【実施例】
【0018】
本実施例に係る車両用ガラスアンテナ30は、
図1に示すように、リヤガラス15に取付けられ、AMアンテナ31(第1のアンテナ)とDABアンテナ32(第2のアンテナ)とを含む。なお、符号34はデフォッガである。車両10は、車体11の左右の前ピラー12L、12R(Lは左、Rは右を示す添え字である。以下同じ)間に嵌められるフロントガラス13と、後ピラー14L、14R間に嵌められているリヤガラス15と、前ドア16L、16Rに昇降可能に取付けられている前ドアガラス17L、17Rと、後ドア18L、18Rに昇降可能に取付けられている後ドアガラス19L、19Rとからなる、窓ガラスを備えている。符号20は、ルーフを示す。
【0019】
なお、ここに示す車両用ガラスアンテナ30は、DABにおける174〜240[MHz]のバンドIIIと、1452〜1492[MHz]のLバンドの2つの異なる周波数帯と、AM帯の電波を受信するために設計されたアンテナである。
【0020】
図2に本実施例に係る車両用ガラスアンテナ30の構造が示されている。本実施例に係る車両用ガラスアンテナ30は、AMアンテナ31(第1のアンテナ)とDABアンテナ32(第2のアンテナ)とを含む。
【0021】
DABアンテナ32は、AMアンテナ31が実装される領域の上側に配置される給電端子32a(ホット端子)と、この給電端子32aを起端に、AMアンテナ31に向かって延びる1本の垂直素子32cと、この垂直素子32cの他端からAMアンテナ31を構成する12本の水平素子31a〜31lと略平行に延びる1本の水平素子32dとにより構成される。DABアンテナ32は、後述するように、AMアンテナ31の最上部に位置する水平素子311と容量結合するように構成される。
【0022】
AMアンテナ31は、AMアンテナ31を構成する複数の水平素子31a〜31lのうち、上部に位置する水平素子311とこの水平素子311に接する垂直素子33aと垂直素子33bとを有する。この垂直素子33aと垂直素子33bとは略平行に、AMアンテナ31とDABアンテナ32の受信感度が共に良好な範囲で規定される間隙dを有して配置され、この間隙dにより一定長のスリット33を形成する。このとき垂直素子33aと垂直素子33bの最下端は電気的に接続されている。なお、ルーフ20にはDABアンテナ32の給電端子32b(グランド端子)が接続されている。
【0023】
上記構成によれば、AMアンテナ31に形成されるスリット33がDABアンテナ32と容量結合し、当該スリット33を含めてDABアンテナ32として動作させることができる。このように、DABアンテナ32のためにAMアンテナ31の実装面積を小さくする必要がなくなるため、AMアンテナ31の感度を低下させることなくDABアンテナ32を設計することができる。
【0024】
以下にその根拠について説明する。発明者らはDABアンテナ32の受信帯域である周波数174〜240MHzでシミュレーションを行った。シミュレーションの条件は、
図3に車両の右側面図が示されるように、リヤガラス15の傾斜角を30度とした。また、ルーフ20にアンテナのグランド端子が繋がっており、ルーフ20のy方向は無限大とする。
【0025】
また、
図4(a)に示すように、AMアンテナが無くDABアンテナ32のみが実装されたガラスアンテナと、
図4(b)に示すように、AMアンテナ31を含むDABアンテナ32が実装されたガラスアンテナとを、それぞれ比較例1,比較例2として車両10のガラス面に設置し、3MHZ間隔の周波数毎にxy平面の垂直偏波の指向性と感度を求め、全ての周波数での平均感度を算出した。なお、ルーフ20は無限大(∞)であるが、
図4(a)(b)では、アンテナ構造を示すため有限のものとして描かれてある。
【0026】
上記した条件の下でシミュレーションした結果を以下の表に纏めた。
【0027】
【表1】
【0028】
上記の表によれば、AMアンテナ31が無い比較例1の場合の平均感度が−13.7(dBd)、AMアンテナ31がある比較例2の場合の平均感度が−21.1(dBd)となっている。比較例1は、AMアンテナが無い状態でDABアンテナ32の平均感度が最大になるようにアンテナ長を調整したもので、AMアンテナが存在しないために理想的な感度が得られた。比較例2は、AMアンテナ31の実装領域への侵入を回避するため、DABアンテナ32をL字型に折り曲げており、比較例1と比べて平均感度が低下している。これは、垂直偏波にとって理想的な垂直方向のアンテナエレメントを形成することができないためである。
【0029】
次に、
図1に示した実施例の車両用ガラスアンテナ30において、スリット33の位置と平均感度との関係をシミュレーションし、横軸にスリットの位置lを、縦軸にダイポール比(平均感度)を目盛った感度特性グラフを
図5と以下の表に纏めた。なお、ここでいうスリット位置とは、DABアンテナ32の給電点(ホット端子32a)から垂直に延びる仮想直線xを基準にAMアンテナ31の垂直素子33aまでの距離をいう。
【0030】
【表2】
【0031】
図5の感度特性、あるいは上記の表によれば、本実施例において、比較例1の感度と同等以上のスリット位置lとして採り得る範囲は0〜130(mm)であるが、より好ましい範囲は0〜100(mm)であり、最も好適には、0〜60(mm)であった。例えば、スリット位置lが40(mm)のとき、平均感度が、比較例では−13.7(dBd)であったのに対し、実施例では−11.6(dBd)であった。このように、適切な位置にスリット33を設けることで、AMアンテナ31があってもAMアンテナが無い
図4(a)に示す比較例1と同等以上の感度が得られる。この理由は、スリット33がDABアンテナ32と容量結合することによって、全体としてDABアンテナ32にとって理想的な垂直方向のエレメントと等価に動作するためである。
【0032】
なお、スリット33ではなく、AMアンテナ31の最上部に位置する水平素子31aから最下部に位置する水平素子31lまでを縦断する垂直素子を設けても同様の効果が得られる。しかしながらこのような垂直素子の場合、例えば、AMアンテナ31をFMアンテナと共通で用いた場合、または別素子であっても、両者が容量結合している場合はFM感度を低下させる可能性のあることが経験的に知られており、FMアンテナとDABアンテナ32の設計を困難にするため望ましいことではない。
【0033】
次に、上記した比較例1,2と実施例のガラスアンテナ30を車両のリヤガラス15に取り付け、電波暗室で実測した結果をシミュレーション結果とともに、
図6および以下の表に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
図6(a)はシミュレーション結果、
図6(b)は実測結果に基づく感度特性を示すグラフである。この
図6(a)(b)、あるいは上記した表から明らかなように、実測結果もシミュレーション結果と概略類似しており、したがって、AMアンテナ31があってもAMアンテナが無い
図4(a)に示す比較例1と同等以上の感度が得られることが確かめられた。
【0037】
次に、実施例の車両用ガラスアンテナ30について、スリット幅dと平均感度との関係をシミュレーションした結果を、
図7、および以下の表に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
図7は、横軸にスリット幅d(mm)が、縦軸にDABアンナテ32とAMアンテナ31のそれぞれの感度(dBd,dBuV)が目盛られた感度特性図である。ここでいうスリット幅とは、
図2に示すスリット33を構成するAMアンテナ31の垂直素子33aと垂直素子33bとの間隔dをいう。シミュレーションの結果、DABアンテナ32、AMアンテナ31ともに好適な感度が得られたスリット幅dは、2〜20mmの範囲であった。
【0040】
ここで、スリット33の高さについて補足する。ここでいうスリット33の高さ(アンテナ長)は、DABアンテナ32の給電端子32a(ホット端子)からAMアンテナ31の最下部に位置する水平素子31lまでの距離をいう。上記したシミュレーションに用いたアンテナ長は、
図8にその寸法が示されるように260(mm)である。なお、理論的に必要なアンテナ長をλ/4と仮定すれば、DAB周波数帯域の中心周波数297(MHz),短縮率0.7とした場合、λ/4=300/207/4×0.7=254(mm)である。したがって、このアンテナ長がλ/4になるようにスリット33の高さを調整する必要がある。
【0041】
なお、上記したアンテナ長は、AMアンテナ31を構成する12本の水平素子31a〜31lのうち、底辺(最下段に位置する)にする水平素子を選択することで調整が可能である。AMアンテナ31の設計上十分なアンテナ長を採ることができず、この場合、λ/4以下になることもある。
【0042】
以上説明のように、本実施例に係る車両用ガラスアンテナ30によれば、複数の水平素子31a〜31lと垂直素子32a,32bとからなるAMアンテナ31と、AMアンテナ31が実装される領域の上部に配置され、AMアンテナ31の最上部に位置する水平素子31aと容量的に結合するDABアンテナ32と、を含む。そして、AMアンテナ31は、複数の水平素子31a〜31lのうち、上部に位置する水平素子31aとこの水平素子31aに接する第1の垂直素子32aと第2の垂直素子32bとを有し、第1の垂直素子32aと第2の垂直素子32bとは略平行に、AMアンテナ31とDABアンテナ32の受信感度が共に良好な範囲で規定される間隙dを有して配置され、この間隙dで一定の高さからなるスリット33を形成し、第1の垂直素子32aと第2の垂直素子32bの最下端は電気的に接続されている。このAMアンテナ31に形成したスリット33がDABアンテナ32と容量結合することによりスリット33をDABアンテナ32として動作させることができる。このため、DABアンテナ32の存在がAMアンテナ31の配置面積を制限することがなくなり、したがって、AMアンテナ31の感度を低下させることなくDABアンテナ32を設計することができる。
【0043】
また、本実施例に係る車両用ガラスアンテナ30によれば、スリット幅(AMアンテナ31の垂直素子33aと垂直素子33bとの間隔d)は、AMアンテナ31とDABアンテナ32の受信感度が共に良好な範囲で規定され、発明者らの評価によれば2〜20mmの範囲で良好な受信感度が得られ、この範囲で調整できることがわかった。また、DABアンテナ32の給電端子(ホット端子32a)から垂直に延びる仮想直線xを基準にAMアンテナ31の垂直素子33aまでの距離で示されるスリット33の位置は、発明者らによる評価では、0〜100mm(より好適には0〜60mm)の範囲で、AMアンテナ31があっても無い状態と同等の感度が得られることがわかった。このことにより本発明によれば、AMアンテナの受信感度を低下させることなく良好な受信特性を備えたDABアンテナ等を配置可能な、車両用ガラスアンテナ30を提供することができる。