(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3工程の後、前記薄膜形成予定部位を、前記第3工程において前記酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒すことにより前記薄膜形成予定部位に吸着した前記酸化物前駆体を、酸素を含んで構成された分子またはラジカルに晒す第4工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1記載の薄膜製造方法。
前記第4工程の後、前記薄膜形成予定部位に吸着した前記酸化物前駆体を、前記第4工程において酸素を含んで構成された分子またはラジカルに晒すことにより形成された前記酸化物からなる層に対して、還元性プラズマ処理を行う第5工程と、を含み、
前記第4工程の後に、前記第5工程と前記第3工程を少なくとも1回以上行う
ことを特徴とする請求項2記載の薄膜製造方法。
基板と、当該基板の上方に形成された複数の発光層と、前記複数の発光層の上方を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、前記第1酸化物層上における、少なくとも前記複数の発光層が形成された領域の上方を含む薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成する表示パネルの製造方法であって、
前記第1酸化物層の上方に、前記第1酸化物層上における前記薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、
前記第2工程の後、前記薄膜形成予定部位を前記酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含み、
少なくとも前記第3工程において、互いに対向する前記マスク表面と前記第1酸化物層表面との間には隙間が存在している
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
前記構造体は、前記基板上における、前記複数の発光層それぞれの下方に相当する領域から前記複数の発光層それぞれの下方に相当する領域の外側に延出した複数の配線を有し、
前記薄膜形成予定部位は、第1酸化物層上における、前記複数の発光層それぞれの下方に相当する領域の外側に延出した前記配線の一部の上方に相当する部位を含む
ことを特徴とする請求項10記載の表示パネルの製造方法。
基板と、当該基板の上方に形成された複数の発光層と、前記複数の発光層の上方を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、前記第1酸化物層上における、前記発光層の一部を除く部位の上方に相当する薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成する表示パネルの製造方法であって、
前記第1酸化物層の上方に、前記第1酸化物層上における前記薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、
前記第2工程の後、前記薄膜形成予定部位を前記酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含み、
少なくとも前記第3工程において、互いに対向する前記マスク表面と前記第1酸化物層表面との間には隙間が存在している
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
基板と、当該基板上に形成された少なくとも1つのTFTとを有し、前記TFTが、前記基板上に形成されたゲート電極と、前記基板上に前記ゲート電極を覆うように形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された半導体層と、当該半導体層の一部を覆うように配置されたドレイン電極およびソース電極と、前記ドレイン電極および前記ソース電極上、
半導体層上を含む部位を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、
前記第1酸化物層上における、前記半導体層の上方を含む薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成するTFT基板の製造方法であって、
前記第1酸化物層の上方に、前記第1酸化物層上における前記薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、
前記第2工程の後、前記薄膜形成予定部位を前記酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含み、
少なくとも前記第3工程において、互いに対向する前記マスク表面と前記第1酸化物層表面との間には隙間が存在している
ことを特徴とするTFT基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の一態様に係る薄膜製造方法および表示パネルの製造方法、TFT基板の製造方法の概要>
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、第1酸化物層上の一部に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成する薄膜製造方法であって、第1酸化物層の上方に、第1酸化物層のうち薄膜を形成する予定の薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、第1工程の後、薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、第2工程の後、薄膜形成予定部位を酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含む。
【0013】
本構成によれば、上記第2工程を有することにより、上記薄膜形成予定部位に酸素欠損を生じさせ、その状態で、上記第3工程において、薄膜形成予定部位を酸化物前駆体に晒す。ここで、薄膜形成予定部位に酸素欠損が生じているため、第3工程において、酸化物前駆体が薄膜形成予定部位に吸着され易くなっている。従って、第2工程の還元性プラズマ処理において、マスクと第1酸化物層との間への還元性プラズマの侵入を抑制すれば、酸化物前駆体の第1酸化物層とマスクとの間の隙間への酸化物前駆体の侵入を抑制でき、酸化物前駆体を略薄膜形成予定部位のみに吸着させることとなる。これにより、従来のようなマスクと第1酸化物層との間、即ち、酸化物層上の薄膜形成予定部位以外の部位に酸化物からなる薄膜や酸化物前駆体からなる層が形成されてしまうこと(いわゆる膜の回り込み)を抑制できる。
【0014】
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記第3工程の後、上記薄膜形成予定部位を、第3工程において上記酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒すことにより薄膜形成予定部位に吸着した酸化物前駆体を、酸素を含んで構成された分子またはラジカルに晒す第4工程と、を含むものであってもよい。
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記第4工程の後、上記薄膜形成予定部位に吸着した上記酸化物前駆体を、第4工程において酸素を含んで構成された分子またはラジカルに晒すことにより形成された前記酸化物からなる層に対して、還元性プラズマ処理を行う第5工程と、を含み、第4工程の後に、第5工程と上記3工程を少なくとも1回以上行うものであってもよい。
【0015】
本構成によれば、上記第5工程を有することにより、上記酸化物からなる層の表面に酸素欠損を生じさせ、その状態で、上記第3工程において、酸化物からなる層の表面を酸化物前駆体に晒す。ここで、酸化物からなる層の表面に酸素欠損が生じているため、第3工程において、酸化物前駆体が酸化物からなる層の表面に吸着され易くなっている。従って、第3工程において、酸化物からなる層の表面への酸化物前駆体の供給量を低減しても酸化物からなる層の表面全体に亘って酸化物前駆体を斑なく吸着させることができる。そして、酸化物前駆体の供給量を低減できる分、薄膜形成予定部位上に形成された酸化物からなる層とマスクとの間の隙間への酸化物前駆体の侵入を抑制できる。これにより、マスクに対向する第1酸化物層上への薄膜形成(いわゆる薄膜の回り込み)を抑制できる。
【0016】
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記第1工程において、上記薄膜形成予定部位に対して薄膜形成予定部位に交差する方向に異方性を有する還元性プラズマを照射することにより還元性プラズマ処理を行い、上記第4工程において、上記酸化物からなる層に対して薄膜形成予定部位に交差する方向に異方性を有する還元性プラズマを照射することにより還元性プラズマ処理を行うものであってもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記マスクが、上記第1酸化物層側とは反対側の面に、上記酸化物からなり上記酸化物前駆体を吸着する吸着層が形成されているものであってもよい。
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記酸化物が、酸化アルミニウムであり、上記酸化物前駆体が、トリメチルアルミニウムであってもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記第1酸化物層が、酸化シリコンを含むものであってもよい。
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記第1酸化物層が、化合物からなる化合物層上に形成されてなり、第1酸化物層が、化合物の酸化物からなるものであってもよい。
本構成によれば、第1酸化物層と化合物層との密着性の向上を図ることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る薄膜製造方法は、上記化合物が、窒化アルミニウムおよび窒化シリコンの少なくとも一方を含むものであってもよい。
本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法は、基板と、当該基板の上方に形成された複数の発光層と、複数の発光層の上方を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、第1酸化物層上における、少なくとも複数の発光層が形成された領域の上方を含む薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成する表示パネルの製造方法であって、第1酸化物層の上方に、第1酸化物層上における薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、第1工程の後、薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、第2工程の後、薄膜形成予定部位を酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含むものであってもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法は、上記構造体が、上記基板上における、上記複数の発光層それぞれの下方に相当する領域から複数の発光層それぞれの下方に相当する領域の外側に延出した複数の配線を有し、上記薄膜形成予定部位が、第1酸化物層上における、複数の発光層それぞれの下方に相当する領域の外側に延出した配線の一部の上方に相当する部位を含むものであってもよい。
【0021】
本構成によれば、発光層の下方に相当する部位の外側に延出した配線の一部の上方が、第2酸化物層により覆われることにより、配線のうち発光層の下方に相当する部位の外側に延出した部位の封止性が向上するので、その分、配線の劣化を抑制することができる。
本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法は、基板と、当該基板の上方に形成された複数の発光層と、複数の発光層の上方を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、第1酸化物層上における、発光層の内周部の一部を除く部位の上方に相当する薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成する表示パネルの製造方法であって、第1酸化物層の上方に、第1酸化物層上における薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、第1工程の後、薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、第2工程の後、薄膜形成予定部位を酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含むものであってもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法は、上記発光層が、有機材料からなるものであってもよい。
本発明の一態様に係るTFT基板の製造方法は、基板と、当該基板上に形成された少なくとも1つのTFTとを有し、前記TFTが、前記基板上に形成されたゲート電極と、前記基板上に前記ゲート電極を覆うように形成された絶縁層と、絶縁層上に形成された半導体層と、当該半導体層の一部を覆うように配置されたドレイン電極およびソース電極と、ドレイン電極およびソース電極上、半導体層上を含む部位を覆うように形成された第1酸化物層とを有する構造体に対して、第1酸化物層上における、半導体層の上方を含む薄膜形成予定部位に酸化物からなる薄膜を原子層堆積法を用いて形成するTFT基板の製造方法であって、第1酸化物層の上方に、第1酸化物層上における薄膜形成予定部位が露出するようにマスクを配置する第1工程と、第1工程の後、薄膜形成予定部位に対して還元性プラズマ処理を行う第2工程と、第2工程の後、薄膜形成予定部位を酸化物における酸素以外の構成元素を含む酸化物前駆体に晒す第3工程と、を含むものであってもよい。
【0023】
<実施の形態1>
<1>構成
本実施の形態に係る表示パネルの構成について説明する。
本実施の形態に係る表示パネル10の斜視図を
図1に示す。また、
図1における領域A1の部分断面図を
図2(a)に示し、
図1における領域A2の部分断面図を
図2(b)に示す。
【0024】
図1に示すように、表示パネル10は、平面視矩形状に形成されている。また、表示パネル10の外周部には、表示パネル10の各辺に沿って駆動回路が配置される。そして、表示パネル10の周部には、表示パネル10の外周部に配置された駆動回路に接続するための複数のパッド部125が配設されている。この表示パネル10は、例えば、有機材料の電界発光現象を利用した有機ELタイプであり且つトップエミッション型の表示パネルである。
【0025】
表示パネル10における領域A1の構造について説明する。
図2(a)に示すように、領域A1では、TFT基板103上に絶縁膜105が形成されている。ここで、TFT基板103は、基板本体103aと、基板本体103a上に形成されたTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ、図示せず)、配線125等から構成される。また、絶縁膜105は、TFT基板103の表面段差を平坦化するためのいわゆる平坦化膜である。絶縁膜105におけるTFTの電極に対応する部位には、TFTの電極に電気的に接続するためのスルーホール(図示せず)が貫設されている。また、絶縁膜105は、ポリイミド系樹脂等の絶縁材料を主成分としている。
【0026】
絶縁膜105上における、スルーホールが貫設された部位には、陽極107が形成されている。陽極107は、スルーホールを介してTFT基板103のTFTに電気的に接続されている。また、陽極107は、例えば、アルミニウム(Al)等から形成されている。
絶縁膜103上における陽極107が形成されていない部位および陽極107上には、正孔注入層109が形成されている。この正孔注入層109は、発光層113への正孔の注入を促進するためのものである。正孔注入層109は、例えば、酸化タングステン(WO
x)等の遷移金属の酸化物を含む金属酸化物から形成される。
【0027】
正孔注入層109上における、陽極107の間に相当する部位には、バンク(隔壁)111が形成されている。このバンク111は、表示パネル10内における発光部分を区分けするためのものである。バンク111は、陽極107の周部上面に存する正孔注入層109から上方に突出している。このバンク111の断面形状は、絶縁膜103の厚み方向に直交する方向で対向する2辺間の同方向における距離が上方ほど短くなっている台形状である。また、バンク111は、例えば、感光性、絶縁性を有するアクリル系樹脂からなるネガ型レジスト等を用いて形成される。
【0028】
正孔注入層109上のうち、バンク111で区分けされた各部分には、例えば、赤色や緑色、青色を発する発光層113が形成されている。この発光層113は、例えば、有機材料から形成されている。
発光層113上には、電子輸送層115が形成されている。この電子輸送層115は、発光層113への電子の注入を促進するためのものである。この電子輸送層115は、発光層113の上方のみならず、バンク111における発光層113よりも上方に突出した部位全体をも覆っている。また、電子輸送層115は、例えば、有機材料から形成されている。
【0029】
電子輸送層115上には、陰極117が形成されている。陰極117は、電子輸送層115全体を覆うように形成されている。また、陰極117は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等のいわゆる透明電極用材料からなる。なお、以下では、前述の正孔注入層109、発光層113および電子輸送層115からなる3層を「発光機能層」と称する。
【0030】
陰極117上には、封止部219が形成されている。この封止部219は、発光機能層や陰極117等が水分や空気に晒されることを防止するためのものである。封止部119は、陰極117全体を覆うように形成されている。
封止部219は、第1バッファ層121と、第1バッファ層121上に形成された第1封止層123と、第1封止層123上に形成された第2バッファ層(第1酸化物層)211と、第2バッファ層211上に形成された第2封止層213とからなる。即ち、第2バッファ層211は、発光層113の上方を覆うように形成されている。また、第2封止層213は、第2バッファ層211上のうち、発光層113の上方を含む部位に形成されている。
【0031】
第1バッファ層121は、酸窒化シリコン(SiON)からなる。なお、第1バッファ層121を形成する材料としては、例えば、炭素含有酸化シリコン(SiOC)、酸窒素アルミニウム(Al
XO
YN
Z)等の化合物であってもよい。
第1封止層123は、窒化シリコン(SiN)からなる化合物層である。なお、第1封止層123を構成する材料は、例えば、炭化ケイ素(SiC),窒化アルミニウム(AlN)等の化合物であってもよい。
【0032】
第2バッファ層211は、酸窒化シリコン(SiON)からなる。なお、第2バッファ層211を形成する材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)、炭素含有酸化シリコン(SiOC),酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の化合物であってもよい。つまり、第2バッファ層211は、SiNからなる第1封止層123上に形成されており、第2バッファ層211を構成するSiONが、第1封止層123を構成するSiNの酸化物である。
【0033】
また、第2封止層213は、酸化アルミニウムからなる。なお、第2封止層213を形成する材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒素アルミニウム(Al
XO
YN
Z)等の化合物であってもよい。
ところで、TFT基板103の一部を構成する基板本体103a上に設けられた配線は、基板本体103a上における発光層113の下方に対応する部位の外側に延出している。そして、第2封止層213が、配線126のうち、基板本体103a上における発光層113の下方に相当する部位の外側に延出した部位の上方を覆っている。これにより、配線126のうち発光層113の下方に相当する部位の外側に延出した部位の上方に相当する部位が、第2封止層123により覆われる。従って、配線126のうち発光層113の下方に相当する部位の外側に延出した部位の封止性が向上するので、その分、配線126の劣化を抑制することができる。
【0034】
表示パネル10における領域A2の構造について説明する。
図2(b)に示すように、領域A2では、TFT基板103上に絶縁膜105が形成されている。そして、絶縁膜105上には、電子輸送層115および陰極117が積層されている。なお、前述の陽極107、正孔注入層109、バンク111、発光層113は、領域A2のような表示パネル10の周部には形成されていない。ここで、電子輸送層115および陰極117の端部は、TFT基板103の端部よりも内側に位置している。そして、TFT基板103の配線126が、TFT基板103の主面に沿って延伸し絶縁膜105の外側に配設されたパッド部125に連続している。
【0035】
陰極117上には、封止部219が形成されている。封止部219の一部を構成する、第1バッファ層121、第1封止層123および第2バッファ層211は、陰極117全体および絶縁膜105上における陰極117で覆われていない部位を覆うように形成されている。第2封止層213の端部は、第2バッファ層211の端部よりも内側に位置している。
【0036】
<2>製造方法
次に、本実施の形態に係る表示パネル10の製造工程について説明する。
表示パネル10の製造工程は、(1)陽極を形成する工程(陽極形成工程)、(2)正孔注入層を形成する工程(正孔注入層形成工程)、(3)バンクを形成する工程(バンク形成工程)、(4)発光層を形成する工程(発光層形成工程)、(5)電子輸送層を形成する工程(電子輸送層形成工程)、(6)陰極を形成する工程(陰極形成工程)、そして、封止層を形成する工程と、を含む。封止層を形成する工程は、(7)還元性プラズマ処理工程(8)第1バッファ層を形成する工程(第1バッファ層形成工程)、(9)還元性プラズマ処理工程、(10)第1封止層を形成する工程(第1封止層形成工程)、(11)第2バッファ層を形成する工程(第2バッファ層形成工程)、(12)還元性プラズマ処理工程、(13)第2封止層を形成する工程(第2封止層形成工程)と、を含む。
【0037】
なお、表示パネルの製造工程は、上記の(1)陽極形成工程の前に、TFT基板103上に絶縁膜105が形成されてなる積層構造体を準備する工程を含む。積層構造体を準備する肯定は、具体的には、TFT基板103上に絶縁膜105を形成する工程と、絶縁膜105にTFT基板103の配線126と陽極107とを電気的に接続するためのコンタクトホール(図示せず)を形成する工程を含む。
【0038】
表示パネル10の製造工程を説明するための表示パネル10の部分断面図を
図3に示す。
図3では、表示パネル10における領域A2に対応する部分の断面図を示している。
表示パネル10の製造工程のうち、(1)陽極形成工程乃至(11)第2バッファ層形成工程まで終了すると、表示パネル10のうち第2封止層213以外の構成を有する構造体1010が生成される(
図3(a)参照)。
【0039】
以下、この構造体1010が生成された後、表示パネル10を完成させるために行う(13)第2封止層形成工程について詳細に説明する。
第2封止層形成工程では、原子層堆積法(以下、「ALD法」と称する。)を用いて、SiONからなる第2バッファ層211上の一部に酸化アルミニウムからなる第2封止層(薄膜)213を形成する。
【0040】
第2封止層形成工程は、第2バッファ層211の上方に、マスクを配置するマスク配置工程(第1工程)と、第2バッファ層211の上方にマスクを配置した状態で酸化アルミニウムをALD法を用いて成膜することにより第2封止層213を形成する成膜工程と、を含む。ここで、マスク配置工程では、マスク301を第2バッファ層211上のうち第2封止層213を形成する予定の部位(以下、「薄膜形成予定部位」と称する。)A213が露出するように配置する。
【0041】
図3(b)に示すように、第2バッファ層211の上方にマスク301を配置した状態で酸化アルミニウム膜1213を成膜していく。そして、酸化アルミニウム膜1213を所定の膜厚になるまで成膜するとマスク301を取り外す。こうして、表示パネル10が完成する(
図3(c)参照)。
次に、ALD法により成膜を行うための成膜装置について説明する。
【0042】
ALD法により成膜を行うための成膜装置の一例を示す模式図を
図4に示す。
成膜装置は、成膜室C10と、プラズマ生成室S10とを備える。
成膜室C10には、配管を介してターボ分子ポンプ等から構成された排気ポンプTMPが接続されており、成膜室C10内の気体は、この排気ポンプTMPにより成膜室C10外に排気することができる。また、成膜室C10内には、TMA原料が封入されたボトルBからTMAを導入することができるようになっている。成膜室C10、ボトルBおよびArガスソース間を接続する配管には、マスフローコントローラMFC1やバルブV11,V12,V13が介挿されている。
【0043】
ここで、バルブV11,V13を開き、バルブV12を閉じた状態にすると、ボトルBにArガスを導入することができる。そして、ボトルB内のTMA原料にキャリアガスとなるArガスを吐出すると、TMA原料がバブリングされ、ボトルBからバルブV13を通じて成膜室C10内にTMAが導入される。一方、バルブV11を閉じ、バルブV12,V13を開いた状態では、Arガスを直接成膜室C10内に導入することができる。Arガスの流量は、マスフローコントローラMFC1により調節することができる。また、ボトルB内の圧力は、圧力計Pにより検出することができ、TMAを成膜室C10内に導入する場合、ボトルB内の圧力が所望の圧力となるようにAr流量を調節する。
【0044】
また、成膜室C10内には、構造体1010を支持するための支持プレート311が配設されている。支持プレート311上には、構造体1010が支持プレート311の上面に沿って動くのを規制するためのホルダ313が設けられている。また、支持プレート311は、例えば、抵抗加熱式のホットプレートからなり、構造体1010を加熱することができる。また、支持プレート311は、成膜室C10の周壁とは絶縁されており、支持プレート311にはRF電源316が接続されている。このRF電源316は、プラズマ生成室S10で生成されたプラズマ状態の原子に対して、飛行方向を第2バッファ層211上の薄膜形成予定部位A213に交差する方向へ異方性を持たせるためのものである。このようなプラズマを異方性を有するプラズマと称する。
【0045】
成膜装置で使用されるホルダ313とマスク301の斜視図を
図5に示す。
ホルダ313は、矩形枠状に形成されており、内側の周部全体に亘って段部313aが形成されている。そして、成膜工程中は、ホルダ313の内側に構造体1010を配置した状態で、段部313aにマスク301が載置される。このとき、構造体1010の第2バッファ層211上における薄膜形成予定部位A213がマスク301の内側の窓部301aから成膜室C10内に露出した状態となる。
【0046】
プラズマ生成室S10の周囲には、RF電源315に接続されたアンテナANが設けられており、プラズマ生成室S10内には、酸素ガスや還元性ガスであるアンモニア(NH
3)ガスを導入することができる。プラズマ生成室S10およびアンモニアガスソース間を接続する配管には、マスフローコントローラMFC2およびバルブV2が介挿されている。また、プラズマ生成室S10および酸素ガスソース間を接続する配管には、マスフローコントローラMFC3およびバルブV3が介挿されている。ここで、バルブV2を開くと、プラズマ生成室S10内にアンモニアガスを導入することができ、バルブV3を開くと、プラズマ生成室S10内に酸素ガスを導入することができる。
【0047】
ここにおいて、プラズマ生成室S10とアンテナANとから、誘導結合型プラズマ源を構成している。RF電源315からアンテナANに高周波電流が流れている状態で、プラズマ生成室S10内に酸素ガスを導入することにより酸素プラズマを発生させることができる。また、プラズマ生成室S10内にNH
3ガスを導入した状態でRF電源315からアンテナANに高周波電流を流すことにより還元性プラズマであるNH2プラズマを発生させることができる。また、プラズマ生成室S10と成膜室C10との間には、シャッター314が設けられており、シャッター314を閉じることにより、プラズマ生成室S10から成膜室C10へのプラズマの侵入を遮断することができる。
【0048】
また、成膜装置の一部を構成する、バルブV11,V12,V13,V2,V3の開閉動作、マスフローコントローラMFC1,MFC2,MFC3の流量調節およびシャッター314の開閉動作は、制御装置317により制御されている。
次に、第2封止層形成工程における、前述の成膜装置を用いた成膜プロセスついて詳細に説明する。
【0049】
本実施の形態に係る表示パネル10の製造方法の一部を示すフローチャートを
図6に示す。また、本実施の形態に係る表示パネル10の製造工程の一部である第2封止層形成工程における成膜メカニズムを説明するための模式図を
図7および
図8に示す。ここでは、第2封止層形成工程のうち、マスク配置工程の後の成膜工程について説明する。
成膜工程は、薄膜形成予定部位A213に対して還元性プラズマ処理を行う第1還元性プラズマ処理工程(第2工程)と、還元性プラズマ処理工程の後、酸化アルミニウム(Al
2O
3)における酸素(O)以外の構成元素であるアルミニウム(Al)を含む酸化物前駆体であるトリメチルアルミニウム(TMA)に晒すTMA暴露工程(第3工程)と、TMA暴露工程の後、酸素ラジカルが分散された酸素プラズマ雰囲気に晒す酸素プラズマ処理工程(第4工程)と、酸素プラズマ処理工程の後、酸化アルミニウムからなる層に対して還元性プラズマ処理を行う第2還元性プラズマ処理工程(第5工程)とからなる。
【0050】
まず、成膜工程を開始すると、成膜装置の一部を制御する制御装置317が、自装置が有するカウンタ319のカウンタ値nを初期値「0」に設定する(ステップS1)。このとき、バルブV11,V12,V13,V2,V3は全て閉じた状態となっている。
次に、第1還元性プラズマ処理工程を行う(ステップS2)。
ここでは、制御装置317が、アンテナANに高周波電流が流れ且つ支持プレート311に高周波電圧が印加されている状態で、成膜装置のバルブV2を開くことにより、プラズマ生成室S10内に還元性プラズマであるNH
2プラズマが生成されるとともに、生成されたNH
2プラズマが第2バッファ層211表面に照射される。このNH
2プラズマは、薄膜形成予定部位A213に交差する方向に異方性を有する異方性プラズマである。このとき、SiONからなる第2バッファ層211上における薄膜形成予定部位A213には、酸素欠損が生じる(
図7(a)参照)。この酸素欠損が生じた箇所は、SiやNのダングリングが存在した状態となっており、化学的に活性化された状態となっている。また、NH
2プラズマの薄膜形成予定部位A213に対する進入角度が90°に近づくほど、第2バッファ層211上において、酸素欠損が生じた部位が薄膜形成予定部位A213の外側へのはみ出す量を小さくすることができる。
【0051】
続いて、TMA暴露工程を行う(ステップS3)。
ここでは、制御装置317が、成膜装置のバルブV11,V13が開き、バルブV12,V2およびシャッター314が閉じた状態にすることにより、成膜室C10内にTMAが導入され、第2バッファ層211上における薄膜形成予定部位A213がTMAに暴露される。このとき、第1還元性プラズマ処理工程において生じた第2バッファ層211表面の酸素欠損箇所に、TMAが吸着(化学吸着)される(
図7(b)参照)。ここにおいて、第2バッファ層211をTMAに暴露する時間(TMA暴露時間)は、例えば、0.05s程度に設定すればよい。そして、所定のTMA暴露時間が経過した後、制御装置317が、成膜装置のバルブV11が閉じ、バルブV12,V13が開いた状態にすることにより、成膜室C10内にArガスを導入して、成膜室C10内の余剰TMAおよびTMAの第2バッファ層211の表面への吸着に伴い生じた生成物を成膜室C10外に排出する。
【0052】
その後、酸素プラズマ処理工程を行う(ステップS4)。
ここでは、制御装置317が、成膜装置のバルブV3およびシャッター314を開き、バルブV12,V13を閉じることにより、プラズマ生成室S10内に酸素プラズマが生成される。そして、生成された酸素プラズマが第2バッファ層211表面に照射される。このとき、第2バッファ層211の表面に吸着したTMAが酸化される(
図7(c)参照)。そして、所定の時間が経過した後、制御装置317が、成膜装置のバルブV3およびシャッター314を閉じ、バルブV12,V13を開くことにより、成膜室C10内にArガスを導入して、成膜室C10内の余剰酸素およびTMAの酸化に伴い生じた生成物を成膜室C10外に排出する。
【0053】
次に、制御装置317が、自装置の有するカウンタ319のカウンタ値nが目標カウンタ値Kに到達したか否かを判定する(ステップS5)。この目標カウンタ値Kは、例えば、140に設定されている。
ステップS5において、制御装置317が、自装置の有するカウンタ319のカウンタ値nが目標カウンタ値Kに到達したと判定した場合(ステップS5:Yes)、成膜工程が終了する。
【0054】
一方、ステップS5において、制御装置317が、自装置の有するカウンタ319のカウンタ値nが目標カウンタ値Kに到達していないと判定した場合(ステップS5:No)、第2還元性プラズマ処理工程を行う(ステップS6)。
ここでは、制御装置317が、RF電源315からアンテナANに高周波電流が流れ且つ支持プレート311に高周波電圧が印加されている状態で、成膜装置のバルブV2を開く。すると、プラズマ生成室S10内に還元性プラズマであるNH2プラズマが生成されるとともに、生成されたNH2プラズマが酸化アルミニウム膜1213表面に照射される。このとき、酸化アルミニウム膜1213の表面には、酸素欠損が生じる(
図8(a)参照)。
【0055】
続いて、制御装置317は、自装置の有するカウンタ319のカウンタ値nを1だけインクリメントする(ステップS7)。
その後、再び、TMA暴露工程を行う(ステップS3)。このとき、酸化アルミニウム膜1213の表面に形成された酸素欠損箇所にTMAが吸着される(
図8(b)参照)。
続いて、酸素プラズマ処理工程を行う(ステップS4)。このとき、酸化アルミニウム膜1213の表面に吸着したTMAが酸化される(
図8(c)参照)。
【0056】
以上に説明したように、成膜工程では、第1還元性プラズマ処理工程の後、制御装置317が有するカウンタ値nが目標カウンタ値Kに到達するまでの間、TMA暴露工程から第2還元性プラズマ処理工程を繰り返す。
次に、本実施の形態に係る薄膜製造方法を採用した場合における、膜回り込みについて比較例と対比しながら説明する。
【0057】
比較例に係る薄膜製造方法を採用した場合における、成膜工程中の表示パネル10の領域A2の様子を
図9に示し、本実施の形態に係る薄膜製造方法を採用した場合における、成膜工程中の表示パネル10の領域A2の様子を
図10に示す。
まず、比較例に係る薄膜製造方法について説明する。
比較例に係る薄膜製造方法は、本実施の形態に係る薄膜製造方法と略同様であり、NH2プラズマ等を用いた還元性プラズマ処理工程が存在しない点が本実施の形態に係る薄膜製造方法とは相違する。
【0058】
図9(a)に示すように、比較例に係る薄膜製造方法では、TMA暴露工程において、TMAが表示パネルとマスクとの間の隙間に侵入してしまう。そのため、薄膜形成予定部位A213を大きく越えてTMAが吸着されてしまう。
その後、
図9(b)に示すように、酸素プラズマ処理工程において、パッド部125や第2バッファ層211の表面に吸着したTMAの一部が酸化される。薄膜形成予定部位A213を越えてTMAが吸着されると、第2封止層の大きさが設計値よりも大きくなってしまう。
【0059】
また、マスク301の端部から第2バッファ層211の端部までの距離を距離W10とした場合、TMAが、マスクの端縁から当該マスクの端縁よりも距離W10よりも長い距離W0だけ奥側の位置に至る部分まで侵入すると、当該部分に存在するパッド部125および第2バッファ層211の表面にTMAが吸着される。この場合、パッド部125や第2バッファ層211の表面の一部が酸化アルミニウム膜1213で被覆される。
【0060】
また、パッド部125や第2バッファ層211の表面に吸着したTMAのうち、酸素プラズマ処理工程において酸化されなかったTMAはそのまま残存する。例えば、マスク301の端縁から当該マスク301の端縁よりも距離W1だけ奥側の位置に至る部分まで酸化アルミニウム膜1213が形成され、更に、距離W2だけ奥側の位置に至る部分にTMAからなるコンタミネーション層1214が形成される。
【0061】
次に、本実施の形態に係る薄膜製造方法について説明する。
第1還元性プラズマ処理工程において、第2バッファ層211上における、薄膜形成予定部位A213に酸素欠損が生じる。
図10(a)に示すように、例えば、マスク301の端縁部からマスク301と第2バッファ層211の隙間に距離Wだけ入り込んだ部位まで酸素欠損が生じる。ここで、NH
2プラズマの薄膜形成予定部位A213への侵入角度を90°に近づければ、それだけ、距離Wを短くすることができる。
【0062】
その後、
図10(b)に示すように、TMA暴露工程において、第2バッファ層211上における、酸素欠損が生じた部位に、TMAが吸着する。ここで、薄膜形成予定部位A213には、酸素欠損が生じているため、TMAが薄膜形成予定部位A213に吸着され易くなっている。従って、薄膜形成予定部位A213へのTMAの供給量を低減しても薄膜形成予定部位A213全体に亘ってTMAを比較的斑なく吸着させることができる。例えば、比較例に係る薄膜製造方法の場合、TMA暴露工程において薄膜形成予定部位A213に斑なくTMAを吸着させるために必要なTMA導入量をCとする。すると、本実施の形態に係る薄膜製造方法の場合、TMA暴露工程において薄膜形成予定部位A213に斑なくTMAを吸着させるために必要なTMA導入量は、比較例におけるTMA導入量よりも少なく、例えば半分のC/2で十分である。例えば、比較例に係る薄膜製造方法の場合、必要なTMA導入量が1mgとすれば、本実施の形態に係る薄膜製造方法の場合、必要なTMA導入量を0.5mgで十分である。このように、TMAの消費量を抑えることができる結果、成膜装置において、ボトルBにTMAを補充したり、或いは、TMAが充填されたボトルBを新しいものに交換する等のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0063】
そして、TMA暴露工程における、TMAの導入量を比較例に比べて低減でき、薄膜形成予定部位A213外周部のマスク301と第2バッファ層211との隙間へのTMAの侵入を抑制できる。実際、比較例における距離W10の長さが5mmとすると、本実施の形態に係る距離Wの長さは、約2.5mm程度に低減することができる。つまり、第2バッファ層211上の薄膜形成予定部位A213以外の部位に薄膜が形成されてしまうこと(いわゆる膜の回り込み)が抑制される。
【0064】
ところで、本実施の形態に係る成膜装置では、成膜室C10内への単位時間当たりのTMA流入量は一定である。従って、必要なTMA導入量が少なくなれば、その分、TMA暴露工程に要する時間も短縮することができる。例えば、必要なTMA導入量が半分になれば、TMA暴露工程に要する時間も約半分にすることができると推測できる。TMA暴露工程に要する時間を短縮できれば、成膜工程に要する時間全体の短縮に繋がるので、薄膜製造工程におけるスループットの向上を図ることができる。
【0065】
また、TMA暴露工程では、第2バッファ層211上の薄膜形成予定部位A213に供給されたTMAのほとんどが第2バッファ層211表面の酸素欠損箇所に吸着される。これにより、TMAのマスク301と第2バッファ層211との間の隙間への侵入距離は、酸素欠損が生じた部位、即ち、マスク301の端縁部からマスク301と第2バッファ層211の隙間に距離Wだけ入り込んだ部位に略等しくなっている。そのため、酸化物が形成される領域が、薄膜形成予定部位A213よりも増加する領域の大きさを、比較例よりも抑制することができる。
【0066】
また、距離Wが、マスク301の端部から第2バッファ層211の端部までの距離W10よりも小さい場合は、TMAは、構造体1010周部に位置するパッド部125表面には、吸着されない。
その後、
図10(c)に示すように、酸素プラズマ処理工程において、第2バッファ層211上に吸着したTMAが酸化されることにより、厚みが略一原子層分の酸化アルミニウム膜1213が形成される。ここで、距離Wがマスク301の端部から第2バッファ層211の端部までの距離W10よりも小さい場合、パッド部125表面には酸化アルミニウム膜1213が形成されない。
【0067】
ここで、比較例に係る薄膜製造方法を用いて製造された表示パネル10の部分断面図を
図11(a)に示し、本実施の形態に係る薄膜製造方法を用いて製造された表示パネル10の部分断面図を
図11(b)に示す。
図11(a)および(b)に示すように、パッド部125は、外部の駆動装置から導出したフレキシブル配線板501に電気的に接続される。フレキシブル配線基板501は、フレキシブル性を有した配線基板本体501aと、配線基板本体501aの下面に設けられた配線端子501bとを有する。ここで、配線端子501bは、複数設けられており、複数のパッド部125それぞれに対応している。そして、表示パネル10のTFT基板103とフレキシブル配線基板501とは、導電性粒子が分散した接着層502により接合されている。ここにおいて、パッド部125と配線端子501bとが、接着層502中に含まれる導電性粒子(図示せず)が介在した箇所を介して互いに電気的に接続されている。
【0068】
図11(a)に示すように、比較例に係る薄膜製造方法を採用して製造された表示パネル10の場合、フレキシブル配線基板501の配線端子501bとパッド部125表面との間に、酸化アルミニウム膜1213やコンタミネーション層1214が介在している場合には、配線端子501bとパッド部125との接合部分で電気的接続不良が生じてしまうことがある。
【0069】
これに対して、
図11(b)に示すように、本実施の形態に係る薄膜製造方法を採用して製造された表示パネル10の場合、パッド部125上に酸化アルミニウム膜1213やコンタミネーション層1214が形成されにくく、配線端子502bとパッド部125との接合部分の電気的接続を良好にすることができる。
ところで、
図3(b)に示すように、成膜工程中、マスク301の第2バッファ層211側とは反対側の面には、酸化アルミニウム膜303が形成される。この酸化アルミニウム膜303は、第2還元性プラズマ処理工程後、表面に酸素欠損が生じる。この表面に酸素欠損が生じた酸化アルミニウム膜303は、TMA暴露工程において、TMAを吸着する吸着層として機能する。このように、マスク301に形成された酸化アルミニウム膜303が、吸着層として機能することにより、TMA暴露工程におけるチャンバー内を浮遊する余剰TMA量が減少し、TMAがマスク301と第2バッファ層211との間の隙間へ侵入する現象が抑制される。
【0070】
<3>まとめ
結局、本実施の形態に係る薄膜製造方法は、第1還元性プラズマ処理工程を有することにより、薄膜形成予定部位A213に酸素欠損を生じさせ、その状態で、TMA暴露工程において、薄膜形成予定部位A213をTMAに晒す。薄膜形成予定部位A213に酸素欠損が生じているため、TMA暴露工程において、TMAが薄膜形成予定部位A213に吸着され易くなっている。従って、第1還元性プラズマ処理工程において、マスク301と第2バッファ層211との間へのNH
2プラズマの侵入を抑制すれば、TMAの第2バッファ層211とマスク301との間の隙間へのTMAの侵入を抑制でき、TMAを略薄膜形成予定部位A213のみに吸着させることとなる。これにより、従来のようなマスク301と第2バッファ層211との間、即ち、第2バッファ層211上の薄膜形成予定部位A211以外の部位にAl
2O
3からなる薄膜やTMAからなる層が形成されてしまうこと(いわゆる膜の回り込み)を抑制できる。
【0071】
ところで、膜の回り込みを考慮して、第2バッファ層211の周部におけるマスク301で覆われる部位の大きさを大きくすることが考えられる。
一方、第2バッファ層211の周部におけるマスク301により覆われる部位は、第2封止層213の膜厚を制御することができないため、封止性を確保することが困難である。従って、発光層113を設けることができる部位は、第2バッファ層211におけるマスク301で覆われない部位、即ち、第2バッファ層211におけるマスク301の窓部301aに対応する部位内に制限されてしまう。
【0072】
従って、第2バッファ層211の周部におけるマスク301により覆われる部位を大きくすると、その分、発光層113を設けることができる部位、即ち、表示パネル10の表示領域の大きさが小さくなる。すると、表示パネル10全体の大きさを変えずに表示領域の大きさだけを拡大したいという要請に応じることが困難になる。
これに対して、本実施の形態に係る薄膜製造方法を採用すれば、膜の回り込みを抑制することができるので、その分、第2バッファ層211の周部におけるマスク301により覆われる部位を小さくすることができる。そして、第2バッファ層211の周部におけるマスク301により覆われる部位を小さくすれば、その分、表示パネル10における表示領域を拡大することができる。
【0073】
<実施の形態2>
本実施の形態に係るTFT基板2010の構成について説明する。
本実施の形態に係るTFT基板2010の斜視図を
図12に示す。また、
図12に示したTFT基板2010について、
図12の領域A21の断面図を
図13(a)に示し、
図12の領域A22の断面図を
図13(b)に示す。
【0074】
TFT基板2010は、平面視矩形状に形成されている。このTFT基板2010は、基板本体2103と、基板本体2103上に形成された複数のTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)からなる。また、TFT基板2010の外周部には、TFT基板2010の各辺に沿ってTFTを駆動するための駆動回路が配置される。そして、TFT基板2010の周部には、表示パネル2010の外周部に配置された駆動回路に接続するための複数のパッド部2125が配設されている。
【0075】
TFT基板2010における領域A21の構造について説明する。
図13(a)に示すように、領域A21では、基板本体2103上に、ゲート電極2106が形成されている。ゲート電極2106は、例えば、モリブデン(Mo)等から形成されている。
基板本体2103上におけるゲート電極2106が形成されていない領域およびゲート電極2106上には、ゲート絶縁膜2105が形成されている。即ち、ゲート絶縁膜2105は、基板本体2103上にゲート電極2106を覆うように形成されている。ゲート絶縁膜2105は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)あるいは酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の化合物から形成されている。
【0076】
ゲート絶縁膜2105上における、ゲート電極2106の上方を含む領域には、半導体層2407が形成されている。半導体層2407は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)等を含む酸化物半導体から形成されている。
半導体層2407上には、半導体層2407の一部を覆うようにドレイン電極2403およびソース電極2405が配置されている。ドレイン電極2403およびソース電極2405は、例えば、モリブデンやクロム(Cr)或いはチタン(Ti)/アルミニウム(Al)/チタンの積層構造から形成されている。
【0077】
ここにおいて、ゲート電極2106、ゲート絶縁膜2105、半導体層2407、ドレイン電極2403およびソース電極2405からTFTを有する。
ドレイン電極2403およびソース電極2405上と、半導体層2407上におけるドレイン電極2403およびソース電極2405に覆われていない領域と、ゲート絶縁膜2105上における、ドレイン電極2403、ソース電極2405および半導体層2407
に覆われていない領域には、バッファ層(第1酸化物層)2113が形成されている。即ち、バッファ層2113は、TFTおよび基板本体2103上におけるTFTが形成されていない部位の上方を覆うように形成されている。バッファ層2113は、酸窒化シリコン(SiON)からなる。なお、バッファ層2113を形成する材料としては、例えば、炭素含有酸化シリコン(SiOC)、酸窒素アルミニウム(Al
XO
YN
Z)等の化合物であってもよい。
【0078】
バッファ層2113上には、封止層2115が形成されている。封止層2115は、窒化シリコン(SiN)からなる化合物層である。なお、封止層123を構成する材料は、例えば、炭化ケイ素(SiC),窒化アルミニウム(AlN)等の化合物であってもよい。
次に、TFT基板2010における領域A22の構造について説明する。
【0079】
図13(b)に示すように、領域A22では、基板本体2103上に、ゲート絶縁膜2105、バッファ層2113および封止層2115が積層されている。
領域A22を含むTFT基板2010の周部には、TFTが形成されていない。また、ゲート絶縁膜2105の端部は、基板本体2103の端部よりも内側に位置している。そして、基板本体2103上に形成された配線2126が、基板本体2103の主面に沿って延伸しバッファ層2113の外側に配設されたパッド部2125に連続している。
【0080】
バッファ層2113は、TFTおよび基板本体2103上におけるTFTが形成されていない部位の上方を覆うように形成されている。そして、基板本体2103の主面に平行な面内において、封止層2115の端部は、バッファ層2113の端部よりも内側に位置している。
次に、本実施の形態に係るTFT基板2010の製造工程について説明する。
【0081】
TFT基板2010の製造工程は、(1)ゲート電極を形成する工程(ゲート電極形成工程)、(2)ゲート絶縁膜を形成する工程(ゲート絶縁膜形成工程)、(3)半導体層を形成する工程(半導体層形成工程)、(4)ドレイン電極およびソーズ電極を形成する工程(電極形成工程)、(5)バッファ層を形成する工程(バッファ層形成工程)、(6)封止層を形成する工程(封止層形成工程)を有する。
【0082】
TFT基板2010の製造工程を説明するためのTFT基板2010の断面図を
図14に示す。
図14では、TFT基板2010における領域A22に対応する部分の断面図を示している。
TFT基板2010の製造工程のうち、(1)ゲート電極形成工程乃至(5)バッファ層形成工程まで終了すると、TFT基板2010から封止層2115を除いた構成を有する構造体3010が生成される(
図14(a)参照)。
【0083】
以下、この構造体3010が生成された後、TFT基板2010を完成させるために行う(13)封止層形成工程について詳細に説明する。
封止層形成工程では、ALD法を用いて、SiONからなるバッファ層2113上の一部に酸化アルミニウムからなる封止層(薄膜)2115を形成する。
封止層形成工程は、バッファ層2113の上方に、マスク301を配置するマスク配置工程(第1工程)と、バッファ層2113の上方にマスク301を配置した状態で酸化アルミニウムをALD法を用いて成膜することにより封止層2115を形成する成膜工程とからなる。ここで、マスク配置工程では、マスク301をバッファ層2113上のうち封止層2115を形成する予定の部位(以下、「薄膜形成予定部位」と称する。)A2115が露出するように配置する。
【0084】
図14(b)に示すように、バッファ層2113の上方にマスク301を配置した状態で酸化アルミニウム膜12115を成膜していく。そして、酸化アルミニウム膜12115を所定の膜厚になるまで成膜するとマスク301を取り外す。こうして、TFT基板2010が完成する(
図14(c)参照)。
上記成膜工程は、実施の形態1と同様に、薄膜形成予定部位A2115に対して還元性プラズマ処理を行う第1還元性プラズマ処理工程(第2工程)と、還元性プラズマ処理工程の後、酸化アルミニウム(Al
2O
3)における酸素(O)以外の構成元素であるアルミニウム(Al)を含む酸化物前駆体であるトリメチルアルミニウム(TMA)に晒すTMA暴露工程(第3工程)と、TMA暴露工程の後、酸素ラジカルが分散された酸素プラズマ雰囲気に晒す酸素プラズマ処理工程(第4工程)と、酸素プラズマ処理工程の後、酸化アルミニウムからなる層に対して還元性プラズマ処理を行う第2還元性プラズマ処理工程(第5工程)とからなる。各工程は、実施の形態1と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0085】
本実施の形態では、第1還元性プラズマ処理工程を有することにより、薄膜形成予定部位A2115に酸素欠損を生じさせ、その状態で、TMA暴露工程において、薄膜形成予定部位A2115をTMAに晒す。薄膜形成予定部位A2115に酸素欠損が生じているため、TMA暴露工程において、TMAが薄膜形成予定部位A2115に吸着され易くなっている。そのため、TMAの供給量を低減でき、薄膜形成予定部位A2115外周部のマスク301とバッファ層2113との隙間へのTMAの侵入を抑制できる。これにより、バッファ層2113上の薄膜形成予定部位A2115以外の部位に薄膜が形成されてしまうこと(いわゆる膜の回り込み)を抑制できる。
【0086】
<変形例>
(1)実施の形態1では、酸素プラズマ処理を含む薄膜製造方法について説明したが、例えば、酸素プラズマ処理の変わりに薄膜形成予定部位A213を水蒸気(H
2O)に晒す工程を設けてもよい。
(2)実施の形態1では、第2封止層213が、第2バッファ層211上における発光層113の上方を含む部位を覆うように形成された例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2封止層213が、第2バッファ層211上における、発光層113の内周部の一部を除く部位の上方を覆うように形成されているものであってもよい。つまり、第2封止層213が、第2バッファ層211上における発光層113の上方の一部を覆っていないものであってもよい。
【0087】
本変形例に係る表示パネル4010の要部平面図を
図15に示す。
表示パネル4010は、実施の形態1に係る表示パネル10と略同様の構成を有する。
図15は、表示パネル4010について、
図1における領域A1に対応する部分の部分平面図を示したものである。
図15に示すように、第2封止層213における、発光層113の内周部の一部に対応する部位に、窓部4213aが形成されている。そして、この窓部4213aから第2バッファ層211が露出している。
【0088】
本構成によれば、表示パネル4010の完成品について、例えば、発光層113からの光取り出し効率が極端に低い不良品が発生した場合、その原因が第2封止層形成工程にあるのか、或いは、第2封止層形成工程よりも前の工程にあるのかを切り分けることが容易になる。従って、不良原因の早期発見を図ることができる。
(3)実施の形態1では、発光機能層が、金属酸化物からなる正孔注入層109と、有機材料からなる発光層113と、有機材料からなる電子輸送層115の3層構造からなる例について説明したが、この構造に限定されるものではなく、例えば、発光機能層が、化合物半導体等の無機材料からなるものであってもよい。
【0089】
(4)実施の形態1では、第2封止層形成工程で用いる成膜装置が、プラズマ源として誘導結合型プラズマ源を用いる例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、プラズマ源として、容量結合型プラズマ源や表面波プラズマ源、電子サイクロトン共鳴プラズマ源、ヘリコン波励起プラズマ源、マイクロ波励起表面波プラズマ源等を用いるものであってもよい。