(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機繊維製ブロックが、無機繊維集合体を複数積層した状態で積層方向に圧縮してなるものであり、前記内壁層が、隣接する無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体の主表面が互いに並行するように無機繊維製ブロックを複数並置して形成されてなるものである請求項1に記載の加熱炉用天井ユニット。
前記断熱材層の少なくとも一部が、800℃における熱伝導率が0.02〜0.09W/(K・m)である断熱材からなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の加熱炉用天井ユニット。
底壁と、底壁に立設された側壁と、該側壁上に載置された請求項1〜請求項5のいずれかに記載の加熱炉用天井ユニットとを有し、前記加熱炉用天井ユニットの内壁層が底壁と対向するように配置されることにより、内部に加熱室が規定されてなることを特徴とする加熱炉。
請求項8に記載の加熱炉を製造する方法であって、底壁から立設するように側壁を設ける工程と、該側壁上に、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の加熱炉用天井ユニットを載置する工程とを有することを特徴とする加熱炉の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、無機繊維製ブロックを複数並置することにより形成されてなる内壁層と、該内壁層上に積層配置されてなる断熱材層と、該断熱材層上に積層配置される天板と、一端が前記天板に固定され、他端が前記断熱材層を貫通しつつ前記無機繊維製ブロック内に延びる吊り部材と、前記無機繊維製ブロック内を横断する方向に挿入されつつ、前記無機繊維製ブロック内に挿入された吊り部材の端部に結合される、各無機繊維製ブロック内に一以上設けられた芯部材とを有することを特徴とするものである。
【0012】
以下、本発明の加熱炉用天井ユニットについて、適宜図面を参照しつつ説明するものとする。
図1は、本発明の加熱炉用天井ユニット1の形態例を説明するための(a)正面側垂直断面図、(b)上面図、(c)側面側垂直断面図である(
図1(b)におけるA−A’線断面図が
図1(a)の垂直断面図に相当し、
図1(b)におけるB−B’線断面図が
図1(c)の垂直断面図に相当する)。
図1に示すように、本発明の加熱炉用天井ユニット1は、無機繊維製ブロック2を複数並置することにより形成されてなる内壁層Xと、該内壁層X上に積層配置されてなる断熱材層Yと、該断熱材層Y上に積層配置される天板4とを有している。
【0013】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロック2は、
図2(a)に例示するように、無機繊維集合体21を複数積層した状態で積層方向に圧縮してなるものであることが好ましい。
【0014】
無機繊維集合体21としては、無機繊維ブランケットを挙げることができる。
無機繊維ブランケットは、無機(短)繊維を集綿したものをマット状に加工したものであり、保形性を維持するために、一般にニードルパンチ処理により毛布状に加工されてなるものである。
無機繊維ブランケットは、耐熱性無機繊維からなるブランケットであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、ニチアス(株)製ファインフレックス(登録商標)ブランケット TOMBO No.5120、5220−Z等を挙げることができる。
【0015】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックや無機繊維集合体を構成する無機繊維は、耐熱性を有するものであれば特に制限されないが、アルミナ含有率が45質量%以上(45〜100質量%)である耐熱性無機繊維を主構成繊維とするものが好ましく、70質量%以上(70〜100質量%)である耐熱性無機繊維を主構成繊維とするものがより好ましく、アルミナ含有率が80質量%以上(80〜100質量%)である耐熱性無機繊維を主構成繊維とするものがより好ましい。
【0016】
上記耐熱性無機繊維として、具体的には、アルミナ(Al
2O
3)を85〜100質量%含むアルミナ繊維、アルミナ(Al
2O
3)を85〜68質量%、シリカ(SiO
2)を15〜32質量%含むムライト繊維、アルミナ(Al
2O
3)を68〜45質量%、シリカ(SiO
2)を32〜55質量%含むアルミノシリケート繊維、アルミナ(Al
2O
3)を5〜45質量%、シリカ(SiO
2)を45〜65質量%、ジルコニア(ZrO
2)を10〜30質量%含むアルミナジルコニア繊維、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維などが挙げられる。
【0017】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックや無機繊維集合体を構成する無機繊維は、鉄、ナトリウム、チタンといった不純物の含有割合が低いものが好ましく、これ等の不純物の含有割合が酸化物換算で1質量%以下であるものが好適であり、0.5質量%以下であるものがより好適である。
【0018】
なお、本出願書類において、「耐熱性無機繊維を主構成繊維とする」とは、無機繊維製ブロックや無機繊維集合体を構成する全繊維に対するアルミナ繊維の含有割合が、80〜100質量%であることを意味するものとする。
【0019】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックが、無機繊維集合体の積層物である場合、無機繊維製ブロックとしては、無機繊維集合体を複数積層し、圧縮した状態で紐材で緊縛したり、無機繊維集合体を複数積層し、圧縮した状態で、ピン部材で串刺し固定してなるものを挙げることができる。
図2(b)に示すように、無機繊維製ブロック2が、無機繊維集合体21を複数積層し、圧縮した状態で、ピン部材Pで串刺し固定してなるものである場合、ピン部材Pは、両端にそれぞれ頭部P1、P1を有するとともに、頭部P1、P1間に軸部P2を有するものであることが好ましく、頭部P1、P1と軸部P2とを有するピン部材Pを用いることにより、無機繊維集合体21を容易に圧縮し、所望形状に保形することができる(なお、
図2(b)においては、ピン部材Pの形状を説明するために、便宜上、無機繊維製ブロック2の一部を切り欠きして表示している)。
【0020】
無機繊維集合体21の圧縮に使用する紐材やピン部材は、ポリプロピレン等の樹脂製のバンドやピンであることが好ましく、樹脂製のバンドやピンを使用することにより、加熱炉の天井ユニットとして使用したときに容易に焼失して無機繊維ブランケットの圧縮状態が開放され、複数の無機繊維製ブロック2間に形成される目地を好適に減少させ、断熱性を効果的に向上させることができる。
【0021】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、加熱炉の天井材として使用されるときに、加熱室側に内壁層が面することになるが、内壁層を構成する無機繊維製ブロックが無機繊維集合体の積層物からなるものであることにより、熱収縮による劣化を抑制しつつ、加熱後に目地開きが少なくなり、天井ユニットに高い耐久性を付与することができる。
【0022】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックが、無機繊維集合体の積層物である場合、無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体同士は互いに圧縮されていてもよいし、圧縮されていなくてもよい。
【0023】
無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体同士が互いに圧縮されている場合、圧縮率が、0.1〜50%であることが適当であり、20〜45%であることがより適当であり、30〜40%であることがさらに適当である。
【0024】
無機繊維製ブロックの圧縮率が上記範囲内にあることにより、内壁層を形成した際に、複数の無機繊維製ブロックが相互に押圧して、無機繊維間に形成される目地を好適に減少させることができる。
無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体同士が互いに圧縮されていない場合、上記圧縮率は0%となる。
【0025】
なお、本出願書類において、無機繊維製ブロックの圧縮率(%)は、下記式により算出される値を意味するものとする。
圧縮率(%)={1−W/(W
1×n)}×100
ここで、W(mm)は、無機繊維製ブロックの積層方向の長さ(
図2(a)に示す無機繊維製ブロック2の左右方向の長さ)、W
1(mm)は、無機繊維集合体の厚み(
図2(a)に示す無機繊維集合体21の左右方向の長さ)、nは無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体の積層数である。
【0026】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックの厚み(
図1(a)または
図2(a)に示す無機繊維製ブロック2の上下方向の長さ)は、50〜300mmであることが好ましく、75〜150mmであることがより好ましく、75〜100mmであることがさらに好ましい。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、無機繊維製ブロックの厚みが上記範囲内あることにより、天井ユニットに十分な耐熱性を付与することができる。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックの主表面を規定する縦方向および横方向の長さは、得ようとする天井ユニットのサイズに基づいて適宜規定すればよく、通常、縦100〜900mm、横100〜600mm程度である。
【0027】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックが、無機繊維集合体を複数積層した状態で積層方向に圧縮してなるものである場合、内壁層Xは、特に制限されないが、
図2(c)に例示するように、隣接する無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21の主表面が互いに並行するように(隣接する無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21の積層方向dが同一軸状になるように)無機繊維製ブロック2を複数並置して形成されてなるものであることが好ましい。無機繊維製ブロック2をこのように配置することにより、無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21が相互に押圧し合い、複数の無機繊維製ブロック2、2間に形成される目地を好適に減少させ、断熱性をより効果的に向上させることができる。
【0028】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層Xは、隣接する無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21が、互いに異なる方向に積層、配列されてなるものであってもよく(隣接する無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21の積層方向が同一軸状になくてもよく)、例えば、
図2(d)に例示するように、無機繊維製ブロック2は、隣接する無機繊維製ブロック2を構成する無機繊維集合体21の積層方向が互いに垂直方向となるように(隣接する無機繊維製ブロックを構成する無機繊維集合体21の積層方向が互いに90°づつ相違するように)積層され、配置されてなるものであってもよい。
【0029】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層は、無機繊維製ブロックからなる層を複数積層してなるものであってもよく、本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、無機繊維製ブロックの積層数は、1〜2程度であることが好ましい。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層の厚み(
図1(a)に示す内壁層Xの上下方向の長さ)は、50〜300mmであることが好ましく、75〜150mmであることがより好ましく、75〜100mmであることがさらに好ましい。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、内壁層Xの厚みが上記範囲内にあることにより、天井ユニットに十分な耐熱性を付与することができる。
【0030】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層は、
図1(a)等に示すように、無機繊維製ブロック2を並置することにより層状に(長尺状に)形成されるものであり、加熱炉が大型化して天井ユニットが大型化した場合であっても、大型のセラミックボード等を特別に製造する必要がなく、無機繊維製ブロック2を必要数並置することによって容易に層状化(長尺状化)し得るものであるため、製造コストの上昇を招くことなく簡便かつ安価に形成することができる。
【0031】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層の長手方向の長さ(
図1(a)に示す内壁層Xの左右方向の長さ)は、特に制限されないが、500mm以上であることが適当であり、500〜5000mmであることがより適当であり、700〜4000mmであることがさらに適当であり、1000〜3000mmであることが一層適当であり、2000〜3000mmであることがより一層適当である。
本発明の加熱炉用天井ユニットは、高い剛性を発揮し得るものであることから、内壁層が長尺化しても(天井ユニットが長尺化しても)好適に使用することができる。
【0032】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、内壁層上に断熱材層が形成されてなるものである。
【0033】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層は、内壁層上に断熱材を一枚配置してなるものであってもよいし、
図1(a)や
図3に示すように、断熱材3を複数枚積層して(重ね合わせて)配置してなるものであってもよい。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層が、断熱材3を複数枚積層配置してなるものである場合、断熱材の積層枚数は1〜6枚であることが適当である。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、断熱材を適宜折り畳んだ状態で積層配置することにより断熱材層を形成してもよい。
断熱材3を適宜折り畳んだ状態で積層配置することにより断熱材層を形成する場合、上記断熱材の積層枚数は、折り畳んだ断熱材の折り畳み数を当該断熱材の積層枚数とみなして積算することにより算出するものとする。例えば、3枚の断熱材を使用して、そのうち1枚の断熱材を2つ折りに折り畳んで使用した場合には、この折り畳んだ断熱材の積層枚数を「2枚」とみなし、断熱材の積層枚数を合計4枚とするものとする。
本発明の加熱炉用天井ユニットが、断熱材を適宜折り畳んだ状態で積層配置することにより断熱材層を形成してなるものである場合、例えば、後述するように、複数の加熱炉用天井ユニットを並置して加熱炉の天井を形成する場合に、加熱炉用天井ユニット間に生じる隙間(目地)を容易に塞ぐことができる。
また、本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層を構成する断熱材は、内壁層の長手方向を成す一方の端部から反対側端部まで連続する長尺物(一枚物)であってもよいし、適当な長さに切断した切断物を内壁層上に複数枚並置して長尺状にしたものであってもよい。
【0034】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層を構成する断熱材としては、断熱性を有する無機繊維を主構成繊維とするものが好ましく、例えば、無機繊維製を主構成繊維とする板状物または布状物、具体的には、無機繊維を主構成繊維とする、ボード、ブランケット、フェルト等を挙げることができる。
また、上記断熱材を構成する無機繊維としては、上述した耐熱性無機繊維の他に、ガラス繊維やロックウールといった比較的安価な無機繊維を用いることもできる。
【0035】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材を構成するガラス繊維は、石英ガラス等の無アルカリガラスを溶解し、牽引することによって繊維化される、グラスファイバーやグラスウールとも称されるものであって、短繊維と連続繊維(長繊維)とがあるが、本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、短繊維および連続繊維(長繊維)のいずれも使用することができる。
【0036】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、上記ガラス繊維の組成は特に限定されないが、例えば、SiO
2を52〜56質量%、Al
2O
3を12〜16質量%、MgOを0〜5質量%、CaOを16〜25質量%、B
2O
3を5〜10質量%、Na
2Oおよび/またはK
2Oを0〜1質量%、TiO
2を0〜1質量%含有するEガラス繊維や、SiO
2を62〜65質量%、Al
2O
3を20〜25質量%、MgOを10〜15質量%、CaOを0〜1質量%、B
2O
3を0〜1質量%、Na
2Oおよび/またはK
2Oを0〜1質量%、TiO
2を0〜1質量%含有するTガラス繊維や、SiO
2を56〜62質量%、Al
2O
3を9〜15質量%、MgOを0〜5質量%、CaOを17〜25質量%、B
2O
3を0〜1質量%、Na
2Oおよび/またはK
2Oを0〜1質量%、TiO
2を0〜4質量%含有するNCRガラス繊維や、SiO
2を60〜67質量%、Al
2O
3を2〜6質量%、MgOおよび/またはCaOを10〜20質量%、B
2O
3を0〜8質量%、Na
2Oおよび/またはK
2Oを8〜15質量%含有するCガラス繊維(硼珪酸ガラスファイバー)等が挙げられる。
【0037】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材を構成するロックウールは、酸化ケイ素と酸化カルシウムとを主成分とする人造鉱物繊維であり、玄武岩、鉄炉スラグ等に石灰等を混合し、高温で溶解することにより作製することができる。
上記ロックウールとしては、原料によっても相違するが、一般的にSiO
2を35〜45質量%、Al
2O
3を10〜20質量%、MgOを4〜8質量%、CaOを20〜40質量%、Fe
2O
3を0〜10質量%、MnOを0〜4質量%含有する繊維状物が挙げられる。
【0038】
このような無機繊維からなる断熱材としては、ニチアス(株)製TOMBO(登録商標)No.5120(ファインフレックス(登録商標)ブランケット)、TOMBO(登録商標)No.5112−250(ファインフレックス(登録商標)1300ハードボード)等を挙げることができる。
なお、本出願書類において、無機繊維を主構成繊維とする断熱材とは、断熱材を構成する全繊維に対する無機繊維の含有割合が、80〜100質量%であることを意味するものとする。
【0039】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層を構成する断熱材の800℃における熱伝導率は、通常、0.02〜0.3W/(K・m)である。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層の少なくとも一部は、800℃における熱伝導率が0.02〜0.09W/(K・m)であるか、0.02〜0.06W/(K・m)であるか、0.02〜0.05W/(K・m)である低熱伝導率断熱材であってもよい。
【0040】
上記低熱伝導率断熱材は、平均粒径50nm以下のシリカ微粒子やアルミナ微粒子といった金属酸化物微粒子と、ガラス繊維、シリカ−アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維など有機繊維といった補強繊維とを含む乾式加圧成形体であればよい。
【0041】
上記乾式加圧成形体としては、例えば、80〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜20質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むものであってもよく、85〜98質量%の金属酸化物微粒子と2〜15質量%の補強繊維とを合計が100質量%となるように含むものであってもよい。
【0042】
また、上記乾式加圧成形体としては、炭化珪素、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタニアといった輻射散乱材を含むものであってもよい。この場合、乾式加圧成形体は、例えば、50〜93質量%の金属酸化物微粒子と、2〜20質量%の補強繊維と、5〜40質量%の輻射散乱材とを含むものであってもよいし、65〜80質量%の金属酸化物微粒子と、5〜18質量%の補強繊維と、15〜30質量%の輻射散乱材とを含むものであってもよい。
【0043】
低熱伝導率断熱材として、具体的には、例えば、ニチアス(株)製TOMBO(登録商標)No.4350−GH(ロスリム(登録商標)ボードGH)を挙げることができる。
【0044】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層が複数の断熱材を積層してなるものである場合、断熱材層を構成する各断熱材の熱伝導率が異なるものであってもよく、このように断熱材層を構成する断熱材として、熱伝導率(断熱性)の異なるものを組み合わせて使用することにより、断熱材層の作製コストを低減することができる。
【0045】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層が複数の断熱材の積層物からなるものである場合、断熱材層は、圧縮されていてもよいし、圧縮されていなくてもよい。
【0046】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層が圧縮されている場合、圧縮率が、0.1〜40%であることが適当であり、20〜35%であることがより適当であり、15〜25%であることがさらに適当である。
断熱材の圧縮率が上記範囲内にあることにより、複数の断熱材を用いて断熱材層を形成した際に、断熱材間に形成される目地を好適に減少させ、断熱性を高めることができる。
断熱材層が圧縮されていない場合、上記圧縮率は0%となる。
【0047】
なお、本出願書類において、断熱材層の圧縮率(%)は、下記式により算出される値を意味するものとする。
圧縮率(%)={1−X/(X
1×n)}×100
ここで、X(mm)は、断熱材層の積層方向の長さ(
図3に示す断熱材層Yの上下方向の長さ)、X
1(mm)は、断熱材の厚み(
図3に示す断熱材3の上下方向の長さ)、nは断熱材層を構成する断熱材の積層数である。
【0048】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層の厚み(
図1(a)に示す断熱材層Yの上下方向の長さ)は、50〜600mmであることが好ましく、100〜300mmであることがより好ましく、150〜200mmであることがさらに好ましい。
断熱材層が複数の断熱材を積層してなるものである場合、積層数を調整することによって所望厚みを有する断熱材層を形成することができる。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、断熱材層の厚みが上記範囲内あることにより、天井ユニットに十分な断熱性を付与することができる。
【0049】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、内壁層と共に断熱材層を設けることにより、断熱材層を構成する断熱材を内壁層を構成する無機繊維製ブロックよりも断熱性の低いものを使用することができ、低コストな加熱炉用天井ユニットを提供することができる。
また、本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、断熱材層は、断熱材を内壁層上に配置することにより、長尺状に形成されてなるものであり、加熱炉が大型化して天井ユニットが大型化した場合であっても、高いハンドリング性の下で簡便かつ安価に天井ユニットを形成することができる。
【0050】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、断熱材層上に天板が積層配置されてなる。
天板の構成材料としては特に制限されないが、鋼板等の金属からなるものが好ましい。
また、天板はパンチングメタル等の穿孔されたものであってもよく、天板が穿孔されたものであることにより、加熱炉用天井ユニットの軽量化を図ることができる。
【0051】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、天板は、断熱材層の長手方向に対応する一方の端部から他方の端部まで連続する長尺物(一枚物)であってもよいし、
図1(b)に示すように、天板4が、複数の天板部材4a、4b、4cを並置、連結することによって長尺化してなるものであってもよい。複数の天板部材は、相互に溶接するかまたはボルト等で締結することによって連結することができる。
【0052】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、天板4が、複数の天板部材を連結して断熱材層上に形成されてなるものである場合、加熱炉が大型化して天井ユニットが大型化した場合であっても、断熱材層上に配置する天板部材の数を適宜変更することにより、汎用の金属板を連結することで簡便かつ安価に天板を形成することができる。
【0053】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、一端が天板に固定され、他端が断熱材層を貫通しつつ無機繊維製ブロック内に延びる吊り部材を有している。
【0054】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、吊り部材としては、内壁層、断熱材層および天板を吊り下げ得る剛性を有する棒状物であれば特に制限されず、鋼鉄等の金属からなるものや、アルミナ、ムライト等のセラミックからなるものが好ましい。
【0055】
吊り部材の一端を天板に固定する方法も特に制限されず、溶接またはボルト締め等により適宜固定することができる。
例えば、
図1(a)、
図1(b)、
図4(a)に示すように、ボルト孔を設けた吊り部材5の端部の両側から、締結治具7、7を介してボルト締めすることにより天板4に固定することができる。
上記締結治具7、7は、ボルトを挿通する孔内にネジ山またはネジ溝が設けられてなるものであってもよいし、また、上記吊り部材のボルト孔や上記締結治具の孔内には、耐熱ゴム製で形成されたスリーブ状のクッション材が設置されていてもよい。
【0056】
吊り部材は、その一方の端部が天板上に突き出た状態で、当該端部に設けた挿入孔に棒状部材が差し込まれることによって天井板に固定されていてもよい。
【0057】
例えば、
図4(b)の左図に示すように、棒状部材C1を用いて、これを吊り部材5の端部に設けた挿入孔の片側から差し込んで挿入することにより、
図4(b)の右図に示すように、(
図4(a)に示す締結治具7、7のボルト締め等を行うことなく)吊り部材5を簡便に天板に固定することができる。
また、上記棒状部材としては、吊り部材端部の挿入孔に嵌合するための凹部が設けられたものであってもよい。
例えば、
図4(c)の左図に示すように、中央に嵌合用の凹部を設けた棒状部材C2を吊り部材5の端部に設けた挿入孔の片側から挿入した後、
図4(c)の右図に示すように、棒状部材C2の凹部を吊り部材5の挿入孔内側上部に嵌め合せることにより、(
図4(a)に示す締結治具7、7のボルト締め等を行うことなく)吊り部材5を強固にかつ簡便に天板に固定することもできる。
さらに、上記棒状部材としては、一本の吊り部材のみを固定するものでなく、複数の吊り部材を固定する長尺状のものであってもよい。
例えば、
図4(d)に示すように、長尺状の棒状部材C3を用いて、これを吊り部材(例えば、
図4(d)における吊り部材5a)の端部に設けた挿入孔の片側から挿入した後、他の吊り部材(例えば、
図4(d)における吊り部材5bおよび5c)の端部に設けた挿入孔に順次挿入することによっても、(
図4(a)に示す締結治具7、7のボルト締め等を行うことなく)吊り部材5a〜5cを簡便に天板に固定することができる。
【0058】
上記棒状部材を吊り部材の一方の端部に設けた挿入孔に挿入するだけの簡便な固定であっても、
図4(b)〜
図4(d)に示すように、天板4が、天板4の下部に積層した断熱材層や内壁層によって押圧されるために、ボルト締め等を行わなくても、棒状部材の抜けや脱落を容易に抑制することができる。
【0059】
上記棒状部材の構成材料は特に制限されないが、ステンレス鋼等の金属材料や、アルミナ、ムライト等のセラミック材料等であってもよい。
【0060】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、吊り部材は、一端が天板に固定され、他端が断熱材層を貫通しつつ無機繊維製ブロック内に延びている。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、内壁層を構成する無機繊維製ブロック内に延びる吊り部材の数は特に制限されず、天井ユニットに付与しようとする剛性等を考慮して適宜決定すればよい。
図1(a)および
図1(b)に示す例においては、中央部以外の各無機繊維製ブロック2に対して、二本の吊り部材5(吊り部材5aおよび5a’、吊り部材5bおよび5b’、吊り部材5eおよび5e’、吊り部材5fおよび5f’)をそれぞれ配置するとともに、中央部の三個の無機繊維製ブロック2に対して四本の吊り部材5(吊り部材5c、5c’、5d、5d’)を配置している。
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいては、一個の無機繊維製ブロックに対して、複数本の吊り部材を配置してもよい。
【0061】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、吊り部材は、一端が天板に固定され、他端が断熱材層を貫通しつつ無機繊維製ブロック内に延びている。
本発明の加熱炉用天井ユニットは、加熱炉の天井材として使用されるときに無機繊維製ブロック(内壁層)が加熱室に面する(露出する)ことになるが、吊り部材の端部が無機繊維製ブロックの外部ではなく内部に配置されるために、吊り部材の熱劣化を抑制し、また、炉内の雰囲気、発生ガスからの影響を受け難くなって劣化を抑制することができ、天井ユニットに高い耐久性を付与することができる。
【0062】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、無機繊維製ブロック内を横断する方向に挿入されつつ、無機繊維製ブロック内に挿入された吊り部材の端部に結合される、各無機繊維製ブロック内に一以上設けられた芯部材を有している。
【0063】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、芯部材としては、吊り部材に結合された状態で、内壁層、断熱材層および天板を押圧して天井ユニットに所望の剛性を付与し得る棒状物であれば特に制限されず、鋼鉄等の金属からなるものや、アルミナ、ムライト等のセラミックからなるものが好ましい。
【0064】
芯部材を吊り部材に結合する方法も特に制限されず、例えば、
図1(a)、
図5(a)、
図5(b)に示すように、貫通孔を設けた吊り部材5の端部に対して芯部材6を貫通させ、吊り部材5に芯部材6を嵌合することによって結合することができる。
また、
図6(a)に示すように、芯部材6および吊り部材5は、予め溶接等によって結合されてなるものであってもよい。この場合、
図6(b)に示すように、芯部材6の両端から無機繊維製ブロック2の断片化物2a、2bを挿入することにより、
図6(c)に示すように、芯部材6を、吊り部材5の端部に結合させつつ、無機繊維製ブロック2内を横断する方向に配置することができる。
【0065】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、芯部材は内壁層の内部に配置される。本発明の加熱炉用天井ユニットは、加熱炉の天井材として使用されたときに、内壁層が加熱室に面する(露出する)ことになるが、芯部材を内壁層の外部ではなく内部に配置することにより、芯部材の熱劣化を抑制し、また、炉内の雰囲気、発生ガスからの影響を受け難くなって、劣化を抑制することができ、天井ユニットに高い耐久性を付与することができる。
【0066】
本発明の加熱炉用天井ユニットにおいて、芯部材は、無機繊維製ブロック内を横断する方向に挿入されつつ、無機繊維製ブロック内に挿入された吊り部材の端部に結合されるものであり、無機繊維製ブロック内に設けられる芯部材の数は一本または複数本であって特に制限されない。
芯部材は、
図7(a)に示すように、個々の無機繊維製ブロック内のみを横断するものであってもよいし、
図7(b)に示すように、複数の無機繊維製ブロックに亘って無機繊維製ブロック内を横断するものであってもよいし、
図7(c)に示すように、無機繊維製ブロック内に複数本を一列に配置することによって個々の無機繊維製ブロック内を横断するものであってもよい。また、芯部材は、無機繊維製ブロック内に並列に複数本配置されることにより、無機繊維製ブロック内を複数本が並列に横断するものであってもよい。
【0067】
各無機繊維製ブロック内に設けられる芯部材の数や、一本の芯部材が挿入される無機繊維製ブロックの数は、天井ユニットに付与しようとする剛性等を考慮して適宜決定すればよい。
【0068】
図1(a)に示す例においては、上述したように、中央部以外の無機繊維製ブロック2に対して、それぞれ吊り部材5a、5b、5e、5fが一本づつ配置されるとともに、中央部の三個の無機繊維製ブロック2に対して、吊り部材5cおよび5dが二本配置されている。
これに対して、
図1(a)に示す例においては、芯部材6a、6b、6d、6eは、それぞれ吊り部材一本(吊り部材5a、5b、5e、5f)に対して、一本の芯部材がそれぞれ無機繊維製ブロック2内を横断しつつ結合されて配置され、芯部材6cは、吊り部材二本(吊り部材5cおよび吊り部材5d)に対して芯部材一本が三個の無機繊維製ブロック2内を横断しつつ結合されて配置されている。
【0069】
本発明に係る加熱炉用天井ユニットの長手方向の長さ(
図1(a)に示す天井ユニット1の横方向の長さ)は、500mm以上であることが適当であり、500〜5000mmであることがより適当であり、700〜4000mmであることがさらに適当であり、1000〜3000mmであることが一層適当であり、2000〜3000mmであることがより一層適当である。
本発明の加熱炉用天井ユニットは、高い剛性を発揮し得るものであることから、内壁層が長尺化しても(天井ユニットが長尺化しても)好適に使用することができる。
【0070】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、種々の加熱炉の天井ユニットとして使用することができ、焼成炉の天井ユニット、特にLi等のアルカリ金属を多量に含む材料や部材を焼成する焼成炉の天井ユニットとして好適に使用することができる。
【0071】
本発明の加熱炉用天井ユニットは、加熱炉が大型化した場合であっても、無機繊維製ブロックの使用数や天板部材等の使用数を増加させて、内壁層および天板を長尺化し、断熱材層を挟持しつつ内壁層と天板とを吊り部材と芯部材によって結合して一体化することにより、製造コストの上昇や製造工程の煩雑化を招くことがなく、簡便に天井ユニットの大型化を図ることができる。
また、本発明に係る加熱炉用天井ユニットは、後述するように天井ユニット全体を加熱炉の側壁上に載置するものであるので、従来の天井ユニットが剛性梁の剛性に依存してその形態を保持していたこととは対照的に、天井ユニット全体の剛性によって、自身の形態を容易に保持することができる。
さらに、本発明に係る加熱炉用天井ユニットは、内壁層と断熱材層と天板とを吊り部材および芯部材によって一体化してなるものであり、吊り部材および芯部材の使用数を変更することによって、容易に剛性を向上させることができる。
加えて、本発明に係る加熱炉用天井ユニットは、使用時に吊り部材等が加熱室に露出しない構造となっていることから、高い耐久性を付与することができる。
【0072】
次に、本発明の加熱炉用天井ユニットの製造方法について説明する。
本発明の加熱炉用天井ユニットの製造方法は、本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1および本発明の加熱炉用天井ユニットの製法2からなる。
本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1は、本発明の加熱炉用天井ユニットを製造する方法であって、複数の無機繊維製ブロック内に無機繊維製ブロックの主表面側から吊り部材の一方の端部を挿入する工程と、前記無機繊維製ブロック内を横断する方向にそれぞれ一以上の芯部材を挿入させつつ、前記無機繊維製ブロック内に挿入させた吊り部材の端部に結合する工程と、天板上に断熱材を積層することにより、天板と断熱材層との積層物を形成する工程と、前記吊り部材の他端を前記断熱材層に挿入、貫通させた後、天板に固定する処理を繰り返して、断熱材層上に無機繊維製ブロックを複数並置してなる内壁層を形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0073】
本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1においては、先ず、
図5(a)に示すように、複数の無機繊維製ブロック2に対し、無機繊維製ブロックの主表面側から吊り部材5の一方の端部を挿入した後、
図5(b)に示すように、無機繊維製ブロック2内を横断する方向にそれぞれ一以上の芯部材6を挿入し、無機繊維製ブロック2内に挿入させた吊り部材5の端部に結合する。
図5に示す例においては、吊り部材5の端部に設けた貫通孔に芯部材6を貫通させることにより、吊り部材5の端部に芯部材6を嵌合させて結合している。
本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1においては、無機繊維製ブロックに対して予め吊り部材の端部を挿入する挿入孔を設けた上で、吊り部材の端部を挿入してもよいし、同様に無機繊維製ブロックに対して予め芯部材を挿入する挿入孔を設けた上で、無機繊維製ブロックに芯部材を挿入してもよい。
【0074】
次いで、
図8(a)に示すように、天板4上に断熱材3を積層することにより、天板4と断熱材層Yとの積層物を形成する。
その後、
図8(b)に示すように、一端を無機繊維製ブロックに挿入した吊り部材5(
図8(a)に示す例においては、吊り部材5a)の他端を断熱材層Yに挿入し、貫通させた後、天板4に締結治具等を用いて固定する処理を繰り返して、
図8(c)に示すように、断熱材層Y上に無機繊維製ブロック2を複数並置してなる内壁層Xを形成し、目的とする天井ユニット1を得ることができる(
図8(c)に示す天井ユニット1は、
図1(a)に示す天井ユニット1に対応するものであるが、製造工程の説明上、上下逆に記載している点に注意されたい)。
上記吊り部材5の他端を断熱材層Yに挿入し、貫通させた後、天板4に固定する際には、断熱材層Yを圧縮しながら固定してもよい。
【0075】
また、本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1の変形法ともいうべき方法(以下、本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1−1という)を挙げることもできる。
上記本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1−1は、複数の無機繊維製ブロック内に無機繊維製ブロックの主表面側から吊り部材の一方の端部を無機繊維製ブロック内に挿入する工程と、前記無機繊維製ブロック内を横断する方向にそれぞれ一以上の芯部材を挿入させつつ、前記無機繊維製ブロック内に挿入させた吊り部材の端部に結合する工程と、前記吊り部材および芯部材を配置した無機繊維製ブロックを複数並置して内壁層を形成する工程と、前記複数並置した無機繊維製ブロックに設けられた吊り部材の他端に対して断熱材を挿入、貫通させて断熱材層を形成する工程と、前記断熱材を挿入、貫通させた吊り部材の端部に対して天板を固定する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0076】
本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1−1においては、先ず、本発明の加熱炉用天井ユニットの製法1と同様に、
図5(a)に示すように、複数の無機繊維製ブロック2に対し、無機繊維製ブロックの主表面側から吊り部材5の一方の端部を挿入した後、
図5(b)に示すように、無機繊維製ブロック2内を横断する方向にそれぞれ一以上の芯部材6を挿入し、無機繊維製ブロック2内に挿入させた吊り部材5の端部に結合する。
次いで、
図9(a)、
図9(b)に示すように、上記吊り部材5および芯部材6を配置した無機繊維製ブロック2を複数並置して内壁層Xを形成した後、
図9(c)に示すように、上記複数並置した無機繊維製ブロック2に設けられた吊り部材5の他端に対して断熱材3を挿入、貫通させて断熱材層Yを形成する。その後、
図9(d)に示すように、断熱材3を挿入、貫通させた吊り部材5の端部に対して締結治具等を用いて天板4を固定することにより、目的とする天井ユニット1を得ることができる。
【0077】
また、本発明の加熱炉用天井ユニットの製法2は、本発明の加熱炉用天井ユニットを製造する方法であって、天板の主表面に対して、複数の吊り部材の一方の端部をそれぞれ固定する工程と、前記天板に固定した吊り部材の他端に対して断熱材を挿入、貫通させることにより前記天板上に断熱材層を形成する工程と、前記天板に固定した吊り部材の他端に対してさらに無機繊維製ブロックを挿入した後、該無機繊維製ブロック内を横断する方向に一以上の芯部材を挿入して、前記吊り部材の端部に結合させる処理を繰り返すことにより、前記断熱材層上に無機繊維製ブロックを複数並置してなる内壁層を形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0078】
本発明の加熱炉用天井ユニットの製法2においては、先ず、
図10(a)に示すように、天板4の主表面に対して、複数の吊り部材5a〜5fの一方の端部をそれぞれ固定する。
図10(a)に示す例においては、ボルト孔を設けた吊り部材5の端部の両側から、締結治具を介してボルト締めすることにより吊り部材5a〜5fを固定している。
【0079】
次いで、
図10(b)に示すように、天板4に固定した吊り部材5a〜5fの他端に対して断熱材3を挿入、貫通させることにより天板4上に断熱材層Yを形成し、天板4に固定した吊り部材5a〜5fの他端に対してさらに無機繊維製ブロック2を挿入する。
【0080】
さらに、
図10(c)に示すように、無機繊維製ブロック2内を横断する方向に芯部材6aを挿入し、吊り部材5aの端部に結合する(
図10(c)に示す例においては、吊り部材5aの端部に設けた貫通孔に芯部材6aを貫通させることにより、吊り部材5aの端部に芯部材6aを嵌合させて結合している。)。
上記無機繊維製ブロック2の吊り部材へ挿入する操作と該無機繊維製ブロックへ芯部材を挿入し、吊り部材の端部へ結合する操作を繰り返すことにより、断熱材層Y上に無機繊維製ブロック2を複数並置してなる内壁層Xを形成し、目的とする天井ユニット1を得ることができる(
図10(d)に示す天井ユニット1は、
図1(a)に示す天井ユニット1に対応するものであるが、製造工程の説明上、上下逆に記載している点に注意されたい)。
上記吊り部材5の端部に芯部材を結合する際には、断熱材層Yを圧縮しながら両者を結合してもよい。
【0081】
また、本発明の加熱炉を製造する方法としては、
図11(a)に示すように、天井ユニットを分割した構造を有する複数のサブユニット(サブユニットSU1、SU2・・・)を作製した後、
図11(b)に断面図および
図11(c)に上部斜視図で示すように、各サブユニットを締結治具等を介してボルト締めすること等により連結する。上記締結治具は、ボルトを挿通する孔内にネジ山またはネジ溝が設けられてなるものであってもよい。上記サブユニットを順次連結することにより、
図11(d)に示すように、目的とする天井ユニット1を得ることもできる。
図11(b)に示すように、サブユニット(サブユニットSU1、SU2・・・)を複数連結して加熱炉用天井ユニット1を形成する場合、複数のサブユニット(サブユニットSU1、SU2・・・)間に隙間(目地)を生じ易くなる。このため、上述したように、サブユニットを構成する断熱材3は(
図11(a)のサブユニットSU2に示すように)少なくとも一部を折り畳んだ状態で積層配置したものであってもよく、上記折り畳んだ断熱材の折り曲げ部(
図11(a)に示す折り曲げ部I)を、隣接するサブユニットに当接させつつ並置、連結することによって、上記隙間(目地)を塞ぐことが好ましい。
【0082】
本発明の加熱炉用天井ユニットの製造方法において、得られる天井ユニットの詳細については、本発明の加熱炉用天井ユニットの説明で詳述したとおりである。
【0083】
本発明の加熱炉用天井ユニットの製造方法においては、加熱炉が大型化した場合であっても、無機繊維製ブロックの使用数や天板部材の使用数を増加させて、内壁層および天板を長尺化し、断熱材層を挟持しつつ内壁層と天板とを吊り部材と芯部材によって固定して、一体化することにより、製造コストの上昇や製造工程の煩雑化を招くことがなく、簡便に大型の天井ユニットを作製することができる。
【0084】
次に、本発明の加熱炉用天井ユニット1(または本発明の製造方法で製造された加熱用天井ユニット1)の使用形態について説明する。
図12(a)は、本発明の加熱炉用天井ユニット1(または本発明の製造方法で製造された加熱用天井ユニット1)の一形態例を示す正面側断面図であり、
図12(b)は、
図12(a)の側面方向(D方向)から見た上記加熱炉用天井ユニット1を複数並置した使用形態例を示すものであって、
図12(b)に示すように、加熱炉用天井ユニット1を複数並置することにより、容易に加熱炉の天井を形成することができる。
図12(b)に示すように、加熱炉用天井ユニット1を複数並置して加熱炉の天井を形成する場合、複数の加熱炉用天井ユニット1、1間に隙間(目地)が生じ易くなる。このため、上述したように、加熱炉用天井ユニット1を構成する断熱材層の少なくとも一部を折り畳んだ断熱材3を積層することによって形成し、
図12(c)に示すように、上記折り畳んだ断熱材の折り曲げ部Iを、隣接する加熱炉用天井ユニット1に当接させつつ並置することによって、上記隙間(目地)を塞ぐことが好ましい。
【0085】
次に、本発明の加熱炉について説明する。
本発明の加熱炉は、底壁と、底壁に立設された側壁と、該側壁上に載置された本発明の加熱炉用天井ユニットとを有し、前記加熱炉用天井ユニットの内壁層が底壁と対向するように配置されることにより、内部に加熱室が規定されてなることを特徴とするものである。
【0086】
図13に断面図で例示するように、本発明の加熱炉8は、底壁9と、底壁の外周部に立設された側壁10と、該側壁10、10上に載置された本発明の加熱炉用天井ユニット1とを有し、加熱炉用天井ユニット1の内壁層Xが底壁9と対向するように配置されることにより、内部に加熱室Rが規定されてなることを特徴とするものである。
本発明の加熱炉7の加熱室R内には、適宜加熱対象を搬送する搬送手段11等を設けることが好ましい。
搬送手段11としては、公知のものを適宜使用することができ、具体的には、ローラー、台車、ウォーキングビーム、ベルト等を挙げることができる。
【0087】
本発明の加熱炉において、天井ユニットの詳細については、本発明の加熱炉用天井ユニットの説明で詳述したとおりである。また、底壁、側壁等については、加熱炉に使用される従来公知のものを使用することができる。
【0088】
本発明の加熱炉は、本発明の加熱炉用天井ユニットが単に側壁上に配置されてなるものであってもよいし、金属製フレーム等によって両者が接合されてなるものであってもよい。
天井ユニットと側壁との間(天井ユニットと側壁との接触部)には、適宜目地材(隙間材)が配置されてなることが好ましく、目地材としては、特に制限されないが、無機繊維製のものが好ましく、具体的には、上述した耐熱性無機繊維からなるブランケット、バルク、ペーパー等を挙げることができる。
【0089】
本発明の加熱炉は、側壁上に本発明の加熱炉用天井ユニットが複数並置されてなるものであってもよい。
本発明の加熱炉が、側壁上に複数の天井ユニットが並置されてなるものである場合、各天井ユニット間には、目地材(隙間材)が配置されてなることが好ましく、目地材としては、特に制限されないが、無機繊維製のものが好ましく、具体的には、上述した耐熱性無機繊維からなるブランケット、バルク、ペーパー等を挙げることができる。
【0090】
本発明の加熱炉は、種々の加熱炉として使用することができ、焼成炉、特にLi等のアルカリ金属を多量に含む材料や部材を焼成する焼成炉として好適に使用することができる。
【0091】
本発明によれば、本発明の加熱炉用天井ユニット全体を加熱炉の側壁上に載置したものであるので、従来の天井ユニットが剛性梁の剛性に依存してその形態を保持していたこととは対照的に、天井ユニット全体の高い剛性によって、自身の形態を容易に保持することができ、このために大型化しても天井ユニットに撓み等を生じ難い高い剛性を有する加熱炉を提供することができる。
また、本発明によれば、製造コストの上昇や製造工程の煩雑化を招くことがなく、高い耐久性を有する本発明の加熱炉用天井ユニットを用いているために、製造コストの上昇や製造工程の煩雑化を招くことがなく、高い耐久性を有する加熱炉を提供することができる。
【0092】
次に、本発明の加熱炉の製造方法について説明する。
本発明の加熱炉の製造方法は、底壁から立設するように側壁を設ける工程と、該側壁上に、本発明の加熱炉用天井ユニットを載置する工程とを有することを特徴とするものである。
【0093】
図13に正面側断面図、
図14に側面側断面図で例示するように、本発明に係る加熱炉7の製造方法は、底壁8の外周部から立設するように側壁9を設け、該側壁9、9上に、本発明の加熱炉用天井ユニット1を載置するものであり、
図14に示すように、本発明の天井ユニット1を加熱炉の側壁上に必要数載置することによって天井を成し、目的とする加熱炉8を製造することができる。
加熱室R内には、適宜加熱対象を搬送するローラー等の搬送手段11等を設けてもよい。
【0094】
本発明の加熱炉の製造方法において、本発明の加熱炉用天井ユニットは、単に側壁上に配置するだけであってもよいし、金属製フレーム等を介して両者を接合してもよい。
天井ユニットと側壁との間(天井ユニットと側壁との接触部)に、適宜目地材を配置してもよく、目地材としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0095】
本発明の加熱炉の製造方法において、側壁上に複数の天井ユニットを並置する場合、各天井ユニット間には、目地材が配置してもよく、目地材としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0096】
本発明の加熱炉の製造方法において、得られる加熱炉の詳細については、本発明の加熱炉の説明で詳述したとおりである。
【0097】
本発明によれば、本発明の加熱炉用天井ユニット全体を加熱炉の側壁上に載置するものであるので、天井ユニット全体の剛性によって、自身の形態を容易に保持することができ、このために大型化しても天井ユニットに撓み等を生じ難い高い剛性を有する加熱炉を簡便に製造する方法を提供することができる。