特許第5953247号(P5953247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953247高炉スラグを用いて耐凍害性を向上したモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953247
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】高炉スラグを用いて耐凍害性を向上したモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20160707BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20160707BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20160707BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C04B28/08
   C04B28/02
   C04B18/14 A
   C04B40/02
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-31409(P2013-31409)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-159354(P2014-159354A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2013年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211237
【氏名又は名称】ランデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】綾野 克紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】細谷 多慶
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−001208(JP,A)
【文献】 特開昭61−281057(JP,A)
【文献】 特開2010−006662(JP,A)
【文献】 特開2012−116712(JP,A)
【文献】 小山田邦弘 他,各種リサイクル材料のコンクリートへの有効活用に関する研究,コンクリート工学年次論文集,日本,2009年,Vol.31/No.1,pp.1915-1920
【文献】 吉田泰 他,環境配慮型超高強度コンクリートに関する研究,堆積建設技術センター報,日本,2011年,第44号,第22-1頁〜第22-5頁
【文献】 齊籐和秀 他,論文 高炉スラグ細骨材を使用した耐久性向上コンクリートの性質,コンクリート工学年次論文集,日本,日本コンクリート工学会,2009年 6月15日,Vol.31,No.1,139-144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/08
C04B 18/14
C04B 28/02
C04B 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグ細骨材を含む細骨材と、セメントと高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有し、空気を連行する性能を有する剤を含有しないモルタルまたはコンクリート用組成物であって、
結合材に対する水の質量比が0.25〜0.40であり、結合材に対する高炉スラグ微粉末の質量比が0.20〜0.60であり、細骨材に対する高炉スラグ細骨材の質量比が0.33以上である前記モルタルまたはコンクリート用組成物により作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れることを特徴とするモルタルまたはコンクリート用組成物。
【請求項2】
高炉スラグ細骨材を含む細骨材と、セメントを含み高炉スラグ微粉末を含まない結合材と、水とを含有し、空気を連行する性能を有する剤を含有しないモルタルまたはコンクリート用組成物であって、
結合材に対する水の質量比が0.25〜0.40であり、細骨材に対する高炉スラグ細骨材の質量比が0.33以上である前記モルタルまたはコンクリート用組成物により蒸気養生を経て作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れることを特徴とするモルタルまたはコンクリート用組成物。
【請求項3】
高炉スラグ細骨材を含む細骨材と、セメントと高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有し、空気を連行する性能を有する剤を含有しないモルタルまたはコンクリート用組成物であって、
結合材に対する水の質量比が0.25〜0.40であり、結合材に対する高炉スラグ微粉末の質量比が0.60以下であり、細骨材に対する高炉スラグ細骨材の質量比が0.33以上である前記モルタルまたはコンクリート用組成物により蒸気養生を経て作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れることを特徴とするモルタルまたはコンクリート用組成物。
【請求項4】
前記凍結融解試験に用いる前記モルタルまたはコンクリート供試体を浸漬させる溶液の濃度が質量比で10%の塩水であっても、凍結融解抵抗性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のモルタルまたはコンクリート用組成物。
【請求項5】
前記モルタルまたはコンクリート用組成物を成形してなる成形品が、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載のモルタルまたはコンクリート用組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一つに記載のモルタルまたはコンクリート用組成物を成形してなる成形品。
【請求項7】
前記モルタルまたはコンクリート用組成物にAE剤を添加しないでも得られる成形品であり、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする請求項に記載の成形品。
【請求項8】
前記モルタルまたはコンクリート用組成物を蒸気養生しても得られる成形品であり、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする請求項6または7に記載の成形品。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一つに記載のモルタルまたはコンクリート用組成物を含んで構成され、モルタル表面またはコンクリート表面の補修に用いられることを特徴とする補修材料。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一つに記載のモルタルまたはコンクリート用組成物を用いてモルタル表面またはコンクリート表面を補修することを特徴とする補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉スラグを用いて耐凍害性を向上したモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの耐凍害対策として、普通コンクリートの荷卸し地点での空気量およびその許容差を4.5%±1.5%とすることが知られている(例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」を参照)。また、独立行政法人土木研究所による実験でも、AE剤を用いて空気を連行したコンクリートは耐凍害性を有することが確認されている。
【0003】
一方、コンクリートの耐凍害対策に関連する技術として、例えば特許文献1に記載の硬化体が知られている。この特許文献1の硬化体は、耐凍害性が著しく劣る鉄鋼スラグ水和固化体の耐凍害性を向上させたものである。
【0004】
なお、本出願人はこうしたモルタルまたはコンクリート用組成物に関連し、既に特許文献2および特願2012−209747号の技術を提案している。特許文献2は、非晶質な高炉スラグ細骨材、ならびに比表面積がブレーン値で2500〜7000cm/gの高炉スラグ微粉末およびポルトランドセメントを含む結合材を含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、結合材に対するポルトランドセメントの質量比が0.3〜0.9のものである。このモルタルまたはコンクリート用組成物は、下水道施設等の硫酸性雰囲気に晒される環境で使用した場合に、表面に二水石こう層が形成されるので耐硫酸性に優れるという特長がある。
【0005】
また、上記の特願2012−209747号の技術は、高炉スラグ細骨材、ならびに高炉スラグ微粉末およびポルトランドセメントを含む結合材を含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、全細骨材に対する高炉スラグ細骨材の含有率が質量比で66.7%以上であるものである。このモルタルまたはコンクリート用組成物は、細骨材に高炉スラグ細骨材を使用することによりモルタルまたはコンクリートが緻密化し、高強度となることで塩化物イオンの浸透を抑制するので、耐塩害性能に優れるという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−299923号公報
【特許文献2】特開2010−001208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸気養生を経て作製されるプレキャストコンクリートにおいては、上記のレディーミクストコンクリートのJIS規格を準用し、AE剤を用いて4.5%±1.5%の空気量を連行することで耐凍害対策としている。しかしながら、AE剤により導入したはずの空気が蒸気養生中に抜けてなくなることにより、耐凍害性が低くなるおそれがある。AE剤を用いなかった場合はより一層低くなるおそれがある。実際に、AE剤を用いて作製したプレキャストコンクリートに対してJIS A 1148「コンクリートの凍結融解試験方法」に規定の凍結融解試験を行うと、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%に満たないことが多い。このように、蒸気養生を行う一般的なプレキャストコンクリート製品では、耐凍害性が担保できていなかった。
【0008】
そこで、本発明者がコンクリートの耐凍害性に関して鋭意研究したところ、骨材または結合材として高炉スラグを多く含有する組成物は、十分な耐凍害性を有していることが判明した。すなわち、高炉スラグを多く含む場合にはAE剤を用いなくても耐凍害性が向上することが判明した。本発明者は以上のような知見に基づき、耐凍害性に優れた以下の本発明に至った。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高炉スラグを用いて耐凍害性を向上したモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物は、細骨材と、セメントを含む結合材と、水とを含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、前記細骨材または前記結合材の少なくとも一方に高炉スラグからなる材料を含み、前記モルタルまたはコンクリート用組成物により作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記凍結融解試験に用いる前記モルタルまたはコンクリート供試体を浸漬させる溶液の濃度が質量比で10%の塩水であっても、凍結融解抵抗性を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記高炉スラグからなる材料が高炉スラグ微粉末であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記高炉スラグからなる材料が高炉スラグ細骨材であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記細骨材に対する前記高炉スラグ細骨材の質量比が0.6〜1.0であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記結合材に対する水の質量比が0.25〜0.40であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他のモルタルまたはコンクリート用組成物は、上述した発明において、前記モルタルまたはコンクリート用組成物を成形してなる成形品が、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る成形品は、上述したモルタルまたはコンクリート用組成物を成形してなる成形品である。
【0019】
また、本発明に係る他の成形品は、上述したモルタルまたはコンクリート用組成物にAE剤を添加しないでも得られる成形品であり、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他の成形品は、上述したモルタルまたはコンクリート用組成物を蒸気養生しても得られる成形品であり、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る補修材料は、上述したモルタルまたはコンクリート用組成物を含んで構成され、モルタル表面またはコンクリート表面の補修に用いられることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る補修方法は、上述したモルタルまたはコンクリート用組成物を用いてモルタル表面またはコンクリート表面を補修することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物によれば、細骨材と、セメントを含む結合材と、水とを含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、前記細骨材または前記結合材の少なくとも一方に高炉スラグからなる材料を含み、前記モルタルまたはコンクリート用組成物により作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れている。したがって、耐凍害性に優れたモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、GGBF/B=0%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%とした場合の図である。
図2図2は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、GGBF/B=0%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%とした場合の図である。
図3図3は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、GGBF/B=60%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%とした場合の図である。
図4図4は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、GGBF/B=60%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%とした場合の図である。
図5図5は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、GGBF/B=0%、高炉スラグ細骨材100%とした場合の図である。
図6図6は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、GGBF/B=0%、高炉スラグ細骨材100%とした場合の図である。
図7図7は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、GGBF/B=60%、高炉スラグ細骨材100%とした場合の図である。
図8図8は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、GGBF/B=60%、高炉スラグ細骨材100%とした場合の図である。
図9図9は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、高炉スラグ細骨材100%、消泡剤添加によるnonAEとした場合の図である。
図10図10は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、高炉スラグ細骨材100%、消泡剤添加によるnonAEとした場合の図である。
図11図11は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%、蒸気養生、AE剤を用いないとした場合の図である。
図12図12は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、細骨材:硬質砂岩砕砂100%、蒸気養生、AE剤を用いないとした場合の図である。
図13図13は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、高炉スラグ細骨材100%、蒸気養生、AE剤を用いないとした場合の図である。
図14図14は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=25%、高炉スラグ細骨材100%、蒸気養生、AE剤を用いないとした場合の図である。
図15図15は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験結果の図であり、W/B=40%、GGBF/B=60%、蒸気養生、AE剤を用いないとした場合の図である。
図16-1】図16−1は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験の100サイクル時における普通コンクリート供試体の写真図であり、(1)は右側から撮影したもの、(2)は左側から撮影したものである。
図16-2】図16−2は、供試体を浸漬させる溶液に濃度が質量比で10%の塩水を用いた凍結融解試験の100サイクル時における本発明の供試体の写真図であり、(1)は右側から撮影したもの、(2)は左側から撮影したものである。
図17-1】図17−1は、凍結融解試験終了後の塩化物イオンの浸透量の測定値を示したものであり、AE剤を添加し、常温養生した場合の図である。
図17-2】図17−2は、凍結融解試験終了後の塩化物イオンの浸透量の測定値を示したものであり、AE剤を添加せず、常温養生した場合の図である。
図17-3】図17−3は、凍結融解試験終了後の塩化物イオンの浸透量の測定値を示したものであり、AE剤を添加し、蒸気養生した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物は、細骨材と、セメントを含む結合材と、水とを含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、前記細骨材または前記結合材の少なくとも一方に高炉スラグからなる材料を含み、前記モルタルまたはコンクリート用組成物により作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、凍結融解抵抗性(耐凍害性)に優れるものである。ここで、本発明の凍結融解試験においては、供試体を浸漬させる溶液に質量比で10%の塩水(質量パーセント濃度で10%の塩化ナトリウム水溶液)を用いていることが重要なポイントである。一般的には、塩水を用いて凍結融解試験を行った方が、真水で行うよりも過酷な条件下での試験となる。
【0027】
ここで、高炉スラグは、高炉で銑鉄を製造する際に副生されるものであり、その主成分はCaO、SiO2、Al2O3、MgOである。この高炉スラグは、高炉スラグ微粉末あるいは高炉スラグ細骨材の形態で用いることができる。この場合、高炉スラグ微粉末は結合材として、高炉スラグ細骨材は細骨材として用いる。
【0028】
高炉スラグ細骨材は、非晶質な高炉スラグ細骨材である。非晶質な高炉スラグ細骨材としては、例えば、高炉スラグを水で急冷した高炉水砕スラグを軽破砕し、固結防止剤を添加したものを用いることができる。高炉水砕スラグの製造において急冷される直前の溶融高炉スラグの温度は1400度〜1500度であり、急冷することにより結晶への原子配列が行われないまま固結してガラス質(非結晶)となる。高炉スラグ細骨材の品質は、JIS A 5011-1に規定されている。
【0029】
また、高炉スラグ細骨材は、例えば密度が2.5〜3.0g/cmのものである。このように、密度が2.5〜3.0g/cmの範囲にある高炉スラグ細骨材を用いることにより、得られるモルタルまたはコンクリートの耐凍害性が高められる。高炉スラグ細骨材の密度が2.5g/cm未満の場合、高炉スラグ細骨材が多孔質であるため、それを用いたモルタルおよびコンクリートの強度が低くなるおそれがあり、2.55g/cm以上、2.90g/cm以下であることが好ましく、2.80g/cm以下であることがより好ましい。
【0030】
高炉スラグ微粉末は、高炉スラグを水で急冷した高炉水砕スラグを乾燥・粉砕したものであり、比表面積がブレーン値で2500〜7000cm/gのものである。このように、比表面積がブレーン値で2500〜7000cm/gの高炉スラグ微粉末を用いることにより、耐凍害性能に優れたモルタルまたはコンクリート用組成物が得られる。用いられる高炉スラグ微粉末の比表面積がブレーン値で2500cm/g未満の場合、初期強度の発現性が悪くなるおそれがあり、比表面積はブレーン値で3000cm/g以上であることが好ましく、3500cm/g以上であることがより好ましい。一方、比表面積がブレーン値で7000cm/gを超える場合、コストが高くなるとともに、水和熱が高くなり、乾燥収縮ひずみが大きくなる等、コンクリートに初期欠陥を生じさせるおそれがあり、比表面積がブレーン値で6500cm/g以下であることが好ましく、5000cm/g以下であることがより好ましい。
【0031】
また、本発明で用いられるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が挙げられるが、中でも普通ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0032】
本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物は、細骨材と、セメントを含む結合材と、水とを含有するものであるが、セメント(C)と結合材(B)との質量比(C/B)は0.3〜0.9とするのが好ましく、0.35以上、0.85以下であることがより好ましい。質量比(C/B)がこのような範囲にあることにより、得られるモルタルまたはコンクリートの耐凍害性能が良好となる。
【0033】
また、結合材として高炉スラグ微粉末を含む場合には、結合材(B)に対する高炉スラグ微粉末(GGBF)の質量比(GGBF/B)は0.1〜0.7とするのが好ましく、0.15以上、0.65以下であることがより好ましい。また、細骨材として高炉スラグ細骨材を含む場合には、細骨材(S)に対する高炉スラグ細骨材(BFS)の質量比(BFS/S)は0.6〜1.0とするのが好ましい。
【0034】
本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物のうち、コンクリート用組成物は通常さらに粗骨材を含むものであり、モルタルまたはコンクリート用組成物が硬化されてモルタルまたはコンクリートが得られることとなる。ここで、モルタルまたはコンクリート用組成物における水の使用量(W)としては、結合材(B)に対する水(W)の質量比(W/B)が0.25〜0.40であること、つまり結合材(B)100質量部に対して、水(W)が25〜40質量部であることが好ましい。また、コンクリート用組成物における粗骨材の使用量としては、結合材(B)100質量部に対して、粗骨材が100〜500質量部であることが好ましい。また、本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、さらにその他の成分を含有しても構わない。
【0035】
本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物は、凍害に対する抵抗性に優れるとともに、後述するように塩害に対する抵抗性にも優れている。したがって、耐凍害性はもちろんのこと、耐塩害性が要求される建造物等の施工や、冬季に融雪剤が散布される山間部の高速道路等といった塩害と凍害が複合して生じ得る場所に対して特に有効である。また、こうした用途以外にも例えば、寒冷地域における海岸構造物、海洋構造物、水路構造物、道路構造物、擁壁構造物の耐凍害性と耐塩害性が要求される現場で好適に用いられる。このとき、予め本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物を成形し、成形品(プレキャストコンクリート製品)として施工してもよいし、本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物を用いてモルタル表面またはコンクリート表面を補修する使用態様であっても構わない(本発明の補修方法)。ここで、本発明の補修材料としては上記のモルタルまたはコンクリート用組成物を含んで構成することができる。
【0036】
次に、本発明の作用効果について、図1図15の凍結融解試験結果を用いて説明する。この試験では、本発明のモルタルまたはコンクリート用組成物が、凍害および塩害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることを確認するために、凍結融解させる水としては真水ではなく塩水(質量パーセント濃度で10%の塩化ナトリウム水溶液)を用いて、JIS A 1148に記載のA法に準拠した試験を行っている。一般的には、塩水を用いて凍結融解試験を行った方が、真水で行うよりも過酷な条件下での試験となる。
【0037】
また、図1図15においては、AE剤を添加したコンクリート供試体を「AEコンクリート」と表記し、AE剤を添加しないコンクリート供試体を「AE剤なし」あるいは「nonAE」と表記している。また、養生方式により蒸気養生と常温養生(水中養生)とに区別している。また、「B」は結合材を、「GGBF」は高炉スラグ微粉末を、「BFS」は高炉スラグ細骨材を、「S」は細骨材を意味している。「GGBF/B」は高炉スラグ微粉末量/結合材量を、「BFS/S」は高炉スラグ細骨材量/全細骨材量を、「W/B」は水結合材比(水量/結合材量)を意味している。なお、「細骨材=砕砂100%」は、細骨材として硬質砂岩砕砂を100%用いたことを意味している。また、下記の試験結果は、コンクリートから粗骨材を除いて成るモルタルにおいても同様になると考えられる。
【0038】
なお、この凍結融解試験で使用したコンクリート供試体の配合を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図1に示すように、W/B=40%の場合では、AE剤を添加し、常温養生したものについては、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。しかしながら、AE剤を使用しても蒸気養生したものや、AE剤を添加していないものについては、いずれも相対動弾性係数が60%以下となり、複合劣化に対する抵抗性が低いことが分かる。
【0041】
図2に示すように、W/B=25%の場合では、AE剤を添加したものについては、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。しかしながら、AE剤を添加していないものについては、いずれも相対動弾性係数が60%以下となり、複合劣化に対する抵抗性が低いことが分かる。
【0042】
図3に示すように、高炉スラグ微粉末を含むW/B=40%の場合では、AE剤を添加したものについては、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。しかしながら、AE剤を添加していないものについては、常温養生ではサイクル300回以前に相対動弾性係数が60%以下になり、蒸気養生ではサイクル300回直前で急低下することから、複合劣化に対する抵抗性が低いことが分かる。
【0043】
図4に示すように、高炉スラグ微粉末を含むW/B=25%の場合では、AE剤を添加したものは当然のことながら、添加していないものも凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。
【0044】
図5に示すように、高炉スラグ細骨材を含むW/B=40%の場合では、AE剤を添加したものと、AE剤を添加していない蒸気養生のものについては、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。しかしながら、AE剤を添加していない常温養生のものでは相対動弾性係数が60%以下となり、複合劣化に対する抵抗性が低いことが分かる。
【0045】
図6に示すように、高炉スラグ細骨材を含むW/B=25%の場合では、AE剤を添加したものは当然のことながら、添加していないものも凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。
【0046】
図7に示すように、高炉スラグ細骨材および高炉スラグ微粉末を含むW/B=40%の場合では、AE剤を添加したものは当然のことながら、添加していないものも凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。また、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用した場合には、AE剤を用いなくとも、かつ、蒸気養生を行っても十分な複合劣化に対する抵抗性を発揮することが分かる。
【0047】
図8に示すように、高炉スラグ細骨材および高炉スラグ微粉末を含むW/B=25%の場合では、AE剤を添加したものは当然のことながら、添加していないものも凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。また、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用した場合には、AE剤を用いなくとも、かつ、蒸気養生を行っても十分な複合劣化に対する抵抗性を発揮することが分かる。
【0048】
図9に示すように、消泡剤で完全にnonAEとしたW/B=40%の場合では、高炉スラグ細骨材および高炉スラグ微粉末を含むものと、高炉スラグ微粉末を含まない常温養生のものでは、凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。また、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用した場合には、AE剤を用いなくとも、かつ、蒸気養生を行っても十分な複合劣化に対する抵抗性を発揮することが分かる。ただし、高炉スラグ微粉末を含まない蒸気養生のものでは、サイクル300回以前で相対動弾性係数90%以下となる。
【0049】
図10に示すように、消泡剤で完全にnonAEとしたW/B=25%の場合では、高炉スラグ細骨材および高炉スラグ微粉末を含むものも、高炉スラグ微粉末を含まないものも、養生方法に関わらず凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。また、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用した場合には、AE剤を用いなくとも、かつ、蒸気養生を行っても十分な複合劣化に対する抵抗性を発揮することが分かる。
【0050】
図11および図12に示すように、AE剤を用いないとした蒸気養生の場合では、高炉スラグ微粉末の混入量を多くしたものほど、複合劣化に対する抵抗性が向上することが分かる。
【0051】
図13および図14に示すように、AE剤を用いないとした蒸気養生の場合では、高炉スラグ微粉末の混入量に関わらず凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が90%以上であり、十分な複合劣化に対する抵抗性を有していることが分かる。また、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用した場合には、AE剤を用いなくとも、かつ、蒸気養生を行っても十分な複合劣化に対する抵抗性を発揮することが分かる。
【0052】
図15に示すように、AE剤を用いないとした蒸気養生の場合では、高炉スラグ細骨材の混入量を多くしたものほど、複合劣化に対する抵抗性が向上することが分かる。特に、細骨材として高炉スラグ細骨材を67%以上使用すると複合劣化に対する抵抗性が非常に大きくなることが分かる。
【0053】
図16−1は、上記の凍結融解試験の100サイクル時における普通コンクリートの供試体の写真図である。この供試体は図1中のAE剤なし(蒸気養生)の配合のものに相当する。図16−2は、凍結融解試験の100サイクル時における本発明の供試体の写真図である。この供試体は図8中のAE剤なし(蒸気養生)の配合のものに相当する。図16−1および図16−2の写真からも、本発明の供試体は、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を含まない普通コンクリート供試体に比べて複合劣化に対する抵抗性に優れることが分かる。
【0054】
さらに、上記の凍結融解試験結果の終了後、供試体に対する塩化物イオンの浸透量を測定した。その結果の一例を図17−1〜図17−3に示す。図17−1は、AE剤を添加し、常温養生した場合の図である。図17−2は、AE剤を添加せず、常温養生した場合の図である。図17−3は、AE剤を添加し、蒸気養生した場合の図である。なお、各図において「C/B=40%」とは「GGBF/B=60%」を意味している。図17−1〜図17−3に示すように、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を使用すれば、全く使用しない場合に比べて塩化物イオンの浸透量が小さくなっており、十分な耐塩害性能を有していることが分かる。
【0055】
したがって、本発明のうち、高炉スラグ微粉末および高炉スラグ細骨材を含有するモルタルまたはコンクリート用組成物によれば、凍害および塩害による複合劣化に対する抵抗性に優れたモルタルまたはコンクリート用組成物および成形品を提供することができる。また、AE剤を添加しないで得られた成形品も、蒸気養生を行って得られた成形品も、耐凍害性に優れていることから、本発明は、プレキャストコンクリート製品の耐凍害対策として有効である。
【0056】
また、本発明の成形品を用いたコンクリート製品によれば、耐凍害性はもちろんのこと耐塩害性をも有している。このため、例えば、本発明を寒冷地域の海岸・海洋構造物などの塩害を受ける可能性のある環境下の構造物に適用した場合、優れた耐凍害性能および耐塩害性能が発揮されるので、普通モルタルやコンクリートで構成した場合に比べ構造物の耐用年数を延ばすことができる。
【0057】
以上説明したように、本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物によれば、細骨材と、セメントを含む結合材と、水とを含有するモルタルまたはコンクリート用組成物であって、前記細骨材または前記結合材の少なくとも一方に高炉スラグからなる材料を含み、前記モルタルまたはコンクリート用組成物により作製したモルタルまたはコンクリート供試体に対するJIS A 1148に記載のA法に基づく凍結融解試験における凍結融解サイクル300回での相対動弾性係数が60%以上であり、耐凍害性に優れている。したがって、耐凍害性に優れたモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品を提供することができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係るモルタルまたはコンクリート用組成物およびそれを成形してなる成形品、ならびに補修材料および補修方法は、AE剤を用いない蒸気養生したモルタルやコンクリート製品に有用であり、特に、塩害および凍害、さらにはこれらの複合劣化に対する抵抗性に優れることから、塩害や凍害のおそれのある沿岸地域や寒冷地域で使用するモルタルやコンクリート製品に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図16-1】
図16-2】