挿抜検知回路を設ける必要がなくなり、コネクタの大型化及び複雑化を防止してコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置を備えた電動コンプレッサの構成を示すブロック図である。
図2図2は、IGBTスイッチング器の構成を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置によるコネクタの挿抜判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置によるコネクタの挿抜判定処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[電動コンプレッサの構成]
図1は本実施形態に係るモータ制御装置を備えた電動コンプレッサの構成を示すブロック図である。図1に示すように、電動コンプレッサ1は、電源3にコネクタ5を介して接続されたインバータ7と、インバータ7によって駆動されるモータ9と、モータ9によって駆動される圧縮機構部11とを備えている。
【0015】
電源3は、車載バッテリ等の直流電源であり、ハーネスによってコネクタ5に接続され、インバータ7に直流電力を供給している。
【0016】
コネクタ5は、電動コンプレッサ1に設けられたソケットに装着することにより、電源3とインバータ7とを電気的に接続する。
【0017】
インバータ7は、電源3から供給された直流電力を3相の交流電力に変換してモータ9に供給しており、平滑コンデンサ13と、電圧検出器15と、IGBTスイッチング器17と、モータ制御装置19とを備えている。ここで、平滑コンデンサ13は電源3から供給された直流電圧を平滑化しており、電圧検出器15は平滑コンデンサ13の両端電圧を検出している。
【0018】
IGBTスイッチング器17は、内部に備えたスイッチング素子によってUVW相を有する3相交流を出力してモータ9をPWM駆動する。例えば、図2に示すように、IGBTスイッチング器17は、スイッチング素子である6つのIGBT1〜6を備え、これらのIGBT1〜6のON、OFFを組み合わせることによってUVWの任意の相に電流を流している。図2では、IGBT3とIGBT5をONすることによって、UV相に電流を流している。このとき、UV相に流れる電流値は、IGBT3とIGBT5をONする時間によって決定することができる。
【0019】
モータ制御装置19は、IGBTスイッチング器17を制御することによってモータ9の駆動を制御するとともに、後述するコネクタ5の挿抜判定処理を実行している。ここで、モータ制御装置19は、検知電流供給部21と、電圧検出部23と、挿抜判定部25と、放電部27とを備えている。
【0020】
検知電流供給部21は、IGBTスイッチング器17を制御することによって所定の時間周期でモータ9に検知電流を供給する。
【0021】
電圧検出部23は、検知電流供給部21によって検知電流が供給されたときに、電圧検出器15で検出された平滑コンデンサ13の両端電圧を取得する。
【0022】
挿抜判定部25は、電圧検出部23が取得した平滑コンデンサ13の両端電圧の変化によってコネクタ5の挿抜を判定する。特に、挿抜判定部25は、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下した場合にコネクタ5が離脱したと判定する。
【0023】
放電部27は、挿抜判定部25によってコネクタ5が離脱していると判定された場合に、平滑コンデンサ13を放電して平滑コンデンサ13の両端電圧を規定値以下まで低下させる。
【0024】
ここで、モータ制御装置19は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と周辺機器から構成されており、特定のプログラムを実行することにより、検知電流供給部21、電圧検出部23、挿抜判定部25及び放電部27として動作する。尚、本実施形態では、モータ制御装置19を電動コンプレッサに適用した場合について説明しているが、その他の装置に設置されたモータの制御に適用することも可能である。
【0025】
モータ9は、例えば3相交流同期モータであり、インバータ7から出力される交流電力によって駆動されている。本実施形態では3相の交流モータを一例として示しているが、複数相の交流モータであれば3相でなくてもよい。
【0026】
圧縮機構部11は、シリンダハウジングとロータとを備え、モータ9の回転によってロータが回転して冷媒の圧縮を行っている。
【0027】
[コネクタの挿抜判定処理の手順]
次に、本実施形態に係るモータ制御装置19によるコネクタの挿抜判定処理の手順を図3のフローチャート及び図4のタイミングチャートを参照して説明する。
【0028】
図3に示すように、まずステップS10において、検知電流供給部21は、IGBTスイッチング器17のスイッチング素子をON、OFFすることによって所定の時間周期でモータ9に検知電流を供給する。例えば、図4に示すように時間周期Tで、時刻t1、t2、t3、t5に検知電流を供給する。この時間周期Tは、モータ9の任意の相に検知電流が流れるように設定されており、0.1〜10m秒程度の長さに設定されている。例えば、本実施形態ではモータ9のUV相に検知電流が流れるように時間周期Tが設定されている。また、検知電流の電流値は微小な値に設定されており、これによって無効電流を最小限に抑えることができる。
【0029】
次に、ステップS20において、電圧検出部23は、検知電流が供給されたときに平滑コンデンサ13の両端電圧を検出する。平滑コンデンサ13の両端電圧は、電圧検出器15で検出されているので、電圧検出器15から取得することによって平滑コンデンサ13の両端電圧を検出することができる。
【0030】
次に、ステップS30において、挿抜判定部25は、平滑コンデンサ13の両端電圧の変化によってコネクタ5の挿抜を判定する。具体的には、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下したか否かを判定し、所定値以上低下していない場合にはコネクタ5は接続された状態であると判定する。一方、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下した場合にはコネクタ5が離脱した状態であると判定する。コネクタ5が接続された状態では、電源3から電圧が供給されているので、検知電流を流しても平滑コンデンサ13の両端電圧は変化しない。しかし、コネクタ5が離脱した状態では、検知電流を流すと、平滑コンデンサ13に蓄えられた電圧が放電されるので、平滑コンデンサ13の両端電圧は低下する。したがって、検知電流を周期的に流して平滑コンデンサ13の両端電圧を監視することにより、コネクタ5の挿抜を判定することができる。
【0031】
例えば、図4に示すように時刻t1〜t3では、コネクタ5が接続された状態であるため、検知電流を流しても平滑コンデンサ13の両端電圧は変化しない。しかし、時刻t4にコネクタ5が離脱すると、時刻t5に検知電流を流した際に平滑コンデンサ13の両端電圧は低下する。このとき、平滑コンデンサ13の両端電圧が低下する大きさは、検知電流の値に応じて決まるので、挿抜を判定するための所定値についても検知電流に応じて設定すればよい。
【0032】
このようにしてステップS30においてコネクタ5の挿抜の判定が行われ、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下していない場合には、コネクタ5は接続された状態であると判定してステップS10に戻り、ステップS10〜S30の処理を繰り返し実行する。
【0033】
一方、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下した場合には、挿抜判定部25はコネクタ5が離脱したと判定してステップS40に進む。
【0034】
ステップS40では、放電部27が平滑コンデンサ13を放電して平滑コンデンサ13の両端電圧を規定値以下まで低下させる。具体的には、放電部27がIGBTスイッチング器17のスイッチング素子を制御することによって、図4に示すような放電電流を流し、これによって平滑コンデンサ13の両端電圧を規定値以下まで低下させる。放電電流の電流値については、平滑コンデンサ13の容量に応じて設定すればよい。
【0035】
このようにして平滑コンデンサ13の放電が完了すると、本実施形態に係るコネクタの挿抜判定処理は終了する。
【0036】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るモータ制御装置19では、所定の時間周期でモータに検知電流を供給し、このときの平滑コンデンサ13の両端電圧の変化によってコネクタ5の挿抜を判定する。これにより、コネクタ5に挿抜検知回路を設ける必要がなくなり、コネクタ5の大型化及び複雑化を防止してコストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るモータ制御装置19によれば、平滑コンデンサ13の両端電圧が所定値以上低下した場合にコネクタ5が離脱したと判定するので、平滑コンデンサ13の両端電圧を監視することによってコネクタ5の挿抜を確実に検出することができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係るモータ制御装置19では、コネクタ5が離脱していると判定した場合に、平滑コンデンサ13を放電して平滑コンデンサ13の両端電圧を規定値以下まで低下させる。これにより、コネクタ5が離脱すると、直ちに平滑コンデンサ13の両端電圧を低下させることができ、安全性を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態に係るモータ制御装置19を電動コンプレッサ1に適用すれば、コネクタ5の大型化及び複雑化を防止できるので、電動コンプレッサ1のコストを低減することができる。特に、電動コンプレッサ1を車両に搭載する場合には、省スペースが要求されるので、本実施形態に係るモータ制御装置19を電動コンプレッサ1に適用してコネクタ5の大型化を防止できれば、省スペースの実現に有効である。
【0040】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 電動コンプレッサ
3 電源
5 コネクタ
7 インバータ
9 モータ
11 圧縮機構部
13 平滑コンデンサ
15 電圧検出器
17 IGBTスイッチング器
19 モータ制御装置
21 検知電流供給部
23 電圧検出部
25 挿抜判定部
27 放電部
図1
図2
図3
図4