(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.センサ>
(1−1)センサの概略構成
センサ1は、生体試料中の標的物質を検出する及び/又は定量するセンサの一例である。
センサ1は、
図1〜
図3に示すように、基板2、導電層3、試薬層4、スペーサ5、カバー6を備えている。
【0014】
(1−2)基板
基板2は、
図1及び
図2に示すように、板状の部材である。基板2は絶縁性を有する。基板2を構成する材料としては、例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ビニルポリマ、ポリイミド、ポリエステル、及びスチレニクス等の樹脂;
ガラス;並びに
セラミックス;
等が挙げられる。
【0015】
基板2の寸法は、具体的な数値に限定されない。例えば、基板2の幅は、好ましくは3〜20mm、より好ましくは5〜10mmである。また、基板2の長さは、好ましくは10〜40mmである。また、基板2の厚みは、好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは、0.1〜1mmである。基板2の幅、長さ及び厚みの全てが、上記範囲内にあることが好ましい。
【0016】
(1−3)導電層
導電層3は、
図1及び
図2に示すように、基板2上に形成されており、略均一な厚みを有する。導電層3は、3つの電極31〜33を含む。
図1に示すように、電極31〜33のそれぞれの一部分は、キャビティ51に面するように配置される。
電極32、電極31、電極33は、
図3に示すように、キャビティ51内において、キャビティ51の第1端53から第2端54に向けて、この順に配置されている。電極31は作用電極、電極32は対電極、電極33は検知電極と称されることがある。
【0017】
後述するように、生体試料が作用電極31及び検知電極33に到達すると、作用電極31と検知電極33との間の電流値が変化する。この変化から、後述の測定装置101は生体試料が点着されたことを検知し、測定を開始する。また、作用電極31と対電極32との間の電流値の変化によって、後述の測定装置101は、生体試料内の標的物質の濃度を測定することができる。
【0018】
各電極は、
導電性材料を用いた印刷等;又は
基板2を導電性材料で覆った後、レーザアブレーション等で非導電トラックを形成すること;
で形成されてもよい。例えば、基板2にパラジウムをスパッタリングすることによって導電層3を形成し、レーザアブレーションにより、非導電トラックを形成することができる。非導電トラックは、好ましくは0.01〜0.5mm、より好ましくは0.05mm〜0.3mmの幅を有する。
【0019】
なお、導電層3の構成材料は、導電性材料(導電性物質)であればよく、特に限定されるものではない。導電性材料の例としては、
金属、金属混合物、合金、金属酸化物、及び金属化合物に代表される無機導電性物質等;
炭化水素系導電性ポリマー及びヘテロ原子含有系導電性ポリマー等の有機導電性物質;又は
これらの物質の組み合わせ;
が挙げられる。導電層3の構成材料としては、パラジウム、金、白金、炭素などが好ましい。
【0020】
導電層3の厚さは、その形成方法及び構成材料により変更可能である。例えば、スパッタリングによって導電層3が形成された場合、導電層3の厚さは、好ましくは0.1〜20nmであり、より好ましくは1〜10nmである。印刷により導電層3が形成された場合、導電層3の厚さは、好ましくは0.1〜50μmであり、より好ましくは1〜30μmである。
【0021】
(1−4)試薬層
試薬層4は、
図1及び
図2に示すように、電極31〜33に接するように配されている。
試薬層4は、電極31及び32と共に、センサ1の活性部として機能する。活性部とは、電気化学的に活性な領域であって、生体試料中の特定の物質に反応し、電気信号を生じる部分である。具体的には、試薬層4は、酵素及び電子受容体を含む。
【0022】
試薬層4は、少なくとも電極31及び32(第1の電極及び第2の電極)の一部に接触するように配置されていればよい。また、試薬層4は、さらに電極33に接触するように配置されていてもよい。
試薬層4は、電子受容体及び酵素を含有する。
試薬層4における電子受容体の含有量は、センサが機能できる程度の量に設定可能であり、1回の測定当たり又はセンサ1個当たりにつき、好ましくは1〜500nmol、より好ましくは10〜200nmol程度に設定される。
【0023】
試薬層4における酵素の含有量は、標的物質の検出が可能な程度に設定され、1回の測定当たり又はセンサ1個当たりにつき、好ましくは0.2〜20U(ユニット)、より好ましくは0.5〜10U程度に設定される。
酵素としては、酸化還元酵素が好適に用いられる。酸化還元酵素は、酸化酵素及び脱水素酵素を包含する。酸化還元酵素の例として、
グルコースを基質とする酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼが好ましく;
乳酸を基質とする酵素としては、乳酸オキシダーゼ、又は乳酸デヒドロゲナーゼが好ましく、;
コレステロールを基質とする酵素としては、コレステロールエステラーゼ、又はコレステロールオキシダーゼが好ましく;
アルコールを基質とする酵素としては、アルコールオキシダーゼが好ましく;
ビリルビンを基質とする酵素としては、ビリルビンオキシダーゼが好ましく;
挙げられる。
試薬組成物は、酵素に合う補酵素を含んでもよい。
【0024】
試薬層4が基質を酸化する酵素を含む場合における、電子受容体の働きについて説明する。酵素は、基質を酸化することで、基質からの電子を受け取り、補酵素に電子を与える。その結果、補酵素は、酸化体から還元体になる。
酸化体である電子受容体は、還元体になった補酵素から電子を受け取って、補酵素を酸化体に戻す。その結果、電子受容体自身は還元体となる。還元体となった電子受容体は、電極31又は32に電子を与えて、自身は酸化体となる。このようにして、電子受容体は、酵素と電極間の電子移動を媒介する。
【0025】
上記補酵素は、酵素タンパク質(酵素分子)に結合することで、酵素タンパク質に保持されてもよい。また、補酵素は、酵素タンパク質から分離した状態で存在していてもよい。
試薬層4は、種々の方法によって形成可能である。形成方法としては、例えば印刷法、塗布法等が挙げられる。
【0026】
試薬層4の形状は、矩形状や円形状など様々に変更可能である。試薬層4の面積(基板2の平面方向における面積)は、デバイスの特性及びサイズに応じて決定される。この面積は、好ましくは1〜25mm
2、より好ましくは2〜10mm
2である。
塗布される水溶液が含む、酵素及び電子受容体並びにその他の成分の含有量は、必要とされるデバイスの特性やサイズに応じて選択される。
【0027】
(1−5)スペーサ5及びキャビティ51
スペーサ5は、
図1及び
図2に示すように、カバー6と基板2上に形成された導電層3との間に空隙を設けるための部材である。
具体的には、スペーサ5は、板状の部材であって、電極31〜33のリード部分及び後述のキャビティ51部分を除いて、導電層3の全体を覆うようになっている。スペーサ5は、電極31〜33のリード部分とは逆側の端部を露出させる切り欠きを備える。
図1及び
図3において、切り欠きは矩形である。
【0028】
スペーサ5がこの切り欠きを備えることで、スペーサ5、導電層3、及びカバー6とで囲まれたキャビティ51が形成される。このように、スペーサ5は、キャビティ51の側壁を提供し、さらにキャビティ51の長さ、幅、高さ等を規定することができる。
キャビティ51の容量は、0.05〜5.0μL(マイクロリットル)程度で、好ましくは0.1〜1.0μL(マイクロリットル)程度に設定される。スペーサ5の厚みは0.02〜0.5mm程度であり、好ましくは0.1〜0.2mm程度である。スペーサ5が備える切り欠きの長さは、好ましくは1〜5mmである。スペーサ5が備える幅は、0.25〜4mm程度であり、好ましくは0.5〜2mm程度である。
【0029】
なお、これらの寸法は、キャビティ51が所望の容量になるように適宜選択されればよい。例えば、長さが3.4mm、幅が1.2mmの切り欠きを備える厚さ0.145mmのスペーサ5を用いた場合、長さが3.4mm、幅が1.2mm、高さが0.145mm、容量が約0.6μLのキャビティ51が提供される。
キャビティ51は、センサ1の長手方向に長い形状である。キャビティ51の長手方向における2つの端を、それぞれ第1端53及び第2端54と称する。吸引口52は、第1端53に設けられる開口部であり、センサ1の外部からキャビティ51の内部に通じる。吸引口52から毛細管現象によって生体試料を吸引し、電極31〜33上に保持する。キャビティ51の形状の詳細については、後述する。
【0030】
(1−6)カバー
カバー6は、
図1及び
図2に示すように、スペーサ5全体を覆う板状の部材である。
カバー6は、表面から裏面まで貫通する孔を備える。この孔は、キャビティ51から外部に通じる通気口61として機能する。通気口61は、生体試料がキャビティ51に吸引されるとき、キャビティ51内の空気をキャビティ外へ排出するための排気孔である。
【0031】
このように空気が排出されることで、生体試料がキャビティ51内に容易に吸引されやすい。通気口61は、吸引口52から離れた位置に、つまり、吸引口52から見てキャビティ51の奥に設けられることが好ましい。吸引口52がこのように配置されることで、生体試料が、吸引口52からキャビティ51の奥まで、速やかに移動することができる。
また、通気口61は、センサ1の前記導電層に載置された試薬層4よりも奥側でかつ第2端54よりも手前側に配置されていることが好ましい。
【0032】
<2.キャビティの形状>
キャビティ51は、迂回部を有している。迂回部は、キャビティ51の内壁に設けられた凹部又は凸部を有する。
ここで、内壁とは、第1端53と第2端54との間に設けられた側壁;キャビティ51の突き当たり、つまり第2端54に設けられた奥壁;底;及び底と対向する天井;を含む。
【0033】
側壁及び奥壁はスペーサ5の厚み形状によって形成され、底は基板2の上面によって形成され、天井はカバー6の下面によって形成される。つまり、スペーサ5の切り欠きがスペーサ5の平面方向において凹部又は凸部を有するか、基板2の上面に凹部又は凸部が設けられているか、カバー6の下面に凹部又は凸部が設けられていればよい。
吸引口52に点着された生体試料は、毛細管現象によってキャビティ51内に吸引される。このとき、特にキャビティ51の内部の角部分、つまりスペーサ5とカバー6との接合部分及びスペーサ5と基板2との接合部分で、生体試料が進行しやすい。
【0034】
生体試料が側壁の縁を伝って奥壁まで先に回り込み(wicking現象)、キャビティ51の奥に配置された検知電極33に達すると、生体試料の量が充分でないにもかかわらず、生体試料が導入されたと誤検知されるおそれがある。
これに対して、本実施形態のセンサでは、迂回部が設けられていることで、生体試料の進行が迂回部によって止められるか、又は検知電極33に達するまでに係る時間が長くなる。その結果、ウィッキングに起因する誤検知が抑制されるか、生体試料が点着されてから誤検知が起きるまでの時間が引きのばされる。具体的には、誤検知が起きるまでの時間が30秒程度になればよい。これによって、ユーザが生体試料を追加で点着することができる。
【0035】
迂回部の形状は、直線的な形状であってもよく、曲線的な形状であってもよく、具体的な形状に限定されるものではない。
また、迂回部における凹部及び凸部のキャビティ51の内壁からの凹み量及び突出量は、キャビティ51の容量、吸引口52から検知電極33までの直線距離等によって異なっていてもよい。凹み量及び突出量は、キャビティ51の幅の約10%以上あることが好ましく、より好ましくは、17%以上あることが好ましい。つまり、キャビティ51の幅が1.2mmの場合には、その凹み量および突出量は、120〜500μm程度であればよい。
【0036】
以下、センサ1に適用可能な種々のキャビティの形状を例示する。なお、以下において、検知電極33以外の電極の図示は省略される。また、同様の機能を有する部材及び部分には、同符号が付され、その説明が省略される。
また、
図6〜
図16において、側壁の形状は左右対称であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、左右の側壁が異なる形状を有していてもよい。
【0037】
(1)第1形態
本実施形態のセンサでは、
図4に示すように、本形態では、スペーサ201が矩形の切り欠きを備える。左右の側壁401はいずれも平面形状であり、奥壁55も平面形状である。
この場合、底又は天井に凹部及び/又は凸部が設けられることで、キャビティ300は迂回部を備えることができる。
【0038】
(2)第2形態
本実施形態のセンサでは、
図5に示すように、本形態では、スペーサ202における切り欠きの幅が、吸引口52に近い部分では平行であり、奥壁55に近い部分では奥壁55に近づくほど広くなるように形成されている。
つまり、キャビティ302の左右の側壁402には、それぞれ、奥壁55を一辺として含む三角形状の凹部502が設けられる。吸引口52からキャビティ302の奥に向かって所定の範囲では、キャビティ302の左右の側壁402は平行であり、さらに奥に向かうほど、キャビティ302の左右の側壁402間の距離が大きくなるように形成される。
【0039】
この構成によって、吸引口52から側壁402に沿って奥壁55に到るまでの距離D1は、吸引口52から奥壁55まで(第1端53から第2端54まで)の直線距離D2よりも大きくなる。特に、D1≧1.05×D2の関係が満たされることが好ましい。
なお、D1がD2より大きいこと、及びD1≧1.05×D2の関係が満たされることが好ましいことは、
図6〜
図16においても同様である。特に、D1≧1.07×D2の関係が満たされることが好ましい。より好ましくは、D1≧1.65×D2を満たすことが好ましい。
【0040】
(3)第3形態
本実施形態のセンサでは、
図6に示すように、スペーサ203は、三角形の凹部を備える。
具体的には、キャビティ303の側壁403には、吸引口52からキャビティ302の奥に向かって、キャビティ302の左右の側壁402が平行である部分、直角に凹んだ部分、及び、奥に向かうほどキャビティ302の左右の側壁402間の距離が小さくなる部分を備えるように、左右対称に凹部503が形成される。
【0041】
図6に示すように、キャビティの内壁の直線状の部分に対する凹部の角度A1は、270度以上であることが好ましい。
これにより、ウィッキング抑制の効果を高めることができる。凹部の形状に関わらず、同様のことがいえる。
なお、凹部が楕円弧形状である場合には、キャビティの内壁の直線状の部分に対する、この直線状の部分に最も近い凹部の位置における楕円弧の接線の角度が、270度以上であることが好ましい。
ただし、
図11に示すように、凹部と凸部とを組み合わせた場合には、この角度がより小さくても、ウィッキング抑制の効果を容易に得ることができる。
【0042】
(4)第4形態
本実施形態のセンサでは、
図7に示すように、スペーサ204は、矩形の凹部を備える。
具体的には、キャビティ304の側壁404は、奥壁55を含むコの字状の凹部504を備える。
【0043】
(5)第5形態
本実施形態のセンサでは、
図8に示すように、スペーサ205は、台形状の凹部を備える。具体的には、キャビティ305の側壁405には、奥壁55を底辺に対して垂直な脚として備える凹部505が形成されている。
【0044】
(6)第6形態
本実施形態のセンサでは、
図9に示すように、スペーサ206は、楕円弧状の凹部を備える。具体的には、キャビティ306の側壁406には、奥壁55と連続して楕円弧を構成する凹部506が形成されている。
【0045】
(7)第7形態
本実施形態のセンサでは、
図10に示すように、スペーサ207は、円弧上の凹部を備える。具体的には、キャビティ307の側壁407には、平面状の奥壁55と、円弧上の側壁407と、で囲まれた凹部507が形成されている。
【0046】
(8)第8形態
本実施形態のセンサでは、
図11に示すように、スペーサ208は、三角形状の凸部を有する。具体的には、キャビティ308の側壁408には、奥壁55に近い位置に丸みを帯びた三角形状の凸部608が形成されている。凸部608が形成されることで、凸部608と奥壁55との間に、凹部508が形成されている、ともいえる。
なお、本形態に限らず、本明細書で説明される他の全てのキャビティ内壁の形状は、図上では直線的な角を有していても、実際には、角が丸みを帯びた形状に変更可能である。
【0047】
(9)第9形態
本実施形態のセンサでは、凸部の形状は、矩形や扇形であってもよいし、また、凸部の位置は、奥壁55から離れていてもよい。
図12に示すように、スペーサ209は、矩形状の凸部を有する。つまり、キャビティ309の側壁409は、矩形の凸部609を有する。凸部609は、キャビティ52の奥行き検知電極33と吸引口52との間に配置されている。凸部609が設けられることで、凸部609と奥壁55との間に凹部が形成されているともいえる。
【0048】
(10)第10形態
本実施形態のセンサでは、
図13に示すように、スペーサ210の凸部は円弧形状を有する。
具体的には、キャビティ310の側壁410は、
図12の矩形の凸部609に変えて、円弧形状を有する凸部610を有する。
【0049】
(11)第11形態
本実施形態のセンサでは、キャビティの内壁が階段状の構造を有する場合も、キャビティの内壁が凹部及び凸部を有することに含まれる。
図14に示すように、スペーサ211は、切り欠きにおいてZ字形状部分を有する。これによって、キャビティ311の側壁411は、凹部511及び凸部611を有する階段状の構造を備える。凸部611は、キャビティ311内側及び吸引口52に向かって突出し、凹部511はキャビティ311の外側及び奥壁55に向かって凹んでいる。
【0050】
(12)第12形態
本実施形態のセンサでは、凹部及び凸部の数は、2個以上であってもよい。
図15に示すように、スペーサ212の切り欠きが複数のZ字状の構造を有することで、キャビティ312は、左右の側壁412にそれぞれ3個の凸部612及び凹部512を備える。
【0051】
(13)第13形態
本実施形態のセンサでは、凹部も、
図13の凸部610と同様に、凹部も奥壁55付近に形成される必要はない。
例えば、
図16に示すように、スペーサ213は、キャビティ313の側壁413に相当する箇所で、吸引口52と検知電極33との間に、凹部513を備える。
【0052】
(14)第14形態
本実施形態のセンサでは、
図17において、センサの基板20は凸部614を備え、カバー63は凸部624を備える。
基板20とカバー63とは、凸部614と凸部624とが対向するように配置される。すなわち、キャビティ314は、天井64と底21とに上下対象に凸部624及び凸部614を有する。凸部624及び凸部614は、検知電極33と吸引口52との間に配置される。なお、凸部624と凸部614とは、上下対称な位置に配置される必要はなく、これらの位置は変更可能である。
【0053】
凸部に代えて、又は凸部と共に、天井64および底21の少なくとも一方に、凹部が形成されていてもよい。
スペーサ214は、上述した種々の凹部又は凸部を備えてもよいし、平坦な切り欠きを備えていてもよい。すなわち、凹部及び/又は凸部が形成された天井および底と、凹部及び/又は凸部が形成された側壁とは、組み合わせ可能である。
【0054】
(15)第15形態
本実施形態のセンサでは、
図18に示すように、サイドフィル型のセンサのキャビティにも、上述した迂回部が適用可能である。
図18に示すサイドフィル型のセンサでは、キャビティ315の長手方向がセンサの短手方向に平行であり、吸引口52がセンサの短手方向における端部に設けられている。
検知電極33は、吸引口52から見てキャビティ315の奥に配置される。スペーサ215に凹部が形成されていることで、キャビティ315の奥には、側壁に左右対称に凹部が設けられる。
【0055】
(16)第16形態
本実施形態のセンサでは、
図19に示すように、サイドフィル型のセンサは、2個の吸引口52を備えてもよい。すなわち、キャビティ316は、その両端に吸引口52を備える。キャビティ316の中央には作用電極31及び対電極32を備える。2個の吸引口52の近傍にはそれぞれ検知電極33が設けられる。どちらの吸引口52に試料が点着されても、逆側の吸引口52に試料が達することで、試料の吸引が検知される。
図19においては、スペーサ216が凹部を備えることで、キャビティ316の側壁が、長手方向中央付近において、左右対称に設けられた2個の矩形の凹部516を有する。
【0056】
(17)その他
以上の説明から分かるように、キャビティの内壁が凸部を有する構成は、凹部を有する構成と言い換えられる。逆も同様であり、凹部を有する構成は、凸部を有する構成と言い換えられる。ただし、吸引口52におけるキャビティの内部の幅よりも、向かい合う内壁間の距離が大きいときは凹部、小さいときは凸部が形成されている、と解釈することもできる。
【0057】
ウィッキングはキャビティ内の角(側壁と天井、側壁と底等の間の角)で置き易いので、凹部及び凸部は、キャビティ内の角に達するように設けられていることが好ましい。ただし、試薬層4に生体試料が染み込むことによる誤検知等については、キャビティ内の平坦な部分に設けられた凹部又は凸部によっても抑制することができる。
迂回部である凹部及び凸部は、例えばスペーサをレーザで加工することによって形成可能である。また、カバー及び基板には、例えば樹脂を滴下および硬化させことや、エッチング等の手法によって、迂回部を形成することができる。
【0058】
<3.センサシステム>
上述のセンサ1は、
図20に示すセンサシステム100で用いられる。センサシステム100は、センサ1及び測定装置101を有する。
図20及び
図21に示すように、測定装置101は、表示部102、装着部103、切替回路107、基準電圧源108、電流/電圧変換回路109、A/D変換回路110、演算部111、操作部113及び電源部112を備える。測定装置101は、さらに、センサ1の各電極に対応するコネクタを有する。
図21には、前記装着部103内に設けられているコネクタ104〜106が描かれている。
【0059】
表示部102は、測定装置101の状態、測定結果、操作内容等を表示する。表示部102は、具体的には液晶表示パネルによって実現される。
図20に示すように、装着部103には、センサ1が着脱可能に挿入される。
図21に示すように、コネクタ104〜106は、センサ1が装着部103に装着されることで、それぞれセンサ1の電極31〜33に接続される。
【0060】
切替回路107は、コネクタ104〜106を、基準電圧源108に接続することも、電流/電圧変換回路109に接続することもできる。
基準電圧源108は、コネクタ104〜106を介して、電極31〜33に電圧を印加する。
電流/電圧変換回路109は、センサ1からの電流を、コネクタ104〜106を介して受け取り、電圧に変換して、A/D変換回路110に出力する。
【0061】
A/D変換回路110は、電流/電圧変換回路109からの出力である電圧値(アナログ値)をデジタル値に変換する。
演算部111は、CPU(Central Processing Unit)並びにROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記録媒体を有する。演算部111は、標的物質の濃度を算出するとともに、測定装置101内の各部の動作を制御する。
【0062】
演算部111の濃度算出機能について説明する。演算部111の記憶媒体中には、試料中の標的物質の濃度の決定に用いられる換算テーブル、この濃度の補正量の決定に用いられる補正量テーブル等が記憶される。演算部111は、A/D変換回路110からのパルスに基づいて、換算テーブルを参照することにより、標的物質の仮の濃度を算出する。演算部111は、さらに、補正量テーブル中の補正量を用いて、標的物質の最終的な濃度を決定する。こうして算出された濃度は、表示部102に表示される。
【0063】
また、演算部111は、濃度算出機能以外に、切替回路107の切替制御、基準電圧源108の電圧制御、濃度測定や補正量選択時の時間の測定(タイマ機能)、表示部102への表示データ出力、及び外部機器との通信機能等を有する。
演算部111の各種機能は、CPUが、図示しないROM等に格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0064】
操作部113は、測定装置101の表面部に設けられる。操作部113は、使用者が測定データや設定データを参照する時などに使用する操作ボタンなどから構成される。
電源部112は、上記の各電気回路、表示部、演算部などへ電源を供給する電池等から構成される。
【0065】
<4.センサシステムの使用>
以下、センサシステム100による濃度測定について説明する。
センサ1が装着部103に差し込まれると、コネクタ104〜106が、電極31〜33にそれぞれ接続される。また、センサ1が装着部103へ装着されることによって、装着部103内のスイッチ(図示せず)が押下される。押下されることでスイッチがONとなり、演算部111はセンサ1が装着されたと判断し、測定装置101を試料待機状態とする。試料待機状態とは、演算部111の制御の下、基準電圧源108がコネクタ104及び106を介して、作用電極31及び検知電極33間への電圧印加を開始し、かつ電流/電圧変換回路109が電流測定を開始した後であって、生体試料がまだ測定に供されていない状態である。
【0066】
使用者が、センサ1の吸引口52に生体試料を点着させると、毛細管現象によって、吸引口52からキャビティ51に生体試料が引き込まれる。
試料としては、例えば、血液、汗、尿等の生体由来の生体試料等が用いられる。例えば、センサ1を血糖値センサとして用いる場合、使用者は、自身の指、掌、又は腕等を穿刺して、少量の血液を搾り出し、この血液を生体試料として、センサ1での測定に供する。
【0067】
生体試料が作用電極31及び検知電極33に到達すると、演算部111が、電流/電圧変換回路109を介して受け取る電流値が変化する。この変化から、演算部111は、生体試料がセンサ1に正しく吸引されたと判断する。こうして生体試料の吸引が検知されることにより、測定が開始される。
検知電極33での検知ができない場合、演算部111の制御により、表示部102に生体試料をさらに点着するように促すエラーメッセージが表示される。上述したように、センサ1のキャビティが迂回部を有することで、検知電極33による誤検知が起きる前に、ユーザが生体試料を追加する時間(30秒程度)が確保される。
【0068】
センサ1内では、生体試料中に試薬層4中の酵素及び電子受容体等の成分が溶解する。こうして、センサ1の電極31及び32上で、生体試料、酵素、及び電子受容体が互いに接触する。
演算部111の制御により、切替回路107は、コネクタ104とコネクタ105とを基準電圧源108及び電流/電圧変換回路109に接続する。こうして、作用電極31と対電極32との間に電圧が印加され、作用電極31と対電極32との間に生じた電流が、電流/電圧変換回路109に伝達される。
【0069】
電流/電圧変換回路109へ流れた電流は電圧へ変換される。そして、この電圧はA/D変換回路110によりさらにデジタル値へと変換される。演算部111は、このデジタル値から、特定成分の濃度を算出する。演算部111により算出された値は、表示部102に表示される。その際、使用者へのその他の情報が共に表示することができる。
測定終了後は、使用者はセンサ1を装着部103から取り外すことができる。
【0070】
なお、基準電圧源108は、2つの電極31及び32間に、目的の電気化学反応を起こすのに十分な電圧を与えられるようになっている。この電圧は主に、利用する化学反応および電極に応じて設定される。