【文献】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2005年 8月26日,Vol.280,p.30107-30112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それを必要とする個体においてニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプに関連した疾患または障害を治療または予防する医薬組成物を調製するための治療上有効量の活性作用物質またはその医薬上許容される塩の使用であって、
ここに、活性作用物質は、nAChRのα9α10サブタイプをブロックし、かつ
Arg9シトルリン RgIA;Arg9ω−ニトロ−Arg RgIA;Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Tyr10Trp RgIA;Tyr10Phe RgIA;Arg9シトルリン、Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Arg9ω−ニトロ−Arg、Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Ser4Ala RgIA;RgIA−Cys−アミド;Glu14ヨード−His Vc1.1;Glu14ヨード−Tyr Vc1.1;Glu14ヨード−Trp Vc1.1;Glu14ヨード−Phe Vc1.1;Glu14ヨード−His PeIA;Glu14ヨード−Tyr PeIA;Glu14ヨード−Trp PeIA;Glu14ヨード−Phe PeIA;Glu14ヨード−His ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Tyr ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Trp ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Phe ArIB[V11L;V16A];前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのC末端に対する付加;前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのN末端に対する付加;前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのC末端およびN末端に対する付加;RgIAにおけるArg13の置換;RgIA、Vc1.1またはPeIAにおけるGly1の置換;ならびにこれらのいずれかの組合せよりなる群から選択されることを特徴とする該使用。
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプに関連する疾患もしくは障害の治療または予防として用いるための、または遊走免疫細胞を阻害するための薬物候補を同定する方法であって、
a)α−コノトキシンのアナログを標識し、次いで、薬物候補により、nAChRのα9α10サブタイプから標識された該アナログを置換して、適当な薬物候補を同定すること、
b)治療活性を決定するための薬物候補に対して、鎮痛活性についての生物学的アッセイを行い、次いで、薬物候補の生物学的アッセイから得た結果をα−コノトキシンのアナログの生物学的アッセイから得た結果と比較すること、
c)nAChRのα9α10サブタイプに対する薬物候補の結合親和性を測定し、次いで、その薬物候補の結合親和性をnAChRのα9α10サブタイプに対するα−コノトキシンのアナログの結合親和性と比較すること、および
d)α9ホモマーまたはα9α10ヘテロマーの機能をブロックするための薬物候補の能力をα−コノトキシンのアナログの能力との比較により評価し、薬物候補のnAChRのα9α10サブタイプの活性のブロックを決定すること
のいずれかの工程により、nAChRのα9α10サブタイプの活性をブロックするその能力に対して、薬物候補をスクリーニングすることを含み、
ここに、α−コノトキシンのアナログは、Arg9シトルリン RgIA;Arg9ω−ニトロ−Arg RgIA;Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Tyr10Trp RgIA;Tyr10Phe RgIA;Arg9シトルリン、Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Arg9ω−ニトロ−Arg、Tyr10ヨード−Tyr RgIA;Ser4Ala RgIA;RgIA−Cys−アミド;Glu14ヨード−His Vc1.1;Glu14ヨード−Tyr Vc1.1;Glu14ヨード−Trp Vc1.1;Glu14ヨード−Phe Vc1.1;Glu14ヨード−His PeIA;Glu14ヨード−Tyr PeIA;Glu14ヨード−Trp PeIA;Glu14ヨード−Phe PeIA;Glu14ヨード−His ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Tyr ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Trp ArIB[V11L;V16A];Glu14ヨード−Phe ArIB[V11L;V16A];前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのC末端に対する付加;前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのN末端に対する付加;前記のRgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログのC末端およびN末端に対する付加;RgIAにおけるArg13の置換;RgIA、Vc1.1またはPeIAにおけるGly1の置換;ならびにこれらのいずれかの組合せよりなる群から選択されることを特徴とする該方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、神経因性疼痛および炎症性疼痛を含めた痛みを処置するため、免疫細胞の遊走を阻害するため、炎症性障害を処置するため、およびリウマチ性疾患のごとき障害に関連した炎症を低減するためのニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプをブロックする化合物の使用に関する。また、本発明は、nAChRのα9α10サブタイプをブロックする作用物質を同定するための化合物をスクリーニングすることに関する。かかる作用物質は本明細書に記載されたα−コノトキシンと同様に有用である。
【0022】
nAChRのα9α10サブタイプのブロッキングにおけるα−コノトキシンの活性が、異なるサブタイプのnAChRを発現する卵母細胞を用いる試験において本明細書に示される。免疫細胞の遊走阻害におけるα-コノトキシンの活性は、慢性の絞扼性神経損傷の試験で本明細書に示される。これらの活性を有することが示されたα−コノトキシンは、α−コノトキシンRgIAおよびα−コノトキシンVc1.1である。加えて、α−コノトキシンPeIAは、nAChRのα9α10サブタイプに選択的であることが示されている(McIntoshら, 2005)。α9α10 nAChRをブロックする化合物は、鎮痛作用物質として、免疫細胞の遊走を阻害するための作用物質、炎症性疼痛および他の炎症性の疾患または障害を処置するための作用物質、およびリウマチ性疾患のごとき障害と関連した炎症を低減するための作用物質として有用である。炎症性疾患は、限定されるものではないが、敗血症、線維筋痛症、炎症性腸疾患(限定されるものではないが、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、サルコイドーシス、子宮内膜症、子宮筋腫、限定されるものではないが、乾癬を含めた炎症性皮膚疾患、創傷治癒の障害、限定されるものではないが、喘息および慢性閉塞性肺疾患を含めた肺の炎症性疾患、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含めた神経系の炎症に関連した疾患、歯周病および心疾患を含む。リウマチ性疾患は、限定されるものではないが、関節炎、狼瘡、強直性脊椎炎、線維筋痛症、腱炎、滑液包炎、強皮症および痛風を含む
【0023】
かくして、本発明は、個体においてニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプに関連した疾患または障害を治療または予防する方法であって、治療上有効量の活性作用物質またはその医薬上許容される塩をそれを必要とする個体に投与することを含み、ここに、その活性作用物質は、nAChRのα9α10サブタイプをブロックすることを特徴とする該方法に関する。1つの具体例において、疾患は痛みであって、活性作用物質の投与は、個体の痛みを緩和する。第2の具体例において、疾患は免疫細胞により媒介された炎症であって、活性作用物質の投与は炎症を低減する。1つの具体例において、炎症はリウマチ性疾患に関係する。
【0024】
また、本発明は、免疫細胞遊走の阻害量の活性作用物質またはその医薬上許容される塩を個体に投与することを含み、ここに、該活性作用物質は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプをブロックすることを特徴とする、それを必要とする個体における免疫細胞の遊走を阻害する方法に関する。
【0025】
さらに、本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のα9α10サブタイプに関係した疾患または障害を治療または予防する使用に対する薬物候補を同定するための、または遊走免疫細胞を阻害するための方法であって、nAChRのα9α10サブタイプの活性をブロックするその能力につき薬物候補をスクリーニングすることを含む該方法に関する。1つの具体例において、候補薬物作用物質によるnAChRのα9α10サブタイプからの標識α−コノトキシンの置換を用いて、適当な候補薬物が同定される。第2の具体例において、治療活性を決定するための薬物候補に関する生物学的アッセイが行われ、α−コノトキシンの生物学的アッセイから得られた結果と比較される。第3の具体例において、nAChRのα9α10サブタイプに対する薬物候補の結合親和性が測定され、そのnAChRのα9α10サブタイプに対するα−コノトキシンの結合親和性と比較される。第4の具体例において、nAChRのα9α10サブタイプの機能に対する薬物候補の効果は、電気生理学的アッセイ、カルシウム画像化アッセイ等のごとき機能的アッセイにおける効果を測定することにより分析される。これらの後者のアッセイは、α9ホモマーおよび/またはα9α10ヘテロマーの機能をブロックするための薬物候補の能力を測定できる。
【0026】
また、本発明は、(a)治療活性を決定するために試験化合物に対して生物学的アッセイを行い;次いで(b)試験化合物の生物学的アッセイから得られた結果をα−コノトキシンの生物学的アッセイから得られた結果と比較する工程を含む、α−コノトキシンの治療活性を模倣する化合物を同定する方法に関する。
【0027】
かくして、また、本発明は、本明細書に記載された目的に用いることができるさらなる薬物の同定のための合理的薬物設計に関する。合理的薬物設計の目的は、例えば、より活性または安定な形態のポリペプチドである薬物、あるいは、例えば、in vivoにてそのポリペプチドの機能を増強またはその機能と干渉する薬物を創出するために、注目する生物学的に活性なポリペプチドまたは受容体(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤)にも作用する小分子の構造的アナログを生成することである。合理的薬物設計で用いられるいくつかのアプローチは、三次元構造、アラニン走査、分子モデリングの解析および抗id抗体の使用を含む。これらの技術は当業者によく知られている。かかる技術は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドにより形成された蛋白質複合体の三次元構造を規定する原子座標を供し、次いで、前記の原子座標に基づいて第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド間の相互作用と干渉できる化合物を設計または選択することを含む。
【0028】
さらに、ポリペプチド活性を調節するかまたはその活性に影響する物質の同定後に、物質を調査し得る。さらに、それは、製造されるおよび/または調製、すなわち、製造または処方、あるいは医薬、医薬組成物または薬物のごとき組成物に用い得る。これらは個体に投与し得る。
【0029】
ポリペプチド機能のモジュレーターと同定された物質は、本質的に、ペプチドまたは非ペプチドであり得る。非ペプチド「小分子」は、多数のin vivoの医薬的使用にしばしば好ましい。結果的に、ミメティックまたは物質の模倣(特に、ペプチドならば)は、医薬的使用のために設計し得る。
【0030】
公知の医薬的に活性な化合物に対するミメティックの設計は、「リード」化合物に基づく医薬の開発に対する公知のアプローチである。このアプローチは、活性化合物が合成するのが難しいか高価である場合、あるいは特定の投与方法に適さない場合、例えば、純粋なペプチドは、消化管中のプロテアーゼにより急速に分解される傾向があるので、経口組成物のための不適当な活性作用物質である場合に、望ましいかもしれない。ミメティックの設計、合成および試験を一般的に用いて、標的特性につき多数の分子を無作為にスクリーニングすることが回避される。
【0031】
一旦、ファルマコフォアが判明したならば、その構造は、様々な源、例えば、分光学的技術、X線回折データ、NMRからのデータを用いて、その物性、例えば、立体化学、結合、サイズおよび/または電荷によりモデル化される。コンピューター解析、類似性マッピング(原子間の結合よりむしろ、電荷および/またはファルマコフォアの体積をモデル化する)および他の技術は、このモデリングプロセスに用いることができる。
【0032】
次いで、テンプレート分子は選択され、それにファルマコフォアを模倣する化学基を移植できる。テンプレート分子およびその移植された化学基は、リード化合物の生物学的活性を保持しつつ、ミメティックが合成するのが容易である、薬理学的に許容できるものである、in vivoで分解されないように、好都合に選択できる。あるいは、ミメティックがペプチドベースである場合には、さらなるの安定性はペプチドの環化し、その剛性を増加させるにより達成できる。次いで、このアプローチにより見出されたミメティックまたはミメティック群は、それらが標的特性を有しているかどうかまたはそれがどの程度まで示されるかを確かめるためにスクリーニングできる。次いで、さらなる最適化または改変は、in vivoまたは臨床試験のための1以上の最終ミメティックに到着するために行なうことができる。
【0033】
さらに、本発明は、天然の毒素と同一の機能部位にてそれらの作用を発揮する、または部分的に発揮し、天然の毒素と同様の機能的応答を解明できる小分子の発見のための、in vitroおよびin vivoの双方での分子ツールとして本明細書に記載されたコノトキシンの標識された(例えば、放射標識、フルオロフォア、発色団等)の使用に関する。1つの具体例において、その受容体、すなわちα9α10 nAChRからの標識コノトキシンの置換、または候補薬物作用物質による他の複合体は、適当な候補薬物を同定するために用いられる。第2の態様において、治療活性を決定するための試験化合物に対する生物学的アッセイが行われ、コノトキシンの生物学的アッセイから得られた結果と比較される。第3の具体例において、コノトキシンの受容体、すなわち、α9α10 nAChRに対する小分子の結合親和性が測定され、その受容体、すなわち、α9α10 nAChRに対するコノトキシンの結合親和性と比較される。第4の具体例において、nAChRのα9α10サブタイプの機能に対する薬物候補の効果は、電気生理学的アッセイ、カルシウム画像化アッセイ等のごとき機能的アッセイにおける効果を測定することにより分析される。このように、α9α10 nAChRをブロックし、鎮痛作用物質として、免疫細胞の遊走を阻害する作用物質として、扱う炎症性疼痛および他の炎症性障害を処置する作用物質として、および関節炎に関連した炎症のごとき炎症を低減する作用物質として有用である候補薬物が同定される。
【0034】
有効成分として本発明の化合物を含む医薬組成物は、通常の医薬調合技術により調製できる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2005を参照されたし。典型的には、拮抗的な量の有効成分は医薬上許容される担体と混合されるであろう。担体は、例えば、静脈内、経口、非経口、または髄腔内の投与に望ましい調製物の形態に依存して広範囲の形態を取り得る。送達方法の例について、ここに出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,844,077号を参照されたし。
【0035】
「医薬組成物」は、医学的投与に適した物理的に別々の干渉性部分を意味する。「投薬単位形態における医薬組成物」は、担体と関連したおよび/または外被内に入れられた、毎日用量、あるいはマルチプル(4回まで)またはサブマルチプル(40分の1まで)の毎日用量の活性化合物を含む、医学的投与に適した物理的に別々の整合性のある単位を意味する。組成物が、毎日用量、または例えば、毎日用量の半分、3分の1または4分の1を含有するかは、組成物が、各々、1日当たり1回、または例えば、2回、3回または4回で投与されるかに依存するであろう。
【0036】
本明細書に用いた「塩」なる用語は、無機もしくは有機の酸および/または塩基と形成された酸性および/または塩基性塩、好ましくは、塩基性塩を示す。特に、本発明の化合物を薬物として使用する場合に医薬上許容される塩が好ましいが、例えば、これらの化合物の加工において、あるいは非薬物タイプの用途が考えられる場合は、他の塩に有用性を見出す。これらの化合物の塩は、技術が認識された手法により調製し得る。
【0037】
かかる医薬上許容される塩の例は、限定されるものではないが、各々、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩および酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、イソチオン酸塩、酢酸テオフィリン、サリチル酸等のごとき無機および有機付加塩を含む。低級アルキル第四級アンモニウム塩等も同様に適当である。
【0038】
本明細書に用いた「医薬上許容される」担体なる用語は、非毒性の不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、被包材料、いずれかのタイプの処方補助剤、またはセーラインのごとき単なる無菌水性媒体を意味する。医薬上許容される担体として機能できる材料のいくらかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースのごとき糖、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのごときデンプン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのごときセルロースおよびその誘導体;トラガント末;麦芽、ゼラチン、タルク;カカオ脂および坐剤ワックスごとき賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、胡麻油、オリーブオイル、トウモロコシ油およびダイズ油のごとき油;プロピレングリコールのごときグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのごときポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのごときエステル、寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのごとき緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張セーライン、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬処方に用いられる非毒性の適合性物質を含む。
【0039】
また、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのごとき湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味および香料剤、保存剤および酸化防止剤は、処方の判断に応じて組成物中に存在できる。医薬上許容される酸化防止剤の例は、限定されるものではないが、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のごとき水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファトコフェロール(aloha-tocopherol)等のごとき油溶性抗酸化剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のごとき金属キレート剤を含む。
【0040】
経口投与については、化合物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、メルト剤、散剤、懸濁剤または乳剤のごとき固体または液状の調製物に処方できる。経口投薬形態における組成物の調製において、経口液状製剤(例えば、懸濁剤、エリキシル剤および液剤)の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、矯味剤、保存剤、着色剤、懸濁化剤等;経口固形製剤(例えば、散剤、カプセル剤および錠剤)の場合のデンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の通常の医薬媒体のいずれも使用し得る。投与におけるそれらの容易さのために、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口の投薬単位形態を表し、この場合には固体医薬担体が明らかに使用される。所望ならば、錠剤は標準技術により糖衣または腸溶性とし得る。活性作用物質を被包して、脳血液関門を通過することを同時に可能にしつつ胃腸管の通過を介して安定化し得る。例えば、WO96/11698を参照されたし。
【0041】
非経口適用については、化合物は医薬担体に溶解され、溶液または懸濁剤のいずれかとして投与し得る。例示的な適当な担体は、水、セーライン、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、または動物、植物もしくは合成の起原の油である。また、担体は、他の成分、例えば、保存剤、懸濁化剤、可溶化剤、緩衝剤等を含有し得る。また、化合物が髄腔内投与される場合、それらは脳脊髄液に溶解し得る。
【0042】
様々な投与経路が利用可能である。選択された特定の様式は、選択された特定の薬物、処置されるべき疾患状態の重篤度および治療効力のために必要とされる用量にもちろん依存するであろう。この発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容されるいずれの投与様式を用いても実施でき、臨床的に許容できない有害作用を惹起することなく、活性化合物の有効レベルを生じるいずれの様式も意味する。かかる投与様式は、経口的、直腸的、舌下的、局所的、経鼻的、経皮的、非経口の経路を含む。「非経口的」なる用語は、皮下、静脈内、硬膜外、灌注、筋肉内、放出ポンプまたは注入を含む。
【0043】
例えば、この発明による活性作用物質の投与は、以下のものを含めていずれかの適当な送達手段を用いて達成し得る:
(a)ポンプ(例えば、LuerおよびHatton (1993), Zimmら(1984)およびEttingerら (1978)参照);
(b)マイクロカプセル化(例えば、米国特許第4,352,883号;第4,353,888号;および第5,084,350号参照);
(c)連続的な放出ポリマー埋込剤(例えば、米国特許第4,883,666号参照);
(d)マイクロカプセル化(例えば、米国特許第5,284,761号、第5,158,881号、第4,976,859号および第4,968,733号、公表されたPCT特許出願WO92/19195、WO95/05452参照);
(e)CNSに対するネイキッドまたは被包されていない細胞移植(例えば、米国特許第5,082,670号および第5,618,531号参照);
(f)皮下、静脈内、動脈内、筋肉内または他の適当な部位へのいずれかの注射;あるいは
(g)カプセル剤、液剤、錠剤、丸剤または徐放性処方における経口投与。
【0044】
この発明の1つの具体例において、活性作用物質は、CNS、好ましくは、脳室、脳実質、髄腔内空間または他の適当なCNS位置、最も好ましくは、髄腔内に直接的に送達される。
【0045】
別法として、ターゲティング療法を用いて、抗体または細胞に特異的なリガンドのごときターゲティングシステムの使用による、あるタイプの細胞により特異的な活性作用物質を送達し得る。例えば、作用物質が許容できなく毒性である、またはそうでなければそれがあまりにも高用量を必要とする、またはそうでなければそれが標的細胞に入ることができないならば、ターゲティングは、様々な理由のために望ましいかもしれない。
【0046】
ペプチドであり得る活性作用物質は、細胞ベースの送達システムにおいて投与でき、ここに、活性作用物質をコードするDNA配列は、患者の体内、特に、脊髄領域における埋込みのために設計された細胞に導入される。適当な送達システムは、米国特許第5,550,050号およびPCT公開番号WO92/19195、WO94/25503、WO95/01203、WO95/05452、WO96/02286、WO96/02646、WO96/40871、WO96/40959およびWO97/12635に記載されている。適当なDNA配列は、その開発された配列および公知の遺伝子コードに基づいて各活性作用物質につき合成的に調製できる。
【0047】
活性作用物質は、好ましくは治療上有効量で投与される。「治療上有効量」または単に「有効量」の活性化合物とは、いずれかの医学的処置に適用できる合理的利益/リスク比で所望の疾患を治療するのに十分な量のその化合物を意味する。投与された実際の量、および投与の割合および時間的経過は、処置されるべき疾患の性質および重篤度に依存するであろう。処置の処方、例えば、用量、時期等に関する決定は、一般開業医または専門家の責任内にあり、典型的には、治療されるべき障害、個々の患者の疾患、送達部位、投与方法および実践者に知られた他の因子を考慮する。技術およびプロトコールの例は、Remington: The Science and Practice of Pharmacyに見出すことができる。
【0048】
投薬は、局所的または全身的に、所望の薬物レベルを達成するように適当に調節し得る。典型的には、本発明の活性作用物質は、有効成分の約0.001mg/kg〜約250mg/kg、好ましくは、約0.01mg/kgから約100mg/kg、より好ましくは、0.05mg/kgから約75mg/kgにてそれらの効果を示す。適当な用量は、1日当たりの複数のサブ用量で投与できる。典型的には、用量またはサブ用量は、単位投与形態当たり有効成分の約0.1mg〜約500mgを含有し得る。より好ましい投薬は、単位投薬形態当たり有効成分の約0.5mg〜約100mgを含有するであろう。投薬は、より低レベルにて一般的に開始され、所望の効果が達成されるまで増加される。対象における応答がかかる用量にて不十分である事象において、さらに高用量(または、異なるより局所的な送達経路により有効な高用量)が、患者寛容性が許す程度まで使用し得る。例えば、24時間にわたる連続的な投薬または1日当たりの複数回投与は、適当な全身性レベルの化合物を達成するために考えられる。
【0049】
有利には、組成物は、投薬単位として処方され、各単位は、固定用量の有効成分を供給するのに適している。錠剤、コーティング錠、カプセル剤、アンプル剤および坐剤は、本発明による投与形態の例である。
【0050】
有効成分が有効量、すなわち、適当な有効量が単一または複数の単位用量に用いられる投薬形態と一致するようなものに構成することが単に必要である。正確な個々の投薬ならびに毎日の投薬は、使用ヒトまたは動物のための医師または獣医の指導下、標準的医学原理により決定される。
【0051】
医薬組成物は、一般的に、全組成物の重量に基づいて、約0.0001〜99重量%、好ましくは、約0.001〜50重量%、より好ましくは約0.01〜10重量%の有効成分を含有するであろう。また、活性作用物質に加えて、医薬組成物および医薬は他の医薬的に活性な化合物を含むことができる。他の医薬的に活性な化合物の例は、限定されるものではないが、すべての臨床医学の重要領域における鎮痛作用物質、サイトカインおよび治療作用物質を含む。他の医薬的に活性な化合物と共に用いられる場合、本発明の活性作用物質は薬物カクテルの形態で送達し得る。カクテルは、もう一つの薬物または作用物質とのこの発明で有用な化合物のうちのいずれか1つの混合物である。この具体例において、共通の投与ビヒクル(例えば、丸剤、錠剤、移植組織、ポンプ、注射溶液等)は、補足の増強作用物質と組み合わせて双方の本組成物を含むであろう。カクテルの個々の薬物は、各々、治療上有効量で投与される。治療上有効量は、前記されたパラメーターによって決定され;しかし、いずれの事象においても、薬物が所望の結果に到達するのに有効な期間に必要である場合の身体の領域において薬物をレベルを確立するその量である。
【0052】
本発明の実施には、特記しない限りは、当該技術分野の技量内にある化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養および遺伝子組み換え生物学の通常の技術が用いられる。例えば、Maniatisら, Molecular Cloning (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1982); Sambrookら, Molecular Cloning, 2nd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989); SambrookおよびRussell, Molecular Cloning, 3rd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001); Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, 2005までアップデート); Glover, DNA Cloning (IRL Press, Oxford, 1985); Anand, Techniques for the Analysis of Complex Genomes, (Academic Press, New York, 1992); GuthrieおよびFink, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology (Academic Press, New York, 1991); HarlowおよびLane, Antibodies, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1998); JakobyおよびPastan, 1979; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986); Riott, Essential Immunology, 6th Edition, (Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1988); Hoganら, Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986); Westerfield, M., The zebrafish book. A guide for the laboratory use of zebrafish (Danio rerio), 4th Ed., (Univ. of Oregon Press, Eugene, Oregon, 2000)を参照されたし。
【0053】
実施例
本発明は、以下の実施例に対する参照により記載でき、例示により提供され、何ら本発明を制限するようには意図されない。当該技術分野においてよく知られた標準的技術または特に下記に記載された技術を利用した。
【0054】
実施例1
nAChR試験
方法
卵母細胞の記録用チャンバーをSylgardから作成し、容積は30μlであった。卵母細胞を、約1ml/分の速度で毒素の有無での1μMアトロピンを含有するND96(96.0mM NaCl、2.0mM KCl、1.8mM CaCl2、1.0mM MgCl
2、5mM HEPES、pH7.1〜7.5)(ND96A)で重力灌流した。また、すべての溶液は0.1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を含み、ペプチドの非特異的吸着を低減させた。灌流培地を一連の3方電磁弁(model 161T031, Neptune Research, Northboro, MA)の使用によりペプチドまたはAChを含有するものに切り替えできた。すべての記録は、室温(約22℃)で行った。卵母細胞を採取し、従前に記載された(Azamら, 2005; Ellisonら, 2006)ごとく、Valに補正したα6α3キメラAla278でラットニューロンおよびヒト筋肉nAChRサブユニットをコードするcRNAをその細胞に注入した。AChゲート電流を2電極電圧クランプ増幅器(model OC-725B, Warner Instrument, Hamden, CT)で得た。膜電位は−70mVでクランプし、仮想グラウンドを介して記録した電流シグナルをローパス・フィルタ(5Hzカットオフ)し、20Hzのサンプリング頻度でデジタル化した。
【0055】
卵母細胞にAChのパルスを適用するために、潅流流体をAChを含有するものに1秒間切り替えた。これを1〜2分の間隔で自動的に行った。最短の時間間隔は、再現可能な対照応答が顕著な脱感作なくして得られるように選定した。この時間間隔は、テストされるべきnAChRサブタイプに依存した。AChの濃度は、α7について200μM、α1β1δεおよびα9α10について10μMおよび他のすべてのサブタイプについて100μMであった。AChは、希釈剤がND96であったα7およびα9α10を除いて、すべてのnAChRサブタイプのテストにつきND96Aに希釈した。対照応答については、AChパルスは、ND96(α7およびα9α10につき)またはND96A(すべての他のもの)での潅流に先行した。アトロピンは、α7様受容体のアンタゴニストであることが示されたために、α7およびα9α10を発現する卵母細胞と共に用いなかった(Gerzanichら, 1994)。テスト応答については、毒素は、AChに対する後の曝露に先立って5分間浴適用された。ピークまでの応答にかかる短時間(<2秒)で洗い流される結合毒素がたとえあったとしてもほとんどないと仮定されたために、すべてのAChパルスは毒素を含有しなかった。毒性に対する曝露にまさに先行する3つの対照応答の平均ピーク振幅を用いて、各テスト応答の振幅を標準化して、「%応答」または「%ブロック」を得た。
【0056】
結果
ツメガエル(Xenopus)卵母細胞を用いて、クローン化nAChRサブタイプを異種性に発現させた。α−Ctx RgIAは、
図1に示されたα9α10−対−筋肉nAChRサブタイプにおけるACh誘導電流を強力にブロックする。SCIモデルにおけるα−Ctx RgIAαの強力な鎮痛活性は、α−Ctx Vc1.1として知られている鎮痛性コノトキシンで見られたものに類似する。ACV1としても知られたこのペプチドは、神経因性疼痛の治療用のヒト臨床試験を受けているが;しかしながら、その受容体サブタイプの作用機序は、捉えがたいままであった(Sandallら, 2003; Langら, 2005; Satkunanathanら, 2005; Clarkら, 2006)。また、
図1に示されるように、α−Ctx Vc1.1は、α9α10サブタイプのnAChRを強力にブロックする。また、α−Ctx RgIAはa9a10 nAChRには高度に選択的であるが、α−Ctx Vc1.1は、α6含有nAChRにて比較的かなりの活性を有する(表1)。
【0058】
実施例2
絞扼性神経損傷試験
方法
動物:雄性スプラーグドーリーラット(200〜300g;Harlan)をこれらの試験に用いた。すべての動物は対で収容し、食物および水への自由なアクセスを有した。すべての実験は、Wake Forest University School of Medicine Animal Care and Use Committeeの規定に従って行った。
【0059】
絞扼性神経損傷:ラットは、わずかな改変を有する以外はBennett および Xie (1988)により従前に記載された坐骨神経の緩い結紮を受けた。要約すると、ラットはハロタン(100%酸素中の2〜3%ハロタン)で麻酔し、左坐骨神経を中央大腿レベルにて露出し、次いで、2本の4−0クロム腸縫合を坐骨神経の周囲で約1mm離れて緩く結紮した。その切開は4−0絹縫合で閉じた。
【0060】
行動試験:すべての行動試験を午前9:00および午後4:00の時間の間で行なった。ベースライン足引込み閾値(PWT)の差はこれらの時間中に観察されなかった。足引込み閾値は。ランドール−セリット足加圧法により、左および右後肢につき決定された(RandallおよびSelitto 1957)。Analgesyメーター(Ugo Basile, Italy)は、テフロン根石(plinth)を用いて、一定の割合で増加させる圧力(毎秒16g)を後足に適用する。カットオフ圧力は250gであった。ランドール−セリットテストについて、ベースライン応答を安定化させるために、動物を4つトレーニングセッションに最初に付した(Taiwoら 1989)。あるいは、後足は、5分間のトライアル間間隔で3回テストした。
【0061】
坐骨神経の絞扼性神経損傷(CCI)の7日後に、足引込み閾値(PWT)を測定して、機械的過敏性の発生を確認した。機械的過敏性は、CCI前ベースラインと比較したPWTにおいて少なくとも20%の減少の存在として定義した。機械的過敏性を示さないラットを処分した。機械的過敏性を示すラットにRgIA(200μl生理的セーライン中の0.02または0.2nmol)を筋肉内注射し、PWTをRgIA投与後1時間ごとに5時間、および24時間後に測定した。この措置は、5〜7日間毎日繰り返した。
【0062】
免疫組織化学:RgIA投与後第5または7日での行動試験後に、ラットをペントバルビタールで深麻酔し、0.01M PBS+1%亜硝酸ナトリウムに続いて、4%パラホルムアルデヒド(400mL)で経心的に灌流した。左(傷害した)および右(傷害していない)坐骨神経を取り出し、4%パラホルムアルデヒド(2〜3時間)に続いて30%スクロース中で後固定した(48〜72時間)。組織をTissue-Tek O.C.T. Compound (Sakura Finetek, USA)中に包埋し、Leica CM3000クリオスタットで16μmにて横方向に切った。
【0063】
免疫組織化学は、標準的ビオチン−ストレプトアビジン技術を用いて行った。すべての免疫組織化学について、坐骨神経切片を0.01M燐酸緩衝セーライン+0.15%トリトン−X100(PBS+T)中で洗浄し、0.3% H
2O
2中でインキュベートした(15分間)。PBS+T中でのさらなる洗浄に続いて、切片を50%アルコール(45分間)中でインキュベートし、PBS+Tで洗浄し、1.5%正常ヤギ血清で1時間ブロックした。切片をCD2 (1:1000, Serotec)、CD68(ED1) (1:1000, Serotec)またはChAT (1:1000, Chemicon)一次抗体に対する一次抗体と4℃にて一晩インキュベートした。切片をPBS+Tで洗浄し、ビオチン化ヤギ抗ウサギ(ChAT)または抗マウス(CD2、ED1)抗体(Vector Laboratories)中で室温にて1時間インキュベートし、PBS+Tで洗浄し、ストレプトアビジン連結西洋わさびペルオキシダーゼ(ABC Elite Kit, Vector Laboratories)中で1時間インキュベートした。抗体を強化グルコース−ニッケル−ジアミノベンジジン法を用いて視覚化した。画像を10×拡大にてLeica Axioplan2光学顕微鏡で捕捉した。陽性標識対象を事前設定された強度閾値にてSigmaScan Pro 5を用いて、計数のために同定した。坐骨神経切片について、4枚の非連続切片をChAT、CD2およびED1染色につき定量した。
【0064】
統計分析:行動データは平均±標準誤差として示し、一元配置分散分析を用いて解析した。免疫組織化学データは、スチューデントt検定を用いて解析した。
【0065】
結果
RgIAは抗侵害受容性である:絞扼性神経損傷は、坐骨神経結紮の7日間内に機械的過敏性を生成した。足引込み閾値は、CCI後7日間で、122±5gから26±5gに低下した。RgIAの筋肉内投与は、3〜4時間以内にCCIに同側性のPWTを有意に増加させた(
図2)。注目すべきことには、投与したRgIAの最高用量は、CCI誘導機械的過敏性を完全に逆転させた。
【0066】
RgIAの急性抗侵害受容の効果に加えて、0.2nmol RgIAの1日1回の反復筋肉内注射は、CCI後のベースラインPWTを有意に増加させた(
図3)。坐骨神経結紮の同側性のCCIラットにおける足引込み閾値は、RgIAの第2の投与24時間後に65±17%増加した。対側性足の足引込み閾値は、CCIラットにおいて有意には改変されなかった。
【0067】
RgIAは、神経損傷に対する末梢性免疫応答を改変する:RgIAの行動的効果は、神経損傷誘導疼痛における内因性アセチルコリン(ACh)についての役割を支持する。従って、発明者らは、CCIラットにおける神経損傷部位に補充されたコリン作動性生成細胞数を検討した。
図4に示されるように、CCIは、結紮された坐骨神経および直接近傍(神経周囲)において、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)数を大きく増加させた。RgIAの5日間の1日1回投与は、同側性坐骨神経内および神経周囲領域に存在するChAT免疫反応性細胞数を大きく低下させた。また、注目すべきことには、7日間のニコチン酸アンタゴニストVc1.1の筋肉内投与は、α9α10選択的RgIAとして同様の程度までChAT陽性細胞数を低下させた。
【0068】
従前に報告されたように、CCIはED−1免疫反応性マクロファージおよびCD2発現T細胞数を増加させる(
図5)。RgIA(0.2nmol)の5日間の1日1回投与は、同側性および対側性の双方でCCIラットにおけるED1免疫反応性のマクロファージ数を有意に低下させた。
【0069】
実施例3
アナログの試験
RgIA、Vc1.1、PeIAおよびArIB[V11L;V16A]のアナログを当該技術分野においてよく知られている標準的技術を用いて調製した。これらのアナログは、実施例1において前記されたα9α10 nAChRサブタイプに関する活性につきテストした。調製およびテストしたアナログおよびテスト結果を表2に示す。
【0071】
表2に示したデータは、RgIA中のArg
9が活性にとって必須であることを示唆する。さらに、データは、
図6における矢印により示された窒素が、(おそらく水素結合を介して)活性に必須であるようであることを示唆する。これは、Arg
9の代わりに種々の非標準的なアミノ酸を置換することにより決定された。最後に、ヨード−Tyr10、Arg9シトルリンIC
50は1.1nMであり、ヨード−Tyr10、Arg9オメガニトロ−ArgについてのIC
50は、1.3nMであるということに注目する価値がある。これらのアナログは親ペプチドより強力である。差は比較的小さいけれども、数倍の差が生成の見地から非常に重要になりかねない。さらに、表2におけるデータは、ArIB[V11L;V16A]中の15位のヨード−Hisの結果、活性において100倍を超えるシフトを生じ、Vc1.1およびPeIAの14位でのヨード−Hisは、これらのペプチドの活性を実質的に増加できたであろうことを示す。
【0072】
本発明を記載する文脈における「ある(a)」および「ある(an)」および「その(the)」なる用語ならびに同様の対象の使用は、本明細書に特記されないか、文脈によって明確に矛盾しない限りは、単数および複数の双方をカバーするものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」なる用語は、特記されない限りは、制限のない用語(すなわち、「限定されるものではないが、... を含む」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の詳述は、特記しない限りは、その範囲内にある個々の各値に対する個々に参照する省略方法として機能することを単に意味し、個々の各値は、本明細書に個々に引用されるように明細書に組み込まれる。本明細書に特記されないか、文脈により明確に矛盾しない限りは、本明細書に記載されたすべての方法は、いずれの適当な順序においても行うことができる。いずれのおよびすべての例、または本明細書に供された例示的言語(例えば、「のごとき」)の使用は、単に、本発明を良好に照らすことを意図し、特許請求されない限りは、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中には、本発明の実施に必須のいずれかの特許請求されない要素を示すと解釈される言語はない。
【0073】
本発明の方法および組成物は、種々の形態の具体例に組み込むことができ、そのいくつかだけが、本明細書に記載されていると解釈されるであろう。本発明の具体例は、本発明を行うために発明者らに知られた最良の様式を含めて、本明細書に記載されている。それらの具体例の変形は、前記記載を読むに際して当業者に明らかになり得る。発明者は、当業者が必要に応じた変形を使用することを期待し、発明者らは、本明細書に特記される以外に、発明が実施されることを意図する。結果的に、この発明は、適用法律により特許される本明細書に添付された特許請求の範囲に引用された対象のすべての変形および等価物を含む。さらに、本明細書に特記されないまたは文脈において明確に矛盾しない限りは、前記の要素のいずれの組合せも、そのすべての可能な変形において、本発明により包含される。
【0074】
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