(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーン樹脂縮重合体粒子が、前記式(1)で表される構造単位を有しかつシロキサンである第1の有機珪素化合物100重量部と、前記式(2)で表される第2の有機珪素化合物3重量部以上、7重量部以下と、前記式(3A)又は前記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物2重量部以上、10重量部以下とを含む混合物を反応させることにより得られたシリコーン樹脂縮重合体粒子である、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記シリコーン樹脂縮重合体粒子が、前記式(1)で表される構造単位を有しかつシロキサンである第1の有機珪素化合物100重量部と、前記式(2)で表される第2の有機珪素化合物0.5重量部以上、10重量部以下と、前記式(3A)又は前記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物0.5重量部以上、10重量部以下と、前記式(4A)、前記式(4B)又は前記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物0.25重量部以上、10重量部以下とを含む混合材料を反応させることにより得られたシリコーン樹脂縮重合体粒子である、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記反応物は、前記シリコーン樹脂縮重合体粒子と前記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、前記シリコーン樹脂縮重合体粒子の含有量が2重量%以上、95重量%以下であり、かつ前記塩化ビニルモノマーの含有量が5重量%以上、98重量%以下である材料を反応させることにより得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記反応物は、前記シリコーン樹脂縮重合体粒子と前記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、前記シリコーン樹脂縮重合体粒子の含有量が20重量%以上、95重量%以下であり、かつ前記塩化ビニルモノマーの含有量が5重量%以上、80重量%以下である材料を反応させることにより得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記シリコーン樹脂縮重合体粒子とポリ塩化ビニルとの反応物の含有量と、前記塩化ビニル樹脂及び前記塩素化塩化ビニル樹脂の合計の含有量とが重量比で、2.0:98.0〜60.0:40.0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
前記反応物と前記塩素化塩化ビニル樹脂とを配合して、前記反応物と前記塩素化塩化ビニル樹脂とを含有し、かつ塩素含有率が56.5重量%以上、65.5重量%以下である塩化ビニル樹脂組成物を得る、請求項10に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
(シリコーン樹脂縮重合体粒子とポリ塩化ビニルとの反応物)
本発明に係るシリコーン樹脂縮重合体粒子とポリ塩化ビニルとの反応物は、シリコーン樹脂縮重合体粒子(以下、粒子Aと略記することがある)と塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させることにより得られる反応物(以下、反応物Xと略記することがある)である。上記反応物Xにおいては、粒子Aに由来する粒子(以下、粒子Bと記載することがある、例えばポリ塩化ビニルに結合した粒子)が含まれる。上記反応物Xでは、例えば、上記粒子Bが分散されている。
【0043】
上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aは、下記式(1)で表される構造単位を有しかつシロキサンである第1の有機珪素化合物と、下記式(2)で表される第2の有機珪素化合物と、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物と、下記式(4A)、下記式(4B)又は下記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物とを含む混合材料を反応させることにより得られたシリコーン樹脂縮重合体粒子である。
【0045】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれフェニル基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは1〜20の整数を表す。mは2以上の整数であってもよい。mが2以上であるとき、複数のR1及び複数のR2はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
CH
2=CR3−(CH
2)
p−SiR4
q(OR5)
3−q ・・・式(2)
上記式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を表し、R4及びR5はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、pは0〜3の整数を表し、qは0〜2の整数を表す。qが2であるとき、複数のR4は同一であってもよく、異なっていてもよい。qが0又は1であるとき、複数のR5は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
R6−Si(OR7)
3 ・・・式(3A)
上記式(3A)中、R6及びR7はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を表す。複数のR7は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
Si(OR8)
4 ・・・式(3B)
上記式(3B)中、R8は炭素数1〜3のアルキル基を表す。複数のR8は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
本発明に係る反応物Xは、上述した構成を備えているので、反応物Xを用いることで、優れた耐衝撃性及び耐薬品性を付与することが可能である。すなわち、反応物Xを含有する塩化ビニル樹脂組成物の使用により、耐衝撃性及び耐薬品性に優れた成形品を得ることができる。本発明では、耐衝撃性と耐薬品性との双方を良好にすることが可能である。
【0050】
さらに、本発明に係る反応物Xは、上述した構成を備えているので、反応物Xを用いることで、優れた耐熱性(熱安定性)も付与することが可能である。すなわち、反応物Xを含有する塩化ビニル樹脂組成物の使用により、耐熱性にも優れた成形品を得ることができる。本発明では、耐衝撃性と、耐熱性と、耐薬品性との全てを良好にすることが可能である。
【0051】
本発明では、一般にポリ塩化ビニル中に分散させることが困難なシリコーン樹脂縮重合体粒子を、反応物Xの状態でポリ塩化ビニル中に良好に分散した状態で存在させることができる。また、従来のシリコーン樹脂縮重合体粒子では、該シリコーン樹脂縮重合体粒子間での融着が起こりやすい傾向があるため、該シリコーン樹脂縮重合体粒子を、耐衝撃性をより一層高めるためにポリ塩化ビニル中に多く配合する(例えば20重量%以上)ことが困難である。これに対して、特定の上記粒子Aを用いることで、粒子A間での融着を防ぐことができ、ポリ塩化ビニル中に粒子Aを高い密度で分散させることができる。
【0052】
上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aは、上記式(1)で表される構造単位を有しかつシロキサンである第1の有機珪素化合物と、上記式(2)で表される第2の有機珪素化合物と、上記式(3A)又は上記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物と、下記式(4A)、下記式(4B)又は下記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物とを含む混合材料を反応させることにより得られたシリコーン樹脂縮重合体粒子であることが好ましい。
【0054】
上記式(4A)中、R9〜R11はそれぞれ不飽和炭化水素基又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R12は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0056】
上記式(4B)中、R13〜R18はそれぞれ不飽和炭化水素基又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0058】
上記式(4C)中、R19〜R21はそれぞれ不飽和炭化水素基又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。複数のR19、複数のR20及び複数のR21はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
特に、粒子Aを得る際に、上記式(4A)、上記式(4B)又は上記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物を用いることで、粒子A間の融着が効果的に抑制され、ポリ塩化ビニル中に、粒子Aを良好に分散した状態で存在させることができる。
【0060】
このため、上記第4の有機珪素化合物の使用により、本発明に係る反応物Xを含有する塩化ビニル樹脂組成物を用いた成形品の耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性をより一層効果的に高めることができる。すなわち、反応物Xを含有する塩化ビニル樹脂組成物の使用により、耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性により一層優れた成形品を得ることができる。上記第4の有機珪素化合物の使用により、耐衝撃性と、耐熱性と、耐薬品性との全てをより一層良好にすることが可能である。
【0061】
上記式(1)で表される構造単位を有しかつシロキサンである第1の有機珪素化合物の具体例としては、直鎖状シロキサン及び環状シロキサン等が挙げられる。上記第1の有機珪素化合物は、ポリシロキサンであることが好ましい。上記式(1)中のmは2〜20の整数であることが好ましい。
【0062】
上記シリコーン樹脂縮重合体粒子の製造工程における操作性を高める観点からは、上記第1の有機珪素化合物は、環状シロキサンであることが好ましく、環状ポリシロキサンであることが好ましい。上記環状シロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。また、塩化ビニルモノマーと共重合させる目的で、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する第1の有機珪素化合物を用いてもよい。上記第1の有機珪素化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記式(2)で表される第2の有機珪素化合物の使用により、本来親和性がないか又は低い、ポリ塩化ビニルとシリコーンとを結合させることができる。さらに、上記第2の有機珪素化合物は、上記反応物X中に粒子Aに由来する粒子Bを分散させるとともに、成形品において酸又はアルカリ薬液が上記粒子Bと樹脂との隙間に浸入することを抑制する役割を果たす。
【0064】
上記式(2)で表される第2の有機珪素化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン及びアリルトリプロポキシシラン等が挙げられる。上記第2の有機珪素化合物のうち、反応効率をより一層高くし、グラフト率をさらに一層高くする観点からは、上記式(2)で表される有機珪素化合物は、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランであることがより好ましい。上記第2の有機珪素化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記粒子Aを得る際の上記第2の有機珪素化合物の使用量は特に限定されない。上記粒子Aを得る際に、上記第1の有機珪素化合物100重量部に対して、上記第2の有機珪素化合物の使用量は好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。上記第2の有機珪素化合物の使用量が上記下限以上であると、粒子Aが塩化ビニルモノマーと十分に結合しやすい。この結果、上記塩化ビニル樹脂組成物において、粒子Aに由来する粒子Bと樹脂との界面で剥離が生じ難くなる。このため、上記粒子Bが上記ポリ塩化ビニル中に分散しやすくなり、上記塩化ビニル樹脂組成物及び成形品の耐衝撃性を高めることができる。上記第2の有機珪素化合物の使用量が上記上限以下であると、上記塩化ビニル樹脂組成物を加熱成形する際に、粒子Bに結合されたポリ塩化ビニル同士の絡み合いが少なくなり、成形品の表面に凹凸が発生し難くなり、成形品の外観が良好になる。
【0066】
上記式(3A)又は上記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物は、上記粒子A,粒子Bの硬さを調整し、成形品の耐衝撃性を発現させる役割を有し、架橋剤として作用する。上記第3の有機珪素化合物として、上記式(3A)で表される第3の有機珪素化合物を用いてもよく、上記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物を用いてもよい。
【0067】
上記式(3A)又は上記式(3B)で表される第3の有機珪素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びメチルトリイソプロポキシシラン等が挙げられる。上記第3の有機珪素化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記粒子Aを得る際の上記第3の有機珪素化合物の使用量は特に限定されない。上記粒子Aを得る際に、上記第1の有機珪素化合物100重量部に対して、上記第3の有機珪素化合物の使用量は好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下である。上記第3の有機珪素化合物の使用量が上記下限以上であると、上記塩化ビニル樹脂組成物を加熱成形する際に、粒子Bが変形し難くなり、粒子Bがポリ塩化ビニルから分断され難くなり、成形品の表面に凹凸が発生し難くなり、成形品の外観が良好になる。上記第3の有機珪素化合物の使用量が上記上限以下であると、粒子Aを得る重合反応において、粘度が過度に高くなり難く、重合が容易になり、かつゴム成分が硬化し難くなるので、成形品の耐衝撃性を高めることができる。
【0069】
上記式(4A)、上記式(4B)又は上記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物の使用により、本来、シリコーン樹脂縮重合体粒子間で起こりやすかった融着を起こり難くすることができる。上記第4の有機珪素化合物として、上記式(4A)で表される第4の有機珪素化合物を用いてもよく、上記式(4B)で表される第4の有機珪素化合物を用いてもよく、上記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物を用いてもよい。
【0070】
また、上記式(4A)、上記式(4B)又は上記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物は、上記粒子Aの表面に存在するシラノール基と結合し、粒子間のシロキサン結合の形成を妨げるための表面処理剤として作用する。
【0071】
上記式(4A)、上記式(4B)又は上記式(4C)中、不飽和炭化水素基は、ビニル基、アリル基又はフェニル基であることが好ましい。上記不飽和炭化水素基は、ビニル基又はアリル基であってもよく、フェニル基であってもよい。上記不飽和炭化水素基は、ビニル基であってもよく、アリル基であってもよい。
【0072】
上記式(4A)、上記式(4B)又は上記式(4C)で表される第4の有機珪素化合物の具体例としては、モノアルコキシシラン化合物としてトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン及びジメチルビニルメトキシシラン等が挙げられ、ジシロキサン化合物としてヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、ジシラザン化合物としてヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。上記第4の有機珪素化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記粒子Aを得る際の上記第4の有機珪素化合物の使用量は特に限定されない。上記粒子Aを得る際に、上記第1の有機珪素化合物100重量部に対して、上記第4の有機珪素化合物の使用量は好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは1.5重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記第4の有機珪素化合物の使用量が上記下限以上であると、上記塩化ビニル樹脂組成物を加熱成形する際に、粒子Bが樹脂中へ分散しやすくなり、耐衝撃性が発現する。上記第4の有機珪素化合物の使用量が上記上限以下であると、上記塩化ビニル樹脂組成物を加熱成形する際に、粒子Bの滑性が高まりすぎず、成形が容易となる。
【0074】
上記シリコーン樹脂縮重合体粒子(粒子A)を得る方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、溶液重合法及び塊状重合法等が挙げられる。上記粒子Aの粒径を制御しやすく、更に成形品の耐衝撃性の発現性がよいので、乳化重合法又はマイクロサスペンジョン重合法が好ましい。なお、上記粒子Aを得る際の重合には、ランダム共重合、ブロック共重合及びグラフト共重合等の全ての共重合が含まれる。
【0075】
上記乳化重合法又はマイクロサスペンジョン重合法として、従来公知の方法を採用可能である。乳化重合又はマイクロサスペンジョン重合の際に、例えば、必要に応じて、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤又は酸化防止剤等を用いてもよい。
【0076】
上記乳化分散剤は、モノマー成分の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率よく行うために用いられる。上記乳化分散剤としては特に限定されず、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分けん化ポリビニルアルコール、セルロース系分散剤、及びゼラチン等が挙げられる。上記乳化分散剤は、アルキルベンゼンスルホン酸であることが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸は重合開始剤としても使用できる。上記乳化分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸及びアルキルベンゼンスルホン酸などの酸、並びに水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどのアルカリが挙げられる。なかでも、乳化剤としても使用可能なアルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。上記重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記乳化重合法の種類としては特に限定されず、例えば、一括重合法、モノマー滴下法及びエマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0079】
上記一括重合法は、ジャケット付重合反応器内に、純水、乳化分散剤及び混合モノマーを一括して添加し、窒素気流加圧下で攪拌して充分に乳化した後、攪拌しながら反応器内をジャケットで所定の温度に昇温し、その後重合させる方法である。
【0080】
上記モノマー滴下法は、ジャケット付重合反応器内に、純水、乳化分散剤及び重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、攪拌しながら反応器内を所定の温度に昇温した後、混合モノマーを、一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0081】
上記エマルジョン滴下法は、混合モノマー、乳化分散剤及び純水を攪拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、ジャケット付重合反応器内に純水及び重合開始剤を入れ、攪拌しながら窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内を所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0082】
上記エマルジョン滴下法において、重合初期に上記乳化モノマーの一部を一括添加し、その後残りの乳化モノマーを滴下する方法を用いれば、一括添加する乳化モノマーの量を変化させることにより、上記粒子Aの粒径を容易に制御できる。
【0083】
重合装置には、通常重合に用いられる重合装置を用いればよく、重合装置の形状、材質等は特に制限されない。
【0084】
なお、上記粒子Aを得る反応は、酸又はアルカリ触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0085】
上記重合方法において、反応温度は特に限定されず、反応温度を途中で多段階に変更してもよい。
【0086】
上記環状シロキサンの開環重合反応や、上記第1の有機珪素化合物の開裂や、上記第2,第3の有機珪素化合物の加水分解や、上記第1,第2,第3,第4の有機珪素化合物の脱水縮合反応を効率良く進行させるためには、反応温度は30〜100℃であることが好ましい。反応速度をある程度制御しながら速くするためには、上記反応温度は70〜95℃であることがより好ましい。反応時間も特に限定されないが、十分に開環反応を進行させるためには、2〜6時間反応させることが好ましい。
【0087】
また、上記第1の有機珪素化合物の反応後の分子量を十分に増加させ、更に上記第2,第3,第4の有機珪素化合物との結合部分の切断を抑制するためには、上記反応温度は0〜60℃であることが好ましい。反応速度をある程度速くし、かつ、上記第1の有機珪素化合物の反応後の分子量を十分に増加させ、更に上記第2,第3,第4の有機珪素化合物を効率よく反応させるには、上記反応温度を30〜50℃に保つことがより好ましい。反応時間も特に限定されないが、上記第1の有機珪素化合物の反応後の分子量を十分に増加させるためには、3〜12時間反応させることが好ましい。
【0088】
上記第1の有機珪素化合物の開裂、上記第2,第3,第4の有機珪素化合物の加水分解、及び上記第1,第2,第3,第4の有機珪素化合物の脱水縮合反応を効率よく進行させつつ、上記第1の有機珪素化合物の反応後の分子量を十分に増加させ、更に生成した重合体の主鎖の開裂を抑制し、かつ該主鎖と上記第2,第3,第4の有機珪素化合物との結合部分の開裂を抑制するためには、50〜100℃で反応を開始し、必要十分な時間保持することにより上記第1の有機珪素化合物を開裂させた後、0℃〜60℃に温度を低下させて必要十分な時間保持することが好ましい。これにより、上記第1の有機珪素化合物の反応後の分子量を十分に増加させ、生成した重合体の主鎖と上記第2,第3,第4の有機珪素化合物との反応効率を高くすることができる。反応時間をある程度短くできることから、70〜95℃で2〜5時間反応させた後、30〜50℃で3〜8時間さらに反応させることが好ましい。
【0089】
上記粒子A及び上記粒子Bの平均粒子径は特に限定されない。上記粒子A及び上記粒子Bの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.14μm以上、好ましくは0.5μm以下である。上記平均粒子径が上記下限以上であると、成形品の耐衝撃性がより一層高くなる。上記平均粒子径が上記上限以下であると、成形品の引張強度がより一層良好になる。
【0090】
上記重合方法において、反応終了後に得られる上記粒子Aの固形分比率は特に限定されない。上記粒子Aの生産性及び重合反応の安定性を高める観点からは、反応終了後に得られる上記粒子Aの固形分比率は好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下である。また、上記重合方法では、上記粒子Aの機械的安定性を向上させる目的で、保護コロイド等を用いてもよい。
【0091】
上記粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応は、ラジカル重合触媒の存在下で行われることが好ましい。上記反応物Xでは、例えば、上記粒子Bが分散されている。該粒子Bは、例えば、ポリ塩化ビニルに結合されている。上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料の重合反応を行う際に、塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーを用いてもよい。上記材料は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーを含有していてもよい。
【0092】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエーテル、エチレン、フッ化ビニル、及びマレイミド等が挙げられる。上記ビニルモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記反応物Xを得る際に、上記シリコーン樹脂縮重合体粒子(粒子A)と上記塩化ビニルモノマーとの配合比は特に限定されない。反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が2重量%以上、95重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が5重量%以上、98重量%以下であることが好ましい。上記第1,第2,第3の有機珪素化合物を用いる場合に、反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が2重量%以上、20重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が80重量%以上、98重量%以下であることが好ましい。上記第1,第2,第3,第4の有機珪素化合物を用いる場合に、反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が20重量%以上、95重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が5重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。このような好ましい含有量で上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを反応させた反応物Xを用いることにより、耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性により一層優れた塩化ビニル樹脂組成物の成形品を得ることができる。上記粒子Aの含有量が上記下限以上であると、上記塩化ビニル樹脂組成物における塩素含有率を適度に高くすることが容易であり、成形品の耐熱性をより一層高めることができる。上記粒子Aの含有量が上記上限以下であると、上記反応物X中に上記粒子Bが分散しやすくなり、成形品の耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0094】
また、反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が15重量%以上、75重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が25重量%以上、85重量%以下であってもよく、上記粒子Aの含有量が15重量%以上、30重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が70重量%以上、85重量%以下であってもよい。
【0095】
また、上記材料における上記粒子Aの含有量が上記下限以上でありかつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が上記上限以下であると、硬質塩化ビニル管又は異型成形品等の成形品に本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物を用いた場合に、該成形品の耐衝撃性がより一層高くなる。上記材料における上記粒子Aの含有量が上記上限以下でありかつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が上記下限以上であると、上記成形品の機械的強度がより一層高くなる。
【0096】
更に、上記第1,第2,第3の有機珪素化合物を用いる場合に、反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が3重量%以上、16重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が84重量%以上、97重量%以下であることが好ましい。上記第1,第2,第3,第4の有機珪素化合物を用いる場合に、上記反応物Xを得るための材料において、上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとの合計100重量%中、上記粒子Aの含有量が50重量%以上、85重量%以下であり、かつ上記塩化ビニルモノマーの含有量が15重量%以上、50重量%以下であることがより好ましい。このような好ましい含有量で上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを反応させた反応物Xを用いることにより、耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性にさらに一層優れた塩化ビニル樹脂組成物の成形品を得ることができる。上記粒子Aの含有量が上記下限以上であると、本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物における塩素含有率をより一層高くすることが容易であり、成形品の耐熱性をより一層高めることができる。上記粒子Aの含有量が上記上限以下であると、上記反応物X中に上記粒子Bがより分散しやすくなり、成形品の耐衝撃性を更に一層高めることができる。
【0097】
上記重合反応により、例えば、上記粒子Aに塩化ビニルモノマーがグラフト共重合される。上記粒子Bにグラフト共重合され、化学的に結合している塩化ビニル分子の単位シリコーン樹脂縮重合体粒子(粒子B)1重量%あたりの重量分率(重量%)をグラフト率とする。
【0098】
上記反応物Xにおけるグラフト率は0.4重量%以上であることが好ましい。反応物Xにおけるグラフト率が0.4重量%以上であると、上記粒子Bの表面からポリ塩化ビニルが剥離し難くなり、上記粒子Bがポリ塩化ビニル中に均一に分散しやすくなり、反応物X及び成形品の耐衝撃性をより一層高めることができる。更に、反応物Xにおけるグラフト率が0.4重量%以上であると、酸又はアルカリなどの薬液に接触する条件において、界面への薬液の浸入を抑制でき、薬液による性能劣化を抑制できる。
【0099】
ポリ塩化ビニルと上記粒子Bとを含む反応物Xでは、ポリ塩化ビニルの光劣化に起因して発生する塩化水素による劣化を抑制できる。このため、上記反応物Xの耐候性が高くなる。
【0100】
上記グラフト共重合させる方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法及び塊状重合法等が挙げられる。これらのなかでは、懸濁重合法が好ましい。
【0101】
上記懸濁重合法により重合する際には、分散剤又は油溶性重合開始剤等を用いてもよい。上記分散剤の使用により、材料中における上記粒子Aの分散安定性を向上させることができ、塩化ビニルのグラフト共重合を効率的に進行させることができる。
【0102】
上記分散剤としては特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、及び無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記油溶性重合開始剤は特に限定されない。上記油溶性重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記油溶性重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート及びα−クミルパーオキシネオデカノエートなどの有機パーオキサイド類、並びに2,2−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物等が挙げられる。上記油溶性重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
塩化ビニルをグラフト共重合させる際には、重合中に重合槽内に付着する付着物の量を少なくする目的で、スケール防止剤、pH調整剤又は酸化防止剤等を用いてもよい。スケール防止剤を用いることが特に好ましい。更に、必要に応じて、重合槽の内部、攪拌翼、邪魔板等の形状、材質等で重合装置を変更してもよいし、攪拌速度等の重合条件を変更してもよい。上記粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させる際に、スケール防止剤を用いることが好ましい。
【0105】
上記スケール防止剤は特に限定されない。上記スケール防止剤としては、例えば、ポリアミノベンゼン、多価フェノール、アミノフェノール、アルキル置換フェノール等から選ばれた一種又は二種以上の化合物の縮合反応によって得られる多価フェノール等が挙げられる。上記スケール防止剤は、水や有機溶媒に希釈されていてもよい。上記スケール防止剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
上記懸濁重合法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。温度調整機及び攪拌機を備えた重合器内に、純水、上記分散剤、上記油溶性重合開始剤、粒子A、及び、必要に応じて水溶性増粘剤及び重合度調節剤を含む分散溶液を入れ、真空ポンプにより重合器内から空気を排除する。次に、攪拌条件下で、塩化ビニル、及び必要に応じて他のビニルモノマーを重合器内に入れる。その後、反応容器内を昇温し、所望の重合温度で、材料の重合反応を進行させ、グラフト共重合を行う。重合反応を行う際に、重合温度は30〜90℃であることが好ましい。重合時間は、2〜20時間であることが好ましい。
【0107】
上記懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、すなわち、重合温度を制御できる。反応終了後には、例えば未反応の塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを除去し、脱水及び乾燥を行うことにより、上記反応物Xを得ることができる。
【0108】
なお、重合反応に用いた上記粒子Aと塩化ビニルモノマーとの配合比率が、上記粒子Aに由来する粒子Bの含有量と、上記塩化ビニルモノマーが重合したポリ塩化ビニルの含有量とに対応しないことがある。一部の粒子A及び一部の塩化ビニルモノマーが未反応の状態で存在し、重合後に排出されたりするためである。
【0109】
上記重合反応により得られるポリ塩化ビニルの重合度は好ましくは400以上、より好ましくは500以上、好ましくは3000以下、より好ましくは1400以下である。重合度が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記塩化ビニル樹脂組成物を成形する際の成形性をより一層高めることができる。更に、耐衝撃性及び耐熱性により一層優れた成形品を得ることができる。
【0110】
上記反応物Xは、上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させた後、溶剤を用いて洗浄することにより得られていることが好ましい。本発明に係る上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記ポリ塩化ビニルとの反応物Xの製造方法では、上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させた後、溶剤を用いて洗浄することにより上記反応物Xを得ることが好ましい。溶剤を用いた洗浄を行うことで、より一層優れた耐衝撃性を付与することが可能である。すなわち、溶剤を用いて洗浄された反応物Xを含有する塩化ビニル樹脂組成物の使用により、耐衝撃性により一層優れた成形品を得ることができる。なお、上記溶剤を用いた洗浄により、耐衝撃性が高くなるのは、耐衝撃性を十分に発現させないシリコーン成分が反応物Xから除去されるためであると考えられる。
【0111】
上記溶剤の具体例としては、脂肪族系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、パラフィン系溶剤及び石油系溶剤等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記脂肪族系溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等が挙げられる。上記ケトン系溶剤としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。上記芳香族系溶剤としては、トルエン及びキシレン等が挙げられる。上記エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸イソプロピル等が挙げられる。上記エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)、及びジオキサン等が挙げられる。上記アルコール系溶剤としては、エタノール及びブタノール等が挙げられる。上記パラフィン系溶剤としては、パラフィン油及びナフテン油等が挙げられる。上記石油系溶剤としては、ミネラルターペン及びナフサ等が挙げられる。
【0113】
上記溶剤を用いた洗浄では、例えば、反応後の反応生成物(洗浄前の反応物)を溶剤中に入れる。反応生成物は、一般に膨潤する。次に、溶剤中に入れられた反応生成物をろ過により取り出すことで、上記反応物Xを得ることができる。なお、反応生成物に溶剤をかけて、反応生成物を洗浄してもよい。
【0114】
耐衝撃性を効果的に高める観点からは、上記溶剤は、有機溶剤であることが好ましく、エーテル系溶剤であることが好ましく、エーテル結合を有する溶剤であることが好ましく、23℃で上記第1,第2,第3の有機珪素化合物が溶解可能である溶剤であることが好ましく、23℃で上記第1,第2,第3,第4の有機珪素化合物が溶解可能である溶剤であることが好ましく、テトラヒドロフランであることが特に好ましい。
【0115】
(塩化ビニル樹脂組成物及び塩化ビニル樹脂組成物の製造方法)
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物は、上述したシリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xと、塩化ビニル樹脂又は塩素化塩化ビニル樹脂とを含有する。本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂のみを含んでいてもよく、塩素化塩化ビニル樹脂のみを含んでいてもよく、塩化ビニル樹脂と塩素化塩化ビニル樹脂との双方を含んでいてもよい。
【0116】
上記塩化ビニル樹脂は、塩素化されていない。上記塩化ビニル樹脂には、塩素化塩化ビニル樹脂は含まれない。上記塩化ビニル樹脂の重合度は特に制限はないが、溶融混練時に耐衝撃性の発現の観点から十分なゲル化をさせるために、500〜1000程度であることが好ましい。上記塩化ビニル樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0117】
上記塩素化塩化ビニル樹脂は、後塩素化塩化ビニル樹脂であることが好ましい。後塩素化塩化ビニル樹脂とは、塩化ビニル樹脂を得た後に、該塩化ビニル樹脂の塩素化が行われた樹脂をいう。上記塩素化塩化ビニル樹脂の製造方法は特に制限はない。上記塩素化塩化ビニル樹脂の重合度は特に制限はないが、溶融混練時に耐衝撃性を発現されるのに十分なゲル化をさせるために、500〜1000程度であることが好ましい。上記塩素化塩化ビニル樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記塩化ビニル樹脂組成物が上記塩素化塩化ビニル樹脂を含む場合に、上記塩化ビニル樹脂組成物は、上記塩化ビニル樹脂を含まないか又は含む。上記塩素含有率及び加工性を調整するために、上記塩素化塩化ビニル樹脂を2種以上使用可能である。
【0118】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物における塩素含有率は好ましくは56.5重量%以上、好ましくは65.5重量%以下である。上記塩素含有率とは、上記塩化ビニル樹脂組成物の全重量中の塩素原子の重量分率である。上記塩素含有率が56.5重量%以上であると、成形品の強度及び耐熱性がより一層良好になる。上記塩素含有率が65.5重量%以下であると、成形品の耐衝撃性がより一層良好になる。耐熱性と耐衝撃性とをより一層高いレベルで両立する観点からは、上記塩化ビニル樹脂組成物における上記塩素含有率は、より好ましくは58.5重量%以上、より好ましくは63.0重量%以下である。
【0119】
上記塩化ビニル樹脂組成物における上記塩素含有率を上記下限以上及び上記上限以下にするための方法は、特に限定されない。上記塩化ビニル樹脂組成物における上記塩素含有率を上記下限以上及び上記上限以下にするために、上記塩化ビニル樹脂組成物は、塩素含有率が64.0重量%以上、70.5重量%以下である塩素化塩化ビニル樹脂を含有することが好ましい。上記塩素化塩化ビニル樹脂における上記塩素含有率が上記下限以上であると、成形品の耐熱性がより一層高くなる。上記塩素化塩化ビニル樹脂における上記塩素含有率が上記上限以下であると、上記塩化ビニル樹脂組成物が溶融しやすくなり、成形品の耐衝撃性をより一層高めることができる。耐熱性と耐衝撃性とをより一層高いレベルで両立する観点からは、上記塩素化塩化ビニル樹脂における上記塩素含有率は、好ましくは65重量%以上、好ましくは68.5重量%以下である。
【0120】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物では、上記反応物Xの含有量と上記塩化ビニル樹脂及び塩素化塩化ビニル樹脂の合計の含有量とが重量比で、2.0:98.0〜60.0:40.0であることが好ましく、3.0:97.0〜42.0:58.0であることがより好ましい。上記反応物Xの含有量と上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル樹脂の合計の含有量とが上記範囲内であれば、上記塩化ビニル樹脂組成物における上記塩素含有率を適度な範囲にすることが容易であり、成形品の耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性をバランスよく高めることができる。
【0121】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物100重量%中、上記粒子Aに由来する粒子Bの含有量は好ましくは1.6重量%以上、より好ましくは1.8重量%以上、更に好ましくは2.4重量%以上、好ましくは51重量%以下、より好ましくは36重量%以下である。上記塩化ビニル樹脂組成物100重量%中、上記粒子Aに由来する粒子Bの含有量は2.6重量%以上であってもよく、9重量%以下であってもよく、6.3重量%以下であってもよい。上記粒子Bの含有量が上記下限以上であると、成形品の耐衝撃性がより一層高くなる。上記粒子Bの含有量が上記上限以下であると、成形品の耐熱性がより一層良好になる。上記塩化ビニル樹脂と上記塩素化塩化ビニル樹脂との合計100重量%中、全量が塩化ビニル樹脂であってもよく、全量が塩素化塩化ビニル樹脂であってもよい。
【0122】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させることにより得られる上記反応物Xを用いて、上記反応物Xと上記塩化ビニル樹脂又は上記塩素化塩化ビニル樹脂とを配合して、上記反応物と上記塩素化塩化ビニル樹脂とを含有する塩化ビニル樹脂組成物を得る工程を備える。本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させて、反応物Xを得る工程をさらに備えることが好ましい。本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物の製造方法では、上記反応物Xを合成することなく入手して、入手した上記反応物Xを用いてポリ塩化ビニル樹脂組成物を得てもよく、上記反応物Xを合成して、合成した上記反応物Xを用いてポリ塩化ビニル樹脂組成物を得てもよい。
【0123】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物の製造方法では、上記反応物Xと上記塩素化塩化ビニル樹脂とを配合して、上記反応物Xと上記塩素化塩化ビニル樹脂とを含有し、かつ塩素含有率が56.5重量%以上、65.5重量%以下である塩化ビニル樹脂組成物を得ることが好ましい。この場合に、上記塩化ビニル樹脂は用いなくてもよく、用いてもよい。
【0124】
上記シリコーン樹脂縮重合体粒子Aと上記塩化ビニルモノマーとを含む材料を反応させる際に、スケール防止剤を用いることが好ましい。スケール防止剤の使用により、重合槽内への付着物の発生を抑制し、より一層効率的に反応を進行させることができる。
【0125】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物を成形することにより、成形品を得ることができる。
【0126】
上記成形品の製造方法は、上述した塩化ビニル樹脂組成物を、成形機を用いて押出成形する工程を備えることが好ましい。上記成形品の製造方法では、上記成形機として、樹脂が滞留する樹脂滞留部を樹脂流路に有する成形機を用いることが好ましい。上記成形品は、管であることが好ましい。
【0127】
上記塩化ビニル樹脂組成物を成形する場合には、必要に応じて、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤及び顔料等の添加剤を添加してもよい。
【0128】
上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、並びにバリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、及びリン酸エステル等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0130】
上記滑剤としては特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール及びステアリン酸ブチル等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0131】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤等が挙げられる。上記加工助剤の具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、及び2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0132】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0133】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム及びタルク等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系及び染料レーキ系等の有機顔料、並びに酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物−セレン化物系及びフェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0136】
上記成形品を得る場合には、成形時の加工性を高める目的で、上記塩化ビニル樹脂組成物に可塑剤を添加してもよい。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、及びジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
上記成形品を得る場合には、必要に応じて、塩化ビニル樹脂とは異なりかつ塩素化塩化ビニル樹脂とは異なる熱可塑性樹脂が、上記塩化ビニル樹脂組成物に添加されてもよい。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
上記添加剤又は可塑剤を上記塩化ビニル樹脂組成物に混合する方法としては特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、及びコールドブレンドによる方法等が挙げられる。上記塩化ビニル樹脂組成物の成形方法としては特に限定されず、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法及びプレス成形法等が挙げられる。
【0139】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物を成形する際に用いる成形機としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、二軸同方向押出機等が挙げられる。
【0140】
上記成形機を用いて成形するとき、賦形する金型、樹脂温度等は、特に限定されない。
【0141】
上記塩化ビニル樹脂組成物に、成形加工に使用される上記滑剤、安定剤又は顔料等を配合することにより、流動性よく上記塩化ビニル樹脂組成物を加工できる。
【0142】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性に優れている。さらに、上記塩化ビニル樹脂組成物は耐候性にも優れている。しかも、上記塩化ビニル樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱性及び耐薬品性の特性のバランスが非常に良好である。
【0143】
従って、本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物は、特に、高温で薬液が使用される管材及びタンク等に、非常に有用である。さらに、上記塩化ビニル樹脂組成物は、上記特性を生かして、耐衝撃性及び耐熱性等が要求される硬質塩化ビニル管、又はプレート等に好適に使用できる。
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0145】
(実施例1〜10)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造
下記の表1,2に示した配合成分(1)を下記の表1,2に示した配合量で混合した後、ホモジナイザーを用いて8000rpmで乳化させた。次いで、重合槽内に投入し、攪拌し、続いて、重合槽内の気層部分を窒素で置換した。その後、重合槽内の温度を85℃に昇温して5時間反応させ、次に重合槽内の温度を30分かけて50℃まで低下させた後、50℃で6時間反応させた。その後、下記の表1,2に示した配合成分(2)を重合槽内に添加し、2時間反応させた。その後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6〜8に調整し、固形分濃度約16〜20重量%のシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを得た。
【0146】
(2)反応物Xの製造
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器(重合器)内に、下記の表1,2に示した配合成分(3)を一括で投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら下記の表1,2に示した配合成分(4)である塩化ビニルを投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表1,2に示す重合温度にて重合を開始し、反応容器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xを得た。
【0147】
(3)塩化ビニル樹脂組成物の製造
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)と粒子Bとの含有量が下記の表1,2に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0148】
(
参考例11〜13)
シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造及び反応物Xの製造の際に用いた配合成分の種類及び配合量を下記の表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、反応物Xを得た。なお、
参考例11〜13では、下記の表2に示した配合成分(2)を配合しなかった。
【0149】
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)と粒子Bとの含有量が下記の表2に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0150】
(実施例1〜
10及び参考例11〜13の評価)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの粒子径
シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの粒子径を光散乱粒度計(光散乱粒度計DLS−7000:大塚電子社製)にて測定した。
【0151】
(2)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの固形分濃度
予め重量を測定したアルミニウム製容器(重量Ag)内に、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aを約5g(重量Bg)を秤量して入れた後、70℃で24時間乾燥した。乾燥後、アルミニウム製容器を含む残留固形分の重量を測定し(重量Cg)、下記式(W)により、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの固形分濃度を算出した。
【0152】
シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの固形分濃度(重量%)=(C−A)/B×100 ・・・式(W)
【0153】
(3)反応物X中のポリ塩化ビニルの重合度
反応物X中のポリ塩化ビニルの重合度をJIS K6720−2に準拠して測定した。なお、発生した不溶解物は濾別し、可溶解分のみを用いて測定した。
【0154】
(4)反応物X中のシリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量D及びポリ塩化ビニルの含有量E
反応物X中の塩素重量含有率(Cl%)をJIS K7229に準拠して、電位差滴定法にて測定した。この塩素重量含有率(C=Cl%/100)から下記式(X)により、シリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量Dを算出した。
【0155】
シリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量D(重量%)=(1−1.762×C)×100 ・・・式(X)
【0156】
さらに、シリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量Dから、ポリ塩化ビニルの含有量Eを求めた。
【0157】
(5)塩化ビニル樹脂組成物中のシリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量F
塩化ビニル樹脂組成物を約10g(以下、W1gとする)を秤取し、テトラヒドロフラン(THF)100mL中で50時間攪拌混合した。その後、THFに不溶解部分を遠心分離操作により、THF溶液部分より沈降分離し、不溶解部分を70℃で24時間乾燥した。得られた乾燥物の重量を秤量(以下、W2gとする)し、更に塩素含有率(以下、C%とする)を定量した。これらの結果より、下記式(Y)により、シリコー樹脂縮重合体粒子Bの含有量Fを算出した。
【0158】
シリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量F(重量%)=W2(1−1.762×C)/W1×100 ・・・式(Y)
【0159】
(6)塩化ビニル樹脂組成物における塩素含有率の測定
塩化ビニル樹脂組成物における塩素重量含有率(Cl%)をJIS K7229に準拠して、電位差滴定法にて測定した。
【0160】
(7)23℃シャルピー衝撃値
塩化ビニル樹脂組成物100重量部に対して、有機錫系安定剤2.0重量部及びポリエチレンワックス0.5重量部を混合した樹脂材料を200℃で3分間ロール混練し、更に、205℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を作製した。得られたプレス板を測定試料として、JIS K7111に準拠してエッジワイズ衝撃試験片で1号試験片・Aノッチで試験片を作製し、シャルピー衝撃値を測定した。23℃の恒温槽で測定試料を12時間保管した後、23℃で測定を行った。
【0161】
(8)23℃引張抗張力
シャルピー衝撃値を測定する際に作製したプレス板を測定試料として、プラスチックの引張試験方法(JIS K7113)に則り、1号形試験片で10mm/分で引張降伏強さを測定した。測定温度は23℃とし、引張抗張力の単位は(MPa)とした。
【0162】
(9)ビカット軟化温度
シャルピー衝撃値を測定する際に作製したプレス板を測定試料として、JIS K7206(荷重5kgf)に準拠して測定した。
【0163】
(10)97%硫酸浸漬・重量変化率
上記塩化ビニル樹脂組成物100重量部に、有機錫系安定剤1.0重量部及びポリエチレンワックス0.3重量部を添加し、混合した樹脂材料を用意した。この樹脂材料を195℃で3分間ロール混練し、更に、200℃で3分間プレス成形して、厚さ3mmのプレス板を作製した。得られたプレス板を2.5cm角に切り取り、端面を研磨して浸漬用サンプルを得た。予め、浸漬用サンプルの重量(Ag)を秤量した後、97%硫酸を入れたガラス容器内に、浸漬用サンプルを入れ、該浸漬用サンプルの全面が97%硫酸に漬かるように上からガラス製の落し蓋をして、密閉した。その後、浸漬用サンプルが97%硫酸に浸漬した状態で14日間放置した。14日後、浸漬サンプルを取り出し、軽く水洗した後、表面の水分を拭取って、浸漬後のサンプルの重量(Bg)を秤量した。これらの結果から下記式(Z)により、97%硫酸浸漬・重量変化率を算出した。
97%硫酸浸漬・重量変化率(%)=(B−A)/A×100・・・式(Z)
【0167】
(実施例14,15)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造
下記の表3に示した配合成分(1)を下記の表3に示した配合量で混合した後、ホモジナイザーを用いて8000rpmで乳化させた。次いで、重合槽内に投入し、攪拌し、続いて、重合槽内の気層部分を窒素で置換した。その後、重合槽内の温度を85℃に昇温して5時間反応させ、次に重合槽内の温度を30分かけて50℃まで低下させた後、50℃で6時間反応させた。その後、下記の表3に示した配合成分(2)を重合槽内に添加し、2時間反応させた。その後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6〜8に調整し、固形分濃度約16〜20重量%のシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを得た。
【0168】
(2)洗浄前の反応生成物の製造
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器(重合器)内に、下記の表3に示した配合成分(3)を一括で投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら下記の表3に示した配合成分(4)である塩化ビニルを投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表3に示す重合温度にて重合を開始し、反応容器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応生成物(洗浄前の反応物)を得た。
【0169】
(3)反応物Xの製造
得られた反応生成物5g(用いた洗浄前の反応生成物の量)を、THF300mL中に浸漬して、23℃で12時間撹拌した。その後に、膨潤した反応生成物を、金網(400メッシュ、SUS316)を用いてろ過により取り出して、乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xを得た。得られた反応物Xの下記式(K)より求められるゲル分率は、下記の表3に示す値であった。
ゲル分率=(得られた反応物Xの量(g))/(用いた洗浄前の反応生成物の量(g)) ・・・式(K)
【0170】
(4)塩化ビニル樹脂組成物の製造
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)と粒子Bとの含有量が下記の表3に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0171】
(実施例16)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造
下記の表3に示した配合成分(1)を下記の表3に示した配合量で混合した後、ホモジナイザーを用いて8000rpmで乳化させた。次いで、重合槽内に投入し、攪拌し、続いて、重合槽内の気層部分を窒素で置換した。その後、重合槽内の温度を85℃に昇温して5時間反応させ、次に重合槽内の温度を30分かけて50℃まで低下させた後、50℃で6時間反応させた。その後、下記の表3に示した配合成分(2)を重合槽内に添加し、2時間反応させた。その後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6〜8に調整し、固形分濃度約16〜20重量%のシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを得た。
【0172】
(2)反応物Xの製造
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器(重合器)内に、下記の表3に示した配合成分(3)を一括で投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら下記の表3に示した配合成分(4)である塩化ビニルを投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表3に示す重合温度にて重合を開始し、反応容器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xを得た。
【0173】
(3)塩化ビニル樹脂組成物の製造
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)と粒子Bとの含有量が下記の表3に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0174】
(実施例14〜16の評価)
実施例14〜16で得られた反応物X及び塩化ビニル樹脂組成物について、実施例1と同様の評価を実施した。
結果を下記の表3に示す。
【0176】
(
参考例17〜38)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造
下記の表4〜6に示した配合物を表4〜6に示した配合量で混合した後、ホモジナイザーを用いて8000rpmで乳化させた。次いで、重合槽内に投入し、攪拌し、続いて、重合槽内の気層部分を窒素で置換した。その後、2つの温度条件(パターンα:重合槽の内温を85℃昇温して3時間反応後、重合槽内の温度を30分かけて50℃まで低下させた後、50℃で4.5時間反応させる;パターンβ:重合槽内の温度を90℃まで昇温して6時間反応させる)のうち、いずれかのパターンで重合を進行させた。その後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6〜8に調整し、固形分濃度約16〜20重量%のシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを得た。
【0177】
(2)反応物Xの製造
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器内(重合器)に、下記の表4〜6に示す塩化ビニルを除く配合物を一括投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら塩化ビニルを投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表4〜6に示す重合温度にて重合を開始し、反応容器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xを得た。
【0178】
(3)塩化ビニル樹脂組成物の製造
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3wt%,重合度1000タイプ」、「HA−54H:塩素含有率65.4wt%,重合度1000タイプ」、または、「HA−54F:塩素含有率64.0wt%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニルと粒子Bとの含有量が下記の表4〜6に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0179】
(比較例1〜3)
シリコーン樹脂縮重合体粒子の製造及び反応物の製造の際に用いた配合物の種類及び配合量を下記の表7に示すように変更したこと以外は
参考例17と同様にして、反応物X及び塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0180】
(
参考例17〜38及び比較例1〜3の評価)
参考例17〜38及び比較例1〜3で得られた反応物X及び塩化ビニル樹脂組成物について、実施例1と同様にして、上述した(1),(2),(3),(4),(5),(8),(10)の評価項目について評価を実施した。さらに、下記の(11,(12),(13)の評価項目について評価を実施した。
【0181】
(11)グラフト率
上記反応物Xを約10g(以下、W1gとする)を秤取し、テトラヒドロフラン(THF)100mL中で50時間攪拌混合した。その後、THFに不溶な部分を200メッシュの金網でTHF溶液部分より分離し、70℃で一昼夜乾燥した。得られた乾燥物の重量を秤量(以下、W2gとする)し、更に塩素含有率(以下、C%とする)を定量した。これらの結果より、上記式(X)により求めたシリコーン樹脂縮重合体粒子Bの含有量D(重量%)と下記式(L)により、グラフト率を算出した。
グラフト率(重量%)=[{(C×W2/56.8)×100}/{W1−W2(1−C/56.8)}]/X ・・・式(L)
【0182】
(12)0℃シャルピー衝撃値
上記反応物X100重量部に対して、有機錫系安定剤1.0重量部及びポリエチレンワックス0.3重量部を混合した樹脂材料を195℃で3分間ロール混練し、更に、200℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を作製した。得られたプレス板を測定試料として、JIS K7111に準拠してエッジワイズ衝撃試験片で1号試験片・Aノッチで試験片を作製し、シャルピー衝撃値を測定した。0℃の恒温槽で測定試料を12時間保管した後、測定試料を取り出してから10秒以内に23℃で測定を行った。
【0183】
(13)押出外観
上記反応物X100重量部に、安定剤として有機錫系安定剤であるジオクチル錫メルカプト1重量部と、滑剤としてポリエチレンワックス0.5重量部と、エステル系ワックス0.5重量部と、PMMA系加工助剤1.5重量部とを添加し、スーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて、攪拌、混合して、塩化ビニル組成物材料を得た。
【0184】
この塩化ビニル組成物材料を、直径20mmの2軸異方向回転押出機(ブラベンダー社製)に供給し、樹脂温度が195℃になるようにして成形し、幅30mm、厚さ3mm、長さ約100mmの板状成形品を得た。得られた成形品の外観を目視で評価し、下記の3段階の判定基準で判定した。
【0185】
[押出外観の判定基準]
○:表面が平滑である
△:表面に凹凸があるものの、該凹凸が小さい
×:表面の凸凹があり、該凹凸がかなり大きい
【0191】
(
参考例39〜50)
(1)シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造
下記の表8,9に示した配合物を表8,9に示した配合量で混合した後、ホモジナイザーを用いて8000rpmで乳化させた。次いで、重合槽内に投入し、攪拌し、続いて、重合槽内の気層部分を窒素で置換した。その後、重合槽内の温度を85℃に昇温して3時間反応させ、次に重合槽内の温度を30分かけて50℃まで低下させた後、50℃で4.5時間反応させた。その後、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6〜8に調整し、固形分濃度約16〜20重量%のシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを得た。
【0192】
(2)反応物Xの製造
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器(重合器)内に、スケール防止剤であるポリアリルフェノール水溶液を塗布し、下記の表8,9に示す塩化ビニルを除く配合物を一括投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら塩化ビニルを投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表8,9に示す重合温度にて重合を開始し、反応容器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、シリコーン樹脂縮重合体粒子Aとポリ塩化ビニルとの反応物Xを得た。
【0193】
(3)塩化ビニル樹脂組成物の製造
得られた反応物Xと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」、「HA−54H:塩素含有率65.4重量%,重合度1000タイプ」、または、「HA−54F:塩素含有率64.0重量%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニルと粒子Bとの含有量が下記の表8,9に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0194】
(
参考例51)
反応物Xの製造の際にスケール防止剤を用いなかったとこと以外は
参考例41と同様にして、反応物X及び塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0195】
(比較例4)
参考例39で得られたシリコーン樹脂縮重合体粒子Aを用意した。該粒子Aと後塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製「HA−58K:塩素含有率67.3重量%,重合度1000タイプ」)とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂と粒子Aとの含有量が下記の表10に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0196】
(
参考例52)
シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造及び反応物Xの製造の際に用いた配合物の種類及び配合量を下記の表10に示すように変更したこと以外は
参考例39と同様にして、反応物Xを得た。
【0197】
後塩素化塩化ビニル樹脂の合成:
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器内に、下記の表10に示す塩化ビニルを除く配合物を一括投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら塩化ビニル100重量部を投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、内温57.5℃にて重合を開始し、反応容器内の圧力が0.7MPaまで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、塩化ビニル樹脂を得た。
【0198】
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水500重量部と上記で得られた塩化ビニル樹脂100重量部を入れ、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−78.4kPaになるまで減圧した。窒素ガスで圧戻し(ゲージ圧が0になるまで戻すこと)を行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応容器内を加温した。
【0199】
反応槽内の温度が100℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、110℃定温で反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から反応機内の塩化ビニル樹脂の塩素含有率を計算し、塩素化含有率が63.5重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。さらに、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し、脱水・乾燥して粉末状の後塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた後塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は63.5重量%,重合度は1020であった。
【0200】
得られた反応物Xと上記後塩素化塩化ビニル樹脂とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニルと粒子Bとの含有量が下記の表10に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0201】
(
参考例53)
シリコーン樹脂縮重合体粒子Aの製造及び反応物Xの製造の際に用いた配合物の種類及び配合量を下記の表10に示すように変更したこと以外は
参考例39と同様にして、反応物Xを得た。
【0202】
後塩素化塩化ビニル樹脂の合成:
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器内に、下記の表10に示す塩化ビニルを除く配合物を一括投入した。その後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し、更に、攪拌しながら塩化ビニル100重量部を投入した。次いで、ジャケット温度を制御して、内温57.5℃にて重合を開始し、反応容器内の圧力が0.7MPaまで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、更に、脱水及び乾燥を行うことで、塩化ビニル樹脂を得た。
【0203】
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水500重量部と上記で得られた塩化ビニル樹脂100重量部を入れ、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−78.4kPaになるまで減圧した。窒素ガスで圧戻し(ゲージ圧が0になるまで戻すこと)を行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応容器内を加温した。
【0204】
反応槽内の温度が70℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、水銀ランプにより槽内を紫外線で照射しながら反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から反応機内の塩素含有率の塩素含有率を計算し、塩素化含有率が71.5重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。
【0205】
さらに、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し、脱水・乾燥して粉末状の後塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた後塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は71.5重量%、重合度は960であった。
【0206】
得られた反応物Xと上記後塩素化塩化ビニル樹脂とを、得られる塩化ビニル樹脂組成物における後塩素化塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニルと粒子Bとの含有量が下記の表10に示す量となるように配合して、塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0207】
(
参考例39〜53及び比較例4の評価)
参考例39〜53及び比較例4で得られた反応物X及び塩化ビニル樹脂組成物について、実施例1と同様にして、上述した(1),(2),(3),(4),(5),(7),(8),(9),(10)の評価項目について評価を実施した。さらに、下記の(14)の評価項目について評価を実施した。
【0208】
(14)反応物Xの重合時に発生する付着物量の評価
重合器内部の付着物量を全て取りきることは困難なため、目視で相対評価した。付着物が多い順に1、2、3、4、5と判定した。判定結果の数字が大きいほど、付着物量が少ないことを示す。
【0213】
なお、
参考例39,40,42〜50において、反応物Xの製造の際にスケール防止剤を用いなかったとこと以外は同様にして、塩化ビニル樹脂組成物を得て、
参考例39,40,42〜50と同様の評価を行ったところ、重合器内の付着物量が多くなったことを除いて評価結果は同様であった。
【0214】
(成形品の作製例1)
〔配合〕
参考例46で得られた塩化ビニル樹脂組成物を用意した。この塩化ビニル樹脂組成物と下記の表11に示す各種配合剤とを配合し、ヘンシェルミキサーで室温(23℃)から110℃まで昇温しながら混合した後、クーリングミキサーで50℃まで冷却して、配合粉を得た。
【0216】
〔成形〕
上記配合粉を用い、かつ樹脂滞留部を樹脂流路に有する押出機(成形機)を用いて、以下の押出条件で押出成形し、成形品である管を得た。
【0217】
押出機:長田製作所社製、SLM50(2軸異方向コニカル押出機)
樹脂滞留部:樹脂ブレーカー、1枚、樹脂流動面クロムメッキ
金型:パイプ用金型、出口部外半径13.33mm、出口部内半径10mm、樹脂流動面クロムメッキ、3本ブリッジ
押出量:30kg/h
樹脂温度:200℃(金型入口部での温度)
回転数:20〜25rpm
金型温度:D1:190℃、D2:205℃、D3:210℃(先端平行部)
【0218】
(成形品の作製例2)
押出機出口と金型との間の樹脂流路に樹脂ブレーカーを設けずに、樹脂滞留部を有さない成形機を用いたこと以外は成形品の作製例1と同様にして、成形品である管を得た。
【0219】
(成形品の作製例1,2の評価)
得られた成形品である管の断面を1000番紙ヤスリで研磨し、管肉厚部の混練レベルを目視評価した。その結果、成形品の作製例1で得られた管における混練レベルは、成形品の作製例2で得られた管における混練レベルよりも良好であることを確認した。