特許第5953349号(P5953349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953349
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】充電器、および電気システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160707BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H01M10/44 Q
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-198548(P2014-198548)
(22)【出願日】2014年9月29日
(62)【分割の表示】特願2012-507258(P2012-507258)の分割
【原出願日】2010年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-8630(P2015-8630A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】12/426,855
(32)【優先日】2009年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308014684
【氏名又は名称】ヴァレンス テクノロジー インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】VALENCE TECHNOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100173152
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 智
(72)【発明者】
【氏名】リム クー チェン
(72)【発明者】
【氏名】チャウ ラプ ワイ
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−080318(JP,A)
【文献】 特開2001−268815(JP,A)
【文献】 特開2001−211558(JP,A)
【文献】 特開2005−304107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に属する複数の充電式セルに充電が行われる充電サイクルの間に、複数の第1の瞬間に第1の数の充電式セルに主充電パルスを供給し、前記複数の第1の瞬間と異なる複数の第2の瞬間に第2の数の充電式セルに副充電パルスを供給する充電回路を有し、
前記第2の数は、前記第1の数より少なく、
それぞれの前記副充電パルスは、それぞれの前記主充電パルスの振幅とは異なる振幅を有し、
それぞれの前記第2の数の充電式セルは、前記電池に属する他の充電式セルのそれぞれの充電状態より低い充電状態を有し、
前記充電回路は、前記主充電パルスの各対の間に、前記第2の数の充電式セルに前記副充電パルスを個別に供給するように構成される充電器。
【請求項2】
前記第1の数の充電式セルは、前記電池に属する全ての充電式セルであるように構成される請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記充電回路は、定電流充電パルス及び定電圧充電パルスを供給するように構成され、
前記充電回路は、前記第1の数の充電式セルのうち、所定の充電状態よりも低い充電状態の充電式セルに前記定電流充電パルスを供給し、前記第1の数の充電式セルのうち、所定の充電状態よりも高い充電状態の充電式セルに前記定電圧充電パルスを供給する請求項1に記載の充電器。
【請求項4】
それぞれが、充電電気エネルギーを受け取り、負荷に電気エネルギーを放電するように構成された複数の充電式セルを有する電池と、
前記電池に属する充電式セルに充電が行われる充電サイクルの間に、複数の第1の瞬間に第1の数の充電式セルに主充電パルスを供給し、前記複数の第1の瞬間と異なる複数の第2の瞬間に第2の数の充電式セルに副充電パルスを供給する充電回路とを有し、
前記第2の数は、前記第1の数より少なく、
それぞれの前記副充電パルスは、それぞれの前記主充電パルスの振幅とは異なる振幅を有し、
それぞれの前記第2の数の充電式セルは、前記電池に属する他の充電式セルのそれぞれの充電状態より低い充電状態を有し、
前記電池に属する他の充電式セルの充電状態より低い充電状態を有する前記第2の数の充電式セルのそれぞれを検出するために、前記電池の充電サイクルの間に、前記充電式セルの充電状態を監視するように構成される監視回路と、
前記監視回路に接続され、前記電池の電サイクルの間に、前記第2の数の充電式セルの充電率と、前記電池に属する他の充電式セルの充電率とを均等化するために、前記電池に属する他の充電式セルの充電状態より低い充電状態を有する前記第2の数の充電式セルのそれぞれに前記充電パルスを供給するように前記充電回路を制御するために、前記監視回路の監視結果を用いるように構成される制御回路と、
を有し、
前記充電回路は、前記主充電パルスの各対の間に前記第2の数の充電式セルに前記充電パルス個別供給するように構成される電気システム。
【請求項5】
前記第1の数の充電式セルは、前記電池に属する全ての充電式セルであるように構成される請求項4に記載の電気システム。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第2の数の充電式セルの充電状態前記電池に属する他の充電式セルの充電状態との差異が所定範囲内となった後、前記電池の充電サイクルの間に、前記充電式セルへの前記充電パルスの供給を止めるように構成される請求項に記載の電気システム。
【請求項7】
前記充電回路は、定電流充電パルス及び定電圧充電パルスを供給するように構成され、
前記充電回路は、前記第1の数の充電式セルのうち、所定の充電状態よりも低い充電状態の充電式セルに前記定電流充電パルスを供給し、前記第1の数の充電式セルのうち、所定の充電状態よりも高い充電状態の充電式セルに前記定電圧充電パルスを供給するように構成される請求項に記載の電気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器、および電気システム、および充電式電池の充電方法に係る。
【背景技術】
【0002】
充電式電池は、多様な応用分野における電気エネルギーに対する様々な要求に対応するよう設計され、使用されている。充電式電池システムは、充電中に電気エネルギーを受け取り、放電中に電気エネルギーを負荷に供給する複数の充電式セルからなる。充電式セルは異なる化学物質を含み、一例ではリチウムイオンセルを含む。異なる応用分野で使用される充電式セルの数は、要求される負荷の数に依存して変化し、ある実施態様に使用される場合には非常に多い。
【発明の概要】
【0003】
例えば充電式セルの製造工程の結果として、電池の充電式セルは均一ではない。より具体的には、電池の異なる充電式セルは、異なるまたは均一でないパラメータ(例えば、電圧、内部抵抗またはインピーダンス、充電−放電効率)を有する。セルの不均一性は、電池の性能が最も性能の低い充電式セルに結びつけられる。さらに、不均一な電圧−容量特性曲線を有する充電式セルの充放電を繰り返すと、電池容量の減少がより増大する。
【0004】
ある配置において、電池は、例えば直列に接続された何百または何千もの充電式セルを有する。一般に充電式セルは直列に充電される。しかしながら、充電式セルは、充電式セルの不均一性のために性能が異なり、充電式セルの充電状態は、充電式セルの不均一性のために充電式セルの充電中に変化する。より具体的には、充電式セルの電圧−容量特性曲線は、充電中または放電中に直線とならない。セルの不均一性が原因で、ある充電式セルは、他の充電式セルより速く完全に充電され、または完全に放電し、このことは電池の容量を制限し、電池の容量はまた、続く充電/放電のサイクルにおいてさらに減少する。
【0005】
図1は、充電中のある電池の充電式セルの不均一性を克服するための従来の方法の1つを示す。特に、それぞれがレジスタ14と、例えばパワーMOSFET(パワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などの論理制御スイッチ16を有する複数の分岐回路が、それぞれの充電式セル12について並列に接続されている。分岐回路は、それぞれの充電式セル12の周囲の過電流を分岐するように制御し、そのため充電式セル12はその最大電圧に速く達して、その結果、そのような充電式セル12を部分的または完全にバイパスし、そのような充電式セル12の充電を遅くする。
【0006】
分岐回路を用いて分岐される電流量は、特に、閉じた電池パックを用いる応用分野において、過電流を流すレジスタ14によって発生する熱のために制限される。したがって、ある実施において、充電電流は過度の熱を避けるように制限される。さらに、充電式セルの容量が数%より大きく異なる場合、このような回路は、比較的多数のセルを有する比較的大きな電池において有効ではない。
【0007】
本開示の少なくともある面は、下記においてさらに詳細に説明されるように、改善された充電装置、電気システム、および関連する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の例示の実施態様を以下の図面を参照しながら説明する。
図1】従来の電池と充電器の説明図である。
図2】一実施態様による電気システムの機能ブロック図である。
図3】一実施態様による電池のパック回路の機能ブロック図である。
図4】一実施態様による電気システムの説明図である。
図5】一実施態様による電気システムの説明図である。
図6】一実施態様によるスイッチング回路の説明図である。
図7】一実施態様による、複数の主充電パルスと複数の二次充電パルスを示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、米国特許法「科学および有益な技術の進歩の促進」(第1条第8項)の法目的を促進するために提出された。
【0010】
本開示の少なくともある面は、充電式電池の充電動作に関する。充電式電池はそれぞれ複数の充電式セルを有する。例えば製造工程および製造上の公差が原因で、ある電池の充電式セルの間に不均一性が存在する。本開示の少なくともある面は、充電工程中の充電式セルの充電状態が実質的に同じであり、電池の充電式セルに実質的にバランスの取れた充電を行うことに関する。本開示の一実施態様において、電池の他の充電式セルより低い充電状態を有し、充電される電池の1つまたはそれ以上の充電式セルに、(電池の他の充電式セルに供給される充電電気エネルギーに比べて)より多くの充電電気エネルギーを供給する。一例において、主充電パルスおよび二次充電パルスを含む電気エネルギーの複数のパルスが、電池を充電するために用いられる。さらなる実施態様が以下に示される。
【0011】
一実施態様によれば、充電器は、電気エネルギーの複数の主充電パルスを電池の複数の充電式セルに供給して、電池の共通充電サイクルの間、充電式セルを充電し、電気エネルギーの複数の二次充電パルスを電池の共通充電サイクルの間、電池の全ての充電式セルより少ない充電式セルに供給して、全ての充電式セルより少ない充電式セルを充電するように構成される充電回路を有する。
【0012】
他の実施態様によれば、充電器は、電池の共通充電サイクルの間、異なる充電状態を有する充電式セルに対応して、電池の複数の充電式セルの異なるセルに、異なるパルス数の電気エネルギーの充電パルスを供給するように構成される充電回路を有する。
【0013】
他の実施態様によれば、電気システムは、それぞれが、充電電気エネルギーを受け取り、負荷に電気エネルギーを放電するように構成された複数の充電式セルを有する電池と、共通充電サイクルの間、充電式セルを充電するために、複数の主充電パルスを充電式セルに供給し、複数の二次充電パルスを少なくとも1つの充電式セルに供給するように構成される充電回路と、電池の他の充電式セルの充電状態より低い充電状態を有する、少なくとも1つの充電式セルを検出するために、電池の共通充電サイクルの間、充電式セルの充電状態を監視するように構成される監視回路と、監視回路に接続され、電池の共通充電サイクルの間、実質的に電池の充電式セルの充電状態のバランスを取るために、電池の他の充電式セルの充電状態より低い充電状態を有する、少なくとも1つの充電式セルに二次充電パルスを供給するように充電回路を制御するために、監視回路の監視結果を用いるように構成される制御回路とを有する。
【0014】
他の実施態様によれば、充電式電池の充電方法は、電池の共通充電サイクルの間、第1の数の充電式セルを充電するために、複数の第1の瞬間に、電池の第1の数の充電式セルに電気エネルギーを供給する工程と、充電式セルの電気特性を監視する工程と、監視結果を用いて、複数の第2の瞬間に電池の第2の数の充電式セルに電気エネルギーを供給して、電池の共通充電サイクルの間第2の数の充電式セルを充電する工程と、を有し、ここで第2の数は第1の数より小さい。
【0015】
また別の実施態様によれば、充電式電池の充電方法は、電気エネルギーの複数の主充電パルスを供給して、電池の共通充電サイクルの間、電池の複数の充電式セルを充電する工程と、電池の共通充電サイクルの間、電気エネルギーの複数の二次充電パルスを供給して、電池の他の充電式セルの充電状態に比べて低い充電状態を有する電池の複数の充電式セルの少なくとも1つを充電する工程とを有する。
【0016】
図2には、一実施態様による電気システム20が示されている。電気システム20は、充電器24に接続された充電式電池22を含む。一実施態様において、電池22は複数の充電式セル28を含む。充電器24は電池22を充電するために、充電電気エネルギーを充電式セル28に供給するように構成される。図2には負荷は示されていないが、電池22は、電池22の放電動作中に、充電式セル28内部に蓄積された電気エネルギーを外部負荷に供給するように配置されることもできる。ある配置において、充電器24を用いて電池22を充電した後、電池22は充電器から切り離されて、放電動作中に負荷に電力を供給するために用いられる。他の実施態様において、充電器24は電池22の筐体内部にあり、電池22の一部、または電池22と一体化しているとみなされる。さらに、さらなる実施態様によれば、ある、または全てのパック回路26は、充電器24および例えば充電式セルを内部に収納する電池筐体の外部、の一部またはこれらと一体化しているとみなされる。
【0017】
図2に示される電池22の一実施態様は、パック回路26と、例えば電池22の電池パック内に配置される複数の充電式セル28とを含む。充電式セル28は、充電動作中に充電され(そして電気エネルギーが蓄積され)、放電動作中に放電される。異なる電池20は、電力が供給される負荷の要求によって直列構成および/または並列構成に配置される、異なる数の充電式セル28を含む。一実施態様では、充電式セル28はそれぞれ、1〜5ボルトを供給し、約10Ahの容量が用いられる。一実施態様において、充電式セル28は、例えばバレンステクノロジー社から入手可能なリチウムイオンセルとして具体化され、それぞれは一例において、3.2ボルトの動作電圧を有する。異なる構成および/または化学物質を有する他の充電式セル28が他の実施態様において用いられる。
【0018】
パック回路26は、電池22の様々な動作を実行するように構成される。後述するように、パック回路26は、充電式セル28の監視動作を提供し、充電式セル28の充電動作を制御するように構成される。
【0019】
一実施態様において、前述のように、充電器24は電池22と一体化され、あるいは電池22と完全に分離している。充電器24は、例えばAC主電源、交流電源、または他の適切なACまたはDC電源などの外部電源(図示せず)から電気エネルギーを受け取る。充電器24は電気エネルギーを電池20に供給して、充電式セル28を充電するように構成される。
【0020】
一実施態様によれば、電池22の共通充電サイクルの間、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態にするために、充電器24の充電回路(充電回路は図2,3の一構成例において示される)は、充電式セル28の異なる1つに異なる量の電気エネルギー(例えば、電気エネルギーの異なるパルス数の充電パルス)を供給するように構成される。後述するように、一実施態様によれば、充電器24の充電回路は、バランスの取れた名目上の充電状態を有する他の充電式セル28に供給される充電電気エネルギー量に比べて、大きい量の充電電気エネルギー量を、低い充電状態を有する充電式セル28に供給する。一実施態様において、充電回路は充電電気エネルギーを複数の充電パルスで供給し、充電回路は、低い充電状態を有する充電式セル28に、大きいパルス数の充電パルスを供給する。他の充電態様が可能である。
【0021】
一実施態様において、充電器24は、主充電電気エネルギーと二次充電電気エネルギーを充電式セル28に供給するように構成される充電回路を有する。充電器24の充電回路は、主充電電気エネルギーを全ての充電式の充電式セル28に供給し、二次充電電気エネルギーを全ての充電式セルより少ない充電式セル28に供給する(例えば、後述のように、二次充電電気エネルギーは、充電式セル28の名目上の充電状態より低い充電状態を有する1つまたはそれ以上の充電式セル28に供給される)。充電器24の充電回路は、低い充電状態を有する充電式セル28に二次充電電気エネルギーを供給して、そのような充電式セル28の充電速度を速め、充電状態を高める。例えば、低い充電状態を有する充電式セル28に二次充電電気エネルギーを供給することにより、低い充電状態を有する充電式セル28を、二次充電電気エネルギーを受け取らない充電式セル28より速く充電する。
【0022】
一実施態様によれば、充電器24の充電回路は、主充電電気エネルギーを複数の主充電パルスの形で供給し、二次充電電気エネルギーを複数の二次充電パルスの形で供給する。一実施態様では、充電式セル28に主充電電気エネルギーと二次充電電気エネルギーのそれぞれを供給するために、充電器24の充電回路は、主充電器と1つまたはそれ以上の二次充電器(図2には示されず)を含む。一実施態様では、主充電器と二次充電器はお互いに電気的に切り離されている。例えば、主充電器と二次充電器は同じ接地を共有しないように配置され、一構成例では、二次充電器は、変圧器を通して主充電器の接地(例えば、一実施態様では、電気の外部電源の接地と同じ参照を有する)から切り離されている。例示の実施態様による充電動作に関するさらなる詳細が以下に記載される。
【0023】
図3には、パック回路26の一実施態様が示される。一実施態様において、パック回路26は、監視回路30、制御回路32とスイッチング回路34を含む。より多い、より少ない、および/または他の回路を含むパック回路26の他の実施態様が可能である。
【0024】
一構成において、監視回路30は、充電式セル28の電気的特性を監視するように構成される。例えば、一実施態様において、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態にするために、充電式セル28のそれぞれの充電状態を監視することが望ましい。一実施態様において、監視回路30は、充電式セル28のそれぞれの電圧を監視し、この監視結果は、充電式セルについての充電状態の情報を提供するために用いられる。他の実施態様において、充電式セル28または電気システム20の、さらなるおよび/または代替の電気特性が監視される。例えば、ある構成において充電電流が監視される。
【0025】
図に示される構成において、制御回路32は、電池22の情報を処理し、様々な動作を制御するように構成される。一実施態様において、制御回路32は、命令された指示の形の実行コードを実行するように構成されるプロセッサを含む。制御回路32は、電池22の動作を制御する他のハードウエア(例えば、ASIC)をさらにまたは代替で含む。一実施態様において、制御回路32は、電池22を監視し(例えば、監視回路30からの出力を用いて電池22の電気的特性を監視する)、その監視結果に応答して電池22の動作を制御するように構成される。一具体例では、制御回路32は、監視回路30から充電式セル28の1つまたはそれ以上の電気的特性に関する情報(例えば、充電式セル28の電圧)を受け取り、受け取った情報を用いて充電式セル28の充電状態を決定する。さらに後述するように、本発明の例示の実施態様によれば、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態にするために、制御回路32は、制御スイッチング回路34を制御して、充電式セル28の異なるセルの1つに異なる量の電気エネルギーを供給するために充電式セル28の充電状態の情報を用いる。
【0026】
一実施態様において、スイッチング回路34は、1つまたはそれ以上の充電式セルに二次充電電気エネルギーを選択的に供給するように構成される。例示の実施態様によれば、スイッチング回路34は、充電器24の1つまたはそれ以上の二次充電器を1つまたはそれ以上の充電式セル28にそれぞれ接続し、または、多重機能を用いて、異なる瞬間に1つの二次充電器を1つまたはそれ以上の充電式セル28にそれぞれ接続する。
【0027】
図4には、一実施態様による電池システム20の一例が示される。電池22は、お互いに直列に接続された複数の充電式セル28の1つの電池列29を含む。ある構成において、電池22の容量を増大させるために、直列に接続された充電式セル28を含むさらなる電池列が、充電式セル28の図示される電池列29に並列に接続される。さらに、図に示す実施態様において、図3の監視回路30および制御回路32は、1つの回路成分内に示される。他の実施態様において、監視回路30と制御回路32は、分離した成分として実行される。さらに、図に示す実施態様において、図2の充電器24の充電回路40は、主充電器42と二次充電器44を含む。
【0028】
一実施態様において、主充電器42は、電池22の充電サイクルの間、主充電電気エネルギーを電池22の全ての充電式セル28に供給するように構成される。上述のように、一実施態様によれば、主充電器42は、主充電電気エネルギーを、電池22の共通充電サイクルの間の複数の瞬間に(例えば、時間による)電池22の全ての充電式セル28に供給される、複数の主充電パルスの形で供給するように構成される。一実施態様において、電池22の共通充電サイクルは、電池22の充電式セル28を部分的または完全に放電した後に続く、電池22の充電式セル28を充電して増大した充電状態とする(例えば、電池22の完全充電)こと、続く充電式セル28の放電前のことをいう。一実施態様において、主充電器42は、充電サイクルの全ての間の時間によって主充電パルスを供給する。
【0029】
さらに、二次充電器44は、主充電器42が充電式セル28を充電している電池22の共通の充電サイクルの間、二次充電電気エネルギーを1つまたはそれ以上の充電式セル28に供給する。一実施態様において、二次充電器44は、二次充電電気エネルギーを複数の二次充電パルスの形で供給する。一例では、二次充電パルスは、それぞれ、1組の主充電パルスの間で、1つまたはそれ以上の充電式セル28に供給される。
【0030】
前述したように、ある実施態様では、電池22の充電動作中に、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態にする。例えば、一実施態様では、充電式セル28は、充電サイクルの間実質的に同じ充電状態を有する。充電式セル28が理想的に均一である場合には、これらは実質的に同じ名目上の速度で充電する。さらに、均一な充電式セル28は、例えば主充電電気エネルギーのみを用いる充電中に、実質的に同じ名目上の充電状態を有する。しかしながら、例えば製造上の公差によって、充電式セル28は均一ではなく、異なる初期インピーダンスといった不均一性を有し、これにより充電式セル28を異なる充電速度で充電することになる。したがって、主充電電気エネルギーを用いて、1つまたはそれ以上の充電式セル28の充電状態を、他の充電式セル28の名目上の充電状態とバランスを取ることはできない。一実施態様において、監視回路30および制御回路32は、充電式セル28の1つまたはそれ以上の電気的特性を監視し、その結果は電池22および/または充電器24の充電動作を制御するために用いられ、共通の充電サイクルの間、充電式セル28の充電状態が実質的にバランスが取れた状態にある(例えば、充電式セル28の充電状態が互いに約1%の範囲内にある)、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態にするように構成される。
【0031】
一実施態様によれば、監視回路30および制御回路32は、各充電式セル281〜28n(または、図示される281〜28nを含むセルの各バンク、および図示される電池列の281〜28nの各セルにそれぞれ並列に接続される他の電池列)の電圧V1〜Vnを監視する。一実施態様において、監視回路30および制御回路32は、受け取った電圧V1〜Vnを用いて充電式セル281〜28nの充電状態を決定する。
【0032】
監視回路30および制御回路32は、スイッチング回路34を制御して、1つまたはそれ以上の二次充電器44からの二次充電電気エネルギーを、実質的に同じ充電状態を有する他の充電式セル281〜28n(例えばセルによって受け取られた電圧によって示される)の名目上の充電状態より低い充電状態にある1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nに供給するように構成される。上述のように、一般に充電式セル281〜28nは、電池の充電サイクルの間、名目上の同じ充電速度で充電し、一般にほとんどの充電式セル281〜28nは、充電サイクルの間、同じだがより高い名目上の充電状態にある(すなわち、充電式セル28(と電池22)の名目上の充電状態は、充電サイクルの間に増加する)。しかしながら、上述のように、不均一性のため、1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28n(またはセルのバンク)は、他の充電式セル28の名目上の充電速度より遅い速度で充電する。一実施態様において、1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nの充電状態が他の充電式セル281〜28nの名目上の充電状態より約1%より大きく変化した場合、1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nはバランスが崩れた状態にあるとみなされる。一実施態様では、1つまたはそれ以上のバランスが崩れた状態にある充電式セル281〜28nに二次充電電気エネルギーを供給することにより、そのような充電状態にあるセル28を、主充電電気エネルギーのみを受け取り、バランスが取れた状態にある充電式セル281〜28nに比べてより速い速度で充電する。
【0033】
二次充電電気エネルギー(例えばパルス)を供給している間、より低い充電状態にあり、二次充電電気エネルギーを受け取る1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nの充電状態は、他の充電式セル281〜28nの名目上の充電状態とバランスが取れた状態となる。1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nが、バランスの取れた他の充電式セル281〜28nの名目上の充電状態と実質的にバランスが取れて、実質的にバランスの取れた充電状態を獲得した後、監視回路30および制御回路32は、スイッチング回路34を制御して、共通の充電サイクルの間に1つまたはそれ以上の充電式セル281〜28nに二次充電電気エネルギーを供給するのを停止する。
【0034】
図5には、参照番号20aで示される電気システムの他の実施態様が示される。図に示す実施態様において、制御回路32と主充電器42は1つの部品として実行され、監視回路30は明示されない。図に示す実施態様において、4つの充電式セル280〜283が直列に接続される。主充電器42と二次充電器44は(DC入力またはAC入力を通して)DC外部電源またはAC外部電源と接続される。制御回路32は、充電サイクル中に、ノードb1〜b4における電圧に関する情報を受け取り、充電式セル280〜283の充電状態を決定するように構成される。
【0035】
一実施態様において、主充電器42は、電池の充電サイクルの間、全ての充電式セル28に主充電電気エネルギーを供給する。制御回路32は(例えば制御信号a1〜a4を通して)スイッチング回路34を制御して、他の充電式セル280〜283とバランスが崩れた状態にある1つまたはそれ以上の充電式セル280〜283に、(例えば接続部c1〜c4を通して二次充電器44から受け取られた)二次充電電気エネルギーを選択的に供給する。図に示す実施態様において、スイッチング回路34は、それぞれのノードb1〜b4を通して、二次充電電気エネルギーを適切な充電式セル280〜283に供給する。一実施態様において、制御回路32はスイッチング回路46を制御して、充電サイクルの間、主充電パルスの形の主充電電気エネルギーおよび二次充電パルスの形の二次充電電気エネルギーを、充電式セル280〜283に選択的に供給する。
【0036】
図6には、図5のスイッチング回路34が多重変換装置(マルチプレクサ)50の形である実施態様が示される。多重変換装置50は、端子c0とc1(例えば図5)を通して受け取った二次充電電気エネルギーをノードb1〜b4のそれぞれに選択的に供給するように構成される、複数のスイッチ52を含む。図5の制御回路32は、アドレス指定した制御信号a0〜a3をスイッチ52に与えて、ノードb1〜b4にそれぞれ接続され、バランスが崩れた状態にある1つまたはそれ以上の充電式セル280〜283に、二次充電器44からの二次充電電気エネルギーを供給するのを制御する。図に示す配置では、(主充電電気エネルギーもまた充電に用いられる)1つの共通充電サイクルの間に、1つの二次充電器44からの二次充電電気エネルギーが1つまたはそれ以上の充電式セル28に供給されることが可能である。ある実施態様では、複数の充電式セル28のそれぞれ1つに二次充電電気エネルギーを供給するためにさらなる二次充電器が用いられる。
【0037】
図7には、一実施態様による、右方向の時間の経過に対する、電池22の充電式セル28に供給される充電パルス(例えばDC充電パルス)を示すタイミング図が示される。特に、一実施態様によれば、複数の第1の瞬間に、複数の主充電パルス60が電池の全ての充電式セル28に供給される。一実施態様では、第1の瞬間は、電池22の充電サイクル中の時間に従って決定される。
【0038】
図7はまた、充電サイクルの充電中に、電池の他の充電式セル28の名目上の充電状態に比べて低い充電状態を有する、2つの充電式セル28(または、それぞれが並列に接続された複数の充電式セル28を有する2つのバンク)に、それぞれ供給される複数の二次充電パルス62a,62bを示す。一実施態様において、二次充電パルス62a,62bは、主充電パルス60の負荷サイクルを外れた部分の間に、1つまたはそれ以上の充電式セル28に供給される。例えば一実施態様において、二次充電パルス62a,62bは、主充電パルス60に対応する第1の瞬間の間の複数の第2の瞬間に供給される。
【0039】
バランスの崩れた状態にある充電式セル28の充電状態が、電池22のバランスの取れた充電式セル28の名目上の充電状態と実質的にバランスが取れた状態になるまで、最初の二次充電パルス62aはバランスの崩れた状態にある1つの充電式セル28に供給され、他の二次充電パルス62bはバランスの崩れた状態にある他の充電式セル28に供給される。他の実施態様では、バランスが崩れた状態にある他の充電式セル28を充電するために、さらなる二次充電パルスが供給される。上述のように、二次充電パルス62a,62bは、主充電電気エネルギーの負荷サイクルを外れた部分の間に、充電式セル28のそれぞれに供給される。時間が左から右に経過する図7の例では、時間内に発生する最初の二次充電パルス62a,62bは、時間内に発生する最初の二次充電パルス62a,62bにすぐ隣接する(図7では、時間内に発生する最初の2つの主充電パルス60である)1組の主充電パルス60の間にある。
【0040】
一実施態様において、二次充電パルス62a,62bは、1つの二次充電器44によって供給される二次充電電気エネルギーの時分割多重化を用いて発生される。あるいは、二次充電パルス62a,62bのそれぞれを発生させるために、複数の二次充電器44が用いられてもよい。そのような、複数の二次充電器44を有する一つの配置例においては、異なる充電式セル28に対する二次充電パルス62a,62bが発生させられて、同じ瞬間または異なる瞬間に、充電式セル28のそれぞれに供給される。
【0041】
異なる実施態様において、充電回路40は、異なる特性を有する主充電パルス60および二次充電パルス62を供給するように構成される。例えば、異なる実施態様において、主充電パルス60および二次充電パルス62の振幅(または振幅の絶対値)および/または負荷サイクルが異なる。一実施態様において、電池22の容量に対応するために、主充電パルス60および二次充電パルス62の電気的特性が選択される。
【0042】
ある配置において、充電式セル28の充電サイクルの間、一定電流/一定電圧の充電スキームを用いて、充電式セル28(例えばリチウムイオンセル)が充電される。一定電流/一定電圧の充電スキームを用いたより具体的な例では、充電式セル28はまず、一定電流を有する主充電パルス60および二次充電パルス62を用いて充電される。充電式セル28がある特性の充電状態に充電された後、充電器24は動作を切り換えて、一定電圧を有する主充電パルス60および二次充電パルス62を供給する。他の実施態様において、他の充電スキームが可能である。
【0043】
一実施態様において、充電サイクルの一定電流部分の間の主充電パルス60および二次充電パルス62の電流は、電池22の容量と主充電パルス60および二次充電パルス62の負荷サイクルを用いて決定される。例えば、電池22が10Ahrの容量を有する場合、容量の半分の充電電流は5アンペアである。例えば、10%の負荷サイクルを有する主充電パルス60および二次充電パルス62について、5アンペアの10倍の主充電パルス60および二次充電パルス62の充電電流が、まるで充電式セル28は5アンペアの電流を有する一定の非パルス充電電気エネルギーで充電されたかのように、実質的に同じ速度で、充電式セル28を充電する。一実施態様において、主充電パルス60および二次充電パルス62は、充電サイクルの一定電流部分の間において、それぞれ20〜50アンペアの一定電流、および10%の負荷サイクルを有する。より高い電流を有する主充電パルス60および二次充電パルス62を用いると、充電式セル28の充電時間を短縮できる。ある実施態様において、二次充電パルス62は主充電パルス60より低い電流値(例えば、20〜30アンペア)を有する。10秒の時間を有する図7の例において、主充電パルス60および二次充電パルス62はそれぞれ1秒の持続時間を有する。
【0044】
一実施態様では、制御回路32(図3)は、充電器24を制御するために、充電動作中に充電式セル28の電気的特性を監視するように構成される。例えば、制御回路32は、充電式セル28の1つまたはそれ以上の電気的特性を監視して、充電器24の動作を一定電流の動作モードから一定電圧の動作モードに切り換えるのに適切な時間を決定する。一実施態様では、制御回路32は、充電式セル28の充電状態を監視するために、充電動作中に充電式セル28の電圧を監視する。一実施態様では、セル28の電圧は各サイクル時間に対して、主充電パルス60の後二次充電パルス62の前に監視される。一実施態様では、一定電流電気エネルギーでの充電中に、セルの最大電圧に達した充電式セル28(例えば、グラファイト/リン酸鉄リチウムセルの各セルについて3.7ボルト)は、充電式セル28は所定の充電状態(例えば、容量の約80〜90%)に達したことを示す。
【0045】
制御回路32が充電式セル28が最大電圧に達したことを検出したことに応答して、制御回路32は充電器24を制御して、セル28の充電サイクル中に、一定電流の動作モードから、それぞれが一定電圧を有する主充電電気エネルギーと二次充電電気エネルギーが充電式セル28を充電するために用いられる一定電圧の動作モードに、動作モードを切り換える。一実施態様において、一定電圧の動作モードでは、それぞれが充電式セル28の最大電圧(例えば3.7ボルト)の電圧を有する主充電パルスと二次充電パルスの形の主充電電気エネルギーと二次充電電気エネルギーが用いられる。一実施態様において、充電式セル28の一定電圧での充電は細流充電とみなされ、これは充電式セル28を最大充電状態にまで充電し、充電式セル28を最大電圧および最大充電状態に維持するために用いられる。充電サイクルの一定電圧の充電部分の間、一定電圧の充電電気エネルギーは、初期値(例えば1〜2アンペア)から、充電式セル28は完全に充電されたことを示す(そして一実施態様において充電器24は切り離される)ゼロ(または比較的小さな電流量(〜mA))に減少する。一実施態様において、一定電流の充電電気エネルギーから一定電圧の充電電気エネルギーに切り換えるために、充電式セル28の他の充電状態が用いられる。さらに、他の実施態様において、他の充電スキームを用いることも可能である。
【0046】
本発明の少なくともある配置は、複数の充電式セル28を含む電池22を効果的に充電する方法を提供する。例えば、一実施態様において、電池22を迅速に充電する一方、充電式セル28を実質的にバランスの取れた充電状態とするために、比較的大きなパルス数の電流が用いられる。(全ての充電式セルに供給される主充電電気エネルギーに加えて)二次充電電気エネルギーを、他の充電式セル28に比べて低い充電状態を有する充電式セル28に選択的に供給することは、主充電電気エネルギーのみが充電に用いられる配置に比べて、ある実施態様における電池22の充電式セル28の充電状態をよりバランスの取れたものにすることができる。さらに、ある実施態様によれば、主充電電気エネルギーと二次充電電気エネルギーを用いることで、電池の完全容量(または実質的に完全容量)での動作が可能であり、また数多くの充電および放電サイクルにわたって電池の容量を維持することが可能である。さらに、本発明の少なくともある実施態様において、熱の発生そして高い動作温度に結びつくレジスタ分流スキームなしでバランスを取ることが可能である。
【0047】
法令に従い、本発明は、構造的および方法的な特徴について、より具体的にまたはより漠然と言葉で記載された。しかしながら、本明細書に開示された手段は、本発明を具体化するための好ましい形式からなるため、本発明は当然のことながら、記載されたおよび示された具体的な特徴に限定されるものではない。本発明は、したがって、添付された特許請求の範囲の適切な範囲内において、均等論に従って適切に解釈されるどのような形式または変更においても請求される。
【0048】
さらに、本発明の特徴は、開示の具体的態様の構築および/または実施における指針として記載された。本発明の発明者は、これらの記載された具体的態様はまた、これらの明確に開示された特徴に加え、さらなる発明の特徴を含み、開示し、そして記載していると考える。例えば、発明のさらなる特徴は、具体的態様において記載された特徴にくらべてより少ない、より多くの、および/または代わりとなる特徴を含む。より具体的な例において、出願人は、開示は、明確に開示された方法より少ない、より多くの、および/または代わりとなる工程を含む方法、さらには明確に開示された構造より少ない、より多くの、および/または代わりとなる装置を含み、開示し、そして記載すると考える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7