特許第5953263号(P5953263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953263
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   G03G15/20 530
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-99905(P2013-99905)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-219615(P2014-219615A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161953
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 敬直
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃洋
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−149049(JP,A)
【文献】 特開2003−076204(JP,A)
【文献】 特開2013−068744(JP,A)
【文献】 特開2008−040310(JP,A)
【文献】 特開2004−184828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられる定着部材と、
該定着部材に圧接して該定着部材との間に定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、
前記定着部材に接触し、前記定着ニップを通過した用紙を前記定着部材から分離させる分離部材と、
前記定着部材に対する前記分離部材の接触角を変化させる接触角調整機構と、
前記分離部材の温度を変化させる温度調整部材と、を備え、
前記接触角調整機構が前記接触角を大きくするのに伴って、前記温度調整部材が前記分離部材又は該分離部材に接触する部材に冷却風を吹き付けることで前記分離部材の温度を低下させ、
前記接触角調整機構が前記接触角を小さくするのに伴って、前記温度調整部材が前記分離部材の温度を上昇させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着部材及び前記加圧部材の回転が開始される時に、前記接触角調整機構が前記接触角を大きくするのと同時に前記温度調整部材が前記分離部材の温度を低下させ、
前記定着部材及び前記加圧部材の回転が開始されてから所定時間経過後に、前記接触角調整機構が前記接触角を小さくするのと同時に前記温度調整部材が前記分離部材の温度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記温度調整部材は、前記定着部材を加熱することで、該定着部材からの伝熱によって前記分離部材の温度を上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材又は前記加圧部材に対して接離可能なクリーニング部材を更に備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記分離部材は、
前記接触角が第1の角度となるトナー吐き出し位置と、
前記接触角が前記第1の角度よりも大きい第2の角度となるトナー保持位置と、の間で回転可能に設けられ、
前記接触角調整機構は、
前記トナー吐き出し位置に前記分離部材を付勢する付勢部材と、
該付勢部材の付勢力に抗して前記分離部材を押圧し、前記トナー吐き出し位置から前記トナー保持位置まで前記分離部材を回転させる押圧部材と、を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記分離部材は、前記トナー吐き出し位置と前記トナー保持位置との間で、前記定着部材との接触部を中心に回転可能に設けられていることを特徴とする請求項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を定着させる定着装置と、この定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター等の画像形成装置には、通常、定着部材(例えば、定着ローラー)と加圧部材(例えば、加圧ローラー)を備えた加熱式の定着装置が設けられている。そして、定着部材と加圧部材の間に形成された定着ニップを用紙が通過する間に、用紙上に転写されたトナーが加熱及び加圧されて、用紙にトナー像が定着されるようになっている。
【0003】
このような加熱式の定着装置には、用紙が定着部材に巻き付くのを防止するために、分離部材(例えば、分離爪)が設けられるのが一般的である。この分離部材は、用紙の搬送方向において定着ニップよりも下流側に配置され、定着ニップを通過した用紙を定着部材から分離する機能を有している。
【0004】
このような定着装置では、定着ニップを用紙が通過する際に、用紙の表面に付着しているトナーがオフセットして定着部材に移り、定着部材から分離部材の先端部付近に移って、堆積することがある。この堆積したトナーが塊となって定着部材に再付着すると、この再付着したトナーによって、定着ニップを通過する用紙が汚される。
【0005】
このような問題に対応するため、分離部材の定着部材への接触条件を変更する技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、定着部材(特許文献1の「加熱ローラ100」参照)を通紙時とは逆回転させることで、分離部材(特許文献1の「分離爪400」参照)の定着部材に対する押圧力を低下させる構成が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、定着部材(特許文献2の「加熱ローラ42」参照)から剥離された用紙と接触する接触部分を分離部材(特許文献2の「剥離爪46」参照)と一体的に設け、上記接触部分によって分離部材の先端部分を定着部材の表面から離間させる構成が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、分離部材(特許文献3の「分離爪4」参照)が配置される位置に用紙が搬送されないタイミングに同期して分離部材を定着部材から退避させ、分離部材が配置される位置に用紙が搬送されるタイミングに同期して分離部材を定着部材に接触させる構成が開示されている(特に、特許文献3の請求項3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−034138号公報
【特許文献2】特開2004−240364号公報
【特許文献3】特開2004−177568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の従来技術において、定着部材を通紙時とは逆回転させるためには、モーターや駆動機構を複雑化しなければならず、コストアップが避けられない。また、定着部材の回転方向を切り換えるための時間や定着部材を逆回転させるための時間が必要となり、トータルの生産性(定着可能枚数)が低下する可能性がある。また、分離部材の定着部材に対する押圧力を低下させることで定着部材とトナーの間の付着力も下がるため、結果的に分離部材の表面上にトナーが残りやすくなり、実際には効率良くトナーを除去できない場合があることが確認されている。
【0011】
また、特許文献2に記載の従来技術では、薄紙等の腰の弱い用紙に対してトナー像を定着させる場合を考慮すると、分離部材の押圧力をかなり弱くする必要があり、用紙の先端を定着部材から分離するという分離部材の肝心の機能が低下する可能性が高い。また、高速回転する定着部材の表面に分離部材の先端が繰り返し接離することで、分離部材の先端や定着部材の表面が局所的なダメージを受けやすく、条件設定が非常に難しいことが確認されている。
【0012】
また、特許文献3に記載の従来技術においても、分離部材を定着部材に対して繰り返し接離させることで、特許文献2に記載の従来技術と同様に、分離部材の先端や定着部材の表面が局所的なダメージを受けやすい。
【0013】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、定着部材から分離部材に移ったトナーが塊となって定着部材に再付着するのを防止し、定着部材に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の定着装置は、回転可能に設けられる定着部材と、該定着部材に圧接して該定着部材との間に定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、前記定着部材に接触し、前記定着ニップを通過した用紙を前記定着部材から分離させる分離部材と、前記定着部材に対する前記分離部材の接触角を変化させる接触角調整機構と、前記分離部材の温度を変化させる温度調整部材と、を備え、前記接触角調整機構が前記接触角を大きくするのに伴って、前記温度調整部材が前記分離部材の温度を低下させ、前記接触角調整機構が前記接触角を小さくするのに伴って、前記温度調整部材が前記分離部材の温度を上昇させることを特徴とする。
【0015】
上記のように定着部材に対する分離部材の接触角を大きくすると、分離部材によってトナーを保持しやすくなるため、分離部材に堆積したトナーが定着部材に付着しにくくなる。また、上記のように温度調整部材によって分離部材の温度を低下させると、分離部材に堆積したトナーの粘度が上昇し、分離部材に堆積したトナーが定着部材に一層付着し難くなる。従って、定着部材から分離部材に移ったトナーが塊となって定着部材に再付着するのを防止し、定着部材に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。
【0016】
また、上記のように定着部材に対する分離部材の接触角を小さくすると、分離部材からトナーを吐き出しやすくなるため、分離部材に堆積したトナーが定着部材に付着しやすくなる。また、上記のように温度調整部材によって分離部材の温度を上昇させると、分離部材に堆積したトナーの粘度が低下し、分離部材に堆積したトナーが定着部材に一層付着しやすくなる。従って、分離部材に堆積したトナーを効率的に回収して、分離部材に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
【0017】
以上のように、定着部材に対する分離部材の接触角と分離部材の温度を連動して変化させることで、分離部材によってトナーを保持する機能と分離部材からトナーを吐き出す機能を併せて強化することができる。そのため、定着部材から分離部材に移ったトナーが塊となって定着部材に再付着するのを確実に防止し、定着部材に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。また、定着部材を逆回転させる必要が無いため、定着装置の構成の複雑化、生産性の低下といった課題を回避しながら、トナーが用紙を汚すのをより確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明の定着装置は、前記定着部材及び前記加圧部材の回転が開始される時に、前記接触角調整機構が前記接触角を大きくするのと同時に前記温度調整部材が前記分離部材の温度を低下させ、前記定着部材及び前記加圧部材の回転が開始されてから所定時間経過後に、前記接触角調整機構が前記接触角を小さくするのと同時に前記温度調整部材が前記分離部材の温度を上昇させても良い。
【0019】
このような構成を採用することで、定着部材及び加圧部材の回転が開始される時(例えば、プリント動作の開始時)には、定着部材から分離部材に移ったトナーが塊となって定着部材に再付着するのを防止し、定着部材に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。また、定着部材及び加圧部材の回転が開始されてから所定時間経過後(例えば、プリント動作の開始から数十秒経過後)には、目に見えないレベル又は殆ど目立たず問題にならないレベルで、分離部材に堆積したトナーを定着部材に少しずつ付着させることができる。これにより、塊となったトナーによって用紙が著しく汚されるのを回避しながら、分離部材に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
【0020】
前記温度調整部材は、前記定着部材を加熱することで、該定着部材からの伝熱によって前記分離部材の温度を上昇させても良い。
【0021】
このような構成を採用することで、定着部材を加熱するための熱源を、温度調整部材として利用することができる。そのため、特別な機構を追加せずに分離部材の温度を上昇させることができる。
【0022】
前記温度調整部材は、前記分離部材又は該分離部材に接触する部材に冷却風を吹き付けることで、前記分離部材の温度を低下させても良い。
【0023】
このような構成を採用することで、分離部材に対する冷却効率を高めて、分離部材に堆積したトナーの粘度を速やかに上昇させることができる。そのため、分離部材に堆積したトナーが定着部材に一層付着し難くなる。
【0024】
前記定着部材又は前記加圧部材に対して接離可能なクリーニング部材を更に備えていても良い。
【0025】
このような構成を採用することで、定着部材又は加圧部材(以下、「定着部材等」という。)にクリーニング部材を接触させて、定着部材等に付着したトナーを効率的に除去することができる。また、定着部材等に対する清掃の必要が無い場合には、クリーニング部材を定着部材等から離間させておくことで、クリーニング部材及び定着部材等の摩耗を抑制することができる。これに伴って、クリーニング部材と定着部材等を常時接触させておく場合と比較して、クリーニング部材及び定着部材等の寿命を延ばすことができる。
【0026】
前記分離部材は、前記接触角が第1の角度となるトナー吐き出し位置と、前記接触角が前記第1の角度よりも大きい第2の角度となるトナー保持位置と、の間で回転可能に設けられ、前記接触角調整機構は、前記トナー吐き出し位置に前記分離部材を付勢する付勢部材と、該付勢部材の付勢力に抗して前記分離部材を押圧し、前記トナー吐き出し位置から前記トナー保持位置まで前記分離部材を回転させる押圧部材と、を備えていても良い。
【0027】
このような構成を採用することで、簡易な構成を用いて定着部材に対する分離部材の接触角を変化させることが可能となる。
【0028】
前記分離部材は、前記トナー吐き出し位置と前記トナー保持位置との間で、前記定着部材との接触部を中心に回転可能に設けられていても良い。
【0029】
このような構成を採用することで、分離部材を定着部材に接触させたまま、分離部材をトナー吐き出し位置とトナー保持位置との間で回転させることができる。そのため、定着部材に対して分離部材を接離させる場合と比較して、定着部材や分離部材が局所的なダメージを受けにくくなる。
【0030】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、定着部材から分離部材に移ったトナーが塊となって定着部材に再付着するのを防止し、定着部材に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの構成の概略を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの定着装置において、分離爪がトナー吐き出し位置にある状態を示す断面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】(a)は、本発明の一実施形態に係るプリンターの定着装置において、押圧片が分離爪を押圧していない状態を示す斜視図である。(b)は、本発明の一実施形態に係るプリンターの定着装置において、押圧片が分離爪を押圧している状態を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプリンターの定着装置において、分離爪がトナー保持位置にある状態を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプリンターの定着装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、図1を用いて、画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプリンターの構成の概略を示す模式図である。
【0034】
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(図示せず)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の近傍に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
【0035】
プリンター本体2の上部には、排紙トレイ4の下方にレーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0036】
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送路15が設けられている。搬送路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送路15の下流端には排紙部20が設けられている。搬送路15の下方には、両面印刷用の反転経路21が形成されている。
【0037】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0038】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0039】
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
【0040】
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部20から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残ったトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
【0041】
次に、定着装置18について詳細に説明する。以下、説明の便宜上、図2における紙面手前側を定着装置18の前側(正面側)とする。図3図4の矢印Frは、定着装置18の前側(正面側)を示している。
【0042】
図2に示されるように、定着装置18は、箱型形状を成す定着フレーム22と、定着フレーム22の右上部に収容される定着ローラー23(定着部材)と、定着ローラー23に収容される熱源24(温度調整部材)と、定着ローラー23の上方に配置される温度センサー25と、定着ローラー23と対向して定着フレーム22の右下部に収容される加圧ローラー26(加圧部材)と、定着ローラー23の左方に配置される支持部材27と、支持部材27に支持される分離爪28(分離部材)と、定着ローラー23と分離爪28の間に配置される接触角調整機構29と、定着ローラー23の左上方に配置されるクリーニングローラー30(クリーニング部材)と、クリーニングローラー30の左方に配置されるファン31(温度調整部材)と、を備えている。
【0043】
定着フレーム22の右端壁32には上流側開口部33が設けられ、定着フレーム22の左端壁34には下流側開口部35が設けられている。そして、上流側開口部33を介して定着フレーム22に導入された用紙が、下流側開口部35を介して定着フレーム22から導出されるようになっている。定着フレーム22の前端壁36と後端壁37(図2では、後端壁37のみ表示)の左上部には、押圧方向Y(本実施形態では、左下方に傾斜する方向)に沿って、長孔状の支持穴38が穿設されている。
【0044】
定着ローラー23は、前後方向に長い形状を成している。定着ローラー23は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。定着ローラー23は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、この芯材に周設され、シリコンゴム等から成る弾性層と、この弾性層を被覆し、PFA等のフッ素樹脂から成る離型層と、を備えている。
【0045】
熱源24は、例えばハロゲンヒーターやセラミックヒーター等のヒーターによって構成されている。熱源24は、通電によって発熱することで、定着ローラー23を加熱するように構成されている。
【0046】
温度センサー25は、例えばサーミスターによって構成されている。温度センサー25は、定着ローラー23に対して非接触で設けられており、定着ローラー23の温度を検出するように構成されている。なお、温度センサー25は、定着ローラー23に接触していても良い。
【0047】
加圧ローラー26は、定着ローラー23と同様に前後方向に長い形状を成している。加圧ローラー26は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。加圧ローラー26は、定着ローラー23に圧接しており、定着ローラー23と加圧ローラー26の間には、定着ニップ40が形成されている。加圧ローラー26は、例えば、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯材と、この芯材に周設され、シリコンゴム等から成る弾性層と、この弾性層を被覆し、PFA等のフッ素樹脂から成る離型層と、を備えている。
【0048】
支持部材27は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。図3に示されるように、支持部材27は、定着フレーム22の前端壁36と後端壁37の間に架設されている。支持部材27は、前後方向に延びる底壁部41と、底壁部41に立設される一方側壁部42及び他方側壁部43と、を備えている。底壁部41の前後両端部は、それぞれ定着フレーム22の前端壁36と後端壁37に固定されている。
【0049】
一方側壁部42と他方側壁部43は、前後方向に間隔をおいて複数セット(例えば4セット)設けられている。一方側壁部42と他方側壁部43は、前後方向に間隔をおいて対向している。図2に示されるように、一方側壁部42と他方側壁部43(図2では一方側壁部42のみ表示)の上部には、押圧方向Yに沿って、長孔状の挿入穴44が穿設されている。一方側壁部42の右上隅部と他方側壁部43の右上隅部の間には、バネ支持部45が架設されている。
【0050】
分離爪28は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。分離爪28は、用紙の搬送方向において定着ニップ40の下流側に配置されている。図3に示されるように、分離爪28は、前後方向に間隔をおいて複数個(例えば4個)設けられている。
【0051】
図4等に示されるように、分離爪28は、分離爪本体46と、この分離爪本体46に固定される前後一対の支軸47と、を備えている。
【0052】
分離爪本体46は、略横向き三角柱状を成している。図2に示されるように、分離爪本体46の先端部48(本実施形態では右端部)は、先鋭形状を成しており、定着ローラー23の外周面に接触している。分離爪本体46は、定着ローラー23の外周面と対向する対向面50を有しており、分離爪本体46の断面は、対向面50側を斜辺とする直角三角形状を成している。なお、図2及び図5の二点鎖線aは、分離爪本体46の先端部48が定着ローラー23の外周面に接触する点における定着ローラー23の接線(以下、「接線a」とする。)を示している。以下、正面視において上記接線aと対向面50が成す角を、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と称する。図4に示されるように、分離爪本体46の対向面50の左側部には、断面半円状の係合溝51が前端から後端まで形成されている。
【0053】
各支軸47は、横向き円柱状を成している。各支軸47の前後方向内側部分は、分離爪本体46の係合溝51の前後両端部にそれぞれ嵌合している。これにより、各支軸47が分離爪本体46に固定されている。各支軸47の前後方向外側部分は、分離爪本体46の前後両面から突出している。図2等に示されるように、各支軸47の前後方向外側部分は、支持部材27の一方側壁部42と他方側壁部43(図2では、一方側壁部42のみ表示)にそれぞれ設けられた挿入穴44に挿入されている。これにより、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能且つ分離爪本体46の先端部48を中心に回転可能となるように、支持部材27に支持されている。
【0054】
以下、支軸47が挿入穴44の上部に挿入されているときの分離爪28の位置(図2参照)を、分離爪28の「トナー吐き出し位置」と称する。また、この時の定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を、「第1の角度θ1」とする。これに対して、支軸47が挿入穴44の下部に挿入されているときの分離爪28の位置(図5参照)を、分離爪28の「トナー保持位置」と称する。また、この時の定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を、「第2の角度θ2」とする。第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも大きい。
【0055】
図2等に示されるように、接触角調整機構29は、コイルバネ52(付勢部材)と、コイルバネ52の上方に配置される押圧部材53と、を備えている。
【0056】
コイルバネ52の上端部は、支持部材27のバネ支持部45に固定されている。コイルバネ52の下端部は、分離爪本体46の対向面50のうちの係合溝51よりも先端部48に近い部分に固定されている。コイルバネ52は、分離爪28を持ち上げており、分離爪本体46の先端部48が定着ローラー23の外周面に押し当てられている。コイルバネ52は、分離爪28をトナー吐き出し位置(図2参照)に付勢している。
【0057】
押圧部材53は、その全部又は一部が、アルミニウムやステンレス鋼(SUS)等の高熱伝導材によって形成されている。図3に示されるように、押圧部材53は、前後方向に延びる押圧軸54と、前後方向に間隔をおいて押圧軸54に固定される複数個(例えば4個)の押圧片55と、を備えている。なお、図4では、押圧部材53のうちの押圧片55のみが表示されている。
【0058】
押圧軸54の前端部と後端部は、定着フレーム22の前端壁36と後端壁37にそれぞれ設けられた支持穴38(図2参照)に係合している。これにより、押圧方向Yに沿ってスライド可能な状態で、押圧部材53が定着フレーム22に支持されている。
【0059】
図4に示されるように、押圧片55は、扁平な形状を成しており、押圧方向Yに沿って延びている。押圧片55の下端部には、半円弧状に湾曲する係合部57が設けられている。押圧片55の上部には、貫通穴56が前後方向に設けられており、図2に示されるように、この貫通穴56を押圧軸54が貫通している。これにより、押圧片55の上部が押圧軸54に固定されている。
【0060】
クリーニングローラー30は、定着フレーム22に回転可能に支持されている。クリーニングローラー30は、定着ローラー23と接触する位置(図2参照)と、定着ローラー23から離間する位置(図5参照)との間でスライド可能となるように、定着フレーム22に支持されている。つまり、クリーニングローラー30は、定着ローラー23に対して接離可能に設けられている。
【0061】
ファン31は、例えば、定着フレーム22に設けられた吸気口(図示せず)の内側に配置されている。ファン31は、押圧部材53の押圧片55に対して冷却風を吹き付けるように構成されている。
【0062】
次に、定着装置18の制御システムについて、主に図6を用いて説明する。
【0063】
図6に示されるように、定着装置18には、制御部61(CPU)が設けられている。制御部61は、ROM、RAM等の記憶装置で構成される記憶部62と接続されており、記憶部62に格納された制御プログラムや制御用データに基づいて、制御部61が定着装置18の各部の制御を行うように構成されている。
【0064】
制御部61は、温度センサー25に接続されており、温度センサー25が検出した定着ローラー23の温度が、制御部61に出力されるようになっている。
【0065】
制御部61は、熱源24に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて熱源24が通電して発熱することで、熱源24によって定着ローラー23が加熱されるように構成されている。
【0066】
制御部61は、ファン31に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいてファン31の稼働と停止が切り替わるようになっている。
【0067】
制御部61は、モーターやソレノイド等によって構成される第1駆動源63に接続されており、第1駆動源63は、押圧部材53に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて第1駆動源63が押圧部材53を押圧方向Yに沿ってスライドさせるように構成されている。
【0068】
制御部61は、モーターやソレノイド等によって構成される第2駆動源64に接続されており、第2駆動源64は、クリーニングローラー30に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて、定着ローラー23と接触する位置と定着ローラー23から離間する位置の間で、第2駆動源64がクリーニングローラー30をスライドさせるように構成されている。
【0069】
制御部61は、モーター等によって構成される第3駆動源65に接続されており、第3駆動源65は、定着ローラー23に接続されている。そして、制御部61からの信号に基づいて、第3駆動源65が定着ローラー23を回転させるように構成されている。
【0070】
上記のように構成されたものにおいて、まず、プリント動作について説明する。
【0071】
プリント動作を行う際には、第3駆動源65によって定着ローラー23を回転させる。このように定着ローラー23を回転させると、定着ローラー23に圧接する加圧ローラー26が定着ローラー23とは逆方向に従動回転する。また、プリント動作を行う際には、熱源24によって定着ローラー23を加熱する。この状態で、用紙が定着ニップ40を通過すると、用紙上のトナーが加熱及び加圧されて、用紙にトナー像が定着される。定着ニップ40を通過した用紙は、分離爪28によって定着ローラー23から分離される。
【0072】
次に、分離爪28にトナーを保持する制御及び分離爪28からトナーを吐き出す制御について説明する。
【0073】
プリンター1においてプリント動作が繰り返されている時には、図2に示されるように、分離爪28がトナー吐き出し位置にあり、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角は、第1の角度θ1になっている。また、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能となっており、分離爪本体46の先端部48は、コイルバネ52によって定着ローラー23の外周面に押し当てられている。また、クリーニングローラー30は定着ローラー23に接触している。
【0074】
上記のようにプリンター1においてプリント動作を繰り返すと、定着ニップ40を用紙が通過する際に、用紙表面に付着しているトナーがオフセットして定着ローラー23に移り、この定着ローラー23に移ったトナーが定着ローラー23から分離爪本体46の先端部48付近に移って、堆積する。この堆積したトナーは、一端終了したプリント動作を再開する時に、塊となって定着ローラー23に再付着し、又は、定着ローラー23から加圧ローラー26に移動して、定着ニップ40を通過する用紙を汚す可能性がある。
【0075】
そこで、一端終了したプリント動作を再開するような場合には、定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始される時に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って左下方にスライドさせる。これに伴って、図4(b)及び図5に示されるように、押圧部材53の押圧片55の係合部57が分離爪本体46の係合溝51に係合し、押圧部材53が分離爪本体46の左側部(先端部48とは反対側の部分)を押圧方向Yに沿って左下方に押圧する。この押圧により、コイルバネ52の付勢力に抗して、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心に分離爪28がトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転し、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角が、第1の角度θ1から第2の角度θ2に変化する。これに伴って、分離爪28によってトナーを保持しやすくなるため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着しにくくなる。
【0076】
なお、上記のように分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させても、分離爪28は、支軸47を中心に揺動可能な状態を保持している。また、分離爪本体46の先端部48は、コイルバネ52の付勢力によって定着ローラー23の外周面に押し当てられている。
【0077】
また、上記のように定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始される時に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って左下方にスライドさせるのと同時に、ファン31を稼働させる。このようにファン31を稼働させると、ファン31からの冷却風が押圧部材53の押圧片55に吹き付けられる(図5の矢印b参照)。これに伴って、押圧部材53の温度が低下し、押圧部材53と接触する分離爪28の温度も低下する。このようにファン31によって分離爪28の温度を低下させると、分離爪28に堆積したトナーの粘度が上昇し、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着し難くなる。従って、定着ローラー23から分離爪28に移ったトナーが塊となって定着ローラー23に再付着するのを防止し、定着ローラー23に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。
【0078】
なお、上記のようにファン31からの冷却風を押圧部材53の押圧片55に吹き付ける際には、熱源24による定着ローラー23に対する加熱を妨げないように、冷却風の強さ及び向きを調整するのが好ましい。また、上記のように分離爪28がトナー保持位置にある時には、熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時よりも低く設定するのが好ましい。これにより、定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度が上昇するのを極力抑制することができるため、分離爪28の温度を一層低下させやすくなる。
【0079】
また、上記のように分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期して、図5に示されるように、クリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させる。このように、定着ローラー23に対する清掃の必要が無い場合には、クリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させておくことで、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の摩耗を抑制することができる。これに伴って、クリーニングローラー30と定着ローラー23を常時接触させておく場合と比較して、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の寿命を延ばすことができる。
【0080】
一方で、分離爪28をトナー保持位置に常時配置すると、分離爪本体46の先端部48付近にトナーが堆積し続けるため、いずれは大きな塊となったトナーが定着ローラー23に付着して、用紙に大きな汚れを発生させる可能性が高い。そこで、定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間経過後(例えば、プリント動作を開始してから数十秒経過後)、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って右上方にスライドさせる。これに伴って、図2及び図4(a)に示されるように、押圧部材53の押圧片55の係合部57が分離爪本体46の係合溝51から離脱し、押圧部材53による分離爪本体46の左側部に対する押圧が解除される。この押圧の解除に伴って、コイルバネ52の付勢力により、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心にトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで分離爪28が回転し、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角が、第2の角度θ2から第1の角度θ1に変化する。これに伴って、分離爪28からトナーを吐き出しやすくなるため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着しやすくなる。
【0081】
また、上記のように定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間経過後に、第1駆動源63によって押圧部材53を押圧方向Yに沿って右上方にスライドさせるのと同時に、ファン31の稼働を停止させる。これに伴って、熱源24によって加熱されている定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度が上昇する。そのため、分離爪28に堆積したトナーの粘度が低下し、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着しやすくなる。従って、分離爪28に堆積したトナーを効率的に回収して、分離爪28に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
【0082】
なお、上記のように分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に付着するが、既に定着ローラー23及び加圧ローラー26の回転が開始されてから所定時間が経過しており、定着ローラー23が安定して回転しているため、塊となったトナーが一気に定着ローラー23に付着する可能性は低い。つまり、目に見えないレベル又は殆ど目立たず問題にならないレベルで、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に少しずつ付着することになる。そのため、塊となったトナーによって用紙が著しく汚されるのを回避しながら、分離爪28に堆積するトナーの量を低減させることが可能となる。
【0083】
なお、分離爪28がトナー保持位置にある時に熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時よりも低く設定していた場合には、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同時に、又は、段階的に、熱源24による定着ローラー23の加熱温度を通常プリント時の温度に戻すのが望ましい。これにより、定着ローラー23からの伝熱によって分離爪28の温度を上昇させやすくなり、分離爪28がトナーを吐き出しやすくなる。
【0084】
また、上記のように分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期して、定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させる(図2参照)。これにより、定着ローラー23に付着したトナーを効率的に除去することができる。
【0085】
以上のように、本実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と分離爪28の温度を連動して変化させることで、分離爪28によってトナーを保持する機能と分離爪28からトナーを吐き出す機能を併せて強化することができる。そのため、定着ローラー23から分離爪28に移ったトナーが塊となって定着ローラー23に再付着するのを確実に防止し、定着ローラー23に再付着したトナーが用紙を汚すのを回避することができる。また、定着ローラー23を逆回転させる必要が無いため、定着装置18の構成の複雑化、生産性の低下といった課題を回避しながら、トナーが用紙を汚すのをより確実に防止することができる。
【0086】
また、定着ローラー23を加熱するための熱源24を、温度調整部材として利用している。そのため、分離爪28がトナー吐き出し位置にある時に、特別な機構を追加せずに分離爪28の温度を上昇させることができる。
【0087】
また、分離爪28がトナー保持位置にある時に、分離爪28に接触する押圧部材53の押圧片55にファン31からの冷却風を吹き付けることで、分離爪28の温度を低下させている。このような構成を採用することで、分離爪28に対する冷却効率を高めて、分離爪28に堆積したトナーの粘度を速やかに上昇させることができる。そのため、分離爪28に堆積したトナーが定着ローラー23に一層付着し難くなる。
【0088】
また、コイルバネ52と押圧部材53によって接触角調整機構29が構成されている。そのため、簡易な構成を用いて定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させることが可能となる。
【0089】
また、分離爪28は、トナー吐き出し位置とトナー保持位置の間で、分離爪本体46の先端部48(定着ローラー23との接触部)を中心に回転可能に設けられている。このような構成を採用することで、分離爪28を定着ローラー23に接触させたまま、分離爪28をトナー吐き出し位置とトナー保持位置の間で回転させることができる。そのため、定着ローラー23に対して分離爪28を接離させる場合と比較して、定着ローラー23や分離爪28が局所的なダメージを受けにくくなる。
【0090】
また、分離爪28及び押圧部材53の一部又は全部が高熱伝導材によって形成されている。そのため、分離爪28がトナー保持位置にある時に、ファン31からの冷却風によって分離爪28及び押圧部材53の温度を急速に低下させ、分離爪28に堆積したトナーの粘度を急速に上昇させることができる。
【0091】
また、支持部材27の一部又は全部が高熱伝導材によって形成されているため、分離爪28がトナー吐き出し位置にある時に、支持部材27からの伝熱によっても分離爪28の温度を上昇させることができる。
【0092】
本実施形態では、分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期してクリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させ、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期して定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させる場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、本実施形態とは逆に、分離爪28をトナー吐き出し位置からトナー保持位置まで回転させるのと同期して定着ローラー23にクリーニングローラー30を接触させ、分離爪28をトナー保持位置からトナー吐き出し位置まで回転させるのと同期してクリーニングローラー30を定着ローラー23から離間させても良い。このような構成を採用することで、分離爪28がトナー保持位置にあるにも関わらず定着ローラー23に付着してしまったトナーを定着ローラー23から除去することができる。また、クリーニングローラー30と定着ローラー23を常時接触させておく場合と比較して、クリーニングローラー30及び定着ローラー23の寿命を延ばすことができる。
【0093】
本実施形態では、クリーニングローラー30をクリーニング部材として用いたが、他の異なる実施形態では、クリーニングブレード等をクリーニング部材として用いても良い。本実施形態では、クリーニングローラー30を定着ローラー23に対して接離させる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、クリーニングローラー30を加圧ローラー26に対して接離させても良い。
【0094】
本実施形態では、支持部材27、分離爪28及び押圧部材53の一部または全部が高熱伝導材によって形成される場合について説明したが、他の異なる実施形態では、支持部材27、分離爪28及び押圧部材53が、高熱伝導性を有しない一般的な樹脂や金属によって形成されていても良い。
【0095】
本実施形態では、ファン31からの冷却風を押圧部材53の押圧片55に吹き付ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、ファン31からの冷却風を分離爪28に直接吹き付けても良い。
【0096】
本実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角と分離爪28の温度を同時に変化させる場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させてから一定時間経過後に分離爪28の温度を変化させたり、分離爪28の温度を変化させてから一定時間経過後に定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させたりしても良い。つまり、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させるのに伴って分離爪28の温度を変化させていれば良く、定着ローラー23に対する分離爪28の接触角を変化させるタイミングと分離爪28の温度を変化させるタイミングは必ずしも同時でなくても良い。
【0097】
本実施形態では、定着ローラー23を定着部材として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、定着ベルトを定着部材として用いても良い。本実施形態では、加圧ローラー26を加圧部材として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、加圧ベルトを加圧部材として用いても良い。
【0098】
本実施形態では、ハロゲンヒーターやセラミックヒーター等のヒーターを熱源24として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、IHコイルを熱源24として用いても良い。
【0099】
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、デジタル複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 プリンター(画像形成装置)
18 定着装置
23 定着ローラー(定着部材)
24 熱源(温度調整部材)
26 加圧ローラー(加圧部材)
28 分離爪(分離部材)
29 接触角調整機構
30 クリーニングローラー(クリーニング部材)
31 ファン(温度調整部材)
40 定着ニップ
52 コイルバネ(付勢部材)
53 押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6