【実施例】
【0009】
<1>構成の概要。
本発明の液状化判定方法は、標準貫入試験と、地盤にケーシングを貫入できる装置を備えた1台の機械を使用して行うことを特徴とするものである。
【0010】
<2>装置の説明。
このような機能を備えた装置として例えば
図1に示すような装置を採用することができる。
すなわち駆動履帯を備えた装置本体1は、その前面にブラケットを突出して設ける。
このブラケットにアーム2の一端を取り付ける。
ブラケットに鉛直の回転軸を介して取り付ければアーム2は回転自在であるが、回転は不可欠な構成ではない。
アーム2が固定の場合は、少なくとも2基を備え、平面視がV字状の部材である。
そのうちの1基の先端には標準貫入試験装置Aのガイドに用いるリーダー3(以下「貫入用リーダー」)を鉛直に取り付ける。
他の1基の先端には加振装置Bのガイドに用いるリーダー4(以下「加振用リーダー」)を鉛直に取り付ける。
図7に示すように、アームは3基を設けた場合には、その先端にも加振用リーダー3を鉛直に取り付ける。
貫入用リーダー3と、加振用リーダー4の間隔は、相互の影響を受けない範囲に設置する。
このような装置を使用することで、機械本体1の位置を移動したり旋回することなく、二種類、あるいは複数種類の作業を行うことができる。
ただし機械本体1の位置を変えないことは不可欠の要件ではなく、状況によって移動や旋回を行っても、本願発明の効果を期待することができる。
なお
図1は説明のために、標準貫入試験Aと加振装置Bとを同一の図面に記載してあるが、後述するように同時に行うものではない。
また
図1の標準貫入試験装置Aに付属させる自動巻き上げ装置6については後述する。
【0011】
<3>標準貫入試験。(
図2)
まず標準貫入試験装置Aを使用して、標準貫入試験を行う。
その試験では、まずボーリングによって試験対象の深度まで削孔した後、試験用のサンプラーをロッドの先端に接続する。
次にサンプラーを規定された76cm±1cmの落下高から63.5kg±0.5kg重錘を自由落下させる。
この重錘の打撃でサンプラーが30cm貫入するのに要した打撃回数をN値として記録する。
この場合に標準貫入試験装置Aには打撃回数と深度との関係の自動図化を行う管理装置を設ける。
すると、標準貫入試験の直後に現場で
図9に示すようなN値のグラフを打ち出すことができるので、例えばN値が15以下の範囲が深度4m〜8mに存在することを、現場において直ちに把握することができる。
【0012】
<4>自由落下の自動化。(
図8)
上記のように標準貫入試験装置Aの重錘は相当の重量があるので、肉体での作業は作業員の負担が大きい。
そこで標準貫入試験装置Aの錘A1の自由落下は、機械的に錘A1を巻き上げて行う自動巻き上げ装置6を取り付けることもできる。
例えば
図8に示すように上下2か所のスプロケットA2の間に鉛直方向にチェーンA3を掛け渡し、そのチェーンの一部に係合フックを外向きに突出させる。
一方、標準貫入試験装置Aの円筒状のケースA4内で上下に摺動可能な重錘A1にはフックに係合する係合ピンを突出させておく。
するとスプロケットA2の回転でチェーンA3の一方が鉛直に巻き上げられ、係合フックが重錘A1の係合ピンを介して最上部まで押し上げる。
係合フックは上部のスプロケットA2の位置で反転するので、係合ピンとの係合が解除され、重錘A1は自由落下を行う。
この重錘A1の重量は63.5kg±0.5kgであり、重錘A1の上昇および落下の高さは76cm±1cmである。
このように、重錘A1の巻き上げ、開放、落下、打撃数の記録などを自動化した、自動巻き上げ装置Aを採用すると効率的である。
【0013】
<5>液状化層の可能性。
この標準貫入試験によってN値を測定した場合に、ある層では10以下、ある層では15以上となったとすると、15以上の層が液状化の可能性の高い層として予測できる。
もちろん、上記したN値の測定方法や、それに基づく液状化の可能性の高い層の予測は公知であるが、本願発明では、このようにまず液状化の可能性の高い層を予測しておき、その結果を次の試験のために利用することが特徴である。
なおこの段階でも試料を採取できるが、標準貫入試験装置Aのサンプラーを叩き込むと粘土層は圧密沈下されて変化し、振動を与えると全体が液状化してしまい、ともに正確な試料として利用することが困難である。
そこで本願発明では標準貫入試験により得られたN値を次の液状化試験に利用するものである。
【0014】
<6>液状化層までのサンプラーの貫入。(
図3)
次に地表から、N値を測定した位置の近くにサンプラー5を地盤中に向けて貫入する。
サンプラー5とは、地中の試料を採取して地上に引き上げるための筒体である。
ここで、N値測定孔の「近く」とは、N値が変化していない程度の近い位置をいう。
その場合に、前記の工程で液状化の可能性の高い層が特定されているので、それよりも上の層では試料を採取する必要がなく、直接、液状化の可能性の高い層まで到達できるから作業が効率的である。
液状化可能層までのサンプラー5の挿入の過程では試料は採取しないので試料の変形、変質を考慮する必要がなく、前記した標準貫入試験装置Aの重量により、あるいはバイブロの振動により、または圧入によって行うことができる。
【0015】
<7>液状化層の試料採取。(
図4)
液状化の可能性の高い層では、サンプラー5内に試料を採取する。
そのために、前記したように所定深度まではサンプラー5なしでボーリングを行い、所定深度へ到達したらボーリングロッドを引き上げてその先端にサンプラー5を取り付けて、目的の地層に貫入する。
この工程には、不特定の振動による試料の液状化は好ましくないから、バイブロは使用せず、標準貫入試験装置Aの重量により自由落下による打撃、あるいは圧入によって貫入を行う。
あるいはクローズドピストンサンプラーを使用する。
この装置は、先端にコーンをセットしてコアチューブを地中に貫入し、目的の深度に到達したら地上から操作して閉じている先端のコーンを開放する構造を備えている。
このように目的の深度までは、先端を閉じた状態で掘削するから、掘削作業が効率的であり、目的の深度の試料を迅速に採取することができる。
試料はライナーと称する筒に収めて地上に回収する。
こうしてサンプラー5で、液状化の可能性の高い層の試料を取り込むことができる。
ただしこの段階ではサンプラー5を引き上げない。
【0016】
<8>強制液状化。(
図5)
液状化の可能性が高い地層をサンプラー5に取り込んだら、地上に露出しているロッドに所定の振動加速度を与える。
そのために、ロッドに取り付けた標準貫入試験装置Aなどを取り外して、加振装置Bを取り付ける。
加振装置Bで与える加速度は、その用途によって想定した震度に応じた加速度である。
例えば気象庁の公式サイトの「震度の算出方法」では「震度5強」なら「110〜200gal」としてある。
この加速度によって、サンプラー5内の試料では液状化が発生するかもしれないし、あるいはその加速度では液状化に至らないかもしれない。
【0017】
<9>試料の採取。(
図6)
加振した後にサンプラー5を地上に引き上げて得た試料を目視する。
すると、N値が15以下でも液状化が発生している場合、あるいは変化がない場合など、その層の実物を見て液状化の状態を把握することができる。
こうして、本願発明では1台の装置を利用してまずN値の測定を行い、次の段階で可能性が高い層に震度相当の加速度を与えて実物による液状化の可能性を立証するものであるから、経済的に、かつ信頼性の高い原位置試験による液状化判定方法を提供することができる。
【0018】
<10>複数個所での液状化。
上記の実施例では強制液状化は1か所であり、したがって与える震度も1種類であり、その状態の試料を採取する方法であった。
しかし上記のサンプラー5の貫入を複数個所で行い、ひとつのサンプラー5には「震度5強」(110〜200gal)相当の加速度を与え、他のサンプラー5には「震度6弱」(200〜350gal)相当の加速度を与える、という方法を採用することもできる。
すると、両方のサンプルを地上に取り出して目視した場合に、N値は15だったが、震度5強では液状化せず、震度6弱では液状化していた、と言った判断を行うことができる。
その場合には
図7に示すように、加振装置Bをガイドするリーダー3を、標準貫入試験装置をガイドするリーダー3の両側に設置しておくと、平行して試料に異なった加速度を与える試験を迅速に行うことができる。
【0019】
<11>振動を与えない比較例として。
複数個所にサンプラー5を貫入して、一つのサンプラー5には加振装置Bにより振動加速度を与え、他のサンプラー5には振動を与えないで、試料を採取すると、両者の相違を比較することもできる。