(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0082】
I.概要
本発明は、一般に、抗体の1つまたは複数の定常領域ドメインに、アミノ酸置換(「pI変異型」または「pI置換」)を組み込むことにより、(「pI抗体」を形成するために)抗体の等電点(pI)を減少させることに関連する組成物および方法に関する。pI置換は、pIアミノ酸のpIが、定常ドメイン内の特定の位置にある天然アミノ酸のpIよりも低下するように選択される。様々な実施形態において、定常ドメイン変異型は、抗体のpIを減少させ、本明細書で初めて示されるように、in vivo血中半減期を改善する。上で述べた通りであるが、抗体のCDR領域での変異型の生成による、抗体のpIの低下は、血中半減期の増加につながり得ることを示唆している可能性のあるデータは限られている。しかし、本発明の定常ドメインは、可変領域にモジュラな形で追加することができ、よって、血中半減期を増加した抗体の設計を大幅に簡易化するため、本発明は、CDR pIの操作に大きな利益をもたらす。
【0083】
すなわち、本発明以前は、抗体のpIを低下することが血中半減期の増加に繋がるという事実は、予測不可能であると同時に、予期されてもいなかった。
【0084】
さらに、本発明の多くの実施形態は、特定の位置にある、より低いpIのアミノ酸を1つのIgGアイソタイプから別のIgGアイソタイプに「移入」し、それにより、所望されない抗原性が変異型に導入される可能性を削減または除去することに依存している。すなわち、IgG1は、高いエフェクター機能を含め、種々多様な理由で、治療用抗体の共通アイソタイプである。しかし、IgG1の重定常領域は、IgG2よりも高いpI(8.10対7.31)を有している。特定の位置のIgG2残基をIgG1骨格に導入することにより、産生されるタンパク質のpIは低下し、さらに、血中半減期が延長される。例えば、IgG1では、位置137にグリシン(pI5.97)があり、IgG2では、グルタミン酸(pI3.22)がある;グルタミン酸を移入すると、産生されるタンパク質のpIに影響が生じる。後述するように、変異型抗体のpIに顕著な影響を及ぼすには、一般に、数多くのアミノ酸置換が要求される。しかし、後述するように、IgG2分子における変化でさえも、血中半減期を増加する効果があることは注意されるべきである。
【0085】
他の実施形態では、以下でさらに詳しく説明するように、(例えば、pIのより高いアミノ酸からpIのより低いアミノ酸に変更するなどにより)産生されるタンパク質の全体の電荷を減少させる目的、または安全性等のために構造的に対応できるようにする目的のために、非アイソタイプのアミノ酸変更が加えられる。
【0086】
加えて、重定常ドメインおよび軽定常ドメインの両方を操作することにより、産生される抗体のpIに顕著な減少を確認することができる。以下で論じるように、pIを少なくとも0.5低下させることで、半減期を大幅に増加することができる。
【0087】
当業者によって理解されるであろうとともに、後述する通り、血中における抗体のin vivoのクリアランス、よって半減期には、数多くの要因が寄与する。1つの要因は、抗体が結合する抗原が関与する;すなわち、定常領域は同一だが、可変領域(例えば、Fvドメイン)は異なる抗体は、特異的なリガンド結合効果が原因で半減期が異なる可能性がある。しかし、本発明は、2つの異なる抗体の絶対的な半減期は、これらの抗原特異性効果が原因で異なる可能性があるが、pI変異型(本明細書中に概略を示すように、任意でFcRn変異型を含む)は、異なるリガンドに移って、半減期を増加させる同じ傾向を与えることができることを示している。すなわち、一般に、pIの 減少/半減期の増加の相対的な「順序」は、本明細書中で論じるように、異なるFvを有する、抗体の同一のpI変異型を有する抗体に原因がある。
【0088】
A.抗体
本発明は、抗体、一般には、治療用抗体のpI変異型の生成に関する。以下で論じるように、「抗体」という用語は、一般的に用いられる。本発明で有用な抗体は、従来的な抗体ならびに、後述する抗体誘導体、フラグメントおよびミメティックも含め、本明細書に記述されるように、数多くの形式を取る。一般に、「抗体」という用語は、CH1、CH2、CH3およびCLを含むが、これらに制限されない定常ドメインを少なくとも1つ含む任意のポリペプチドを包含する。
【0089】
従来的な抗体の構造単位は、通常、四量体を含む。各四量体は、通常、ポリペプチド鎖の2つの同一対から成り、各対は「軽」鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)1本と「重」鎖(通常、約50〜70kDaの分子量を有する)1本を有する。ヒトの軽鎖は、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖と分類される。本発明は、IgGクラスに関し、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むが、これらに制限されない複数のサブクラスを有する。したがって、本明細書中で用いられる場合、「アイソタイプ」は、定常領域の化学的および抗原性特性により定義される免疫グロブリンの任意のサブクラスを指す。治療用抗体は、アイソタイプおよび/またはサブクラスのハイブリッドも含み得ることも理解されるべきである。例えば、本明細書で示されるように、本発明は、IgG1/G2ハイブリッドのpI操作を網羅する。
【0090】
各鎖のアミノ末端部は、主に抗原認識に関与し、当技術分野および本明細書中で、一般に「Fvドメイン」または「Fv領域」と呼ばれる、約100から110個またはそれ以上のアミノ酸から成る可変領域を含む。定常領域では、重鎖および軽鎖のVドメインのそれぞれに対して、抗原結合部位を形成するために、3つのループが集合する。ループの各々は、相補性決定領域(以降では、「CDR」と呼ぶ)と呼ばれ、この領域では、アミノ酸配列の変動が最も顕著である。「可変」は、可変領域の特定のセグメントが、抗体間で配列に大きく異なるという事実を指している。可変領域内で可変性は均一に分布していない。代わりに、V領域は、各々が9〜15個のアミノ酸長またはそれより長い「高度可変領域」と呼ばれる、極度に可変性のあるより短い領域により隔てられる、15〜30個のアミノ酸から成る、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、比較的不変な一連の配列から成る。
【0091】
各VHおよびVLは、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の順番で、アミノ末端からカルボキシ末端へと並ぶ、3つの高度可変領域 (「相補性決定領域」、「CDR」)および4つのFRから成る。
【0092】
高度可変領域は、一般に、アミノ酸残基を軽鎖可変領域に約24〜34残基(LCDR1;「L」は軽鎖を意味する)、50〜56残基(LCDR2)および89〜97残基(LCDR3)、そして重鎖可変領域に約31〜35残基(HCDR1;「H」は重鎖を意味する)、50〜65残基(HCDR2)、および95〜102残基(HCDR3)(Kabatら、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版、Public Health Service、 National Institutes of Health、Bethesda, Md.(1991) )を包含し、および/またはこれらの残基は、高度可変ループを形成する(例えば、軽鎖可変領域では、26〜32残基(LCDR1)、50〜52残基(LCDR2)および91〜96残基(LCDR3)ならびに重鎖可変領域では、26〜32残基(HCDR1)、 53〜55残基(HCDR2)、および96〜101残基(HCDR3)(ChothiaおよびLesk(1987) J. Mol. Biol. 196:901−917)。本発明の具体的なCDRについては、後述する。
【0093】
本明細書の全体を通して、可変ドメイン内の残基(軽鎖可変領域の約1〜107残基および重鎖可変領域の1〜113残基)を指すときは、一般に、カバット番号付与システムに従う(例えば、Kabatら、上記の書(1991))。
【0094】
CDRは、抗体の抗原結合、または、より具体的には、エピトープ結合部位の形成に寄与する。「エピトープ」は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域にある特定的抗原結合部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、アミノ酸または糖側鎖などの分子のグループ化であり、通常、特定の構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。単一の抗原が、複数のエピトープを有することもあり得る。
【0095】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優勢コンポーネントと呼ばれる)および特異的抗原結合ペプチドにより実質上、ブロックされるアミノ酸残基など、結合に直接関与しないその他のアミノ酸残基を含むことができる;言い換えれば、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドの到達範囲内にある。
【0096】
エピトープは、立体配座であることも、直鎖であることもある。立体配座エピトープは、直鎖ポリペプチドの異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸により作り出される。直鎖エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基により作られるエピトープである。立体配座エピトープおよび非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では、前者への結合は失われるが、後者は失われないことで区別することが可能である。
【0097】
エピトープは、通常、少なくとも3個、より一般的には、少なくとも5個、または8〜10個のアミノ酸を、独自の空間的配座で含む。同一のエピトープを認識する複数の抗体は、1つの抗体が、標的抗原に対する別の抗体の結合をブロックする能力を明らかにする簡単な免疫測定法、例えば、「ビニング」で確認することができる。
【0098】
当業者には理解されるであろう通り、抗原結合ドメイン、例えば、Fv領域の広範な変異型は、本発明で有用になり得る。実質上いかなる抗原も、サイトカインなどの可溶性因子および膜貫通受容体を含む膜結合因子の両方を含む、以下に列記する標的抗原に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、および/またはエピトープを含むが、これらに制限されないIGG変異型による標的となり得る:17−IA、4−1BB、4Dc、6−ケト−PGF1a、8−イソ−PGF2a、8−オキソ−dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE−2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK−2、アクチビンRIB ALK−4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK−1、ALK−7、アルファ−1−アンチトリプシン、アルファ−V/ベータ−1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF−1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房ナトリウム排出増加因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7−1、B7−2、B7−H、Bリンパ球刺激因子(BLyS)、BACE、BACE−1、Bad、BAFF、BAFF−R、Bag−1、BAK、Bax、BCA−1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b−ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL−CAM、BLK、BMP、BMP−2 BMP−2a、BMP−3オステオゲニン、BMP−4 BMP−2b、BMP−5、BMP−6 Vgr−1、BMP−7(OP−1)、BMP−8 (BMP−8a、OP−2)、BMPR、BMPR−IA(ALK−3)、BMPR−IB (ALK−6)、BRK−2、RPK−1、BMPR−II(BRK−3)、BMPs、b−NGF、BOK、ボムベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE−DNA、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD−8、カルシトニン、cAMP、癌胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7−1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)毒素、CKb8−1、CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN−1、COX、C−Ret、CRG−2、CT−1、CTACK、CTGF、CTLA−4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC−SIGN、崩壊促進因子、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM−1、Dnase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA−A1、EDA−A2、EDAR、EGF、EGFR (ErbB−1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E−セレクチン、ET−1、因子IIa、因子VII、因子VIIIc、因子IX、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN−1、フェリチン、FGF、FGF−19、FGF−2、FGF3、FGF−8、FGFR、FGFR−3、フィブリン、FL、FLIP、Flt−3、Flt−4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルキン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas 6、GCP−2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF−1、GDF−3 (Vgr−2)、GDF−5 (BMP−14、CDMP−1)、GDF−6 (BMP−13、CDMP−2)、GDF−7 (BMP−12、CDMP−3)、GDF−8 (ミオスタチン)、GDF−9、GDF−15 (MIC−1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa−1、GFR−アルファ1、GFR−アルファ2、GFR−アルファ3、GITR、グルカゴン、Glut 4、糖タンパク質IIb/IIIa(GP IIb/IIIa)、GM−CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP−capまたはNIP−cap)、HB−EGF、HCC、HCMV gBエンペローブ糖タンパク質、HCMV、gHエンペローブ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB−2)、Her3 (ErbB−3)、Her4(ErbB−4)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW−MAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp 120 V3ループ、HLA、HLA−DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心筋ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I−309、IAP、ICAM、ICAM−1、ICAM−3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF−1R、IGFBP、IGF−I、IGF−II、IL、IL−1、IL−1R、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−4R、IL−5、IL−5R、IL−6、IL−6R、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−18R、IL−23、インターフェロン(INF)−アルファ、INF−ベータ、INF−ガンマ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンアルファ2、インテグリンアルファ3、インテグリンアルファ4、インテグリンアルファ4/ベータ1、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ5(alphaV)、インテグリンアルファ5/ベータ1、インテグリンアルファ5/ベータ3、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ1、インテグリンベータ2、インターフェロンガンマ、IP−10、I−TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF−1)、潜在TGF−1、潜在TGF−1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、レフティ、Lewis−Y抗原、Lewis−Y関連抗原、LFA−1、LFA−3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L−セレクチン、LT−a、LT−b、LTB4、LTBP−1、肺表面活性剤、黄体形成ホルモン、リンホトキシンベータ受容体、Mac−1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK−2、MCP、M−CSF、MDC、Mer、メタロプロテイナーゼ、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA−DR)、MIF、MIG、MIP、MIP−1−アルファ、MK、MMAC1、MMP、MMP−1、MMP−10、MMP−11、MMP−12、MMP−13、MMP−14、MMP−15、MMP−2、MMP−24、MMP−3、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管抑制物質、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N−カドヘリン、NCA 90、NCAM、NCAM、ネプリリシン、ニューロトロフィン−3、−4、または−6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGF−ベータ、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG−3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P−カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK−1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤分画アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロリラキシン、タンパク質C、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、レニン、呼吸系発疹ウイルス(RSV) F、RSV Fgp、Ret、リウマトイド因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF−1、セリン、血清アルブミン、sFRP−3、Shh、SIGIRR、SK−1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAPII、TACE、TACI、TAG−72(腫瘍関連糖タンパク質−72)、TARC、TCA−3、T−細胞受容体(例えば、T−細胞受容体アルファ/ベータ)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、睾丸PLAP様アルカリ性ホスファターゼ、TfR、TGF、TGF−アルファ、TGF−ベータ、TGF−ベータPan特異的、TGF−ベータRI(ALK−5)、TGF−ベータRII、TGF−ベータRIIb、TGF−ベータRIII、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TGF−ベータ4、TGF−ベータ5、トロンビン、胸腺CK−1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF−アルファ、TNF−アルファベータ、TNF−ベータ2、TNFc、TNF−RI、TNF−RII、TNFRSF10A (TRAIL R1 Apo−2、DR4)、TNFRSF1
0B (TRAIL R2 DR5、KILLER、TRICK−2A、TRICK−B)、TNFRSF10C (TRAIL R3 DcR1、LIT、TRID)、TNFRSF10D (TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A (RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L (RELT)、TNFRSF1A(TNF RI CD120a、p55−60)、TNFRSF1B (TNF RII CD120b、p75−80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3 (LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6 (Fas Apo−1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3 M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9 (4−1BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22 (DcTRAIL R2 TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFRSF25 (DR3 Apo−3、LARD、TR−3、TRAMP、WSL−1)、TNFSF10 (TRAIL Apo−2リガンド、TL2)、TNFSF11(TRANCE/RANKリガンドODF、OPGリガンド)、TNFSF12 (TWEAK Apo−3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGHT HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15 (TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンドAITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF−aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF−b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンドgp34、TXGP1)、TNFSF5 (CD40リガンドCD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(FasリガンドApo−1 リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンドCD70)、TNFSF8(CD30リガンドCD153)、TNFSF9 (4−1BBリガンドCD137リガンド)、TP−1、t−PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRANCE、トランスフェリン受容体、TRF、Trk、TROP−2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA 125、Lewis Y関連炭水化物を発現している腫瘍関連抗原、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR−1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM−1、VECAD、VE−カドヘリン、VE−カドヘリン−2、VEFGR−1(flt−1)、VEGF、VEGFR、VEGFR−3(flt−4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA−1、VLA−4、VNRインテグリン、フォン−ウィルブランド病因子、WIF−1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、ならびにホルモンおよび成長因子の受容体。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記述したpI操作は、治療用抗体に対してなされる。使用認可済み、臨床試験中、または開発中の数多くの抗体が、本発明のpI変異型から利益を得る可能性がある。これらの抗体は、本明細書においては、「臨床産生物および候補」と称する。したがって、好ましい実施形態では、本発明のpIを操作した定常領域は、様々な臨床産生物および候補に有用になり得る。例えば、CD20を標的とする数多くの抗体は、本発明のpI操作から利益を得る可能性がある。例えば、本発明のpI変異型は、本質的にリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC/Genentech/Roche)と類似した抗体中で有用になり得る(例えば、米国5,736,137を参照)、非ホジキンスリンパ腫の治療の目的に認可されたキメラ抗CD20抗体;HuMax−CD20、現在、Genmabによって開発中の抗CD20、米国第5,500,362号に記載の抗CD20抗体、AME−133 (Applied Molecular Evolution)、hA20 (immunomedics, Inc.)、HumaLYM (Intracel)、およびPRO70769 (「Immunoglobulin Variants and Uses Thereof」という名称のPCT/米国特許第2003/040426号)。EGFR(ErbB−1)、Her2/neu(ErbB−2)、Her3 (ErbB−3)、Her4(ErbB−4)を含め、上皮細胞成長因子受容体の系列のメンバーを標的とする多数の抗体が、pIを操作した本発明の定常領域から利益を得る可能性がある。 例えば、pIを操作した本発明の定常領域は、乳癌の治療目的に認可されたヒト化抗Her2/neu抗体である、トラスツズマブ (Herceptin(登録商標)、Genentech) (例えば、米国第5,677,171号を参照);Genentechが現在、開発中のペルツズマブ (rhuMab−2C4、Omnitarg(商標));米国第4,753,894号に記載の抗Her2 抗体;多種多様な癌のための臨床試験中のキメラ抗EGFR抗体である、セツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Imclone) (米国第4,943,533号;PCT WO96/40210);Abgenix−Immunex−Amgenが現在、開発中のABX−EGF(米国第6,235,883号);Genmabが現在、開発中のHuMax−EGFr (USSN第10/172,317号); 425、EMD55900、EMD62000、およびEMD72000 (Merck KGaA) (米国第5,558,864号;Murthyら、1987、Arch Biochem Biophys. 252(2):549−60;Rodeckら、1987、J Cell Biochem. 35(4):315−20; Kettleboroughら、1991、Protein Eng.4(7):773−83); ICR62 (Institute of Cancer Research)(PCT WO95/20045;Modjtahediら、1993、J. Cell Biophys. 1993、22(1−3):129−46; Modjtahediら、1993、Br J Cancer. 1993、67(2):247−53; Modjtahediら、1996、Br J Cancer、73(2):228−35; Modjtahediら、2003、Int J Cancer、105(2):273−80); TheraCIM hR3(YM Biosciences, Canada and Centro de Immunologia Molecular,Cuba(米国第5,891,996;米国第6,506,883; Mateoら、1997、Immunotechnology、3(1):71−81); mAb−806 (Ludwig Institue for Cancer Research、Memorial Sloan−Kettering) (Jungbluthら、2003、Proc Natl Acad Sci USA.100(2):639−44); KSB−102 (KS Biomedix); MR1−1 (IVAX、National Cancer Institute) (PCT WO第0162931A2号);ならびにSC100 (Scancell) (PCT WO第01/88138号)に実質的に類似した抗体で有用になり得る。もう1つの好ましい実施形態では、本発明のpIを操作した定常領域は、B細胞慢性リンパ性白血病の治療目的に現在、認可されているヒト化モノクローナル抗体である、アレムツズマブ (Campath(登録商標)、Millenium)で有用になり得る。本発明のpIを操作した定常領域は、 以下に限定されないが、Ortho Biotech/Johnson & Johnsonにより開発された抗CD3抗体である、ムラモナブ−CD3 (Orthoclone OKT3(登録商標))、IDEC/Schering AGによって開発された抗CD20抗体である、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、Celltech/Wyethによって開発された抗CD33 (p67タンパク質)抗体である、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、Biogenによって開発された抗LFA−3Fc融合体である、アレファセプト(Amevive(登録商標))、Centocor/Lillyによって開発されたアブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、Novartisによって開発されたバシリキシマブ (Simulect(登録商標))、MedImmuneにより開発されたパリビズマブ(Synagis(登録商標))、Centocorにより開発された抗TNFalpha抗体である、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、Abbottにより開発された抗TNFalpha抗体である、アダリムマブ(Humira(登録商標))、Celltechにより開発された抗TNFalpha抗体である、Humicade(商標)、Immunex/Amgenにより開発された抗TNFalpha Fc融合体である、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、Abgenixによって開発中の抗CD147抗体である、ABX−CBL、Abgenixによって開発中の抗IL8抗体である、ABX−IL8、Abgenixによって開発中の抗MUC18抗体である、ABX−MA1、Antisomaによって開発中の抗MUC1である、ペムツモマブ(Pemtumomab)(R1549、90Y−muHMFG1)、Antisomaによって開発中の抗MUC1である、Therex (R1550)、Antisomaによって開発中のAngioMab(AS1405)、Antisomaによって開発中のHuBC−1、Antisomaによって開発中のThioplatin(AS1407) 、Biogenにより開発中の抗アルファ−4−ベータ−1 (VLA−4)およびアルファ−4−ベータ−7抗体 である、Antegren(登録商標) (ナタリズマブ)、Biogenによって開発中の抗VLA−1インテグリン抗体である、VLA−1 mAb、Biogenによって開発中の抗リンフォトキシンベータ受容体(LTBR)である、LTBR mAb、Cambridge Antibody Technologyによって開発中の抗TGF−β2抗体である、CAT−152、Cambridge Antibody TechnologyおよびAbbottによって開発中の抗IL−12抗体である、J695、Cambridge Antibody TechnologyおよびGenzymeによって開発中の抗TGFβ1抗体である、CAT−192、Cambridge Antibody Technologyによって開発中の抗エオタキシン1抗体である、CAT−213、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences Inc.によって開発中の抗Blys抗体である、LymphoStat−B(商標)、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences Inc.によって開発中の抗TRAIL−R1抗体である、TRAIL−R1mAb、Genentechによって開発中の抗VEGF抗体である、Avastin(商標)(ベバシズマブ、rhuMab−VEGF)、Genentechによって開発中の抗HER 受容体ファミリー抗体、Genentechによって開発中の抗組織因子抗体である、抗組織因子(ATF)、Genentechによって開発中の抗IgE抗体、Xolair(商標)(オマリズマブ)、GenentechおよびXomaによって開発中の抗CD11a抗体である、Raptiva(登録商標)(エファリズマブ)、GenentechおよびMillenium Pharmaceuticalsによって開発中のMLN−02 Antibody (以前はLDP−02)、Genmabによって開発中の抗CD4抗体である、HuMax−CD4、Genmabおよび Amgenによって開発中の抗IL15である、HuMax−IL15、GenmabおよびMedarexによって開発中のHuMax−Inflam、GenmabおよびMedarexおよびOxford GcoSciencesによって開発中の抗ヘパラナーゼI抗体である、HuMax−Cancer、GenmabおよびMedarexによって開発中のHuMax−Lymphoma、Genmabによって開発中のHuMax−TAC、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD40L抗体である、IDEC−131、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD4抗体である、IDEC−151(クレノリキシマブ)、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD80抗体である、IDEC−114、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD23である、IDEC−152、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗マクロファージ遊走阻止因子(MIF) 抗体、Imcloneによって開発中の抗イディオタイプ抗体、BEC2、Imcloneによって開発中の抗KDR抗体、IMC−1C11、Imcloneによって開発中の抗flk−1抗体、DC101、Imcloneによって開発中の抗VEカドヘリン抗体、Immunomedicsによって開発中の抗癌胎児性抗原(CEA)抗体である、CEA−Cide(商標)(ラベツズマブ)、Immunomedicsによって開発中の抗CD22抗体である、LymphoCide(商標)(エプラツズマブ)、Immunomedicsによって開発中のAFP−Cide、Immunomedicsによって開発中のMyelomaCide、Immunomedicsによって開発中のLkoCide、Immunomedicsによって開発中のProstaCide、Medarexによって開発中の抗CTLA4抗体である、MDX−010、Medarexによって開発中の抗CD30抗体である、MDX−060、Medarexによって開発中のMDX−070、Medarexによって開発中のMDX−018、MedarexおよびImmuno−Designed Moleculesによって開発中の抗Her2抗体である、Osidem(商標)(IDM−1)、MedarexおよびGenmabによって開発中の抗CD4抗体である、HuMax(商標)−CD4、MedarexおよびGenmabによって開発中の抗IL15抗体である、HuMax−IL15、MedarexおよびCentocor/J&Jによって開発中の抗TNFα抗体である、CNTO148、Centocor/J&Jによって開発中の抗サイトカイン抗体である、CNTO 1275、MorphoSysに
よって開発中の抗細胞間接着分子−1(ICAM−1)(CD54)抗体である、MOR101および MOR102、MorphoSysによって開発中の抗繊維芽細胞成長因子受容体3(FGFR−3)抗体である、MOR201、Protein Design Labsによって開発中の抗CD3抗体である、Nuvion(登録商標) (ビジリズマブ)、Protein Design Labsによって開発中の抗ガンマインターフェロン抗体である、HuZAF(商標)、Protein Design Labsによって開発中の抗α5β1インテグリン、Protein Design Labsによって開発中の抗IL−12、Xomaによって開発中の抗Ep−CAM抗体である、ING−1、Xomaによって開発中の抗ベータ2インテグリン抗体である、MLN01、Seattle Geneticsによって開発されたpI−ADC抗体が含まれる、他の臨床産生物および候補に実質的に類似した、多種多様な抗体で有用になり得、この段落中で上に引用した参照のすべては、参照により本明細書に明白に組み込まれる。
【0100】
各鎖のカルボキシ末端は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義する。Kabatらは、重鎖および軽鎖の可変領域の数多くの一次配列を集めた。配列の保存度に基いて、彼らは個々の配列をCDRおよびフレームワークに分類し、その一覧を作成した(参照により全内容を組み込むSEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版、NIH publication、No.91−3242、E.A. Kabatらを参照)。
【0101】
免疫グロブリンのIgGサブクラスでは、重鎖中にいくつもの免疫グロブリンドメインが存在する。本明細書中、「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」は、明確な三次構造を有する免疫グロブリンの領域を意味する。本発明における関心対象は、定常重(CH)ドメインおよびヒンジドメインを含む、重鎖ドメインである。IgG 抗体の文脈では、IgGアイソタイプは、各々3つのCH領域を有する。したがって、IgGの文脈においては、「CH」ドメインは、次の通りである:「CH1」は、Kabatに倣い、EUインデックスに従って、位置118〜220を指す。「CH2」は、Kabatに倣い、EUインデックスに従って、位置237〜340を指し、「CH3」は、Kabatに倣い、EUインデックスに従って、位置341〜447を指す。本明細書に示し、以下で記述する通り、pI変異型は、後述のCH領域の1つまたは複数、ならびにヒンジ領域に存在することが可能である。
【0102】
本明細書に示す配列は、CH1領域、位置118から始まることに注意されるべきである;注釈がある場合を除き、可変領域は含まれない。例えば、配列ID番号:2の最初のアミノ酸は、配列一覧では位置「1」と指定されるが、EU番号付与スキームでは、CH1領域の位置118に相当する。
【0103】
重鎖のIgドメインのもう1つの種類は、ヒンジ領域である。本明細書において「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」または「免疫グロブリンヒンジ領域」は、抗体の第1および第2の定常ドメイン間にアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EU位置220で終わり、IgG CH2ドメインは残基EU位置237で始まる。したがって、IgGの場合、抗体ヒンジは、本明細書において、位置221(IgG1のD221)から236(IgG1のG236)を含むものと定義され、ここで番号付与は、Kobatに倣い、EUインデックスに従うものとする。一部の実施形態では、例えば、Fc領域の文脈において、より下流のヒンジが含まれ、ここで「より下流のヒンジ」は、一般に位置226または230を指す。本明細書の記載にある通り、pI変異型は、ヒンジ領域にも作成することができる。
【0104】
軽鎖は、一般に、2つのメインを含み、それは可変軽ドメイン(軽鎖CDRを含み、可変重ドメインと一緒に、Fv領域を形成する), および定常軽鎖領域(しばしばCLまたはCκと呼ばれる)である。
【0105】
以下に概略を示す、追加的な置換のために関心対象となるもう1つの領域は、Fc領域である。本明細書で用いられる場合、「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」は、第一の定常領域免疫グロブリンドメインおよび、場合によっては、ヒンジの一部を除外する抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインの柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMの場合、Fcは、J鎖を含むことがあり得る。IgGの場合、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2 およびCγ3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCγ1(Cγ1)からCγ2 (Cγ2)の間のより下流のヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は、変動する可能性もあるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、C226またはP230からカルボキシ末端を含むものと定義され、ここで番号付与は、KabatにあるEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、以下でより詳しく記述するように、アミノ酸の変更は、例えば、1つまたは複数のFcγR受容体への結合またはFcRn受容体への結合を変更するなどの目的で、Fc領域に加えられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は完全長である。本明細書において、「完全長抗体」は、可変および定常領域を含め、本明細書に概略を記す1つまたは複数の変更を含め、抗体の自然な生物学的形態を形成する構造を意味する。
【0107】
あるいは、抗体は、様々な構造を取ることがあり得、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書中では、「抗体ミメティック」と呼ぶこともある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(「抗体コンジュゲート」と呼ぶこともある)、および各々のフラグメントに制限されないが、これらを含む。
【0108】
1つの実施形態において、抗体は、pI操作可能な少なくとも1つの定常ドメインを含んでいる限り、抗体フラグメントである。具体的な抗体フラグメントは、以下に制限されないが、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインから成るFabフラグメント、(ii)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント、(iii)2つの連結されたFabフラグメントを含む2値フラグメントである、F(ab’)2フラグメント、(vii)VHドメインおよびVLドメインが、抗原結合部位を形成するために2つのドメインを会合させるペプチドリンカーによって連結される、一本鎖Fv分子(scFv)、(全内容を参照により本明細書に組み込む、Birdら、1988、Science 242:423−426、Hustonら、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. 米国、85:5879−5883)、(iv)遺伝子融合により構築された多価もしくは多特異性フラグメントである、「二重特異性抗体」または「トリアボディ(triabodies)」(全内容を参照により本明細書に組み込む、Tomlinsonら、2000、Methods Enzymol. 326:461−479;WO94/13804; Holligerら、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. 米国、90:6444−6448)を含む。
【0109】
使用できるその他の抗体フラグメントとしては、pIを操作してある本発明のCH1、CH2、CH3、ヒンジ、およびCLドメインの1つまたは複数を含むフラグメントが挙げられる。 例えば、Fc融合体は、別のタンパク質に融合された(任意でヒンジ領域を伴う、CH2およびCH3)Fc領域の融合体である。数多くのFc領域が当業で公知であり、本発明のpI変異型を追加することにより、改善することができる。現在の場合、抗体融合体は、CH1;CH1、CH2およびCH3;CH2;CH3;CH2およびCH3;CH1およびCH3を含むように作成することができ、本明細書中に記載されたpI変異型の組合せを活用して、これらのいずれかまたはすべては、任意で、ヒンジ領域を伴うように作成することが可能である。
B.キメラ抗体およびヒト化抗体
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種由来の混合物、例えば、キメラ抗体および/またはヒト化抗体とすることができる。一般に、「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」は、どちらも複数の種由来の領域を組み合わせた抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、従来、マウス(または、場合によってはラット)由来の可変領域およびヒト由来の定常領域を含む。「ヒト化抗体」は、一般に、ヒト抗体にある配列とスワップした可変ドメインフレームワーク領域を有するヒト以外の抗体を指す。一般に、ヒト化抗体においては、CDRを除き、抗体全体がヒト由来ポリヌクレオチドによってコードされるか、または、そのCDR内を除き、その種の抗体と同一である。このCDRは、その一部または全部が、ヒト以外の生物に由来する核酸によってコード化されており、抗体を作成するために、ヒト抗体可変領域のベータシート骨格に移植され、その特異性は移植されたCDRにより決定される。このような抗体の作成については、例えば、すべて、その全内容を参照により組み込むWO92/11018、Jones、1986、Nature 321:522−525、Verhoeyenら、1988、Science 239:1534−1536に記述されている。 初期の移植した構築体で失われた親和性を取り戻すには、選択したアクセプターフレームワーク残基の対応するドナー残基への「逆突然変異」がしばしば要求される(すべてその全内容を参照により組み込む、米国第5530101号; 米国第5585089号;米国第5693761号;米国第5693762号; 米国第6180370号;米国第5859205号;米国第5821337号;米国第6054297号;米国第6407213号)。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域、一般的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み、したがって、一般には、ヒトFc領域を含む。ヒト化抗体は、遺伝子操作した免疫系を有するマウスを使って生成することも可能である。参照により、全内容を組み込むRoqueら、2004、Biotechnol. Prog. 20:639−654。ヒト以外の抗体をヒト化し、作り直すための種々多様な技法および方法が、当業ではよく知られている(すべて、全内容が参照により組み込まれるTsurushitaおよびVasquez、2004、Humanization of Monoclonal Antibodies、Molecular Biology of B Cells、533−545、Elsevier Science(米国)、およびこれらの中で引用される文献を参照されたい)。ヒト化方法は、すべて、全内容を参照によって組み込むJonesら、1986、Nature 321:522−525;Riechmannら、1988;Nature 332:323−329; Verhoeyenら、1988、 Science、239:1534−1536;Queenら、1989、Proc Natl Acad Sci、USA 86:10029−33;Heら、1998、J. Immunol. 160:1029−1035;Carterら、1992、Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−9、Prestaら、1997、Cancer Res. 57(20):4593−9;Gormanら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4181−4185;O’Connorら、1998、Protein Eng 11:321−8に記載されている方法に制限されないが、これらを含む。ヒト化またはヒト以外の抗体可変領域の高原性を引き下げるその他の方法は、全内容を参照により組み込む、例えば、Roguskaら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969−973に記述されているような、リサーフェイシング方法を含むこともできる。1つの実施形態において、親抗体は、当業で公知のように、親和性成熟化されている。構造をベースとする方法は、例えば、USSN第11/004,590号に記載されているように、ヒト化および親和性成熟に使用することができる。選択をベースとする方法は、以下に限られないが、すべて、全内容が参照により組み込まれるWuら、1999、J. Mol. Biol.294:151−162; Bacaら、1997、J. Biol. Chem. 272(16):10678−10684; Rosokら、1996、J. Biol. Chem. 271(37):22611−22618;Raderら、1998、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8910−8915;Kraussra、2003、Protein−Engineering 16(10):753−759に記載されている方法を含め、抗体可変領域のヒト化および/または親和性成熟の目的に使用され得る。他のヒト化方法は、以下に制限られないが、すべて、全内容が参照により組み込まれる、USSN 09/810,510;Tanら、2002、J. Immunol. 169:1119−1125;De Pascalisら、2002、J. Immunol. 169:3076−3084に記載されている方法も含め、CDRの一部のみの移植を伴うこともあり得る。
【0111】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、多特異性抗体、とりわけ、「二重特異性抗体 (二重特異性抗体)」と呼ばれることもある、「二重特異性抗体(bispecific antibodies)]とすることができる。これらは、2つ(もしくはそれ以上)の異なる抗原、または同一の抗原上の異なるエピトープに結合する抗体である。二重特異性抗体は、当分野で公知の多種多様な方法で製造することができ(参照により、全内容が組み込まれるHolligerおよびWinter、1993、Current Opinion Biotechnol. 4:446−449)、例えば、化学的手法またはハイブリッド・ハイブリドーマから調製される。場合によっては、多特異性(例えば、二重特異性 )抗体は好ましくないこともある。
【0112】
1つの実施形態において、抗体はミニボディである。ミニボディは、CH3ドメインに結合したscFvを含む、最小化された抗体様タンパク質である。参照により、全内容が組み込まれる、Huら、1996、Cancer Res. 56:3055−3061。本事例では、CH3ドメインは、pI操作したものとすることができる。いくつかの場合では、scFvは、Fc領域に結合させることができ、ヒンジ領域の一部または全体を含んでもよい。
【0113】
本発明の抗体は、一般に、単離されているか、または組換え型である。本明細書で開示される多種多様なポリペプチドを記述する目的で使われるとき、「単離されている」は、同定され、発現された細胞または細胞培養から分離および/または回収されたポリペプチドを意味する。普通は、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体がほとんど存在しない抗体を指す。
【0114】
特定の抗原またはエピトープに対して「特異的に結合している」または「特異的に結合した」または「特異的である」は、非特異的な相互作用とは、計測できる程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子(これは、一般に、結合活性を持たない同様の構造の分子である)の結合と比較して、分子の結合を測定することにより、測定可能である。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子との競合により、判定することができる。
【0115】
特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、抗原またはエピトープに対して、少なくとも約10
−4M、少なくとも約10
−5M、少なくとも約10
−6M、少なくとも約10
−7M、少なくとも約10
−8M、少なくとも約10
−9M、あるいは、少なくとも約10
−10M、少なくとも約10
−11M、少なくとも約10
−12Mまたはそれ以上のKDを有する抗体により示されることが可能であり、ここで、KDは、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指す。一般に、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原またはエピトープに対して、対照分子の20倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍またはそれ以上のKDを有する。
【0116】
また、特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、抗体またはエピトープに対して、対照と比較して、少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍またはそれ以上のKAまたはKaを有する抗体により、示されることが可能であり、ここで、KAまたはKaは、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を指す。
C.pI変異型
【0117】
本発明は、抗体のpI変異型の生成に関する。「pI」は、分子(個々のアミノ酸と抗体の両方を含む)の等電点を指し、特定の分子または表面が帯びている全体の電荷が0となるpHである。さらに、本発明は、本明細書において、pH7にてのタンパク質の「荷電状態」の変化を指すこともある。すなわち、IgG1の野生型重定常領域は荷電状態が+6であるのに対し、IgG2の重定常領域の荷電状態は0である。(配列ID番号:193の重鎖定常ドメインおよび配列ID番号:117の軽鎖定常ドメインを有する)変異型9493は、重定常領域と軽定常領域の両方に12個の置換があり、その結果、荷電状態は−30になっている。
【0118】
本発明は、「pI抗体」を形成するための、抗体のpI変異型の生成に関する。pI変異型は、アミノ酸変異を親分子に導入することにより作成される。この文脈において、「変異」は、通常、アミノ酸置換であるが、本明細書で示されているように、アミノ酸の欠失および挿入も行うことができ、したがって、変異として定義されている。
【0119】
「pI変異型」または「等電点変異型」または「pI置換」またはこれらに文法的に相当する言葉は、本明細書において、アミノ酸を変異させた結果、その位置におけるpIが低下するものを差す。多くの実施形態において、これは、その特定の位置にある原初(例えば、野生型)のアミノ酸よりも低いpIを有するアミノ酸置換を行うことを意味する。いくつかの実施形態では、これは、(構造が許すのであれば)高いpIを有するアミノ酸を欠失させるか、または、低いpI、例えば、後述する低pI「テール(tails)」を有するアミノ酸を挿入することを意味することもある。
【0120】
図36に示すように、アミノ酸が異なれば、pIも異なる。ただし、この図は、アミノ酸のpIを、タンパク質という文脈ではなく、個々の組成物として示しているが、傾向は同じである。本発明の文脈におけるpI変異型は、この場合、IgG抗体の少なくとも重定常ドメインもしくは軽定常ドメイン、または両方において、タンパク質のpIの減少に寄与するように作られている。本明細書に概要を記すアミノ酸変異を1つまたは複数含むように操作された抗体は、本明細書中で「pI抗体」と呼ばれることもある。
【0121】
一般に、「pI変異型」は、より低いpIを持つアミノ酸により置換するか、または低いpIのアミノ酸を挿入することにより、結果として、抗体の全体のpIを減少させる、より高いpIのアミノ酸の変異を指す。(後述するように、さらに、pI変異型を補って、安定性の向上などをもたらすために、非pI変異型が構造的に追加されることが多い)。より低いpIのアミノ酸による変更を加える定常ドメイン位置の選択には、そのアミノ酸の溶媒接触性が検討されるが、一般に、それが唯一の要因ではない。つまり、IgG分子の既知の構造に基づき
図2に示されているように、各位置は、完全に露出されているか、完全に遮蔽されているか(例えば、分子の内部にある)、または部分的に露出されている。この評価は、
図2では、CH1ドメインおよびCк軽内の各残基の「露出率」として示されている。いくつかの実施形態では、より低いpIのアミノ酸による置換の候補位置は、少なくとも50%露出されており、60、70、80+%を超える露出は、実質的に100%露出された残基と同様に、本発明において、有用である。
【0122】
図示されていないが、重鎖のヒンジ領域、CH2およびCH3ならびに軽鎖のCLドメインに対しても、露出率を計算するための標準および市販のプログラムを使って、同じ計算を実施することができる。
【0123】
pIの低下は、複数の方法の1つ、すなわち、より高いpIのアミノ酸(例えば、正電荷状態)を、中性のpIで置換する、より高いpIのアミノ酸をより低いpIのアミノ酸または低pIのアミノ酸で置換する、または中性のpIのアミノ酸を低pIのアミノ酸で置換する、のいずれかで行うことができる。いくつかの場合では、構造が許す場合には、1つまたは複数のアミノ酸の欠失または挿入は、例えば、高pIのアミノ酸の欠失または1つまたは複数の低pIのアミノ酸の挿入によっても実行することができる。したがって、例えば、アルギニン(pIは11.15)はリジン(pIは9.59、依然として高いが、より低い)、グリシンもしくはセリンなどの中性アミノ酸、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの低pI変異型によって置換することができる。
【0124】
pI変異型は、多くの場合、(本明細書で概略を説明するように、重もしくは軽または両方である)野生型IgG定常ドメインである出発配列または親配列と比較して、変異型であると定義される。すなわち、野生型の特定位置にあるアミノ酸は、「天然」アミノ酸と呼ばれ、この位置でのアミノ酸置換(または欠失もしくは挿入)は、「非天然」アミノ酸と呼ばれる。例えば、本明細書中の実施形態の多くは、pI変異が発生する親配列として、IgG1重鎖定常領域を使う。したがって、いくつかの実施形態では、「非天然」アミノ酸は、IgG1配列との比較による。例えば、IgG1の位置119にあるアミノ酸はセリンであるため、置換可能な非天然アミノ酸は、グルタミン酸である。したがって、 配列ID番号:193では、位置119にあるアミノ酸は非天然のグルタミン酸である。同様に、IgG2定常ドメインで出発したとき、天然および非天然アミノ酸は、野生型IgG2配列に比較される。
【0125】
当業者には理解されるであろう通り、様々なIgG分子から融合またはハイブリッドを作成することが可能である。したがって、例えば、配列ID番号:28は、ハイブリッドIgG1/G2分子であり、配列ID番号:164は、ハイブリッドIgG2/G1分子である。この文脈において、「非天然」または「非野生型」置換は、問題の位置にあるアミノ酸が、その位置が生じた源となる親野生型配列とは異なっていることを意味する;すなわち、交差点がアミノ酸100と101との間にあり、N末端がIgG1を起点とし、C末端がIgG2を起点とする場合、位置90の「非天然」アミノ酸は、IgG1配列に比較される。
【0126】
したがって、非野生型IgGドメイン、例えば、すでに変異型を有するIgGドメインを、出発分子または親分子として使用することが可能である。これらの場合には、上述のように、野生型配列に戻るのでない限り、置換は「非天然」である。
【0127】
一般に、本発明のpI変異型は、pI抗体の正電荷を減少させるように選択される。
重鎖pI変異型
【0128】
いくつかの実施形態では、pI変異型は、少なくともIgG抗体の重鎖ドメインのCH1領域で作成される。この実施形態では、変異は、独立かつ任意に、位置119、131、133、137、138、164、192、193、196、199、203、205、208、210、214、217および219から選択される。これらの17の位置の可能なすべての組合せを作成することができ;例えば、pI抗体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、または17個のCH1 pI 置換を有することがあり得る。さらに、本明細書で記述するように、どの単一または組合せのCH1変異型も、さらに後述するように、任意のCH2、CH3、ヒンジおよびLC変異型とも、独立かつ任意に組み合わせることができる。
【0129】
さらに、
図2に示すように、位置121、124、129、132、134、126、152、155、157、159、101、161、162、165、176、177、178、190、191、194、195、197、212、216および218のアスパラギン酸またはグルタミン酸の置換を加えることができる。
【0130】
CH1ドメインのpIの低下に役に立つ具体的な置換としては、以下に制限されないが、位置119の非天然のグルタミン酸;位置131の非天然のシステイン;位置133の非天然のアルギニン、リジンまたはグルタミン; 位置137の非天然のグルタミン酸;位置138の非天然のセリン;位置164の非天然のグルタミン酸;位置192の非天然のアスパラギン;位置193の非天然のフェニルアラニン;位置196の非天然のリジン;位置199の非天然のトレオニン;位置203の非天然のアスパラギン酸;位置205の非天然のグルタミン酸またはグルタミン;位置208の非天然のアスパラギン酸;位置210の非天然のグルタミン酸またはグルタミン;位置214の非天然のトレオニン;位置217の非天然のアルギニン;位置219の非天然のシステインが挙げられる。本明細書で論じるように、これらの置換は、個別にも、任意の組合せでも行うことができ、好ましい組合せを、配列ID一覧に示し、以下に記述する。いくつかの場合では、pI置換のみがCH1ドメインで行われ、他の場合には、これらの置換が、他のドメイン内の他のpI変異型に、任意の組合せで追加される。
【0131】
いくつかの実施形態では、位置221、222、223、224、225、233、234、235および236を含め、変異がヒンジドメインで行われる。233〜236での変更は、IgG2骨格におけるエフェクター機能を(327Aと一緒に)増加させるように加えることができることに注意されるべきである。したがって、pI変異、特に置換は、位置221〜225の1つまたは複数で、本発明で有用な1個、2個、 3個、4個または5個の変異を使って加えることができる。ここでも、単独または他のドメイン内の他のpI変異型と組み合わせて、すべての可能な組合せが考慮される。
【0132】
ヒンジドメインのpIの低下に有用な具体的な置換としては、以下に限定されないが、 位置221の欠失、位置222の非天然のバリンまたはトレオニン、位置223の欠失、位置224の非天然のグルタミン酸、位置225の欠失、位置235の欠失、および位置236の欠失または非天然のアラニンが挙げられる。ここでも、前述同様、これらの変異は、個別および任意の組合せで行うことができ、好ましい組合せは、配列ID一覧に掲載され、後述される。いくつかの場合では、pI置換のみがヒンジドメインで実行され、その他の場合では、これらの置換が、他のドメイン内の他のpI変異型に、任意の組合せで追加される。
【0133】
いくつかの実施形態では、変異は、位置274、296、300、309、320、322、326、327、334および339を含め、CH2領域に作成することができる。ここでも、これらの10の位置のすべての可能な組合せを作成することができ;例えば、pI抗体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のCH2 pI置換を有することができる。
【0134】
CH2ドメインのpIの低下に有用な具体的な置換としては、以下に限定されないが、位置274の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置296の非天然のフェニルアラニン、位置300の非天然のフェニルアラニン、位置309の非天然のバリン、位置320の非天然のグルタミン酸、位置322の非天然のグルタミン酸、位置326の非天然のグルタミン酸、位置327の非天然のグリシン、位置334の非天然のグルタミン酸、位置339の非天然のトレオニン、およびCH2内のすべての可能な組合せおよび他のドメインとのすべての可能な組合せが挙げられる。
【0135】
この実施形態では、変異は、位置355、384、392、397、419および447から独立かつ任意に選択することができる。これらの6つの位置の可能なすべての組合せを作成することができる;例えば、pI抗体は、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のCH1 pI変異を有することができる。さらに、本明細書に記述するように、任意の単一または組合せのCH3変異型を、さらに以下で詳述するように、任意のCH2、CH1、ヒンジおよびLC変異型とも、任意かつ個別に組み合わせることができる。
【0136】
CH3ドメインのpIの低下に有用な具体的な置換としては、以下に限定されないが、位置355の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置384の非天然のセリン、位置392の非天然のアスパラギンまたはグルタミン酸、位置397の非天然のメチオニン、位置419の非天然のグルタミン酸、位置447の欠失または非天然のアスパラギン酸が挙げられる。
【0137】
したがって、総合すると、以下の重鎖定常ドメインの変異の可能な任意の組合せを、作成することができ、各変異は、任意で包含または除外される:位置119の非天然のグルタミン酸;位置131の非天然のシステイン;位置133の非天然のアルギニン、リジンまたはグルタミン;位置137の非天然のグルタミン酸;位置138の非天然のセリン;位置164の非天然のグルタミン酸;位置192の非天然のアスパラギン;位置193の非天然のフェニルアラニン;位置196の非天然のリジン;位置199の非天然のトレオニン;位置203の非天然のアスパラギン酸;位置205の非天然のグルタミン酸またはグルタミン、位置208の非天然のアスパラギン酸、位置210の非天然のグルタミン酸またはグルタミン、位置214の非天然のトレオニン、位置217の非天然のアルギニン、および位置219の非天然のシステイン、位置221の欠失、位置222の非天然のバリンまたはトレオニン、位置223の欠失、位置224の非天然のグルタミン酸、位置225の欠失、位置235の欠失、位置221の欠失、位置222の非天然のバリンまたはトレオニン、位置223の欠失、位置224の非天然のグルタミン酸、位置225の欠失、位置235の欠失、位置274の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置296の非天然のフェニルアラニン、位置300の非天然のフェニルアラニン、位置309の非天然のバリン、位置320の非天然のグルタミン酸、位置322の非天然のグルタミン酸、位置326の非天然のグルタミン酸、位置327の非天然のグリシン、位置334の非天然のグルタミン酸、位置339の非天然のトレオニン、位置355の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置384の非天然のセリン、位置392の非天然のアスパラギンまたはグルタミン酸、位置397の非天然のメチオニン、位置419の非天然のグルタミン酸、位置447の欠失または非天然のアスパラギン酸が挙げられる。
【0138】
総合すると、一部の実施形態は、
図37に示すように、0個(pI操作が軽定常ドメインのみで実施された場合)、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、22個、23個、26個、27個、28個、および29個の変異(IgG1と比較して)を有する変異型重鎖ドメインを、作成することができる。
軽鎖pI変異型
【0139】
一部の実施形態では、pI変異型は、IgG抗体の少なくとも軽鎖ドメインで作成される。この実施形態では、変異は、位置126、145、152、156、169、199、202、および207から、独立かつ任意に選択することができる。これらの8つの位置の可能なすべての組合せを作成することができる;例えば、pI抗体は、1個、2個、 3個、4個、5個、6個、7個または軽定常ドメインのpI変異を有することができる。さらに、本明細書に記述するように、任意の単一または組合せのCLドメイン変異を、任意の重鎖定常ドメインpI変異型と組み合わせることができる。
【0140】
軽鎖定常ドメインのpIの低下に有用な具体的な置換としては、以下に限定されないが、位置126の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置145の非天然のグルタミン、グルタミン酸またはトレオニン;位置152の非天然のアスパラギン酸、位置156の非天然のグルタミン酸、位置169の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置199の非天然のグルタミン酸、位置202の非天然のグルタミン酸、および位置207の非天然のグルタミン酸が挙げられる。
【0141】
総合すると、実施形態は、
図37に示すように、0個(pI操作が重定常ドメインのみで実施された場合)、1個、2個、3個、4個、5個、6個、または10個の変異(Cкと比較して)を有する変異型軽鎖ドメインを作成することができる。
重鎖および軽鎖pI変異型
【0142】
図37に示すように、重鎖および軽鎖pI変異型を使って、数多くのpI抗体を生成することができる。本明細書に概略を示し、具体的に本発明に包含することを意図しているように、
図37および配列一覧に示した任意のpIを操作した重鎖は、野生型定常軽ドメインンまたはpIを操作した軽定常ドメインのいずれかと組み合わせることができる。 同様に、仮に
図37に明確に提示されていない場合でも、pIを操作した軽鎖定常ドメインは、野生型定常重ドメインまたはpIを操作した重定常ドメインと組み合わせることができる。すなわち、「HC名」および「LC名」という欄は、考えられるすべての組合せを可能として、マトリックスを形成することを意図している。
【0143】
したがって、総合すると、以下の重鎖定常ドメイン変異と軽鎖定常ドメインとの任意の可能な組合せを、作成することができ、各変異は、任意で包含または除外することができる:a)重鎖:位置119の非天然のグルタミン酸;位置131の非天然のシステイン;位置133の非天然のアルギニン、リジンまたはグルタミン、位置137の非天然のグルタミン酸;位置138の非天然のセリン;位置164の非天然のグルタミン酸;位置192の非天然のアスパラギン;位置193の非天然のフェニルアラニン、位置196の非天然のリジン、位置199の非天然のトレオニン、位置203の非天然のアスパラギン酸、位置205の非天然のグルタミン酸またはグルタミン、位置208の非天然のアスパラギン酸、位置210の非天然のグルタミン酸またはグルタミン、位置214の非天然のトレオニン、位置217の非天然のアルギニン、位置219の非天然のシステイン、位置221の欠失、位置222の非天然のバリンまたはトレオニン、位置223の欠失、位置224の非天然のグルタミン酸、位置225の欠失、位置235の欠失、位置221の欠失、位置222の非天然のバリンまたはトレオニン、位置223の欠失、位置224の非天然のグルタミン酸、位置225の欠失、位置235の欠失、位置274の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置296の非天然のフェニルアラニン、位置300の非天然のフェニルアラニン、位置309の非天然のバリン、位置320の非天然のグルタミン酸、位置322の非天然のグルタミン酸、位置326の非天然のグルタミン酸、位置327の非天然のグリシン、位置334の非天然のグルタミン酸、 位置339の非天然のトレオニン、位置355の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置384の非天然のセリン、位置392の非天然のアスパラギンまたはグルタミン酸、位置397の非天然のメチオニン、位置419の非天然のグルタミン酸、および位置447の欠失または非天然のアスパラギン酸;ならびにb)軽鎖:位置126の非天然のグルタミン酸またはグルタミン酸;位置145の非天然のグルタミン、グルタミン酸またはトレオニン;位置152の非天然のアスパラギン酸、位置156の非天然のグルタミン酸、位置169の非天然のグルタミンまたはグルタミン酸、位置199の非天然のグルタミン酸、位置202の非天然のグルタミン酸、および位置207の非天然のグルタミン酸。
【0144】
同様に、重定常ドメインおよび軽定常ドメインの適切な対で生成することが可能な変異の数を、
図37に示し(「変異の合計数」の欄)、この数の範囲は1から37である。
III. その他のアミノ酸置換
【0145】
当業者によって理解されるであろうように、本発明のpI抗体は、pI変異型に加えて、追加のアミノ酸置換を含むことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、pI変異型を受け入れるために、荷電状態が中性または、さらには荷電状態が増加する場合でも、アミノ酸置換は、1つのアイソタイプからpI抗体 へと取り込まれる。これらは、「非pI同型変異型」と呼ばれることもある。例えば、IgG1の位置133における天然のリジンを、IgG2由来のアルギニンで置換することは、位置196にあるIgG1の天然のグルタミンをIgG2のリジンで置換すること、位置217にある天然のIgG1プロリンをIgG2のアルギニンで置換することなどと同様の変化である。この事例では、上述したように、位置133の非天然のグルタミン酸またはグルタミンで置換することで、pI変異型は、位置133でも作成することができることに、留意する必要がある。
【0147】
ヒンジ領域(位置233〜236)では、エフェクター機能を増加するために、変更を加えることができる。すなわち、IgG2がエフェクター機能を低下したため、 結果として、これらの位置にあるPVA(欠失)由来のアミノ酸をELLGに変更することができ、追加のG327A変異型も生成される。
【0148】
CH3領域では、位置384において、例えば、非天然のセリンを置換するなどで、変異を作成することができる。
【0149】
作成することのできる追加の変異には、N末端またはC末端のいずれか(抗体または融合タンパク質の構造に依存する)の「テール」、または1つもしくは複数の低pIアミノ酸の配列を追加することが含まれる;例えば、グルタミン酸およびアスパラギン酸をCH3のC末端に追加することができる;一般に、1個から5個のアミノ酸が追加される。
【0150】
本発明のpI抗体の特性
本発明のpI抗体は、pIの低下を示す。一般に、少なくとも0.5log(例えばpH点の半分に対応)の低下が見られ、少なくとも約1、1.5、2、2.5及び3低下すると、本発明で特に使用できる。pIは、当技術分野で周知のように、実験により計算するか又は決定することができる。さらに、pIが5.から5.5から6の範囲であるpI抗体は、血清半減期が良好に延長されると思われる。当業者にとって当然のことながら、及び
図30で示されるように、これより低いpIは、ますます多くの突然変異が必要となり、物理学的限界に到達するので、達成するのは困難である。
【0151】
本発明のpI抗体は、血清半減期の延長を示す。図面で示されるように、驚くべきことに、試験した全てのpI抗体の半減期が、出発分子と比較して延長している。半減期はFv部分を含む多くの因子により影響を受ける一方で、本発明のpI抗体を用いると25、50、75、100、150、200及び250%以上上昇し得る。
図34で示されるように、pI変異体は、4日前後から15日以上、半減期が延長し得る。
【0152】
さらに、本明細書中の一部の変異体は、安定性を向上させるために作製される。本明細書中で述べられるように、抗体の多くの特性がインビボでのクリアランス速度(例えば半減期に対する安定性)に影響を及ぼす。FcRn受容体に対する抗体結合に加えて、クリアランス及び半減期に寄与するその他の因子は、血清凝集、血清中での酵素性分解、免疫系による排除につながる抗体の固有の免疫原性、抗原介在性の取り込み、FcR(非FcRn)介在性取り込み及び非血清分布(例えば異なる組織区画において)である。
【0153】
従って、これらの特性の1以上に影響を与える、一部のさらなるアミノ酸置換を行うことができる。
図37で示されるように、これには、222K、274K、296Y、300Y、339A、355R、384N、392K、397V、419Q、296Y/300Y、384N/392K/397V、137G、138G、192S、193L、199I、203N、214K、137G/138G、192S/193G、199I/203N、214K/222K、138G/192S/193L及び137G/138G/192S/193Lが含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
IV.任意の及びさらなるFc改変
FcRn修飾
いくつかの実施態様において、本発明のpI変異体は、FcRn結合ドメインにおけるアミノ酸置換と組み合わせることができる。驚くべきことに、本発明は、pI変異体が独立でもよく、場合によってはFc変異体と組み合わせられてもよく、その結果、FcRn受容体に対する結合の増加ならびに半減期延長の両方が起こることを示す。
【0155】
「FcRn」又は「新生児Fc受容体」とは、本明細書中で使用される場合、IgG抗体Fc領域に結合し、少なくとも一部、FcRn遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むが限定されない何らかの生物由来であり得る。当技術分野で公知であるように、機能的FcRnタンパク質は、重鎖及び軽鎖と呼ばれることが多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖は、β−2−ミクログロブリンであり、重鎖は、FcRn遺伝子によりコードされる。本明細書中で別段の断りがない限り、FcRn又はFcRnタンパク質は、β−2−ミクログロブリンとFcRn重鎖の複合体を指す。一部の例では、FcRn変異体は、臨床治験を促進するために、ヒトFcRn受容体に結合するか又はげっ歯類もしくは霊長類受容体にさらに結合する変異体を設計することが望ましい場合がある。
【0156】
様々なこのような置換は公知であり、USSN12/341,769に記載されている。いくつかの実施態様において、次の置換の何れかを単独で又は何らかの組み合わせで含むようにするためにpI抗体を改変することができる:436I、436V、311I、311V、428L、434S、428L/434S、259I、308F、259I/308F、259I/308F/428L、307Q/434S、434A、434H、250Q/428L、M252Y/S254T/T256E、307Q/434A、307Q//380A/434A及び308P/434A。付番はKabatでのようにEUであり、置換は出発分子にとって非ネイティブであることが理解される。既に示されている通り、これらのFcRn置換は、IgG1、IgG2及びIgG1/G2ハイブリッド骨格に挿入され、IgG3及びIgG4骨格及び何らかのIgGアイソフォームの誘導体に対しても特異的に含まれる。
【0157】
いくつかの実施態様において、参照により本明細書中に明確に組み込まれる米国公開第2011/0076275号に全般的に記載されるように、可変領域、フレームワーク又はCDRの何れかにおいてpI改変を行うことも可能である。
【0158】
他の実施態様において、pI変異体は本抗体の可変領域において生成されず、例えば、ある位置でもタンパク質全体でも、意図的にアミノ酸のpIを低下させるアミノ酸置換が行われない。これは、抗体のその抗原への結合親和性を向上させるために行われるが、その結果、より低いpIのアミノ酸が付加される、可変領域における親和性成熟置換とは区別すべきである。即ち、可変領域におけるpI変異体は一般に、結合親和性に関しては顕著に「サイレント」である。
【0159】
Fc改変
FcRnに対する結合親和性を向上させ及び/又は血清半減期を延長させるために行われる置換に加えて、Fc領域において、一般にはFcγR受容体に対する結合を変化させるために、その他の置換が行われ得る。
【0160】
「Fcガンマ受容体」、「FcγR」又は「FcガンマR」とは、本明細書中で使用される場合、IgG抗体Fc領域に結合し、FcγR遺伝子によりコードされるタンパク質のファミリーの何れかのメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb及びFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1及びFcγRIIb−2を含む。)及びFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);及びアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びF158を含む)及びFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb−NA1及びFcγRIIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)(参照により全体的に組み込まれる、Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65)ならびに何らかの未発見のヒトFcγRs又はFcγRアイソフォーム又はアロタイプが含まれるが、これらに限定されない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むがこれらに限定されない、何らかの生物由来であり得る。マウスFcγRsとしては、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII−1(CD16)及びFcγRIII−2(CD16−2)ならびに何らかの未発見のマウスFcγR又はFcγRアイソフォーム又はアロタイプが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
FcγR受容体の1以上への結合を変化させるために行われ得る数多くの有用なFc置換がある。結合向上ならびに結合低下をもたらす置換は有用であり得る。例えば、FcγRIIIaへの結合が向上すると、その結果、一般にADCCが上昇することが知られており(抗体依存性の細胞介在細胞毒性;FcγRsを発現する非特異的細胞毒性細胞は、標的細胞において結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞介在性反応。同様に、FcγRIIbへの結合低下(阻害性受容体)も、ある一部の状況において有益であり得る。本発明で使用できるアミノ酸置換には、USSN11/124,620(特に
図41)、11/174,287、11/396,495、11/538,406(これらは全てその全体において参照に本明細書中に明確に組み込まれる。)で列挙されるもの及び具体的にそこで開示される変異体に対するものが含まれる。使用できる特定の変異体としては、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L及び299Tが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
V.その他の抗体修飾
親和性成熟
いくつかの実施態様において、抗体のCDRの1以上において1以上のアミノ酸修飾が行われる。一般に、何れの単一のCDRでも1又は2又は3アミノ酸のみが置換され、一般には、CDRのセット内で4、5、6、7、8 9又は10を超える変化が行われることはない。しかし、何れのCDRにおける置換ゼロ、1、2又は3個の置換の何れの組み合わせも、独立であり得、場合によっては何らかの他の置換と組み合わせられ得ることが認識されるべきである。
【0163】
一部の例において、CDRにおけるアミノ酸修飾は、「親和性成熟」と呼ばれる。「親和性成熟化」抗体は、これらの変更がない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる、1以上のCDRにおける1以上の変更を有するものである。一部の例において、稀ではあるが、抗体のその抗原に対する親和性を低下させることが望ましい場合があるが、これは一般には好ましくない。
【0164】
「親」抗体と比較した場合に、少なくとも約10%から50−100−150%以上又は1から5倍、抗原に対する抗体の結合親和性を向上させるために、親和性成熟を行うことができる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はさらにはピコモルレベルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、公知の手順により作製される。例えば、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載するMarks et al.,1992,Biotechnology 10:779−783を参照のこと。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えばBarbas,et al.1994,Proc.Nat.Acad.Sci,USA 91:3809−3813;Shier et al.,1995,Gene 169:147−155;Yelton et al.,1995,J.Immunol.155:1994−2004;Jackson et al.,1995,J.Immunol.154(7):3310−9;及びHawkins et al,1992,J.Mol.Biol.226:889−896に記載されている。
【0165】
あるいは、本発明の抗体のCDRの1以上において、「サイレント」である、例えば、抗原に対する抗体の親和性を顕著に変化させない、アミノ酸修飾を行い得る。これらは、発現の最適化(本発明の抗体をコードする核酸に対して行われ得る場合)を含む多くの理由に対して行われ得る。
【0166】
従って、変異CDR及び抗体は、本発明のCDR及び抗体の定義内に含まれ、即ち、本発明の抗体は、Ab79及びAb19のCDRの1以上におけるアミノ酸修飾を含み得る。さらに、下記で概説するように、アミノ酸修飾も独立したものであり得、場合によってはフレームワーク及び定常領域を含む、CDRの外部の何れかの領域で行われ得る。
【0167】
ADC修飾
いくつかの実施態様において、抗体−薬物複合体(ADC)を形成させるために本発明のpI抗体を薬物と複合体化させる。一般に、ADCは癌への適用において使用され、細胞毒性又は細胞分裂停止剤の局所送達のための抗体−薬物複合体の使用によって、薬物部分の腫瘍への標的送達が可能となり、これにより有効性が高まり、毒性が低下し得る。この技術の概説は、Ducry et al.,Bioconjugate Chem.,21:5−13(2010),Carter et al.,Cancer J.14(3):154(2008)及びSenter,Current Opin.Chem.Biol.13:235−244(2009)(これらは全てその全体において参照により本明細書によって組み込まれる。)で提供される。
【0168】
従って、本発明は、薬物と複合体化されたpI抗体を提供する。一般に、複合体化は、下記で詳述するように抗体に対する共有結合により行われ、一般に、リンカー、しばしばペプチド連結(下記のように、標的部位でのプロテアーゼによる切断に対して感受性となるように設計され得るか否か)に依存する。さらに、上述のように、抗体内のシステインへの連結によりリンカー−薬物単位の結合(LU−D)を行うことができる。当業者にとって当然のことながら、反応条件に依存して抗体あたりの薬物部分の数は変化し、1:1から10:1の薬物:抗体比で変動し得る。当業者にとって当然のことながら、実際の数値は平均である。
【0169】
従って、本発明は、薬物と複合体化されたpI抗体を提供する。下記のように、ADCの薬物は、細胞毒性剤、例えば化学療法剤、増殖抑制剤、毒素(例えば、細菌性、真菌性、植物又は動物起源の酵素活性のある毒素又はそれらの断片)を含むが限定されない、あらゆる数の薬剤であり得るか又は放射性同位体(即ち放射活性)が提供される。その他の実施態様において、本発明は、ADCを使用する方法をさらに提供する。
【0170】
本発明での使用のための薬物としては、細胞毒性薬、特に癌治療のために使用されるものが挙げられる。このような薬物としては一般に、DNA損傷剤、代謝拮抗剤、天然産物及びそれらの類似体が挙げられる。細胞毒性剤の代表的なクラスとしては、酵素阻害剤、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤及びチミジル酸シンターゼ阻害剤など、DNA干渉剤、DNA切断剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリンファミリーの薬物、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、分化誘導剤及びタキソールが挙げられる。
【0171】
これらのクラスのメンバーとしては、例えば、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、レウロシデイン(leurosideine)、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン(caminomycin)、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシド又はリン酸エトポシドなど、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールを含むタキサン、タキソテールレチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、カリケアマイシン、エスペラマイシン、エン−ジイン、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、カリケアマイシン、カンプトテシン、マイタンシノイド(DM1を含む)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)及びマイタンシノイド(DM4)及びそれらの類似体が挙げられる。
【0172】
毒素は抗体−毒素複合体として使用され得、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダマイシンなどの低分子毒素(Mandler et al(2000)J.Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler et al(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler et al(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(EP 1391213;Liu et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)及びカリケアマイシン(Lode et al(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993)Cancer Res.53:3336−3342)を含む。毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構によって、それらの細胞毒性及び細胞分裂停止効果を発揮し得る。
【0173】
pI抗体及び、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、カリケアマイシン及びCC1065などの1以上の低分子毒素及び毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体の複合体が企図される。
【0175】
マイタンシノイド薬物部分としての使用に適切なマイタンシン化合物は当技術分野で周知であり、公知の方法に従い、天然源から単離され、遺伝子改変技術を用いて作製され得るか(Yu et al(2002)PNAS 99:7968−7973参照)又は、マイタンシノール及びマイタンシノール類似体は、公知の方法に従い合成により調製され得る。下記のように、抗体への複合体化のためにチオール又はアミン基などの官能活性基の組み込みにより薬物を修飾し得る。
【0176】
代表的なマイタンシノイド薬物部分としては、芳香環、例えば:C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製);C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号及び同第4,307,016号)(ストレプトミセスもしくはアクチノミセスを用いた脱メチル化又はLAHを用いた脱塩素により調製);及びC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化により調製)及び他の位置での修飾を有するものが挙げられる。
【0177】
代表的なマイタンシノイド薬物部分としては、C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(H2S又はP2S5とのマイタンシノールの反応により調製);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号);C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH2OH又はCH2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア菌から調製);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの変換により調製);C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号及び同第4,315,929号)(トレウィア・ヌドロフローラ(Trewia nudlflora)から単離);C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号及び同第4,322,348号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの脱メチル化により調製);及び4,5−デオキシ(米国特許第号4,371,533号)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製)などの修飾を有するものも挙げられる。
【0178】
特に使用されるものは、DM1(参照により組み込まれる米国特許第5,208,020号において開示)及びDM4(参照により組み込まれる米国特許第7,276,497号により開示)である。5,416,064、WO/01/24763、7,303,749、7,601,354、USSN12/631,508、WO02/098883、6,441,163、7,368,565、WO02/16368及びWO04/1033272(これらの全てが、それらの全体において明確に参照により組み込まれる)における多くのさらなるマイタンシノイド誘導体及び方法も参照のこと。
【0179】
例えば米国特許第5,208,020号;同第5,416,064号;同第6,441,163号及び欧州特許第EP 0 425 235 B1号(これらの開示は、明確に参照により本明細書中に組み込まれる。)において、マイタンシノイドを含有するADC、これを調製する方法及びそれらの治療的使用が開示されている。Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)は、ヒト結直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に連結されるDM1と呼ばれるマイタンシノイドを含むADCを記載した。この複合体は、培養結腸癌細胞に対して非常に細胞毒性が強いことが分かり、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。
【0180】
Chari et al.,Cancer Research 52:127−131(1992)は、ヒト結腸癌細胞株上の抗原に結合するマウス抗体A7又はHER−2/neu癌遺伝子に結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1にジスルフィドリンカーを介してマイタンシノイドが複合体化された、ADCを記載する。細胞あたり3x105のHER−2表面抗原を発現するヒト乳癌細胞株SK−BR−3において、TA.1−マイタンソノイド(maytansonoid)複合体の細胞毒性をインビトロで試験した。薬物複合体は、遊離マイタンシノイド薬物と同程度の細胞毒性を達成し、これは、抗体分子あたりのマイタンシノイド分子数を増加させることによって向上させ得た。A7−マイタンシノイド複合体は、マウスにおいて低い全身的細胞毒性を示した。
【0181】
アウリスタチン及びドラスタチン
いくつかの実施態様において、ADCは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチド類似体及び誘導体、アウリスタチンに複合体化されたpI抗体を含む(米国特許第5,635,483号;同第5,780,588号)。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解及び核及び細胞分裂を妨げ(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)、抗癌(米国特許第5,663,149号)及び抗真菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を通じて抗体に連結され得る(WO02/088172)。
【0182】
代表的なアウリスタチン実施態様には、2004年3月28日公開のSenter et al,Proceedings of the American Association for Cancer Research,Volume 45,Abstract Number 623で開示され、米国特許出願第2005/0238648号(その開示は、その全体において明確に参照により組み込まれる。)に記載されるN−末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDFが含まれる。
【0183】
代表的なアウリスタチン実施態様はMMAEである(
図10で示し、抗体薬物複合体のリンカー(L)への共有結合を波線で示す;その全体において明確に参照により組み込まれる米国特許第6,884,869号を参照のこと)。
【0184】
別の代表的なアウリスタチン実施態様は、抗体薬物複合体のリンカー(L)への共有結合を波線で示す、
図10で示されるMMAFである(その全体において明確に参照により組み込まれる米国特許第2005/0238649号、同第5,767,237号及び同第6,124,431号)。
【0185】
(本明細書中でさらに記載される)MMAE又はMMAF及び様々なリンカー成分を含むさらなる代表的な実施態様は、次の構造及び略号(Abは抗体を意味し、pは1から約8である)を有する。
【0186】
一般に、ペプチドに基づく薬物部分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製され得る。このようなペプチド結合は、例えばペプチド化学の分野で周知である液相合成法(E.Schroder and K.Lubke,”The Peptides”,volume 1,pp 76−136,1965,Academic Press参照)に従い調製され得る。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許第5,635,483号;米国特許第5,780,588号;Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettit et al(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719−725;Pettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859−863;及びDoronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778−784の方法に従い、調製され得る。
【0187】
カリケアマイシン
他の実施態様において、ADCは、1以上のカリケアマイシン分子に複合体化された本発明の抗体を含む。例えば、マイロターグは、最初の市販ADC薬物であり、ペイロードとしてカリケアマイシンγ1を使用する(その全体において参照により組み込まれる米国特許第4,970,198号を参照のこと)。さらなるカリケアマイシン誘導体は、米国特許第5,264,586号、同第5,384,412号、同第5,550,246号、同第5,739,116号、同第5,773,001号、同第5,767,285号及び同第5,877,296号(全て明確に参照により組み込まれる。)に記載されている。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、ピコモル濃度以下で2本鎖DNA破壊を起こすことができる。カリケアマイシンファミリーの複合体の調製については、米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、同第5,877,296号(全てAmerican Cyanamid Companyに対するもの)を参照のこと。使用され得るカリケアマイシンの構造類似体には、γ1I、α2I、α2I、N−アセチル−γ1I、PSAG及びθI1が含まれるが、限定されない(Hinman et al.,Cancer Research 53:3336−3342(1993),Lode et al.,Cancer Research 58:2925−2928(1998)及びAmerican Cyanamidに対する上述の米国特許)。抗体が複合体化され得る別の抗腫瘍薬は、抗葉酸剤であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAの両者は、細胞内作用部位を有し、原形質膜を容易に横断しない。従って、抗体介在性の内在化を通じたこれらの薬剤の細胞取り込みによってそれらの細胞毒性効果が大きく向上する。
【0188】
デュオカルマイシン
CC−1065(参照により組み込まれる4,169,888を参照)及びデュオカルマイシンは、ADCで利用される抗腫瘍抗生物質ファミリーのメンバーである。これらの抗生物質は、アポトーシスをもたらす事象のカスケードを開始させる、副溝のアデニンのN3で配列選択的にDNAをアルキル化することを通じて作用すると思われる。
【0189】
デュオカルマイシンの重要なメンバーには、デュオカルマイシンA(参照により組み込まれる米国特許第4,923,990号)及びデュオカルマイシンSA(参照により組み込まれる米国特許第5,101,038号)及び米国特許第7,517,903号、同第7,691,962号、同第5,101,038号;同第5,641,780号;同第5,187,186号;同第5,070,092号;同第5,070,092号;同第5,641,780号;同第5,101,038号;同第5,084,468号、同第5,475,092号、同第5,585,499号、同第5,846,545号、WO2007/089149、WO2009/017394A1、同第5,703,080号、同第6,989,452号、同第7,087,600号、同第7,129,261号、同第7,498,302号及び同第7,507,420号(これらは全て明確に参照により組み込まれる。)に記載のような多数の類似体が含まれる。
【0190】
VI.他の細胞毒性剤
本発明の抗体と複合体化することができる他の抗腫瘍剤としては、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、同第5,770,710号に記載の、まとめてLL−E33288複合体として知られる薬剤のファミリーならびにエスペラマイシン(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
【0191】
使用することができる酵素活性のある毒素及びそれらの断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、アレウリテス・フォルディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラカ・アメリカナ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルディカ・カランチア(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232を参照のこと。
【0192】
本発明は、抗体と核酸分解活性がある化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNaseなど)との間で形成されるADCをさらに企図する。
【0193】
腫瘍の選択的破壊のために、本抗体は、放射活性が高い原子を含み得る。様々な放射性同位体は、放射性共役抗体の作製のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。
【0194】
公知のようにして、複合体に放射性又は他の標識が組み込まれ得る。例えば、ペプチドを生合成し得るか又は、例えば水素の代わりにフッ素−19を含む適切なアミノ酸前駆体を用いて化学的アミノ酸合成によって合成し得る。ペプチドにおいてシステイン残基を介してTc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111などの標識を連結し得る。リジン残基を介してイットリウム−90を連結し得る。ヨウ素−123を組み込むためにIODOGEN法(Fraker et al(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)を使用することができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy(免疫シンチグラフィにおけるモノクローナル抗体)」(Chatal,CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に記載する。
【0195】
複数の抗体を含む組成物に対して、薬物負荷は、抗体あたりの平均薬物分子数であるpによって表される。薬物負荷は、抗体あたり1から20の薬物(D)の範囲であり得る。複合反応の調製における抗体あたりの平均薬物数は、質量分析、ELISAアッセイ及びHPLCなどの従来の手段により特徴を評価し得る。pに関して抗体−薬物複合体の定量的分布も調べることができる。
【0196】
一部の例において、他の薬物負荷がある抗体−薬物複合体からの、pがある一定の値である均一な抗体−薬物複合体の分離、精製及び特徴評価は、逆相HPLC又は電気泳動などの手段により達成し得る。代表的な実施態様において、pは、2、3、4、5、6、7もしくは8又はそれらの分数である。
【0197】
当業者にとって公知の何らかの技術によって、抗体−薬物複合体化合物の作製を完遂することができる。簡単に述べると、本抗体−薬物複合体化合物は、抗体単位としてpI抗体と、薬物と、場合によっては、薬物及び結合剤を連結するリンカーと、を含み得る。
【0198】
結合剤への薬物及び/又はリンカーの共有結合のために、多くの様々な反応が利用可能である。これは、リジンのアミン基、グルタミン酸及びアスパラギン酸の自由カルボン酸基、システインのスルフィドリル基及び芳香族アミノ酸の様々な部分を含む結合剤、例えば抗体分子のアミノ酸残基、の反応によって遂行され得る。共有結合の一般に使用される非特異的方法は、化合物のカルボキシ(又はアミノ)基を抗体のアミノ(又はカルボキシ)基に連結するためのカルボジイミド反応である。さらに、化合物のアミノ基を抗体分子のアミノ基に連結するために、ジアルデヒド又はイミドエステルなどの二官能性物質が使用されてきた。
【0199】
シッフ塩基反応も結合剤への薬物の連結に対して利用可能である。この方法は、グリコール又はヒドロキシ基を含有する薬物の過ヨウ素酸酸化を含み、従ってアルデヒドが形成され、次いでこれを結合剤と反応させる。結合剤のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して結合が起こる。薬物と結合剤との共有結合のためにカップリング剤としてイソチオシアネートを使用することもできる。他の技術が当業者にとって公知であり、本発明の範囲内である。
【0200】
いくつかの実施態様において、適切な条件下でリンカーの前駆体である中間体を薬物と反応させる。その他の実施態様において、薬物及び/又は中間体上で反応基が使用される。続いて、適切な条件下で、薬物と中間体との間の反応産物又は誘導体化薬物を本発明のpI抗体と反応させる。
【0201】
本発明の複合体を調製する目的のためにより都合のよい化合物の反応を行うために、所望の化合物に対して化学的修飾も行われ得ることが理解されよう。例えば、官能基、例えばアミン、ヒドロキシル又はスルフィドリルは、薬物の活性又は他の特性に与える影響が最小限であるか又は許容可能である位置で薬物に付加され得る。
【0202】
VII.リンカー単位
一般に、本抗体−薬物複合体化合物は、薬物単位と抗体単位との間にリンカーを含む。いくつかの実施態様において、リンカーは、適切な環境下でリンカーの切断により抗体から薬物単位が放出されるように、細胞内又は細胞外条件下で切断可能である。例えば、ある種のプロテアーゼを分泌する固形腫瘍は、切断可能リンカーの標的となり得;その他の実施態様において、この標的は、利用される細胞内プロテアーゼである。また他の実施態様において、リンカー単位は切断可能ではなく、例えばライソソームにおける抗体分解によって、薬物が放出される。
【0203】
いくつかの実施態様において、リンカーは、細胞内環境(例えばライソソーム又はエンドソーム又はカベオラ内)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えばライソソーム性又はエンドソーム性プロテアーゼを含むが限定されない細胞内ぺプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素によって切断されるぺプチジルリンカーであり得る。いくつかの実施態様において、ぺプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3アミノ酸長以上である。
【0204】
切断剤は、カテプシンB及びD及びプラスミン(これらは全て、ジペプチド薬物誘導体を加水分解し、その結果、標的細胞内部で活性薬物が放出されることが知られる)を含み得るが限定されない(例えばDubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123参照)。CD38発現細胞に存在する酵素により切断可能であるぺプチジルリンカー。例えば、癌性組織で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシン−Bにより切断可能であるぺプチジルリンカーを使用することができる(例えばPhe−Leu又はGly−Phe−Leu−Glyリンカー(配列番号X))。このようなリンカーの他の例は、例えばその全体において及び全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第6,214,345号に記載されている。
【0205】
いくつかの実施態様において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なぺプチジルリンカーは、Val−Citリンカー又はPhe−Lysリンカーである。(例えばval−citリンカーを用いたドキソルビシンの合成を記載する、米国特許第6,214,345号を参照のこと。)。
【0206】
他の実施態様において、切断可能リンカーはpH感受性がある、即ちある一定のpH値で加水分解に対して感受性がある。一般に、pH−感受性があるリンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、ライソソームにおいて加水分解可能である酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が使用され得る。(例えば米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653−14661を参照のこと)。このようなリンカーは、血中など、中性pH条件下で比較的安定であるが、ライソソームのpH付近であるpH5.5又は5.0以下では不安定である。ある一定の実施態様において、加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に連結されるチオエーテルなど(例えば米国特許第5,622,929号参照)である。
【0207】
また他の実施態様において、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えばジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーは、当技術分野で公知であり、例えば、SATA(N−スクシンイミジル−5−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)及びSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)−、SPDB及びSMPTを用いて形成され得るものを含む。(例えばThorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924−5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987参照。米国特許第4,880,935号も参照)。
【0208】
他の実施態様において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnson et al.,1995,Anticancer Res.15:1387−93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1299−1304)又は3’−N−アミド類似体(Lau et al.,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1305−12)である。
【0209】
また他の実施態様において、リンカー単位は切断可能ではなく、抗体分解によって薬物が放出される(その全体において及び全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる米国公開第2005/0238649号参照)。
【0210】
多くの実施態様において、リンカーは自壊型(self−immolative)である。本明細書中で使用される場合、「自壊型スペーサー」という用語は、安定な三分子複合体の分子に、2個の間隔があいた化学部分と一緒に共有結合可能な2官能性化学部分を指す。第一の部分へのその結合が切断されると、第一の部分は第二の化学部分から自然に分離されよう。例えば、自壊型リンカーを通じて薬物及び切断可能基質が場合によっては連結される薬物−切断可能基質複合体に対するものであり、全てが明確に参照により組み込まれる、WO2007059404A2、WO06110476A2、WO05112919A2、WO2010/062171、WO09/017394、WO07/089149、WO07/018431、WO04/043493及びWO02/083180を参照のこと。
【0211】
リンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性ではないことが多い。本明細書中で使用される場合、リンカーの内容において「細胞外環境に対して実質的に感受性がない」という用語は、細胞外環境中(例えば血漿中)に抗体−薬物複合体化合物が存在する場合、切断されるリンカーが、抗体薬物複合体化合物の試料中でリンカーの約20%、15%、10%、5%、3%を超えないか又は約1%を超えないことを意味する。
【0212】
リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性であるか否かは、例えば、血漿とともに抗体−薬物複合体化合物を所定の時間にわたり温置し(例えば、2、4、8、16又は24時間)、次いで血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することによって判定することができる。
【0213】
他の相互排他的でない実施態様において、リンカーは細胞内在化を促進する。ある種の実施態様において、リンカーは、治療剤と複合体化される場合(即ち、本明細書中で記載のような抗体−薬物複合体化合物のリンカー−治療剤部分の環境において)、細胞内在化を促進する。また他の実施態様において、リンカーは、アウリスタチン化合物及び本発明のpI抗体の両方に対して複合体化される場合、細胞内在化を促進する。
【0214】
本組成物及び方法とともに使用することができる様々な代表的リンカーは、WO2004−010957、米国公開第2006/0074008号、米国公開第号20050238649号及び米国公開第2006/0024317号(これらはそれぞれ、その全体において及び全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
【0215】
VIII.薬物負荷
薬物負荷は、pにより表され、これは分子中の抗体あたりの平均薬物部分数である。薬物負荷(「p」)は、抗体あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の部分(D)であり得るが、平均数は分数又は少数であることが多い。一般に、1から4の薬物負荷は有用であることが多く、1から2も有用である。本発明のADCは、1から20の薬物部分の範囲と複合体化された抗体の集合を含む。複合体化反応からのADCの調製における抗体あたりの平均薬物部分数は、質量分析及びELISAアッセイなどの従来の手段により特徴を調べ得る。
【0216】
pに関するADCの定量的分布も調べることができる。一部の例において、電気泳動などの手段により、pが他の薬物負荷があるADCからのある一定の値である均一ADCの、分離、精製及び特徴評価を達成し得る。
【0217】
いくつかの抗体−薬物複合体に対して、pは、抗体上の連結部位数により制限され得る。例えば、連結がシステインチオールである場合、上記の代表的な実施態様におけるように、抗体は、1個のみもしくはいくつかのシステインチオール基を有し得るか又はリンカーが連結され得る1個のみもしくはいくつかの十分に反応性のあるチオール基を有し得る。ある種の実施態様において、より高い薬物負荷、例えばp>5により、ある種の抗体−薬物複合体の凝集、不溶性、毒性又は細胞透過性の喪失が引き起こされ得る。ある種の実施態様において、本発明のADCに対する薬物負荷は、1から約8;約2から約6;約3から約5;約3から約4;約3.1から約3.9;約3.2から約3.8;約3.2から約3.7;約3.2から約3.6;約3.3から約3.8;又は約3.3から約3.7の範囲である。実際に、ある種のADCの場合、抗体あたりの薬物部分の最適比率が8未満であり得、約2から約5であり得ることが示されている。US2005−0238649A1号(その全体において参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。
【0218】
ある種の実施態様において、複合体化反応中に、理論的最大値よりも少ない薬物部分を抗体に複合体化させる。抗体は、下記で論じるように、例えば、薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分と連結され得る多くの遊離及び反応性システインチオール基を含有せず;実際に、抗体中の殆どのシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。ある種の実施態様において、抗体は、反応性のあるシステインチオール基を生成させるために、部分的又は完全還元条件下でジチオスレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元され得る。ある種の実施態様において、リジン又はシステインなどの反応性のある求核基を露出するために、抗体を変性条件下に供する。
【0219】
ADCの負荷(薬物/抗体比率)を様々な方法で、例えば、(i)抗体に対する薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬のモル過剰量を制限すること、(ii)複合体化反応時間又は温度を制限すること、(iii)システインチオール修飾に対する部分的又は限定的な還元条件、(iv)システイン残基の数及び位置が、リンカー−薬物連結の数及び/又は位置の調節のために修飾されるように、組み換え技術によって抗体のアミノ酸配列を改変することによって、調節し得る(本明細書中で及びその全体において本明細書中に参照により組み込まれるWO2006/034488において開示されるように調製されるチオMab又はチオFabなど)。
【0220】
複数の求核基が薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬、次いで薬物部分試薬と反応する場合、得られる産物は、抗体に連結される1以上の薬物部分の分布があるADC化合物の混合物であることが理解されるべきである。抗体に特異的であり、薬物に特異的である二重ELISA抗体アッセイによって、混合物から抗体あたりの平均薬物数を計算し得る。質量分析によって混合物において個々のADC分子量が同定され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分離され得る。
【0221】
いくつかの実施態様において、電気泳動又はクロマトグラフィーによって複合体化混合物から単一の負荷値を有する均一ADCを単離し得る。
【0222】
ADCの細胞毒性効果を判定する方法
細胞において薬物又は抗体−薬物複合体が細胞分裂停止及び/又は細胞毒性効果を発揮するか否かを判定する方法は公知である。一般に、細胞培養液中で抗体薬物複合体の標的タンパク質を発現する哺乳動物細胞に曝露すること;約6時間から約5日間、細胞を培養すること;及び細胞生存能を測定することによって、抗体薬物複合体の細胞毒性又は細胞分裂停止活性を測定し得る。抗体薬物複合体の、生存性(増殖)、細胞毒性及びアポトーシス(カスパーゼ活性化)の誘導を測定するために、細胞に基づくインビトロアッセイを使用することができる。
【0223】
抗体薬物複合体が細胞分裂停止効果を発揮するか否かを調べるために、チミジン組み込みアッセイを使用し得る。例えば、96ウェルプレートのウェルあたり細胞5,000個の密度で標的抗原を発現する癌細胞を72時間培養し、この72時間の最後の8時間、0.5μCiの
3H−チミジンに曝露することができる。抗体薬物複合体の存在下及び非存在下で、この培養の細胞への
3H−チミジンの取り込みを測定する。
【0224】
細胞毒性を判定するために、壊死又はアポトーシス(プログラム化細胞死)を測定することができる。壊死には、一般的には原形質膜の透過性の向上;細胞の膨潤及び原形質膜の破裂が付随する。アポトーシスは、一般には、膜ブレビング、細胞質の凝縮及び内在性エンドヌクレアーゼの活性化を特徴とする。癌細胞におけるこれらの効果の何れかを判定することから、癌の治療において抗体薬物複合体が有用であることが示される。
【0225】
ニュートラルレッド、トリパンブルー又はALAMAR(商標)blueなどの色素取り込みを細胞中で調べることによって、細胞生存能を測定することができる(例えばPage et al.,1993,Intl.J.Oncology 3:473−476参照)。このようなアッセイにおいて、色素を含有する培地中で細胞を温置し、細胞を洗浄し、分光光度計により色素の細胞取り込みを反映する残存色素を測定する。細胞毒性を測定するためにタンパク質−結合色素スルホローダミンB(SRB)も使用することができる(Skehan et al.,1990,J.Natl.Cancer Inst.82:1107−12)。
【0226】
あるいは、生存しており死んでいない細胞を検出することによって、哺乳動物細胞生存及び増殖に対する定量的比色アッセイにおいてMTTなどのテトラゾリウム塩を使用する(例えばMosmann,1983,J.Immunol.Methods 65:55−63参照)。
【0227】
例えば、DNA断片化などを測定することによって、アポトーシスを定量することができる。DNA断片化の定量的インビトロ測定のための市販の測光法が利用可能である。(断片化DNAにおける標識されるヌクレオチドの取り込みを検出する)TUNEL及びELISAに基づくアッセイを含むこのようなアッセイの例は、Biochemica,1999,no.2,pp.34−37(Roche Molecular Biochemicals)に記載されている。
【0228】
細胞における形態変化を測定することによってアポトーシスを調べることもできる。例えば、壊死と同様に、ある種の色素の取り込みを測定することによって、原形質膜の完全性の喪失を調べることができる(例えば蛍光色素、例えばアクリジンオレンジ又は臭化エチジウムなど)。アポトーシス細胞数を測定するための方法は、Duke and Cohen,Current Protocols in Immunology(Coligan et al.eds.,1992,pp.3.17.1−3.17.16)により記載されている。細胞をDNA色素で標識することもでき(例えばアクリジンオレンジ、臭化エチジウム又はヨウ化プロピジウム)、核の内膜に沿ったクロマチン凝縮及び辺縁趨向について細胞を観察する。アポトーシスを調べるために測定することができる他の形態変化には、例えば細胞質凝縮、膜ブレビングの増加及び細胞収縮が含まれる。
【0229】
培養物の接着及び「浮遊」区画の両方においてアポトーシス細胞の存在を測定することができる。例えば、上清を除去し、接着細胞をトリプシン処理し、遠心洗浄段階(例えば2000rpmで10分間)後に調製物を合わせ、(例えばDNA断片化を測定することによって)アポトーシスを検出することによって、両区画を回収することができる。(例えばPiazza et al.,1995,Cancer Research 55:3110−16参照)。
【0230】
インビボで、適切な動物モデルにおいて、本発明のpI抗体の治療用組成物の効果を評価することができる。例えば、ヌード又はSCIDマウスなど、癌外植片又は継代異種移植片組織が免疫不全動物に導入されている異種間癌モデルを使用することができる(Klein et al.,1997,Nature Medicine 3:402−408)。腫瘍形成、腫瘍退縮又は転移などの阻害を測定するアッセイを使用することによって、有効性を測定することができる。
【0231】
望ましい送達方法に適切な担体を含む医薬組成物になるように、前述の方法の実施において使用される治療用組成物を処方することができる。適切な担体には、治療用組成物と組み合わせられた場合に、治療用組成物の抗腫瘍機能を保持し、一般に患者の免疫系と反応性がない何らかの物質が含まれる。例としては、滅菌リン酸緩衝液食塩水、静菌性水などの何らかの数の標準的医薬担体が挙げられるが、限定されない(全般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16
th Edition,A.Osal.、Ed.,1980参照)。
【0232】
グリコシル化
別のタイプの共有修飾は、グリコシル化の変更である。別の実施態様において、1以上の改変グリコフォームを含むように本明細書中で開示される抗体を修飾することができる。「改変グリコフォーム」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗体に共有結合される炭水化物組成物を意味し、この炭水化物組成物は、親抗体とは化学的に異なる。改変グリコフォームは、エフェクター機能を促進又は低下させることを含むが限定されない様々な目的のために有用であり得る。改変グリコフォームの好ましい形態は、脱フコシル化であり、これは、おそらくはFcγRIIIa受容体へのより密着した結合を通じて、ADCC機能の向上と相関することが示されている。この内容において、「脱フコシル化」は、宿主細胞で産生される抗体の殆どが実質的にフコースを欠くこと、例えば生成抗体の90−95−98%が抗体の炭水化物部分の成分としてあまりフコースがないことを意味する(一般にFc領域のN297で結合)。機能面で定義されるように、脱フコシル化抗体は一般に、FcγRIIIa受容体に対して少なくとも50%以上の親和性を示す。
【0233】
当技術分野で公知の様々な方法によって改変グリコフォームを生成させ得る(Umana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180;Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294;Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473;US 6,602,684;USSN 10/277,370;USSN10/113,929;PCT WO00/61739A1;PCT WO 01/29246A1;PCT WO02/31140A1;PCT WO02/30954A1(これらは全て、全体的に参照により組み込まれる。);(Potelligent(登録商標)technology [Biowa,Inc.,Princeton,NJ];GlycoMAb(登録商標)グリコシル化改変技術[Glycart Biotechnology AG,Zurich,Switzerland])。これらの技術の多くは、例えば改変又はそうではない様々な生物又は細胞株(例えばLec−13 CHO細胞又はラットハイブリドーマYB2/0細胞においてIgGを発現させることによって、グリコシル化経路に関与する酵素(例えばFUT8[α1,6−フコシルトランスラーゼ(transerase)]及び/又はβ1−4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII[GnTIII])を制御することによって又はIgGが発現された後に炭水化物を修飾することによって、Fc領域に共有結合するフコシル化され及び/又は二分化するオリゴ糖のレベルを調整することに基づく。例えばSeattle Geneticsの「糖改変抗体」又は「SEA技術」は、生成中にフコシル化を阻害する修飾糖類を添加することによって機能し;その全体において参照により本明細書によって組み込まれる例えば20090317869を参照のこと。改変グリコフォームは一般に、異なる炭水化物又はオリゴ糖類を指し;従って、抗体は改変グリコフォームを含み得る。
【0234】
あるいは、改変グリコフォームは、異なる炭水化物又はオリゴ糖類を含むIgG変異体を指し得る。当技術分野で公知であるように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば下記で論じるような特定のグリコシル化アミノ酸残基の有無)又はタンパク質が産生される宿主細胞もしくは生物の両方に依存し得る。特定の発現系は下記で論じる。
【0235】
ポリペプチドのグリコシル化は一般に、N−結合又はO−結合の何れかである。N−結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の連結を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(Xは、プロリン以外の何れかのアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素による連結のための認識配列である。従って、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列の何れかの存在によって、グリコシル化部位となる可能性がある部位が生じる。O−結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、通常はセリン又はスレオニンへの、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースのうち1つの連結を指すが、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0236】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、都合よく、ひとつ以上の上記のトリペプチド配列(N−結合グリコシル化部位の場合)を含有するようにアミノ酸配列を変化させることにより遂行される。出発配列への1以上のセリン又はスレオニン残基の付加又はそれらによる置換によっても変更が行われ得る(O−結合グリコシル化部位の場合)。容易にするために、DNAレベルでの変化を通じて、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように予め選択された塩基において標的ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって、抗体アミノ酸配列を好ましく改変する。
【0237】
抗体上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、タンパク質へのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによる。これらの手順は、N−及びO−結合グリコシル化に対するグリコシル化能を有する宿主細胞におけるタンパク質の生成を必要としないという点で有利である。使用されるカップリング方式に依存して、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフィドリル基、例えばシステインのものなど、(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、スレオニンもしくはヒドロキシプロリンのものなど、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンのものなど又は(f)グルタミンのアミド基に、糖が連結され得る。これらの方法は、WO87/05330及びAplin及びWriston,1981,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(両者とも参照により組み込まれる。)に記載されている。
【0238】
出発抗体に存在する炭水化物部分の除去を(例えば翻訳後に)化学的又は酵素的に遂行し得る。化学的脱グリコシルには、化合物トリフルオロメタンスルホン酸又は同等の化合物へのタンパク質の露出が必要である。この処置の結果、連結糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く殆ど又は全ての糖の切断が起こり、その一方でポリペプチドは無傷のままである。化学的脱グリコシルは、Hakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52により及びEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131(両者とも全体的に参照により組み込まれる)により記載されている。Thotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350(全体的に参照により組み込まれる)により記載されるように、様々なエンド及びエキソグリコシダーゼの使用によって、ポリペプチドにおける炭水化物部分の酵素切断を達成することができる。全体的に参照により組み込まれるDuskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105により記載されるように、化合物ツニカマイシンの使用によって、潜在的グリコシル化部位でのグリコシル化が妨げられ得る。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を阻止する。
【0239】
抗体の別のタイプの共有修飾は、例えば、Nektar Therapeuticsからの2005−2006 PEG Catalog(Nektarウェブサイトで利用可能)米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号又は同第4,179,337号(全て全体的に参照により組み込まれる)に記載の方式で、様々なポリオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンなどを含むがこれらに限定されない様々な非タンパク性ポリマーに抗体を連結することを含む。さらに、PEGなどのポリマーの付加を促進するために、抗体内の様々な位置において当技術分野で公知であるように、アミノ酸置換が行われ得る。例えば、全体的に参照により組み込まれる米国公開第2005/0114037A1号を参照のこと。
【0240】
核酸及び宿主細胞
本発明のpI抗体をコードする核酸が本発明内に含まれる。重及び軽鎖定常ドメインの両方がpI抗体に含まれる場合、一般にこれらは、抗体の四量体構造を生成させるために、標準的宿主細胞(例えばCHO細胞など)内で組み合わせられるそれぞれをコードする核酸を使用して作製される。1つのpI改変定常ドメインのみを作製している場合、1個の核酸のみが使用される。
【0241】
IX.インビボ投与のための抗体組成物
治療法における本発明のpI抗体の使用は、抗原結合成分に依存し;例えば全長標準治療用抗体の場合、抗体のFvが結合する抗原に依存する。即ち、当業者にとって当然のことながら、分子の半減期の延長というさらなる利益を得ながら特異的な疾患の治療を行うことができる。この結果、投与頻度の減少(患者コンプライアンスがより良好になり得る)、用量低下及び製造コスト低下を含むがこれらに限定されない様々な利益が得られ得る。
【0242】
凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、任意の医薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤(Remingto’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])と、所望の純度を有する抗体を混合することによって、本発明に従い使用される抗体の処方物が保存のために調製される。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、使用される投与量及び濃度で受容者に対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及びその他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム塩化物;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロへキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類及び、グルコース、マンノース又はデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0243】
本明細書中の処方物は、処置を受ける特定の適用症に対して、必要に応じて複数の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するもの、も含有し得る。例えば、他の特異性を有する抗体を提供することが望ましい場合がある。あるいは又はさらに、本組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖抑制剤及び/又は低分子アンタゴニストを含み得る。このような分子は、意図する目的に有効である量での組み合わせで適切に存在する。
【0244】
例えばコアセルベーション技術によって又は界面重合化によって調製されるマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に又はマクロエマルジョン中にも、活性成分が封入され得る。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)で開示されている。
【0245】
インビボ投与のために使用しようとする処方物は、滅菌状態であるか又はそれに近い状態でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通じたろ過により容易に遂行される。
【0246】
持続放出製剤を調製し得る。持続放出製剤の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれるが、このマトリクスは、造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性のエチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテート及び乳酸−グリコール酸などのポリマーによって100日を超えて分子を放出できるようになる一方で、ある種のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。
【0247】
封入化抗体が長時間にわたり体内に残留する場合、37℃で湿気に曝露される結果、これらは変性又は凝集し得、それにより生物学的活性を喪失し、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機構に依存して、安定化について合理的計画を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通じた分子間S−−S結合形成であることが発見される場合、スルフィドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を調節し、適切な添加物を使用し、特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって、安定化を達成し得る。
【0248】
X.投与手順
ボーラスとしての静脈内投与又は長時間にわたる連続点滴によって、筋肉内、腹腔内、イントラセロブロスピナル(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所又は吸入経路によってなど、公知の方法に従って、本発明の抗体及び化学療法剤を対象に投与する。抗体の静脈内又は皮下投与が好ましい。
【0249】
XI.治療手順
本発明の方法において、疾患又は状態に関して陽性治療反応を提供するために、治療を使用する。「陽性治療反応」は、疾患又は状態の改善、及び/又は疾患又は状態に関連する症状の改善を指す。例えば、陽性治療反応は、疾患の次の改善の1以上を指す:(1)新生物細胞数の減少;(2)新生物細胞死の増加;(3)新生物細胞生存の阻害;(5)腫瘍成長の阻害(即ち、ある程度遅延させること、好ましくは停止させること);(6)患者生存率の向上;及び(7)疾患又は状態に関連する1以上の症状のある程度の緩和。
【0250】
ある一定の疾患又は状態に特異的な標準化反応基準によって、その疾患又は状態における陽性治療反応を判定することができる。磁気共鳴画像(MRI)スキャン、x−放射線画像、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像、内視鏡検査及び骨髄穿刺(BMA)及び循環系の腫瘍細胞の計数を含む腫瘍生検試料採取などのスクリーニング技術を用いて、腫瘍形態の変化(即ち全体的腫瘍量、腫瘍サイズなど)に対して腫瘍反応を評価することができる。
【0251】
これらの陽性治療反応に加えて、治療を受けている対象において、疾患に関連する症状の改善の有益な効果が認められ得る。
【0252】
従って、B細胞腫瘍の場合、対象において、いわゆるB症状、即ち夜間の発汗、発熱、体重減少及び/又は蕁麻疹の軽減が認められ得る。前癌状態の場合、pI治療剤での治療は、関連する悪性状態の発現、例えば意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)に罹患している対象における多発性骨髄腫の発現を阻止し及び/又は発現までの時間を延長させ得る。
【0253】
疾患の改善は、完全反応として特徴付けられ得る。「完全反応」は、以前に何らかの異常があったX線検査、骨髄及び脳脊髄液(CSF)又は骨髄腫の場合は異常な単クローン性タンパク質が正常になるという、臨床的に検出可能な疾患の消失が意図される。
【0254】
このような反応は、本発明の方法に従う治療後、少なくとも4から8週間又場合によっては6から8週間持続し得る。あるいは、疾患の改善は、部分的反応であるものとして分類され得る。「部分的反応」は、4から8週間又は6から8週間持続し得る、新しい病変がない、全ての測定可能な腫瘍量(即ち対象に存在する悪性細胞数又は腫瘍塊の測定容積又は異常モノクローナルタンパク質の量)の少なくとも約50%の低下を意図する。
【0255】
本発明に従う治療には、「治療的有効量」の薬物が使用されることが含まれる。「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成するための、投与時に及び必要な時間にわたり有効である量を指す。
【0256】
治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重ならびに薬物が個体において所望の反応を誘導する能力などの因子に従って変動し得る。治療的有効量はまた、抗体又は抗体部分のあらゆる毒性又は悪影響よりも治療的に有益な効果が上回るものでもある。
【0257】
腫瘍治療のための「治療的有効量」は、その疾患進行の安定化能によっても測定され得る。ヒト腫瘍における効能を予測する動物モデル系において化合物の癌抑制能を評価し得る。
【0258】
あるいは、当業者にとって公知のインビトロアッセイにより、化合物の細胞成長抑制能又はアポトーシス誘導能を試験することによって、この組成物特性を評価し得る。治療的有効量の治療用化合物によって、腫瘍サイズが縮小し得るか又は対象において症状が改善され得る。当業者は、対象の体格、対象の症状の重症度及び特定の組成物又は選択される投与経路などの因子に基づいて、このような量を決定することができる。
【0259】
最適な所望反応(例えば治療反応)を提供するために、投与計画を調整する。例えば、単回ボーラスを投与し得るか、数回の分割用量を長時間にわたり投与し得るか又は治療状況の要件により指定されるように、用量を比例的に増減させ得る。投与の簡便性及び投与の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を処方し得る。投与単位形態は、本明細書中で使用される場合、治療しようとする対象に対する単位投与量として適切である、物理的に個別である単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と合わせられて所望の治療効果を生じさせるために計算された活性化合物の所定量を含有する。
【0260】
本発明の投与単位形態に対する意義は、(a)活性化合物の独自の特徴及び達成しようとする特定の治療効果及び(b)個体における感受性の治療のためのこのような活性化合物の技術分野における固有の制限によって決まり、これに直接依存する。
【0261】
本発明で使用されるpI抗体に対する有効な投与量及び投与計画は、治療しようとする疾患又は状態に依存し、当業者により決定され得る。
【0262】
本発明で使用される治療的有効量のpI抗体に対する代表的な非限定範囲は、約0.1から100mg/kg、約0.1から50mg/kgなど、例えば約0.1から20mg/kg、約0.1から10mg/kgなど、例えば約0.5、約0.3、約1又は約3mg/kgなどである。別の実施態様において、1mg/kg以上、1から20mg/kgの用量など、例えば5から20mg/kgの用量、例えば8mg/kgの用量で本抗体を投与する。
【0263】
当技術分野で通常の技術を有する医療専門家は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方し得る。例えば、医師又は獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるものより低いレベルで医薬組成物において使用される薬剤の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増量させ得る。
【0264】
ある実施態様において、10から500mg/kg、例えば200から400mg/kgなどの週間投与量での点滴によってpI抗体を投与する。例えば1から8回、例えば3から5回、このような投与を反復し得る。連続点滴により、2から24時間、例えば2から12時間にわたり、投与を行い得る。
【0265】
ある実施態様において、毒性を含む副作用を低下させる必要がある場合、24時間超など、長時間にわたりゆっくりとした連続点滴によってpI抗体を投与する。
【0266】
ある実施態様において、8回以下、例えば4から6回など、250mgから2000mg、例えば300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mg又は2000mgなどの週間投与量で、pI抗体を投与する。2から24時間、例えば2から12時間などの時間にわたり、連続点滴によって投与を行い得る。必要に応じて1回以上、例えば6ヵ月又は12ヵ月後など、このような計画を反復し得る。例えば生体試料を採取し、pI抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することにより、投与時に血中の本発明の化合物の量を測定することによって、投与量を決定するか又は調整し得る。
【0267】
さらなる実施態様において、週に1回、2週間から12週間、例えば3週間から10週間など、例えば4週間から8週間などにわたり、本pI抗体を投与する。
【0268】
ある実施態様において、例えば6ヶ月以上にわたり週に1回などの維持療法により、本pI抗体を投与する。
【0269】
ある実施態様において、pI抗体の1回の点滴と、それに続く放射性同位体と結合させたpI抗体の点滴を含む計画によって、本pI抗体を投与する。例えば7日から9日後にこの計画を反復し得る。
【0270】
非限定例として、本発明に従う治療は、抗体の1日投与量として約0.1−100mg/kg、例えば0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kg/日の量で、第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40日のうち少なくとも1日に又はあるいは治療開始後第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20週のうち少なくとも1週に又はそれらの何らかの組み合わせで、単回又は24、12、8、6、4もしくは2時間ごとの分割用量又はそれらの何らかの組み合わせを用いて、与えられ得る。
【0271】
いくつかの実施態様において、1以上のさらなる治療剤、例えば化学療法剤と組み合わせてそのpI抗体分子を使用する。DNA損傷化学療法剤の非限定例としては、トポイソメラーゼI阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、カンプトテシン及びその類似体又は代謝物及びドキソルビシン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えばエトポシド、テニポシド及びダウノルビシン);アルキル化剤(例えばメルファラン、クロランブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン、メトトレキサート、マイトマイシンC及びシクロホスファミド);DNA干渉剤(例えばシスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン);DNA干渉剤及びフリーラジカル生成剤、例えばブレオマイシンなど;及びヌクレオシド模倣体(例えば5−フルオロウラシル、カペシチビン(capecitibine)、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及びヒドロキシウレア)が挙げられる。
【0272】
細胞複製を妨害する化学療法剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル及び関連類似体;ビンクリスチン、ビンブラスチン及び関連類似体;サリドマイド、レナリドミド及び関連類似体(例えばCC−5013及びCC−4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばイマチニブメシル酸塩及びゲフィチニブ);プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ);IκBキナーゼの阻害剤を含むNF−κB阻害剤;癌で過剰発現されるタンパク質に結合し、それにより細胞複製を下方制御する抗体(例えばトラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ及びベバシズマブ);及び、その阻害が細胞複製を下方制御する、癌において上方制御されるか、過剰発現されるか又は活性化されることが知られるタンパク質又は酵素のその他の阻害剤が挙げられる。
【0273】
いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)での治療前、これと同時に又は後に使用することができる。
【0274】
実施例
本発明を説明するために下記で実施例を提供する。これらの実施例は、何らかの特定の適用又は運用理論に本発明を拘束するものではない。本発明において論じられる全定常領域の位置について、付番はKabatのEUインデックスに従うものである(全体的に参照により組み込まれる、Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)。抗体の分野の当業者にとって当然のことながら、この慣例は、免疫グロブリンファミリーにおける保存的位置に対して正規化された参照を可能にする、免疫グロブリン配列の特異的な領域における非連続付番から構成される。従って、EUインデックスにより定義されるような所定の免疫グロブリンの位置はその連続配列に対応する必要はない。
【0275】
実施例1.pIを低下させるための非天然の電荷置換の設計
定常ドメインにおいて置換を操作することにより、より低いpIで抗体定常鎖を修飾した。塩基性アミノ酸(K又はR)を酸性アミノ酸(D又はE)に置換することによって、pIを低下させるように改変することができ、その結果、pIが最も大きく低下する。塩基性アミノ酸から中性アミノ酸へ及び中性アミノ酸から酸性アミノ酸への突然変異によってもpIが低下する。アミノ酸pK値のリストは、Bjellqvist et al.,1994,Electrophoresis 15:529−539の表1で見出すことができる。
【0276】
発明者らは、抗体CH1(Cγ1)及びCL(Cκ又はCK)領域(配列は
図1で示す)における置換を探索することにしたが、これは、Fc領域とは異なり、それらが、抗体の薬理学的特性に影響を与えるネイティブリガンドと相互作用しないからである。構造及び/又は機能における置換又は一連の置換の影響を最小限に抑えるために、どの位置を突然変異すべきかを決定することにおいて、WTアミノ酸がその隣接部位と生成させる、周囲環境及び接触数を考慮に入れた。抗体Fabドメインの関連する結晶構造を用いて、各CH1及びCK位置の溶媒露出度又は露出率(fraction exposed)を計算した。それぞれCγ1及びCKに対して
図2及び3で結果を示す。免疫グロブリンアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)間でアイソタイプである位置に対してCH1及びCLドメインを調べることによって、さらに計画が導かれた。このような変異は天然で生じるので、このような位置は置換可能であることが予想される。この分析に基づいて、pIを低下させるが、ドメインの生物物理学的特性に対する影響が最小限であることが予想される多くの置換を同定した。
【0277】
実施例2.pIが低下した改変CH1及びCK領域を有する抗VEGF抗体
抗体のpIを低下させるために、IgG1抗体のCH1及びCKドメインにおいて、アミノ酸修飾を操作した。上記の分析に基づき、重鎖CH1に対して選択される置換は、119E、133E、164E、205E、208D及び210Eであり、軽鎖Cκ置換に対する置換は、126E、145E、152D、156E、169E及び202Eであった。これらの変異定常鎖は、それぞれIgG1−CH1−pI(6)及びCK−pI(6)と呼ばれ、それらのアミノ酸配列を
図4で提供する。
【0278】
血管内皮因子(VEGF)を標的とする抗体の内容において、CH1及びCK変異体を改変した。重及び軽鎖可変領域(VH及びVL)は、様々な癌の治療に対して承認されている、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))とも呼ばれる抗体A4.6.1のヒト化型抗体である。これらの可変領域配列を
図5で提供する。低pI置換を含有する抗VEGF抗体変異体は、XENP9493ベバシズマブ−IgG1−CH1−pI(6)−CK−pI(6)と呼ばれ、この抗体の重及び軽鎖のアミノ酸配列を
図6で提供する。CH1−pI(6)の6個の置換及びCK−pI(6)の6個の置換を示すFabドメインの構造モデルを
図7で示す。WT抗VEGF(ベバシズマブ)のpI計算値は8.14である。改変抗VEGF CH1変異体のpI計算値は6.33であり、抗VEGF CK変異体の値は6.22である。重鎖及び軽鎖pI改変抗VEGF変異体が同時形質移入される場合、全長抗VEGF mAbのpI計算値は5.51である。
【0279】
哺乳動物発現ベクターpTT5において抗VEGF抗体の重及び軽鎖をコードする遺伝子を構築した。IMAGEクローンからヒトIgG1定常鎖遺伝子を得て、pTT5ベクターにサブクローニングした。抗VEGF抗体をコードするVH及びVL遺伝子を業者に委託して(commercially)合成し(Blue Heron Biotechnologies,Bothell WA)、適切なCL及びIgG1定常鎖をコードするベクターにサブクローニングした。QuikChange(登録商標)部位特異的突然変異生成法(Stratagene,La Jolla CA)を使用し、部位特異的突然変異生成を用いてアミノ酸修飾を構築した。配列の忠実度を確認するために全DNAの配列決定を行った。
【0280】
リポフェクタミン(Invitrogen,Carlsbad CA)を用いて軽鎖遺伝子(VL−Cκ)を含有するプラスミドとともに重鎖遺伝子(VH−Cγ1−Cγ2−Cγ3)を含有するプラスミドを293E細胞に同時形質移入し、FreeStyle 293倍地(Invitrogen,Carlsbad CA)中で増殖させた。増殖5日後、MabSelectレジン(GE Healthcare)を用いてプロテインA親和性によって培養上清から抗体を精製した。ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce)によって抗体濃度を測定した。
【0281】
Agilent BioanalyzerでのSDS PAGE(
図8)によって、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(
図9)、等電点(IEF)ゲル電気泳動(
図10)、Biacoreによる抗原VEGFへの結合(
図11)、示差走査熱量測定(DSC)(
図12)によって、pI改変抗VEGF mAbの特徴を調べた。全mAbがSDS−PAGE及びSECにおいて高い純度を示した。IEFゲルから、各変異体が計画した等電点を有することが示された。BiacoreにおけるVEGF結合分析から、pI改変抗VEGFがベバシズマブと同等の親和性でVEGFに結合し、このことから、設計した置換がmAbの機能を混乱させないことが示された。DSCからは、CH1及びCLの両方が置換操作されている抗VEGF変異体の温度安定性が高く、Tmが71.9℃であることが示された。
【0282】
hFcRn又はhFcRn
+マウスと本明細書中で呼ばれる、マウスFcRnに対するホモ接合ノックアウト及びヒトFcRnのヘテロ接合ノックイン(mFcRn
−/−、hFcRn
+)であるB6マウス(全体的に参照により組み込まれる、Petkova et al.,2006,Int Immunol 18(12):1759−69)において薬物動態実験を行った。被検試料には、親IgG1/2定常領域、IgG1_CH−CL_pI_engと呼ばれる、pIが5.51であるpI−改変変異体及びヒトFcRnに対する親和性を向上させる置換N434Sを含有するIgG1/2のFc変異体型が含まれた。
【0283】
体重(20−30gの範囲)により無作為化された4−7匹の雌マウス群に、抗VEGF抗体(2mg/kg)の単回静脈内尾静脈注射を行った。各時点で眼窩血管叢(orbital plexus)から血液(〜50μL)を採取し、血清を取るために処理し、分析まで−80℃で保存した。ELISAアッセイを使用して抗体濃度を調べた。捕捉試薬として組み換えVEGF(VEGF−165,PeproTech,Rocky Hill,NJ)を用いて抗体の血清濃度を測定し、ビオチン化抗ヒトκ抗体及びユウロピウム標識ストレプトアビジンを用いて検出を行った。時間分解蛍光シグナルを回収した。WinNonLin(Pharsight Inc,Mountain View CA)を用いた非コンパートメントモデルにより、個々のマウスに対してPKパラメーターを測定した。ユニフォーム・ウェイング・オブ・ポインツ(uniform weighing of points)とともに名目時間及び用量を使用した。
【0284】
図13において結果を示す。血清からの抗体の除去の特徴を示すβ相に相当する近似半減期(t1/2)値を表1で示す。pIを低下させるCH1及びCLにおける置換を含有するpI−改変変異体は、半減期が7.4日に延長し、IgG1/2と比較して2.6倍向上した。pI−改変変異体の半減期は、Fc変異体型N434Sと同等であった。抗体及びFc融合物の半減期を延長させるために、pIを低下させ、FcRnに対する親和性を向上させる抗体変異体の組み合わせが企図される。
【表1】
【0285】
実施例3.IgG定常領域のPK分析
上述のようなhuFcRnマウスにおいてベバシズマブのIgG1及びIgG2アイソタイプ型のPK試験を行った。4回の個別のPK試験からのIgG1の結果を
図14で示す。この4回の試験からの半減期は、3.0、3.9、2.8及び2.9日であり、その結果、平均半減期は3.2日となった。IgG2試験からのPKの結果を
図15で示す。IgG2の半減期は5.9日であった。
【0286】
ベバシズマブのIgG1/2及びpI−改変型からの結果とともに、IgG1及びIgG2からのPK結果を分析した。表2は、抗体のpI計算値とともに抗体の半減期を示す。これらのデータを
図16でプロットする。
【表2】
【0287】
抗体の半減期とpIとの間で相関が認められた。これらのデータは、等電点低下のための、重及び軽鎖定常領域を含む抗体定常鎖の改変が、抗体及びFc融合物の血清半減期を延長させるための新規の一般化可能なアプローチである可能性があることをさらに示す。
【0288】
実施例4.定常領域pI操作に対する改変アプローチ
様々なアプローチを用いて、タンパク質又は抗体のpI低下を遂行することができる。最大塩基性レベルにおいて、pKaが高い残基(リジン、アルギニン及びある程度はヒスチジン)を中性又は陰性残基で置換し、及び/又は中性残基を低pKa残基(アスパラギン酸及びグルタミン酸)で置換する。特定の置換は、構造における位置、機能における役割及び免疫原性を含む様々な因子に依存し得る。
【0289】
免疫原性は関心事であるので、pIを低下させる置換が免疫原性を誘発するリスクを最小限にするために努力が払われ得る。リスクを最小限にするための一方法は、変異体の突然変異性負荷を最小限にすること、即ち最小の突然変異数でpIを低下させることである。K、R又はHがD又はEで置換される電荷交換突然変異は、pIを低下させることにおいて最大の影響を有するので、これらの置換が好ましい。pIを低下させながら免疫原性のリスクを最小限に抑えるための別のアプローチは、相同のヒトタンパク質からの置換を使用することである。従って、抗体定常鎖に対して、IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)間のアイソタイプの相違から、低リスク置換がもたらされる。局所的な配列レベルで免疫認識が起こるので、即ちMHCII及びT−細胞受容体が一般には9残基長のエピトープを認識するので、配列において近接するアイソタイプ置換によって、pIを変化させる置換を行うことができる。この方法において、天然のアイソタイプに合致させるためにエピトープを延長させることができる。従って、このような置換は、他のヒトIgGアイソタイプに存在するエピトープを構成し、従って耐容されることが予想される。
【0290】
図17は、IgGサブクラスのアミノ酸配列アラインメントを示す。ボックスで囲まれた残基は、IgG間のアイソタイプの相違を示す。より高いpI(K、R及びH)又はより低いpI(D及びE)に寄与する残基を太字で強調する。天然アイソタイプに適合させるために設計された、pIを低下させるか又はエピトープを延長させるか何れかの置換を灰色で示す。
【0291】
図18は、CK及びCλ軽定常鎖のアミノ酸配列を示す。CκとCλとの間の相同性は、IgGサブクラスとの間ほどは高くない。それでもなお、置換の指針とするためにアラインメントを使用し得る。より高いpI(K、R及びH)又はより低いpI(D及びE)に寄与する残基を太字で強調する。灰色は、等電点を低下させるために、好ましくはアスパラギン酸又はグルタミン酸で置換され得るリジン、アルギニン及びヒスチジンを示す。
【0292】
タンパク質及び抗体に対してより低いpIを改変することに対する別のアプローチは、負荷電残基をN−又はC−末端に融合させることである。従って、例えば、主にアスパラギン酸及びグルタミン酸からなるペプチドが抗体重鎖、軽鎖又は両方に対してN−末端又はC−末端に融合され得る。N−末端は抗原結合部位に構造的に近いので、C末端が好ましい。
【0293】
記載の改変アプローチに基づき、抗体重鎖及び軽鎖の両方の等電点を低下させるために多くの変異体を設計した。重鎖変異体は、アイソタイプ置換の様々な組み合わせならびにC末端負荷電ペプチドを含む。ネイティブIgG1に対して、変異体は、G137E、G138S、S192N、L193F、I199T、N203D、K214T、K222T、221−225DKTHTのVEへの置換、H268Q、K274Q、R355Q、N384S、K392N、V397M、Q419E及びK447の欠失(K447#と呼ぶ。)からなる群からの1以上のアイソタイプ置換を含む(付番はEUインデックスに従う)。軽鎖変異体は、非アイソタイプ置換の様々な組み合わせ及びC末端負荷電ペプチドを含む。Cκ変異体は、K126E、K145E、N152D、S156E、K169E及びS202Eからなる群からの1以上の置換を含む(付番はEUインデックスに従う。)。
【0294】
変異体重鎖の配列を
図19で提供し、変異体軽鎖の配列を
図20で提供する。表3は、重定常鎖、軽定常鎖のpIの計算値ならびに抗VEGF抗体ベバシズマブの可変領域(Fv)を含有する全長モノクローナル抗体(mAb)のpIとともに、構築される変異体を列挙する。
【表3】
【0295】
実施例5:pI改変の電荷依存性の判定及びFcRnへの結合を促進するFc変異体との可能な組み合わせ
低pIと半減期延長との間の関係の2つの局面を試験するために、一連の新しいpI改変変異体を作製した。最初に、9493IgG1−pI(12)変異体に基づく、調節される一連の変異体を作製することによって電荷のパラメーターを調べた。これらの変異体、10017、10018及び10019は、それらのpI及びベバシズマブIgG1 WTに対する正及び負荷電残基の相違とともに表4に記載する。
【表4】
【0296】
ここで実験理論は次の通りである。半減期向上に対する機構全てが正電荷の除去に基づく場合、10018及び10019は9493と同程度良好であるはずであり、10017は延長されない。この機構が負電荷の増加に基づく場合、10018は延長されず、10017及び10019は、同等の半減期を有し、IgG1と比較して延長されるが、9493より短い。全体的なpI(又は電荷状態)が基準となる場合、結果は9493>10019>10017=10018となろう。
【0297】
電荷制御変異体セットに加えて、半減期延長、電荷状態及びFcRnのうち2つのメカニズムが適合するか否かを試験するために、pH6.0でFcRnへの結合を促進する置換と9493IgG1−pI(12)変異体を組み合わせた。これらの変異体、9992IgG1−pI(12)−N434S及び9993IgG1−pI(12)−M428L/N434Sを表4で列挙する。
【0298】
上述のような分子生物学技術を用いて、ベバシズマブの可変領域を使用して抗体変異体を構築した。抗体を発現させ、精製し、上述のように特徴を調べた。上述のようにhuFcRnマウスにおいて変異体及び対照抗体のPK試験を行った。データフィットから得た半減期とともに、血清濃度の群平均を
図21及び22でプロットする。
【0299】
この結果から、正電荷の減少及び負電荷の増加の両方が、半減期延長に寄与することが示される。さらに、この結果から、半減期をまたさらに大きく延長するために、pI低下改変及びFcRnへの結合促進を組み合わせて使用できることが示される。huFcRnマウスにおいて試験された同一Fv(ベバシズマブ)の変異体及びネイティブIgGに対して、半減期対pIの関係のプロットを
図23で提供する。このグラフは、繰り返すが、半減期とpIとの間の逆相関、ならびにpIを低下させるために改変された変異体及びFcRnへの結合を促進するFc変異体の組み合わせ可能性を示す。
【0300】
実施例6.新しいpI−改変コンストラクト
上述のように、IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)間のアイソタイプの相違を利用することによってpIを低下させる置換が免疫原性を惹起するリスクを最小化するために、労力を注ぎ得る。この原理に基づいて新しい一連の新規アイソタイプを設計した。繰り返すが、局所配列レベルで免疫認識が起こる、即ち、MHC II及びT−細胞受容体が、一般には9残基長のエピトープ認識するので、配列において近接するアイソタイプ置換によってpIを変化させる置換を遂行した。このようにして、天然のアイソタイプに適合させるためにエピトープを延長させた。従って、このような置換は、他のヒトIgGアイソタイプに存在するエピトープを構成し、従って耐容されることが予想される。
【0301】
IgG−pI−Iso2、IgG−pI−Iso2−SL、IgG−pI−Iso2−charges−only、IgG−pI−Iso3、IgG−pI−Iso3−SL及びIgG−pI−Iso3−charges−onlyと呼ばれる、設計した低pIアイソタイプをそれらのpI及びエフェクター機能特性とともに表5に記載する。
図24は、ネイティブIgGアイソタイプとのIgG−pI−Iso3の配列アラインメントを提供し、残基アイデンティティー及び、ネイティブIgGアイソタイプの1以上と比較してpIを低下させる残基を示す。
図25及び26は、IgG1とIgG−pI−Iso3との間の構造的な相違を示す。IgG−pI−Iso2、IgG−pI−Iso2−SL及びIgG−pI−Iso2−charges−onlyは、ヒンジ(233P、234V、235A)及びCH2ドメイン(327G)におけるIgG2−様残基により決定されるように、エフェクター機能が低く(弱く)なるように設計した。ヒンジ(233E、234L、235L、236G)及びCH2ドメイン(327A)におけるIgG1−様残基により決定されるように、IgG−pI−Iso3、IgG−pI−Iso3−SL及びIgG−pI−Iso3−charges−onlyをエフェクター機能が高く(強く)なるように設計した。「SL」と名付けられたアイソタイプ低pI変異体から、192S及び193Lを有するという点でこれらの変異体がIgG−pI−Iso2及びIgG−pI−Iso3とは異なることが示される。これらの位置のセリン及びロイシンは、IgG1及びIgG2に存在する隣接残基の相違ゆえに、192N/193Fよりも適合性が高いことが分かった。「charges only」と名付けられた低pIアイソタイプ変異体は、アイソタイプ置換に影響を及ぼす電荷を含有するが、隣接する、電荷を変化させない置換を含有しない。この新規アイソタイプは、pIをさらに低下させるために、ネイティブ軽鎖定常領域(Cκ又はCλ)又は置換により改変された変異体型と組み合わせられ得る。pI−改変軽定常鎖の例は、CK−pI(4)と呼ばれ、
図27で概略的に示される新しい変異体である。さらに、FcRnに対する親和性を向上させるFc変異体で新規アイソタイプを改変することができ、それにより、半減期を延長させることがさらに可能になる。このようなFc変異体としては、例えば表5に記載されるような434S又は428L/434S又は本明細書中で記載されるような他のFc変異体を挙げることができる。IgG−pI−Iso2、IgG−pI−Iso2−SL、IgG−pI−Iso2−charges−only、IgG−pI−Iso3、IgG−pI−Iso3−SL、IgG−pI−Iso3−charges−only及びCK−pI(4)のアミノ酸配列を
図28で与える。
【表5】
【0302】
半減期が延長し、他の特性が向上した抗体又はFc融合物を作製するために、新規改変アイソタイプを他のFc変異体と組み合わせることができる。例えば、IgG−pI−Iso2−SL及び/又はIgG−pI−Iso3−SLは、エフェクター機能又は免疫調整特性を向上させるためにFcγRへの結合を調節する変異239D、332E、267E及び/又は328Fを組み込み得る。例えば428L、428L/434S、T250Q/M428L、M252Y/S254T/T256E及びN434A/T307Qを含む、FcRnへの結合を向上させる他のFc変異体とこの新規アイソタイプを組み合わせることができ、これにより、インビボ半減期がさらに延長される可能性がある。代表的な重鎖を表6で記載する。ネイティブ定常軽鎖(CK又はCλ)を有する軽鎖又は、例えば、本明細書中に記載の改変定常軽鎖の何れかを含む、例えばCK−pI(4)を含む、pIを低下させる定常軽鎖修飾も組み込むものととともに、このような変異体を発現させ得る。
【表6】
【0303】
またさらにpIを低下させるため、上述のように、電荷交換突然変異、即ちK及びRをD又はEで置換した突然変異を導入することにより突然変異負荷を最小限に抑えるために、pIが低いさらなる変異重定常鎖を設計した。これらの変異体の設計を促進するために、露出率(fraction exposed)ならびにGluへの置換におけるエネルギー変化をFc領域の各K及びR残基に対して計算した(
図29)。これらの新しい変異体をpI(7)及びpI(11)と呼ぶ。pI(7)には、アミノ酸修飾K133E、K205E、K210E、K274E、R355E、K392E及び447でのLysの欠失が組み込まれ、pI(11)には、アミノ酸修飾K133E、K205E、K210E、K274E、K320E、K322E、K326E、K334E、R355E、K392E及び447でのLysの欠失が組み込まれた。これらの修飾を重定常鎖に導入し、その結果、エフェクター機能が強い抗体、IgG1−pI(7)及びIgG1−pI(11)及びエフェクター機能が弱いIgG1/2−pI(7)及びIgG1/2−pI(11)を得た。
図30で見ることができるように、mAb pIが低くなるにつれて、さらにpIを低下させるためにより多くの電荷交換置換が必要となる。これらのpI−改変変異体を表7で記載し、アミノ酸配列を
図28で提供する。
【表7】
IgG1-pI(7)= K133E/K205E/K210E/K274E/R355E/K392E/K447#
IgG1-pI(11)= K133E/K205E/K210E/K274E/K320E/K322E/K326E/K334E/R355E/K392E/K447#
IgG1/2-pI(7)= K133E/K205E/K210E/Q274E/R355E/K392E/K447#
IgG1/2-pI(11)= K133E/K205E/K210E/Q274E/K320E/K322E/K326E/K334E/R355E/K392E/K447#
CK-pI(4)= K126E/K145E/K169E/K207E
Fv=ベバシズマブにより計算したpI
【0304】
上述のような分子生物学的技術を使用して、ベバシズマブの可変領域を用いて抗体変異体を構築した。上述のように、抗体を発現させ、精製し、特徴を調べた。上述のようにhuFcRnマウスにおいて変異体及び対照抗体のPK試験を行った。データのフィットから得られた半減期とともに、
図31及び
図32で血清濃度の群平均値をプロットする。個々のマウスに対する半減期を
図33でプロットする。このデータから、
図34で示されるような半減期対pIのプロットにより示されるように、アイソタイプpI変異体からの低pIならびにN434S置換からのFcRn結合向上の相加性が明確に示される。
【0305】
実施例7.アイソタイプ軽鎖定常領域変異体
CK及びCλとの間の相同性は、IgGサブクラス間ほど高くないが(
図18で示すように)、存在する配列及び構造相同性はそれでもなお、アイソタイプ低−pI軽鎖定常領域を作製するための置換に対する指標となり得る。
図18において、より高いpI(K、R及びH)又はより低いpI(D及びE)に寄与する残基がある位置を太字で強調する。灰色は、等電点を低下させるために好ましくはアスパラギン酸又はグルタミン酸で置換され得るリジン、アルギニン及びヒスチジンを示す。CK及びCλの構造アラインメントを構築し(
図35)、いくつかのCK/Cλアイソタイプ変異体を作製するための指標として配列アラインメントとともに使用した。これらのpI−改変変異体を表8で記載し、アミノ酸配列を
図28で提供する。
【表8】
【0306】
上述のような分子生物学的技術を用いて、ベバシズマブの可変領域により抗体変異体を構築した。上述のように、抗体を発現させ、精製し、特徴を調べた。上述のようにhuFcRnマウスにおいて変異体及び対照抗体のPK試験を行った。
図32で血清濃度の群平均値ならびにこれらの変異体のうち1つ(XENP10519−IgG−pI−Iso3−SL−434S−CK−Iso(5))に対するデータのフィットから得られた半減期をプロットし、個々のマウスに対する半減期を
図33でプロットする。この変異体は、
図34で示される相関プロットにも含まれる。CK−Iso(5)軽鎖による低pIの有益性が明確に示される。