特許第5953302号(P5953302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953302腎臓神経切除用の複数の可撓性を備えたワイヤの高周波電極
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953302
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】腎臓神経切除用の複数の可撓性を備えたワイヤの高周波電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-521867(P2013-521867)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-532552(P2013-532552A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】US2011045152
(87)【国際公開番号】WO2012015722
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月23日
(31)【優先権主張番号】61/418,667
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/369,458
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/184,677
(32)【優先日】2011年7月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヘイバーコスト、パトリック エイ.
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/105121(WO,A2)
【文献】 特表2001−515752(JP,A)
【文献】 特表2001−509415(JP,A)
【文献】 特表2003−531667(JP,A)
【文献】 特表2009−500052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 ― 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースであって、ルーメンと、経皮的なアクセス位置に対して患者の体内の目的の血管にアクセスするために十分な軸長さとを有する、前記シースと、
カテーテルであって、可撓性を備えた軸体を含み、この軸体は、基端部、先端部、および経皮的なアクセス位置に対して前記患者の腎動脈である目的の血管にアクセスするために十分な軸長さを有し、該軸体は、シースのルーメン内を移動可能であるとともにシースの先端チップを超えて延伸可能である、前記カテーテルと、
前記軸体の先端部の長手方向に沿ってそれぞれ相互に構造的に独立して取り付けられる複数の長尺状をなす弾性部材であって、同弾性部材は長手方向に間隔を置いた複数の位置において軸体と係合し、長手方向に間隔を置いた係合位置間に形成された領域において軸体から径方向に拡張可能である、前記長尺状をなす弾性部材と、
径方向に拡張可能な領域にて弾性部材の各々に取り付けられる1つ以上の切除電極と、
前記1つ以上の電極に電気的に連結されるとともに、カテーテルの軸体に沿って延びる複数の導電体とを備え、
前記長尺状をなす弾性部材は、シースのルーメン内に包含されたときに折り畳み可能であり、前記長尺状をなす弾性部材は、前記カテーテルおよび弾性部材がシースの先端チップを超えて軸方向に延伸したときに、長手方向に間隔をおく係合位置間に形成される領域において軸体から径方向外方に拡張可能であり、
前記長尺状をなす弾性部材の基端部は、前記カテーテルの軸体に対して移動可能であり、
前記電極は、前記カテーテルの軸体の周囲に配置され、前記カテーテルおよび弾性部材が軸方向にシースの先端チップを越えて延伸される場合に、目的の血管の壁に螺旋状の患部を形成することを促進することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、カテーテルの軸体の周囲に配置され、これにより電極を目的の血管の壁の異なる位置に配置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弾性部材はバスケットまたは網構造体に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記弾性部材は拡張可能な湾曲部やループを形成するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、同弾性部材を目的の血管組織における変化に適応するために屈曲させる可撓性を備えた電気的導電材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電極の各々は、組織置換チップを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記組織置換チップは、前記目的の血管の内側壁の組織を所定深さまで前記目的の血管の外側壁に対して移動させるが、目的の血管の少なくとも外側壁を貫通しないように構成されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電極は、前記目的の血管の複数の異なる切除領域を生成するべく個別に駆動可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、カテーテルおよび弾性部材が軸方向にシースの先端チップを越えて延伸される場合に弾性部材を自己拡張させるのに十分な弾性力を弾性部材に生じる材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記弾性部材は、同弾性部材に付与される拡張および収縮制御力に応じて弾性部材の拡張および収縮を促進する可撓性を備えた材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極間の弾性部材の一部は、電気的絶縁体によって覆われることを特徴とする請求項1に記載の装置
【請求項12】
記1つ以上の切除電極は、前記カテーテルおよび弾性部材が軸方向にシースの先端チップを超えて延伸される場合に、腎動脈に隣接する血管周囲の腎臓の神経組織を除去するように構成されることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、血管の内部から体の目的の組織を切除するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実施形態は、目的の組織内、特に血管の内側壁に沿った不規則部位への電極の改良した設置のための、複数の可撓性を備えたワイヤの、電極を使用する高周波AC(例えば高周波(RF))切除カテーテル、システムおよび方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここに開示される様々な実施形態は、高血圧の治療等のために血管周囲の腎臓の神経を除去するための装置および方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態によれば、切除治療を施すための装置は、ルーメン、および経皮的なアクセス位置に対して患者の体内の目的の血管にアクセスするために十分な軸体の長さを有するシースを含む。カテーテルは、可撓性を備えた軸体を含み、この軸体は、基端部、先端部、および経皮的なアクセス位置に対して目的の血管にアクセスするために十分な軸長さを有する。軸体はシースのルーメン内において変位するように寸法が定められるとともにシースの先端チップを越えて延伸可能である。
【0005】
装置は、軸体の先端部の長手方向の部分に沿って各々相互に構造的に独立して取り付けられた複数の長尺状をなす弾性部材を含む。弾性部材は複数の長手方向に間隔を置いた位置において軸体と係合し、長手方向に間隔を置いた係合位置間に形成された領域において軸体から径方向に拡張可能である。1つ以上の電極が径方向に拡張可能な領域にて弾性部材の各々に取り付けられる。複数の導電体が、電極に電気的に連結されるとともにカテーテルの軸体に沿って延びる。シースのルーメン内に包含された場合に、長尺状をなす弾性部材は、折り畳み可能である。また、カテーテルおよび弾性部材がシースの先端チップを超えて軸方向に延伸した場合に、弾性部材は長手方向に間隔をおく係合位置間に形成される領域において軸体から径方向外方に拡張可能である。
【0006】
所定の実施形態によれば、装置は、ルーメン、および経皮的なアクセス位置に対して患者の腎動脈にアクセスするために十分な長さを有するシースを含む。カテーテルは、可撓性を備えた軸体を含み、この軸体は、基端部、先端部、および経皮的なアクセス位置に対して患者の腎動脈にアクセスするために十分な軸長さを有する。軸体はシースのルーメン内において変位するように寸法が定められるとともにシースの先端チップを越えて延伸可能である。
【0007】
装置は、軸体の先端部の長手方向の部分に沿って各々相互に構造的に独立して取り付けられた複数の長尺状をなす弾性部材を含む。弾性部材は複数の長手方向に間隔を置いた位置において軸体と係合し、長手方向に間隔を置いた係合位置間に形成された領域において軸体から径方向に拡張可能である。1つ以上の電極が径方向に拡張可能な領域にて弾性部材の各々に取り付けられる。複数の導電体が、電極に電気的に連結されるとともにカテーテルの軸体に沿って延びる。シースのルーメン内に包含された場合に、長尺状をなす弾性部材は、折り畳み可能である。また、カテーテルおよび弾性部材がシースの先端チップを超えて軸方向に延伸した場合に、弾性部材は長手方向に間隔をおく係合位置間に形成される領域において軸体から外方に径方向に拡張可能である。
【0008】
これらおよび他の特徴は、後述する詳細な説明および添付の図面を考慮して理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】右腎、並びに腹大動脈から横断方向に分岐する腎動脈を含む腎血管系を示す図。
図2A】腎動脈の交感神経支配を示す図。
図2B】腎動脈の交感神経支配を示す図。
図3A】腎動脈の壁の様々な組織層を示す図。
図3B】腎臓部の神経の一部を示す図。
図3C】腎臓部の神経の一部を示す図。
図4A】様々な実施形態による体の血管の目的の組織を除去するための装置を示す図。
図4B】様々な実施形態による体の血管の目的の組織を除去するための装置を示す図。
図4C】シースのルーメンまたは目的の血管内に包含されたときの、折り畳まれた形態の除去治療要素の長尺状をなす弾性部材を示す図。
図5】開示されるロープロファイルの実施形態によるワイヤセグメント構造体および回収機構を支持するカテーテル軸体の先端部を示す図。
図6】開示されるロープロファイルの実施形態によるワイヤセグメント構造体および回収機構を支持するカテーテル軸体の先端部を示す図。
図7】様々な実施形態によるワイヤセグメント構造体に支持されるとともに組織を置換する要素を有する複数の電極を含むカテーテルを示す図。
図8】様々な実施形態によるワイヤセグメント構造体に支持されるとともに組織を置換する要素を有する複数の電極を含むカテーテルを示す図。
図9】様々な実施形態によるワイヤセグメント構造体の制御可能な拡張および回収を促進する構造体を示す図。
図10】様々な実施形態によるワイヤセグメント構造体の制御可能な拡張および回収を促進する構造体を示す図。
図11】様々な実施形態による絶縁スリーブやコーティングを有する弾性部材を示す図。
図12】様々な実施形態による互いに対して構造的に協働する構造体に取り付けられる複数の弾性部材を含む切除治療要素を示す図。
図13】様々な実施形態による互いに対して構造的に協働する構造体に取り付けられる複数の弾性部材を含む切除治療要素を示す図。
図14】様々な実施形態による互いに対して構造的に協働する構造体に取り付けられる複数の弾性部材を含む切除治療要素を示す図。
図15】様々な実施形態による互いに対して構造的に協働する構造体に取り付けられる複数の弾性部材を含む切除治療要素を示す図。
図16】様々な実施形態による代表的な高周波腎治療装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに開示される実施形態は、血管の内部から体の目的の組織を切除するための装置および方法に関する。ここに開示される実施形態は、高血圧の治療のために腎動脈内から血管周囲の腎臓の神経を除去するための装置および方法に関する。ここに開示される実施形態は、腎臓部の神経切除を行うための複数の電極を支持するワイヤセグメント構造体を含む。
【0011】
血管周囲の腎臓の神経の切除において動脈壁と好適に接触することは困難であった。接触が可変である場合に、組織温度は好適には制御されず、目的の部位において切除温度に到達し得ない。また、動脈壁の部分のような他の領域の温度は、望まれない主要な組織傷害を引き起こすために十分に逸脱する。理想的な組織においては、より容易に好適に血管配置が可能であるが、特に、屈折しているか病気の腎動脈においては、除去装置から組織に効果的に予期されるように電流を受け渡すために、接触不良が生じ得る。複数の個別の領域における制御された切除が、複数の再配置サイクルおよび切除サイクルを必要とすることなく動脈損傷を低減するために望ましい。神経切除および他の治療のための改善された血管壁接触よび複数部位の切除が継続して要求されている。
【0012】
ここに開示される様々な実施形態は、高血圧の治療のために血管周囲の腎臓の神経を、複数部位の高周波により除去するための装置および方法に関する。様々な実施形態によって、血管内のカテーテル装置は、ロープロファイルの導入形態と大径の配備された形態との間を遷移する先端部近傍に複数のワイヤセグメントを有する。1つ以上の高周波電極が個別のワイヤセグメントに取り付けられる。ワイヤセグメントは個別の位置に高周波電極を配置するために、拡張可能な湾曲部、ループ、網や、バスケット、あるいは他の構造体を備える。
【0013】
ワイヤセグメント構造体が配備される場合に、それらは変化する血管組織を収容するべく屈曲する。ワイヤセグメントがそれぞれ組織に要求される大きさだけ拡張するように、固定されたバスケット構造体のように連結されるか、独立して設けられる。ワイヤセグメントの配備により、血管壁と好適に接触する高周波電極が配置される。
【0014】
カテーテル装置は前進され、腎臓の神経を除去するために腎動脈において配備することができる。外部エネルギー源からカテーテルに沿った絶縁導電体を介して動力を供給されることにより所定の高周波電極あるいは組み合わせを駆動することによって、複数の個別の高周波切除領域が得られる。配備は自己拡張弾性力、押圧または張引制御構造体、外部保持および再捕捉シース、並びに他の連結体および構造体を使用可能である。外部シースは配置および回収時にカテーテルの先端部においてワイヤセグメントを保護し抑制するために使用することができる。
【0015】
様々な実施形態によって、血管内のカテーテル装置は、ロープロファイルの導入形態と大径の配備された形態との間を遷移する先端部近傍に複数のワイヤセグメントを有する。1つ以上の高周波電極が個別のワイヤセグメントに取り付けられる。ワイヤセグメントは個別の位置に高周波電極を配置するために、拡張可能な湾曲部、ループ、網や、バスケット、あるいは他の構造体を備える。ワイヤセグメント構造体が配備される場合に、それらは変化する血管組織を収容するべく屈曲する。
【0016】
一構造体において、ワイヤセグメントは他のワイヤから独立し、これによりワイヤセグメントはそれぞれ組織に要求される大きさだけ拡張する。ワイヤセグメントは絶縁され、外部高周波制御装置と電極との間の導電体として機能する。外部エネルギー源からカテーテルに沿った絶縁導電体を介して動力を供給されることにより所定の高周波電極あるいは組み合わせを駆動することによって、複数の個別の高周波切除領域が得られる。配備は自己拡張弾性力、押圧または張引制御構造体、外部保持および再捕捉シース、並びに他の連結体および構造体を使用可能である。
【0017】
ワイヤセグメントの配備により、血管壁と好適に接触する高周波電極が配置される。外部シースは配置および回収時にカテーテルの先端部においてワイヤセグメントを保護し抑制するために使用することができる。カテーテル装置は前進され、腎臓の神経を除去するために腎動脈において配備することができる。腎動脈内にカテーテルの先端部を位置決めした後に、シースはワイヤセグメントを配備し拡張させるべく回収される。
【0018】
別例において、ワイヤセグメントは、特にマッピングカテーテルと同様に、固定されるバスケット構造体のように連結することができる。いくつかあるいはすべての電極が、同時に動力を付与されることにより、あるいは、個別の電極や電極の一部が動力を付与されることにより、血管周囲の神経の1つ以上の領域が除去される。変形例は、ワイヤセグメントおよび電極の数、周辺の位置、および軸の位置を含む。ワイヤセグメントは螺旋状またはその他の湾曲部を有する。ワイヤセグメントはループとして構成されてもよい。
【0019】
ワイヤの基端部は配備を補助するために押圧されるか張引される。ワイヤセグメントの先端部はカテーテルに取り付けられる。ルーメンセグメントや摺動取り付け点が設けられ、ワイヤを制御するが、配備動作は可能とする。
【0020】
電極を備えた複数のワイヤセグメントがワイヤセグメントのプッシュ・プル式の配備によりカテーテルに組み込まれる。電極は、電極と外側動脈壁に隣接する神経が分布した目的の組織との間を分離する距離を好適に短縮するように、外側動脈壁に内側動脈壁の組織を置換するような形状に形成可能である。電極は、様々な実施形態によれば、内側動脈壁や外側動脈壁を貫通することなく外側動脈壁に強制的に内側動脈壁を押し込む(これにより介在する動脈壁組織を圧縮する)径を有する組織置換チップを含む。いくつかの実施形態において、電極チップに内側動脈壁を貫通させることは望ましいが、外側動脈壁を貫通させることは望ましくない。外部シースは前進および回収時にワイヤと電極とを覆うことに使用することができる。
【0021】
熱電対のような1つ以上の温度センサが、電極の温度を測定するために電極の部位に設けられる。いくつかの実施形態において、温度センサは、切除電極構造体の個別の電極位置において正確に温度測定できるように各電極の部位の近傍に配置される。
【0022】
ここに開示される様々な実施形態は、高血圧の治療のための腎臓の除神経のための装置および方法に関する。高血圧は血圧が上がった慢性の病状である。持続性高血圧は、心臓発作、心不全、動脈瘤および卒中を含む、様々な悪い病状に関連した重要な危険要因である。持続性高血圧は慢性腎不全の主要原因である。腎臓に機能する交感神経系の過活動は、高血圧とその進行に関係する。腎臓の除神経による腎臓における神経の不活性化によって、血圧を下げることができ、これは、従来技術による薬に反応しない高血圧の多くの患者に対する実行可能な治療選択肢である。
【0023】
腎臓は、血液濾過、体液平衡の調整、血圧制御、電解質平衡およびホルモン生産を含む多くの生体プロセスにおいて機能する。腎臓の1つの主要な機能は、尿を形成するために血液から毒素、ミネラル塩および水分を取り除くことにある。腎臓は、心送血量の約20乃至25%を受容する。心臓の血液は、腹大動脈から左右に分岐する腎動脈を通過し、腎臓の凹状面、すなわち腎門にて各腎臓に進入する。
【0024】
血液は、腎動脈と糸球体輸入細動脈を通過して腎臓に流れ込み、腎臓のろ過部分、すなわち腎小体に進入する。腎小体は、ボーマン嚢と呼ばれる液体で満たされた、カップ状の嚢に囲まれた糸球体、すなわち毛細管の茂みから構成される。血液中の溶質は、毛細管中の血液とボーマン嚢内の流体との間に存在する圧力勾配により糸球体の非常に細い毛状の壁を通してろ過される。圧力勾配は細動脈の収縮や膨脹によって制御される。ろ過が生じた後に、ろ過された血液は、糸球体輸出細動脈と尿細管周囲毛細血管とを通過し、小葉間静脈に集中し、最終的に腎静脈を通過して腎臓から出る。
【0025】
血液からろ過された粒子および流体は、ボーマン嚢から複数の細管を通過して収集管に移動する。尿は収集管にて形成され、続いて尿管および膀胱を通過して出る。細管は尿細管周囲毛細血管(ろ過された血液を含む)に包囲される。ろ液が細管を通って、収集管に移動すると、栄養素、水、並びにナトリウムおよび塩化物のような電解質が血液に再吸収される。
【0026】
神経は、主として大動脈腎神経節から出る腎神経叢によって腎臓に分布する。神経が腎動脈の進路に沿って腎臓内へ続くため、腎神経節は腎神経叢の神経によって形成される。腎臓の神経は、交感神経・副交感神経の要素を含む自律神経系の一部である。交感神経系は体に「攻撃・逃避」反応を指令する神経系として周知であり、副交感神経系は「休息・消化」反応を指令する神経系として周知である。交感神経活動の刺激により、腎臓の血管収縮と体液鬱滞を高めるホルモンの生産を拡大させる交感神経反応が引き起こされる。この工程は、高められた腎臓の交感神経活動に対するレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)反応と呼ばれる。
【0027】
血液量の低減に応じて、腎臓はレニンを分泌し、これによりアンギオテンシンの生産が刺激される。アンギオテンシンは血管を収縮させ、これにより血圧を上昇させ、また、副腎皮質からのホルモン・アルドステロンの分泌を更に刺激する。アルドステロンにより、腎臓の細管はナトリウムと水の再吸収が高められ、これにより体内の流体の量と血圧が高められる。
【0028】
鬱血性心不全(CHF)は腎臓機能に関係する症状である。CHFは、心臓が体全体にわたって血液を効果的に拍出することができない場合に生じる。血流が下がると、腎機能は、腎小体内の血液の不十分な潅流のために落ちる。腎臓への血流が減少すると、腎臓に体液鬱滞および血管狭窄(vasorestriction)を高めるホルモンを分泌させる交感神経活動(すなわち、RAASが過活性化される)の上昇が引き起こされる。体液鬱滞と血管狭窄(vasorestriction)により、続いて循環系の抹消抵抗が拡大され、心臓に更により大きな負荷がかかり、これにより血流が更に低減される。心臓・腎臓の機能の劣化が継続すると、最終的に体は圧倒され、心不全代償不全が生じ、患者の入院に至る。
【0029】
図1は、右腎10、並びに腹大動脈20から横断方向に分岐する腎動脈12を含む腎血管系を示す図である。図1において、右腎10のみが説明を簡略化するべく示されるが、ここでは右腎および左腎の両者、並びに関連する腎血管系および神経系組織に言及され、そのすべてがここに開示される実施形態の明細書内にて考慮される。腎動脈12は、ここに開示される様々な特徴および実施形態を容易に説明するべく右腎10および腹大動脈20に対して意図的に不均衡に大きく示される。
【0030】
右腎および左腎には、腹大動脈20の左右両側面から分岐する右腎および左腎動脈からの血液が供給される。右腎および左腎動脈の各々は腹大動脈20に対してほぼ直角をなすように隔膜の脚を横断して配向される。右腎動脈および左腎動脈は、腹大動脈20から腎臓の門17の近傍のそれぞれの腎洞まで通常延在し、腎臓10内の分節動脈、続いて葉間動脈に分岐する。葉間動脈は、腎被膜を貫通し、腎錐体間の腎柱を延在し、外方へ放射する。通常、腎臓は、心拍出量の合計の約20%を受容し、これは正常人において血流が毎分約1200mL腎臓を通過することを示す。
【0031】
腎臓の主要な機能は、尿の生成および集中の制御により体内の水分および電解質の平衡を保持することにある。尿を生成する際に、腎臓は、尿素とアンモニア塩基のような廃棄物を排出する。腎臓は、更にグルコースとアミノ酸の再吸収を制御し、また、ビタミンD、レニンおよびエリトロポイエチンを含むホルモンの生産において重要である。
【0032】
腎臓の重要な二次的な機能は、体の代謝恒常性を制御することにある。止血機能の制御は、電解質、酸塩基平衡および血圧の制御を含む。例えば、腎臓は、尿において失われる水分の量を調整し、エリトロポイエチンとレニン等を解放することによって、血液量および血圧を規制するべく機能する。腎臓は、更に尿において失われた量およびカルシトリオールの合成を制御することによって、プラズマ・イオン濃度(例えばナトリウム、カリウム、塩化物イオンおよびカルシウムイオンレベル)を規制する。腎臓によって制御される他の止血機能は、尿における水素および重炭酸イオンの損失を制御し、それらの排出を防止することにより貴重な栄養素を蓄え、肝臓による解毒を補助することによって、血液pHを安定化させることを含む。
【0033】
図1に通常右副腎と呼ばれる右側の腎上体11を更に示す。腎上体11は、腎臓10に載置される星形の内分泌腺である。腎上体(左右)の主要な機能は、コルチゾールおよびアドレナリン(エピネフリン)をそれぞれ含む副腎皮質ステロイドとカテコールアミンの合成を通じて体のストレス反応を規制することにある。腎臓10、腎上体11、腎血管12、および隣接する脂肪被膜は、腎筋膜、例えばゲロタ筋膜(図示しない)によって包囲され、これは腹膜外の結合組織に由来する筋膜の小袋である。
【0034】
体の自律神経系は、血管における平滑筋、消化器系、心臓および腺の不随意運動を制御する。自律神経系は交感神経と副交感神経系に分かれる。一般的に用語、副交感神経系は、心拍数を引き下げ、血圧を低下させ、消化を刺激することにより、体の休息の準備をする。交感神経系は血圧を上げ、心拍数を高め、新陳代謝を高めることにより、攻撃・逃避反応を引き起こす。
【0035】
自律神経系において、中枢神経系に由来し、様々な神経中枢に延びる繊維は、神経節前線維と呼ばれ、神経節から効果器官に延びる繊維は節後線維と呼ばれる。交感神経系の活性化は、アドレナリン(エピネフリン)の解放により、また、より小さい範囲に腎上体11からのノルエピネフリンの解放により影響を付与される。アドレナリンのこの解放は節前交感神経から解放される神経伝達物質アセチルコリンが引き金となって生じる。
【0036】
神経は腎臓の神経14によって腎臓および尿管(図示しない)に分布する。図1図2A、および図2Bは、腎血管系の交感神経分布、主として腎動脈12の神経分布を示す。腎血管系の交感神経分布の主要な機能は、腎血流および血圧の規制、レニン遊離の刺激、並びに水分およびナトリウムイオン再吸収の直接的な刺激を含む。
【0037】
腎血管系に神経を分布させるほとんどの神経は上腸間膜動脈神経節26に由来する交感神経の節後線維である。腎臓の神経14は、腎動脈12に沿って通常軸方向に延び、門17にて腎臓10に進入し、腎臓10内の腎動脈12の分岐に従い、個々のネフロンに延びる。腎神経節24、上腸間膜動脈神経節26、左右の大動脈腎動脈神経節22および腹腔神経節28のような他の腎神経節は、更に腎血管系に神経を分布させる。腹腔神経節28はより大きな胸内臓神経(より大きなTSN)によって連結される。大動脈腎動脈神経節26はより小さな胸内臓神経(より小さなTSN)によって連結され、腎神経叢の大部分に神経を分布させる。
【0038】
腎臓10への交感神経の信号は、主として脊髄分節T10乃至T12およびL1に由来する、神経が分布した腎血管系により伝達される。副交感神経の信号は、主として脊髄分節S2乃至S4に、および脳下部の延髄に由来する。交感神経交通は幹神経節を通過し、ここで、いくつかはシナプス結合し、他のものは、大動脈腎神経節22(より小さな胸内臓神経、すなわちより小さなTSNを介した)および腎神経節24(最小の胸内臓神経、すなわち最小のTSNを介した)においてシナプス結合する。シナプス後部の交感神経の信号は、続いて腎動脈12の神経14に沿って腎臓10に移動する。腎臓10にて、あるいは腎臓10の近傍にてシナプス結合するに先だって、シナプス前部の副交感神経の信号は腎臓10の近傍の部位に移動する。
【0039】
特に図2Aを参照して、腎動脈12は、ほとんどの動脈および小動脈と同様に、腎動脈ルーメン13の径を制御する平滑筋34により覆われる。平滑筋は、通常様々な器官と同様に大小の動脈および静脈の媒体層内に視認される不随意の横紋がない筋肉である。腎臓の糸球体は、例えば、メサンギウム細胞と呼ばれる平滑筋状の細胞を含む。平滑筋は、構造、機能、興奮収縮連関、および収縮の機構の点から骨格筋および心筋とは基本的に異なる。
【0040】
平滑筋細胞は自律神経系によって収縮するか弛緩するために刺激されてもよいが、近隣の細胞からの刺激、並びにホルモンおよび血液が輸送する電解質および薬剤(例えば血管拡張剤または血管収縮剤)に対して反応してもよい。例えば、腎臓10の傍糸球体装置の糸球体輸入細動脈内の平滑筋細胞を特殊化することにより、アンジオテンシンII系を活性化するレニンを生じさせる。
【0041】
腎臓の神経14は、腎動脈壁15の平滑筋34に神経を分布させるとともに、腎動脈壁15に沿って通常軸方向または長手方向に縦に延びる。図2Bに示すように、平滑筋34は腎動脈の周囲を包囲し、腎臓の神経14の長手方向の配向に通常直交する方向に縦に延びる。
【0042】
腎動脈12の平滑筋34は自律神経系の不随意の制御下にある。交感神経の活動が高められることにより、例えば、平滑筋34が収縮され、これにより、腎動脈ルーメン13の径が低減され、血液潅流が減少する。交感神経の活動の減少により、平滑筋34が弛緩し、これにより血管が膨張し、腎動脈ルーメンの径および血液潅流が高められる。反対に、副交感神経の活動が高められると、平滑筋34は弛緩するが、副交感神経の活動が減少すると平滑筋34は弛緩する。
【0043】
図3Aは、腎動脈を通過する長手方向の横断面のセグメントを示すとともに、腎動脈12の壁15の様々な組織層を示す。腎動脈12の最も内側の層は内皮30であり、これは内膜32の最も内側の層であるとともに、内弾性膜に支持される。内皮30は、血管ルーメン13を流れる血液と接触する細胞の単独層である。内皮細胞は通常多角形、楕円形、あるいは紡錘状であり、明瞭な円形または楕円形の核を有する。内皮30の細胞は、血管収縮および血管拡張による血圧の制御、凝血、およびルーメン13内の内容物と媒体33から内膜32を分離する内膜32の細胞膜および外膜36のような周囲の組織との間の境界層としての機能を含むいくつかの脈管の機能に関係する。内膜32の膜すなわち浸軟体は、高い弾性を備え、通常長手方向の波状のパターンを有する微細で無色透明な構造体である。
【0044】
内膜32に隣接する媒体33は、腎動脈12の中間の層である。媒体は平滑筋34および弾性組織から構成される。媒体33は、その色、およびその繊維の交差する構造体によって容易に識別することができる。より詳細には、媒体33は、薄板状またはラメラ状に配置されるとともに動脈壁15の周囲に環状に設けられた平滑筋繊維34の束から主に構成される。腎動脈壁15の最も外側の層は外膜36であり、これは結合組織から構成される。外膜36は、創傷治癒に重要な役割を果たす繊維芽細胞38を含む。
【0045】
血管周囲の領域37は、腎動脈壁15の外膜36に隣接し、且つ外膜36の周囲に示される。腎臓の神経14は、外膜36の近傍に示され、血管周囲の領域37の一部を通過する。腎臓の神経14は、腎動脈12の外側壁15に沿ってほぼ長手方向に延びて示される。腎臓の神経14の本幹は、通常腎動脈12の外膜36内または外膜36に配置され、通常血管周囲の領域37を通過し、腎動脈平滑筋34の神経を除去するべく媒体33内に延びる所定の枝部を備える。
【0046】
ここに開示される実施形態は、神経が分布した腎血管系に可変の程度の除神経治療を施すことに実施可能である。例えば、開示の実施形態において、開示の施術器具を使用して施される除神経治療によって得られる腎臓の神経のインパルス送信中断の範囲および相対的な永続性の制御がなされる。腎臓の神経損傷の範囲および相対的な永続性は、交感神経活動(部分的または完全な遮断を含む)の所望の低減、および永続性の所望の程度(一時的、あるいは不可逆な損傷を含む)を得られるように調整されてもよい。
【0047】
図3Bおよび図3Cに戻り、図3Bおよび図3Cに示す腎臓の神経14の部分は、神経節、あるいは脊髄上、あるいは脳内に位置される細胞質体またはニューロンに由来するか終端する軸索または樹状突起を各々備える神経繊維14bの束14aを含む。神経14の支持組織構造体14cは、神経内膜(周囲の神経軸索繊維)、神経周膜(繊維束を形成するために繊維群を包囲する)、および神経上膜(繊維束を結束し神経にする)を含み、これらは神経繊維14bおよび束14aを分離し支持するべく機能する。特に、神経内膜チューブあるいは細管とも呼ばれる神経内膜は、繊維束内の神経繊維14bのミエリン鞘を包囲する繊細な結合組織の層である。
【0048】
ニューロンの主成分は体細胞を含み、これは、核、樹状突起と呼ばれる細胞の延伸部、および神経信号を担持するケーブル状の突出部である軸索を含むニューロンの中央部である。軸索終末はシナプスを含み、これらは、神経伝達物質化学薬品が目的の組織と通信するために解放される専門の構造体である。末梢神経系の多くのニューロンの軸索はミエリン鞘に納められ、この鞘はシュヴァン細胞として周知の一種の膠細胞によって形成される。ミエリン鞘のシュヴァン細胞は、ランビエ絞輪と呼ばれる規則的に間隔を置かれたノードにおいて比較的覆いのない軸索鞘を残して、軸索を包囲する。軸索のミエリン形成により、跳躍と呼ばれる電気的インパルス伝達の特に迅速なモードが可能となる。
【0049】
いくつかの実施形態において、開示の施術器具は腎臓の神経繊維14bに一時的且つ可逆的な損傷をもたらす除神経治療を施すべく実装されてもよい。別例において、開示の施術器具は腎臓の神経繊維14bにより深刻な損傷をもたらす除神経治療を施すべく実装されてもよく、この損傷は治療がタイミング良く終了した場合に可逆的である。好適な実施形態において、開示の施術器具は腎臓の神経繊維14bに深刻且つ不可逆な損傷をもたらす除神経治療を施すべく実装されてもよく、これにより腎臓の交感神経の活動は、恒久的に停止される。例えば、施術器具は物理的に神経繊維14bの神経内膜チューブを分離するのに十分な程度まで神経繊維形態を分裂させる除神経治療を施すべく実装されてもよく、これにより再生工程および神経再分布工程が防止される。
【0050】
例示により、且つ公知のセドンの分類に従って、開示の施術器具はニューラブラキシアと一致する腎臓の神経繊維14bに損傷を付与することにより、腎臓の神経繊維14bに沿った神経インパルスの伝達を妨害する除神経治療を施すべく実装されてもよい。ニューラブラキシアは、神経繊維14bあるいはその鞘の分裂がない神経損傷を示す。この場合において、神経繊維を下るインパルスの伝達に妨害が生じ、ウォラー変性が生じないため真実の再生を伴わない数時間乃至数か月内の回復が生じる。ウォラー変性は、ニューロンの細胞核から分離された軸索の部分が退化する工程を指す。この工程は順行性変性としても周知である。ニューラブラキシアは、開示の実施形態による施術器具の使用によって腎臓の神経繊維14bに付与される神経損傷の最も穏やかな形態である。
【0051】
施術器具は軸索断裂症と一致する腎臓の神経繊維に損傷を付与することにより、腎臓の神経繊維14bに沿ったインパルスの伝達を妨害するべく実装されてもよい。軸索断裂症は、神経繊維の軸索およびミエリンの覆いの相対的な連続性の損失を含むが、神経繊維の結合組織の骨組みの保持を含む。この場合において、神経繊維14bの支持組織14cのカプセル化が、保持される。軸索の連続性が失われるので、ウォラー変性が生じる。軸索断裂症からの回復は、軸索再生によってのみ生じるが、このプロセスは約数週間乃至数か月の時間を要求する。電気的に、神経繊維14bは迅速且つ完全な退化を示す。神経内のチューブが無傷な限り、再生および神経再分布が生じ得る。
【0052】
施術器具は神経断裂症と一致する腎臓の神経繊維14bに損傷を付与することにより、腎臓の神経繊維14bに沿ったインパルスの伝達を妨害するべく実装されてもよい。神経断裂症は、セドンの分類によれば、スキームにおいて最も重大な神経損傷である。この種の損傷において、神経繊維14bおよび髄鞘の両者は分裂する。部分的な回復が生じ得るが、全快は可能ではない。神経断裂症は、腎臓の神経繊維14bの場合において、軸索およびカプセル化した結合組織14cの連続性の損失を含み、これにより自律神経の機能の全損が生じる。神経繊維14bが完全に分割された場合に、軸索の再生により神経腫が基端側の幹に生じる。
【0053】
本技術分野において周知のように、神経断裂症神経損傷におけるより階層化された分類はサンダーランドシステムを参照することにより確認される。サンダーランドシステムは5レベルの神経損傷を定義し、それらのうち最初の2つは、セドンの分類のニューラブラキシアおよび軸索断裂症に密接に相当する。後の3つのサンダーランドシステム分類は異なるレベルの神経断裂症神経損傷を示す。
【0054】
サンダーランドシステムでの神経損傷の第1および第2レベルは、セドンのニューラブラキシアおよび軸索断裂症にそれぞれ類似する。第3のレベルの神経損傷は、サンダーランドシステムによれば、神経上膜と神経周膜とを無傷に残したまま、神経内膜が分裂することを含む。回復は、維管束内繊維症の程度に応じて不十分乃至完全の範囲にある。第4のレベルの神経損傷は、神経上膜を無傷に残したまま、すべての神経および支持要素が分裂することを含む。神経は通常拡張する。第5のレベルの神経損傷は、連続性の損失による神経繊維14bの完全な切断を含む。
【0055】
図4Aは、様々な実施形態による体の血管の目的の組織を除去するための装置を示す。所定の実施形態によれば、図4Aに示すように、装置は、ルーメン、および経皮的なアクセス位置に対して患者の腎動脈等の患者の目的の組織にアクセスするために十分な長さを有するシース119を含む。装置は、基端部、先端部、および長さ部分を有する可撓性を備えた軸体104を含むカテーテル100を更に備える。軸体104の長さは経皮的なアクセス位置に対して、患者の腎動脈12のような目的の血管にアクセスするのに十分である。カテーテル100の軸体104はシース119のルーメン内において変位するように寸法が定められ、シース119の先端チップを越えて延伸可能である。
【0056】
複数の長尺状をなす弾性部材131がカテーテルの軸体104の先端部に設けられる。図4Aに示す代表的な実施例において、4つの複数の長尺状をなす弾性部材131a乃至131dがカテーテルの軸体104の先端部に設けられる。長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの各々は、軸体104の先端部の長さ部分に沿って取り付けられ、2つ以上の長手方向に間隔を置いた位置にて軸体104と係合する。長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの各々は、長手方向に間隔を置いた係合位置間に画定される領域にて軸体104から径方向にそれぞれ拡張可能となるように、軸体104に取り付けられる。長尺状をなす弾性部材131a乃至131dは、カテーテル100および弾性部材131a乃至131dが軸方向に軸体104の先端チップを越えて延伸される場合に弾性部材131a乃至131dが自己拡張するのに十分な弾性部材131a乃至131dにおける弾性力を生じる材料から形成される。例えば、弾性部材131a乃至131dは、弾性部材131a乃至131dを腎動脈組織における変化に適応するために屈曲させる可撓性を備えた電気的導電材料から形成することができる。
【0057】
1つ以上の電極120が径方向に拡張可能な領域にて弾性部材131a乃至131dの各々に取り付けられる。図4Aに示す代表的な実施形態において、軸体104の長手方向に間隔を置いた係合位置間の頂部の位置に示す1つの電極120a乃至120dは4つの弾性部材131a乃至131dのそれぞれに取り付けられる。導電体構造体は、弾性部材131a乃至131dの各々に取り付けられる1つ以上の電極120に電気的に連結され、軸体104に沿ってカテーテル100の基端部に延びる。
【0058】
いくつかの実施形態において、弾性部材131a乃至131dの各々は、軸体104に沿って延びるとともにカテーテル100の基端部にて電極120a乃至120dと電気的に連結させる導電体を形成する。弾性部材131a乃至131dは、軸体104の長さ部分に沿って延びる領域を覆うように絶縁スリーブやコーティングで覆われる。別例において、軸体104の個別のルーメンは弾性部材131a乃至131dのうちの1つを受容する寸法に形成される。弾性部材131a乃至131dは、絶縁スリーブやコーティングを含まない弾性部材構造体に絶縁材の内側壁を含む。更なる実施形態において、弾性部材131a乃至131dの各々は、カテーテル100の先端部近傍の対応する導電体に連結することができる。また、導電体は軸体に沿って延び、カテーテル100の基端部にてアクセス可能である。
【0059】
長尺状をなす弾性部材131a乃至131dは、好ましくは形状記憶を有する弾性および導電性を備えた合金から構成される。図4Cに最もよく示すように、長尺状をなす弾性部材131a乃至131dは、シース119のルーメン内、あるいは患者の腎動脈12のような目的の血管のルーメン内に包囲されると折り畳まれる。シース119の先端チップを超えて軸方向に延びると、長尺状をなす弾性部材131a乃至131dは、長手方向に間隔を置いた係合位置間に画定される領域にて軸体104から径方向外方に拡張する。弾性部材131a乃至131dの頂点の位置に、あるいはその位置の近傍に取り付けられた電極120a乃至120dは、外方に拡張する弾性部材131a乃至131dによって外方に移動され、目的の血管の内側壁と係合する。配備された構成において、複数の弾性部材131a乃至131dは、特に血管の内側壁に沿った不規則な形状において、目的の血管内の電極120a乃至120dの付着性を高める。
【0060】
様々な実施形態によって、弾性部材131a乃至131dは、カテーテルの軸体104の周囲に配置され、これにより電極120a乃至120dは、腎動脈のような目的の血管の壁の異なる位置に配置される。例えば弾性部材131a乃至131dは、カテーテルの軸体104の周囲に配置され、これにより電極120a乃至120dは、カテーテル100および弾性部材131a乃至131dがシース119の先端チップを越えて軸方向に延伸されると、腎動脈の壁において螺旋状の患部の形成を促進するために通常螺旋形状を形成する。
【0061】
いくつかの実施形態において、弾性部材131a乃至131dは、軸体104の先端部の長手方向に沿って相互に独立して構造的に取り付けられる。弾性部材131a乃至131dの形状記憶は、弾性部材131a乃至131dが拡張し配備された構成にあるときに間隔を置いた関係を保持するように好適に選択される。そのような構成において、絶縁スリーブやコーティングによって弾性部材131a乃至131dを覆う必要はないが、所望に応じてスリーブやコーティング等が含まれてもよい。間隔を詰めて置かれた弾性部材131a乃至131dを利用する別例において、電極120a乃至120dの基端側および先端側の弾性部材131a乃至131dを絶縁スリーブやコーティングにより覆うことが望ましい。図11は、弾性部材131を示し、弾性部材131が、弾性部材131によって支持される電極120の基端側および先端側の弾性部材131の部分を覆う絶縁スリーブまたはコーティング137を有することを示す。
【0062】
様々な実施形態において、複数の弾性部材131は、軸体104の先端部の長手方向に沿って相互に構造的に協働するように取り付けられる。図12乃至15にそのような実施形態の実例を示す。図12は、例えば、複数の弾性部材131から形成されるとともにバスケットや網構造体を有するワイヤセグメント構造体127を示す。バスケットや網の弾性部材131の各々は、共通の先端側および基端側の周辺の実装領域にて軸体104と係合する対向端を備える通常アーチ形の形状を有する。
【0063】
図12は、弾性部材131の各々が、複数の電極120(例えば6つの電極120)を支持することを示す。いくつかの実施形態において、個別の弾性部材131に支持された電極120は、直列に接続される。別例において、個別の弾性部材131に支持された電極120のすべてまたは少なくともいくつかは、別体の導電体により接続される。上記実施形態において、個別の弾性部材131に支持された電極120のすべてまたは少なくともいくつかは、個別に制御可能であり、これにより、バスケットまたは網構造体127の電極120の選択的な駆動および動作の停止が可能となる。
【0064】
ワイヤセグメント構造体127の弾性部材131は拡張可能な湾曲部またはループを形成するように配置される。図13乃至15に他のワイヤセグメント構造体127の構成の実例を示す。これらおよび他のワイヤセグメント構造体127が考えられ、それらはワイヤセグメントおよび電極の数、周辺の位置およびワイヤセグメントの軸位置の点から変更可能である。
【0065】
ワイヤセグメント構造体127のいくつかあるいはすべての電極120が、同時にエネルギーを付与されることにより、あるいは、個別の電極120や電極120の一部が動力を付与されることにより、血管周囲の神経の1つ以上の領域が除去される。例えば、電極120は腎動脈の複数の個別の切除領域を形成するために、個別に動力を付与可能である。ワイヤセグメント構造体127の1つ以上の弾性部材131の電極120の選択的な駆動および動作の停止により、様々な形状(例、螺旋状、環状、スポット)および寸法(例えば患部形成時に駆動される電極120の数を増加または減少させることによる)を有する患部を好適に形成する。開示のこれらおよび他の実施形態により、切除処置の間にカテーテル軸体104の位置を変更することなく所望の形状および寸法(例えば目的の血管の壁の全周)を有する目的の血管の患部の形成が促進される。
【0066】
図4Bは、様々な実施形態による体の血管の目的の組織を除去するための装置を示す。図4Bに示す実施形態において、カテーテル100は、カテーテルの軸体104の先端部に取り付けられた複数の長尺状をなす弾性部材131を含み、また、図4Aに示すカテーテルの実施形態に類似する。長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの各々は、軸体104の先端部の長さ部分に沿って取り付けられ、2つ以上の長手方向に間隔を置いた位置にて軸体104と係合し、シース119のルーメン内に包囲されると折り畳まれる。シース119の先端チップを越えて軸方向に延伸されると、弾性部材131a乃至131dは、軸体104から径方向外方に拡張し、これにより、弾性部材131a乃至131dの頂点の位置に、あるいはその位置の近傍に取り付けられた電極120a乃至120dを外方に移動させ、目的の血管の内側壁に係合させる。
【0067】
図4Bに示す実施形態は、カテーテル100の先端部におけるワイヤセグメント構造体にて設けられる温度センサ123を含む。図4Bに示すように、長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの各々は、長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの電極120a乃至120dにて、あるいはその近傍にて設けられる熱電対のような温度センサ123a乃至123dを支持する。温度センサ123a乃至123dの各々は、対応するセンサワイヤに連結される。センサワイヤは、カテーテル100の軸体104の長さ部分に沿って延びるとともにカテーテル100の基端部にてアクセス可能である。
【0068】
センサワイヤは理髪店の看板の柱状に弾性部材131を包囲する柔軟な絶縁線である。他の構造体において、センサワイヤは、弾性部材131a乃至131dに対して平行に延びるとともにこれらに連結される。更なる実施形態において、弾性部材131a乃至131dは電気的絶縁スリーブまたはコーティングにより覆われるが、その場合において、センサワイヤは電気的絶縁スリーブまたはコーティングを有する必要がない。
【0069】
図5および図6はそれぞれ、様々な実施形態において、配備された構成および回収された構成のワイヤセグメント構造体に支持された複数の電極を含むカテーテル100を示す。図5および図6は、開示されるロープロファイルの実施形態によるワイヤセグメント構造体および回収機構を支持するカテーテル軸体104の先端部を示す。図5に示す実施形態において、カテーテル100は、長手方向および周方向の両者にて相互に間隔を置いた4つの長尺状をなす弾性部材131a乃至131dを含むワイヤセグメント構造体を含む。4つの長尺状をなす弾性部材131a乃至131dの各々は、電極120a乃至120dを支持する。切除処置の間にカテーテル100の位置を変更することなく目的の血管の少なくとも完全な一周を除去することができるように、弾性部材131a乃至131dおよび電極120a乃至120dが配置される。
【0070】
カテーテル軸体104はルーメンを含み、これを一対の制御ワイヤ133a、133bが延在する。制御ワイヤ133a、133bは、軸体104の共通のルーメン内、あるいは個別のルーメン内に配置される。制御ワイヤ133a、133bの先端部は、弾性部材131a乃至131dの基端部に連結され、これは軸体の壁を貫通する小孔またはスリットを通して1つ以上の制御ワイヤルーメン内に至る。シール構造体は、血液がシール構造体の基端側の軸体104内に移動することを防止するべくワイヤセグメント構造体の基端側の1つ以上の制御ワイヤルーメン内に配置される。
【0071】
様々な実施形態において、臨床医によってプッシュ・プル式に配備し弾性部材131a乃至131dを回収するために制御ワイヤ133a、133bは弾性部材131a乃至131dに連結される。いくつかの構成において、2つの最も先端側の弾性部材131aおよび131bの先端部は、制御ワイヤ133aに連結され、最も基端側の2つの弾性部材131cおよび131dの先端部は、制御ワイヤ133bに連結される。弾性部材131aおよび131bが回収された構成(図6を参照)にある場合に、制御ワイヤ133aを押圧することにより、弾性部材131aおよび131bは軸体104から径方向に移動され配備された構成となる(図5を参照)。弾性部材131aおよび131bが配備された構成にある場合に、制御ワイヤ133aを張引することにより、(図6の回収された構成に示すように)弾性部材131aおよび131bは軸体104の1つ以上の制御ワイヤルーメンから内側に移動される。弾性部材131cおよび131dは、制御ワイヤ133aに対して上述したものと同様の方法にて制御ワイヤ133bを操作することにより、配備された構成および回収された構成に移動される。
【0072】
別例において、弾性部材131a乃至131dの各々は単一の制御ワイヤ133に連結される。この構成において、先端側の方向に制御ワイヤ133を押圧することにより、弾性部材131a乃至131dは配備された構成に移動する。基端側の方向に制御ワイヤ133を張引することにより、弾性部材131a乃至131dは回収された構成に移動する。更なる実施形態において、弾性部材131a乃至131dの各々は別体の制御ワイヤ131に連結される。この構成において、個別の弾性部材131a乃至131dは、個別の弾性部材131a乃至131dに連結される対応する制御ワイヤ131を押圧および張引することにより、配備された構成および回収された構成に移動される。シース(図示しない)は目的の血管にカテーテル100を前進、または目的の血管からカテーテル100を抜き出す間にワイヤセグメント構造体131a乃至131dおよび電極120a乃至120dを覆うことに使用される。
【0073】
図7および図8は、様々な実施例によるワイヤセグメント構造体に支持されるとともに組織を置換する要素を有する複数の電極を含むカテーテル100を示す。説明を明瞭にするために、1つの電極を支持する1つのワイヤセグメント構造体のみが示される。図7に示す電極は、電極体120から突出する組織置換チップ125を含む。組織置換チップ125の長さは、目的の血管壁内に組織置換チップ125の変位深さを制限するために選択される。例えば、また、図8に示すように、電極120の組織置換チップ125は、組織置換チップ125が腎動脈12の壁の組織を所定深さに強制的に置き換えることができる一方少なくとも腎動脈12の外部壁を貫通するものではない長さおよび径を有する。図8に示す適用における組織置換電極120およびチップ125は、通常約2.5mm未満の長さを有する。
【0074】
図7および図8に示す電極120が組織置換チップ125を含むように構成することにより、内側の動脈壁と外側の動脈壁との間の動脈組織を圧縮することによって、電極120と血管周囲の腎臓の神経のような目的の組織との間の距離が好適に減少する。電極120と目的の組織との間の距離を低減することにより、近隣の非目的の組織に対する熱傷の範囲が効果的に低減されるとともに、血管周囲の腎臓の神経を除去することに必要な電流密度を低減可能である。
【0075】
図9および図10は、様々な実施形態によるワイヤセグメント構造体の制御可能な拡張および回収を促進する構造体を示す。図9に示す実施形態において、電極120を支持する長尺状をなす弾性部材131は、軸体104の外側壁に固定して配置される先端部143を有する。弾性部材131の先端部143はアクセス開口141を介して軸体104の内側壁取付位置に好ましくは接合されるか、あるいは取り付けられる。図9に、拡張し配備された構成における弾性部材131を示す。ここで電極120は軸体104の外側壁に対して側方の高さh1にて支持される。様々な実施形態において、側方の高さhは、軸体104の外側壁に対して約1mm乃至約4.5mmの範囲にある。
【0076】
図示のように弾性部材131の基端部は、弾性部材131の基端部または弾性部材131の基端部に連結される他の長尺状をなす部材に付与される基端側および先端側に配向された圧力に応じて移動可能である。弾性部材131の基端部は、軸体104の外側壁に対する側方の高さ寸法h内における弾性部材131の拡張および折り畳みを制限するために十分な移動長さlにより移動される。その回収された構成において、弾性部材131は軸体の外側壁に対して圧縮されるとともに軸体104の外側壁に沿って実質的に平坦に配置され、これにより電極120および弾性部材131の組み合わされた厚み(例、約0.2mmの組み合わされた厚み)より僅かに大きい大きさに側方の高さhを低減する。
【0077】
弾性部材131が軸体の外側壁に対して圧縮される場合、例えば搬送シースが弾性部材131を伝って前進される場合に、弾性部材131の基端部は、基端側にそのルーメン内に、あるいは軸体104に沿って移動される。そのルーメン内に弾性部材131の基端部を前進させることにより、弾性部材131は軸体104の外側壁に対してロープロファイルを取ることができる。搬送シースが取り除かれると、自己拡張弾性部材131は拡張し、その予め形成された形状となり、これにより、弾性部材131の基端部は、そのルーメンから少なくとも部分的にいくぶん先端側に退出される。
【0078】
いくつかの構成において、弾性部材131を十分に膨張させるために、先端側に配向された圧力が弾性部材131の基端部に付与される。他の構成において、弾性部材131を形成する材料の弾性力により、弾性部材131に対する張力を緩めることによって弾性部材131はその配備された構成に自己拡張する。様々な構成において、弾性部材131の、その配備された構成への自己拡張を高めるために、先端側に配向されたある程度の圧力が弾性部材131の基端部に付与される。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、制御ワイヤ133は、図5および図6に関して上述したものと同様に、弾性部材131の先端部取り付けられるとともに、カテーテル100の基端部にて臨床医によって駆動可能である。別例において、制御ワイヤ133は使用されず、上述した回収および拡張機構が、使用時の弾性部材131に対する圧縮力の付与および弾性部材131からの圧縮力の除去に応じて自動的に作動する。
【0080】
図10に示す実施形態において、摺動可能停止構造体が示されるが、これは弾性部材131の少なくとも1つのセグメントを捕捉する一対の停止部151a、151bを含む。停止部材153は、弾性部材131に取り付けられる。先端側の方向における弾性部材131の軸変位の範囲は、停止部材153と先端側の停止部151aとの間の接触によって制限される。基端側の方向における弾性部材131の軸変位の範囲は、停止部材153と基端側の停止部151bとの間の接触によって制限される。従って、弾性部材131の軸変位の範囲は、一対の停止部151a、151b間に画定される移動距離lによって制限される。この移動距離lは、弾性部材131の側方の高さhが拡張構成および折り畳まれた構成の間で変化可能な範囲を制限する。移動距離l2は、弾性部材131を配備した構成に完全に拡張させ、また弾性部材131をロープロファイルの回収された構成となるように完全に圧縮するべく好適に選択される。
【0081】
停止部材153が基端側の停止部151bと接触するように弾性部材131(あるいは弾性部材131に連結された制御ワイヤ)が基端側の方向に張引されると、完全にロープロファイルの回収されたまたは折り畳まれた構成となるまで、電極を支持する弾性部材131は軸体104の外側表面に向かって折り畳まれる。弾性部材131に対する張力が解放され、且つ/または弾性部材131に対して先端側に配向された圧力が付与されると、停止部材153が先端側の停止部151aに向かって前進し、これにより停止部材153が先端側の停止部151aに向かって前進するにつれ弾性部材131はその予め形成される配備された形状に自己拡張可能となる。停止部材153が先端側の停止部151aと接触すると、弾性部材131はその配備された構成となる。図9および図10に示す構造体は、軸体104のルーメン内に、軸体104の壁内に、あるいは軸体104の外側壁に沿って少なくとも一部分延びる側部ルーメン内に実装されるものといえる。
【0082】
図16は開示の様々な実施形態による代表的な高周波腎臓治療装置300を示す。図16に示す装置300は、動力制御回路322およびタイミング制御回路324を含む外部電極駆動回路320を含む。高周波生成器を含む外部電極駆動回路320は、温度測定回路328に連結されるが、オプションのインピーダンスセンサ326に連結されてもよい。カテーテル100は、必要または要求に応じて導電体、薬剤、駆動要素、閉鎖器官、センサ、あるいは他の要素のような様々な要素を受容するように構成されるルーメン構造体105を組み込んだ軸体104を含む。
【0083】
外部電極駆動回路320の高周波生成器は、患者の背中または腎臓近傍の体の他の部分と快適に係合するように構成される戻り電極パッド330を含む。高周波生成器によって生成された高周波エネルギーは、カテーテルの軸体104のルーメンに配置される導電体構造体110によってカテーテル101の先端部にて治療要素101に連結される。
【0084】
図16に示す装置を使用する腎臓の除神経治療は、腎動脈12内に配置される治療要素101のワイヤセグメント構造体に支持される電極120、および患者の背中に配置される戻り電極パッド330を使用して、単極のモードにて作動する高周波生成器により通常行われる。本実施形態において、電極120a乃至120dは、例えば単極構造体にて操作されるように構成される。他の実施形態において、治療要素101のワイヤセグメント構造体に支持された電極120は、双極構造体にて操作されるように構成される。この場合において、戻り電極パッド330は必要ではない。
【0085】
高周波エネルギーは、所定の作動順序(例えば、連続的または同時的)に従って電極120を通過して流れ、イオンの攪拌を生じさせ、これにより腎動脈の隣接した組織における摩擦を引き起こす。
【0086】
通常、腎動脈組織温度が華氏約113度(摂氏50度)を超えて上昇すると、タンパク質は恒久的に損傷を受ける(腎臓の神経繊維のタンパク質を含む)。摂氏約65度を超えて加熱されると、コラーゲンは変性し、組織は縮む。摂氏約65度を超えて摂氏100度まで加熱されると、細胞壁は破壊され、油は水から分離する。摂氏約100度を超えると、組織は乾燥する。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、電極駆動回路320は所定のエネルギー搬送プロトコルに従って、温度測定回路328から受信した信号に応じて電極120の駆動および動作の停止を制御するように構成される。電極駆動回路320は、電極120に搬送される高周波エネルギーを制御し、これにより、目的の組織を少なくとも摂氏約55度の温度まで加熱するために十分なレベルに電流密度を保持する。
【0088】
いくつかの実施形態において、温度センサは治療要素101に配置され、腎動脈組織の温度を連続して監視し、高周波生成器は自動的に調整され、これにより目標温度が得られ、保持される。インピーダンスセンサ構造体326は、高周波除神経治療時に電気インピーダンスを測定し監視することに使用され、高周波生成器320の動力およびタイミングは、インピーダンス測定あるいはインピーダンス測定と温度測定との組み合わせに基づいて調整される。除去される領域の寸法は、治療要素101のワイヤセグメント構造体によって支持される電極の寸法、数、および形状、付与される動力、並びにエネルギーが付与される所要時間によって大部分決定される。
【0089】
マーカバンド314は処置時に視覚化を可能にするために治療要素101の1つ以上の部分に配置される。軸体104の1つ以上の部分(例えばヒンジ機構356における)のようなカテーテル101の他の部分が、マーカバンド314を含んでもよい。マーカバンド314は中実であるか、例えば白金あるいは他の放射線不透過性の金属のスプリットバンドである。放射線不透過性の材料は、医療処置の間に透視スクリーンや他の撮像技術において比較的明るい像を生成することのできる材料であるものといえる。この比較的明るい像は、使用者が例えばカテーテル101の先端、治療要素101、およびヒンジ356のようなカテーテル100の所定の部分を決定することを補助する。ブレードおよび/またはカテーテル100の電極はいくつかの実施形態によれば、放射線不透過性を有する。
【0090】
ここに開示される様々な実施形態は、高血圧の制御のための血管周囲の腎臓の神経の切除の状況に通常示される。しかしながら、開示の実施形態は、他の動脈、静脈および脈管(例えば心臓・泌尿器の脈管および血管)を含む体の他の血管内からの除去、並びに様々な器官を含む体の他の組織内からの除去を行う等の他の状況における利用可能性を有するものといえる。
【0091】
様々な実施形態の多数の特性を様々な実施形態の構成および機能の詳細とともに上述したが、この詳細な説明は例示に過ぎず、特に添付の特許請求の範囲に表現される用語の広い意味によって示される完全な範囲までの様々な実施形態に示される部分の構成および構造体の事項において、詳細にわたって変更が可能である。
図2A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図1
図2B
図3A
図16