特許第5953359号(P5953359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953359
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】シリンダヘッド冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/18 20060101AFI20160707BHJP
   F02F 1/36 20060101ALI20160707BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20160707BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20160707BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20160707BHJP
   F01P 11/04 20060101ALI20160707BHJP
   B62J 17/06 20060101ALI20160707BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20160707BHJP
   B62J 37/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   F01P3/18 Q
   F02F1/36 C
   F01P3/20 J
   F01P3/02 F
   F01P3/02 X
   F01P7/16 502A
   F01P11/04 E
   B62J17/06
   B62J99/00 H
   B62J37/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-244787(P2014-244787)
(22)【出願日】2014年12月3日
(62)【分割の表示】特願2010-257114(P2010-257114)の分割
【原出願日】2010年11月17日
(65)【公開番号】特開2015-78697(P2015-78697A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】12/621,240
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595179505
【氏名又は名称】ハーレー−ダビッドソン・モーター・カンパニー・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジェスィー エル ディーズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エス カーリン
(72)【発明者】
【氏名】スコット ビー カイン
(72)【発明者】
【氏名】ダン エム セピック
(72)【発明者】
【氏名】テリー ジェイ ランペル
(72)【発明者】
【氏名】マット ジー ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】スコット エー コアーナー
(72)【発明者】
【氏名】リック ダブリュ エルチャート
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン イー ヒーリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラエ グラジャ
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−011090(JP,U)
【文献】 特開2005−016512(JP,A)
【文献】 特開2001−132446(JP,A)
【文献】 特開昭57−002417(JP,A)
【文献】 特開平01−117915(JP,A)
【文献】 特開2000−118464(JP,A)
【文献】 特開2006−213249(JP,A)
【文献】 特開昭62−071773(JP,A)
【文献】 特開2006−069404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/00− 3/20
F01P 7/16
F01P 11/04
B62J 17/06
B62J 37/00
B62J 99/00
F02F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車であって、
フレームと、
前記フレームに結合されるエンジンと、
前記フレームから横方向外側に延在し、前記エンジンの前方で前記フレームに結合される左右のエンジンガードと、
前記左右のエンジンガードにそれぞれ結合される左右のレッグシールドと、
前記エンジンに連通する液体冷却回路と、
前記液体冷却回路に連通し、前記左右のレッグシールド内にそれぞれ位置する左右のラジエータとを含み、
前記左右のレッグシールドは、左右のダクトをそれぞれ含み、右のダクトは、当該自動二輪車から離れる方向に前記右のラジエータから受ける空気を向けるように構成され、左のダクトは、当該自動二輪車から離れる方向に前記左のラジエータから受ける空気を向けるように構成され、
ウォータポンプが、前記液体冷却回路に接続され、前記ウォータポンプは、前記自動二輪車が直立位置にあるとき前記左右のラジエータよりも実質的に低い高さで、前記左右のレッグシールドの間に位置する、
自動二輪車。
【請求項2】
前記液体冷却回路は、前記エンジンの1つ以上のシリンダヘッドに連通するが、前記エンジンの他の部位には連通しない、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記液体冷却回路は、前記シリンダヘッドの排気通路まわりの隣接領域内の前記シリンダヘッドを特別に冷却するように構成される冷却回路を含む、請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記液体冷却回路に連通するサーモスタットを更に含み、
前記サーモスタットは、前記液体冷却回路内の液体冷媒の検出温度に応じて前記左右のラジエータの少なくとも1つを選択的にバイパスするように構成される、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記エンジンは、V型ツインエンジンであり、
前記液体冷却回路は、前記ポンプから前記エンジンに至る供給ヘッダと、前記エンジンから前記サーモスタットのバルブに至る戻りヘッダとを含み、
前記液体冷却回路は、前記供給ヘッドから前記V型ツインエンジンの第1シリンダヘッド及び第2シリンダヘッドのそれぞれに至る対の供給分岐ラインと、前記第1シリンダヘッド及び第2シリンダヘッドから前記戻りヘッドに至る対の戻りラインとを含む、請求項4に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記対の供給分岐ラインと前記対の戻りラインは、前記V型ツインエンジンの“V”内に略全体として配置される、請求項5に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記右のダクトは、当該自動二輪車から離れる下方向に前記右のラジエータから受ける空気を向けるように構成され、左のダクトは、当該自動二輪車から離れる下方向に前記左のラジエータから受ける空気を向けるように構成される、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記右のレッグシールドは、互いに結合された右前パネル及び右後パネルを含み、前記右のダクトは、前記右前パネル及び右後パネルの少なくとも部分により画成され、
前記左のレッグシールドは、互いに結合された左前パネル及び左後パネルを含み、前記左のダクトは、前記左前パネル及び左後パネルの少なくとも部分により画成される、請求項1に記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用の冷却システムに関し、より詳細には、自動二輪車の冷却シリンダヘッド用の液体冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車で使用されるエンジン(内燃機関)は、典型的には、空冷若しくは水冷である。空冷エンジンは、エンジンを冷却するフィンのような熱伝導表面上の空気の流れに依存する。水冷エンジンは、エンジン内の液体(例えば、冷媒若しくは油)の流れを使用して、エンジンからの熱を吸収し、また、ラジエータのような熱交換器を用いて、液体内の吸収された熱を空気に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4714058号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施例では、本発明は、クランクシャフト軸に向かって収束し且つ各シリンダの上側範囲でシリンダ間に空間が画成される態様で“V”型に配設される対のシリンダを有する自動二輪車エンジン用のシリンダヘッドを提供する。シリンダヘッドは、シリンダの1つに結合されるよう構成されたベースと、吸気通路及び吸気通路内に移動可能に配置される吸気バルブを含み、空間に近い側に位置するように構成された吸気側と、排気通路及び排気通路内に移動可能に配置される排気バルブを含み、空間から離れた側に位置するように構成された排気側とを含む。冷却液体入口ポートと冷却液体排出ポートが吸気側に配置される。冷却液体通路は、シリンダヘッドを通過し、当該シリンダヘッドの動作温度を低減する。
【0005】
他の実施例では、本発明は、自動二輪車エンジン用のシリンダヘッドであって、吸気バルブが位置する吸気通路を有する吸気側と、排気バルブが位置する排気通路を有する排気側と、吸気側に配置される冷却液体入口ポートと、吸気側に配置される冷却液体排出ポートとを含む自動二輪車エンジン用のシリンダヘッドを提供する。該排気通路が曲率を有する。シリンダヘッドは、また、入口ポート及び排出ポートの間に延在する液体冷却通路を含む。液体冷却通路は、測定可能な長さを有する単一ループの通路を含む。液体冷却通路の一部は、少なくとも270度の回転に対して排気通路の曲率に略追従する。
【0006】
更なる他の実施例では、本発明は、自動二輪車であって、フレームと、フレームに結合されるエンジンと、フレームから横方向外側に延在し、エンジンの前方でフレームに結合される左右のエンジンガードと、左右のエンジンガードにそれぞれ結合される左右のレッグシールドと、エンジンに連通する液体冷却回路と、液体冷却回路に連通し、左右のレッグシールド内にそれぞれ位置する左右のラジエータとを含む、自動二輪車を提供する。ある構成では、左右のラジエータを通る空気は、左右の下部内にそれぞれ配置された左右の空気ダクトにより自動二輪車から離れる方向に向けられる。
【0007】
本発明の他の局面は、詳細な説明及び添付図面を考慮することにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による自動二輪車の側面図。
図2】自動二輪車の左右のエンジンガード、左右のレッグシールド若しくは“下部”を図示する、図1の自動二輪車の一部の前面図。
図3】左右の下部内に位置するレジエータ組立体と、液体冷却回路とを含む、図2の自動二輪車の一部の背面図。
図4】レッグシールドが除去された図1の自動二輪車の液体冷却回路及びエンジンの側面図。
図5】エンジンが除去された図4の液体冷却回路の前面図。
図6図5の液体冷却回路の上面図。
図7図5の液体冷却回路の斜視図。
図8】フロントシリンダ、フロントガスケット及びフロントシリンダヘッドを図示する、図4のエンジンの一部の分解斜視図。
図9】フロントシリンダヘッドの吸気側を図示する、図8のフロントシリンダヘッドの背面図。
図10A】液体冷却通路を図示する、図8のフロントシリンダヘッドの斜視図。
図10B】フロントシリンダヘッドの排気通路を囲む液体冷却通路の一部を図示する、図10Aにおけるライン10B−10Bに沿って取られた断面図。
図10C】液体冷却通路の直線部の略円形断面を図示する、図10Aにおけるライン10C−10Cに沿って取られた断面図。
図10D】液体冷却通路の接続部の略円形断面を図示する、図10Aにおけるライン10D−10Dに沿って取られた断面図。
図11】フロントシリンダヘッドのベース上に露出される開口を図示する、図8のフロントシリンダヘッドの底面図。
図12図10Aの液体冷却通路及びフロントシリンダヘッドの製造で使用されるコアの斜視図。
図13】液体冷媒がラジエータ組立体のラジエータコイルをバイパスする第1状態の動作を図示する、図5の液体冷却回路の概略図。
図14】液体冷媒がラジエータコイルを通って流れる第2状態の動作を図示する、図13に類する概略図。
図15】左右の下部を図示する、図2の自動二輪車の一部の前方斜視図。
図16図15の左右の下部の後方斜視図。
図17図15の右の下部の分解図。
図18図15のライン18−18に沿った断面図。
図19】右の下部を通る空気の流れ方向を図示する、図15のライン19−19に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例を詳説する前に、理解されるべきこととして、本発明は、図面に図示された又は次の説明が付与された部品の構造及び配置の詳細にその用途が限定されるものでない。本発明は、他の実施例が可能であり、種々の態様で実現ないし実施されることができる。また、理解されるべきこととして、ここで用いられる専門語ないし用語は、説明の目的であり、限定としてみなされるべきでない。ここで“含む”や“備える”、“有する”及びそれらの変形の使用は、その後に列挙されるアイテム及びその均等物のみならず、追加のアイテムを包含する意図で用いられている。特に特定ないし限定されない限り、用語“搭載される”、“接続される”、“支持される”及び“結合される”及びそれらの変形は、広い意味で用いられ、直接的及び間接的な搭載、接続、支持、及び結合を包含する。更に、“接続される”及び“結合される”は、物理的又は機械的な接続や結合に限定されない。
【0010】
図1は、自動二輪車10を示す。図示された自動二輪車10は、ツーリング自動二輪車10であり、フレーム12と、ステアリング組立体16を介してフレーム12に結合される前輪18と、スイングアーム組立体(図示せず)を介してフレーム12に結合される後輪18とを含む。自動二輪車10は、フレーム12に結合されるエンジン20であって、トランスミッション22を介して後輪18に動作的に結合されるエンジン20を含む。
【0011】
図2,3を追加的に参照するに、フレーム12は、ステアリングヘッド24と、フレーム12の前端にてステアリングヘッド24から下方に延在する2つのダウンチューブ26を含む。自動二輪車10は、ダウンチューブ26に結合されるエンジンガード28を含む。エンジンガード28は、トップバー30、左のサイドバー3、右のサイドバー32及び下部位36を含む。下部位36は、左のサイドバー32の最も下端にて左フランジ38を、右のサイドバー34の最も下端にて右フランジ40を含み、更に、左右のフランジ間に接続部位42を含む。トップバー30は、ダウンチューブ26の上部位に接続され、左右のフランジ38,40は、ダウンチューブ26の下部位(例えば、フットペグ若しくはフットコントロールがフレーム12に搭載される位置)に接続される。エンジンガード28は、自動二輪車10が万が一点灯した場合に自動二輪車10のエンジン20が地面に接触することから保護する。
【0012】
自動二輪車10は、下部44L,44Rのそれぞれが自動二輪車10の中央面Cのそれぞれの側に配置されるように、エンジンガード28に結合される左右のサイドフェアリング(若しくは“下部(ロア)”)44L,44Rを含む。ここで使用されるように、“L”を含む各参照符号は、自動二輪車10の左側(自動二輪車10に座るライダーの視点から)に位置する構造を特定し、Rを含む各対応する参照符号は、自動二輪車10の右側に位置する構造を特定する。下部44L,44Rは、ライダーの足により占められる領域の前に略位置され、乗車中にライダーの肌及び足から風をブロックすることを補助する。各下部44L,44Rは、上部位46L,46R、外側部位48L,48R,内側部位50L,50R,下部位52L,52R,及び中央部位54L,54R(図2)を有する前パネル170L,170Rを含む。また、各前パネル170L,170Rは、前向き表面56L,56R及び後向き表面58L,58Rを含む。各前パネル170L,170Rは、後向き表面58L,58Rが空洞174L,174R(図3)を画成するように略凹状である。各中央部位54L,54Rは、スクリーン62L,62Rにより被覆される穴60L,60Rを含む。各内側部位50L,50Rは、略鉛直軸周りに回転するベント64L,64Rを含み、下部44L,44Rの間を通過する空気の量を制御し方向付けるためにライダーがベント64L,64Rを調整することを可能とする。
【0013】
左右の下部44L,44Rは、互いに略同一の鏡像である。エンジンガード28の右側への右下部44Rの取り付けが詳説される。エンジンガード28の左側への左下部44Lの取り付けは説明されないが、右下部44Rと類似する態様で取り付けられる。外側部位48Rに沿った右下部44Rの前向き表面56Rは、右のサイドバー34を受ける凹部を形成する外面形状を含む。右下部44Rは、また、上部位46Rに締結する上部位カバー66Rを含み、上部位46Rの外面形状と上部位カバー66Rの間のトップバー30の部位を捕捉する。右下部44Rの構成は、右下部44Rがエンジンガード28の右側内へ入れ子になることを可能とする。これに加えて、右下部44Rは、種々の位置でU型ボルト及びストラップによりエンジンガード28に取り付けられる。
【0014】
図4は、フロント及びリアシリンダ68F,68R及び対応するフロント及びリアシリンダヘッド70F,70Rを含むV型エンジンであるエンジン20を図示する。ここで使用されるように、“F”を含む各参照符号は、フロントシリンダ68F及びフロントシリンダヘッド70Fに関連する構造を指し、“R”を含む各対応する参照符号は、リアシリンダ68R及びリアシリンダヘッド70Rに関連する構造を指す。各シリンダ68F,68Rは、往復動するピストン(図示せず)を含み、シリンダヘッド70F,70Rのそれぞれは、それぞれの燃焼室を通る吸気及び排気の空気の流れを制御するために吸気バルブ72F,74R及び排気バルブ74F,74Rを含む。シリンダ68R,68R(及びその中のピストン)は、エンジン20の下部位にてクランクシャフト軸Aに向けて収束し、上方向に徐々に大きくなるシリンダヘッド70F,70R間及びシリンダ68F,68R間の空間Sを生成する。シリンダ68F,68Rは、冷却フィンを含み、空冷される。シリンダヘッド70F,70Rは、以下で詳説される内部液体冷却通路76F,76R及び空冷フィンを含む。
【0015】
自動二輪車10は、シリンダヘッド70F,70Rからの燃焼熱を除去するためにシリンダヘッド70F,70Rの液体冷却通路76F,76Rを通って液体を循環させる液体冷却システム78を含む。液体冷却システム78、若しくは、液体冷却回路は、図4−7に最も良く示されているが、ポンプ80、供給ヘッダ82、対の供給分岐ライン84、液体冷却通路76F,76R、対の戻り分岐ライン86、戻りヘッダ88、及び、サーモスタットバルブ90を含み、これらは全て直列に接続される。液体冷却システム78は、また、ラジエータ供給ライン92、右ラジエータ組立体94R,ラジエータクロスオーバライン96、左ラジエータ組立体94L及びラジエータ戻りライン98を含み、これらは全てサーモスタットバルブ90に直列に接続される。
【0016】
各ラジエータ組立体94L,94Rは、ラジエータコイル100L,100Rと、ラジエータコイル100L,100Rの低温側を画成する排気マニフォルド102L,102Rと、ラジエータコイル100L,100Rの後表面近傍のファン106L,106Rとを含む。ラジエータ組立体94L,94Rは、それぞれの下部44L,44Rに結合される。具体的には、右ラジエータ組立体94Rは、右下部44Rの空洞174R内に位置され、右下部44Rの後方に向く側から穴60Rを覆う。左ラジエータ組立体94Lは、左下部44Lの空洞174L内に位置され、左下部44Lの後方に向く側から穴60Lを覆う。ラジエータ組立体94L,94Rは、下部44L、44Rにネジ締結具で取り付けられ、ネジ締結具は、下部44L、44R上の搭載ボスに螺着される。
【0017】
ポンプ80及びサーモスタットバルブ90は、エンジンガード28の下部位36に結合され支持される。ポンプ80は、自動二輪車10が直立位置にあるとき(図5)左右のラジエータコイル100L,100Rよりも実質的に低い高さにて左右の下部44L、44R間に位置される。対の供給分岐ライン84及び対の戻り分岐ライン86は、V型ツインエンジン20の空間S内に略全体が配置される(図4)。
【0018】
液体冷却システム78は、また、右ラジエータ組立体94Rのインレットマニフォルド104Rに連通するフィルネック110及び圧力キャップ108と、圧力キャップ108に連通するフィルキャップ114及びオーバーフローボトル112と、オーバーフローボトル112及び大気に連通するオーバーフローチューブ116とを含む。液体冷却システム78は、また、左ラジエータ組立体94Lのインレットマニフォルド104L上にドレインプラグ118を含む。
【0019】
図8−11は、フロントシリンダヘッド70Fを図示する。リアシリンダヘッド70Rは、その鏡像である点を除き、図示されたフロントシリンダヘッド70Fと実質的に同一である。シリンダヘッド70Fは、エンジン20の対応するシリンダ68Fに対面するように構成され、燃焼室122Fを画成するために、対応するシリンダ68Fに結合されるように構成される(図11)。シリンダヘッド70Fは、更に、吸気側124F及び排気側126Fを含む。吸気側124Fは、吸気通路128F、及び、吸気通路128F内に配置されその中で可動である吸気バルブ78Fを含む。ヘッド70Fの排気側126Fは、排気通路130F、及び、排気通路130F内に配置されその中で可動である排気バルブ74Fを含む。吸気バルブ78Fは、燃焼室122F内に吸気通路128Fからの吸気の空気を選択的に提供し、排気バルブ74Fは、燃焼室122Fから排気通路130Fへの燃焼排気ガスを選択的に解放する。燃焼プロセスからの熱は、特に燃焼室122F及び排気通路130Fまわりの領域で、シリンダヘッド70Fを加熱する傾向にある。
【0020】
図10Aに最も良く示すように、液体冷却通路76Fは、入口ポート132Fから排気ポート134Fへとシリンダヘッド70Fを通って延在する。冷却通路76Fは、排気通路130Fに向けてそのまわりでヘッド70Fの吸気側124Fの入口ポート132Fから単一ループで延在し、ヘッド70Fの吸気側124Fの排気ポート134Fに戻る。液体は、どうであれシリンダ68F,68R内に若しくはそれらを通って循環される。従って、エンジン20のシリンダヘッド70F,70Rだけが、液体により直接冷却される一方、シリンダ68F,68Rは、空気により厳密に冷却される。更に、シリンダヘッド70F,70Rは、排気通路130L,130Rまわりの領域を特に目的として精度良く冷却されるように設計される。冷却通路76Fは、シリンダヘッド70F全体を通して延在するのではなく、主に、排気通路130Fまわりに延在する。冷却通路76Fは、焦点化された経路を有し、液体が通って流れる計測可能な長さを画成する。即ち、冷却通路76Fは、略対称な断面を有するコンジットから形成され、コンジットは、組み合わせで、冷却通路76Fの中心を追従する長手軸(図示せず)を画成し、長手軸の長さは、測定することができる。これは、自由に形作られた空洞により画成され長手軸、経路若しくは長さを直感的に画成しない先行技術の冷却通路と対照的である。
【0021】
図8−11を再度参照するに、入口及び排気ポート132F,134Fは、シリンダヘッド70Fの吸気側124Fに配置される。入口及び排気ポート132F,134Fは、自動二輪車10の後方(図9)から前方に直角な視線にてシリンダヘッド70F上に可視である(若しくは、逆に、入口及び排気ポート132F,134Fは、自動二輪車10の前から後方に直角な視線にてリアシリンダヘッド70R上に可視である)。入口及び排気ポート132F,134Fは、それぞれ、後方向でポートを出るポート軸(図示せず)を画成し、リアシリンダヘッド70Rの入口及び排気ポート132R,134Rは、それぞれ、前方向でポートを出るポート軸(図示せず)を画成する。入口及び排気ポート132F,134Fは、シリンダヘッド70Fのベースにより画成される平面Pから離間される。入口及び排気ポート132F,134Fは、入口通路128Fのそれぞれの側に位置される。
【0022】
図10A及び10Bに示すように、冷却通路76Fは、入口ポート132Fからシリンダヘッド70F内に延在する第1の略直線の部位136Fと、第1の直線部位136Fの端部から延在する略馬蹄形の部位138Fであって、排気通路130Fを略取り囲むために少なくとも角度B(例えば、270度の回転)で排気通路130Fの曲率に追従する略馬蹄形の部位138Fと、排気ポート134Fに接続するために直線経路に沿って馬蹄形の部位138Fから延在する第2の直線部位140Fとを含む。接続セクション142Fは、馬蹄形の部位138Fと共に第1の直線部位136F及び第2の直線部位140Fの相互接続を連通する。接続セクション142Fは、吸気通路128Fと排気通路130Fの間のシリンダヘッド70Fの橋部位144Fを通過し、また、接続セクション142Fは、冷却通路76Fの残り部分に比べて低減された直径を有する(図10C及び10D)。液体冷却通路76Fは、略その全長に沿って略円形の断面を有する。
【0023】
図8及び11に示すように、馬蹄形部位138Fの中間部位は、ベース120Fの表面を壊し、液体冷却通路76Fの一部を露出させる開口146Fを画成する。開口146Fは、エンジン20が組み立てられたときにシリンダヘッド70Fのベース120Fとシリンダ68Fのデッキ150Fの間に挟まれるガスケット148Fによりカバーされる。ガスケット148Fは、開口146Fからの冷却流体の漏れを防止する。
【0024】
図10A及び12を参照するに、シリンダヘッド70Fは、吸気及び排気通路128F,130Fのような内部通路を画成し形成するためにコアを使用する鋳造プロセスにより製造される。更に、コア152F(図12A)は、冷却通路76Fを形成するために使用される。コア152Fは、鋳造及び冷却プロセス中にコアが固定されたままであるように、鋳造ブロック若しくは工具内に固定される。コアは、3つの脚を有する。第1及び第2の脚は、直線部位の端部に位置され、第3の脚154Fは、馬蹄形部位138Fのベースに配置される。第3の脚154Fは、鋳造プロセス中に開口146Fを生成する。シリンダヘッド70Fが鋳造された後、コアは、水若しくは化学物質により除去される。
【0025】
図5−7,13及び14に示すように、冷媒供給ヘッダ82は、シリンダ68F,68R間の空間(スペース)Sから延在する。冷媒供給ヘッダ82は、液体冷却システム78へとシリンダヘッド70F,70Rの冷却通路76F,76Rを接続する対の供給分岐ライン84へと分割する。排出ポート134F,134Rは、対の戻りライン86のシリンダヘッド70F,70Rからの液体冷媒を供給し、双方は冷媒戻りヘッダ88へと流れる。シリンダヘッド70F,70Rの入口ポート及び排出ポート132F,132R,134F,134Rの全ては、工具の使用無しで、供給分岐ライン84及び戻り分岐ライン86との接続及び/又は非接続のための簡易型接続継手を供える。入口ポート132F,132R及び排出ポート134F,134Rは、全てが空間S近傍に位置されるので(図4に示すように、エンジン20の“V”内に位置されるので)、供給及び戻りヘッダ82,86は、単一の位置に回されるだけでよい。即ち、入口ポート及び排出ポート132F,132R,134F,134Rは、空間S近傍に位置する吸気側124F,124Rに配置される。
【0026】
動作中、冷却システム78は、シリンダヘッド70F,70Rを冷却するためにシリンダヘッド70F,70Rを通して液体を循環させるために動作する。図13に示すように、液体の温度が閾値温度よりも低いときの第1の動作モードでは、ポンプ80は、液体を、供給ヘッダ82、供給分岐ライン84、冷却通路76F,76R,戻り分岐ライン86、戻りヘッダ88を介して、サーモスタットバルブ90の第1バルブ入口156へと循環させる。液体の温度が閾値温度よりも低いことに起因して、バルブ90は、第1位置にあり、液体がバルブ90を介して第1バルブ出口158を出てポンプ80に戻る流れを可能とする。第1モードでは、サーモスタットは、左右のラジエータ組立体をバイパスする。
【0027】
動作の第2モードは図14に示される。この動作モードは、液体の温度が閾値温度以上であるときに生じる。第2モードでは、ポンプ80は、液体を、供給ヘッダ82、供給分岐ライン84、冷却通路76F,76R,戻り分岐ライン86、戻りヘッダ88を介して、サーモスタットバルブ90の第1バルブ入口156へと循環させる。液体の温度が閾値温度以上であることに起因して、バルブ90は、第2位置にあり、液体がバルブ90を介して第2バルブ出口160から流れ出ることを可能とする。第2バルブ出口160からは、流体は、ラジエータ供給ライン92、インレットマニフォルド104R,ラジエータコイル100R,右のラジエータ組立体94Rの排出マニフォルド102R,ラジエータクロスオーバライン96、インレットマニフォルド104L,ラジエータコイル100Lを介して、サーモスタットバルブ90の第2バルブ入口162の戻るように方向付けられる。第2バルブ入口162は、ポンプ80に戻って至る第1バルブ出口158に液体を方向付ける。動作の第2モードでは、ファン160L,160Rが回転され、ラジエータコイル100L,100Rを介して空気を引き、ラジエータコイル100L,100R内の液体からの熱を、そこを通る空気へと移動させることを補助する。
【0028】
図15−17を参照するに、下部44L,44Rは、ラジエータ組立体94L,94Rを収容する空洞174L,174Rを画成するために前パネル170L,170Rの後向き表面58L,58Rが被覆されるように、前パネル170L,170Rに結合される後パネル164L,164Rを含む。更に、後パネル164L,164Rは、下部44L,44R内の収容空洞176L,176Rを覆うと共にそれらへのアクセスを選択的に提供する収容カバー166L,166Rを含む。収容空洞176L,176Rは、空洞174L,174Rの上方に配置され、空洞174L,174Rから封止される。後パネル164L,164Rは、また、ラジエータ組立体94L,94Rを出る空気用のダクト172L,172Rを画成する。ダクト172L,172Rは、空気が下方に向けられライダーの脛及び自動二輪車から離れるように、自動二輪車10から車両外方向に離れる方向に空気を向ける。図17は、液体冷却システム78に関係する右後パネル164R及び右収容カバー166Rを示す。図17は、また、左右のスクリーン62L,62R及び左右のラジエータ組立体94L,94Rの間に嵌合されるアダプタ168L,168Rを示す。
【0029】
図18及び19は、右の下部44Rに形成される空洞174R内の右ラジエータ組立体94Rの構成を示す。図16及び19における仮想ラインで図示された矢印は、空気が右ラジエータ組立体94Rを通過し、空洞174Rに入り、ダクト172Rを通って出る際に取る経路をより明確に示す。
【0030】
使用中、ダクト172Rは、ライダーから離れる方向に空気の流れを再度方向付け、低圧で高速な空気流れ位置へと空気を排出する。ダクト172Rは、空気流れに対する制約を最小化するように設計される一方、ライダーの下腿、足及び自動二輪車の制御(例えば、リアブレーキペダル、シフトレバー)に対するクリアランスを維持する。ダクト172Rは、車両まわりの空気流れの比較的低圧で高速な流れ領域へと加熱された空気を吐出するように位置される。ダクト172Rは、加熱された空気が、左右の下部44L,44Rの方向の最小の再循環で、バイク周りの後流の空気流れによりライダーから離れる方向に運ばれることを可能とする。ダクトは、また、エアダクト入口と出口の間のより大きな圧力差に起因してラジエータを介して空気流れの性能も改善する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19