特許第5953458号(P5953458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953458
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ウォーターサーバ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/07 20060101AFI20160707BHJP
   B67D 1/08 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B67D1/07
   B67D1/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-45973(P2012-45973)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-180804(P2013-180804A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313000128
【氏名又は名称】サントリー食品インターナショナル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503020242
【氏名又は名称】西山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正毅
(72)【発明者】
【氏名】須川 恭一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 康祐
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199352(JP,A)
【文献】 特開2006−021793(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1852131(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/07
B67D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に詰められた飲料水を配管系統を介して供給するウォーターサーバであって、
前記配管系統中に飲料水を貯留するタンクと、
前記タンクの飲料水を加熱して高温水にする加熱手段と、
前記タンク内の高温水を前記配管系統に向けて逆流させるポンプと、
前記ポンプによって前記配管系統に送られた前記高温水を再び前記タンクに戻すための循環路と、
少なくとも前記加熱手段と前記ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ポンプによって前記高温水を所定期間に亘って逆流させて、少なくとも前記配管系統及び前記循環路を殺菌する主殺菌処理手段と、少なくとも前記配管系統の始点付近を殺菌処理された状態とする補助殺菌処理手段とを備えているウォーターサーバ。
【請求項2】
前記補助殺菌処理手段では、前記制御装置が前記ポンプによって前記主殺菌処理手段の前記所定期間よりも短い時間で、少なくとも前記配管系統の始点付近に前記高温水を逆流させる請求項1に記載のウォーターサーバ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記主殺菌処理手段より、前記補助殺菌処理手段を多く実施する請求項1または2に記載のウォーターサーバ。
【請求項4】
前記タンク内の飲料水を前記高温水よりも低温の温水に保持する省エネ給水モードに設定されている際に、前記制御装置が前記タンク内の飲料水を前記加熱手段によって前記高温水にした後に前記補助殺菌処理手段を実施する請求項2または3に記載のウォーターサーバ。
【請求項5】
前記容器を支持する容器収納部に、前記容器の取り出しを可能にする開口部と同開口部を閉鎖する蓋部が設けられており、前記制御装置は、前記蓋部の開放に基づいて前記補助殺菌処理手段を実施する請求項1から4のいずれか一項に記載のウォーターサーバ。
【請求項6】
前記蓋部の開放を検知する検知手段が設けられており、前記制御装置は、前記検知手段による前記蓋部の開放の検出に基づいて、前記容器の交換前に前記補助殺菌処理手段を実施する請求項5に記載のウォーターサーバ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記タンク内の飲料水を前記加熱手段によって前記高温水よりも高温の高温水にした後に前記主殺菌処理手段を実施する請求項1から6のいずれか一項に記載のウォーターサーバ。
【請求項8】
前記配管系統の始点付近に配置された局部ヒータを備え、前記制御装置は、前記局部ヒータを、前記主殺菌処理手段による主殺菌処理の前記所定期間よりも短く、少なくとも前記配管系統の始点付近が前記高温水で満たされる期間に亘って運転させる補助殺菌処理を前記主殺菌処理よりも高頻度で実施する請求項1に記載のウォーターサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に詰められた飲料水を配管系統を介して供給するウォーターサーバであって、前記配管系統中に飲料水を貯留するタンクを有し、前記配管系統を殺菌処理する手段として、前記タンクの飲料水を殺菌可能な温度に加熱された高温水とするための加熱手段と、前記タンク内の高温水を前記配管系統に向けて逆流させるポンプと、前記ポンプによって前記配管系統に送られた前記高温水を再び前記タンクに戻すための循環路とを備えるウォーターサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のウォーターサーバに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたウォーターサーバでは、自然循環(対流)やポンプによって高温水を配管系統に逆流させる形態の殺菌処理を定期的に実施させることで、配管系統を微生物の繁殖していない状態に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−199352号公報(0014段落、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記されたウォーターサーバでは、殺菌処理を行うためにタンクの飲料水を高温水に加熱する際に、タンク内の飲料水が加熱によって膨張しても、容器の下方に設けた三方コネクタの自動的な切り換えによって、配管系統の始点付近に位置する飲料水が容器内へ逆流し、同飲料水に潜在的に繁殖している微生物が容器内に連行される問題に対処できる構成となっている。
【0005】
しかし、殺菌処理に当たって三方コネクタを容器側への逆流が生じない位置に切り換えた場合、タンク内の飲料水が熱膨張した際に逃げ場がなくなってしまう虞がある。また、三方コネクタを容器側への逆流が生じない位置に切り換えても、微細な微生物を含む飲料水の容器側への逆流を完全に防止する効果は期待し難い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、高温水による殺菌処理の前段階などに、容器内への微生物の連行をより確実に規制可能なウォーターサーバを提供することにある。
【0007】
本発明の特徴構成は、
容器に詰められた飲料水を配管系統を介して供給するウォーターサーバであって、
前記配管系統中に飲料水を貯留するタンクと、
前記タンクの飲料水を加熱して高温水にする加熱手段と、
前記タンク内の高温水を前記配管系統に向けて逆流させるポンプと、
前記ポンプによって前記配管系統に送られた前記高温水を再び前記タンクに戻すための循環路と、
少なくとも前記加熱手段と前記ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ポンプによって前記高温水を所定期間に亘って逆流させて、少なくとも前記配管系統及び前記循環路を殺菌する主殺菌処理手段と、少なくとも前記配管系統の始点付近を殺菌処理された状態とする補助殺菌処理手段とを備えている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によるウォーターサーバでは、主殺菌処理手段による、高温水を所定期間に亘って逆流させて、少なくとも配管系統及び循環路を殺菌する操作とは別に、補助殺菌処理手段によって少なくとも配管系統の始点付近が殺菌処理された状態とされるので、主殺菌処理手段が実施されたる際にもしもタンク内の飲料水の膨張によって配管系統の始点付近に位置する配管系統の飲料水が容器内へ逆流しても、配管系統の始点付近に潜在的に存在している微生物が容器内に連行され難くなった。
【0009】
本発明の他の特徴構成は、前記補助殺菌処理手段では、前記制御装置が前記ポンプによって前記主殺菌処理手段の前記所定期間よりも短い時間で、少なくとも前記配管系統の始点付近に前記高温水を逆流させる点にある。
【0010】
本構成であれば、ポンプを少なくとも配管系統及び循環路の全長が高温水で満たされる期間に亘って運転させる主殺菌処理手段とは別に、補助殺菌処理手段として、少なくとも配管系統の始点付近に高温水が流すという比較的簡単な操作が行われることで、同始点付近に位置する飲料水が殺菌されている水で置き換えられることになり、少なくとも配管系統の始点付近を実質的に殺菌処理することができる。
【0011】
また、この補助殺菌処理では、ポンプは主殺菌処理手段の所定期間よりも短い時間に亘って運転されるので、冷たい飲料水を提供するための冷水タンクが配管系統の一部として設けてある場合でも、冷水タンク内の飲料水の温度管理への支障が生じ難い。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記制御装置は、前記主殺菌処理手段より、前記補助殺菌処理手段を多く実施する点にある。
【0013】
本構成であれば、補助殺菌処理手段が主殺菌処理よりも多く実施されるので、配管系統の始点付近が常に微生物の存在しない状態に維持され易い。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、前記タンク内の飲料水を前記高温水よりも低温の温水に保持する省エネ給水モードに設定されている際に、前記制御装置が前記タンク内の飲料水を前記加熱手段によって前記高温水にした後に前記補助殺菌処理手段を実施する点にある。
【0015】
タンク内の飲料水が一般の微生物を殺菌可能な高温水の温度以上に保持されている場合は、補助殺菌処理では単にタンク内の飲料水の一部を配管系統に向けてポンプで逆流させればよいが、省エネ給水モードでの運転によってタンク内の飲料水が高温水よりも低温に保持されている場合は、そのままポンプで逆流させただけでは容器とタンクの間に位置する配管系統が十分に殺菌できない虞がある。しかし、本構成であれば、省エネ給水モードの場合には、タンク内の飲料水が高温水に加熱された後に逆流されるので、容器とタンクの間に位置する配管系統が十分に殺菌できる。
【0016】
本発明の他の特徴構成は、前記容器を支持する容器収納部に、前記容器の取り出しを可能にする開口部と同開口部を閉鎖する蓋部が設けられており、前記制御装置は、前記蓋部の開放に基づいて前記補助殺菌処理手段を実施する点にある。
【0017】
本構成であれば、ユーザーが容器を新しいものに取替えようとして、蓋部を開放すると、定期的なルーチンとしての補助殺菌処理とは別に、蓋部の開放と連動した臨時的な補助殺菌処理が実行される。したがって、もしも現在設置されている容器の内部に微生物繁殖などの問題があっても、この臨時の補助殺菌処理によって容器とタンクの間に位置する配管系統が殺菌されるので、この問題が配管系統を介して次の新しい容器に引き継がれる事態が生じ難い。すなわち、前述したような、主殺菌処理よりも高頻度で補助殺菌処理を実施するだけでも本発明の目的は達成されるが、このような臨時の補助殺菌処理によってさらに効果が高められる。
【0018】
本発明の他の特徴構成は、前記蓋部の開放を検知する検知手段が設けられており、前記制御装置は、前記検知手段による前記蓋部の開放の検出に基づいて、前記容器の交換前に前記補助殺菌処理手段を実施する点にある。
【0019】
本構成であれば、蓋部の開放操作が検知手段によって検知され、制御装置は同検知に基づいて容器の取替え直前に臨時の補助殺菌処理を実行するので、もしも現在設置されている容器の内部に微生物繁殖などの問題があっても、この問題が配管系統を介して次の新しい容器に引き継がれる事態がより確実に防止される。
【0020】
尚、もしも補助殺菌処理前または補助殺菌処理中に容器がウォーターサーバの配管系統から外されると、容器と配管系統との接続部から水が漏れる場合があるが、この漏れた水は全て、配管系統から供給される飲料水を受けるためのコップなどを置くためにウォーターサーバに設けてある受け皿から通常の排水経路に流れるため、漏れた水が容器内に逆流したり、ウォーターサーバの外にこぼれたりする問題は生じない。
【0021】
本発明の他の特徴構成は、制御装置は、前記タンク内の飲料水を前記加熱手段によって前記高温水よりも高温の高温水にした後に前記主殺菌処理手段を実施する点にある。
【0022】
本構成であれば、主殺菌処理に際してポンプによって逆流される飲料水の殺菌作用が高温化によって更に高められるので、より短時間で主殺菌処理を完了することができ、ユーザーによる通常の使用を妨げ難いウォーターサーバが得られる。
【0023】
本発明の他の特徴構成は、前記配管系統の始点付近に配置された局部ヒータを備え、前記制御装置は、前記局部ヒータを、前記主殺菌処理手段による主殺菌処理の前記所定期間よりも短く、少なくとも前記配管系統の始点付近が前記高温水で満たされる期間に亘って運転させる補助殺菌処理を前記主殺菌処理よりも高頻度で実施する点にある。
【0024】
本構成であれば、ポンプを少なくとも配管系統及び循環路の全長が高温水で満たされる期間に亘って運転させる主殺菌処理手段とは別に、補助殺菌処理手段として、配管系統の始点付近に配置された局部ヒータを、少なくとも配管系統の始点付近が高温水で満たされる期間に亘って運転させるので、配管系統の始点付近に微生物が繁殖し難い状態に維持される。したがって、主殺菌処理手段として、殺菌処理を行うためにタンクの飲料水を高温水に加熱する際に、もしもタンク内の飲料水の膨張によって配管系統の始点付近の飲料水が容器内へ逆流しても、微生物が容器内に連行される虞が少なくなった。また、この補助殺菌処理手段では、局部ヒータは少なくとも配管系統の始点付近が高温水で満たされる程度の短い期間に亘って運転されるので、冷たい飲料水を提供するための冷水タンクが配管系統の一部として設けてある場合でも、冷水タンク内の飲料水の温度管理への支障が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】給水モードにおけるウォーターサーバを示す略図である。
図2】主殺菌処理中のウォーターサーバを示す略図である。
図3】補助殺菌処理中のウォーターサーバを示す略図である。
図4】補助殺菌処理中の別実施形態によるウォーターサーバを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(ウォーターサーバの概略構成)
図1に例示された本発明に係るウォーターサーバは、飲料水が充填された容器1を設置するための容器収納部2と、容器1から供給される飲料水を貯留するための温水タンク3及び冷水タンク6とを有する。
【0027】
ここでは、容器1は樹脂製のタンクが段ボール製などの箱状のケースに収納されたバッグインボックス型とされているが、これに限る必要はなく、十分な密封性があればよい。
容器収納部2は、容器1内の飲料水を外側から温度調節する冷却装置などを装備しており、容器1内の飲料水を微生物の繁殖しにくい約4〜10℃などに保持することもできる。
【0028】
容器1は容器収納部2の内部にて飲料水の出入りを許すスパウト1Aが下方を向いた反転姿勢で支持されており、容器1の飲料水は自重によって導管C1を介して下方に供給される。導管C1の下端には左右に分岐した分岐部Xによって2つの導管C2、C6が接続されており、飲料水の一部は導管C2を介して温水タンク3に充填され、飲料水の他の一部は導管C6を介して冷水タンク6に充填される。
【0029】
温水タンク3は内部の飲料水を70℃を超える所定の温水状態に保持するためのヒータ4(加熱手段の一例)を底部付近に備え、冷水タンク6は内部の飲料水を例えば約4〜10℃前後の冷水状態に保持するための冷却機7を備えている。
【0030】
温水タンク3の上面には、給水用の導管C3と蒸気抜き用の導管C4とが接続されており、冷水タンク6の上面には給水用の導管C7が接続されている。ユーザーが給水用導管C3に設けられた温水注出バルブV1を開けると給水用の導管C3の端部から温水が供給され、給水用の導管C7に設けられた冷水注出バルブV4を開けると給水用の導管C7の端部から冷水が供給される。
【0031】
温水タンク3と冷水タンク6には貯留中の飲料水の温度を検出する温度センサ(不図示)が設けられており、ウォーターサーバには、これらの温度センサの検出値に基づいて、温水タンク3と冷水タンク6に貯留中の飲料水を設定された温度に調節する制御装置20が設けられている。容器収納部2にも冷却機能が備えられた構成とする場合、制御装置20は容器収納部2のための冷却装置の制御も行う。
【0032】
ウォーターサーバの外表面などには、温水タンク3の飲料水の温度を設定変更するための温水調節ボタン(不図示)が設置されている。温水調節ボタンは、「通常」と「省エネ」と「高温」の3つのボタンからなる。
【0033】
制御装置20は、「通常」ボタンが操作されている状態ではヒータ4を温水タンク3の飲料水が例えば約85℃前後に保持されるように制御し、「省エネ」ボタンが操作されている状態ではヒータ4を温水タンク3の飲料水が例えば約70℃前後に保持されるように制御し、「高温」ボタンが操作されると温水タンク3の飲料水を例えば93℃に一旦昇温させ、その後は約85℃前後(または約70℃前後)に保持するように制御する。
【0034】
(主殺菌処理の構成)
前述した導管C1,C2,C3,C6,C7はいずれも飲料水を供給する配管系統を構成するが、ウォーターサーバは、これらの配管系統の一部(主として導管C2,C6,C7)と冷水タンク6の内部とを定期的に殺菌処理(主殺菌処理)する殺菌処理機構を備えている。
【0035】
殺菌処理機構は、温水タンク3に設けられたヒータ4と、ヒータ4によって温水タンク3内に形成された高温水を、導管C2,C6、冷水タンク6、導管C7の一部などに向けて逆流させるポンプ10と、ポンプ10によってこれらの箇所に送られた飲料水を再び温水タンク3に戻すための導管C8,C9(いずれも循環路の一例)とを備えている。
【0036】
導管C8は給水用の導管C7の冷水注出バルブV4よりも上流側からポンプ10の入力部まで延設されており、導管C9はポンプ10の出力部から温水タンク3のドレン用の導管C5に介装された開閉バルブV3よりも上流側の部位まで延設されている。冷水タンク6のドレン用の導管C10にも開閉バルブV5が介装されている。
【0037】
制御装置20に例えばプログラムなどの形態で設けられた主殺菌処理手段は、主殺菌処理において、高い殺菌効果を得るために、また、より短い期間で1回の殺菌処理を達成するために、基本的に温水タンク3の飲料水を例えば一旦93℃の高温水にまで加熱した上で、導管C9に介装された開閉バルブV6を開放状態に切り換えた後に、ポンプ10の運転を開始する。
【0038】
制御装置20の主殺菌処理手段は、主殺菌処理を終了するためにポンプ10の運転を停止した時点では開閉バルブV6を再び閉鎖状態に切り換える。
【0039】
制御装置20の主殺菌処理手段は、ポンプ10を深夜などウォーターサーバの使用頻度の少ない時間帯に例えば約2時間という第1期間(所定期間の一例)に亘って運転させる主殺菌処理を1日に1回の第1周期で実施する。第1期間及び第1周期やポンプ10の運転パターンは適用地域の気候や季節によって変更可能である。
【0040】
(補助殺菌処理の構成)
ところで、上述した主殺菌処理では、先ず温水タンク3の飲料水を加熱して93℃の高温水にするため、この加熱に伴って温水タンク3の飲料水が膨張し、導管C1と導管C2と導管C6とが出会う交点X付近、すなわち、配管系統の始点(X)付近に位置する飲料水や導管C2内の飲料水が導管C1を介して容器1内へと逆流する傾向が見られる。ここで、これらの位置にある飲料水が微生物を含んでいれば逆流によって容器1内へ微生物が進入する虞がある。
【0041】
このような微生物の進入を防止する方法として、本発明では、第1期間を除く期間に、主殺菌処理とは別の補助殺菌処理を定期的に行うことによって、上記の始点(X)付近にある飲料水を微生物の存在しない状態に保っておくことで、たとえ主殺菌処理に際して上記の始点(X)付近にある飲料水が容器1に逆流しても、容器1内に微生物が進入しないシステムとしている。
【0042】
制御装置20に例えばプログラムなどの形態で設けられた補助殺菌処理手段は、ポンプ10を例えば約5秒間という第2期間(主殺菌処理手段の所定期間よりも短い時間の一例)に亘って運転させる処理を1〜3時間に1回の第2周期で実施する。
【0043】
尚、温水タンク3の温度設定として「通常」ボタンが選択されている状態では、「通常」の設定温度の範囲内で一定温度まで昇温させてから、ポンプ10を例えば約5秒間に亘って運転させる。
【0044】
他方、「省エネ」ボタンが選択されている場合は、温水タンク3の飲料水が約70℃という殺菌に不十分な温度に保たれているため、温水タンク3の飲料水を殺菌に十分な約78℃まで水温を高めた上でポンプ10の運転を開始する。尚、約70℃から約78℃(高温水の一例)に昇温する程度の加熱では温水タンク3の飲料水の膨張率は十分に小さいため、前述した逆流現象は生じない。
【0045】
尚、第1期間を除く期間の全体で定期的な補助殺菌処理を均等に実施するのではなく、主殺菌処理の直前の例えば10〜30分間などの短い期間にのみ補助殺菌処理を数回実施するという方法をとってもよい。
【0046】
容器1を支持する容器収納部2には、容器1の取り出しを可能にする開口部(不図示)と、同開口部を閉鎖する蓋部(不図示)と、同蓋部の開放操作を検知する検知手段(不図示)とが設けられている。
【0047】
ユーザーが容器1を交換しようとして蓋部を開放すると、前述した第2期間での補助殺菌処理とは別に、蓋部の開放と連動した臨時の補助殺菌処理が行われる。これは、ユーザーが取替え前の容器1を取り出す前に補助殺菌処理を行うことで、取替え前の容器1の内部に潜在的に存在する微生物が導管C1から導管C2,C6に進入する可能性を可及的に抑制するためである。
【0048】
蓋部は、蓋部開放用の押しボタンの操作に基づいて、同押しボタンと連係した蓋部のロック機構が機械的にロック解除される構成としてもよく、或いは、単にユーザーが手動で手前側に揺動操作するだけで開放される構成としてもよい。いずれの場合も、蓋部の開放操作を検知するマイクロスイッチなどの検知手段(不図示)が設けられている。
尚、作業者が補助殺菌処理の完了後に容器1の交換を実施できるように、補助殺菌処理の実施中であること、または、補助殺菌処理が完了したことを作業者に告知するための手段として、ウォーターサーバを構成する筐体外側の適当な位置に、制御装置20によって点灯制御されるLEDランプなどを設けることができる。
【0049】
或いは、上記の各形態とは異なり、蓋部を閉鎖されたロック状態に保持するロック機構と、同ロック機構をロック解除状態に切り換えるためのロック解除ボタンとを設け、ユーザーが容器1を交換しようとしてロック解除ボタンを押し操作しても、制御装置20はロック機構をロック解除状態に切り換える操作を直ぐには実施せず、押し操作に基づいて、制御装置20が臨時の補助殺菌処理を実行し、同補助殺菌処理の完了後に初めてロック機構をロック解除状態に切り換え、蓋部が開放され、容器1の交換とが可能となる形態で実施してもよい。
【0050】
(邪魔板の構成)
ところで、ポンプ10の運転による飲料水の循環では、ポンプ10の下流側に位置する導管C8とC9の飲料水が温水タンク3に進入するが、この導管C8とC9内は室温に近い温度で保持され易いので、微生物が繁殖する虞がある。
【0051】
そこで、温水タンク3の内部には、導管C9から温水タンク3に進入した飲料水が導管C2の下端から分岐点Xへと直接逆流する可能性を排除するために、同飲料水を温水タンク3内で積極的に拡散させるための邪魔板5が設けられている。
【0052】
ここでは、邪魔板5は、温水タンク3の底部における、ドレン用の導管C5の始点と導管C2の下端とを隔離する位置に立設され、温水タンク3の天井部に向かって延出されている。
【0053】
温水タンク3の図1の紙面の厚さ方向で互いに対向する一対の側面と邪魔板5との間にも間隙は設けられていないため(温水タンク3の排水のための小さな間隙は残されている)、導管C9から温水タンク3の邪魔板5よりも図で左側の領域に進入した飲料水は、邪魔板5の上端と温水タンク3の天井部の下面との間に残された唯一の間隙を介して邪魔板5の右側の領域に進入することができる。
尚、例えば導管C9から温水タンク3への流入部に、導管C9の上端から温水タンク3内の上端付近まで延びた流入管(不図示)を設けることで、水流制御手段としての邪魔板5と同様の効果を得ることも可能であり、この場合は邪魔板5を省略してもよい。
【0054】
(間欠循環処理の構成)
制御装置20は、補助殺菌処理とは別の目的で、主殺菌処理の前に、ポンプ10を例えば約10〜20秒間(少なくとも冷水タンク6から導管C9に位置する飲料水を温水タンク3の内部に進入させる期間)に亘って運転する循環処理を複数回(例えば2〜10回など)に亘って間欠的に実施する。導管C9は、ポンプ10と温水タンク3の底部の間を接続する循環路の一例である。
【0055】
この間欠循環処理の目的は、たとえ冷水タンク6から導管C9に位置する飲料水が導管C2の下端から分岐点Xへと直接逆流しても、容器1に微生物が進入する事態を抑制するために、冷水タンク6から導管C9の飲料水を頻繁に入れ替えることで、冷水タンク6から導管C9に位置する飲料水を温水タンク3内で一旦殺菌することにある。間欠循環処理は、何らかの理由で邪魔板5を設置できない場合や、邪魔板5の効果が不十分な場合に特に有効である。
【0056】
間欠循環処理において、より効果を高める目的で導管C9に高温水を導入してもよいが、間欠循環処理では導管C9の飲料水が入れ替えられればよいので、必ずしも実施する必要はない。
【0057】
主殺菌処理と補助殺菌処理と間欠循環処理の全てを考慮したスケジュールとしては、例えば、一日の深夜に一度だけ主殺菌処理を実施させ、主殺菌処理を除く時間帯において、1.5時間毎に例えば約5秒間の補助殺菌処理を実施させ、さらに、主殺菌処理の開始される直前の例えば約10〜20秒間の間欠循環処理を数十秒おきに複数回実施させるとよい。
尚、主殺菌処理において、制御装置20の主殺菌処理手段が、温水タンク3の飲料水を一旦93℃の高温水にまで加熱することなく、温水タンク3に通常の約85℃前後の飲料水が保持された状態から、開閉バルブV6を開放状態に切り換え、ポンプ10の運転を開始する形態で実施してもよい。
【0058】
〔別実施形態〕
〈1〉上記の実施形態では、冷水タンク6には冷却装置7のみが配置されているが、例えばウォーターサーバを寒冷地用として設定する場合など、必要に応じて冷水タンク6に冷却装置7とヒータとを並設してもよい。
【0059】
〈2〉上述した主殺菌処理では、給水用の導管C3の殺菌処理ができないため、導管C3に内部の飲料水を殺菌可能な温度に加熱、保持するためのヒータを設けてもよい。
【0060】
〈3〉冷水タンク6が省略され、温水タンク3のみを備えたウォーターサーバの形態で実施することも可能である。或いは、ヒータが殺菌処理用の高温水を形成するためだけに用いられ、通常の給水時には、タンク内の飲料水の冷却のみを行うまたは温度調整を行わないウォーターサーバの形態で実施することも可能である。
【0061】
〈4〉図4に例示するように、補助殺菌処理手段として、導管C1と導管C2と導管C6とが出会う交点X付近、すなわち、配管系統の始点付近に微生物を殺菌するための局部ヒータ12を設けておき、制御装置20が、主殺菌処理の第1期間よりも短く、少なくとも配管系統の始点付近が高温水で満たされる第2期間(例えば約5分間など)に亘って局部ヒータ12を運転させる補助殺菌処理を、主殺菌処理よりも高頻度の第2周期(例えば1〜3時間に1回)で実施させる形態で実施してもよい。この場合は、ポンプ10を第2期間に亘って運転させる補助殺菌処理を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
容器に詰められた飲料水を配管系統を介して供給するウォーターサーバに従来見られた課題を解決するための技術として利用可能な発明である。
【符号の説明】
【0063】
1 容器
2 容器収納部
3 温水タンク
4 ヒータ(加熱手段)
6 冷水タンク
10 ポンプ
12 局部ヒータ
20 制御装置
C1 導管
C2 導管(配管系統)
C3 給水用の導管(配管系統、温水)
C6 導管(配管系統)
C7 給水用の導管(配管系統、冷水)
C8 導管(循環路)
C9 導管(循環路)
V3 開閉バルブ
V6 開閉バルブ(循環路)
X 分岐部(配管系統の始点付近)
図1
図2
図3
図4