特許第5953273号(P5953273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953273非分解性、低膨潤性、水溶性、放射線不透過性のヒドロゲル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953273
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】非分解性、低膨潤性、水溶性、放射線不透過性のヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20160707BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   A61L27/00 P
   A61L31/00 P
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-174587(P2013-174587)
(22)【出願日】2013年8月26日
(62)【分割の表示】特願2008-504235(P2008-504235)の分割
【原出願日】2006年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-233457(P2013-233457A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】11/097,467
(32)【優先日】2005年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508225004
【氏名又は名称】トリバスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(72)【発明者】
【氏名】アスカリ サイアド エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ウィアリー ロバート ジー
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−502380(JP,A)
【文献】 特開平07−278203(JP,A)
【文献】 特開平09−099052(JP,A)
【文献】 国際公開第04/084703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61L 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)膨張可能な部材;および、
(2)前記膨張可能な部材内の生体適合性ゲル組成物、
を含む、医療装置であって、前記ゲル組成物が、
(i)ソルビトールポリグリシジルエーテル、および
(ii)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、
を含む、前記医療装置。
【請求項2】
ゲル組成物が、10秒から30分、5分から20分、10分から17分、または30秒から2分の硬化時間を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ゲル組成物がインビボで硬化する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
組成物がソルビトールポリグリシジルエーテルとジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールから形成されるヒドロゲルポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールがポリマーの4質量%〜20質量%の量で存在し、ソルビトールポリグリシジルエーテルがポリマーの15質量%から60質量%の間の量で存在する、
ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールがポリマーの5質量%から15質量%の間の量で存在し、ソルビトールポリグリシジルエーテルがポリマーの25質量%から40質量%の間の量で存在する、
ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールが、ポリマーの5質量%〜30質量%の量で存在し、ソルビトールポリグリシジルエーテルがポリマーの40質量%から90質量%の間の量で存在する、
ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールが、ポリマーの7質量%〜60質量%の量で存在し、ソルビトールポリグリシジルエーテルがポリマーの7質量%から55質量%の間の量で存在する、または、
ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールがポリマーの10質量%〜45質量%の量で存在し、ソルビトールポリグリシジルエーテルがポリマーの14質量%〜35質量%で存在する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
さらに放射線不透過性の材料を含む、請求項4または5記載の装置。
【請求項7】
ヒドロゲルポリマーが、硬化及び水和後に30%未満で膨潤する、硬化及び水和後に20%未満で膨潤する、硬化及び水和後に10%未満で膨潤する、または、硬化及び水和後に5%未満で膨潤する、請求項4〜6のいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
膨張可能な部材が膨張可能なインプラントである、または、膨張可能な閉塞部材、または、膨張可能な経路またはカフである、請求項1〜7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
ゲル組成物が経路及びカフを膨張させて、内腔の形状に一致させるためのものである、請求項8記載の装置。
【請求項10】
(1)膨張可能な部材;および、
(2)以下を含む生体適合性溶液を含む生体適合性組成物、
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、
(b)ソルビトールポリグリシジルエーテル、
(c)1.5〜2.0%の緩衝液、
を含む医療装置であって、前記組成物が、生体内で生体適合性の温度にて10分〜17分の硬化時間を有し、ソルビトールポリグリシジルエーテルのジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールに対する比が3.27対3.81である、
前記医療装置。
【請求項11】
哺乳動物内または哺乳動物内に置かれた医療装置内でヒドロゲル組成物を調製するためのキットであって、
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、を有する容器
(b)ソルビトールポリグリシジルエーテル、を有する容器
(c)任意に放射線不透過性材料、を有する容器、および
前記それぞれの容器内に存在する材料を組み合わせて哺乳動物内または哺乳動物内に置かれた医療装置内でヒドロゲルを形成させるための使用説明書、
を含む、前記キット。
【請求項12】
医療用材料を製造するためのヒドロゲルポリマー組成物の使用であって、前記ヒドロゲルポリマー組成物が、
(1)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールおよびソルビトールポリグリシジルエーテルを含む混合物を形成すること、
(2)前記混合物を哺乳動物内または哺乳動物内に置かれた医療装置内に置くこと、
(3)前記組成物を硬化させヒドロゲルポリマー組成物を形成させること、
を含む方法によって形成される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非分解性、低膨潤性かつ初期には、水溶性であるヒドロゲルポリマー組成物の開発に関する。さらに具体的には、該ヒドロゲルポリマー組成物は、その場で形成されかつ例えば、塞栓材料、膨化剤、及びある型の医療装置用の膨張又は担持媒体として有用である。本発明は、さらに該ヒドロゲルポリマー組成物を調製するためのキットを包含する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルポリマーは、医療応用における用途を有する架橋した親水性高分子である。そのような応用において多くの進歩が行われてきたが、以下に述べるように、特にインビボで応用するために、これらの材料の物理的及び機械的特性を最適化するさらなる開発が必要とされている。
【0003】
本明細書に述べるヒドロゲルポリマー材料に対する応用の一つの例は、膨張可能な腔内移植片又はステント移植片用の膨張又は担持媒体としての応用である。そのような膨張可能なステント移植片の例は、本出願人に譲渡されたチョボトフに対する米国特許第6395019号、2003年3月6日に出願された「耐捩れ性血管内移植片」という表題でカリらによる審査中の米国特許出願第10/384103号、及び2002年12月20日に出願された「高度な血管内移植片」という表題のチョボトフらによる、米国特許出願第10/327711号に記載されており、参照によりそれら各々全てが本明細書に組み込まれる。これらの文献は、移植片部分上に位置した経路及びカフに対してポリマー充填材料が導入されて移植片膨張及び担持媒体として作用することによって、該装置に対するさらなる構造上の担持が達成されるステント移植片を記載している。
理想的には、上述したステント移植片で使用される膨張及び担持媒体は、生体適合性があり、約数分から数10分の硬化時間を持ち、その硬化後又は硬化時に最少の体積縮小及び膨潤を示し、長期間(インビボで、好ましくは少なくとも10年間)の安定を示し、硬化前状態において出来るだけ塞栓リスクが少なく、かつ硬化前状態及び硬化後状態の双方において、適切な機械的特性を示す。例えば、このような材料は、固化又は硬化前には相対的に粘度が低く、ステント移植片への充填工程が行いやすくなければならない。
【0004】
本明細書に記載するヒドロゲルポリマーの他の応用は、体の内腔、例えば血管又は器官を塞栓する材料としての応用である。塞栓又は血液などの流体を人工的に防止する材料は、例えば、外傷性傷害による出血の制御、血管の切開を必要とする手術の間のおびただしい血液損失の防御、腫瘍を持っている全器官の部分の切除、動脈瘤、動静脈の奇形、動静脈の痩孔等の異常血管構造への血液の流れの阻止、及び種々の体の内腔を経由する流体又は他の物質の通過の阻止を含めた種々の病気の治療に使用しても良い。そのような治療に対して、例えば、機械的手段(微粒子技術を含む)及び液体及び半液体技術を含めた種々の塞栓技術が、提案されてきた。そのような技術(例えば、粒度、放射線不透過性、粘度、閉塞のメカニズム、永久的閉塞に対する生理的挙動と可能な再疎通、材料を標的体部位に送達する手段など)の特別な特性は、治療される適応用に最も適した治療を決める医師により使用される因子である。
【0005】
機械的かつ粒子状塞栓技術の内、最も普及している技術としては、分離可能なバルーン、マクロコイル及びマイクロコイル、ゲル泡、ポリビニルスポンジ(例えばカリフォルニア州サンジエゴ市のイヴァロン社が製造するイヴァロン)及びミクロ球が、挙げられる。例えば、ある塞栓技術では白金及びステンレススチールのミクロ球を使用している。しかし、送達前に疾患に適切なコイルサイズを選択するための重要な専門的知識が、必要とされる。さらに、多くの解剖学的部位がマイクロコイルには適しておらず、またマイクロコイルの除去が、ある状況下で困難であると証明されてきている。
【0006】
液状及び半液状の塞栓組成物は、粘稠な閉塞ゲル、コラーゲン懸濁物及びシアノアクリレート(n−ブチルシアノアクリレート及びイソブチルシアノアクリレート)を含む。これらのうち、シアノアクリレート類は、相対的な送達の容易さにおいて、またそれらが、医師にとって、現在入手可能な唯一の液状塞栓組成物のいくつかであるという事実において、他の塞栓組成物に対して利点を持っている。しかし、構成要素であるシアノアクリレートは、生分解性であるという不利な点を持っている。さらに、分解産物のホルムアルデヒドは、隣接組織に対して毒性が高い。ヴィンターらの神経放射線学1985年、27巻、279−291頁、「シアノアクリレートの組織毒性;選択的レビュー」を参照のこと。シアノアクリレート材料の他の不利な点は、該ポリマーは体の組織に粘着しかつカテーテルの先端に粘着することである。従って、医師は、シアノアクリレート塞栓組成物の注入後すぐにカテーテルを引き抜くか、又はシアノアクリレート及びカテーテルが組織、例えば血管に粘着する危険を冒すかしなければならない。
他のクラスの液体塞栓組成物は、1980年代後半に発明された沈殿性材料である。スガワラらのNeuro Med. Chir. (東京)1993年;33巻、71−76頁「新しい液体塞栓方法に関する実験的検討:エタノール−エストロゲン及びポリ酢酸ビニルの組み合わせ投与」;滝らのAJNR,1990年、11巻163−168頁;マンダイら、J. Neurosurgery 1992年77巻、497−500頁:「酢酸セルロースポリマーを用いた動脈瘤の直接血栓症:第I部:実験的動脈瘤における血栓症の成果」を参照のこと。これらの材料は、合成塞栓の形成においてシアノアクリレート材料と異なるメカニズムを使用している。シアノアクリレート接着剤は、モノマーであり、血液と接触すると急速に重合する。一方沈殿性材料は、予め重合した鎖であって、血液と接触すると沈殿して凝集体になるものである。
理想的には、その場で形成される塞栓材料は、生体適合性であり、約数秒から数分の相対的に短い硬化時間を持っており、硬化に際して最少から中程度の制御可能な膨潤を示し、長期間の安定性(好ましくは、インビボで少なくとも10年間)を示し、かつ硬化前及び硬化後の双方の状態で充分な機械的特性を示す。例えば、そのような材料は、標的部位に対して安全にかつ正確に送達されるように固化前又は硬化前に、相対的に高い粘度を持っているべきである。
【0007】
本明細書に記述するヒドロゲルポリマー材料は、組織膨化への応用における使用に適しており、またより一般的には、哺乳動物の体内での移植に適する膨張装置における使用に適しており、その装置は、典型的には閉塞性であり、例えば2003年6月13日に出願された「膨張可能な移植」という表題の、本出願人に譲渡されたStephens他に対する同時係属の米国特許出願第10/461853号に記載の装置であり、参照により該出願の全てが本明細書に組み込まれる。そのような装置が、低いプロファイル形体で体の特定部位に送達され、設置後膨張し、体内のある領域、血管又は導管を閉塞し、又は担持する。組織膨化への応用の例は、例えば、逆流性食道炎(GERD)、尿失禁及び便失禁、軟組織の拡大及びある種の整形外科的適応症により示される括約筋欠陥の治療を含む。以上引用した塞栓材料の理想的な特性の多くは、これらの応用においても同様である。
文献中のヒドロゲルポリマー材料の大多数は、エステル基、ポリウレタン基又はシリコーン基を含んでいる。このようなヒドロゲルポリマーが、フリーラジカル重合、アニオン重合又はカチオン重合のいずれかにより、比較的製造しやすいとしても、それらは、体内では、分解する傾向にある。例えば、エステル結合を含む大抵のヒドロゲルは、生理学的pH下で加水分解しうる。
医療応用で使用されるヒドロゲルポリマー組成物の科学においてなされた進歩にもかかわらず、本明細書に記載するように、特にインビボでの応用のための改良された物理的特性及び機械的特性を有するヒドロゲルポリマーに対する技術の必要性が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、非分解性、低膨潤性かつ初期には、水溶性であるヒドロゲルポリマー組成物を提供する。該ヒドロゲルポリマー組成物は、その場で形成されかつ例えば、塞栓材料、膨化剤、及びある型の医療装置用の膨張又は担持媒体として有用である。本発明は、さらに該ヒドロゲルポリマー組成物を調製するためのキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)第1の量のジアミンと(b)第2の量のポリグリシジルエーテルとを含むその場で形成されるヒドロゲルポリマー組成物であって、(a)及び(b)の各々が、生体適合性でありかつ混合後の硬化時間が約10秒から約30分である、その場で形成されるヒドロゲルポリマーを生成する量で、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に存在する、組成物に対するものである。
本発明のヒドロゲルポリマーの容積は、硬化及び水和後に30%未満で膨潤する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(a)第1の量のジアミンと(b)第2の量のポリグリシジルエーテルとを含むその場で形成されるヒドロゲルポリマー組成物であって、(a)及び(b)の各々が、生体適合性でありかつ混合後の硬化時間が約10秒から約30分である、その場で形成されるヒドロゲルポリマーを生成する量で、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に存在する、組成物に対するものである。本発明のヒドロゲルポリマーの容積は、硬化及び水和後に30%未満で膨潤する。
【0011】
該ヒドロゲル組成物は、任意にて、放射線不透過性の材料を含んでいてもよい。該放射線不透過性の材料が、好ましくは、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320(Visipaque320)、ハイパーク(Hypaque)、オムニパーク350(Omnipaque350)及びヘキサブリックス(Hexabrix)からなる群から選択される。幾つかの態様においては、該放射線不透過性の材料が、滅菌される。
【0012】
1つの態様においては、該ヒドロゲルポリマーは、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、p−ヒドロキシ安息香酸のグリシジルエステルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(PO)2ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリグリシジルエーテルを含む。幾つかの態様においては、該ポリグリシジルエーテルが、硬化の前に滅菌される。
他の態様においては、該ヒドロゲルポリマーが、ポリエチレングリコール(400)ジアミン、ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択されるアミノ又はアルキルアミノ末端を有する(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選択されるジアミンを含む。幾つかの態様においては、該ジアミンが、硬化の前に滅菌される。
該ヒドロゲルポリマーのさらに他の態様においては、該ジアミン成分が親水性であり、かつ該ポリグリシジルエーテル成分が硬化の前に親水性である。その代わりに、該ヒドロゲルポリマーにおいて、該ジアミン成分が親水性であり、かつ該ポリグリシジルエーテル成分が硬化の前に疎水性である。さらに別の場合に、該ヒドロゲルポリマーにおいて、該ジアミン成分が疎水性であり、かつ該ポリグリシジルエーテル成分が硬化の前に親水性である。
【0013】
本発明のヒドロゲルポリマー組成物は、1)管腔内移植片において、2)塞栓装置として、3)膨張可能な閉塞部材中において及び4)組織膨化装置として、哺乳動物内において、又は哺乳動物内に置かれた医療装置においてその場で形成可能である。一つの態様においては、該ヒドロゲルポリマーは、管腔内移植片において、哺乳動物内に、その場で形成される。該ヒドロゲルポリマーが、管腔内移植において形成される場合に、1つの態様においては、該ヒドロゲルポリマーは、(a)ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと(b)ポリエチレングリコールグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリシジルエーテルとの混合物から形成される。
該ヒドロゲルポリマーは、哺乳動物内に、又は医療塞栓装置において、その場で形成されても良い。該ヒドロゲルポリマーが塞栓装置として形成される場合、1つの態様においては、該ポリマーは(a)ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとポリオキシエチレンジアミンとの混合物と(b)ソルビトールポリグリシジルエーテルとから形成される。他の態様においては、塞栓装置としてその場で形成される該ヒドロゲルポリマーは、(a)ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと(b)ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルとトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの混合物とから形成される。
【0014】
該ヒドロゲルポリマーは、膨張可能な閉塞部材として、又は組織膨化装置として、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中で、その場で形成されても良い。膨張可能な閉塞部材において、又は組織膨化装置として、該ヒドロゲルポリマーは、1つの態様においては、(a)ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと(b)ソルビトールポリグリシジルエーテルから形成される。
さらに他の態様においては、本発明の該ヒドロゲルポリマーはジアミン成分とポリグリシジル成分とを含み、そこでは、該ジアミン成分は、該ポリマーの約4質量%から約20質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、該ポリマーの約15質量%から約60質量%の間の量で存在する。
さらに他の態様においては、本発明の該ヒドロゲルポリマーは、ジアミン成分とポリグリシジル成分とを含み、そこでは、該ジアミン成分は、該ポリマーの約5質量%から約15質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、該ポリマーの約25質量%から約40質量%の間の量で存在する。
【0015】
さらに他の態様においては、本発明の該ヒドロゲルポリマーは、ジアミン成分とポリグリシジル成分とを含み、そこでは、該ジアミンは、ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、該ポリグリシジルエーテルは、ポリエチレングリコールグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物であり、また該放射線不透過性の材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択される。
さらに他の態様においては、本発明の該ヒドロゲルポリマーは、ジアミン成分とポリグリシジル成分とを含み、そこでは、該ジアミンは、ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、該ポリグリシジルエーテルは、ソルビトールポリグリシジルエーテルとポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる基から選択され、また該放射線不透過性の材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択される。
【0016】
該ヒドロゲルポリマーのある態様においては、該ジアミン成分は、該ポリマーの約7質量%から約60質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、該ポリマーの約7質量%から約55質量%の間の量で存在する。
該ヒドロゲルポリマーの他の態様においては、該ジアミン成分は、該ポリマーの約10質量%から約45質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、該ポリマーの約14質量%から約35質量%の間の量で存在する。
該ヒドロゲルポリマーのさらに他の態様においては、該ジアミン成分は、該ポリマーの約5質量%から約30質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、該ポリマー組成物の約40質量%から約90質量%の間の量で存在する。
該ヒドロゲルポリマーのさらなる他の態様においては、該ジアミン成分は、ジ(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとポリオキシエチレンジアミンからなる群から選択され、該ポリグリシジルエーテルは、ソルビトールポリグリシジルエーテルであり、また該放射線不透過性の材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択される。
【0017】
本発明は、また、(a)第1の量のジアミンを入れた容器、(b)第2の量のポリグリシジルエーテルを入れた容器、及び(c)任意にて、放射線不透過性の材料と、さらに哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中にてその場で該ヒドロゲルポリマーを生成するために、該容器の各々中に存在する材料を組み合わせるための使用説明書を含む、その場で形成されるヒドロゲルポリマー組成物を調製するためのキットを提供する。
本発明は、ヒドロゲルポリマー組成物を形成する方法であって、(1)ジアミンとポリグリシジルエーテルを含む混合物を形成する工程、(2)該混合物を、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に入れる工程、及び(3)該混合物を硬化させ、該ヒドロゲルポリマーを形成する工程とを含む方法を示す。
【0018】
略語と定義
本明細書で使用されている「生体適合性」という用語は、哺乳動物の生物学的システムにおいて、毒性作用又は有害作用を持たない(すなわち、感染を生じない、又は免疫攻撃のトリガーとならない、又は使用の予期される条件において、生物学的機能に悪影響を及ぼさない)ポリマー又は他の材料の特性を表している。
本明細書で使用されている「放射線不透過性」又は「造影剤」という用語は、X線又は他の形式の放射線に対して透明ではない材料を表すために使用されている。放射線不透過性の材料は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、金、タングステン、白金、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオタラム酸ナトリウム、メグルミン、ビジパーク、ハイパーク、オムニパーク350、ヘキサブリックス及びタンタル粉を含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用されている「塞栓装置」という用語は、部分的に又は全体的に空間又は空隙を埋め、又は部分的に又は全体的に腔を塞ぐ、血管又は他の同様な経路の空間、空隙又は腔中に導入される物を表している。例えば、塞栓組成物は、動脈瘤嚢用充填材として、内漏れシーラントとして、動脈シーラントとして、打ち抜きシーラントとして、癌又は子宮筋腫に通じる血管の閉塞、動静脈先天性異常などの血管先天性異常の閉塞、左心房付属物の閉塞のために使用でき、又は、例えば、卵管などの他の腔の閉塞のために使用できる。
本明細書で使用されている「腔」又は「管腔」という用語は、静脈、動脈、腸、卵管、気管などの身体の種々の中空臓器又は管を意味する。腔は、カテーテルシステム中に存在する管を意味するためにも、使用される(すなわち、「多腔」カテーテル)。
【0020】
本明細書で使用されているそれ自身又は他の置換基の1部としての「アルキル」という用語は、特に断らない限り、直鎖又は分岐鎖、又は環状炭化水素ラジカル又はそれらを組み合わせたものを意味し、それらは、完全飽和されているか、モノ不飽和か、又はポリ不飽和されることができ、指定された炭素数(すなわち、C1−C10は、1個から10個の炭素を意味する)を持つ二価基及び多価基を含むことが出来る。飽和炭化水素ラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)エチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの相同体及び異性体などの基を含む。不飽和アルキル基は、一つ以上の二重結合又は三重結合を持つものである。
【0021】
本明細書で使用されている「分解しない」又は「非分解性」という用語は、生理学的環境において、ある物質の機能又は生体適合性に影響を与える程度にまで、物理的、化学的又は酵素的に分解(代謝)されて小さい分子量のフラグメントになることに抵抗する、該物質、例えばポリマー材料の特性を意味する。一般的に、インビボ環境で分解しない組成物は、インビボで10年に相当する少なくとも18日間pH10の水溶液中で安定な組成物である。分解の量は、ポリマー組成物の全質量に対して、典型的には、5質量%未満、より好ましくは4質量%未満、さらにより好ましくは2質量%未満、さらにより好ましくは、1質量%未満、また最も好ましくは、0.5重量%未満となる。
本明細書で使用されている「質量%」という用語は、ポリマー組成物の処方に使用した1つの成分の質量を、ポリマー生成物の全質量で割ったものに100%を掛けたものを意味している。
【0022】
本発明の態様
I. 組成
1つの態様において、本発明は、生体適合性があり、実質的には塞栓リスクをもたらすこと無く、非分解性であり、また血液との接触において10年以上安定であるヒドロゲルポリマー組成物を提供する。本発明の該ゲル組成物は、限定するものではないが、管腔内移植片における、管腔塞栓装置としての、膨張性閉塞部材における、及びとりわけ組織膨膨化置としての使用を含む、種々のインビボでの応用に適している。
【0023】
最も広い概念において、本発明のヒドロゲルポリマー組成物は、少なくとも2つのモノマー成分、すなわちジアミン及びポリグリシジルエーテルから形成される。本発明により得られたゲル組成物は、加水分解される基、例えばエステル基又はアミド基をとりわけ含んでいない。結果として、本組成物は、生理的環境において、増加した安定性を示しまたインビボでの崩壊の可能性を減少させる。
【0024】
まず、本発明のジアミン成分に立ち返って、適当なジアミンモノマーは、各窒素原子が、独立して、アミノ基かアルキルアミノ基のいずれかであり、また立体的に自由であって、ポリグリシジルエーテルのエポキシド部分と反応する、本質的にいずれかのジアミン化合物であることができる。典型的には、該ジアミンモノマーは、約100から約2500の分子量を持っており、またある態様において、ジアミンモノマーは、生体適合性である。態様の1つの群において、該ジアミンは、アミノ又はアルキルアミノ末端を持つポリオキシアルキレン化合物である。好ましい態様において、該ポリオキシアルキレン化合物は、アミノ末端を持っている。該ヒドロゲルポリマー組成物用に適切なジアミンモノマーは、ポリエチレングリコールジアミン(PEG-ジアミン又は、O,O’-ビス(2−アミノエチル)プロピレングリコール;CAS No.24991−53−5とも呼ばれる)、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール(O,O’−ビス(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジ−(3−アミノプロピル)エーテル;テキサス州ヒューストン、デイキシーケミカル社から入手可能、又は3−{2−[2−(3−アミノプロポキシ)―エトキシ]―エトキシ}−プロピルアミン;CAS No.4246−51−9とも呼ばれる)、ポリオキシプロピレンジアミン(米国、テキサス州、ハンツマン・パフォーマンス・プロダクツから入手可能。CAS No.9406−10−0)、ポリエチレンジアミン(米国、テキサス州、ハンツマン・パフォーマンス・プロダクツから入手可能。CAS No.194673−87−5)、ポリオキシエチレンジアミン(米国、テキサス州、ハンツマン・パフォーマンス・プロダクツから入手可能。CAS No.65605−36−9)、トリエチレングリコールジアミン(3,6−ジオキサ−オクタメチレンジアミンとしても公知である。CAS No.929−59−9)、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。1つの態様において、該ジアミン化合物は、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール(米国、ウイスコンシン州、アルドリッチ・ケミカル社から入手可能)である。他の態様において、ジアミンは、ポリプロピレングリコール(400)ジアミン(ノルウエー、オスロ、ポリピュアInc.から入手可能、又は、米国、ウイスコンシン州、トマーInc.から入手可能)及びジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとの混合物である。さらに他の態様において、該ジアミンは、ポリオキシエチレンジアミンとジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとの混合物である。本組成物の他の適当なジアミンモノマーは、当業者にとって明らかであろう。
【0025】
本発明のゲル用の第2の成分は、ポリグリシジルエーテルである。本明細書で使用されているように、該ポリグリシジルエーテルモノマーは、少なくとも2つのグリシジルエーテル官能基及び好ましくは少なくとも3つのグリシジルエーテル官能基を有するいずれかの化合物である。幾つかの態様において、該ポリグリシジル化合物は、少なくとも2つのグリシジルエーテル基と100から2000の分子量を有する。又は、2つのグリシジルエーテル基を持つポリグリシジルエーテルは、本技術では、ジグリシジルエーテルとされ、一方3つのグリシジルエーテル基を持つポリグリシジルエーテルは、トリグリシジルエーテルとされる。本発明の殆どの態様において、ポリグリシジルエーテルは、生体適合性である。組成物中に使用される適当なポリグリシジルエーテルは、限定するものではないが、ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン(CAS No.2095−03−6)、2,2−ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン(CAS No.1675−54−3)、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル(CAS No.106100−55−4)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(CAS No.2425−79−8)、1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテル(CAS No.3332−48−7)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CAS No.14228−73−0)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(CAS No.4206−61−5)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(CAS No.2224−15−9及びCAS No.72207−80−8)、グリセロールジグリシジルエーテル(CAS No.27043−36−3)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(CAS No.17557−23−2)、ポリ(ジメチルシロキサン)−ジグリシジルエーテル末端(CAS No.130167−23−6)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(CAS No.26403−72−5)、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(CAS No.26142−30−3)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(CAS No.101−90−6)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(CAS No.68412−01−1)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(CAS No.3126−63−4)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(CAS No.68134−62−3)、グリセロールポリグリシジルエーテル(CAS No.25038−04−4)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(CAS No.26142−30−3)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(CAS No.101−90−6)、p−ヒドロキシ安息香酸のグリシジルエステルエーテル(CAS No.7042−93−5)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(CAS No.17557−23−2)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(CAS No.16096−31−4)、ビスフェノールA(PO)2ジグリシジルエーテル(日本、大阪、ナガセケムテックス社から入手可能)、o−フタル酸グリシジルエステル(CAS No.7195−45−4)、ハイドロキノンジグリシジルエーテル(CAS No.2425−01−6)、ビスフェノールSジグリシジルエーテル(CAS No.13410−58−7)、テレフタル酸ジグリシジルエステル(CAS No.7195−44−0)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(CAS No.30499−70−8)、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル(CAS No.37237−76−6)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル(CAS No.106253−69−4)、及びそれらの混合物を含む。本発明における使用に適した他のポリグリシジルエーテルは、当業者には自明である。
【0026】
1つの態様において、該ポリグリシジルエーテルは、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルとポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(両者とも、米国ウイスコンシン州、アルドリッチ・ケミカル社から入手可能)の混合物である。他の態様において、該ポリグリシジルエーテルは、ポリエチレングリコール(600)ジグリシジルエーテル(米国ペンシルバニア州、ポリサイアンスInc.から入手可能)とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物である。さらに他の態様において、該ポリグリシジルエーテルは、ソルビトールポリグリシジルエーテル(日本、大阪、ナガセケムテックス社から入手可能)である。さらに他の態様において、該ポリグリシジルエーテルは、ソルビトールポリグリシジルエーテルとポリグリセロールグリシジルエーテルの混合物である。さらに他の態様において、該ポリグリシジルエーテルは、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルとトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの混合物である。当業者は、ポリグリシジルエーテルの量又はポリグリシジルエーテルの組合せを変化させてゲルの架橋の量を制御すること、ゲルの親水性又は疎水性を変化させること、並びに硬化時間及び硬化前の組合せの粘度を変化させることによって、得られるゲル組成物の特性が入念に制御され得ることを理解するであろう。
【0027】
任意にて、該ヒドロゲルポリマーは少なくとも1つの放射線不透過性材料を含む。本発明に適した放射線不透過性材料は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、金、タングステン、白金、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350、ヘキサブリックス、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオタラム酸ナトリウム、メグルミン、金粉及びタンタル粉を含むが、これらに限定されない。幾つかの例においては、時間の経過と共にゲル組成物が放射線不透過性を喪失することを望む場合には、放射線不透過性材料の混合物を使用することが好ましい。例えば、可溶性造影剤、例えばヨウ素化処理した水溶液と不溶性造影剤、例えば硫酸バリウムとの混合物が、この目的に役立つことが出来る。時間の経過と共に、可溶性造影剤は該組成物から浸出して、組成物の放射線不透過性が減少していく。
【0028】
インビボにおける応用に対する本発明のゲル組成物の多くの有用性は、部分的には、硬化前ゲル組成物及び後硬化ゲル組成物の機械的特性が、上述したように、単にジアミン成分とポリグリシジルエーテル成分の思慮深い選択と硬化条件により変更できるという容易性による。例えば、硬化速度は、部分的には、使用されるモノマー成分の分子量及び硬化溶液の濃度に影響を受ける。より詳細には、モノマー単位当たりより多くのグリシジルエーテル基を持つポリグリシジルエーテルを使用することは、より早い硬化速度を与えることとなり、硬化前ゲル組成物中のモノマー成分のより高い濃度を使用することは、より早い硬化速度を与えることとなり、またより高いpHの組成物を持つことは、より早い硬化速度を与えることとなる。本発明の組成物の硬化速度を変更する他の方法は、当業者にとって、既に明白であろう。
【0029】
他の例においては、最終ゲル組成物の堅さ/硬さの特性は、モノマー成分の親水性/疎水性のバランスにより、部分的に決められる。疎水性モノマーの高い割合は、より堅いゲル組成物を提供し得る。該堅さは、モノマーの分子量(すなわち、より低い分子量は、より堅いゲルを提供する)及びポリグリシジルエーテル成分のモノマー主鎖の長さ(すなわち、より短いポリグリシジルエーテル主鎖は、より堅いゲルを提供する)によっても影響を受ける。最終ゲル組成物の堅さ/硬さの特性を変更する他の方法は、当業者には、すでに明白であろう。
1つの態様において、該組成物は、親水性ジアミンと親水性ポリグリシジルエーテルを含む。他の態様において、該組成物は、親水性ジアミンと疎水性ポリグリシジルエーテルを含む。さらに他の態様において、該組成物は、疎水性ジアミンと親水性ポリグリシジルエーテルを含む。
任意にて、該ゲル組成物は、水又は他の水性流体を組み入れることができ、その結果最終ゲル組成物の体積が増加する(膨潤する)。最終ゲル組成物の膨潤は、最終ゲルの堅さに逆比例する。提起される応用によっては、本発明ゲルは、約30%未満で膨潤することが望ましい。ある応用、例えば塞栓又は他の医療装置においては、最少の膨潤が好ましい。
【0030】
該ヒドロゲルポリマー組成物は、任意にて、例えば、硬化速度を増加させるために、粘度を減少させるために、放射線不透過性を導入するために、硬化前及び後硬化ゲル組成物の機械的特性又は物理特性を変更できる種々の添加剤を含むことが出来る。1つの説明に役立つ例においては、ヒドロゲルポリマーの形成速度(硬化速度)を触媒するために、ハイドロキサイドを硬化前ゲル混合物中に添加できる。他の説明に役立つ例においては、ある塞栓応用のために望ましいチクソトロピー特性を与えるために、硬化前ゲル混合物に、ヒュームドシリカを添加することができる。最終ゲル組成物の熱応答性、弾性、接着性及び親水性を変更するために、他のコモノマー及び添加剤を、該ゲル組成物に組み入れることが出来る。
任意にて、本発明のゲル組成物を、標的部位に対して、薬を送達するために使用できる。種々の方法を用いて、該薬をゲル組成物中に混合でき、又はゲル組成物に対して付着させることができる。幾つかの例示的薬及び塞栓組成物に対して薬を付着させる方法は、1985年1月1日の高分子化学における高分子レビュー、第C−25巻、3号、325−373頁のJ.M.ハリス「ポリエチレングリコール誘導体の実験室合成」;J.M.ハリス編集の「ポリエチレングリコール化学の生物医学的及び生物工学的応用」ニューヨーク、プレナム、1−14頁、1992年;グリーンワールドら、「高水溶性タクソール誘導体;7−ポリエチレングリコールカルバメート及び炭酸塩」;1995年J.Org.Chem.60巻第2号、331−336頁、マツシマら、「2,4−ビス(O−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−S−トリアジン(活性化PEG.sub.2)」;化学レター1980年773−776頁、「抗血清に対する結合能力の消滅及び酵素活性の保持」;及びバイオコンジュゲート化学4巻54−62頁(1993年)のナタンらの「リシンとポリエチレングリコールの共重合体;機能薬担体の新ファミリー」に記載されており、それらの各々は、参照により全てが本明細書に組み込まれる。
【0031】
前に記述したように、ゲル組成物に対するモノマー成分の選択は、硬化前モノマー混合物及び最終ゲル材料の所望の物理特性に大きく依存することになり、すなわちインビボでの該材料の意図した応用に依存している。本発明のゲルの特定の使用(好ましいモノマー及びモノマー量を含む)は、本発明の選択した態様として以下に与えられる。
【0032】
ステント移植片又は管腔内移植片
本ゲル組成物は、移植片の経路及びカフを膨張させて、内腔の形状に一致させるために、またねじれに抵抗するように移植片に充分な強度を与える目的のために、哺乳動物内に置かれるポリマーステント移植片又は管腔内移植片(例えば米国特許第6395019号に記載されたもの)に有用である。本明細書で用いられているように、「ステント移植片」という用語は、膨張性管腔内移植片のみならず膨張性管腔内ステント移植片をも、交換可能に示している。ステント移植片又は管腔内装置への応用に対して、硬化前ゲル組成物は、ステント移植片中に硬化前組成物を添加する間に、血流中にモノマー成分の偶発的な放出をもたらしうる塞栓リスク及び毒性を最小限にするように、親水性及び生体適合性であるモノマー成分を含んでいることが好ましい。偶発的放出が起こるとすれば、そのとき、通常の血流は、迅速にモノマー成分を分散させ、またその濃度は固体を形成するために必要なレベルより下に下がるであろう。好ましくは、硬化前ゲル組成物は、血流中に少なくとも3分間可溶であり、より好ましくは少なくとも5分間、さらにより好ましくは、少なくとも8分間又は硬化直前まで可溶であることが好ましい。
【0033】
ステント移植片への応用においては、ステント移植片中に移送チューブを経由して移動するために、硬化前混合物は流体のままであるべきであるので、ゲル組成物が迅速に硬化することは、あまり望ましくない。ゲル組成物をステント移植片に添加した後には、移植片は、最初はあまり固化していないことが好ましく、その結果、充填された移植片材料は、血管又は内腔空間の形態に調節かつ一致させることが出来る。1つの態様においては、ゲル組成物は、約5分から約20分の硬化時間を持っている。他の態様においては、硬化時間は、約10分から約17分間である。以上述べたように、硬化前ゲル組成物は、移送チューブ(例えば、カテーテル、注射器)を経由して送ることが出来る流動可能な溶液であることが有利である。1つの態様においては、硬化前混合物の粘度は、約0.01から約0.5Pa・sec(約10から約500cp(センチポイズ))の間である。他の態様においては、硬化前混合物の粘度は、約0.02から約0.1Pa・sec(約20cpから約100cp)の間であり、さらに好ましくは、約0.03Pa・sec(約30cp)である。
【0034】
硬化後、ゲル組成物は、その生物適合性を維持しかつ血液との接触時に安定である。硬化したゲル組成物は、約0.41と約3.45MPa(約60と約500psi)の間、より好ましくは約0.69と約2.76MPa(約100と約400psi)の間、さらに好ましくは約1.38と約2.07MPa(約200と約300psi)の間の弾性率などの望ましい機械特性を提供する。さらにまた、ステント移植片に使用されるゲル組成物は、典型的には低膨潤性組成物であり、また硬化時には、約0から約30%の体積変化を示す。理解されるように、上記したゲル組成物の硬化前特性及び硬化後特性は、単に例示であり、本発明の範囲を制限するべきではない。
【0035】
ステント移植片における本発明のゲル組成物は、典型的には、硬化後には、体積変化が少ないか、又は体積変化を全く示さない。1つの態様においては、ゲル組成物は、硬化及び水和後約20%未満の膨潤又は収縮をする。他の態様においては、ゲル組成物は、硬化及び水和後約10%未満の膨潤又は収縮をする。さらに他の態様においては、ゲル組成物は、硬化及び水和後約5%未満の膨潤又は収縮をする。硬化及び水和後のゲル混合物の低い体積変化は、ステント移植片材料への応用において重要である。硬化及び水和後のヒドロゲルポリマーの過剰な体積変化は、体の内腔の内部に置かれた移植材料に悪影響を及ぼしかつ哺乳動物の安全性を脅かしうる。
【0036】
ヒドロゲルポリマーは、いずれのジアミン又はその混合物からも構成されうるが、1つの態様においては、該ジアミン又はその混合物は、親水性ジアミンである。他の態様においては、ジアミンモノマーは、ポリオキシエチレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、ポリエチレングリコールジアミン、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール及びそれらの混合物からなる群から選択される。ポリグリシジルエーテル成分も、親水性であることが望ましい。1つの態様においては、該ポリグリシジルエーテル成分が、ジグリシジルエーテルとトリグリシジルエーテルの混合物である。他の態様においては、該ポリグリシジルエーテル成分が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物である。さらに他の態様においては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルは、ポリエチレングリコール(600)ジグリシジルエーテルである。さらに、該ヒドロゲルポリマーは、放射線不透過性材料を含むことが出来る。1つの態様においては、放射線不透過性材料は、ヨウ化ナトリウムである。
【0037】
1つの態様においては、該ジアミンは、ヒドロゲルポリマーの約4質量%から約20質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約15質量%から約60質量%の間の量で存在する。他の態様においては、該ジアミンは、該ポリマーの約5質量%から約15質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約25質量%から約40質量%の間の量で存在する。
さらに他の態様においては、該ジアミンは、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、該ポリグリシジルエーテルは、ポリエチレングリコールグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物であり、また該放射線不透過性の材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択される。
【0038】
塞栓組成物
上記のステント移植片の態様に加えて、本ゲル組成物は、塞栓装置としての使用のために構成することが出来る。塞栓装置は、体の内腔を経由する流れを閉塞し又は妨害する。多数の臨床的応用が、血管の体内腔及び非血管体内腔の両方の塞栓のために存在する。塞栓装置用の最も一般的な用途は、脳の動脈瘤、AVM(動静脈の先天性異常)及びAVF(動静脈の痩孔)の神経学的治療、子宮筋腫及び血管過多性の腫瘍の周辺治療を含むが、これらに限定されない。しかし、その他のうち、塞栓装置は、食道、性器尿内腔、気管支腔、胃腸内腔、肝内腔、導管、動脈瘤、水疱、中核欠損、痩孔、卵管などの種々の血管又は非血管体内腔又はオリフィスにおいても有用である。さらに、塞栓装置としてのゲル組成物を、血管内移植片、ステント、膨張可能なインプラント、繊維、コイルなどの他の部品と組み合わせて使用できることを理解するべきである。塞栓装置の他の応用は、2005年、1月7日に出願された、ワーリーらによる「体内腔を塞栓するための方法、材料及び装置」という表題の同時係属の米国特許出願第11/031311号に記載されており、その開示は参照により全てが本明細書に組み込まれる。
【0039】
塞栓組成物における応用に対して、硬化前ゲル組成物は、生体適合性がありまた該塞栓組成物が送達される環境(例えば、血液中又は他の体液中の)とは独立している制御可能な溶解性を示すことが好ましい。さらに具体的には、硬化前ゲル混合物が閉塞用部位に直接適用されるので、一つの側面において、硬化前ゲル組成物が、血液中又は他の体液中ににおいて溶解性が低くなり、また投与部位に相対的に局在化して残ることが望ましい。他の態様において、硬化前のゲル組成物が血管系を通って分散して、該ゲル組成物が硬化後に(血管過多腫瘍又はAVMなどのために)動脈系のセグメントの完全な「鋳型」を提供し、これにより、側枝潅流の展開の機会を減らすことが好ましい。典型的には、塞栓への応用における当該ヒドロゲルポリマーは、0.1Pa・sec(100cp)以上の粘度と、制御可能な疎水性と上記のゲル組成物より早い硬化速度とを持っている。
【0040】
出願人らは、塞栓への応用について、未硬化の材料の粘度と疎水性を増加させることが望ましく、これにより遠位の血管床の意図せざる塞栓を伴うことなく、制御された配置が容易になることを見出した。このことは、ゲル組成物から生理食塩水又は水を減少させるか、除去することにより達成可能である。硬化前の生理食塩水又は水の減少は、体内腔中への送達のための最適粘度を達成し、硬化したポリマーの分解抵抗性を最大にしかつゲル材料の密着性及び疎水性を最大にすることが見出された。
【0041】
ゲル組成物の低粘度処方物は、該組成物の硬化の前に、腫瘍血管床又は他の標的塞栓部位に対して、深く浸透していくために使用可能である。閉塞バルーン(スワン−ガンツ二重内腔カテーテル又はカリフォルニア州アーバイン、マイクロ・テラピューティック社製のエクィノックス(登録商標)閉塞バルーンカテーテル)、又は他の補助的に流体の流れを阻止する装置、例えばブラシ又は他の閉塞装置であってそのうちのいくつかはカテーテル又はステント上に置かれる装置、例えば塞栓される脳動脈瘤に置かれることがあるもの、を標的塞栓部位より先に該塞栓組成物が流れるのを防ぐために使用できる。
これらの組成物の高粘度及び/又はチクソトロピー(ずり減粘)処方物を、送達カテーテルの近隣へ流れを制限するために、また実質的な血流又は他の力の存在する場合でさえも、ゲル組成物が送達される部位の近くに残留する傾向を助長するために、使用可能である。粘度及び/又はチクソトロピー性は、膨化剤及び/又はチクソトロピー剤、例えばフュームドシリカを添加することにより、増加させることが出来る。ゲル組成物の形成中のいかなるときにおいても、膨化剤を添加することができるが、典型的には成分の一つと共に予め組み込んで、また好ましくは、モノマー/ポリマー又は緩衝液と共にあらかじめ組み込んでおく。
【0042】
有用な添加剤の幾つかの例は、ソルビトール又は、部分的に又は完全に水和されてチクソトロピー性の膨化剤を形成するヒュームドシリカを含むが、これらに限定されない。硬化前のゲルの望ましい粘度は、低粘度処方物(例えば血管過多腫瘍の組織に深く浸透するために使用されるもの)に対して約0.005Pa・sec(約5センチポイズ(cP))から、高粘度処方物(例えば硬化工程の間に塞栓組成物に対する流れかく乱の機会を最小限にしながら、側壁脳動脈瘤を治療するために使用されるもの)に対して約1.0Pa・sec(約1000cP)までの範囲である。理解されるように、ゲルの他の態様は、より高い粘度又はより低い粘度を持つことも出来るし、またゲル組成物は、上記した粘度に限定されるものではない。
【0043】
硬化後、塞栓組成物は、その高度な生物適合性を維持し、また血液中では安定である。硬化された塞栓組成物は、望ましい機械的特性、例えば1.15から1.4の間の比重、約0.21から約3.45MPa(約30から約500psi)の間の弾性率、約25%から約100%以上の破損歪、約0%から約200%以上の間の硬化による体積変化、及び5%未満から約60%以上までの間の含水率を提供する。1つの態様では、硬化時のゲル組成物の体積変化は、約20%より小さい。理解できるように、上記したゲル組成物の硬化前特性及び硬化後特性は、単に例であり、また本発明の塞栓組成物の範囲を制限するべきではない。本発明のゲル組成物は、所望により、他の硬化前機械特性及び硬化後機械特性を与えるように変性可能である。
【0044】
ヒドロゲルポリマーは、いかなるジアミン又はそれらの混合物でも構成できるが、一つの態様においては、ジアミン又はそれらの混合物は、親水性ジアミンである。他の態様においては、ジアミンは、疎水性ジアミンである。ポリグリシジルエーテルは、親水性でも又は疎水性であってもよい。一つの態様においては、ゲル組成物中で、親水性ジアミンは、低い水溶性の疎水性ポリグリシジルエーテルと対を成していても良い。又は、他の態様においては、ゲル組成物中で、より水溶性の親水性ポリグリシジルエーテルは、より疎水性の高いジアミンと対を成していても良い。硬化前組成物及び硬化後組成物の機械的特性を変更する目的のために、適当なジアミン及びポリグリシジルエーテル成分を選択することは、既に当業者に明白であろう。例えば、最終ゲル組成物の堅さを増加させるために、ポリグリシジルエーテル、例えば架橋剤として機能するトリグリシジルエーテルを、該組成物中に含めることが出来る。当業者もまた、形成されたゲル組成物の堅さは、モノマー成分の疎水性及び親水性バランスにより部分的に決められること、例えば、高い疎水性割合がより堅いヒドロゲルを提供することを、認識するであろう。一つの態様においては、ジアミン成分は、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、ポリオキエチレンジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。他の態様においては、ポリグリシジルエーテルは、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。他の好ましい態様においては、ゲル組成物は放射線不透過剤を含む。
【0045】
一つの態様においては、該ジアミンは、ヒドロゲルポリマーの約7質量%から約60質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約7質量%から約55質量%の間の量で存在する。他の態様において、ジアミンは、該ポリマーの約10質量%から約45質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約14質量%から約35質量%の間の量で存在する。
一つの態様においては、該ジアミンは、ヒドロゲルポリマーの約5質量%から約30質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約40質量%から約90質量%の間の量で存在する。他の態様においては、ジアミンは、該ポリマーの約50質量%から約75質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約10質量%から約20質量%の間の量で存在する。
さらに他の態様においては、該ジアミンが、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、また該ポリグリシジルエーテルが、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルとトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの混合物であり、また放射線不透過性材料が、ヨウ化ナトリウムである。
さらに他の態様においては、該ジアミンが、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとポリオキシエチレンジアミンの混合物であり、該ポリグリシジルエーテルが、ソルビトールポリグリシジルエーテルであり、また放射線不透過性材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク、ハイパーク、オムニパーク及びヘキサブリックスからなる群から選択される。
【0046】
組織膨化装置及び膨張可能な閉塞部材:
本ゲル組成物は、膨張可能な閉塞部材中で及び組織膨化装置としてインビボでの応用に対して有用である。ゲル組成物は、多数の組織膨化への応用(例えば、様々な器官又は構造物の機能を援助すること、例えば狭窄の閉鎖を支援すること(糞便失禁又は尿失禁を治療するため又は胃腸逆流炎(GERD)治療のための括約筋に対する能力の回復を含む))、形成外科又は再構築外科への応用における柔軟組織の増強(例えば、顎又は頬の再成形)、脱漏した又は退化した椎間板を置換し又は増強することにおいて、インビボにて有用である。硬化前組成物は、組織材料に直接接触させることができ、又はインビボに置かれた膨張性袋中に導入することも出来る。又は、硬化前のゲル混合物を膨張性の袋中に生体外で加え、次いで該袋を身体内に置くこともできる。
【0047】
硬化前組成物は生体適合性があり、また硬化前混合物が送達される環境(例えば、血液中又は他の体液中)とは独立している、制御可能な溶解性を示すことが好ましい。より具体的には、該硬化前組成物は、血液又は他の体液に溶解性が低く、また投与部位に相対的に局所的に置かれたままであることが望ましい。又は、いくつかの態様においては、硬化前組成物は、投与点から遠位のインビボの部位へ拡散することが望ましい。典型的には、組織膨化への応用におけるヒドロゲルポリマーは、0.1Pa・sec(100cp)又はそれ以上の粘度を持ち、また制御可能な疎水性を持っている。本発明の硬化前組成物及び硬化後組成物の溶解性を、当業者に公知の手段で変更できる(例えば、疎水性又は親水性モノマー成分の選択により)。
ゲル組成物が投与された空隙を充填しかつ空隙に一致するのに充分に長い硬化時間及び/又はゲル化工程の完了前に、医療専門家が該組成物を整形又は形成するのに充分に長い硬化時間を、好ましくはゲル組成物は有している。一つの態様においては、ゲル組成物は、投与の意図される部位に応じて、約10秒から30分の硬化時間を持っている。他の態様においては、ゲル組成物は、約30秒から約2分の間の硬化時間を持っている。
【0048】
硬化後、ゲル組成物は生体適合性を残しており、また血液中で安定である。硬化されたポリマーは望ましい機械特性、例えば約0.21から約3.45MPa(約30から約500psi)の弾性率、約25%から約100%以上の破損歪、約0%から約30%以上の間の硬化による体積変化、約60%未満の含水率を提供する。硬化した組成物の体積変化は、約15%未満が好ましく、また約10%未満がより好ましい。理解されるように、上記の塞栓への応用におけるゲル組成物の硬化前及び硬化後特性は、単に例であり、本発明のゲル組成物の範囲を制限するべきものではない。一つの態様においては、ゲル時間は、約30秒から約25分の間である。他の態様においては、ゲル時間は、約1分から約3分の間である。
【0049】
ヒドロゲルポリマーは、(一般的に上述したように)ジアミン又はその混合物から調製できる。しかし、一つの態様においては、ジアミン又はその混合物は、親水性ジアミンである。他の態様においては、該ジアミンは、疎水性ジアミンである。同様に、ポリグリシジルエーテルは、親水性又は疎水性でありうる。一つの態様においては、ゲル組成物中で、親水性ジアミンは、水溶性でかつ親水性のポリグリシジルエーテルと対を成していても良い。他の態様においては、該ジアミンが、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールである。他の態様においては、該ポリグリシジルエーテルが、ソルビトールポリグリシジルエーテルである。さらに他の態様においては、ゲル組成物は、放射線不透過性剤を含む。さらに他の態様においては、放射線不透過性剤が、オムニパーク、ビジパーク又はそれらの組み合わせである。さらに他の態様においては、該ジアミンが、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、該ポリグリシジルエーテルが、ソルビトールポリグリシジルエーテルであり、また放射線不透過性材料が、ビジパーク及びオムニパークの混合物である。
一つの態様においては、該ジアミンは、ヒドロゲルポリマーの約4質量%から約20質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約15質量%から約60質量%の間の量で存在する。他の態様において、ジアミンは、該ポリマーの約5質量%から約15質量%の間の量で存在し、また該ポリグリシジルエーテルは、ヒドロゲルポリマーの約25質量%から約40質量%の間の量で存在する。
【0050】
ポリマーヒドロゲルの調製
ゲル組成物は、ポリマーの形成に適した条件の下に、いかなる順番でも、いかなる追加のモノマー(コモノマー)及び他の添加剤と共に、モノマー成分を組み合わせて作ることができる。該反応は、適切な溶媒中で実施され、該溶媒は、該モノマー成分を溶解する任意の溶媒である。例えば、水、アルコール、例えばエタノール又はメタノール、カルボン酸アミド、例えばジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、及びそれらの混合物は、ヒドロゲルポリマーを作る反応に対して適切な溶媒である。一つの態様においては、該反応は、実質的に水性溶液、例えば塩基性水酸化ナトリウム溶液(pH=7.4)にて行われる。又は、一つの形態においては、該反応は無水状態にて実施されうる。さらに、当業者は、最終のヒドロゲル生成物の機械特性が、少なくとも次の可変要因;モノマー成分の選択、モノマー成分の比(例えば、高分子量モノマー又は低分子量モノマー)、モノマー濃度、反応媒体のpH、反応時間、及び個々のモノマー成分の添加割合を変化させることにより、変更されうることを、認識するであろう。例えば、架橋剤として機能可能なトリグリシジルエーテルを組成物に添加することにより、ゲル材料の硬度が増加することになる。
【0051】
本明細書に記載したものの内のある処方物は、重合前に個々のモノマーの放射線(電子ビーム)滅菌に耐える特性を持っている。放射線滅菌は、液体に対する唯一の広く使用されている最終滅菌の方法であり、最終滅菌の患者に対する安全性の利点は、良く知られている。例として、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとソルビトールポリグリシジルエーテルを含みかつ20mlの注射器中に収められた処方物に対して、DVmax法を用いて24KGrayの放射線量で、又は方法1を用いて18KGrayの放射線量で電子ビーム滅菌を行っても良い。該モノマーを、他の従来の液体滅菌方法、例えば濾過により、滅菌しても良い。本ゲル組成物の調製にあたり、当業者を誘導するために、以下の例中に詳細を提供する。
【0052】
II.使用法
本発明のヒドロゲル組成物は、非分解性で生物適合性のヒドロゲルポリマーの存在が望まれる、いかなる医療応用においても使用可能である。より具体的には、本発明は、その場でゲル化する特性からの恩恵を得る応用に特に適している。本ゲル組成物は、膨張性閉塞部材、管腔内移植片、組織膨化装置及び塞栓装置において、特に有用である。
本発明の1つの側面において、ゲル組成物は、インビボ環境中で、例えばポリマーステント移植片において、管腔内移植片として、米国特許第6395019号に記載されているように、ステント移植片の機械的完全性を向上するために使用することができ、該特許の全てを参照により本明細書に取り込む。該'019号特許は、モノマー成分がステント移植片のカフと経路中に添加され、それが硬化すると、最終ゲル組成物はステント移植片密封カフに対してさらなる強度を与えまた該カフと一致すると記載する。
本発明の他の側面において、ゲル組成物は組織膨化(増強)装置としても特に有用であり、例えば真皮における皮膚内又は皮下領域内での皮膚サポートの増強用、豊胸手術用、又は括約筋増強用(すなわち、失禁の回復のための)の装置として有用である。この応用においては、硬化前ゲル組成物は、体内におかれた膨張性袋に添加されうるし、又は硬化前ゲル組成物は、その後体内に置かれる生体外の膨張性袋に添加できる。
本発明の他の側面において、ゲル組成物は、インビボ環境で組織表面上で直接形成できる。本発明材料と体組織との直接接触が有利である医療応用は、限定するものではないが、穿刺又は創傷シーラントとして、また塞栓装置として含む。
【0053】
1つの側面において、種々の生物学的内腔に対する栓を形成するための塞栓装置として、ゲル組成物を使用することが出来る。該組成物は、血管及び他の体内腔、例えば卵管及び輸精管を閉塞するために、動脈瘤嚢の充填及び動脈シーラントとして使用することが出来る。血管の塞栓形成は多数の理由により有用であり、例えば血液の流れを減少させかつ例えば肝臓における腫瘍の萎縮を促進し、血液の流れを減少させかつ子宮筋腫の縮退を誘導し、血管奇形、例えばAVM及びAVFを治療し、動脈瘤嚢中の内部漏出を塞ぎ、制御できない出血を止め、かつ外科手術前に出血を遅らせるために有用である。
【0054】
送達方法
当業者に一般的に公知の送達装置を用いて、ゲル組成物をインビボの部位に送達できる。該送達装置の選択は、インビボの部位の場所及び早い硬化又は遅い硬化のどちらが望ましいかを含め、多数の因子に依存している。大抵の場合、カテーテル又は注射器を使用する。ある場合には、ヒドロゲル組成物を意図するインビボの場所に送達するために、多腔カテーテルを使用し、そこでは、該組成物の成分が、投与時まで別々の内腔中に維持される。例えば、第1の内腔中にポリグリシジルエーテルを送達し、一方ジアミン化合物は第2の内腔を経由して送達することができる。造影剤又は他のコモノマー及び/又は添加剤をインビボの部位に送達するために、第3の内腔を使用できる。
又は、ゲル組成物の成分を、多筒式注射器に添加でき、そこでは、注射器の筒は、螺旋ミキサーノズル(例えば、静的ミキサー)に嵌合される多数の尖った先端を有するコネクターに取り付けられている。組成物の成分が注射器から押し出されると、それらがノズル中で共に混合し、相対的に均一な制御された方法にて、必要とされる組織に直接適用することができる。また、ノズルがさらに針に接続されている場合には、混合された成分を直接組織中に注入できる。
注入可能な反応混合組成物を直接触診法により経皮的に注射することもでき、例えば、輸精管内に針を置き、注入された塞栓組成物を用いて該輸精管を閉塞し、このようにして患者を不妊にさせることができる。蛍光透視法、ソノグラフ、コンピュータ制御断層撮影、磁気共鳴造影、又は他のタイプの造影誘導を用いて該組成物を注入出来る。このことにより、体内の特定の器官又は他の組織領域への血管アクセス又は経皮アクセスにより、その場で形成されるヒドロゲルの設置又は注入が可能になる。
【0055】
インビボ環境において、ステント移植片に対してゲル組成物を添加できる。例えば、そのような環境でのステント移植片を膨張させる1つの方法は、次のとおりである。該移植片を患者の体の中に置いて、移植片を膨張させる時間になった後、分かれた容器を持つ滅菌キット、例えば各モノマー又はその混合物に対する注射器及びタイマーのキット中に含まれているモノマー成分は完全に混合されて硬化工程を開始する。その後、混合された内容物は注射器の1つに移され、またその注射器は自動注射器に取り付けられ、該自動注射器は、カテーテルの近接端に位置するバイオポリマー送達管に接続されているチューブに順次接続されている。適切な時間に、自動注射器のスイッチを入れて、注射器の内容物は、遠位端上で移植片上のポートに接続されているカテーテル中のチューブを経由して移動され、該移植片において該内容物が一連のカフ及び経路中に入り、移植材料を膨張させることとなる。
インビボの部位へ組成物を送達するさらなる方法は、2005年1月7日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/031311号にも記載されている。
【0056】
本発明の具体的態様を以下に列挙する。
(1)(a)第1の量のジアミンと
(b)第2の量のポリグリシジルエーテル
とを含むその場で形成されるヒドロゲルポリマー組成物であって、
(a)及び(b)の各々が、生体適合性であるその場で形成されるヒドロゲルポリマーを生成する量で、哺乳動物内又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に存在し、かつ約10秒から約30分の混合後の硬化時間を持っており、また
該ヒドロゲルポリマーの容積が、硬化及び水和後に30%未満で膨潤することを特徴とする組成物。
(2)さらに放射線不透過性の材料を含むことを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(3)前記放射線不透過性の材料が滅菌されることを特徴とする、(2)に記載の組成物。
(4)前記放射線不透過性の材料が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択されることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(5)前記ポリグリシジルエーテルが、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、p−ヒドロキシ安息香酸のグリシジルエステルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(PO)2ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(6)前記ポリグリシジルエーテルが硬化の前に滅菌されることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(7)前記ジアミンが、ポリエチレングリコール(400)ジアミン、ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択されるアミノ又はアルキルアミノ末端を有する(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選択されることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(8)前記ジアミンが、硬化の前に滅菌されることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(9)前記ジアミンが親水性であり、かつ前記ポリグリシジルエーテルが硬化の前に親水性であることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(10)前記ジアミンが親水性であり、かつ前記ポリグリシジルエーテルが硬化の前に疎水性であることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(11)前記ジアミンが疎水性であり、かつ前記ポリグリシジルエーテルが硬化の前に親水性であることを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(12)前記その場で形成されるポリマーが、哺乳動物内に又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に、管腔内移植片において、塞栓装置として、膨張可能な閉塞部材において、組織膨化装置として、存在することを特徴とする、(1)に記載の組成物。
(13)前記その場で形成されるポリマーが、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に、管腔内移植片において、存在することを特徴とする、(12)に記載の組成物。
(14)前記管腔内移植片において、前記ポリマーが
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと
(b)ポリエチレングリコールグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物
とからなることを特徴とする、(13)に記載の組成物。
(15)前記その場で形成されるポリマーが、哺乳動物内に又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に、塞栓装置において、存在することを特徴とする、(12)に記載の組成物。
(16)前記塞栓装置が、
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとポリオキシエチレンジアミンの混合物と
(b)ソルビトールポリグリシジルエーテル
とからなることを特徴とする、(15)に記載の組成物。
(17)前記塞栓装置が、
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと
(b)ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルとトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの混合物
とからなることを特徴とする、(15)に記載の組成物。
(18)前記その場で形成されるポリマーが、哺乳動物内に又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に、膨張可能な閉塞部材として、又は組織膨化装置として、存在することを特徴とする、(12)に記載の組成物。
(19)前記膨張可能な閉塞部材において、又は組織膨化装置として、前記ポリマーが、
(a)ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールと
(b)ソルビトールポリグリシジルエーテル
とからなることを特徴とする、(18)に記載の組成物。
(20)前記ジアミンが前記ポリマーの約4質量%から約20質量%の間の量で存在し、また前記ポリグリシジルエーテルが前記ポリマーの約15質量%から約60質量%の間の量で存在することを特徴とする、(2)に記載の組成物。
(21)前記ジアミンが前記ポリマーの約5質量%から約15質量%の間の量で存在し、また前記ポリグリシジルエーテルが前記ポリマーの約25質量%から約40質量%の間の量で存在することを特徴とする、(2)に記載の組成物。
(22)前記ジアミンがジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、前記ポリグリシジルエーテルがポリエチレングリコールグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物であり、また前記放射線不透過性の材料がヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択されることを特徴とする、(2)、(20)及び(21)のいずれかに記載の組成物。
(23)前記ジアミンがジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールであり、前記ポリグリシジルエーテルがソルビトールポリグリシジルエーテルであり、また前記放射線不透過性の材料がヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択されることを特徴とする、(2)、(20)及び(21)のいずれかに記載の組成物。
(24)前記ジアミンが前記ポリマーの約7質量%から約60質量%の間の量で存在し、また前記ポリグリシジルエーテルが前記ポリマーの約7質量%から約55質量%の間の量で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
(25)前記ジアミンが前記ポリマーの約10質量%から約45質量%の間の量で存在し、また前記ポリグリシジルエーテルが前記ポリマーの約14質量%から約35質量%の間の量で存在することを特徴とする、(2)に記載の組成物。
(26)前記ジアミンが前記ポリマーの約5質量%から約30質量%の間の量で存在し、また前記ポリグリシジルエーテルが前記ポリマー組成物の約40質量%から約90質量%の間の量で存在することを特徴とする、(2)に記載の組成物。
(27)前記ジアミンがジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールとポリオキシエチレンジアミンからなる群から選択され、前記ポリグリシジルエーテルがソルビトールポリグリシジルエーテルであり、また前記放射線不透過性の材料がヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸バリウム、ビジパーク320、ハイパーク、オムニパーク350及びヘキサブリックスからなる群から選択されることを特徴とする、(2)、(24)及び(25)のいずれかに記載の組成物。
(28)
(a)第1の量のジアミンを入れた容器、
(b)第2の量のポリグリシジルエーテルを入れた容器、
(c)任意にて、放射線不透過性の材料、及び
哺乳動物内にて、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中にてその場でヒドロゲルポリマーを生成するために、該容器の各々中に存在する材料を組み合わせる旨の使用説明書
とを含む、(1)から(27)のいずれかに記載のその場で形成されるヒドロゲルポリマーを調製するためのキット。
(29)(1)から(27)のいずれかに記載のヒドロゲルポリマー組成物を形成する方法であって、
(i)ジアミンとポリグリシジルエーテルを含む混合物を形成する工程、
(ii)該混合物を、哺乳動物内に、又は哺乳動物内に置かれた医療装置中に入れる工程、(iii)該混合物を硬化させ、該ヒドロゲルポリマーを形成させる工程
とを含むことを特徴とする方法。
【0057】
以下の例は、本発明のある態様(例えば、ステント移植片充填、塞栓組成物及び組織膨化組成物)を説明することを意図しており、いかなる形であっても本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0058】
使用される略語
PEGGE:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
TPTE:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル
DCA又はDCA−221:ジ−(3−アミノプロピル)ジエチレングリコール
cc:ミリリットル
DI:脱イオン水
1.5N Gly−Gly: 1.5Nグリシルグリシン緩衝液
EX−411:ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル
EX−321:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(CAS No.30499−70−8)
PBS:リン酸塩緩衝生理食塩水
【0059】
例1
次の表は、ステント移植片充填材料として、本発明の1つの側面において有用な処方物(1−7)を示している。これらの処方物は、表1中に示された特性を持つヒドロゲルポリマーを必要とする他のインビボでの応用に対する有用性を見出すことも出来る。
【表1】
【0060】
例2
次の表は、ステント移植片充填材料として、本発明の1つの側面において有用な処方物(8−15)を示している。これらの処方物は、表2中に示された特性を持つヒドロゲルポリマーを必要とする他のインビボでの応用に対する有用性を見出すことも出来る。
【表2】

【0061】
例3
次の表は、ステント移植片充填材料として、本発明の1つの側面において有用な処方物(16−24)を示している。これらの処方物は、表3中に示されたような特性を持つヒドロゲルポリマーを必要とする他のインビボでの応用に対する有用性を見出すことも出来る。
【表3】

【0062】
例4
次の表は、塞栓材料として、本発明の1つの側面において有用な処方物(EM1−EM12)を示している。これらの処方物は、表4中に示されたような特性を持つヒドロゲルポリマーを必要とする他のインビボでの応用に対する有用性を見出すことも出来る。
【表4】

【0063】
例5
処方物7を次の実験手順により調製した。
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物を単一注射器に添加する。ジ−(3−アミノプロピル)エーテルジエチレングリコールを第2の注射器に添加する。2つの注射器を、送達チューブを用いて接続し、注射器間で約20秒間、各ストローク(ほぼ1ストローク/秒)で、各回毎に注射器を完全に空にして、ピンポン混合する。20ミリリットルの注射器中に蓄えられた2ミリリットルのサンプルは、室温で約13分間で硬化する。これは、膨張可能な血管内移植片においては、インビボで13分の硬化時間に相当する。