特許第5953241号(P5953241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953241
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】タレット旋盤
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   B23B29/24 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-12864(P2013-12864)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-144488(P2014-144488A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深見 純市
(72)【発明者】
【氏名】岩間 崇
(72)【発明者】
【氏名】大内 一弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 治明
(72)【発明者】
【氏名】松野 修
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−001337(JP,U)
【文献】 特開昭63−074507(JP,A)
【文献】 特開平06−238539(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046278(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/24
B23B 29/32
B23Q 3/12
B23B 31/117
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックによってワークを支持して回転する回転主軸と、
刃具を保持する刃具保持具と、
該刃具保持具を周方向に複数装着可能なタレットと、
該タレットを旋回可能に支持する刃物台と、
上記タレットを旋回させ、上記各刃具保持具を、上記ワークに対して加工を行うためのワーク加工位置と、上記刃具の交換を行うための刃具交換位置とに移動させるための旋回用駆動源と、
上記刃物台内、又は該刃物台に対して上記タレットが配設された正面側とは反対側の裏面側に配設された刃具交換用駆動源と、
上記刃物台内に配設され、上記刃具交換用駆動源による動力を上記刃具交換位置まで伝達する動力伝達機構部と、
上記刃具保持具内に設けられ、該刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うためのロック機構部と、を備えており、
上記動力伝達機構部は、上記刃物台内において上記タレットの旋回中心軸線に平行に配設され、上記刃具交換用駆動源によって回転駆動される交換用駆動軸と、該交換用駆動軸に直交して上記刃物台内に配設され、上記交換用駆動軸に従動して回転駆動される交換用従動軸と、を有しており、
上記ロック機構部は、その上記刃具保持具が上記刃具交換位置に位置するときに、上記動力伝達機構部における被係合部と係合する係合部と、上記交換用従動軸の回転を受けて、上記刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うためのカムと、を有しており、
上記刃具交換用駆動源によって、上記動力伝達機構部を介して上記刃具交換位置にある上記刃具保持具の上記ロック機構部を駆動し、該刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うよう構成されていることを特徴とするタレット旋盤。
【請求項2】
請求項に記載のタレット旋盤において、上記刃物台の上記ワーク加工位置は、上記回転主軸と対向する横方向の一方側に形成されており、
上記刃物台の上記刃具交換位置は、上記ワーク加工位置と反対側に位置する横方向の他方側に形成されていることを特徴とするタレット旋盤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタレット旋盤において、上記刃具保持具には、上記回転主軸に支持する円筒形状のワークの内周を旋削加工するための内周用刃具を保持する内周用刃具保持具と、上記円筒形状のワークの外周を旋削加工するための外周用刃具を保持する外周用刃具保持具とがあり、
該外周用刃具保持具と上記内周用刃具保持具とは、上記タレットの外周に着脱可能であることを特徴とするタレット旋盤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のタレット旋盤において、上記刃具交換用駆動源はサーボモータであることを特徴とするタレット旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃具を保持する刃具保持具が複数配列されたタレットを備えるタレット旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
タレット旋盤においては、刃具保持具を周方向に複数配列したタレットを、刃具保持具を配列する間隔に合わせて所定角度ずつ旋回させるようになっている。そして、刃具保持具に保持する刃具を所定のワーク加工位置に移動させ、この刃具によって、回転主軸によって回転するワークに対して切削加工を行っている。タレット旋盤は、加工室内に配置されて、ワークに対する切削加工を行う。また、刃具保持具に対する刃具の交換(着脱)は、作業者によって行われることが多い。
【0003】
また、刃具保持具に対する刃具の交換を、種々のアクチュエータを用いて行う技術も知られている。例えば、特許文献1の工具交換装置は、旋盤における工具タレットの工具着脱ソケット装置に対して、工具の交換を行うために用いられる。工具交換装置は、工具を収容する工具マガジン、工具交換を行う交換装置本体、工具を把持するための一対のグリッパ等を有しており、旋盤の工具タレットと工具マガジンとの間で、一対のグリッパによって把持する工具を交換するよう構成されている。また、内径加工用の工具と外径加工用の工具とを、簡単な構成により、交換可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−43641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の工具交換装置は、旋盤に対して併設されており、旋盤の工具タレットに対して外部から接近して工具の交換を行うものである。そのため、旋盤の加工室内部において工具交換装置が大きなスペースを占めることになり、旋盤によって加工を行うワークのサイズが制限される可能性がある。また、工具交換装置が、回転主軸に対してワークを着脱する装置等に干渉する可能性も生ずる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、刃具を交換するための機構がタレットの外部の周辺に位置せず、タレットの外部の周辺に十分なスペースを確保することができるタレット旋盤を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、チャックによってワークを支持して回転する回転主軸と、
刃具を保持する刃具保持具と、
該刃具保持具を周方向に複数装着可能なタレットと、
該タレットを旋回可能に支持する刃物台と、
上記タレットを旋回させ、上記各刃具保持具を、上記ワークに対して加工を行うためのワーク加工位置と、上記刃具の交換を行うための刃具交換位置とに移動させるための旋回用駆動源と、
上記刃物台内、又は該刃物台に対して上記タレットが配設された正面側とは反対側の裏面側に配設された刃具交換用駆動源と、
上記刃物台内に配設され、上記刃具交換用駆動源による動力を上記刃具交換位置まで伝達する動力伝達機構部と、
上記刃具保持具内に設けられ、該刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うためのロック機構部と、を備えており、
上記動力伝達機構部は、上記刃物台内において上記タレットの旋回中心軸線に平行に配設され、上記刃具交換用駆動源によって回転駆動される交換用駆動軸と、該交換用駆動軸に直交して上記刃物台内に配設され、上記交換用駆動軸に従動して回転駆動される交換用従動軸と、を有しており、
上記ロック機構部は、その上記刃具保持具が上記刃具交換位置に位置するときに、上記動力伝達機構部における被係合部と係合する係合部と、上記交換用従動軸の回転を受けて、上記刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うためのカムと、を有しており、
上記刃具交換用駆動源によって、上記動力伝達機構部を介して上記刃具交換位置にある上記刃具保持具の上記ロック機構部を駆動し、該刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うよう構成されていることを特徴とするタレット旋盤にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記タレット旋盤は、刃具を交換(着脱)するための機構が、タレットの外部の周辺に位置しない工夫をしたものである。
具体的には、タレット旋盤は、刃具交換用駆動源を、刃物台内、又は刃物台の裏面側に配設し、刃具交換用駆動源による動力を刃具交換位置まで伝達する動力伝達機構部を、刃物台内に配設している。また、タレット旋盤は、刃具保持具に対する刃具のロック及びロックの解除を行うためのロック機構部をタレット内に有している。また、刃具交換位置に位置する刃具保持具においては、そのロック機構部における係合部が、動力伝達機構部における被係合部と係合する。
【0009】
このように、タレット旋盤においては、刃具保持具に対する刃具の交換を行うための刃具交換用駆動源及び動力伝達機構部が、タレットの外部の周辺に位置しない。これにより、タレットの外部の周辺に十分なスペースを確保することができる。そのため、刃物台のワーク加工位置に位置する刃具保持具の刃具によって回転主軸に支持するワークに加工を行う際に、加工を行うワークのサイズが、刃具の交換を行う機構によっては制限されない。また、刃具の交換を行う機構が、回転主軸に対してワークを着脱する装置等に干渉する可能性をなくすことができる。
【0010】
タレット旋盤における刃具の交換は次のように行うことができる。
旋回用駆動源によって刃物台に対してタレットを旋回させ、交換を行う刃具を保持する刃具保持具を刃具交換位置に移動させる。このとき、刃具保持具のロック機構部における係合部が、刃物台の動力伝達機構部における被係合部と係合する。次いで、刃具交換用駆動源によって動力伝達機構部を駆動すると、被係合部と係合部との係合を介して、ロック機構部が駆動される。そして、このロック機構部の動作によって、刃具保持具に対する刃具のロック及びロックの解除が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、タレット旋盤を上方から見た状態で示す断面説明図。
図2】実施例にかかる、タレット旋盤を側方から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、図1におけるタレットの周辺を拡大して示す断面説明図。
図4】実施例にかかる、タレットの周辺を正面から見た状態で示す図で、図3におけるA−A線矢視断面説明図。
図5】実施例にかかる、ロックシャフトがロック位置にあるロック機構部の周辺を拡大して示す図で、図3におけるB−B線矢視断面説明図。
図6】実施例にかかる、ロックシャフトがアンロック位置にあるロック機構部の周辺を拡大して示す図で、図3におけるB−B線矢視断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したタレット旋盤における好ましい実施の形態につき説明する。
上記タレット旋盤においては、上記動力伝達機構部は、上記刃物台内において上記タレットの旋回中心軸線に平行に配設され、上記刃具交換用駆動源によって回転駆動される交換用駆動軸と、該交換用駆動軸に直交して上記刃物台内に配設され、上記交換用駆動軸に従動して回転駆動される交換用従動軸と、を有しており、上記ロック機構部は、上記交換用従動軸の回転を受けて、上記刃具保持具に対する上記刃具のロック及び該ロックの解除を行うためのカムを有してい
これにより、動力伝達機構部を、交換用駆動軸と交換用従動軸とを用いて構成することにより、刃具交換用駆動源による回転駆動力を、ロック機構部に容易に伝達することができる。また、ロック機構部においてカムを用いることにより、ロック機構部に伝達される回転駆動力によって、刃具のロック及びロックの解除を容易に行うことができる。
【0013】
また、上記刃物台の上記ワーク加工位置は、上記回転主軸と対向する横方向の一方側に形成されており、上記刃物台の上記刃具交換位置は、上記ワーク加工位置と反対側に位置する横方向の他方側に形成されていてもよい(請求項)。
この場合には、ワーク加工位置と刃具交換位置との配置関係が適切であり、回転主軸に対してワークを着脱する装置等との干渉を防止して、刃具保持具に対する刃具の交換を行うことができる。
【0014】
また、上記刃具保持具には、上記回転主軸に支持する円筒形状のワークの内周を旋削加工するための内周用刃具を保持する内周用刃具保持具と、上記円筒形状のワークの外周を旋削加工するための外周用刃具を保持する外周用刃具保持具とがあり、該外周用刃具保持具と上記内周用刃具保持具とは、上記タレットの外周に着脱可能であってもよい(請求項)。
この場合には、内周用刃具保持具と外周用刃具保持具とをタレットの外周に装着しておき、内周用刃具と外周用刃具とによって、円筒形状のワークの内周と外周とを旋削加工することができる。
【0015】
また、上記刃具交換用駆動源はサーボモータであってもよい(請求項)。
この場合には、サーボモータのトルク指令を受けた常に一定のトルクによって、ロック機構部を駆動し、刃具保持具に対する刃具のロックを行うことができる。また、サーボモータに設けられたエンコーダの位置情報を用いることにより、刃具保持具に切粉等の異物が噛み込んでしまう不具合を検知することができる。
なお、刃具交換用駆動源を油圧シリンダとする場合には、作動油の温度変動によって、刃具保持具が刃具をロックする力にバラツキが生じ、このロックを行う精度が悪化するおそれがある。
【実施例】
【0016】
以下に、上記タレット旋盤にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のタレット旋盤1は、図1図3図4に示すごとく、回転主軸11、刃具保持部5A,5B、タレット4、刃物台2、旋回用駆動源22、刃具交換用駆動源21、動力伝達機構部3及びロック機構部6A,6Bを備えている。
回転主軸11は、チャック111によって加工対象であるワーク8を支持して回転するよう構成されている。刃具保持具5A,5Bは刃具7A,7Bを保持するよう構成されている。タレット4は、刃具保持具5A,5Bを周方向Cに複数配列して形成されている。刃物台2は、タレット4を旋回可能に支持している。旋回用駆動源22は、タレット4を旋回させ、各刃具保持具5A,5Bを、ワーク8に対して加工を行うためのワーク加工位置201と、刃具7A,7Bの交換(着脱)を行うための刃具交換位置202とに移動させるよう構成されている。
【0017】
図1図2に示すごとく、刃具交換用駆動源21は、刃物台2に対してタレット4が配設された正面側D1とは反対側の裏面側D2に配設されている。動力伝達機構部3は、刃物台2内に配設され、刃具交換用駆動源21による動力を刃具交換位置202まで伝達するものである。図3図4に示すごとく、ロック機構部6A,6Bは、刃具保持具5A,5B内に設けられ、刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を行うものである。ロック機構部6A,6Bは、その刃具保持具5A,5Bが刃具交換位置202に位置するときに、動力伝達機構部3における被係合部33と係合する係合部66を有している。
タレット旋盤1は、刃具交換用駆動源21によって、動力伝達機構部3を介して刃具交換位置202にある刃具保持具5A,5Bのロック機構部6A,6Bを駆動し、刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を行うよう構成されている。
【0018】
以下に、本例のタレット旋盤1につき、図1図6を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、本例のタレット旋盤1は、複数の刃具保持具5A,5Bに複数種類の刃具7A,7Bを保持し、回転主軸11の先端部に配置されたチャック111に支持するワーク8に対して、複数種類の刃具7A,7Bによって旋削加工を可能にしたものである。また、各刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を、タレット旋盤1自体の動作によって実現している。タレット旋盤1における刃物台2は、移動用駆動源によって、タレット4と回転主軸11が並ぶ横方向W、及びタレット4の旋回中心軸線Oに平行な奥行方向Dに移動可能である。回転主軸11は、回転用駆動源によって駆動されて回転するよう構成されている。タレット旋盤1の動作を制御する制御装置は、旋回用駆動源22、刃具交換用駆動源21、移動用駆動源(図示略)及び回転用駆動源(図示略)の各動作を制御するよう構成されている。本例の各駆動源は、サーボモータによって構成されている。
【0019】
図3図4に示すごとく、ワーク加工位置201は、刃物台2に対する刃具保持具5A,5Bの周方向Cの位置として形成され、回転主軸11と対向する横方向Wの一方側に形成されている。また、刃具交換位置202は、刃物台2に対する刃具保持具5A,5Bの周方向Cの位置として形成され、ワーク加工位置201と反対側に位置する横方向Wの他方側に形成されている。
回転主軸11は、回転用駆動源によって駆動されて、円筒形状のワーク8をチャック111によって支持して回転するよう構成されている。タレット4は、その旋回中心軸線Oを水平方向に向けて、刃物台2における正面側D1に配設されている。タレット4は、刃物台2における断面円形状の先端部の外周に対して、回転可能な状態で配設されている。タレット4の外周は、刃具保持具5A,5Bを周方向Cに配置する数(本例では8つ)に合った多角形状に形成されている。
【0020】
動力伝達機構部3は、刃具交換用駆動源21によって回転駆動される交換用駆動軸31と、交換用駆動軸31に従動して回転駆動される交換用従動軸32とを有している。交換用駆動軸31は、刃物台2内においてタレット4の旋回中心軸線Oに平行に配設されており、交換用従動軸32は、交換用駆動軸31に直交して刃物台2内に配設されている。本例の刃具交換位置202は、刃物台2における横方向Wの一方側に配置されており、交換用従動軸32は、交換用駆動軸31に対して横方向Wの一方側に、ロック機構部6A,6Bの係合部66と係合する被係合部33を有している。また、刃具交換用駆動源21には、減速機211が取り付けられており、動力伝達機構部3に伝達するトルクを大きくしている。
【0021】
交換用駆動軸31と交換用従動軸32とには、互いに噛合するかさ歯車311,321がそれぞれ設けられている。交換用駆動軸31の回転力は、各かさ歯車311,321を介して交換用従動軸32に伝達される。また、交換用従動軸32における被係合部33は、タレット4の旋回周方向Cに沿って形成された溝33によって形成されており、ロック機構部6A,6Bにおける係合部66は、溝33に挿入される突起66によって形成されている。なお、被係合部33を突起によって形成し、係合部66を溝によって形成してもよい。
また、図1に示すごとく、タレット4を旋回させる旋回用駆動源22による回転力は、タレット4の旋回中心軸線Oに対して平行に配設された旋回軸部221、及びギヤ等の動力伝達部材222を介して、タレット4に伝達される。
【0022】
図3図4に示すごとく、タレット4の刃具保持具5A,5Bが刃具交換位置202に移動したときには、刃具保持具5A,5Bのロック機構部6A,6Bにおける突起66が、交換用従動軸32における溝33に挿入され、交換用従動軸32に対してロック機構部6A,6Bのロック用従動軸61Aが一体的に回転する。
刃具保持具5A,5Bは、タレット4の外周に着脱可能であり、使用する刃具7A,7Bの本数に応じた数をタレット4に取り付けることができる。刃具保持具5A,5Bには、円筒形状のワーク8の内周を旋削加工するための内周用刃具7Aを保持する内周用刃具保持具5Aと、円筒形状のワーク8の外周を旋削加工するための外周用刃具7Bを保持する外周用刃具保持具5Bとがある。タレット4の外周には、内周用刃具保持具5Aと外周用刃具保持具5Bとを装着しておき、内周用刃具7Aと外周用刃具7Bとによって、円筒形状のワーク8の内周と外周とを旋削加工することができる。
【0023】
ロック機構部6A,6Bは、内周用刃具保持具5Aに設けられた内周用ロック機構部6Aと、外周用刃具保持具5Bに設けられた外周用ロック機構部6Bとがある。
図5図6に示すごとく、内周用ロック機構部6Aは、交換用従動軸32の被係合部33と係合する係合部66が形成されたロック用従動軸61Aと、ロック用従動軸61Aに設けられたカム63Aと、カム63Aに押されてスライドするロックシャフト64Aとを有している。ロック用従動軸61Aは、ケース65A内に回転可能に配設されている。ロックシャフト64Aは、スライドすることによって、内周用刃具7Aの保持状態をロック(固定)するロック位置601と内周用刃具7Aの保持状態を解除するアンロック位置602とに切り替わるよう構成されている。ロック用従動軸61A、カム63A及びロックシャフト64Aは、ケース65A内に収容されている。
【0024】
ロックシャフト64Aには、カム63Aの外周が摺動する摺動穴642が形成されている。ロックシャフト64Aは、スプリング643による付勢力によってロック位置601に付勢されており、ロック用従動軸61Aが回転する際にカム63Aによって押され、スプリング643の付勢力に抗してアンロック位置602に移動するよう構成されている。内周用刃具7Aに係合するロックシャフト64Aの装着側先端部641は、刃物台2に対してタレット4が設けられた正面側D1とは反対側の裏面側D2に向けられている(図3参照)。内周用刃具7Aは、ロックシャフト64Aの装着側先端部641に係合してケース65Aに装着され、刃先が円筒形状のワーク8の内周に向けられるように裏面側D2へ突出している。
【0025】
内周用刃具7Aには、内周用刃具保持具5Aに対して装着される装着部71が形成されている。また、ロックシャフト64Aの装着側先端部641は、一般部よりも拡径して形成されており、ロックシャフト64Aの外周であって装着側先端部641に対する基端側には、ロックシャフト64Aのロック位置601への移動に応じて装着部71を係止することができる係止部材644が設けられている。図5に示すごとく、ロックシャフト64Aがロック位置601に移動すると、係止部材644が拡径して装着部71を係止し、図6に示すごとく、ロックシャフト64Aがアンロック位置602に移動すると、係止部材644が縮径して装着部71の係止を解除するようになっている。
【0026】
図3図4に示すごとく、外周用ロック機構部6Bは、交換用従動軸32の被係合部33と係合する係合部66が形成されたロック用第1従動軸61Bと、ロック用第1従動軸61Bの回転を受けて回転するロック用第2従動軸62Bと、ロック用第2従動軸62Bに設けられたカム63Bと、カム63Bに押されてスライドするロックシャフト64Bとを有している。
ロック用第1従動軸61Bは、ケース65B内に回転可能に配設されており、ロック用第2従動軸62Bは、ロック用第1従動軸61Bに対して直交してケース65B内に配設されている。ロック用第1従動軸61Bの回転力は、各かさ歯車611,621を介してロック用第2従動軸62Bに伝達される。ロックシャフト64Bは、スライドすることによって、外周用刃具7Bの保持状態をロック(固定)するロック位置601と外周用刃具7Bの保持状態を解除するアンロック位置602とに切り替わるよう構成されている。ロック用第1従動軸61B、ロック用第2従動軸62B、カム63B及びロックシャフト64Bは、ケース65B内に収容されている。
【0027】
ロックシャフト64Bには、ロックシャフト64Aの場合と同様の構造で、摺動穴642及びスプリング643が設けられている。そして、ロックシャフト64Bは、ロック位置601とアンロック位置602とに移動するよう構成されている。外周用刃具7Bに係合するロックシャフト64Bの装着側先端部641は、刃物台2に対して旋回するタレット4の外周側に向けられている(図3参照)。外周用刃具7Bは、ロックシャフト64Bの装着側先端部641に係合してケース65Bに装着され、刃先が円筒形状のワーク8の外周に向けられるように外周側へ突出している。また、外周用刃具7Bについても、内周用刃具7Aの場合と同様の構造で、装着部71、装着側先端部641、係止部材644が設けられている。
【0028】
次に、タレット旋盤1における刃具7A,7Bの交換を行う動作、及びタレット旋盤1による作用効果につき説明する。
刃具保持具5A,5Bに装着された刃具7A,7Bを交換するに当たっては、まず、旋回用駆動源22としてのサーボモータによって刃物台2に対してタレット4を旋回させ、交換を行う刃具7A,7Bを保持する内周用刃具保持具5A又は外周用刃具保持具5Bを刃具交換位置202に移動させる。このとき、内周用刃具保持具5Aの内周用ロック機構部6Aにおける係合部としての突起66又は外周用刃具保持具5Bの外周用ロック機構部6Bにおける係合部としての突起66が、刃物台2の動力伝達機構部3における被係合部としての溝33に挿入される。これにより、動力伝達機構部3の交換用従動軸32に対して、内周用ロック機構部6Aのロック用従動軸61A又は外周用ロック機構部6Bのロック用第1従動軸61Bが一体的に回転可能な状態が形成される。
【0029】
次いで、刃具交換用駆動源21としてのサーボモータによって動力伝達機構部3を駆動する。この刃具交換用駆動源21による回転力は、交換用駆動軸31、交換用従動軸32、ロック用従動軸61A(又はロック用第1従動軸61B及びロック用第2従動軸62B)を介してカム63A(又は63B)へと伝達される。そして、カム63A(又は63B)が回転して、その外周がロックシャフト64A(又は64B)の摺動穴642を摺動するときには、ロックシャフト64A(又は64B)がスプリング643の付勢力に抗してロック位置601からアンロック位置602へと移動する。この状態において、作業者等は、内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)から内周用刃具7A(又は外周用刃具7B)を取り外す。そして、他の内周用刃具7A(又は他の外周用刃具7B)を内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)に取り付け、再び刃具交換用駆動源21としてのサーボモータによって動力伝達機構部3を駆動して、ロックシャフト64A(又は64B)をロック位置601に移動させる。
【0030】
本例のタレット旋盤1は、刃具7A,7Bを交換(着脱)するための機構が、タレット4の外部の周辺に位置しない工夫をしたものである。
本例のタレット旋盤1においては、内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)に対する内周用刃具7A(又は外周用刃具7B)の交換を行うための刃具交換用駆動源21及び動力伝達機構部3が、タレット4の外部の周辺に位置しない。これにより、タレット4の外部の周辺に十分なスペースを確保することができる。
【0031】
そのため、ワーク加工位置201に位置する各刃具保持具5A,5Bの各刃具7A,7Bによって、回転主軸11にチャック111によって支持する円筒形状のワーク8の内周又は外周に加工を行う際に、加工を行うワーク8のサイズが、各刃具7A,7Bの交換を行う機構によっては制限されない。また、各刃具7A,7Bの交換を行う機構が、回転主軸11に対してワーク8を着脱する装置等に干渉する可能性をなくすことができる。
なお、刃具交換用駆動源21は、刃物台2内に配設することもできる。この場合にも、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
また、本例のタレット旋盤1においては、発熱部品である刃具交換用駆動源21が、各刃具7A,7Bを保持する各刃具保持具5A,5Bのワーク加工位置202から離れた位置に配設されている。これにより、各刃具7A,Bによってワーク8に加工を行う際に、各刃具7A,7Bが刃具交換用駆動源21によって加熱されにくく、各刃具7A,7Bに熱変位が生じにくいことにより、ワーク8の加工精度を高めることができる。
それ故、本例のタレット旋盤1によれば、刃具7A,7Bを交換するための機構がタレット4の外部の周辺に位置せず、タレット4の外部の周辺に十分なスペースを確保することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 タレット旋盤
11 回転主軸
111 チャック
2 刃物台
201 ワーク加工位置
202 刃具交換位置
21 刃具交換用駆動源
22 旋回用駆動源
3 動力伝達機構部
31 交換用駆動軸
32 交換用従動軸
33 被係合部(溝)
4 タレット
5A,5B 刃具保持具
6A,6B ロック機構部
63A,63B カム
66 係合部(突起)
7A,7B 刃具
8 ワーク
O 旋回中心軸線
D1 正面側
D2 裏面側
図1
図2
図3
図4
図5
図6