(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような技術内容では、次のような問題がある。すなわち、小型ICタグを検出するための検出用器具に、例えば同軸ケーブルを適用する場合、その同軸ケーブルを内蔵するか、あるいは同軸ケーブル自身が検出用器具の筐体等の外部に露出するかのいずれかとなる。
【0005】
しかしながら、同軸ケーブルを内蔵する場合であって、かつ検出器具が棒状で伸縮自在である場合は、ケーブルの巻き取り機構などの大掛かりな設計変更が必要となる。また、同軸ケーブルが検出用器具の筐体等の外部に露出する態様で取り付けられる場合には、その同軸ケーブルが邪魔になる場合がある。特に、検出用器具が金属製の指示棒の如き伸縮可能なタイプのものである場合には、その検出用器具が縮められた状態では、同軸ケーブルが弛んでしまい、その弛み部分が引っ掛かる等して、断線や落下等の不具合が生じてしまう場合がある。
【0006】
また、特許文献1または特許文献2に開示される検出用器具では、小型のICタグが密集しているような場合には、本来作業者が検出しようとするICタグとは異なるICタグを検出してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、検査対象物に取り付けられているエネルギー受電対象物に対してエネルギーを付与して所定の動作をさせることで、検査対象物を間違えることなく確実に点検することができるエネルギー伝送器具およびエネルギー受電対象物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のエネルギー伝送器具は、金属製の長尺状部材から形成されると共に外部の電波エネルギー送信装置から発信される電磁波に基づいた高周波電流を表面に生じさせる通信路と、長尺状部材の先端部分に設けられていると共に、通信路に基づくエネルギーを、検査対象物に取り付けられているエネルギー受電対象物へ伝送するエネルギー集中部と、エネルギー集中部に電気的に接続され、エネルギー集中部により多く電磁エネルギーを流し込むための、伝送する全エネルギーの一部をあえて電波エネルギーとして再放射するエネルギー流路としてのアンテナ部と、を有し、エネルギー集中部をアンテナ部および通信路よりもエネルギー受電対象物に近接させることで、エネルギー受電対象物に所定の動作を実行させるものである。
【0009】
また、上述したエネルギー伝送器具であって、アンテナ部は、複数回折り返された九十九折形状に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、上述したエネルギー伝送器具であって、アンテナ部は、ストレート形状に設けられていて、かつ通信路に対向するように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、上述したエネルギー伝送器具であって、エネルギー集中部に連続するように延長導体部が設けられていると共に、この延長導体部は、
通信路に対して非接触の状態で対向して対向部位を形成し、高周波電流が流れる場合には、この対向部位で電磁結合を生じさせることが好ましい。
【0012】
また、上述のエネルギー受電対象物は、エネルギー集中部を介して伝送されたエネルギーを受電して、直流に変換する直流電源変換回路と、直流電源変換回路から出力される電力に基づいて
点灯するLEDまたは所定の動作をするパッシブ型のICタグのいずれかを有し、エネルギー集中部は、直流電源変換回路にエネルギーを伝送して
LEDを点灯させる、またはパッシブ型のICタグに所定の動作を実行させることが好ましい。
【0013】
また、上述の電子装置はLEDであり、エネルギー集中部は、直流電源変換回路へ伝送したエネルギーによってLEDを点灯させることが好ましい。
【0014】
また、上述の外部の電波エネルギー送信装置は、
パッシブ型のICタグの情報を読み取ることができるリーダ装置であり、エネルギー受電対象物
はパッシブ型のICタグを有しており、エネルギー集中部は、直流電源変換回路へ伝送したエネルギーによって
パッシブ型のICタグを起動させると共に、通信路を逆にたどって、外部の電波エネルギー送信装置へ
パッシブ型のICタグから読み取られた情報を伝送する、あるいはもう一つ別のルートとして
アンテナ部は、エネルギーの一部が
空間へ再放射
される電波によって外部の電波エネルギー送信装置へ
パッシブ型のICタグから読み取られた情報を伝送することが好ましい。
【0015】
また、エネルギー受電対象物は
パッシブ型のICタグを有しており、エネルギー集中部は、直流電源変換回路へエネルギーを伝送して直流電流を蓄電させることが好ましい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の側面は、エネルギー受電対象物に関するものである。すなわち、本発明に係るエネルギー受電対象物は、外部の電波エネルギー送信装置から発信される電磁波に基づいた高周波電流を表面に生じさせ、その高周波電流に基づくエネルギーを中継する上述したいずれかのエネルギー伝送器具から供給されたエネルギーを受電するためのコイルアンテナと、コイルアンテナと電気的に接続され、高周波電流を直流電流に変換するダイオードと、ダイオードにより変換された直流電流を蓄電するためのコンデンサと、コンデンサに蓄電された電力に基づいて
点灯するLEDまたは所定の動作をするパッシブ型のICタグのいずれかの電子装置と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、検査対象物に取り付けられているエネルギー受電対象物に対してエネルギーを付与して所定の動作をさせることで、検査対象物を間違えることなく確実に点検することができるエネルギー伝送器具およびエネルギー受電対象物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るエネルギー伝送器具10について説明する。なお、以下の構成においては、後述の
図4における通信路50の長手方向をX方向とし、
図4における右側をX1側、それとは逆側をX2側とする。また、後述の
図4において、X方向に直交する方向をY方向とし、
図4において奥側をY1側とし、それとは逆の手前側をY2側とする。ただし、これらを用いずに説明する場合もある。
【0020】
<1−1.エネルギー伝送器具の構成について>
図1は、本発明の実施の形態を説明するための図であり、(A)は、エネルギー伝送器具10の基本構成と、エネルギー受電対象物100と、電波エネルギー送信装置200を示す図であり、(B)はエネルギー受電対象物100が有する直流電源変換部110の構成例を示す図である。このエネルギー伝送器具10は、エネルギー中継部11と、作用部20とを有していて、エネルギー中継部11は、エネルギー集中部30と、アンテナ部40と、通信路50とを備えている。
【0021】
作用部20は、エネルギー受電対象物100に対して仕事をする部分である。たとえば、エネルギー伝送器具10が確認用の指示棒であれば、先端側のエネルギー受電対象物100を指し示す部分が該当する。
【0022】
エネルギー集中部30は、たとえば、使用する周波数において反射などで失われるエネルギー伝送の損失が少なくなるように巻き数を調整したコイル状部分(ループアンテナ)であり、例えばUHFの920MHz帯など高周波では、コイル直径や周辺部材にも影響するが1ターンから2〜3ターン程度の巻数に設けられている。なお、後述する図では1ターンの場合を示しているが、1ターンに限定されるものではなく、巻数は、ループアンテナの感度にあわせた巻き数が望ましく、幾つであっても良い。このエネルギー集中部30は、エネルギー受電対象物100に取り付けられている直流電源変換部110と近接して通信を行う部分であり、いわば磁界アンテナに相当する。
【0023】
アンテナ部40は、電界アンテナである放射アンテナに対応する部分であり、エネルギー集中部30により多くの高周波電流を誘起させる役割があって、一部のエネルギーをアンテナから空間へ再放射させる。この役割が電波エネルギー送信装置200から放射される電磁波によって、アンテナ部40を含めた導体部分により多くの高周波電流が流れ、その高周波電流によってより大きな定在波が発生し、その定在波に基づいて、電波エネルギー送信装置200との間で通信が可能となる。
【0024】
ここで、電波エネルギー送信装置200から放射される電磁波の波長をλとすると、アンテナ部40は、λ/4程度の長さを有しているアンテナ部分であり、その一端側でエネルギー集中部30に電気的に接続されている。なお、通常は、エネルギー集中部30とアンテナ部40とは、同一の線材を用いて構成されている。しかしながら、エネルギー集中部30とアンテナ部40とは、別体的な線材であっても良く、それら別体的な線材を電気的に接続して構成されても良い。なお、λ/4程度とは、正確にλ/4の長さを有しているものも該当するが、概ねλ/4程度の長さであっても良い。すなわち、λ/4から長さがずれると、高周波電流の誘起が減少し最終的にエネルギー集中部30の感度を低下させる方向に影響を与える。この感度低下が実用限度内であれば多少のずれた長さであっても良い。
【0025】
通信路50は、金属製の長尺状部材から形成されると共に外部の電波エネルギー送信装置200から発信される電磁波に基づいた高周波電流を表面に生じさせる部分である。すなわち、通信路50は、電波エネルギー送信装置200から放射される電磁波によって高周波電流が流れる部分である。かかる通信路50を流れる高周波電流により、上記のエネルギー集中部30およびアンテナ部40を含めた導体部分に、定在波を形成する。そして、所定の位置、例えば半波長の位置ごとに、定在波のヌル点(節目となる点;高周波電流の大きさが0または最小となる点)を形成する。
【0026】
エネルギー受電対象物100は、検査対象物に取り付けられるものであり、作業者がエネルギー伝送器具10を用いて検査対象物を個別に認識できるようにするためのものである。エネルギー受電対象物100は、直流電源変換部110を有している。直流電源変換部110は、エネルギー中継部11を介して伝送されたエネルギーを受領するためのコイルアンテナ111と、コイルアンテナ111と電気的に接続され、高周波電流を直流電流に変換する変換部112を有する。変換部112は、高周波電流を直流電流に変換するダイオード113と、ダイオード113に変換された直流電流を蓄電するためのコンデンサ114と、コンデンサ114に蓄電された電力に基づいて所定の動作をする電子装置115とを有している。エネルギー受電対象物100では、エネルギー集中部30を介して伝送されたエネルギーによって電子装置115に所定の動作を実行させることができる。電子装置115は、たとえばLED、アクティブ型のICタグ、パッシブ型のICタグ、歪みセンサ、ブザーなどの所定の動作をする電子装置であるが、以下の説明ではLEDとして説明する。
【0027】
なお、エネルギー受電対象物100としては、直流電源変換部110を取り付けられる各種のものが該当する。以下は、直流電源変換部110を取り付け可能なエネルギー受電対象物100の例であるが、たとえば、トンネルや橋などの社会的なインフラを構成する部材に使用されるボルトやナット、道路のマンホールの蓋、建物内の各種の配管、バルブ装置、分電盤のスイッチ部分等のような各種のスイッチ、定期的にメンテナンスする必要があるガス容器、はさみ、巻尺等が挙げられる。しかしながら、エネルギー受電対象物100は、定期的にメンテナンスする必要があるものであれば、上述したもの以外であってもよい。
【0028】
電波エネルギー送信装置200は、たとえば920MHzといった所定の周波数の電磁波を送受信するリーダ装置である。この電波エネルギー送信装置200は、ハンディタイプであることが好ましい。また、電波エネルギー送信装置200は、インターネットのようなコンピュータネットワークに接続可能なものが望ましい。そして、電波エネルギー送信装置200で読み取った情報を、電波エネルギー送信装置200とは異なる外部のデータベースに保存可能としていることが好ましい。いわば、電波エネルギー送信装置200は、モノのインターネット(Internet of Things;IoT)の構成要素であることが好ましい。
【0029】
(エネルギー伝送器具10の一例)
図2は、本発明の一実施の形態に係るエネルギー伝送器具10の一例としての指示棒10Aをリーダ装置に装着して一体化した状態を示す図である。かかる指示棒10Aの最も先端側には、先端取付部60Aが取り付けられている。先端取付部60Aの内部には、上述したエネルギー集中部30と、アンテナ部40とが配置されている。すなわち、エネルギー中継部11の一部が指示棒10Aの先端側に取り付けられているとみなすこともできるし、通信路50が指示棒10Aの把持部80Aまで連続していると見ることができる。
【0030】
図2に示す構成では、指示棒10Aは、通信路50を構成する導体製の伸縮ポール部50Aを備えている。伸縮ポール部50Aは、直径の大きな筒状の導体部に、直径の小さな導体部を収納することで、複数段階に延長可能に設けられている。そして、この伸縮ポール部50Aの一端側(先端側)には、エネルギー中継部11が取り付けられている。なお、
図2に示す構成では、エネルギー中継部11は、キャップ状の保護カバー60を介して伸縮ポール部50Aの先端側に取り付けられている。なお、電波エネルギー送信装置200と指示棒10Aは一体的に片手で操作できるように互いに装着可能とすることが望ましい。
【0031】
なお、先端取付部60Aは、作用部20としても機能する。そして、電波エネルギー送信装置200から電磁波が放射されている状況下で、先端取付部60A(作用部20)でエネルギー受電対象物100の直流電源変換部110を指し示すことで、電波エネルギー送信装置200と直流電源変換部110との間で通信を行うことを可能としている。なお、電波エネルギー送信装置200と指示棒10Aは片手で一体的に操作できるよう互いに付着可能な構成とすることが望ましい。
【0032】
また、伸縮ポール部50Aの他端側には、ユーザが把持するための把持部80Aが設けられている。そして、この把持部80Aを把持したとき、電波エネルギー送信装置200に設けられるトリガレバー81を引く動作が、他の部分によって妨げられずに行うことができ、このトリガレバー81を引いたとき、電波エネルギー送信装置200から電磁波が放射される構成となっている。なお、電波エネルギー送信装置200は、把持部80Aに一体的に設けられていても良いが、後述の
図3および
図4に示すように、把持部80Aとは別体的に設けられていても良い。
【0033】
(LED点灯の例)
図3は、
図2に示す指示棒10Aを用いて、不図示のエネルギー受電対象物100に取り付けられているLED115Bを点灯させるイメージを示す図である。このように、指示棒10Aの先端側のエネルギー集中部30を、エネルギー受電対象物100に近接させることにより、エネルギー受電対象物100のLED115Bに電力を伝送させることを可能としていて、電力が伝送された特定のLED115Bのみが点灯する。これにより、作業者は、指示棒10Aでエネルギー受電対象物100を指し示す行為と、目視でLED115Bの点灯を確認する行為の2つの行為により、エネルギー受電対象物100が取り付けられている点検対象物を確実に点検、識別することができる。
【0034】
(アンテナ部40の構成例:九十九折形状)
図4は、エネルギー中継部11のアンテナ部40が九十九折(つづら折)形状に設けられている構成例を示す図である。
図4に示す構成においては、アンテナ部40が九十九折形状に曲げられている。この場合、アンテナ部40の線長は、λ/4となるように設けられている。この
図4に示す構成のように、アンテナ部40が九十九折形状に曲げられていることにより、全体的にコンパクトな構成とすることが可能となっている。しかも、九十九折形状のように、アンテナ部40の折り曲げ部位を多くすると、ヌル点T(0)とヌル点T(1)とは離れる。そのため、ヌル点T(0)とヌル点T(1)とが近接している場合と比較して、アンテナ部40に流れる電流は、このアンテナ部40と近接対向する通信路50を流れる逆方向の電流で打ち消されることがなく、アンテナ部40の放射アンテナとしての機能(より遠くまで感度を維持する機能)をより発揮することができる。
【0035】
図5は、エネルギー中継部11の保護カバー60で保護する構成例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面断面図を示している。この
図5に示す構成では、通信路50は、λ/4の長さかそれ以上の長さを有している。また、少なくともアンテナ部40は、樹脂等のような電気的な絶縁性を有する材質で形成された保護カバー60で覆われていて、通信路50の一部も、その保護カバー60で覆われている。
【0036】
通信路50の長さが、λ/4といった短い長さであっても、アンテナ部40と通信路50とで共振を生じ、エネルギー集中部30における直流電源変換部110の検出と、アンテナ部40における放射アンテナとしての機能を発揮させることができる。
【0037】
図6は、エネルギー中継部11において、通信路50が、エネルギー集中部30およびアンテナ部40とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。この構成では、エネルギー集中部30から更にX1側に向かい、延長導体部70が延伸している。延長導体部70は、通信路50に対して、互いに近接対向するように設けられている。そのため、延長導体部70と通信路50は、電磁結合によって、電気的に接続された状態となっている。このとき、コンデンサと同様に、延長導体部70と通信路50の間が狭いほど、電磁結合が強くなる。このように、延長導体部70と通信路が物理的に別体とすることで、エネルギー集中部30とこれに続くアンテナ部40を1つの部品化ができ、故障時などの部品交換をし易くすることができる。
【0038】
かかる
図6に示すような構成を採用する場合には、エネルギー集中部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接点を設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。また、
図6に示すような構成は、延長導体部70と通信路50の間が機械的に接続されていないので、たとえば伸縮式の差し棒といった伸縮可能なエネルギー伝送器具10への適用が容易となる。
【0039】
なお、上述した九十九折形状のアンテナ部40と同様に、延長導体部70と通信路50とは、電気的に直接接触しない構成とすることが必要である。そのような構成とするために、延長導体部70と通信路50の間に、樹脂等のような絶縁部材を配置する構成としても良く、延長導体部70と通信路50を構成する線材のうち少なくとも一方を、エナメル線のような絶縁被膜で覆われた線材によって構成しても良い。
【0040】
図7は、
図6に示すような構成の感度パターンの一例を示す図である。
図7に示すように、エネルギー集中部30の感度領域S1は、この部分が磁界アンテナであるため、非常に狭い領域となっている。一方、遠くまで感度を維持した通信が可能な放射電磁波で動作するアンテナ部40と通信路50と延長導体部70のそれぞれの感度領域は重ね合わされて、感度領域S1と比較して非常に広い領域を有する感度領域S2が形成される。
【0041】
なお、上述した各構成のうち、
図6に示す構成では、エネルギー集中部30に連続するように延長導体部70が設けられていると共に、この延長導体部70は、通信路50に対して非接触の状態で対向して対向部位を形成し、高周波電流が流れる場合には、この対向部位で電磁結合を生じさせている。このため、エネルギー集中部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接点を設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。また、延長導体部70と通信路50の間が機械的に接続されていないので、たとえば伸縮式の差し棒といった伸縮可能なエネルギー伝送器具10への適用が容易となる。
【0042】
図8は、エネルギー中継部11におけるアンテナ部40の九十九折形状の別の構成例を示す図である。なお、
図8に示す構成では、アンテナ部40を90度倒すことによって、上述した
図4に示す構成となる。ただし、九十九折部分のアンテナ部40が、
図4に示す構成よりも、Y方向に突出する長さが短い場合には、
図8に示すような九十九折部分のアンテナ部40を採用するのが有利な場合がある。
【0043】
(アンテナ部40の構成例:ストレート形状)
図9は、エネルギー中継部11のアンテナ部40がストレート形状に設けられ、かつ通信路50に対してアンテナ部40が直交するように設けられている構成例を示す図である。
図9に示す構成においては、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、その線長は、λ/4となるように設けられている。かかる
図9に示す構成では、アンテナ部40は、モノポールアンテナに相当するものであり、アンテナ部40は、通信路50の長手方向(X方向)に対して直交するY方向に延伸する配置となっている。
【0044】
図10は、
図9に示すようなエネルギー中継部11において、ストレート形状のアンテナ部40の角度配置を示す図である。
図10のようなストレート形状のアンテナ部40を有するエネルギー伝送器具10においては、通信路50をグランドアースと見た場合に、X方向に対して90度をなすようにアンテナ部40が配置されている場合に、モノポールアンテナとして最大の能力を発揮する。この90度の角度配置の場合が、
図10において破線で示されている。
【0045】
これに対して、
図10において実線で示すように、X方向に対してなす角度が0度となる位置までアンテナ部40を倒すと、アンテナ部40はY方向に突出しなくなるので、エネルギー伝送器具10は、突出部分の存在しない、スマートな構成とすることが可能となる。
【0046】
しかしながら、この場合には、上述したように、アンテナ部40と通信路50とが対向している部分では、同じ大きさの電流が平行で逆向きとなっている。そのため、この対向部分では、電磁波を放射する能力が大きく減じられ、モノポールアンテナとしての機能を発揮できなくなってしまう。そのため、Y方向においてアンテナ部40から離れると、ほとんど通信不能となる。すなわち、アンテナ部40付近での通信は困難になる。しかしながら、通信路50は、電磁波の波長よりも長く設けることができ、その電磁波によって通信路50の軸方向(X方向)で表面を伝達する高周波電流が生じ、その高周波電流により定在波が形成され、通信路50の一端に接続点Pで接続されるエネルギー集中部30と、λ/4の長さのアンテナ部40が配置されることで、電磁気学で知れるように、その根元にあたるエネルギー集中部30で最大の高周波電流となる。そのためエネルギー集中部30の直近のICタグ115Bと最良の通信を確保することが可能になる。
【0047】
アンテナ部40と通信路50が平行に対向している部分では、アンテナ機能を失っているのでもはやアンテナという呼び方よりも平行二線式の伝送線と呼ぶほうがふさわしく、この平行部分は、損失の少ない状態で電磁波の伝送を行うことができる。また、この平行二線式のX2側の終端には、エネルギー集中部30が設けられているので、エネルギー集中部30がICタグ115Bの情報を検出することで、平行二線式の伝送線となる部分(対向している部分)を介して通信路50を伝わって、電波エネルギー送信装置200側へと読み取った情報を伝えることができる。
【0048】
図11は、
図10に示すストレート形状のアンテナ部40と通信路50を有するエネルギー中継部11の最小構成例を示す図である。
図11に示す構成では、アンテナ部40は、λ/4の長さを有していると共に、通信路50は、アンテナ部40と対向している部分の長さがλ/4であり、さらにその対向部分からX1側に向かってλ/4の長さを有している。
【0049】
図12は、
図10に示すストレート形状のアンテナ部40を有するエネルギー中継部11において、通信路50が、エネルギー集中部30およびアンテナ部40とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。この構成でも、
図6に示す構成と同様に、エネルギー集中部30から更にX1側に向かい、延長導体部70が延伸していて、この延長導体部70は、通信路50に対して近接対向するように設けられ、これらの間で電磁結合を生じさせ、それによって、電気的に接続された状態となっている。
【0050】
なお、この
図12に示す構成においても、アンテナ部40と延長導体部70と通信路50とは、電気的には、互いに直接接触しない構成とすることが必要である。そのために、アンテナ部40と延長導体部70の間、および延長導体部70と通信路50の間に、樹脂等のような絶縁部材を配置する構成としても良く、アンテナ部40と延長導体部70のうち少なくとも一方、および延長導体部70と通信路50を構成する線材のうち少なくとも一方を、エナメル線のような絶縁被膜で覆われた線材によって構成しても良い。
【0051】
かかる
図12に示す構成においても、エネルギー集中部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接続点Pを設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。
【0052】
図13は、
図12に示すような構成の感度パターンの一例を示す図である。
図13に示すように、エネルギー集中部30の感度領域S3は、上述した
図7に示す感度領域S1と同程度の領域となっている。しかしながら、アンテナ部40、通信路50および延長導体部70とが重ね合わされた感度領域S4は、非常に狭いか、またはアンテナ部40と通信路50との間の打ち消しによって事実上ゼロとなる。
図13では、感度領域S4が非常に狭い状態のイメージを示している。
【0053】
なお、
図9から
図12に示す構成では、アンテナ部40に代わり、通信路50によって種々の方向に位置可能な電波エネルギー送信装置200との間の通信が可能であるが、上述したように感度領域S4の幅が狭く、X2方向とX1方向に長く分布している。また、九十九折形状のアンテナ部40ではなく、ストレート形状のアンテナ部40が存在する構成のため、エネルギー伝送器具10の先端側を細くすることが可能となる。
【0054】
<1−2.効果>
以上のような構成のエネルギー伝送器具10によると、金属製の長尺状部材から形成されると共に外部の電波エネルギー送信装置200から発信される電磁波に基づいた高周波電流を表面に生じさせる通信路50と、長尺状部材の先端部分に設けられていると共に、通信路50に基づくエネルギーを、検査対象物に取り付けられているエネルギー受電対象物100へ伝送するエネルギー集中部30と、エネルギー集中部30に電気的に接続され、エネルギー集中部30により多く電磁エネルギーを流し込むための、伝送する全エネルギーの一部をあえて電波エネルギーとして再放射するエネルギー流路としてのアンテナ部40とを有し、エネルギー集中部30をアンテナ部40および通信路50よりもエネルギー受電対象物100に近接させることで、エネルギー受電対象物100に所定の動作を実行させるようにしたので、作業者は、エネルギー受電対象物100の所定の動作に基づいて、検査対象物を間違えることなく確実に認識してから点検をすることができる。たとえば、電子装置115が
図3に示すLED115Bの場合には、作業者は、指示棒10Aの先端でエネルギー受電対象物100を指し示すと共に、目視で該当のLED115Bのみが点灯していることを確認することにより、エネルギー受電対象物100が取り付けられている検査対象物を確実に認識してから点検をすることができる。
【0055】
なお、この高周波電流の効果的な発生の方法は、電波エネルギー送信装置200を通信路50に近接させ、さらに電波エネルギー送信装置200からの放射電磁波方向が通信路50の長手方向(X方向)に向くように配置する。また、エネルギー集中部30は、通信路50に対して電気的に接続されていると共に、直流電源変換部110を高周波電流に基づく電磁誘導に基づいて検出するコイル状の部分である。また、アンテナ部40は、エネルギー集中部30に対して電気的に接続されると共に通信路50に対して電気的に非接触であり、外部空間に向けて、高周波電流に基づいて電磁波を放射している。
【0056】
また、このような構成を採用することにより、通信路50は同軸ケーブルに代わり、外部の電波エネルギー送信装置200から放射される電磁波に基づいて、高周波電流を導通させるので、同軸ケーブルを用いずに済む。そのため、通信路50を同軸ケーブルとした場合、エネルギー受電対象物100と外部の電波エネルギー送信装置200との間で、作用部20が仕事をするのに同軸ケーブルが邪魔になるという課題を根本から解決することが可能となる。また、同軸ケーブルを内蔵する場合のような、エネルギー伝送器具10の大掛かりな設計変更が不要となることが可能となる。また、同軸ケーブルを内蔵する場合のような、エネルギー伝送器具10の大掛かりな設計変更が不要となる
【0057】
また、
図2〜
図7に示すように、アンテナ部40は、複数回折り返された九十九折形状に設けることも可能である。この場合には、九十九折の分だけアンテナ部40を全体的にコンパクトな構成とすることが可能となる。しかも、九十九折形状のように、アンテナ部40がコンパクトになると、アンテナ部40側のヌル点T(0)と通信路50側のヌル点T(1)とは離れるので、それらの間での電流の打ち消し効果が減じられる。また、アンテナ部40を九十九折形状とすると、アンテナ部40には通信路50に対して直交する成分が多くなるので、アンテナ部40のアンテナ機能がさほど弱くならずに済む。しかしながらアンテナ部40は、コンパクトになるほどアンテナ感度が低い方向に向かうので、作用部20の邪魔にならない程度とするのが好ましい。
【0058】
また、
図9に示すように、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、かつ通信路50に対向するように設けることも可能である。この場合には、
図2〜
図7に示すような構成と比較して、幅方向に突出する部位が存在しない構成とすることが可能となる。そのため、狭い場所に挿入しながら、直流電源変換部110を検出することが可能となる。なお、この場合は、アンテナ部40のまわりの外部空間に対するアンテナ機能が無くなるので、直流電源変換部110を検出する領域が減少する。
【0059】
また、
図1の(B)に示すように、エネルギー受電対象物100は、外部の電波エネルギー送信装置200から発信される電磁波に基づいた高周波電流を表面に生じさせ、その高周波電流に基づくエネルギーを中継する上述したいずれかのエネルギー伝送器具10から供給されたエネルギーを受電するためのコイルアンテナ111と、コイルアンテナ111と電気的に接続され、高周波電流を直流電流に変換するダイオード113と、ダイオード113により変換された直流電流を蓄電するためのコンデンサ114と、コンデンサ114に蓄電された電力に基づいて所定の動作をする電子装置115とを有するので、この受電対象物100を取り付けられた検査対象物同士が密集しているような場合であっても、エネルギー伝送器具10により指示された受電対象物100が有する電子装置15のみが所定の動作を実行して、作業者がそれを認識することができる。これにより、作業者は、エネルギー受電対象物100が取り付けられている検査対象物を確実に認識してから点検をすることができる。
【0060】
<3.その他の変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0061】
図14は、アンテナ部40が通信路50に対して平行に設けられていて、しかも互いに近接対向するように設けられている構成例を示す図である。たとえば、
図14に示す構成は、
図10に示す構成と同様に、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、その線長は、λ/4となるように設けられている。また、アンテナ部40は、通信路50に対しては電気的に直接接触しない構成とすることが必要である。ただし、
図14に示す構成では、アンテナ部40は、通信路50に対して平行に設けられていて、しかも互いに近接対向するように設けられている。このようにすることで、
図14に示す構成では、
図9に示す構成と比較して、幅方向に突出する部位が存在しない構成とすることが可能となっている。そのため、狭い場所に挿入しながら、電子装置115を検出することが可能となる。
【0062】
かかる
図14に示す構成においては、アンテナ部40と通信路50とが対向している部分では、その電流が必ず平行で逆向きとなる。しかも、
図14に示す構成では、ヌル点T(0)とヌル点T(1)とは、近接した位置に位置していて、アンテナ部40および通信路50の長手方向では、概ね同じ位置に位置している。そのため、アンテナ部40に流れる電流は、このアンテナ部40と近接対向する通信路50を流れる逆方向の電流で打ち消され、アンテナ部40の放射アンテナとしての機能(より遠くまで感度を維持する機能)がなくなる、という問題がある。
【0063】
また、電子装置115がICタグ(不図示)の場合、そのICタグが内蔵しているセンサ(不図示)から検出情報が常時発信できる状態となるため、情報漏えいやセンサ情報の不正取得等の情報セキュリティ上の問題となることが考えられる。その場合、エネルギー伝送器具10自体にもICタグを設けておき、このICタグに記録されている識別情報を含むデータ通信の場合だけ電子装置115が応答するように、エネルギー受電対象物100側のICタグ側にプログラミングしておいてもよい。これにより、1対1のセキュアな通信を確立することができる。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、電波エネルギー送信装置200は、原則として、エネルギー伝送器具10とは別途の部位に存在するものとしている。しかしながら、
図2で説明したように、電波エネルギー送信装置200をエネルギー伝送器具10と一体的に設けられる構成を採用しても良い。この場合、指示棒10Aにおいて、電波エネルギー送信装置200を把持部80Aに取り付けるように構成しても良い。
【0065】
また、上述の実施の形態では、
図6,7に示すように、延長導体部70は、通信路50に対して、互いに近接対向することで、コンデンサと同様な電磁結合を生じさせている。しかしながら、電磁結合は、たとえばコンデンサ方式ではなくトランス方式で実現するようにしても良い。なお、トランス方式やコンデンサ方式においては、必要に応じて、位相を調整する位相調整用の回路を用いるようにしても良い。
【0066】
また、上述の実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として920MHzが挙げられている。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良く、その他の周波数であっても良い。
【課題】検査対象物に取り付けられているエネルギー受電対象物に対してエネルギーを付与して所定の動作をさせることで、検査対象物を間違えることなく確実に点検することができるエネルギー伝送器具およびエネルギー受電対象物を提供する。
【解決手段】 金属製の長尺状部材から形成され、電波エネルギー送信装置200から発信される電磁波に基づく高周波電流を生じさせる通信路50、長尺状部材の先端部分に設けられ、通信路50に基づくエネルギーをエネルギー受電対象物100へ伝送するエネルギー集中部30、エネルギー集中部30に電気的に接続され、エネルギー集中部30により多く電磁エネルギーを流し込むための、伝送する全エネルギーの一部をあえて電波エネルギーとして再放射するエネルギー流路としてのアンテナ部40を有し、エネルギー集中部30をエネルギー受電対象物100に近接させることで、エネルギー受電対象物100に所定の動作を実行させるエネルギー伝送器具10とする。