(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材と、を有してなる高強力繊維束が複数本引きそろえて束ねられ、当該複数本の高強力繊維束が固化剤によって一体化されてなる高強力繊維線材と、当該高強力繊維線材の外周を覆うように配置された繊維材料からなる筒状体とが固化剤で一体化されてなる、複層構造を有する高強力繊維線材。
高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材と、を有してなる高強力繊維束が複数本引きそろえて束ねられ、その外周を覆うように配置された繊維材料からなる筒状体が、前記複数本の高強力繊維束と固化剤で一体化されてなり、複層構造を有することを特徴とする高強力繊維線材。
高強力繊維線材の少なくとも一方の端部が定着治具の胴部内に挿入され、当該高強力繊維線材の端部と定着治具の胴部とを接着固定することにより、当該高強力繊維線材と定着治具とを一体化してなる請求項13記載の複合材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、高強力繊維線材は、炭素繊維糸などの高強力繊維糸を束ねた芯線を使用した場合においても、高強力繊維糸本来の優れた特徴を十分に活用できていない場合があり、改善の余地が残されていた。
かかる状況下、本発明の目的は、高強力繊維糸本来の引張強度を確実に得ることが可能な炭素繊維糸などの高強力繊維糸を束ねた芯線を備えた高強力繊維線材及びその応用品を提供することである。また、本発明の他の目的は、該高強力繊維線材を有してなる複合材及びその応用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る第1の発明は、高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材と、を有してなる高強力繊維束からなる高強力繊維線材である。
【0009】
このような構成において、拘束材によって芯線の周囲を巻き回して結束されているため、外部から強い力がかかっても、芯線を構成する高強力繊維糸がねじれたり、交絡したり、バラけたりするのが抑制され、高強力繊維束本来の引張強度を十分に保つことができる。
【0010】
また、上記高強力繊維線材において、前記芯線が固化剤によって固化されてなることが好ましい。より好ましくは、前記芯線と前記拘束材とが固化剤によって一体化されているとよい。使用できる固化剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。また、高強力繊維糸と親和性の高い固化剤とすることが望ましい。固化剤の詳細は実施形態にて後述する。
拘束材のみで芯線の結束を行うと、高強力繊維線材の製造時や輸送時、ブレースとしての施工時などに一部の高強力繊維糸がねじれたり、交絡したり、一部が飛び出したりして、バラける場合があるが、固化剤によって結合することによって、これらのことが防止される。
【0011】
また、本願に係る第2の発明は、高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材と、を有してなる高強力繊維束が複数本引きそろえて束ねられ、当該複数本の高強力繊維束が固化剤によって一体化されてなる高強力繊維線材である。
本形態では、上述の第1の形態の高強力繊維束を複数本引きそろえた状態で束ねて、かつ、高強力繊維束を固化剤によって一体化することによって、それぞれの高強力強力繊維束の強度を保ったまま、より太い高強力繊維線材とすることができる。また、本形態でも、複数本の高強力繊維束を束ねる前に、上述の第1の形態と同様に芯線を固化剤によって固化することが好ましい。
また、多量の高強力繊維糸を束ね一本の芯線とした場合よりも、同様の高強力繊維糸を複数に分けて芯線とし、それぞれを拘束材で結束した高強力繊維束を複数本引きそろえて束ね、当該複数本の高強力繊維束を固化剤によって一体化したものの方が、高強力繊維束を引きそろえて、固化剤によって一体化しているので、それぞれの高強力繊維束がねじれたり、交絡したりしないため、高強力繊維線材の強度が安定する。
【0012】
さらに、高強力繊維線材の末端部に定着治具を固定する場合も、高強力繊維糸を拘束材で束ねた高強力繊維束単位にして定着治具を固定すれば、(高強力繊維束を形成せずに)高強力繊維糸をそれぞれにバラしたものよりも、定着治具が安定して高強力繊維線材に固定できる。
【0013】
また、前記芯線の表面の少なくとも一部が、前記拘束材によって被覆されず露出した状態であることが好ましい。
この芯線の露出面は、本発明の高強力繊維線材を他の部材と接合させる場合において、他部材と接着させるときの接着面として機能させることができる。
また、固化剤を使用する場合において、芯線の表面を露出させることにより、固化剤が芯線の内部に浸透しやすくなる。さらに芯線と拘束材により高強力繊維線材の表面に凹凸が形成されるため、高強力繊維線材に引張力がかかったとき、芯線・拘束材・固化剤それぞれでのずれ(すべり)が抑制される。
【0014】
本願に係る第1、第2の発明において、定着治具との接着性をより高めることができるため、前記芯線が固化剤によって固化されてなり、かつ、前記拘束材による前記芯線の被覆率が70%超とすることが好ましい。また、前記芯線が、撚りがかかっていない炭素繊維糸を主体とし、且つ、該炭素繊維糸の繊維方向を合わせ交絡させずに束ねられたものであることが好ましい。また、前記芯線と前記拘束材とが固化剤によって一体化されているとよい。
【0015】
さらに、本願に係る第3の発明は、複層構造を有する高強力繊維線材に関する。
そのひとつの形態としては、上述の第1、第2の発明に係る高強力繊維線材と、当該高強力繊維線材の外周を覆うように配置された繊維材料からなる筒状体とが固化剤で一体化されてなる複層構造を有する高強力繊維線材が挙げられる。
上述の第1、第2の発明に係る高強力繊維線材のように高強力繊維がむき出しの状態であると、高強力繊維束の露出面に外部から鋭利物が接触した場合に高強力繊維糸が切断され、芯線の強度が低下するおそれがある。ここで、繊維材料からなる筒状体を外層として設けた複層構造を有する高強力繊維線材とすることで、外部から鋭利物や応力から保護することができる。なお、前記筒状体は、繊維を編み上げた編状構造又は組み上げた組紐構造を有する構造であることが好ましい。
【0016】
また、第3の発明に係る複層構造を有する高強力繊維線材の別形態として、複層構造を有する高強力繊維線材として、高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材と、を有してなる高強力繊維束が複数本引きそろえて束ねられ、その外周を覆うように配置された繊維材料からなる筒状体が、前記複数本の高強力繊維束と固化剤で一体化されてなる複層構造を有する高強力繊維線材が挙げられる。
【0017】
第3の発明に係る高強力繊維線材の末端部に定着治具を結合(接着固定)する場合に、定着治具との結合性を高めることができるため、少なくとも一方の末端部に、筒状体が取り除かれた複数本の高強力繊維束からなる露出部を有することが好ましい。なお、両端に定着治具を結合させる場合には、両方の末端部を露出部とすることが好ましい。
特に定着治具との結合性をより高めるために、前記露出部における複数本の高強力繊維束が、繊維方向に複数に分割されていることが好ましい。ここでいう「繊維方向」とは得られる高強力繊維線材の長さ方向をいう。露出部における複数本の高強力繊維束の分割は高強力繊維束自体を破壊して高強力繊維糸がばらけないように、高強力繊維束単位で行われる。
【0018】
分割させる好適な形態の一つは、高強力繊維束単位に1束ずつにバラされている、いわゆる茶筅状の形態である。このような形態では、定着治具との接着に使用される接着剤との接触面積が特に大きくなる利点がある。茶筅状の端部は、例えば、露出部における複数本の高強力繊維束を、溶剤にて固化材を溶解させることで得ることができる。
【0019】
一方、上記茶筅状の形態では、有機溶剤を使用する必要があり、有機溶剤が高強力繊維束に残留し引張強度にばらつきが生じるおそれがある。
そのため、引張強度と接着力とのバランスから露出部における複数本の高強力繊維束が、繊維方向に3以上に分割されている、いわゆる竹割状の形態も好ましい形態の一つである。竹割状の端部は、例えば、露出部における複数本の高強力繊維束を加熱して固化剤を軟化させ、適当な数に引き裂くことで得ることができる。高強力繊維束の向きがそろったまま分割した竹割状の形態では、上記茶筅状における引張強度のばらつきの問題を回避することができる。また、竹割状とすることで定着治具との接着に使用される接着剤との接触面積が大きくなるため、分割していない場合と比較して接着力が向上する。
なお、分割させる上限は、露出部の高強力繊維束の本数となる。
【0020】
第3の発明において、前記筒状体が、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維及びポリアセタール繊維から選ばれる1種以上で構成されていることが好ましい。前記筒状体が、これらの繊維で構成されていると、第3の発明に係る複層構造を有する高強力繊維線材における外層として、充分な強度を有するのみならず、アルカリなどに対する高い耐薬品性又は寸法安定性を有するためである。
【0021】
なお、上記第1、第2及び第3の発明(第3の発明の別形態含む)に係る高強力繊維線材を総称して、以下、「本発明の高強力繊維線材」と称す場合がある。
【0022】
上記本発明の高強力繊維線材において、前記高強力繊維束が、撚りがかかっていない炭素繊維糸を主体とし、且つ、該炭素繊維糸の繊維方向を合わせ交絡させずに束ねられたものであることが好ましい。ここで、「(高強力繊維束が)炭素繊維糸を主体」とは、高強力繊維束を構成する高強力繊維糸のうち、80%以上、好ましくは95%以上(100%含む)が、炭素繊維糸であることをいい、「繊維方向」とは、上述のように得られる高強力繊維線材の長さ方向をいう。また、「撚りがかかっていない」とは、10回/m未満程度の撚り回数のものをいう。好ましくは5回/m未満、より好ましくは3回/未満、さらに好ましくは0回/mである。
炭素繊維糸は、引張強度が強いが、剪断強度が弱く切れやすい。本発明の高強力繊維線材では、上述のように、高強力繊維糸(炭素繊維糸)がねじれにくく、交絡しにくく、バラけにくいため、炭素繊維本来の強度を確保しやすい。
【0023】
本発明の高強力繊維線材は、高強力繊維に由来する強度を有し、軽量で引張強度に優れ、様々な用途に使用することができる。
好適な用途として、鉄筋の代替物となる筋材や、PC鋼線代替物として緊張材、ワイヤー、鎖の代替物、ロッド等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の複合材は、上記第1、第2及び第3の発明(第3の発明の別形態含む)に係る高強力繊維線材を有してなるものであり、任意の部材と複合化されたものである。
好適な複合材の例として、高強力繊維線材の少なくとも一方の端部が定着治具の胴部内に挿入され、当該高強力繊維線材の端部と定着治具の胴部とを接着固定することにより、当該高強力繊維線材と定着治具とを一体化してなる複合材が挙げられる。なお、本発明の複合材に好適な定着治具として、本発明者等により特願2012−82440号にて開示された定着治具が挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高強力繊維糸本来の引張強度を得ることが可能な炭素繊維糸などの高強力繊維糸を束ねた芯線を備えた高強力繊維線材が提供される。本発明の高強力繊維線材は、高強力繊維に由来する強度を有し、軽量で引張強度に優れた複合材として様々な用途に使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る高強力繊維線材の実施形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。また、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0028】
(実施の形態1)
図1に示す高強力繊維線材1aは、芯線2と、拘束材3aとからなる高強力繊維束5により構成されている。
芯線2は、高強力繊維糸4を、複数本(通常、数千本から数万本)束ねてなる断面が円形状または扁平状の糸状体である。
高強力繊維糸4は、スーパー繊維とも称される繊維が使用できる。高強力繊維糸4としては、例えば、炭素繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリビニルアルコール(PVA繊維)などが使用できる。
芯線2は、上記高強力繊維糸を1種類で用いたり、2種類以上を混合させたり、その他有機繊維からなる糸をその強度や曲げ性が損なわれない範囲で混合したりしたものでもよい。
なお、芯線2は、芯線2の周囲面が接着面として機能することを阻害しない程度にサイジング剤や集束剤を含浸させてもよい。
【0029】
この芯線2を構成する高強力繊維糸4が、特に、炭素繊維糸やバサルト繊維糸であれば、撚りがあると引張強度が低下するので、高強力繊維糸(フィラメント)に撚りを掛けず、また高強力繊維束全体にも撚りを掛けていないことで、実質的に無撚糸と同等の状態としたものであることが好ましい。なお、芯線2を結束する拘束材3aには撚りが掛かっていても、掛かっていなくてもよい。
芯線2となる、撚りが掛かっていない高強力繊維糸の束を得るためには、紡糸の段階より高強力繊維糸に撚りが掛からないよう引き揃えたものや、10回/m未満程度の撚りをかけたもの等を用いる。
【0030】
芯線2を構成する高強力繊維糸4が炭素繊維糸であれば、PAN系、ピッチ系のいずれの炭素繊維糸も使用できる。この中でも、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維糸が好ましい。
また、この炭素繊維糸を束ねた炭素繊維束は、炭素繊維メーカーから供給される炭素繊維糸6000本(6K)、12000本(12K)、24000本(24K)等を、必要とされる強度に応じて1本、または複数本束ねたものを用いることができる。なお、炭素繊維束を複数本束ねる場合には、必要本数の高強力繊維糸4をクリールから引き出し、それらを束ねて芯線2とする。
【0031】
拘束材3aは、芯線2を周囲面から高強力繊維糸4がばらばらにならないように結束するものである。
本実施形態においては、
図1に示すように、拘束材3aとなる繊維を巻き回して、目の粗い筒状の組紐(丸打)を組むことで、組紐状の拘束材3aを形成しているが、拘束材の配置はこれに限定されない。
拘束材は、芯線2を構成する高強力繊維糸4がばらばらにならないように結束できればよいので、例えば、1本の拘束材を螺旋状に巻きつけて芯線を結束したり(図示せず)、
図2に示すように、芯線2の周囲面に拘束材3bとなる繊維を巻き回して目の粗い筒状の丸編を編んだ編紐状の拘束材3bによって芯線2を結束したり、
図3に示すように、高強力繊維線材1cの芯線2を結束するための拘束材として、拘束材3aで挙げられている繊維等を所定間隔に配置した拘束材3cによって芯線2を結束する形態であってもよい。
【0032】
図1に示す拘束材3aを形成するためには、芯線2を製紐機の中央に通し、製紐機により芯線2の周囲面に拘束材3aにより目の粗い組物を形成すればよい。そうすることで、組紐状の拘束材3aが芯線2の周囲面に形成されて、芯線2がばらばらにならないように結束され、長尺状の高強力繊維線材1aとなり、ドラムなどに巻き取ることができる。高強力繊維線材1aは柔軟な芯線2を拘束材3aで結束しただけなので、ドラム等に容易に巻き付けることができる。従って、移動や保管が容易である。
【0033】
拘束材としては、柔軟なものが好ましく、ポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の合成繊維や、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、絹、羊毛、麻、綿などの天然繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等が使用できる。
拘束材が、
図1の組紐(丸打)である場合には、拘束材3aは、芯線2の長さ方向に対して0.5mm〜30cmのピッチで交差させるとよく、特に、0.1cm〜10cmがより好ましい。
【0034】
なお、芯線2においては、サイジング剤や集束剤を含浸させて結束することの他に、高強力繊維糸4をより強固に結束するために、芯線2を構成する高強力繊維糸4の少なくとも一部を固化剤によって結合させてもよい。
特に拘束材により結束した芯線に固化剤を含浸させ、拘束材と共に芯線を硬化させることが好ましい。そうすることで、芯線および拘束材を強固に一体化させ棒状体とすることができる。
この場合には、高強力繊維線材を数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことができる。
芯線2を強固に一体化させた高強力繊維線材であれば、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなどに、型崩れしないため容易に配置することができる。
【0035】
使用できる固化剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。また、高強力繊維糸と親和性の高い固化剤とすることが望ましい。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂などが挙げられるが、これに制限されない。
【0036】
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。
【0037】
芯線2への上述の樹脂(固化剤)のコートする方法は、スプレーや刷毛で高強力繊維に樹脂をコートするなど特に制限はないが、生産性の観点から、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた
図4Aに示すような装置を用いることができる。
樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合で説明すると、
図4Aに示すような装置を用いて実施形態1に係る高強力繊維束5を製造する場合、クリール7aから供給された高強力繊維糸からなる芯線2を製紐機(図示せず)に通したり、丸編機(図示せず)に通したりして拘束材を形成した後、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後、必要に応じてマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイス7bで線径を整えたのちに必要に応じて加熱炉7cにより乾燥、硬化させることでコーティングを行う。そして、乾燥、硬化したものを裁断機7dに所定長さに切断すれば、切断した状態で移動、保管を行うことができる。また、切断せずにドラムに巻き取り、施工が決まった後、任意の長さに切断して用いることができる。
あるいは、
図4Bに示すような装置を用いて高強力繊維束5を製造することも可能である。なお、
図4Bにおいては、
図4Aと同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図4Bに示す装置では、ドラム7eから供給された高強力繊維糸からなる芯線2を拘束材で拘束した高強力繊維束を形成して、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させる際、ダイス7fによって絞ることにより、樹脂を内部まで含浸させる。また、加熱炉7cにより乾燥させる前に、予熱炉7gを通すことで、突沸を防止している。
【0038】
なお、実施の形態1に係る高強力繊維線材1a〜1cにおいて、芯線2の表面は、拘束材3a〜3cによって完全に被覆されておらず、一部が被覆されず露出した状態である。 このように芯線2の表面を露出させることにより、芯線2への上述の樹脂のコートする際に樹脂が芯線2の内部に浸透しやすくなる結果、芯線2を構成する高強力繊維糸4同士の結合力を向上させることができる。
また、高強力繊維線材1a〜1cを他の部材と接合させる場合において、上記芯線2の露出面は、他部材と接着させるときの接着面としても機能する。
【0039】
ここで、拘束材が芯線2を被覆する割合について説明する。
芯線2の被覆率は、高強力繊維線材の周囲面全体の面積に対する拘束材が占める面積の割合である。被覆率は、拘束材が芯線2の周囲面に一様に配置されたものであるときには、高強力繊維線材を側方から撮像し、撮像された画像から高強力繊維線材全体の面積と、拘束材が占める面積とを測定して、次式に従って演算することで算出することができる。
被覆率(%)=(拘束材が占める面積)/(高強力繊維線材全体の面積)×100
【0040】
このように算出される被覆率は、少ない方が他部材と接着させる際に接着剤が芯線2の周囲面に接着して接着面として機能する面積が広くなるため望ましい。
特に、高強力繊維線材1aを用いて他部材との接着強度を向上させるとの観点からは70%以下である。より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。被覆率の下限は、芯線2を構成する高強力繊維糸4がばらばらにならず、紐状または棒状が維持できる最も低い値とすることができる。
【0041】
また、実施の形態1に係る高強力繊維線材において、その製造過程で用いる固化剤を含む溶液が芯線2にまで十分浸透し、後に説明をおこなう実施の形態に係る外周を覆う筒状体を用いない場合には、拘束材3aでの被覆率を70%超とし、芯線2の表面が目視にて確認できない程度にまで拘束材3aにて被覆したものを用いてもよい。つまり拘束材3aが筒状体の役割も兼ねる。このような構成とすることにより、芯線2と拘束材3aとからなる高強力繊維束に対し固化剤が付与される前の状態で、ドラムに巻くなどの作業をおこなっても、拘束材3aの隙間から芯線2が飛び出したり(目むき)するおそれが軽減され、作業性が向上する。また、このような高強力繊維線材をブレース材やコンクリート用の補強筋材等として用いた場合においても、炭素繊維などの芯線が砂利などの鋭利物と接触しても断線することを防ぐことができる。さらに一本の高強力繊維線材を細くすることができるため意匠性に優れる。
【0042】
なお、この際の高強力繊維線材5は撚りがかけられないほうが好ましい。なお、複数本の高強力繊維線材5を束ねている場合であって、それぞれの高強力繊維線材5同士を固化剤で一体化せずに用いる場合には、束ねられた複数本の高強力繊維線材5がばらけてしまうことを防ぐために、束ねられた複数本の高強力繊維線材5全体に対し10回/m未満程度のよりをかけてもよい。引張強度の観点からは、好ましくは5回/m未満、より好ましくは3回/m未満がよい。
なお、拘束材3aでの被覆率が70%超である、本実施の形態における高強力繊維線材の太さはその用途により任意に設定すればよいが、細い高強力繊維線材とは直径5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
【0043】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2を
図5に基づき説明する。なお、
図5においては、
図1〜4と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0044】
実施の形態2に係る高強力繊維線材1dの側面一部拡大
図5(a)、断面図を
図5(b)に示す。
高強力繊維線材1dは、芯線2と拘束材3aとからなる高強力繊維束5を19本備えてなり、該19本の高強力繊維束5は引きそろえて束ねられ、それぞれの高強力繊維束5の間には、固化剤5aが充填されており、この固化剤5aによって一体化されている。
ここで、高強力繊維束5は、
図1で示した上述の高強力繊維線材1aと同じ構成であるため、詳しい説明は省略する。また、本実施形態では、高強力繊維束5として高強力繊維線材1aと同じ構成のものを用いているが、これに限定されず、高強力繊維線材1b,1cと同様の構成の高強力繊維束を初めとして、他の形態の高強力繊維束を使用することもできる。
【0045】
本実施形態における高強力繊維束5の本数は19本であるが、この本数は高強力繊維線材1dの目的とする性能(特に引張強度)、用途を勘案して決定される。例えば、炭素繊維糸を24000本束ねたもの(24k)を芯線として用いた場合には、高強力繊維束5の本数は1本〜500本程度であるとブレース材等の用途として好適である。
また、定着治具とを一体化した複合材として、例えば、鉄筋の代替としての筋材として用いる場合には、高強力繊維束5の本数は、1本〜500本程度である。
また、炭素繊維糸を12000本束ねたもの(12k)を芯線として用い、ワイヤーとして使用するための高強力繊維線材を得る場合には、高強力繊維束5の本数は1本〜1000本程度である。
【0046】
使用できる固化剤5aとしては、実施の形態1と同様に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いることができる。また、固化剤5aは、高強力繊維糸と親和性の高いことが好ましいことに加え、酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。
【0047】
複数本の高強力繊維束5を、固化剤5aによって一体化する方法は、特に限定はない。例えば、固化剤5aが熱可塑性樹脂の場合には、実施の形態1と同様に、
図4Aまたは
図4Bに示すような装置を用い、複数本の高強力繊維束5を引きそろえた状態で、溶融させた熱可塑性樹脂に含浸し、冷却すればよい。
また、固化剤5aは高強力繊維束5同士が一体化すればよく、固化剤5aを芯線2の中心に至るまで含浸させる必要はないが、芯線2の中心まで含浸させ、芯線2全体を硬化させてもよい。
【0048】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3を
図6に基づき説明する。なお、
図6においては、
図1〜5と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する
【0049】
実施の形態3に係る高強力繊維線材1eの外観図を
図6(a)、断面図を
図6(b)に示す。
高強力繊維線材1eは、本発明の実施の形態2で説明した高強力繊維線材1dの外周を覆うように繊維材料からなる筒状体6を配置し、高強力繊維線材1dと筒状体6とを固化剤5aで一体化してなる複層構造の高強力繊維線材である。
なお、実施の形態3において、複層構造の高強力繊維線材1eの内層として高強力繊維線材1dを使用しているが、これに限定されず、本発明の実施の形態1,2に準ずる他の高強力繊維線材を用いることができる。
【0050】
複層構造の高強力繊維線材1eにおける外層は、筒状体6からなり、外部から芯線である内層の高強力繊維線材1dを保護する役割を有する。
図6に示すように筒状体6は、繊維材料を編み上げた編状構造又は組み上げた組紐構造を有する筒状体である。
高強力繊維線材1eは、固化剤5aにより棒状体となるため、数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことが容易にでき、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなど、型崩れしないため容易に配置することができる。
【0051】
高強力繊維線材1dをそのまま用いると、高強力繊維束5の露出面に外部から鋭利物が接触した場合に高強力繊維糸4が切断され、芯線の強度が低下するおそれがある。特に高強力繊維糸4として炭素繊維糸を用いた場合、炭素繊維糸は、引張強度は高いが、剪断強度はそれほど高くないため、この問題が生じやすい。
ここで、高強力繊維線材1eは、強度の高い筒状体6からなる外層を設けることによって、内部の高強力繊維線材1dを鋭利物や応力から保護することができる。
なお、このような外層の役割を損なわない限り、筒状体6の上に更なるコーティングなどを行ってもよい。例えば、意匠性を高めるために外層の外部を塗料などで着色したり、各種無機物、有機物でコーティングしてもよい。
【0052】
このように、筒状体6では、紐状の形態を維持することができ、また、外層の厚みを外部から鋭利物や応力から十分保護できる厚みにしても、フレキシビリティを保つことができるという利点がある。
なお、外層に使用する繊維の密度を変えることにより、フレキシビリティと強度のバランスをとることができる。
さらに筒状体6には、上述のように繊維を編み上げた筒状の編状構造(以下、「丸編」ともいう。)や、繊維を筒状に組み上げた組紐構造(以下、「丸打組物」ともいう)が挙がられるが、適度の固さを有し、より優れた強度、形態安定を有することから組紐構造が好ましく用いられる。
また、組紐構造では、引き延ばされた際に、特に固化剤が固化する前に径が細くなるため、張力がかかるように製造すると外層である筒状体6とその内部に含まれる高強力繊維線材1dとの密着性が高まるという点でもより好ましい。
【0053】
外層の筒状体6を構成する繊維としては、天然樹脂や合成樹脂からなる樹脂繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などを使用でき、これらを組み合わせても使用することができる。この中でも、通常、好ましくは、合成樹脂の繊維が用いられる。
外層を構成する繊維の好適な具体例としては、ポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を挙げることができる。この中でも耐薬品性(特に耐アルカリ性)や可変性のバランスがよい、ビニロン、セルロース、ポリアミド、ポリアセタールが好ましく、ビニロンが特に好ましい。これらの繊維は、外層として充分な強度を有するのみならず、アルカリなどに対する高い耐薬品性を有する。
また、高強力繊維線材1eの製造工程や使用用途によって熱処理が施される場合には、外層の筒状体6がポリエステル繊維からなると熱や水分による収縮や膨張などが発生し難く寸法安定性の観点より好ましい。
【0054】
外層の筒状体6の直径や長さ、厚みは、その使用目的に適宜決定することができ、内部の芯線や拘束材にあわせての任意の太さ、長さとすることができる。なお、コンクリートの筋材として用いる場合には、外層の筒状体6に凹凸を設けると、コンクリートの構造物の強度をより向上させることができる。
【0055】
また、外層の編状筒紐を構成する繊維を、様々な色彩に着色して意匠性を高めることもできる。また、外層を着色することにより、外層、中間層および内層の種類等を判別できるようにしてもよい。
【0056】
外層の筒状体6の製造方法は、特に限定はないが、例えば、従来公知の製紐機、丸編機、また公知の靴下製造装置を一部改造して、編状筒紐製造装置に転用して作製することができる。
【0057】
以下、複層構造の高強力繊維線材1eの製造方法の一例について説明するが、ここで例示した方法に限定されない。
外層としての筒状体6を高強力繊維線材1dの周囲に設ける方法は、特に限定されず、例えば、まず、高強力繊維線材1dを配置し、次いで、その周囲に外層を組むあるいは編んでゆき外層を形成する方法;
まず、筒状体6としての外層を形成し、この外層の中に、高強力繊維線材1dを挿入する方法;
などが挙げられる。
【0058】
内層となる高強力繊維線材1dの周囲に外層の筒状体6を仮固定したのちに、固化剤5aにより両者を一体化する。なお、固化剤5aとしては、上記実施形態1,2で説明したものと同様のものを用いることができる。なお、仮固定の方法としては、例えば、接着テープで固定する方法が挙げられる。また、仮固定は製造時の便宜上行うものであり、必ずしも行う必要はない。
一体化の方法は固化剤5aの種類によって適宜選択され、例えば、固化剤5aが熱可塑性樹脂の場合には、外層の筒状体6を仮固定した高強力繊維線材1dを溶融した熱可塑性樹脂に浸漬したのちに冷却することによって行えばよい。
また、高強力繊維線材1dの上に熱可塑性樹脂層を設けた後に、周囲に外層の筒状体6を形成し、その状態で加熱することにより、熱可塑性樹脂層を軟化させて外層となる筒状体6と一体化させてもよい。
また、使用する外層である筒状体6を、あらかじめ固化剤5aとなる熱可塑性樹脂でコートして、その後に高強力繊維線材1dを挿入して加熱してもよい。
【0059】
なお、実施の形態3において、複層構造の高強力繊維線材1eの内層として、高強力繊維束5を固化剤5aで一体化した高強力繊維線材1dを使用し、その周囲に外層である筒状体6を配置して、高強力繊維線材1dと筒状体6とをさらに固化剤5aで一体化しているが、複層構造の高強力繊維線材はこれに限定されない。
例えば、他の実施形態として、複層構造の高強力繊維線材は、複数本の高強力繊維束5を引きそろえた状態とし、それを固化剤5aで一体化せずに、その周囲に外層である筒状体6を配置した紐状物を形成し、次いで、該紐状物を固化剤5aで一体化してもよい。固化剤5aが熱可塑性樹脂の場合には、溶融、あるいは適当な溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂を含む溶液に前記紐状物を含浸させたのちに、形を整えたうえで適当な熱処理を行って製造することもできる。得られる複層構造の高強力繊維線材は、内層である複数本の高強力繊維束5と外層である筒状体6とが、同じ固化剤5aで同時に固化される。そのため、内層と外層の接着力がより高まった状態で一体化し、引張材など強い引張力がかかる用途に用いても内層と外層でのずれ(すべり)が生じにくいという利点がある。
また、固化剤5aが熱可塑性樹脂の場合には、高強力繊維線材をさらに、加熱した型で押圧したり、加熱した特定の形状のダイスに通過させることにより、高強力繊維線材の断面を円、楕円、三角形、四角形等任意の形状とすることも可能である。また、このような加熱しながら加圧することで高強力繊維線材1dと固化剤5aとの密着性を向上させ、高強力炭素繊維線材の意匠性や強度の向上、形状や強度の安定化を図ることができる。
【0060】
また、実施の形態3における高強力繊維線材は、その端部を接着剤で定着治具と固定する際、定着治具との接着性を高めるために、筒状体が取り除かれた複数本の高強力繊維束からなる露出部を有することが好ましい。
特により接着力を高めるために、前記露出部における複数本の高強力繊維束が、高強力繊維束単位に1束ずつにばらされている、いわゆる茶筅状の形態や、前記露出部における複数本の高強力繊維束が、繊維方向に3〜15に分割されている、いわゆる竹割状の形態がより好ましい。
【0061】
[本発明の高強力繊維線材の用途]
本発明の高強力繊維線材は、土木、建設、船舶、鉱業や漁業などのあらゆる産業分野へ適用することができ、その用途は限定されない。
使用用途の中でも、本発明の高強力繊維線材は、鉄筋にまけない、高強力繊維に由来する強度を有し、軽量でコンクリートとの整合性がよく、さらにコンクリート中のアルカリに対する耐性も高いため、鉄筋の代替物としてコンクリートの筋材として使用すると、コンクリートの強度を向上することができ、筋材の腐食によるコンクリート構造物の強度劣化を回避することができる。
また、本発明の高強力繊維線材は、磁性を帯びると問題がある精密機械を使用する建物や橋梁、港湾の敷設や洋上風力発電施設や船舶など塩害が起こりやすい環境、高層ビルなどメンテナンス費用がかかる場合など、鉄筋の使用が望ましくない用途に特に好適に使用できる。
【0062】
また、コンクリート構造物は、コンクリートに含まれるアルカリ性のセメント水溶液が骨材(砂利や砂)の特定成分、鉄筋と反応し、異常膨張やそれに伴うひび割れなどを引き起こす、いわゆるアルカリ骨材反応がコンクリートが中性劣化の一因であるが、本発明の高強力繊維線材は、外層を有する場合でも、編状構造あるいは組紐構造を有する筒状体であるため、フレキシビリティがあり、このような現象に左右されにくい。
また、本発明の高強力繊維線材は、高強力繊維に由来する優れた強度を有し、軽量であるため、鉄骨構造や鉄筋コンクリートや木造などの建物、橋等の橋梁などに用いられるブレース材、補強材(補強金具代替品を含む)として好ましく用いることができる。また、細いものであっても十分な強度を有しているため、照明、テーブルなどの家具、階段などを吊り下げるワイヤー、間仕切りなどの建具、テーブル、椅子、手すりなどのインテリア、フェンス、塀、グリ−ンカーテンなどに用いるツタ類の支持具、ネットなどのエクステリアなどを種々のものに用いることができ、デザイン性に優れた建築物を製造することも可能である。
また、塩害の起こりやすい洋上風力発電施設や船舶等の係留に用いる鎖などの代替物としても好適である。
【0063】
特に、本発明の高強力繊維線材において、固化剤に熱可塑性樹脂を使用した場合には、熱を加えることにより可変性を有することによりドラムなどに巻いて保管、運搬が可能であり長尺のブレース材が供給できる。
【0064】
また、本発明の高強力繊維線材は、任意の部材と複合化させて複合材(以下、「本発明の複合材」)として使用してもよい。
高強力繊維線材と複合化させる部材は特に限定はないが、定着治具に強固に固定することが可能である。
好適な複合材の例として、高強力繊維線材の少なくとも一方の端部が定着治具の胴部内に挿入され、当該高強力繊維線材の端部と定着治具の胴部とを接着固定することにより、当該高強力繊維線材と定着治具とを一体化してなる複合材が挙げられる。
【0065】
本発明の高強力繊維線材は、その端部を定着治具にて固定する際、高強力繊維束単位にばらして、使用することができるため、高強力繊維糸を破損させることなく、接着面積を広くすることができる。そのため、高強力繊維線材と定着治具部分の接着力を高めることができ、強固に高強力繊維線材と定着治具を結合することができる。なお、上記複層構造を有する高強力繊維線材の場合には、高強力繊維線材のうち、定着治具に挿入される部分の外層である筒状体の少なくとも一部を取り除き、端部にて高強力繊維束からなる内層を露出させて使用してもよい。この場合、露出部分は、高強力繊維束単位にばらして使用してもよいし、適当な本数に分割してもよく、ばらすことなく使用してもよい。
【0066】
上記露出部分を、高強力繊維束単位にばらさずに一体で用いた方が、内層の露出部分の固化剤を除去する必要もなく、定着治具への挿入も容易であるという利点がある。
【0067】
一方で、より強い定着治具との結合性をより高めるために、前記露出部における複数本の高強力繊維束が、高強力繊維束単位に1束ずつにバラされている、いわゆる茶筅状の形態であることが好ましい場合もある。また、前記露出部における複数本の高強力繊維束が、繊維方向に3以上に分割されている、いわゆる竹割状の形態が好ましい場合もある。
従って、当該露出部分と定着治具との結合性は使用する高強力繊維の種類、高強力繊維束の本数、定着治具との接触面積等の諸条件によっても変化するため、露出部分の形態は接着性、ハンドリング性を考慮して適宜決定される。
【0068】
また、高強力繊維線材において、固化剤を含む溶液が芯線にまで十分浸透し、内部まで固化剤によって固化された芯線を用いる場合には、また、外周を覆う筒状体を用いずとも、拘束材での被覆率を70%超とし、芯線の表面が目視にて確認できない程度にまで拘束材にて被覆したものを用いてもよい。この場合、芯線と拘束材とが固化剤で一体化されているものがより好ましい。
このような高強力繊維線材では、拘束材が外層の役割も兼ねるため、高強力繊維線材をブレース材やコンクリート用の補強筋材等として用いた場合においても、炭素繊維などの芯線が砂利などの鋭利物と接触しても断線することを防ぐことができる。さらに一本の高強力繊維線材を細くすることができるため意匠性に優れる。
なお、拘束材での被覆率を70%超とした高強力繊維線材は、固化剤が付与される前の芯線を拘束材で一体化する前の状態では、ドラムに巻くなどの作業をおこなっても、拘束材の隙間から芯線が飛び出したり(目むき)するおそれが軽減され、作業性が向上するという利点もある。
【0069】
また、上記芯線が固化剤によって固化されてなり、かつ、拘束材での被覆率を70%超とした高強力繊維線材を複数本を用い、それぞれの高強力繊維線材同士を固化剤にて一体化することなく用いると、接着剤を用いて高強力繊維線材の端部を鋼管などの定着冶具と固定した場合、一本の鋼管内でみると高強力繊維線材と接着剤との接触面積が増加し、高強力繊維線材と鋼管等との接着強度が安定および向上し、芯線由来の優れた強度を安定して発揮することができる。
また、一本はもちろんのこと、複数本の高強力繊維線材を束ねて用いる場合であっても、それぞれの高強力繊維線材同士が固化剤で一体化されておらず、一本の高強力繊維線材が細いため、それぞれの高強力繊維線材の自由度が大きくなり、加熱をおこなえばもちろんのこと更に加熱等を行わなくとも容易にドラムに巻くことができ容易に長尺の高強力繊維線材とすることができる。
また、複雑な形状に対しても高強力繊維線材をその形状に追従して配置することが容易にできる。
【0070】
本発明の高強力繊維線材は、従来の高強力繊維線材と比較して、定着治具との接続が容易にでき、且つ、優れた強度を有する鉄筋代替材料、コンクリート中の補強筋材、ブレース材などとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1
拘束材1として、ポリエステル繊維(500デシテックスのポリエステル繊維束1本と50デシテックスのポリエステル繊維束1本を引きそろえたもの)を用い、24Kの炭素繊維束(「トレカ(商標) 東レ株式会社製 T700SC‐24000」)からなる芯線の周りを螺旋状に巻き回し、該炭素繊維束からなる芯線を拘束して1本の高強力繊維束を得た。
図7(a)に外観写真を示す。得られた高強力繊維束において、拘束材により拘束された炭素繊維束の表面は、ポリエステル繊維で被覆されている部分は少なく、炭素繊維束(芯線)多くの部分は露出していた。
次に、同様にして得た高強力繊維束を40本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12×2打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。
図7(b)に得られた紐状物の外観写真を示す。
この紐状物の単位長さ当りの質量は94g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は74g/m、筒状体(外層)の質量は、20g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNR6850AY、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて120分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例1の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を10cmカットし、拘束材で拘束された炭素繊維束40本を溶剤を使用して一束ずつにバラし茶筅状とした。次いで、高強力繊維線材の両端のそれぞれに、定着治具としてねじを切った鋼管(長さ120mm、内径23mm、外径31mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例1の高強力繊維線材の引張強度は、111kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNと同等であった。なお、「推定強度」とは、炭素繊維束の引張強度の理論値の90%である「期待強度」の70%の値である。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0073】
実施例2
拘束材2として、ポリエステル繊維(50デシテックスのポリエステル繊維束)を2本用い、1本をS方向で螺旋状に巻き、他の1本をZ方向で螺旋状に巻くことにより24Kの炭素繊維束からなる芯線を拘束して1本の高強力繊維束を得た。
図8(a)に外観写真を示す。得られた高強力繊維束において、拘束材により拘束された炭素繊維束の表面は、ポリエステル繊維で被覆されている部分は少なく、炭素繊維束(芯線)多くの部分は露出していた。
次に、同様にして得た高強力繊維束を40本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12×2打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。
図8(b)に得られた紐状物の外観写真を示す。
この紐状物の単位長さ当りの質量は89g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は70g/m、筒状体6(外層)の質量は、19g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNR6850AY、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて120分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例2の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を10cmカットし、拘束材で拘束された炭素繊維束40本を溶剤を使用して一束ずつにバラし茶筅状とした。
図9(a)に外観写真を示す。高強力繊維線材の両端のそれぞれにねじを切った鋼管(長さ120mm、内径23mm、外径31mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。固定後の外観写真を
図9(b)に示す。実施例2の高強力繊維線材の引張強度は、109kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNと同等であった。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0074】
実施例3
実施例2における高強力繊維束と同様にして得た高強力繊維束を20本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。
この紐状物の単位長さ当りの質量は44g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は35g/m、筒状体6(外層)の質量は、9g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNH6850RIN−K、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて20分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例3の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を12cmカットした。
図10に外観写真を示す、なお、実施例2と異なり、高強力繊維線材両端の露出した拘束材で拘束された炭素繊維束20本は、茶筅状にバラすことなく一体のまま用いた。高強力繊維線材の両端のそれぞれにねじを切った鋼管(長さ120mm、内径14mm、外径20mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例3の高強力繊維線材の引張強度は、72.9kNであり、24Kの炭素繊維束20本の引張強度の推定強度56.6kNを3割近く超えるものであった。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0075】
実施例4
上記実施例2と同様の方法で紐状物を作製した(
図8(b)参照)。作製した紐状物に対し、固化材として熱可塑性エポキシ樹脂(TPEP−AA−MEK−05B、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部、硬化剤(XNH6850RIN−K、ナガセケムテックス株式会社製) 6.5質量部からなる溶液(粘度100mPa・s、B型粘度計、ローターNo.20、12rpm。東機産業株式会社:TVB−15形粘度計)を室温(20℃)にて付与し
図4Bに構成を示した装置を用い、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例4の高強力繊維線材を得た。なお、熱処理時間は150℃にて20分間である。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力繊維材には撚りは与えられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を60cmの長さにカットし、実施例2とは異なり両端の筒状体を除去せずに鋼管と接着を行った。
高強力繊維線材の両端をそれぞれ内部にネジを切った鋼管(長さ240mm、内径18.2mm、外形27.2mm)に挿入し、ウレタン系接着剤(UM890改1 主剤 1質量部、硬化剤 2質量部。セメダイン株式会社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例4の高強力繊維線材の引張強度は79kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNの70%程度の強度を発揮した。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0076】
実施例5
上記実施例2と同様の方法で紐状物を作製した(
図8(b)参照)。作製した紐状物に対し、固化材として熱可塑性エポキシ樹脂(TPEP−AA−MEK−05B、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部、硬化剤(XNH6850RIN−K、ナガセケムテックス株式会社製) 6.5質量部からなる溶液(粘度100mPa・s、B型粘度計、ローターNo.20、12rpm。東機産業株式会社:TVB−15形粘度計)を室温(20℃)にて付与し
図4Bに構成を示した装置を用い、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例5の高強力繊維線材を得た。なお、熱処理時間は150℃にて20分間である。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力繊維材には撚りは与えられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を60cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を24cmカットして、内部の高強力繊維束(炭素繊維束)を露出させた。次に、実施例2とは異なり有機溶剤を用いて炭素繊維束をバラすことなく、高強力繊維線材を150℃に加熱し、熱いうちに高強力繊維線材の端部(露出した炭素繊維束部分)を35本程度に引裂いて竹割状とした。引き裂いた後の高強力繊維線材の端部(露出した炭素繊維束部分)の外観を
図11に示す。
高強力繊維線材の両端をそれぞれ内部にネジを切った鋼管(長さ240mm、内径18.2mm、外形27.2mm)に挿入し、ウレタン系接着剤(UM890改1 主剤 1質量部、硬化剤 2質量部。セメダイン株式会社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。
実施例5の高強力繊維線材の引張強度は平均129kNであった。なお、N数は50回、最大値146kN、最小値81kNであった。実施例5の高強力繊維線材の引張強度は、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNを平均値で1.4割近く超えるものであった。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0077】
実施例6
24Kの炭素繊維糸を3回/m捩じったものを芯線として用いた以外は実施例5と同様にして高強力繊維線材を得、また同様の方法で引張強度を測定した。
実施例6の高強力繊維線材の引張強度の平均は125kNであった。なお、N数は50回、最大値 129kN、最小値120kNであった。実施例6の高強力繊維線材の引張強度は、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNを平均で1.1割近く超えるものであった。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0078】
実施例7
高強力繊維糸を束ねた芯線として24Kの炭素繊維束1本を用い、拘束材3としてポリエステル繊維(1100デシテックスのポリエステル繊維束)を用い、製紐機(24打機)を用い、8打ちの石目打にて、芯線である24Kの炭素繊維の周りの全面をポリエステル繊維で拘束した。拘束材3による芯線の被覆率は70%を超えていた。
次に、拘束された炭素繊維束に対し、固化材として熱可塑性エポキシ樹脂(TPEP−AA−MEK−05B、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部、硬化剤(XNH6850RIN−K、ナガセケムテックス株式会社製) 6.5質量部からなる溶液(粘度100mPa・s、B型粘度計、ローターNo.20、12rpm。東機産業株式会社:TVB−15形粘度計)を室温(20℃)にて付与し、
図4Bに構成を示した装置を用い、高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材とを有し、芯線と拘束材が固化材で一体化してなる実施例7の高強力繊維線材を得た。なお、熱処理時間は150℃にて20分間である。
得られた高強力繊維線材は、直径2.0mm(ノギスで測定)であり、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力繊維材には撚りは与えられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸は接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を60cmに切断し、40本束ね、バラケを抑えるために1回/m程度捩じった。
40本束ねた高強力繊維線材の両端をそれぞれネジを切った鋼管(長さ240mm、内径18.2mm、外形27.2mm)に挿入し、ウレタン系接着剤(UM890改1 主剤 1質量部、硬化剤 2質量部。セメダイン株式会社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例7の高強力繊維線材の引張強度は、平均141kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNを2.5割近く超えるものであった。なお、N数は50回、最大値145kN、最低値137kNと引張強度のばらつきも小さかった。
表1に本実施例の高強力繊維線材の構成、引張強度をまとめて示す。
【0079】
【表1】