(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に示すように、本発明の管継手構造は、薄肉金属管4の先端部が挿入される雄ネジ部2付きの継手本体1と、雄ネジ部2に螺着される袋ナット3とを、備えている。
継手本体1は、内周面に、Oリング等のシール材10を保持する保持溝部20が形成されている。また、継手本体1は、その奥部に、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が形成されている。
【0011】
袋ナット3は、薄肉金属管4を挿通可能とし、かつ、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有している。さらに、袋ナット3は、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される雌ネジ部24を有している。
袋ナット3の内側には、内周面に係止凸部8を有する抜止めリング5が配設されている。抜止めリング5は、テーパ状内周面6に摺接可能なテーパ面7を外周に有している。
【0012】
図5に示すように、抜止めリング5は、1箇所に切れ目26を有するC型円環状に形成されている。係止凸部8は、図例では、台形状低突隆部として形成されているが、断面円弧状の低突隆部としても良い(図示省略)。抜止めリング5は、合成樹脂、あるいは、ステンレス鋼から成る。なお、継手本体1、袋ナット3、薄肉金属管4と接触しても電蝕を起こさない金属を用いても良い。
なお、参考例として図6に示した抜止めリング5は、(
図5に示す)切れ目26が省略されて、代りに、複数のスリット27が、アキシャル方向に交互に切欠形成され、複数のスリット27をもって、ラジアル内方向に縮径可能な弾性を付与した形状である。
【0013】
図1に示すように、薄肉金属管4は、先端縁4aから少し離れた所定の位置に、塑性加工によって凹溝9が形成されている。
図2のように、先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで薄肉金属管4が差し込まれた際、抜止めリング5の係止凸部8に対応するように、凹溝9が、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた位置に全周にわたって形成されている。
【0014】
薄肉金属管4は、JIS G3448に規定されるステンレス鋼管であって、主に、給水・給湯又は排水等の配管に用いられる。
薄肉金属管4の外径Dと、肉厚寸法tの関係を、表1に示す。薄肉金属管4は、外径Dを20mm〜50mmに設定し、肉厚寸法tを1.0mm〜1.2mmに設定するのが好ましい。
【0016】
図7に示すように、薄肉金属管4は、接続前に、ロータリー式チューブカッター40によって、予め所定の長さに切断される。チューブカッター40は、一対のローラ46,46を有するフレーム45と、先端部にカッターホイール41が枢着されフレーム45にスライド自在に保持されるスライドバー42とを、備え、スライドバー42には回転自在の送り調整ノブ43が設けられている。薄肉金属管4を切断する際には、ラッチ44を押しながらスライドバー42を後退させカッターホイール41とローラ46,46の間隔を十分に拡げて、薄肉金属管4をローラ46,46の上に載置する。送り調整ノブ43を押圧してスライドバー42を前進させ、薄肉金属管4に対しカッターホイール41を当接させる。次に、送り調整ノブ43を(時計廻りに)回転させて、カッターホイール41と一対のローラ46,46によって薄肉金属管4をしっかり固定する。チューブカッター40を薄肉金属管4廻りに公転させ、薄肉金属管4の外周面にカッターホイール41を押し付けつつ転動させる。1周〜2周ごとに送り調整ノブ43を少しずつ(時計廻りに)回転させて、カッターホイール41を薄肉金属管4の外周面に食い込ませ、薄肉金属管4が完全に切断されるまで、この操作を繰り返す。このように薄肉金属管4を切断することで、先端縁4aは、軸心に対し垂直状となり、かつ、先端縁4aが凹凸の少ない美しい端面に形成される。なお、薄肉金属管4は、カッターホイール41にラジアル外方向から押圧されながら切断されるため、
図1〜
図3に示すように、一般には、切断後は先端縁4aが内方弯曲状に塑性変形している。
【0017】
薄肉金属管4を切断した後、
図8に示すように、溝付け治具30によって、薄肉金属管4に塑性加工凹溝9を形成する。溝付け治具30は、フレーム35の先端部に薄肉金属管4に差込み可能な差込軸部37を有し、差込軸部37の先端には、凹溝9の裏側を受ける凹部36aが形成された裏当てローラ36が回転自在に枢着されている。また、フレーム35は、スライダー32をスライド自在に保持し、スライダー32は、先端部に凸付きローラ31を回転自在に有し、かつ、基端部に回転自在の送り調整ノブ33が設けられている。薄肉金属管4に塑性加工凹溝9を形成する際は、スライダー32を後退させて凸付きローラ31と裏当てローラ36の間隔を十分に拡げ、差込軸部37を薄肉金属管4に差込むと共に薄肉金属管4の先端縁4aをフレーム35の側端面に当接させる。送り調整ノブ33を押圧して凸付きローラ31を薄肉金属管4の外周面に当接させ、次に、送り調整ノブ33を(時計廻りに)回転させて凸付きローラ31を薄肉金属管4の外周面に押し付ける。この際、裏当てローラ36が、凸付きローラ31に対応する位置を薄肉金属管4の内周面から押圧する。薄肉金属管4は、先端縁4aから少し離れた所定の位置にて、外周面が凸付きローラ31に押圧され、内周面が裏当てローラ36に押圧されて、しっかり固定される。溝付け治具30を薄肉金属管4廻りに公転させ、薄肉金属管4の外周面に凸付きローラ31を転動させる。溝付け治具30を公転させながら送り調整ノブ33を(時計廻りに)回転させて、凸付きローラ31によって薄肉金属管4の外周面を少しずつ凹ませて、塑性加工凹溝9を形成する。このようにして、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた所に、簡単に、かつ、安定して高精度に凹溝9を形成することができる。
【0018】
上述した本発明の管継手構造に於て、薄肉金属管4を接続する手順について説明すると、
図2に示すように、袋ナット3に薄肉金属管4を挿通した後、薄肉金属管4の先端部を継手本体1に差し込む。薄肉金属管4の先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで押し込むことで、薄肉金属管4が位置決めされ、先端縁4aから所定の位置に形成された凹溝9が、抜止めリング5の係止凸部8に対応する位置に配設される。
【0019】
図3と
図4に示すように、薄肉金属管4が差し込まれた状態で、袋ナット3を手動で回転させて雄ネジ部2に螺着させ、テーパ状内周面6をテーパ面7に摺接させつつラジアル内方向の押圧力Fを付与して、抜止めリング5を縮径させる。抜止めリング5は、継手本体1と袋ナット3に挟まれて圧縮され、挿入されている薄肉金属管4の凹溝9に、係止凸部8が係止する。係止凸部8は、(切れ目26を除いて)ほぼ全周にわたって凹溝9に圧接状態で嵌合しており、薄肉金属管4が強固な抜止め状態で接続される。なお、袋ナット3の螺着作業は、手動で十分な程の小さな力で行うことが可能で、パイプレンチ等の工具は不要であるが、工具を使用して行っても良い。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0は、外径Dの1.25倍〜1.8倍に設定されている。薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.25倍未満であると、薄肉金属管4にラジアル外方向から強い力(折る方向の力)が働いた場合に、金属管4を確実に保持できず、引き抜けてしまう虞れがある。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.8倍を超えると、継手本体1が大きくなり過ぎて、好ましくない。このように、1.25D≦L
0≦1.8Dとすることによって、薄肉金属管4に折る方向の力(曲げモーメント)が作用しても引き抜けずに十分に耐え、かつ、コンパクトな管継手が得られる。
【0020】
次に、本発明の管継手構造の他の実施形態について説明する。
図9に示すように、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、(JIS
G3448の)薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、袋ナット3は、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有し、袋ナット3の内側には、内周面に複数の円環状独立突条16,16,16を有する抜止めリング15が配設されている。
継手本体1は、内周面に、Oリング等のシール材10を保持する保持溝部20が形成され、かつ、継手本体1の奥部には、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が形成されている。なお、継手本体1は、内方弯曲状に塑性変形した先端縁4aが確実に当たるように、周状突当たり段部21が薄肉金属管4の内径よりも少し狭くなるように形成されている。
袋ナット3は、薄肉金属管4を挿通可能とし、かつ、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される雌ネジ部24を有している。
【0021】
図12に示すように、抜止めリング15は、テーパ面17を外周に有し、内周面に2本〜4本の円環状独立突条16,16,16が形成されている。
抜止めリング15は、合成樹脂、あるいは、ステンレス鋼から成り、1箇所に切れ目26を有するC型円環状に形成されている。なお、抜止めリング15は、(
図6のように)複数のスリットがアキシャル方向に交互に切欠形成された形状としても良い。
【0022】
図9に示すように、薄肉金属管4は、先端縁4aから少し離れた所定の位置に、塑性加工にて複数の独立凹周溝18,18,18が形成されている。
図10のように、先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで薄肉金属管4が差し込まれた際、独立突条16,16,16に対応するように、2本〜4本(図例では3本)の独立凹周溝18,18,18が、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた帯状領域Eに薄肉金属管4の全周にわたって形成されている。
【0023】
薄肉金属管4は、
図7に示すロータリー式チューブカッター40によって所定の長さに切断された後、
図13のように、溝付け治具による塑性加工にて複数の独立凹周溝18,18,18が形成される。
独立凹周溝18,18,18は、複数の環状凸部50a,50a,50aを有する押しローラ50を、薄肉金属管4の外周面に押し付けることで形成される。この際、図中2点鎖線で示す受けローラ49を、薄肉金属管4の内周面から当てるのが望ましい。独立凹周溝18,18,18は、薄肉金属管4の先端縁4aから少し離れた所定の位置に、安定して高精度に形成することができ、塑性加工が容易で、かつ、薄肉金属管4の内径寸法の減少量が少なくて済む利点がある。即ち、
図9に於て、複数本(3本)の凹周溝18,18,18とすることによって、1本の場合と比較して、同一の耐引抜力を発揮させるために、凹周溝18,18,18の溝深さが浅くても良いので、
図9に示す内径寸法Diを、上記1本の場合(
図1参照)よりも大きく設定できる。従って、水等の通過抵抗を減少できる。特に、
図7に例示したロータリー式チューブカッター40の切断によって、必然的に
図1、
図9に示すように、先端縁4aが縮径変形を起こすが、そのときの縮径内径寸法をDxとすれば、Di>Dxとすることができ、(必然的な)先端縮径変形に伴う流体通過抵抗を、それ以上に、ほとんど増加させずに済むという利点がある。
【0024】
図9〜
図11に示す本発明の管継手構造の使用方法(作用)について説明する。
図10に示すように、袋ナット3に薄肉金属管4を挿通した後、薄肉金属管4の先端部を継手本体1に差し込む。薄肉金属管4の先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで押し込むことで、薄肉金属管4が位置決めされ、先端縁4aから所定の位置に形成された独立凹周溝18,18,18が、抜止めリング5の独立突条16,16,16に対応する位置に配設される。
【0025】
図11に示すように、袋ナット3を手動で回転させて雄ネジ部2に螺着させ、テーパ状内周面6をテーパ面17に摺接させつつラジアル内方向の押圧力Fを付与して、抜止めリング15を縮径させる。抜止めリング15は、継手本体1と袋ナット3に挟まれて圧縮され、挿入されている薄肉金属管4の複数の独立凹周溝18,18,18に、複数の独立突条16,16,16が係止する。独立突条16,16,16と独立凹周溝18,18,18は、(切れ目を除いて)ほぼ全周にわたって圧接し、かつ、凹凸が互いに嵌合し合って、薄肉金属管4が強固な抜止め状態で接続されることとなる。なお、袋ナット3の螺着作業は、手動で十分な程の小さな力で行うことが可能で、パイプレンチ等の工具は不要である。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0は、外径Dの1.25倍〜1.8倍に設定されている。薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.25倍未満であると、薄肉金属管4にラジアル外方向から強い力(折る方向の力)が働いた場合に、金属管4を確実に保持できず、引き抜けてしまう虞れがある。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.8倍を超えると、継手本体1が大きくなり過ぎて、好ましくない。
【0026】
次に、本発明の管継手構造
と関係のある第1参考例について説明する。
図14に示すように、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、(JIS G3448の)薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、薄肉金属管4の先端縁4aから所定の位置に塑性加工凸部14が形成され、かつ、内周面に係止凹溝13が形成された抜止めリング12を備え、係止凹溝13を凸部14に外嵌状として抜止めリング12が薄肉金属管4に嵌着されている。
継手本体1は、内周面に、Oリング等のシール材10を保持する保持溝部20が形成されている。また、継手本体1は、その奥部に、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が形成されている。
袋ナット3は、凸部14を塑性加工する前に薄肉金属管4を挿通され、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有している。さらに、袋ナット3は、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される雌ネジ部24を有している。
【0027】
図15のように、先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで薄肉金属管4が差し込まれた際、抜止めリング12が継手本体1の端面に当たる直前か、あるいは、ちょうど当接するように配設される。凸部14は、先端縁4aから少し離れた所定の位置に全周にわたって形成されている。
図14では、凸部14は、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた位置に配設され、かつ、塑性加工によって、横断面台形状に形成されている。なお、凸部14は、断面円弧状に形成されても良い。
【0028】
図16に示すように、抜止めリング12は、テーパ面11を外周に有し、内周面に、凸部14に嵌合可能な横断面矩形状乃至台形状の係止凹溝13が形成されている。抜止めリング12は、合成樹脂、あるいは、ステンレス鋼から成り、1箇所に切れ目26を有するC型円環状に形成されている。
【0029】
図7に示すロータリー式チューブカッター40で薄肉金属管4を所定の長さに切断した後、薄肉金属管4に袋ナット3を挿通し、
図17のように、凸部形成用工具55によって、薄肉金属管4に凸部14を塑性加工する。
工具55は、フレーム54の先端部に薄肉金属管4に差込み可能な差込軸部57を有し、差込軸部57の先端には、小凸条56aが形成された凸付きローラ56が回転自在に枢着されている。また、フレーム54は、スライダー52をスライド自在に保持し、スライダー52は、先端部に凹周溝付きローラ51を回転自在に有し、かつ、基端部に回転自在の送り調整ノブ53が設けられている。薄肉金属管4に塑性加工凸部14を形成する際は、スライダー52を後退させて凹周溝付きローラ51と凸付きローラ56の間隔を十分に拡げ、差込軸部57を薄肉金属管4に差込むと共に薄肉金属管4の先端縁4aをフレーム54の側端面に当接させる。送り調整ノブ53を押圧して凹周溝付きローラ51を薄肉金属管4の外周面に当接させ、次に、送り調整ノブ33を(時計廻りに)回転させて凹周溝付きローラ51を薄肉金属管4の外周面に押し付ける。この際、凸付きローラ56が、凹周溝付きローラ51に対応する位置を薄肉金属管4の内周面から押圧する。薄肉金属管4は、先端縁4aから少し離れた所定の位置にて、外周面が凹周溝付きローラ51に押圧され、内周面が凸付きローラ56に押圧されて、しっかり固定される。工具55を薄肉金属管4廻りに公転させながら送り調整ノブ53を(時計廻りに)回転させて、凹周溝付きローラ51と凸付きローラ56によって薄肉金属管4の外周面を少しずつ塑性加工させて、凸部14を形成する。このようにして、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた所に、簡単に、かつ、安定して高精度に凸部14を形成することができ、塑性加工が容易で、かつ、薄肉金属管4の内径寸法を減少しなくて済む利点がある。即ち、
図1に於て薄肉金属管4に凹溝9を形成する場合と比較して、薄肉金属管4に於ける水等の通過抵抗を減少できる。
図7に例示したロータリー式チューブカッター40の切断によって、必然的に先端縁4aが縮径変形を起こし、
図14に示すように、縮径内径寸法をDxとなるが、流体通過抵抗を、それ以上に増加させずに済む。また、凸部14形成後に、薄肉金属管4の内径寸法が減少しない為、差込軸部57を引抜き易く、作業効率を向上できるという利点がある。
【0030】
図14から
図15に示すように、薄肉金属管4を接続する手順について説明すると、袋ナット3を薄肉金属管4に挿通した後、凸部14に抜止めリング12を嵌着する。この際、抜止めリング12を弾性変形させて、薄肉金属管4の外径Dより大きく拡径し、凸部14が係止凹溝13に嵌まるように、抜止めリング12を弾性的に復元させて嵌着する。
次に、薄肉金属管4の先端部を継手本体1に差し込む。薄肉金属管4の先端縁4aが周状突当たり段部21に当接して、薄肉金属管4が位置決めされる。凸部14に嵌着された抜止めリング12は、継手本体1に当たる直前の位置に配設される。
【0031】
図15に示すように、薄肉金属管4が差し込まれた状態で、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させ、テーパ状内周面6をテーパ面11に摺接させて押圧力Fを付与することで、挿入されている薄肉金属管4の凸部14が、係止凹溝13に係止する。抜止めリング12は、継手本体1と袋ナット3に挟まれて圧縮され、凸部14と係止凹溝13が圧接状態で嵌合して、薄肉金属管4は強固な抜止め状態で接続される。なお、袋ナット3の螺着作業は、手動で十分な程の小さな力で行うことができる。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0は、外径Dの1.25倍〜1.8倍に設定されている。薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.25倍未満であると、薄肉金属管4にラジアル外方向から強い力(折る方向の力)が働いた場合に、金属管4を確実に保持できず、引き抜けてしまう虞れがある。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.8倍を超えると、継手本体1が大きくなり過ぎて、好ましくない。このように、1.25D≦L
0≦1.8Dとすることによって、薄肉金属管4に折る方向の力(曲げモーメント)が作用しても引き抜けずに十分に耐え、かつ、コンパクトな管継手が得られる。
【0032】
次に、
第2参考例について説明する。
図18に示すように、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、(JIS G3448の)薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、薄肉金属管4の先端縁4aから所定の位置に塑性加工にて複数の円環状独立突条22,22,22が形成され、かつ、内周面に複数の独立凹周溝23,23,23が形成された抜止めリング25を備え、複数の独立凹周溝23,23,23を独立突条22,22,22に外嵌状として抜止めリング25が薄肉金属管4に嵌着されている。
継手本体1は、内周面に、Oリング等のシール材10を保持する保持溝部20が形成され、かつ、継手本体1の奥部には、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が形成されている。なお、継手本体1は、内方弯曲状に塑性変形した先端縁4aが確実に当たるように、周状突当たり段部21が薄肉金属管4の内径よりも少し狭くなるように形成されている。
袋ナット3は、薄肉金属管4を挿通可能とし、かつ、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される雌ネジ部24を有している。
【0033】
図20に示すように、抜止めリング15は、テーパ面28を外周に有し、内周面に2本〜4本の独立凹周溝23,23,23が形成されている。
抜止めリング15は、合成樹脂、あるいは、ステンレス鋼から成り、1箇所に切れ目26を有するC型円環状に形成されている。なお、抜止めリング15は、(
図6のように)複数のスリットがアキシャル方向に交互に切欠形成された形状としても良い。
【0034】
図19に示すように、先端縁4aが周状突当たり段部21に当接するまで薄肉金属管4が差し込まれた際、抜止めリング25が継手本体1の端面に当たる直前か、あるいは、ちょうど当接するように配設される。2本〜4本(図例では3本)の円環状独立突条22,22,22が先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた帯状領域Eに薄肉金属管4の全周にわたって形成されている。
【0035】
図7に示すロータリー式チューブカッター40で薄肉金属管4を所定の長さに切断した後、薄肉金属管4に袋ナット3を挿通し、
図21のように、工具60によって、薄肉金属管4に複数の円環状独立突条22,22,22を塑性加工する。
工具60は、複数の環状凸部を有するローラ66を薄肉金属管4の内周面に当て、かつ、複数の凹周溝を有するローラ61を薄肉金属管4の外周面に押し付ける。この他の構成は、
図17の工具55と同様である。工具60によれば、薄肉金属管4の先端縁4aから少し離れた所定の位置に、複数の円環状独立突条22,22,22を安定して高精度に形成することができ、塑性加工が容易で、かつ、薄肉金属管4の内径寸法を減少しなくて済む利点がある。従って、切断による(必然的な)先端縮径変形に伴う流体通過抵抗を、それ以上に増加させず、水等の通過抵抗を減少できる。また、独立突条22,22,22形成後に、工具60を引抜き易く、作業効率を向上できるという利点がある。
【0036】
図18、
図19に示す
第2参考例の使用方法(作用)について説明する。
図18に示すように、袋ナット3を薄肉金属管4に挿通した後、独立突条22,22,22に抜止めリング25を嵌着する。この際、抜止めリング25を弾性変形させて、薄肉金属管4の外径Dより大きく拡径し、独立突条22,22,22が、独立凹周溝23,23,23に嵌まるように、抜止めリング25を弾性的に復元させて嵌着する。
次に、薄肉金属管4の先端部を継手本体1に差し込む。薄肉金属管4の先端縁4aが周状突当たり段部21に当接して、薄肉金属管4が位置決めされる。独立突条22,22,22に嵌着された抜止めリング25は、継手本体1に当たる直前の位置に配設される。
【0037】
図19に示すように、袋ナット3を手動で回転させて雄ネジ部2に螺着させ、テーパ状内周面6をテーパ面28に摺接させつつラジアル内方向の押圧力Fを付与することで、挿入されている薄肉金属管4の複数の独立突条22,22,22が、複数の独立凹周溝23,23,23に係止する。抜止めリング25は、継手本体1と袋ナット3に挟まれて圧縮され、複数の独立突条22,22,22と独立凹周溝23,23,23が互いに嵌合(噛合)して、薄肉金属管4が強固な抜止め状態で接続される。なお、袋ナット3の螺着作業は、手動で十分な程の小さな力で行うことが可能で、パイプレンチ等の工具は不要である。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0は、外径Dの1.25倍〜1.8倍に設定されている。薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.25倍未満であると、薄肉金属管4にラジアル外方向から強い力(折る方向の力)が働いた場合に、金属管4を確実に保持できず、引き抜けてしまう虞れがある。また、薄肉金属管4の飲込み深さ寸法L
0が外径Dの1.8倍を超えると、継手本体1が大きくなり過ぎて、好ましくない。
【0038】
なお、本発明は上述した実施の形態に限らず、その要旨を変更しない範囲で設計変更可能であって、例えば、継手本体1は、一部分のみを(断面で)示しているが、この継手本体1の全体は、ストレート、エルボ、チーズ、ソケット等の各種のものであり、さらに、図外の他端側に、同様の構造のものを形成しても良い。なお、継手本体1の内周面に嵌着されるシール材10は、Oリング以外に、Uパッキン等としても良い。
【0039】
以上のように、本発明に係る管継手構造は、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、
継手本体1は、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が設けられ、かつ、軸心直交面状の先端面を有し、袋ナット3は、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有し、テーパ面7を外周に有すると共に内周面に係止凸部8が形成された
C型円環状の抜止めリング5を備え、かつ、薄肉金属管4の先端縁4aから所定の位置に塑性加工凹溝9が形成され、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させて、
抜止めリング5を継手本体1の先端面に当接させると共に、袋ナット3のテーパ状内周面6がテーパ面7を押圧して抜止めリング5を縮径させ、挿入されている薄肉金属管4の凹溝9に、係止凸部8が係止するように構成されたので、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させて抜止めリング5を縮径させる際、予め塑性加工された凹溝9に係止凸部8を嵌め込んで薄肉金属管4を接続でき、袋ナット3の回転トルク(締付け力)が非常に小さくて済む。袋ナット3を手動でスムーズに螺進することができ、作業が楽であり、様々な場所、配管の接続を行うのに便利である。特に、作業者が、天井裏などの高所で配管の接続を行う場合であっても、手間が掛からないので、作業を迅速かつスムーズに行うことができる。簡素な構造で、引き抜き阻止力が大きな抜止め状態を確実に得られ、施工後に薄肉金属管4が不意に抜けてしまうのを防止できる。安価に製造でき、かつ、施工コストも低減できる。
【0040】
また、継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、
継手本体1は、挿入された薄肉金属管4の先端縁4aが当接する周状突当たり段部21が設けられ、かつ、軸心直交面状の先端面を有し、袋ナット3は、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有し、テーパ面17を外周に有すると共に内周面に複数の円環状独立突条16,16,16が形成された
C型円環状の抜止めリング15を備え、かつ、薄肉金属管4の先端縁4aから所定の位置に塑性加工にて複数の独立凹周溝18,18,18が形成され、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させて、
抜止めリング5を継手本体1の先端面に当接させると共に、袋ナット3のテーパ状内周面6がテーパ面17を押圧して抜止めリング15を縮径させ、挿入されている薄肉金属管4の複数の独立凹周溝18,18,18に、複数の独立突条16,16,16が係止するように構成されたので、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させて抜止めリング5を縮径させる際、予め塑性加工された複数の独立凹周溝18,18,18に円環状独立突条16,16,16を嵌め込んで薄肉金属管4を接続でき、袋ナット3の回転トルク(締付け力)が非常に小さくて済む。袋ナット3を手動でスムーズに螺進することができ、作業が楽であり、様々な場所、配管の接続を行うのに便利である。特に、作業者が、天井裏などの高所で配管の接続を行う場合であっても、手間が掛からないので、作業を迅速かつスムーズに行うことができる。簡素な構造で、引き抜き阻止力が極めて大きな強固な抜止め状態を確実に得られ、施工後に薄肉金属管4が不意に抜けてしまうのを防止できる。安価に製造でき、かつ、施工コストも低減できる。独立凹周溝18,18,18の塑性加工が容易で、かつ、薄肉金属管4の内径寸法の減少量が少なくて済み、流体の通過抵抗(圧力損失)を低減でき
る。
【0041】
また、薄肉金属管4は、JIS G3448に規定されるステンレス鋼管であるので、(チューブカッター40によって)切断された際に先端縁4aが、少し縮径変形するが、軸心に対し垂直状となり、かつ、先端縁4aを凹凸の少ない美しい端面に形成でき、先端縁4aから一定の長さ寸法Lだけ離れた所に、凹溝
9を、簡単に、かつ、安定して高精度に形成することができる。袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させる
際、薄肉金属管4が弾性変形して、凹凸が隙間無く嵌合して強固な抜止め状態が得られ、確実に薄肉金属管4を接続できる。
【課題】大きな力を要することなく、小さな力で締付けて接続可能であり、かつ、パイプに強い引き抜き力が掛かっても抜ける虞れがなく、確実かつ強固に接続できる管継手構造を提供する。
【解決手段】継手本体1の雄ネジ部2に螺着される袋ナット3を備え、薄肉金属管4を接続する管継手構造に於て、袋ナット3は、先端開口側へ縮径するテーパ状内周面6を有し、テーパ面7を外周に有すると共に内周面に係止凸部8が形成された抜止めリング5を備え、かつ、薄肉金属管4の先端縁4aから所定の位置に塑性加工凹溝9が形成され、袋ナット3を雄ネジ部2に螺着させて、テーパ状内周面6がテーパ面7を押圧して抜止めリング5を縮径させ、挿入されている薄肉金属管4の凹溝9に、係止凸部8が係止するように構成されている。