特許第5953391号(P5953391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953391熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5953391
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20160707BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20160707BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160707BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160707BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20160707BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20160707BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20160707BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C09J175/06
   C09J167/00
   C09J163/00
   C09J7/02 Z
   H05K3/28 C
   H05K1/03 630H
   H05K1/03 670
   B32B27/40
   B32B15/095
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-68843(P2015-68843)
(22)【出願日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年11月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】千艘 智充
(72)【発明者】
【氏名】中村 詳一郎
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116514(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129278(WO,A1)
【文献】 特開2005−244138(JP,A)
【文献】 特開2007−204715(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129323(WO,A1)
【文献】 特開2010−144141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00〜201/10
H05K 1/02、3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、
熱可塑性樹脂(B)が1質量部以上50質量部以下の割合で配合され、
エポキシ樹脂(C)が5質量部以上50質量部以下の割合で配合され、
前記ポリエステルウレタン樹脂(A)が、
30℃以上100℃以下のガラス転移温度を有し、かつ3KOHmg/g以上18KOHmg/g以下の水酸基価を有するポリエステルウレタン樹脂(A1)と、
−25℃以上30℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルウレタン樹脂(A2)とからなり、
前記ポリエステルウレタン樹脂(A1)及び前記ポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中の前記ポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が50質量%以上95質量%以下である熱硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(B)がポリエステル樹脂である請求項1記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、請求項1又は2記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるカバーレイフィルム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層を含む接着剤フィルム。
【請求項5】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、
前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が請求項1又は2記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる金属張積層板。
【請求項6】
ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる、フレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤フィルムが請求項1又は2に記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる、フレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
前記金属張積層板が、前記ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備え、前記接着剤層が請求項1又は2に記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる、請求項6又は7に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性接着剤組成物は加熱することで硬化し、フレキシブルプリント配線板や接触型ICカードなどの配線板を構成する部材同士を接着する接着剤として広く使用されている。
【0003】
このような熱硬化性接着剤組成物としては、例えば下記特許文献1記載の耐湿熱性ホットメルト接着剤組成物が知られている。下記特許文献1にはポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂と、ポリエステル樹脂と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤とを配合した耐湿熱性ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−27030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレキシブルプリント配線板などの配線板に用いられる熱硬化性接着剤組成物には一般に、保存安定性、回路同士間の隙間への埋まり込み性、熱圧着による硬化の際の浸出し抑制性、硬化後の樹脂及び金属に対する接着性、並びに、硬化後のはんだ耐熱性に優れることが求められる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の耐湿熱性ホットメルト接着剤は以下に示す課題を有していた。すなわち、上記特許文献1に記載の耐湿熱性ホットメルト接着剤は、回路を構成する銅との接着性には優れるものの、基板を構成するポリイミド樹脂やアルミニウムとの接着性に劣る場合があるため、硬化させることによりフレキシブルプリント配線板などの配線板を構成する基板同士間の接着層として用いると、フレキシブルプリント配線板の使用中に基板と接着層との間で剥離が生じることがあった。このため、基板と接着層との間で剥離が生じる場合には、基板との接着性に優れた別の種類の接着剤組成物を用いる必要があった。すなわち、上記特許文献1に記載の耐湿熱性ホットメルト接着剤は、汎用性の点で改善の余地を有していた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた保存安定性および埋まり込み性を有し、熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後に、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有しながら優れたはんだ耐熱性を有することが可能な熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
即ち本発明は、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、熱可塑性樹脂(B)が1質量部以上50質量部以下の割合で配合され、エポキシ樹脂(C)が5質量部以上50質量部以下の割合で配合され、前記ポリエステルウレタン樹脂(A)が30℃以上100℃以下のガラス転移温度を有し、かつ3KOHmg/g以上18KOHmg/g以下の水酸基価を有するポリエステルウレタン樹脂(A1)と、−25℃以上30℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルウレタン樹脂(A2)とからなり、前記ポリエステルウレタン樹脂(A1)及び前記ポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中の前記ポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が50質量%以上95質量%以下である熱硬化性接着剤組成物である。
【0010】
この熱硬化性接着剤組成物によれば、硬化後に、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有することが可能となる。すなわち、本発明の熱硬化性接着剤組成物は、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と呼ぶ)などの配線板の製造に使用する接着剤として汎用性を有することが可能となる。また本発明の熱硬化性接着剤組成物によれば、優れた保存安定性および埋まり込み性を有し、熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後に、優れたはんだ耐熱性を有することも可能となる。
【0011】
上記熱硬化性接着剤組成物において、前記熱可塑性樹脂(B)がポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0012】
この場合、熱硬化性接着剤組成物の吸湿性を低減することができる。このため、本発明の熱硬化性接着剤組成物を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に吸湿による膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることをより十分に抑制することができる。
【0013】
また本発明は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるカバーレイフィルムである。
【0014】
このカバーレイフィルムによれば、接着剤層が、硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、本発明のカバーレイフィルムを用いてFPCを製造した場合において、絶縁フィルムがポリイミドフィルムで構成されると、その絶縁フィルムと接着剤層を硬化して得られる接着層との間の剥離を十分に抑制できる。また本発明のカバーレイフィルムによれば、接着層が銅からなる金属層に接着されている場合には、金属層と接着層との間の剥離を十分に抑制することもできる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は、優れた埋まり込み性をも有している。このため、本発明のカバーレイフィルムに上記金属張積層板を貼り合わせてFPCを製造する際、熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層が、金属層に形成された回路などの隙間に十分に埋まり込むことが可能となる。このため、金属層と接着剤層との接触面積をより大きくすることができるので、接着剤層を硬化させて接着層とした後、接着層と金属層との間の剥離を十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する。このため、本発明のカバーレイフィルムを用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できる。このため、本発明のカバーレイフィルムを金属張積層板に熱圧着により貼り合わせてFPCを製造する際に、本発明のカバーレイフィルムに含まれる接着剤層の浸出しを十分に抑制できる。
【0015】
また本発明は、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層を含む接着剤フィルムである。
【0016】
この接着剤フィルムによれば、接着剤層が、硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層と接触する基板がポリイミドフィルム又はアルミニウム板で構成される場合には、そのポリイミドフィルム又はアルミニウム板と接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する。このため、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、そのFPCに対して電子部品等を実装する際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際の浸出しを十分に抑制できる。このため、本発明の接着剤フィルムを用いて熱圧着によりFPCを製造する際に、接着剤層の浸出しを十分に抑制できる。
【0017】
また本発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる金属張積層板である。
【0018】
この金属張積層板によれば、接着剤層が、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、本発明の金属張積層板を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着剤層を硬化させて得られる接着層に膨れが生じることによってベースフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する。このため、本発明の金属張積層板を用いてFPCを製造し、接着剤層を硬化により接着層とした場合、金属張積層板のベースフィルムがポリイミドフィルムで構成されると、ベースフィルムと接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。さらに、金属層が銅を含む場合には、上記FPCにおいて接着層と金属層との間の剥離を十分に抑制することもできる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できる。このため、本発明の金属張積層板と上記カバーレイフィルムとを貼り合わせてFPCを製造する際に、接着剤層の浸出しを十分に抑制できる。
【0019】
また本発明は、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、前記カバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる、FPCである。
【0020】
このFPCは、金属張積層板とカバーレイフィルムとを、カバーレイフィルムの接着剤層と金属張積層板の金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる。このため、本発明のFPCにおいて、カバーレイフィルムの接着剤層は硬化されて接着層となっている。このとき、接着剤層は、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、本発明のFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによって絶縁フィルムやベースフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、接着層は接着剤層を硬化させて得られるため、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムに対し優れた接着性を有する。このため、本発明のFPCは、絶縁フィルム及び/又はベースフィルムがポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、FPCにおいて金属層が銅を含む場合には接着層と金属層との間の剥離を十分に抑制することもできる。
【0021】
また本発明は、補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、上記カバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤フィルムが上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる、FPCである。
【0022】
このFPCは、補強材と、金属張積層板と、カバーレイフィルムとを、カバーレイフィルムの接着剤層と、金属張積層板の金属層とを対向させた状態で且つ補強材と金属張積層板との間に接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなる。その結果、本発明のFPCにおいて、カバーレイフィルムの接着剤層及び接着剤フィルムは硬化されて接着層となっている。このとき、接着剤層は、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、本発明のFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによって絶縁フィルム、ベースフィルム及び補強材と接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、接着層は、上記接着剤層を硬化して得られるものであるため、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する。このため、本発明のFPCは、絶縁フィルム及び/又はベースフィルムがポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。さらに、FPCにおいて金属層が銅を含む場合には、接着層と金属層との間の剥離を十分に抑制することもできる。さらにまた、補強材がポリイミドフィルム又はアルミニウム板で構成される場合には、補強材と接着層との間の剥離を十分に抑制することもできる。
【0023】
上記FPCにおいて、前記金属張積層板が、前記ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備え、前記接着剤層が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られることが好ましい。
【0024】
この場合、ベースフィルムと金属層との間の接着強度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れた保存安定性および埋まり込み性を有し、熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後に、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有しながら優れたはんだ耐熱性を有することが可能な熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びFPCが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るカバーレイフィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る接着剤フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る金属張積層板の一実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係るFPCの一実施形態を示す断面図である。
図5図4のFPCを製造する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
<熱硬化性接着剤組成物>
まず本発明の熱硬化性接着剤組成物について説明する。
【0029】
本発明の熱硬化性接着剤組成物は、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、熱可塑性樹脂(B)が1質量部以上50質量部以下の割合で配合され、エポキシ樹脂(C)が5質量部以上50質量部以下の割合で配合されている。ポリエステルウレタン樹脂(A)は、30℃以上100℃以下のガラス転移温度を有し、かつ3KOHmg/g以上18KOHmg/g以下の水酸基価を有するポリエステルウレタン樹脂(A1)と、−25℃以上30℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルウレタン樹脂(A2)とからなり、ポリエステルウレタン樹脂(A1)及びポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中のポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が50重量%以上95重量%以下である。
【0030】
この熱硬化性接着剤組成物によれば、硬化後に、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有することが可能となる。すなわち、本発明の熱硬化性接着剤組成物は、FPCなどの配線板の製造に使用する接着剤として汎用性を有することが可能となる。また本発明の熱硬化性接着剤組成物によれば、優れた保存安定性および埋まり込み性を有し、熱圧着による熱硬化の際に浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有することが可能となる。
【0031】
次に、ポリエステルウレタン樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)及びエポキシ樹脂(C)についてさらに詳細に説明する。
【0032】
(A)ポリエステルウレタン樹脂
ポリエステルウレタン樹脂(A)は、ポリエステルウレタン樹脂(A1)とポリエステルウレタン樹脂(A2)とからなる。
【0033】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)としては、エポキシ樹脂(C)と反応可能な熱硬化性樹脂が用いられる。
【0034】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)は、30℃以上100℃以下のガラス転移温度を有し、かつ3KOHmg/g以上18KOHmg/g以下の水酸基価を有する。ポリエステルウレタン樹脂(A1)のガラス転移温度が30℃より低くなると、熱硬化性接着剤組成物を熱硬化してなる硬化物(以下、単に「硬化物」と呼ぶ)のはんだ耐熱性が低下する。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A1)のガラス転移温度が100℃より高くなると、熱硬化性接着剤組成物の埋まり込み性が低下する。また、ポリエステルウレタン樹脂(A1)の水酸基価が3KOHmg/g未満になると、硬化物とアルミニウムとの接着性が低下する。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A1)の水酸基価が18KOHmg/gより大きくなると、熱硬化性接着剤組成物の保存安定性が低下する。
【0035】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)のガラス転移温度は34℃以上73℃以下であることが好ましい。
【0036】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)の水酸基価は5KOHmg/g以上10KOHmg/g以下であることが好ましい。
【0037】
ポリエステルウレタン樹脂(A2)としても、エポキシ樹脂(C)と反応可能な熱硬化性樹脂が用いられる。
【0038】
ポリエステルウレタン樹脂(A2)は−25℃以上30℃未満のガラス転移温度を有している。ポリエステルウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度が−25℃より低くなると、熱圧着による硬化の際の熱硬化性接着剤組成物の浸出しを十分に抑制することができない。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度が30℃以上になると、熱硬化性接着剤組成物の埋まり込み性が低下する。
【0039】
ポリエステルウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度は−22℃以上25℃以下であることが好ましく、0℃以上25℃以下であることがより好ましい。
【0040】
ポリエステルウレタン樹脂(A2)の水酸基価は特に制限されるものではないが、5KOHmg/g以上10KOHmg/g以下であることが好ましい。
【0041】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)及びポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中のポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率は50質量%以上95質量%以下である。ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量%中のポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が95質量%より高くなると硬化物とポリイミド樹脂との接着性が低下する。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が50質量%未満では、硬化物とアルミニウムとの接着性が低下する。
【0042】
ポリエステルウレタン樹脂(A1)及びポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中のポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率は70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂(B)は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与し得るものであればよく、熱可塑性樹脂(B)としては、具体的にはカルボキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ化エチレンアクリルゴム、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂(B)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも熱可塑性樹脂(B)としては、ポリエステル樹脂が好ましい。この場合、熱硬化性接着剤組成物の吸湿性を低減することができる。このため、本発明の熱硬化性接着剤組成物を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に吸湿による膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることをより十分に抑制することができる。
【0044】
熱可塑性樹脂(B)は、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下の割合で配合されている。ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対する熱可塑性樹脂(B)の配合量が1質量部未満では、熱硬化性接着剤組成物の埋まり込み性が低下する。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対する熱可塑性樹脂(B)の配合量が50質量部を超える場合、熱圧着による硬化の際の熱硬化性接着剤組成物の浸出しを十分に抑制することができない。ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対する熱可塑性樹脂(B)の配合量はポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
【0045】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂(C)は、1分子中にエポキシ基2個以上有するものであればよい。エポキシ樹脂(C)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂など)や水素添加物などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エポキシ樹脂(C)は、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下の割合で配合されている。ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対するエポキシ樹脂(C)の配合量が5質量部未満になると、熱圧着による硬化の際の熱硬化性接着剤組成物の浸出しを十分に抑制することができない。一方、ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対するエポキシ樹脂(C)の配合量が50質量部より大きくなると、硬化物のはんだ耐熱性が低下する。
【0047】
また、本発明の熱硬化性接着剤組成物は、必要に応じて溶剤、添加剤を更に含んでもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、シランカップリング剤、イミダゾール等が挙げられる。
【0048】
<カバーレイフィルム>
次に本発明のカバーレイフィルムの実施形態について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のカバーレイフィルムの一実施形態を示す断面図である。
【0049】
図1に示すように、カバーレイフィルム10は、絶縁フィルム11と、絶縁フィルム11上に設けられる接着剤層12とを備え、接着剤層12が、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるものである。
【0050】
絶縁フィルム11としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等の樹脂を用いることができる。絶縁フィルム11の厚さは特に限定されるものではないが、通常は3μm〜50μm程度である。
【0051】
接着剤層12は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物のBステージ状態のもので構成されていてもよい。なお、本明細書において、Bステージとは、熱硬化性接着剤組成物の反応の中間的な段階であって、熱硬化性接着剤組成物は加熱により軟化して膨張するが、ある種の液体と接触しても、完全には溶融又は溶解しない状態を言う。
【0052】
このカバーレイフィルム10によれば、接着剤層12が、硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、カバーレイフィルム10を用いてFPCを製造した場合において、絶縁フィルム11がポリイミドフィルムで構成されると、その絶縁フィルム11と接着剤層12を硬化して得られる接着層との間の剥離を十分に抑制できる。またカバーレイフィルム10によれば、接着層が銅からなる金属層に接着されている場合には、金属層と接着層との間の剥離を十分に抑制することもできる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は、優れた埋まり込み性をも有している。このため、カバーレイフィルム10に金属張積層板を貼り合わせてFPCを製造する際、熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層12が、金属層に形成された隙間に十分に埋まり込むことが可能となる。このため、金属層と接着剤層12との接触面積をより大きくすることができるので、接着剤層12を硬化させて接着層とした後、接着層と金属層との間の剥離を十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する。このため、カバーレイフィルム10を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できる。このため、カバーレイフィルム10と金属張積層板とを熱圧着により貼り合わせてFPCを製造する際に、カバーレイフィルム10に含まれる接着剤層の浸出しを十分に抑制できる。
【0053】
カバーレイフィルム10は、絶縁フィルム11上に接着剤層12を設けてなるものであり、熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム11上に塗布し乾燥することにより得ることができる。
【0054】
<接着剤フィルム>
次に、本発明の接着剤フィルムの実施形態について図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、本発明の接着剤フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【0055】
図2に示すように、接着剤フィルム20は、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層22を含むものである。
【0056】
接着剤層22は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物のBステージ状態のもので構成されていてもよい。
【0057】
接着剤フィルム20は、図2に示すように、接着剤層22のみで構成されていてもよく、離型処理を施したキャリアフィルム上に接着剤層22を有してなる積層体で構成されていてもよい。
【0058】
キャリアフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などを用いることができる。
【0059】
この接着剤フィルム20によれば、接着剤層22が、硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、接着剤フィルム20を用いてFPCを製造する場合、接着剤層22を硬化して得られる接着層と接触する基板がポリイミドフィルム又はアルミニウム板で構成される場合には、そのポリイミドフィルム又はアルミニウム板と接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する。このため、接着剤フィルム20を用いてFPCを製造する場合、そのFPCに対して電子部品等を実装する際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際の浸出しを十分に抑制できる。このため、接着剤フィルム20を用いて熱圧着によりFPCを製造する際に、接着剤層22の浸出しを十分に抑制できる。
【0060】
接着剤フィルム20は、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなるキャリアフィルム上に熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層22を得た後、キャリアフィルムから剥離することによって得ることができる。あるいは、接着剤フィルム20は、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなるキャリアフィルム上に熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層22を形成することによって得ることもできる。
【0061】
<金属張積層板>
次に、本発明の金属張積層板の実施形態について図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、本発明の金属張積層板の一実施形態を示す断面図である。
【0062】
図3に示すように、金属張積層板30は、ベースフィルム31と、ベースフィルム31の一面側に設けられる金属層33と、ベースフィルム31と金属層33との間に設けられる接着剤層32とを備え、接着剤層32が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるものである。
【0063】
接着剤層32は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物のBステージ状態のもので構成されていてもよい。
【0064】
ベースフィルム31としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の樹脂が用いられる。
【0065】
金属層33としては、例えば銅箔等が用いられる。
【0066】
この金属張積層板30によれば、接着剤層32が、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、金属張積層板30を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着剤層32を硬化させて得られる接着層に膨れが生じることによってベースフィルム31と接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する。このため、金属張積層板30を用いてFPCを製造し、接着剤層32を硬化により接着層とした場合、金属張積層板30のベースフィルム31がポリイミドフィルムで構成されると、ベースフィルム31と接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。さらに、金属層33が銅を含む場合には、上記FPCにおいて金属層33と接着層との間の剥離を十分に抑制することもできる。また、上記熱硬化性接着剤組成物は熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できる。このため、金属張積層板30と上記カバーレイフィルムとを貼り合わせてFPCを製造する際に、接着剤層32の浸出しを十分に抑制できる。
【0067】
金属張積層板30は、ベースフィルム31上に接着剤層32および金属層33を順次設けてなるものであり、熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム31上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層32上に金属層33を貼り付けることによって得ることができる。
【0068】
<FPC>
次に本発明のFPCの実施形態について図4を参照しながら詳細に説明する。図4は、本発明に係るFPCの好適な実施形態を示す断面図である。図4に示すように、FPC100はベースフィルム31を備えている。ベースフィルム31の表面31a上には接着層132が設けられ、接着層132上には回路を形成する金属層33が設けられ、接着層132の上には、金属層33を覆うように接着層112が設けられ、接着層112上には絶縁フィルム11が設けられている。
【0069】
一方、ベースフィルム31の裏面31b上には接着層122を介して補強材40が設けられている。補強材40は例えばアルミニウム又はポリイミド樹脂によって構成されている。
【0070】
次に、FPC100の製造方法について図5を参照しながら説明する。図5は、図4のFPCを製造する工程を示す断面図である。
【0071】
まず図5に示すように、まずカバーレイフィルム10と、金属張積層板30と、補強材40と、金属張積層板30及び補強材40同士を貼り合わせるための接着剤フィルム20とを準備する。
【0072】
そして、補強材40の上に、接着剤フィルム20、金属張積層板30、カバーレイフィルム10を順次配置する。このとき、金属張積層板30のベースフィルム31と接着剤フィルム20とを対向させた状態とし、カバーレイフィルム10の接着剤層12と金属張積層板30の接着剤層32及び金属層33とを対向させた状態とする。
【0073】
そして、補強材40、接着剤フィルム20、金属張積層板30及びカバーレイフィルム10を積層して積層体を形成し、この積層体を熱圧着する。その結果、カバーレイフィルム10の接着剤層12は硬化して接着層112となり、金属張積層板30の接着剤層32は硬化して接着層132となり、接着剤フィルム20の接着剤層22は硬化して接着層122となる。こうしてFPC100が得られる。
【0074】
このとき、カバーレイフィルム10の接着剤層12、金属張積層板30の接着剤層32及び接着剤フィルム20の接着剤層22は、硬化後に優れたはんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる。このため、FPC100に対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層112、122、132に膨れが生じることによって絶縁フィルム11、ベースフィルム31及び補強材40と接着層112、122、132との間で剥離が生じることを十分に抑制することができる。また接着層112、122、132は、接着剤層12、22,32を硬化して得られるものであるため、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有する。このため、FPC100は、絶縁フィルム11及び/又はベースフィルム31がポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層12,22,32との間で剥離が生じることを十分に抑制することができる。さらに、FPC100において金属層33が銅を含む場合には、金属層33と接着層との間の剥離を十分に抑制することもできる。さらにまた、補強材40がポリイミドフィルム又はアルミニウム板で構成される場合には、補強材40と接着層との間で剥離が生じることを十分に抑制することもできる。
【0075】
さらにFPC100においては、金属張積層板30が、ベースフィルム31と金属層33との間に接着剤層32を備え、接着剤層32が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られている。このため、ベースフィルム31と金属層33との間の接着強度をより向上させることができる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、FPC100は、補強材40及び接着剤フィルム20を用いて製造されているが、これらは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。また金属張積層板30に使用される接着剤層32も省略が可能である。
【0077】
また上記製造方法では、補強材40、接着フィルム30、金属張積層板30及びカバーレイ10を重ね合せて一括して接着剤層12,22,32を硬化させているが、FPC100を得るためには、接着層剤層12,22,32を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば、補強材40、接着剤フィルム20及び金属張積層板30を重ね合せ、接着剤層32及び接着剤フィルム20の接着剤層22を熱圧着により硬化させて積層体を得た後、この積層体とカバーレイフィルム10とを重ね合せ、接着剤層12を硬化させてもFPC100を得ることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1〜18及び比較例1〜12)
以下のようにして熱硬化性接着剤組成物を調製した。
【0080】
即ち、ポリエステルウレタン樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)及びエポキシ樹脂(C)を表1〜5に示す配合割合で有機溶媒に溶解又は分散させて、固形分(ポリエステルウレタン樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)及びエポキシ樹脂(C))の濃度が20質量%の接着剤溶液を調製した。なお、有機溶媒としては、各実施例及び比較例において、メチルエチルケトン、キシレン、シクロヘキサノン1−メトキシ−2−プロパノールのうち少なくとも1種を適宜選択して使用した。
【0081】
なお、表1〜5において、特に指定しない限り、数値の単位は質量部を表す。また上記ポリエステルウレタン樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)及びエポキシ樹脂(C)としては、具体的には下記のものを使用した。また、ポリエステルウレタン樹脂(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」と呼ぶ)はJIS K7121に準拠して測定されたものであり、ポリエステルウレタン樹脂(A)の水酸基価はJIS K0070に準拠して測定されたものである。
【0082】
(A)ポリエステルウレタン樹脂
(A1)ポリエステルウレタン樹脂
(A1−1)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−4410」、東洋紡(株)製、Tg=56℃、水酸基価=11KOHmg/g
(A1−2)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−5537」、東洋紡(株)製、Tg=34℃、水酸基価=18KOHmg/g
(A1−3)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−1350」、東洋紡(株)製、Tg=46℃、水酸基価=3KOHmg/g
(A1−4)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−8200」、東洋紡(株)製、Tg=73℃、水酸基価=5KOHmg/g
(A2)ポリエステルウレタン樹脂
(A2−1)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−3500」、東洋紡(株)製、Tg=10℃、水酸基価=10KOHmg/g
(A2−2)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−8700」、東洋紡(株)製、Tg=−22℃、水酸基価=3KOHmg/g
(A2−3)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−3200」、東洋紡(株)製、Tg=−3℃、水酸基価=2KOHmg/g
(A2−4)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−3575」、東洋紡(株)製、Tg=25℃、水酸基価=5KOHmg/g
(A2−5)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−8300」、東洋紡(株)製、Tg=23℃、水酸基価=3KOHmg/g
(A3)ポリエステルウレタン樹脂
(A3−1)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−1400」、東洋紡(株)製、Tg=83℃、水酸基価=2KOHmg/g
(A3−2)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−1700」、東洋紡(株)製、Tg=92℃、水酸基価=19KOHmg/g
(A3−3)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−4800」、東洋紡(株)製、Tg=106℃、水酸基価=5KOHmg/g
(A3−4)ポリエステルウレタン樹脂:商品名「UR−6100」、東洋紡(株)製、Tg=−30℃、水酸基価=5KOHmg/g
【0083】
(B)熱可塑性樹脂
(B−1)熱可塑性樹脂:ポリエステル樹脂(商品名「BX−10SS」、東洋紡(株)製)
(B−2)熱可塑性樹脂:アクリル樹脂(商品名「UP−1080」、東亞合成(株)製)
【0084】
(C)エポキシ樹脂
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「YDCN−704」、新日鐵住金化学(株)製
【0085】
[評価]
実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物について、硬化後のポリイミド樹脂(PI)、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)に対する接着性、硬化後のはんだ耐熱性、保存安定性、埋まり込み性、並びに、熱圧着による硬化の際の浸出し性について以下のようにして評価した。
【0086】
<金属張積層板の作製>
まず、以下の評価に際して使用する金属張積層板(以下、「CCL」と呼ぶ)を以下のようにして作製した。
【0087】
すなわち、厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmとなるように実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させて接着剤層を得た後、この接着剤層に厚さ18μmの圧延銅箔を貼り合せてCCLを得た。
【0088】
<接着性>
(PIに対する接着強度)
実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させてなる厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを準備した。一方、厚さ125μmのポリイミドシートを用意した。そして、上記接着剤フィルムを上記CCLのポリイミドフィルムと上記ポリイミドシートとの間に挟んで積層体を形成し、この積層体を、160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を熱圧着により硬化させて接着層とした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0089】
この評価用サンプルにおいて、上記CCLのポリイミドフィルムを上記ポリイミドシートに対して垂直な方向に引張り、このときの剥離強度(90°剥離強度)をPIに対する接着強度(接着強度(対PI))として測定した。結果を表1〜5に示す。
【0090】
(耐剥がれ性試験(対PI))
上述した接着強度(対PI)の意義を調べるために、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物について以下のようにして耐剥がれ性試験(対PI)を行った。
【0091】
すなわちまず厚さ25μmのポリイミドフィルム上に実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し乾燥させて接着剤層を形成し、カバーレイフィルムを得た。そして、このカバーレイフィルムと、上記CCLとを、上記カバーレイフィルムの接着剤層と上記CCLの銅箔とが対向するように貼り合わせて積層体を形成し、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着してから、10mm×50mm×108μmの試験片を切り出した。
【0092】
一方、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し乾燥させて厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを作製した。
【0093】
他方、10mm×20mm×125μmのポリイミドシートを準備した。
【0094】
そして、上記ポリイミドシートと上記試験片との間に上記接着剤フィルムを、上記ポリイミドシートと上記試験片のポリイミドフィルムとを対向させた状態で挟んで積層体を形成した。このとき、上記ポリイミドシート及び上記試験片はそれらの長手方向が一致するように積層した。また上記ポリイミドシートは、上記試験片をポリイミドフィルム側から見た場合にそのポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向の線より片側の10mm×20mmの部分に積層した。そして、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を硬化させて接着層にした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0095】
この評価用サンプルを上記ポリイミドシート側から見た場合における上記ポリイミドシートと上記試験片との境界線で、上記試験片を曲率半径rが1mmとなるように且つ上記試験片に重なるように180°折り曲げた。そして、そのときに上記ポリイミドシートと上記試験片との間で剥離が生じたかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、剥離が生じた熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対する接着性に優れるとして「○」と表示し、剥離が生じなかった熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対する接着性に優れていないとして「×」と表示した。
【0096】
なお、上記耐剥がれ性試験の結果より、硬化後に90°剥離強度が15N/cm以上となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対して優れた接着性を有し、90°剥離強度が15N/cm未満となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対して優れた接着性を有していないことが分かった。
【0097】
(Cuに対する接着強度)
厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布して乾燥させて接着剤層を得た。こうしてカバーレイフィルム(以下、「CL」と呼ぶ)を作製した。次に、このCLと上記CCLとを、上記CLの接着剤層と上記CCLの銅箔とが対向するように貼り合わせて積層体を形成し、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、上記CLの接着剤層、及び、上記CCLの接着剤層をそれぞれ熱圧着により硬化させて接着層とした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0098】
この評価用サンプルにおいて、上記CCLを上記CLに対して垂直な方向に引張り、このときの剥離強度(90°剥離強度)をCuに対する接着強度(接着強度(対Cu))として測定した。結果を表1〜5に示す。
【0099】
(耐剥がれ性試験(対Cu))
上述した接着強度(対Cu)の意義を調べるために、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物について以下のようにして耐剥がれ性試験(対Cu)を行った。
【0100】
すなわちまず耐剥がれ性試験(対PI)で使用した試験片を用意した。
【0101】
一方、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させてなる厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを作製した。
【0102】
他方、10mm×20mm×35μmの銅板を準備した。
【0103】
そして、上記銅板と上記試験片との間に上記接着剤フィルムを、上記銅板と上記試験片のポリイミドフィルムとを対向させた状態で挟んで積層体を形成した。このとき、上記銅板及び上記試験片はそれらの長手方向が一致するように積層した。また上記銅板は、上記試験片をポリイミドフィルム側から見た場合にそのポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向の線より片側の10mm×20mmの部分に積層した。そして、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を硬化させて接着層にした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0104】
この評価用サンプルを上記銅板側から見た場合における上記銅板と上記試験片との境界線で、上記試験片を曲率半径rが1mmとなるように且つ上記試験片に重なるように180°折り曲げた。そして、そのときに上記銅板と上記試験片との間で剥離が生じたかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、剥離が生じた熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にCuに対する接着性に優れるとして「○」と表示し、剥離が生じなかった熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にCuに対する接着性に優れていないとして「×」と表示した。
【0105】
なお、上記耐剥がれ性試験の結果より、硬化後に90°剥離強度が15N/cm以上となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にCuに対して優れた接着性を有し、90°剥離強度が15N/cm未満となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にCuに対して優れた接着性を有していないことが分かった。
【0106】
(Alに対する接着強度)
実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させてなる厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを準備した。一方、厚さ100μmのアルミニウム板を用意した。そして、上記接着剤フィルムを、上記CCLのポリイミドフィルムと上記アルミニウム板との間に挟んで積層体を形成し、この積層体を、160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を熱圧着により硬化させて接着層とした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0107】
この評価用サンプルにおいて、上記CCLのポリイミドフィルムをアルミニウム板に対して垂直な方向に引張り、このときの剥離強度(90°剥離強度)をAlに対する接着強度(接着強度(対Al))として測定した。結果を表1〜5に示す。
【0108】
(耐剥がれ性試験(対Al))
上述した接着強度(対Al)の意義を調べるために、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物について以下のようにして耐剥がれ性試験(対Al)を行った。
【0109】
すなわち、まず耐剥がれ性試験(対PI)で使用した試験片を用意した。
【0110】
一方、実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させてなる厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを作製した。
【0111】
他方、10mm×20mm×100μmのアルミニウム板を準備した。
【0112】
そして、上記アルミニウム板と上記試験片との間に上記接着剤フィルムを、上記アルミニウム板と上記試験片のポリイミドフィルムとを対向させた状態で挟んで積層体を形成した。このとき、上記アルミニウム板及び上記試験片はそれらの長手方向が一致するように積層した。また上記アルミニウム板は、上記試験片をポリイミドフィルム側から見た場合にそのポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向の線より片側の10mm×20mmの部分に積層した。そして、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を硬化させて接着層にした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0113】
この評価用サンプルを上記アルミニウム板側から見た場合における上記アルミニウム板と上記試験片との境界線で、上記試験片を曲率半径rが1mmとなるように且つ上記試験片に重なるように180°折り曲げた。そして、そのときに上記アルミニウム板と上記試験片との間で剥離が生じたかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、剥離が生じた熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にAlに対する接着性に優れるとして「○」と表示し、剥離が生じなかった熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にAlに対する接着性に優れていないとして「×」と表示した。
【0114】
なお、上記耐剥がれ性試験の結果より、硬化後に90°剥離強度が15N/cm以上となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にAlに対して優れた接着性を有し、90°剥離強度が15N/cm未満となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にAlに対して優れた接着性を有していないことが分かった。
【0115】
<はんだ耐熱性>
まず厚さ25μmのポリイミドフィルム上に実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。こうしてCLを用意した。そして、このCLと上記CCLとを、CLの接着剤層と銅箔とが対向するように貼り合わせて積層体を形成し、この積層体を160℃、55kg/cmで60分間熱圧着し、上記CLの接着剤層、及び、上記CCLの接着剤層をそれぞれ熱圧着により硬化させて接着層とした後、25mm角に切り出したものを評価用サンプルとした。
【0116】
そして、この評価用サンプルを105℃のオーブン中に1時間置いて、オーブンから取り出した直後に260℃のはんだ浴に60秒間浮かべ、接着層に膨れや剥がれが発生したかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5においては、接着層に膨れや剥がれが発生しなかった評価用サンプルをはんだ耐熱性に優れるとして「○」と表示し、接着層に膨れや剥がれが発生した評価用サンプルをはんだ耐熱性に優れていないとして「×」と表示した。
【0117】
<保存安定性>
実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を冷蔵保存(5℃以下)して7日経過後に、厚さ25μmのポリイミドフィルムに塗布した。そして、この際に塗工性に問題がないかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、塗工性に問題ない熱硬化性接着剤組成物については保存安定性に優れているとして「○」と表示し、ゲル化により塗工が困難な熱硬化性接着剤組成物については保存安定性に優れていないとして「×」と表示した。
【0118】
<埋まり込み性>
上記CCLの銅箔にL(ライン)/S(スペース)=50μm/50μmのくし型パターンを形成した。一方、厚さ25μmのポリイミドフィルム上に実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布して乾燥させて厚さ20μmの接着剤層を形成した。こうしてCLを準備した。そして、上記CCLと上記CLとを、上記CCLの銅箔と上記CLの接着剤層とが対向するように貼り合わせて積層体を形成し、この積層体について160℃、55kg/cmで60分間熱圧着を行った。こうして評価用サンプルを得た。この評価用サンプルについて顕微鏡で観察を行い、くし型パターンのライン同士の間に気泡が見られるかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、このとき、評価用サンプルの顕微鏡観察は、評価用サンプルをその厚さ方向に観察することによって行った。表1〜5において、気泡が見られた熱硬化性接着剤組成物については埋まり込み性に劣るとして「×」と表示し、気泡が見られなかった熱硬化性接着剤組成物については埋まり込み性に優れるとして「○」と表示した。
【0119】
<熱圧着による硬化の際の浸出し性>
厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように実施例1〜18及び比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させて接着剤層を得た後、直径5mmのパンチ穴を10か所開けた。この接着剤層上に厚さ18μmの圧延銅箔を貼り合せて積層体を形成した。そして、この積層体について160℃、55kg/cmで60分間熱圧着を行い、評価用サンプルを得た。そして、得られた評価用サンプルについてパンチ穴内部への接着剤層の最大浸出し距離を10か所すべてについて測定し、その平均距離を接着剤フロー距離とした。結果を表1〜5に示す。なお、熱圧着時の接着剤フロー距離が0.10mm以下であれば熱圧着による硬化の際の接着剤層の浸出しが十分に抑制されたと評価して合格とした。また熱圧着時の接着剤フロー距離が0.10mmより大きい場合には熱圧着による硬化の際の接着剤層の浸出しが十分に抑制されていないと評価して不合格とした。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜18で得られた熱硬化性接着剤組成物は、保存安定性、埋まり込み性、硬化後のポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムに対する接着性、硬化後のはんだ耐熱性、並びに、熱圧着による硬化の際の浸出し抑制性の点で合格基準に達していることが分かった。これに対し、比較例1〜12で得られた熱硬化性接着剤組成物は、保存安定性、埋まり込み性、硬化後のポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムに対する接着性、硬化後のはんだ耐熱性、並びに、熱圧着による硬化の際の浸出し抑制性の少なくとも1つの点で、合格基準に達しないことが分かった。
【0126】
以上のことから、本発明の熱硬化性接着剤組成物によれば、優れた保存安定性及び埋まり込み性を有し、熱圧着による硬化の際の浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後にポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有しながら優れたはんだ耐熱性を有することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0127】
10…カバーレイフィルム
11…絶縁フィルム
12,22,32…接着剤層
20…接着剤フィルム
30…金属張積層板
31…ベースフィルム
33…金属層
40…補強材
100…FPC
112,122,132…接着層
【要約】
【課題】優れた保存安定性および埋まり込み性を有し、熱圧着による硬化の際に浸出しを十分に抑制できるとともに、硬化後に、ポリイミド樹脂、銅及びアルミニウムのいずれに対しても優れた接着性を有しながら優れたはんだ耐熱性を有することが可能な熱硬化性接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】ポリエステルウレタン樹脂(A)100質量部に対し、熱可塑性樹脂(B)が1質量部以上50質量部以下の割合で配合され、エポキシ樹脂(C)が5質量部以上50質量部以下の割合で配合され、ポリエステルウレタン樹脂(A)が30℃以上100℃以下のガラス転移温度を有し、かつ3KOHmg/g以上18KOHmg/g以下の水酸基価を有するポリエステルウレタン樹脂(A1)と、−25℃以上30℃未満のガラス転移温度を有するポリエステルウレタン樹脂(A2)とからなり、ポリエステルウレタン樹脂(A1)及びポリエステルウレタン樹脂(A2)の合計100質量%中のポリエステルウレタン樹脂(A1)の含有率が50質量%以上95質量%以下である熱硬化性接着剤組成物。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5