【実施例】
【0016】
以下に、上記タレット旋盤にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のタレット旋盤1は、
図1、
図3、
図4に示すごとく、回転主軸11、刃具保持部5A,5B、タレット4、刃物台2、旋回用駆動源22、刃具交換用駆動源21、動力伝達機構部3及びロック機構部6A,6Bを備えている。
回転主軸11は、チャック111によって加工対象であるワーク8を支持して回転するよう構成されている。刃具保持具5A,5Bは刃具7A,7Bを保持するよう構成されている。タレット4は、刃具保持具5A,5Bを周方向Cに複数配列して形成されている。刃物台2は、タレット4を旋回可能に支持している。旋回用駆動源22は、タレット4を旋回させ、各刃具保持具5A,5Bを、ワーク8に対して加工を行うためのワーク加工位置201と、刃具7A,7Bの交換(着脱)を行うための刃具交換位置202とに移動させるよう構成されている。
【0017】
図1、
図2に示すごとく、刃具交換用駆動源21は、刃物台2に対してタレット4が配設された正面側D1とは反対側の裏面側D2に配設されている。動力伝達機構部3は、刃物台2内に配設され、刃具交換用駆動源21による動力を刃具交換位置202まで伝達するものである。
図3、
図4に示すごとく、ロック機構部6A,6Bは、刃具保持具5A,5B内に設けられ、刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を行うものである。ロック機構部6A,6Bは、その刃具保持具5A,5Bが刃具交換位置202に位置するときに、動力伝達機構部3における被係合部33と係合する係合部66を有している。
タレット旋盤1は、刃具交換用駆動源21によって、動力伝達機構部3を介して刃具交換位置202にある刃具保持具5A,5Bのロック機構部6A,6Bを駆動し、刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を行うよう構成されている。
【0018】
以下に、本例のタレット旋盤1につき、
図1〜
図6を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、本例のタレット旋盤1は、複数の刃具保持具5A,5Bに複数種類の刃具7A,7Bを保持し、回転主軸11の先端部に配置されたチャック111に支持するワーク8に対して、複数種類の刃具7A,7Bによって旋削加工を可能にしたものである。また、各刃具保持具5A,5Bに対する刃具7A,7Bのロック及びロックの解除を、タレット旋盤1自体の動作によって実現している。タレット旋盤1における刃物台2は、移動用駆動源によって、タレット4と回転主軸11が並ぶ横方向W、及びタレット4の旋回中心軸線Oに平行な奥行方向Dに移動可能である。回転主軸11は、回転用駆動源によって駆動されて回転するよう構成されている。タレット旋盤1の動作を制御する制御装置は、旋回用駆動源22、刃具交換用駆動源21、移動用駆動源(図示略)及び回転用駆動源(図示略)の各動作を制御するよう構成されている。本例の各駆動源は、サーボモータによって構成されている。
【0019】
図3、
図4に示すごとく、ワーク加工位置201は、刃物台2に対する刃具保持具5A,5Bの周方向Cの位置として形成され、回転主軸11と対向する横方向Wの一方側に形成されている。また、刃具交換位置202は、刃物台2に対する刃具保持具5A,5Bの周方向Cの位置として形成され、ワーク加工位置201と反対側に位置する横方向Wの他方側に形成されている。
回転主軸11は、回転用駆動源によって駆動されて、円筒形状のワーク8をチャック111によって支持して回転するよう構成されている。タレット4は、その旋回中心軸線Oを水平方向に向けて、刃物台2における正面側D1に配設されている。タレット4は、刃物台2における断面円形状の先端部の外周に対して、回転可能な状態で配設されている。タレット4の外周は、刃具保持具5A,5Bを周方向Cに配置する数(本例では8つ)に合った多角形状に形成されている。
【0020】
動力伝達機構部3は、刃具交換用駆動源21によって回転駆動される交換用駆動軸31と、交換用駆動軸31に従動して回転駆動される交換用従動軸32とを有している。交換用駆動軸31は、刃物台2内においてタレット4の旋回中心軸線Oに平行に配設されており、交換用従動軸32は、交換用駆動軸31に直交して刃物台2内に配設されている。本例の刃具交換位置202は、刃物台2における横方向Wの一方側に配置されており、交換用従動軸32は、交換用駆動軸31に対して横方向Wの一方側に、ロック機構部6A,6Bの係合部66と係合する被係合部33を有している。また、刃具交換用駆動源21には、減速機211が取り付けられており、動力伝達機構部3に伝達するトルクを大きくしている。
【0021】
交換用駆動軸31と交換用従動軸32とには、互いに噛合するかさ歯車311,321がそれぞれ設けられている。交換用駆動軸31の回転力は、各かさ歯車311,321を介して交換用従動軸32に伝達される。また、交換用従動軸32における被係合部33は、タレット4の旋回周方向Cに沿って形成された溝33によって形成されており、ロック機構部6A,6Bにおける係合部66は、溝33に挿入される突起66によって形成されている。なお、被係合部33を突起によって形成し、係合部66を溝によって形成してもよい。
また、
図1に示すごとく、タレット4を旋回させる旋回用駆動源22による回転力は、タレット4の旋回中心軸線Oに対して平行に配設された旋回軸部221、及びギヤ等の動力伝達部材222を介して、タレット4に伝達される。
【0022】
図3、
図4に示すごとく、タレット4の刃具保持具5A,5Bが刃具交換位置202に移動したときには、刃具保持具5A,5Bのロック機構部6A,6Bにおける突起66が、交換用従動軸32における溝33に挿入され、交換用従動軸32に対してロック機構部6A,6Bのロック用従動軸61Aが一体的に回転する。
刃具保持具5A,5Bは、タレット4の外周に着脱可能であり、使用する刃具7A,7Bの本数に応じた数をタレット4に取り付けることができる。刃具保持具5A,5Bには、円筒形状のワーク8の内周を旋削加工するための内周用刃具7Aを保持する内周用刃具保持具5Aと、円筒形状のワーク8の外周を旋削加工するための外周用刃具7Bを保持する外周用刃具保持具5Bとがある。タレット4の外周には、内周用刃具保持具5Aと外周用刃具保持具5Bとを装着しておき、内周用刃具7Aと外周用刃具7Bとによって、円筒形状のワーク8の内周と外周とを旋削加工することができる。
【0023】
ロック機構部6A,6Bは、内周用刃具保持具5Aに設けられた内周用ロック機構部6Aと、外周用刃具保持具5Bに設けられた外周用ロック機構部6Bとがある。
図5、
図6に示すごとく、内周用ロック機構部6Aは、交換用従動軸32の被係合部33と係合する係合部66が形成されたロック用従動軸61Aと、ロック用従動軸61Aに設けられたカム63Aと、カム63Aに押されてスライドするロックシャフト64Aとを有している。ロック用従動軸61Aは、ケース65A内に回転可能に配設されている。ロックシャフト64Aは、スライドすることによって、内周用刃具7Aの保持状態をロック(固定)するロック位置601と内周用刃具7Aの保持状態を解除するアンロック位置602とに切り替わるよう構成されている。ロック用従動軸61A、カム63A及びロックシャフト64Aは、ケース65A内に収容されている。
【0024】
ロックシャフト64Aには、カム63Aの外周が摺動する摺動穴642が形成されている。ロックシャフト64Aは、スプリング643による付勢力によってロック位置601に付勢されており、ロック用従動軸61Aが回転する際にカム63Aによって押され、スプリング643の付勢力に抗してアンロック位置602に移動するよう構成されている。内周用刃具7Aに係合するロックシャフト64Aの装着側先端部641は、刃物台2に対してタレット4が設けられた正面側D1とは反対側の裏面側D2に向けられている(
図3参照)。内周用刃具7Aは、ロックシャフト64Aの装着側先端部641に係合してケース65Aに装着され、刃先が円筒形状のワーク8の内周に向けられるように裏面側D2へ突出している。
【0025】
内周用刃具7Aには、内周用刃具保持具5Aに対して装着される装着部71が形成されている。また、ロックシャフト64Aの装着側先端部641は、一般部よりも拡径して形成されており、ロックシャフト64Aの外周であって装着側先端部641に対する基端側には、ロックシャフト64Aのロック位置601への移動に応じて装着部71を係止することができる係止部材644が設けられている。
図5に示すごとく、ロックシャフト64Aがロック位置601に移動すると、係止部材644が拡径して装着部71を係止し、
図6に示すごとく、ロックシャフト64Aがアンロック位置602に移動すると、係止部材644が縮径して装着部71の係止を解除するようになっている。
【0026】
図3、
図4に示すごとく、外周用ロック機構部6Bは、交換用従動軸32の被係合部33と係合する係合部66が形成されたロック用第1従動軸61Bと、ロック用第1従動軸61Bの回転を受けて回転するロック用第2従動軸62Bと、ロック用第2従動軸62Bに設けられたカム63Bと、カム63Bに押されてスライドするロックシャフト64Bとを有している。
ロック用第1従動軸61Bは、ケース65B内に回転可能に配設されており、ロック用第2従動軸62Bは、ロック用第1従動軸61Bに対して直交してケース65B内に配設されている。ロック用第1従動軸61Bの回転力は、各かさ歯車611,621を介してロック用第2従動軸62Bに伝達される。ロックシャフト64Bは、スライドすることによって、外周用刃具7Bの保持状態をロック(固定)するロック位置601と外周用刃具7Bの保持状態を解除するアンロック位置602とに切り替わるよう構成されている。ロック用第1従動軸61B、ロック用第2従動軸62B、カム63B及びロックシャフト64Bは、ケース65B内に収容されている。
【0027】
ロックシャフト64Bには、ロックシャフト64Aの場合と同様の構造で、摺動穴642及びスプリング643が設けられている。そして、ロックシャフト64Bは、ロック位置601とアンロック位置602とに移動するよう構成されている。外周用刃具7Bに係合するロックシャフト64Bの装着側先端部641は、刃物台2に対して旋回するタレット4の外周側に向けられている(
図3参照)。外周用刃具7Bは、ロックシャフト64Bの装着側先端部641に係合してケース65Bに装着され、刃先が円筒形状のワーク8の外周に向けられるように外周側へ突出している。また、外周用刃具7Bについても、内周用刃具7Aの場合と同様の構造で、装着部71、装着側先端部641、係止部材644が設けられている。
【0028】
次に、タレット旋盤1における刃具7A,7Bの交換を行う動作、及びタレット旋盤1による作用効果につき説明する。
刃具保持具5A,5Bに装着された刃具7A,7Bを交換するに当たっては、まず、旋回用駆動源22としてのサーボモータによって刃物台2に対してタレット4を旋回させ、交換を行う刃具7A,7Bを保持する内周用刃具保持具5A又は外周用刃具保持具5Bを刃具交換位置202に移動させる。このとき、内周用刃具保持具5Aの内周用ロック機構部6Aにおける係合部としての突起66又は外周用刃具保持具5Bの外周用ロック機構部6Bにおける係合部としての突起66が、刃物台2の動力伝達機構部3における被係合部としての溝33に挿入される。これにより、動力伝達機構部3の交換用従動軸32に対して、内周用ロック機構部6Aのロック用従動軸61A又は外周用ロック機構部6Bのロック用第1従動軸61Bが一体的に回転可能な状態が形成される。
【0029】
次いで、刃具交換用駆動源21としてのサーボモータによって動力伝達機構部3を駆動する。この刃具交換用駆動源21による回転力は、交換用駆動軸31、交換用従動軸32、ロック用従動軸61A(又はロック用第1従動軸61B及びロック用第2従動軸62B)を介してカム63A(又は63B)へと伝達される。そして、カム63A(又は63B)が回転して、その外周がロックシャフト64A(又は64B)の摺動穴642を摺動するときには、ロックシャフト64A(又は64B)がスプリング643の付勢力に抗してロック位置601からアンロック位置602へと移動する。この状態において、作業者等は、内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)から内周用刃具7A(又は外周用刃具7B)を取り外す。そして、他の内周用刃具7A(又は他の外周用刃具7B)を内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)に取り付け、再び刃具交換用駆動源21としてのサーボモータによって動力伝達機構部3を駆動して、ロックシャフト64A(又は64B)をロック位置601に移動させる。
【0030】
本例のタレット旋盤1は、刃具7A,7Bを交換(着脱)するための機構が、タレット4の外部の周辺に位置しない工夫をしたものである。
本例のタレット旋盤1においては、内周用刃具保持具5A(又は外周用刃具保持具5B)に対する内周用刃具7A(又は外周用刃具7B)の交換を行うための刃具交換用駆動源21及び動力伝達機構部3が、タレット4の外部の周辺に位置しない。これにより、タレット4の外部の周辺に十分なスペースを確保することができる。
【0031】
そのため、ワーク加工位置201に位置する各刃具保持具5A,5Bの各刃具7A,7Bによって、回転主軸11にチャック111によって支持する円筒形状のワーク8の内周又は外周に加工を行う際に、加工を行うワーク8のサイズが、各刃具7A,7Bの交換を行う機構によっては制限されない。また、各刃具7A,7Bの交換を行う機構が、回転主軸11に対してワーク8を着脱する装置等に干渉する可能性をなくすことができる。
なお、刃具交換用駆動源21は、刃物台2内に配設することもできる。この場合にも、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
また、本例のタレット旋盤1においては、発熱部品である刃具交換用駆動源21が、各刃具7A,7Bを保持する各刃具保持具5A,5Bのワーク加工位置202から離れた位置に配設されている。これにより、各刃具7A,Bによってワーク8に加工を行う際に、各刃具7A,7Bが刃具交換用駆動源21によって加熱されにくく、各刃具7A,7Bに熱変位が生じにくいことにより、ワーク8の加工精度を高めることができる。
それ故、本例のタレット旋盤1によれば、刃具7A,7Bを交換するための機構がタレット4の外部の周辺に位置せず、タレット4の外部の周辺に十分なスペースを確保することができる。