(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953310
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】カムトルク駆動型−トーションアシスト型位相器
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-536871(P2013-536871)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-540951(P2013-540951A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011058305
(87)【国際公開番号】WO2012061234
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/409,352
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィグスタン
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−177344(JP,A)
【文献】
特開2002−235513(JP,A)
【文献】
特開2009−167811(JP,A)
【文献】
特開2004−108370(JP,A)
【文献】
特開2006−090307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して回転するように配置されたハウジング(10)およびロータ(20)を有し、前記ハウジング(10)および前記ロータが、それらの間に配置され、ベーン(22)によって第1のチャンバ(16)と第2のチャンバ(18)とに分割されている少なくとも1つのキャビティ(10a)を画定し、前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とを連結する通路(26、28)をさらに有し、前記キャビティ(10a)内における前記ベーン(22)の揺動を容易にする位相器であって、
1つの逆止弁(40)と、
少なくとも1つのカムトルク駆動型(CTA)動作モードと、少なくとも1つのトーションアシスト型(TA)動作モードと、少なくとも1つの零位置との間で動作可能に可動なばね付勢式の長手方向往復動スプール(36)を有する制御弁(24)であって、前記スプール(36)が、異なる長手方向の位置で、前記第1のチャンバ(16)と、前記第2のチャンバ(18)と、前記逆止弁(40)と、作動流体供給源(46)とを互いの間で選択的に連結する、制御弁(24)と、
前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードと、前記トーションアシスト型(TA)動作モードと、前記少なくとも1つの零位置との間における移動のために、前記制御弁(24)を動作するバルブ制御ユニット(32)と、
を含み、
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記スプール(36)のランド(36i、36j)によって互いに隔離されている、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードにおけるCTA零位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、位相器。
【請求項2】
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記逆止弁(40)を介して互いに流体連通しており、カムトルク駆動力に応じて、作動流体が前記第1のチャンバ(16)から前記第2のチャンバ(18)に流れることを可能にし、かつ流体の損失を相殺するために前記作動流体供給源(46)と流体連通している、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードにおける後退タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項1に記載の位相器。
【請求項3】
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記逆止弁(40)を介して互いに流体連通しており、カムトルク駆動力に応じて、作動流体が前記第2のチャンバ(18)から前記第1のチャンバ(16)に流れることを可能にし、かつ流体の損失を相殺するために前記作動流体供給源(46)と流体連通している、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードにおける前進タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項1に記載の位相器。
【請求項4】
カムトルク駆動力がCTA動作モードで前記位相器を前進させるのに不十分になっており、損失を相殺するために前記第1のチャンバ(16)が前記作動流体供給源(46)と流体連通しており、作動流体の直接の漏れが分岐通路(28a)に流れることを防止するために前記第2のチャンバ(18)の排出口(48c)が開かれる直前にCTA再循環通路(46a)が遮断される、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードと前記トーションアシスト型(TA)動作モードとの間にある形式的零位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項1に記載の位相器。
【請求項5】
前記ベーン(22)にかかる差圧のために前記ロータ(20)が前記ハウジングに対して前進し、前記第1のチャンバ(16)が前記逆止弁(40)を介して前記作動流体供給源(46)と流体連通しており、作動流体が前記第1のチャンバ(16)内に流れることを可能にし、前記第2のチャンバ(18)が前記スプール(36)を通じて排出口通路と流体連通している、トーションアシスト型(TA)動作モードにおける前進タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項1に記載の位相器。
【請求項6】
作動流体の流れと無関係に前記ハウジング(10)と前記ロータ(20)とを互いに係止するために、解放位置と係止位置との間で可動なロックピン(60)と、
前記ロックピン(60)を、排出口(48a、48b)と前記作動流体供給源(46)との間で選択的に連結し、前記ロックピン(60)を前記係止位置と前記解放位置との間で移動する前記制御弁(24)の前記スプール(36)と、をさらに含む、請求項1に記載の位相器。
【請求項7】
少なくとも1つのカムシャフトを有する内燃機関のための可変カムタイミング位相器であって、
カムシャフトに対して同軸的に連結されたハウジング(10)およびロータ(20)であって、それらの間に少なくとも1つのキャビティ(10a)と、各対応するキャビティ(10a)内に配置され、各対応するキャビティ(10a)を第1のチャンバ(16)と第2のチャンバ(18)とに分割するベーン(22)と、を画定するハウジング(10)およびロータ(20)と、
1つの逆止弁(40)と、
長手方向往復動ばね付勢式スプール(36)内に配置された前記逆止弁(40)を備えた前記スプール(36)を有する制御弁(24)であって、前記スプール(36)が、少なくとも1つのカムトルク駆動型(CTA)動作モードと、少なくとも1つのトーションアシスト型(TA)動作モードと、少なくとも1つの零位置との間で動作可能に可動であり、前記スプール(36)が、前記第1のチャンバ(16)と、前記第2のチャンバ(18)と、前記少なくとも1つの逆止弁(40)と、作動流体供給源(46)とを互いに連結している制御弁(24)と、
前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードと、前記トーションアシスト型(TA)動作モードと、前記少なくとも1つの零位置との間における移動のために、エンジン制御ユニット(34)からの入力信号に応答して前記制御弁(24)の前記長手方向往復動スプール(36)を動作するバルブ制御ユニット(32)と、
を含み、
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記スプール(36)のランド(36i、36j)によって互いに隔離されている、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードにおけるCTA零位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、可変カムタイミング位相器。
【請求項8】
作動流体の流れと無関係に前記ハウジング(10)と前記ロータ(20)とを互いに係止するために、解放位置と係止位置との間で可動なロックピン(60)であって、前記ロックピン(60)を前記解放位置に移動するために、前記ロックピン(60)と関連する係止通路(62)が前記スプール(36)を通じて前記作動流体供給源(46)と流体連通しているロックピン(60)を含み、
前記制御弁(24)の前記スプール(36)が、排出口(48a、48b)と前記作動流体供給源(46)との間の前記ロックピン(60)を動作可能に連結している、請求項7に記載の位相器。
【請求項9】
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記逆止弁(40)を介して互いに流体連通しており、カムトルク駆動力に応じて、作動流体が前記第1のチャンバ(16)から前記第2のチャンバ(18)に流れることを可能にし、かつ流体の損失を相殺するために前記作動流体供給源(46)と流体連通している、カムトルク駆動型(CTA)動作モード内における後退タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項7に記載の位相器。
【請求項10】
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記逆止弁(40)を介して互いに流体連通しており、カムトルク駆動力に応じて、作動流体が前記第2のチャンバ(18)から前記第1のチャンバ(16)に流れることを可能にし、かつ流体の損失を相殺するために前記作動流体供給源(46)と流体連通している、カムトルク駆動型(CTA)動作モード内における前進タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項7に記載の位相器。
【請求項11】
カムトルク駆動力がCTA動作モードで前記位相器を前進させるのに不十分になっており、損失を相殺するために前記第1のチャンバ(16)が前記作動流体供給源(46)と流体連通しており、通路(28a)への作動流体の直接の漏れを防止するために、前記第2のチャンバ(18)の排出口(48c)が開かれる直前にCTA再循環通路(46a)が遮断される、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードと前記トーションアシスト型(TA)動作モードとの間にある形式的零位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項7に記載の位相器。
【請求項12】
前記ベーン(22)にかかる差圧のために前記ロータ(20)が前記ハウジングに対して前進し、前記第1のチャンバ(16)が前記逆止弁(40)を介して前記作動流体供給源(46)と流体連通しており、作動流体が前記第1のチャンバ(16)内に流れることを可能にし、前記第2のチャンバ(18)が前記スプール(36)を通じてベント通路と流体連通している、前記トーションアシスト型(TA)動作モード内における前進タイミング位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、請求項7に記載の位相器。
【請求項13】
少なくとも1つのカムシャフトを有する内燃機関のための可変カムタイミング位相器であって、
カムシャフトに対して同軸的に連結され、かつ互いに対して回転するように配置されたハウジング(10)およびロータ(20)であって、前記ハウジング(10)および前記ロータ(20)が、それらの間に、少なくとも1つのキャビティ(10a)と、各キャビティ(10a)内に配置されており、各キャビティ(10a)を第1のチャンバ(16)と第2のチャンバ(18)とに分割しているベーン(22)とを画定するハウジング(10)およびロータ(20)と、
作動流体の流れと無関係に前記ハウジング(10)と前記ロータ(20)とを互いに係止するために、解放位置と係止位置との間で可動なロックピン(60)と、
1つの内部配置式の逆止弁(40)を備えた長手方向往復動ばね付勢式スプール(36)を有する制御弁(24)であって、前記スプール(36)が、カムトルク駆動型(CTA)動作モード内における前進タイミング位置および後退タイミング位置と、トーションアシスト型(TA)動作モード内における前進タイミング位置と、少なくとも1つの零位置との間で動作可能に可動であり、前記スプール(36)が、前記第1のチャンバ(16)と、前記第2のチャンバ(18)と、前記逆止弁(40)と、作動流体供給源(46)とを互いに動作可能に連結し、排出口(48a、48b)と前記作動流体供給源(46)との間の前記ロックピン(60)を動作可能に連結している制御弁(24)と、
前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードと、前記トーションアシスト型(TA)動作モードと、前記少なくとも1つの零位置との間における移動のために、エンジン制御ユニット(34)からの入力信号に応答して前記制御弁(24)の前記長手方向往復動スプール(36)を動作する可変力ソレノイド(32)を有するバルブ制御ユニットと、を含み、
前記第1のチャンバ(16)と前記第2のチャンバ(18)とが前記スプール(36)のランド(36i、36j)によって互いに隔離されている、前記カムトルク駆動型(CTA)動作モードにおけるCTA零位置に対して前記制御弁(24)の前記スプール(36)を選択的に移動させる前記バルブ制御ユニット(32)をさらに含む、位相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトと内燃機関のポペット型吸気バルブまたは排気バルブとの間に介在し、少なくとも1つのそのようなバルブを駆動するための機構に関し、エンジンの動作サイクルに対するバルブ開放の時間を変更するための手段を提供し、さらに、カムシャフトまたはカムシャフトの関連カムの構造または軸方向配置を変更するための手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の性能は、一方がエンジンの種々のシリンダの吸気バルブを動作するためであり、もう一方が排気バルブを動作するためのデュアルカムシャフトを使用することによって向上することができる。一般に、一方のカムシャフトはスプロケットとチェーンドライブまたはベルトドライブとを介してエンジンのクランクシャフトによって駆動され、もう一方のカムシャフトは第2のスプロケットとチェーンドライブまたは第2のベルトドライブとを介して第1のクランクシャフトによって駆動される。別法として、両方のカムシャフトは単一のクランクシャフトにより駆動されるチェーンドライブまたはベルトドライブによって駆動することができる。クランクシャフトは、少なくとも1つの変速機および少なくとも1つのカムシャフトを駆動するための動力をピストンから得ることができる。デュアルカムシャフトを備えたエンジンのエンジン性能は、一方のカムシャフト(通常、エンジンの吸気バルブを駆動するカムシャフト)の、もう一方のカムシャフトに対する位置関係と、クランクシャフトに対する位置関係とを変更し、それにより、その排気バルブに対する吸気バルブの動作の点において、またはクランクシャフトの位置に対するそのバルブの動作の点においてエンジンのタイミングを変更することによって、アイドル品質、燃費、低減排気ガスまたは増加トルクの点においてさらに改良することができる。
【0003】
当技術分野において一般化しているように、1つのエンジンに1つ以上のカムシャフトを設けることができる。カムシャフトはベルトまたはチェーンまたは1つ以上の歯車または別のカムシャフトによって駆動することができる。1つ以上のバルブを押すための1つ以上のローブがカムシャフト上に存在しうる。複数カムシャフト式のエンジンは、一般に、排気バルブに対して1つのカムシャフト、吸気バルブに対して1つのカムシャフトを有する。「V」型エンジンは、通常、2つのカムシャフト(各バンクに1つ)または4つのカムシャフト(各バンクに吸気と排気)を有する。
【0004】
可変カムシャフトタイミング(VCT)デバイスは、米国特許第5,002,023号明細書、米国特許第5,107,804号明細書、米国特許第5,172,659号明細書、米国特許第5,184,578号明細書、米国特許第5,289,805号明細書、米国特許第5,361,735号明細書、米国特許第5,497,738号明細書、米国特許第5,657,725号明細書、米国特許第6,247,434号明細書、米国特許第6,250,265号明細書、米国特許第6,263,846号明細書、米国特許第6,311,655号明細書、米国特許第6,374,787号明細書および米国特許第6,477,999号明細書等の当技術分野において一般に公知である。二次バルブを備えた、カムトルク駆動型(CTA)動作モードとトーションアシスト型(TA)動作モードとの間において切り換えるデュアルモード位相器は米国特許第6,453,859号明細書において公知である。1つの高圧チャンバ逆止弁を使用しているカムトルク駆動型(CTA)位相器は米国特許第7,137,371号明細書において公知である。これら先行する公知の特許のそれぞれはその意図する目的に適していると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
通常、エンジンの速度範囲全体にわたりカムトルク駆動型(CTA)位相器が動作しない場合、エンジンにおけるカムトルク駆動型(CTA)位相器の使用を可能にするため、スプール位置によりトーションアシスト型(TA)動作モードにおいて動作しうるカムトルク駆動型(CTA)位相器を提供することが望ましかろう。
【0006】
可変カムタイミング位相器は、互いに対して回転するように配置されたハウジングおよびロータを含みうる。ハウジングおよびロータは、ベーンによって分割された少なくとも1つのキャビティを画定しうる。ベーンは、キャビティを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割しうる。通路は、第1のチャンバと、第2のチャンバと、作動流体供給源とを互いに連結することができ、キャビティ内におけるベーンの揺動を容易にしている。制御弁は、カムトルク駆動型(CTA)動作モードとトーションアシスト型(TA)動作モードとの間において動作可能に移動し、異なる長手方向の位置において、第1のチャンバと、第2のチャンバと、逆止弁と、作動流体供給源とを互いの間において選択的に連結するための長手方向往復動スプールを有しうる。
【0007】
少なくとも1つのカムシャフトを有する内燃機関のための可変カムタイミング位相器は、カムシャフトに対して同軸的に連結されており、かつベーンによって第1のチャンバと第2のチャンバとに分割されている少なくとも1つのキャビティを画定するハウジングおよびロータを含みうる。制御弁は、少なくとも1つのカムトルク駆動型(CTA)動作モードと、少なくとも1つのトーションアシスト型(TA)動作モードと、少なくとも1つの零位置との間において移動するための、長手方向往復動スプールを有しうる。スプールは、第1のチャンバと、第2のチャンバと、逆止弁と、作動流体供給源とを互いに連結しうる。
【0008】
少なくとも1つのカムシャフトを有する内燃機関のための可変カムタイミング位相器は、カムシャフトに対して同軸的に連結されており、かつ互いに対して回転するように配置されているハウジングおよびロータを含みうる。ハウジングおよびロータは、それらの間に、少なくとも1つのキャビティと、各キャビティ内に配置されており、各キャビティを第1のチャンバと第2のチャンバとに分割している少なくとも1つのベーンと、を画定しうる。ロックピンは、作動流体の流れと無関係にハウジングとロータとを互いに係止するために、解放位置と係止位置との間において移動しうる。制御弁は、内部配置式の逆止弁を備えた長手方向往復動ばね付勢式スプールを有しうる。スプールは、カムトルク駆動型(CTA)動作モード内における前進タイミング位置および後退タイミング位置と、トーションアシスト型(TA)動作モード内における前進タイミング位置と、少なくとも1つの零位置との間において動作可能に移動しうる。スプールは、第1のチャンバと、第2のチャンバと、逆止弁と、作動流体供給源とを互いに対して動作可能に連結しうるとともに、ロックピンを排出口と作動流体供給源との間において動作可能に連結しうる。バルブ制御ユニットは、カムトルク駆動型(CTA)動作モードと、トーションアシスト型(TA)動作モードと、少なくとも1つの零位置との間における移動のために、エンジン制御ユニットからの入力信号に応答して、制御弁の長手方向往復動スプールを動作するための可変力ソレノイドを有しうる。
【0009】
本発明の実施のため企図された最良の実施形態に関する以下の説明を添付の図面とともに読むと、当業者には本発明の他の用途が明らかになろう。
【0010】
本明細書中の説明では、複数の図にわたり同様の参照符号が同様の部品を示す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エンジン制御ユニット(ECU)に応答して、可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)により作動され、CTA動作モードの後退タイミング位置(ここで、スプールは後退タイミング位置への移動に対応する第1の位置にあり、ロックピン作動流体供給ラインを排出してロックピンを係止位置に移動する)に移動しているスプールを有する制御弁を備えたカムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器の概略図である。
【
図2】エンジン制御ユニット(ECU)に応答して、可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)により作動され、CTA動作モードのCTA零タイミング位置(ここで、スプールはCTA零タイミング位置への移動に対応する第2の位置にあり、供給ラインからの加圧作動流体によりロックピンを解放位置に移動する)に移動しているスプールを有する制御弁を備えた概略図カムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器である。
【
図3】エンジン制御ユニット(ECU)に応答して、可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)により作動され、CTA動作モードの前進タイミング位置(ここで、スプールは前進タイミング位置への移動に対応する第3の位置にあり、供給ラインからの加圧作動流体によりロックピンを解放位置に移動する)に移動しているスプールを有する制御弁を備えた概略図カムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器である。
【
図4】エンジン制御ユニット(ECU)に応答して、可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)により作動され、CTA動作モードとTA動作モードとの間の形式的零タイミング位置(ここで、スプールは形式的零タイミング位置(modal null timing position)への移動に対応する第4の位置にあり、供給ラインからの加圧作動流体によりロックピンを解放位置に移動する)に移動しているスプールを有する制御弁を備えた概略図カムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器である。
【
図5】エンジン制御ユニット(ECU)に応答して、可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)により作動され、TA動作モードの前進タイミング位置(ここで、スプールは前進タイミング位置への移動に対応する第5の位置にあり、供給ラインからの加圧作動流体によりロックピンを解放位置に移動する)に移動しているスプールを有する制御弁を備えた概略図カムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで
図1を参照すると、カムトルク駆動型(CTA)−トーションアシスト型(TA)可変カムタイミング(VCT)位相器は、タイミングチェーンまたはベルトまたは歯車(図示せず)と係合的に噛合するための外周が形成されたスプロケット歯12を有するハウジング10を含みうる。ハウジング10の内部には少なくとも1つのキャビティ10aが形成されている。ハウジング10内において同軸上にあり、ハウジング10に対して自由に回転するのは、各対応するキャビティ10a内に嵌合して第1の流体チャンバ16と第2の流体チャンバ18とを画定するベーン22を備えたロータ20である。制御弁24は、カムトルク駆動力に応じてロータ20のベーン22を駆動するために、通路26、28を通じてそれぞれ第1のチャンバ16と第2のチャンバ18との間に加圧作動流体または油を送ることができる。この説明は一般にベーン位相器に共通のものであり、
図1〜5に示すベーン、チャンバ、通路およびバルブの特定の配置は本発明の教示内において変更できることは当業者には理解されよう。例えば、ベーンの数およびそれらの位置は変えることができ、わずか1つのベーンを有する位相器もあれば、12ものベーンを有しうるものもある。ベーンをハウジング上に配置し、ロータ上のチャンバ内において往復運動させてもよい。ハウジングはチェーンまたはベルトまたは歯車によって駆動してもよく、スプロケット歯は歯車歯またはベルト用の歯付きプーリであってもよい。
【0013】
一組の流体回路を完成させるために、限定はしないが、例えば、示されるようなスプール型制御弁24等の制御弁24を配置するため、制御弁24は、エンジン制御ユニット(ECU)34からの入力信号に応答し、開ループ制御シーケンスまたは閉ループ制御シーケンスのいずれかを使用して可変力ソレノイド(VFS)等のバルブ制御ユニット(VCU)32により作動されるスプール36を有しうる。制御弁24のスプール36の第1の端部36aに作用する力によってスプール型制御弁24を係合することにより、ばね等の弾性部材38によって制御弁24のスプール36の第2の端部36bに作用する等しい力による平衡位置が達成されうる。スプール36は、大径のランド36h、36i、36j、36kによって分離された複数の縮径のチャンバ36c、36d、36e、36f、36gを画定する。スプール36内の中心通路36lは、内部に配置されたばね付勢式逆止弁40を介してチャンバ36dとチャンバ36eとを連結する。スプール36は、第1の移動限界端部の近傍にある(
図1に概略的に示されるように完全に伸張した)第1の位置と、(
図2に概略的に示されるように左に内方に移動した)第2の位置と、(
図3に概略的に示されるようにさらに左に内方に移動した)第3の位置と、(
図4に概略的に示されるようにまたさらに左に内方に移動した)第4の位置と、(
図5に概略的に示されるような)第2の移動限界端部の近傍にある第5の位置との間において移動可能である。
【0014】
図1をさらに参照すると、第1の位置にある場合、流体通路26はスプールのチャンバ36dと流体連通している。流体通路28はチャンバ36eと流体連通しており、さらに、内部スプール通路36lを通じてチャンバ36dと流体連通している。流体回路は、示されるような内部逆止弁または外部逆止弁とされうる逆止弁40を含みうる。あらゆる流体の損失を補償するために、加圧作動流体または油の源が作動流体供給源通路46を通じてスプール36のチャンバ36e、36fに供給される。一端にあるチャンバ36cと、反対端にあるロックピン60との間において流体連通している任意の係止通路62が設けられうる。排出口または排出通路48a、48bはスプール36のチャンバ36cと流体連通して配置することができ、係止通路62が排出されることを可能にし、ばね付勢式ロックピン60を係止位置に移動させる。VCU32のVFSは、CTA動作モードの後退タイミング位置への移動のためにスプール36を動作する。スプール36が第1の位置にある場合、ロックピン60を係止位置に移動するために、任意のロックピン60と関連する任意の係止通路62はスプール36を通じて排出口通路48a、48bに流体連通して連結されうる。カムトルク駆動力は、作動流体を駆動して、第1のチャンバ16から、通路26と、チャンバ36dと、内部スプール通路36lと、逆止弁40と、チャンバ36eと、通路28とを通過させて、チャンバ18内に送り、チャンバ16を収縮させる一方でチャンバ18を拡張させることによってベーン22を回転状態にする。ハウジング10に対するベーン22の回転は係止位置において任意のばね付勢式ロックピン60が対応する孔内に係合するまで継続しうる。任意のロックピン60が係止位置にある場合、作動流体の流れと無関係にロータ20とハウジング10は単一のアセンブリとして共に回転できる。
【0015】
ここで
図2を参照すると、スプール36は(概略的に示されるように内方かつ左に)第2の位置に移動している。第2の位置において、ランド36iは通路26との流体連通を遮断しており、ランド36jは通路28との流体連通を遮断している。制御弁24はCTA動作モードのCTA零タイミング位置に移行している。その位置では、任意のロックピン60が、付勢するばね60aの勢い(urging)に抗してロックピン60を解放位置に移動するためにチャンバ36dを通じて作動流体供給源通路46と流体連通している一方で、あらゆる流体の損失を補償するために、チャンバ36eがチャンバ36dと、内部スプール通路36lと、逆止弁40とを通じて加圧されている。換言すると、ロータ20とハウジング10は、係止位置にある任意のロックピン60を通じてもはや互いに機械的に相互連結されておらず、通路26、28がスプール36のランド36i、36jによって遮断されているため、流体チャンバ16と流体チャンバ18とは互いに隔離されている。チャンバ16、18内に封入された作動流体のため、ハウジング10とロータ20との間に流体継手が存在し、CTA零タイミング位置においてハウジング10とロータ20とが機械的なロックなしで互いに回転することを可能にする。このCTA零位置からのスプール36の位置の変化が位相器をCTA動作モードにおいて前進または後退させる。第2の位置にあるスプールによりチャンバ16とチャンバ18とを互いに隔離する前、キャビティ10a内においてベーン22を駆動するカムトルク駆動力のため、ハウジング10に対するロータ20の相対的な位置は任意の所望の角配向とすることができる。したがって、スプール36のこの「CTA零位置」はハウジング10に対するロータ20の任意の所望の角配向と関連させることができると理解すべきである。
【0016】
ここで
図3を参照すると、スプール36は、第3の位置に(概略的に示されるようにさらに内方かつ左に)移動している。第3の位置においては、ランド36iが、通路28をチャンバ36fを通じてCTA再循環通路46aと流体連通させ、チャンバ36dとの流体連通を可能にするように配置されている。制御弁24は、CTA動作モードの前進タイミング位置に移動している。その位置において、スプールは、内燃機関のバルブ駆動のタイミングを前進させるためにロータをハウジングに対して移動する第3の位置にある一方で、任意のロックピンを供給ラインからの加圧作動流体により解放位置に維持している。チャンバ36dは任意の係止通路62を加圧して任意のロックピン60を解放位置に維持するために作動流体供給源通路46と流体連通している。第3の位置にある場合、チャンバ36dは、また、内部スプール通路36lおよび逆止弁40を通じてチャンバ36eと流体連通している。チャンバ36eは通路26と流体連通し、作動流体がチャンバ16に流れることを可能にしており、チャンバ18を収縮している一方でチャンバ16を拡張している。
【0017】
ここで
図4を参照すると、スプール36は、第4の位置に(概略的に示されるようにまたさらに内方かつ左に)移動している。第4の位置においては、ランド36kがチャンバ36gと作動流体供給源通路46との間の流体連通を遮断している。制御弁24は、CTA動作モードとTA動作モードとの間の形式的零タイミング位置に移動しており、その位置では、チャンバ36dを通る作動流体供給源通路46からの加圧作動流体により任意のロックピン60が解放位置に維持されている。あらゆる流体の損失を補償するために、チャンバ36dは、また、内部スプール通路36lと、逆止弁40と、通路26とを通じてチャンバ16と流体連通している。CTA再循環通路46aが排出口48cがチャンバ36gだがチャンバ18と流体連通にされる直前にランド36kにより遮断されるため、第4のスプール位置は、排出口48cへの作動流体の直接の漏れを防止する。限定はしないが、例えば、4気筒エンジンにおける高速等、CTA動作モードにおいて位相器のタイミングを前進させるのにカムねじり駆動力が不十分となった場合、これが「形式的零位置」を形成する。この点を超えてスプール36を押すとTA動作モードにおいて位相器のタイミングが前進する。
【0018】
ここで
図5を参照すると、スプール36は第2の移動限界端部に相当する第5の位置に(概略的に示されるように内方に左に)移動している。第5の位置においては、チャンバ36gが排出口48cと流体連通しており、チャンバ18が分岐通路28aを通じて排出することを可能にしている。制御弁24は、TA動作モードの前進タイミング位置に移動している。その位置では、チャンバ36dおよび任意の係止通路62を通じて作用している供給源通路46からの加圧作動流体により任意のロックピン60が解放位置に維持されている。チャンバ36dは、また、内部スプール通路36lと、逆止弁40と、チャンバ36eと、通路26とを通じてチャンバ16と流体連通している。ベーン22に作用する差圧により、位相器は内燃機関のバルブ駆動のタイミングを前進させるために移動しうる。
【0019】
本発明を現在最も実際的かつ好適な実施形態と考えられるものとの関連において説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に包含される種々の改良形態および均等の配置を包含することを意図するものであることは理解されよう。範囲にはそのような改良形態および均等の構造を全て網羅すべく法の許す範囲で最も広い解釈を与えられるべきである。