特許第5953564号(P5953564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953564アクセスポイント、及びアクセスポイントの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953564
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】アクセスポイント、及びアクセスポイントの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20160707BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20160707BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20160707BHJP
【FI】
   H04W72/04 132
   H04W72/08
   H04W84/12
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-267297(P2012-267297)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-116678(P2014-116678A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】寶満 剛
(72)【発明者】
【氏名】正時 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】海沼 義彦
(72)【発明者】
【氏名】金田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 剣
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−036925(JP,A)
【文献】 特開2012−070370(JP,A)
【文献】 特許第4302583(JP,B2)
【文献】 特開2012−034072(JP,A)
【文献】 特開平10−32862(JP,A)
【文献】 溝口 匡人 他,IEEE802.11無線LANにおけるセル間公平性改善のためのマスタ・スレーブ型チャネル選択法,電子情報通信学会技術研究報告,2012年11月 8日,Vol.112, No.286,pp.127-132,RCS2012-182
【文献】 溝口 匡人 他,IEEE802.11無線LANにおけるマスタ・スレーブ型チャネル選択法の実証実験結果,2012年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1,2012年 8月28日,p.483,B-5-119
【文献】 溝口 匡人 他,IEEE 802.11無線LANシステムにおけるマスタ・スレーブ型チャネル選択法の提案,2012年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信1,2012年 3月 6日,p.520,B-5-121
【文献】 中野 雄介 他,分散システムにおける自律マスタースレーブ交代方式に関する一考察,2011年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集2,2011年 8月30日,p.416,B-18-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 72/04
H04W 72/08
H04W 84/12
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数チャネルを有する無線通信システムにおけるアクセスポイントであって、
自アクセスポイント以外に他のアクセスポイントが通信を行っているか否かを周波数チャネル毎に検知するチャネルスキャンを定期的に実行するチャネルスキャン部と、
起動時に実行される前記チャネルスキャンにおいて親アクセスポイントが検知されない場合、自アクセスポイントを親アクセスポイントとし、起動時に実行される前記チャネルスキャンにより前記親アクセスポイントが検知された場合、自アクセスポイントを子アクセスポイントとする親AP子AP制御部と、
自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、前記チャネルスキャンの結果に基づき周波数チャネルにおける電波の干渉度合いを判定するチャネル干渉度判定部と、
自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、自アクセスポイントが使用している周波数チャネルにおける電波の干渉度合いが、他の周波数チャネルにおける電波の干渉度合いより大きいとき、前記親アクセスポイントに周波数チャネルの変更要求を行い、自アクセスポイントが親アクセスポイントである場合、使用している周波数チャネルにおけるチャネル切替の閾値と、前記子アクセスポイントからのチャネル変更要求に基づいて子アクセスポイントに周波数チャネルを割当てるチャネル制御部と、
を備え
前記親AP子AP制御部は、自アクセスポイントが親アクセスポイントとなったタイミング以降で、最も早く到来するチャネルスキャンのタイミングにおいて、前記チャネルスキャンの結果に基づき自装置の次に親APとなる次親APを他のアクセスポイントの中から決定する、
ことを特徴とするアクセスポイント。
【請求項2】
前記チャネル制御部が前記アクセスポイントに割当てる前記周波数チャネルは、互いに重複しない前記周波数チャネルである
ことを特徴とする請求項1に記載のアクセスポイント。
【請求項3】
前記チャネル制御部は、前記周波数チャネルそれぞれに割当てられている前記アクセスポイントの数に基づいて前記閾値を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクセスポイント。
【請求項4】
前記チャネル制御部は、前記周波数チャネルそれぞれを利用しているステーションの数に基づいて前記閾値を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアクセスポイント。
【請求項5】
自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、アクセスポイント間の通信において、該通信を実行する間だけ親アクセスポイントが使用するチャネルに変更して通信を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアクセスポイント。
【請求項6】
複数の周波数チャネルを有する無線通信システムにおけるアクセスポイントの制御方法であって、
自アクセスポイント以外に他のアクセスポイントが通信を行っているか否かを周波数チャネル毎に検知するチャネルスキャンを定期的に実行するチャネルスキャン手順と、
起動時に実行される前記チャネルスキャンにおいて親アクセスポイントが検知されない場合、自アクセスポイントを親アクセスポイントとし、起動時に実行される前記チャネルスキャンにより前記親アクセスポイントが検知された場合、自アクセスポイントを子アクセスポイントとする親AP子AP制御手順と、
自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、前記チャネルスキャンの結果に基づき周波数チャネルにおける電波の干渉度合いを判定するチャネル干渉度判定手順と、
自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、自アクセスポイントが使用している周波数チャネルにおける電波の干渉度合いが、他の周波数チャネルにおける電波の干渉度合いより大きいとき、前記親アクセスポイントに周波数チャネルの変更要求を行い、自アクセスポイントが親アクセスポイントである場合、使用している周波数チャネルにおけるチャネル切替の閾値と、前記子アクセスポイントからのチャネル変更要求に基づいて子アクセスポイントに周波数チャネルを割当てるチャネル制御手順と、
を有し、
前記親AP子AP制御手順では、自アクセスポイントが親アクセスポイントとなったタイミング以降で、最も早く到来するチャネルスキャンのタイミングにおいて、前記チャネルスキャンの結果に基づき自装置の次に親APとなる次親APを他のアクセスポイントの中から決定する、
ことを特徴とするアクセスポイントの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスポイント、及びアクセスポイントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線LAN環境の普及により、無線通信の送信電波が増えている。例えば、集合住宅などでは各宅にアクセスポイント(AP:Access Point)が設置されると、互いに干渉してしまい、電波干渉によるスループットの低下やネットワークにつながりにくいといった問題が増加することが懸念される。そこで、アクセスポイントにおいて周波数チャネル(CH:Channel)に対してキャリアセンスを行い、他のアクセスポイントが発する電波に対する受信信号強度の最も低いチャネルを選択することによりチャネル割当の効率化を図っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクセスポイントの数が増加すると、2.4GHz帯では周波数チャネル間隔がないことから、電波強度の低い周波数チャネルへ移動しても電波干渉が発生する可能性がある。干渉のしない周波数チャネルを選択した場合にも、同一の周波数チャネルに多くのアクセスポイントが存在した場合、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance: 搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式)による送信待ちからスループットが大幅に低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、例えば複数のアクセスポイントが周波数チャネル間で周波数帯が重なっている周波数帯域を使用する無線通信システムにおいて、アクセスポイントのチャネル割当を制御し電波干渉を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の周波数チャネルを有する無線通信システムにおけるアクセスポイントであって、自アクセスポイント以外に他のアクセスポイントが通信を行っているか否かを周波数チャネル毎に検知するチャネルスキャンを定期的に実行するチャネルスキャン部と、起動時に実行される前記チャネルスキャンにおいて親アクセスポイントが検知されない場合、自アクセスポイントを親アクセスポイントとし、起動時に実行される前記チャネルスキャンにより前記親アクセスポイントが検知された場合、自アクセスポイントを子アクセスポイントとする親AP子AP制御部と、自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、前記チャネルスキャンの結果に基づき周波数チャネルにおける電波の干渉度合いを判定するチャネル干渉度判定部と、自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、自アクセスポイントが使用している周波数チャネルにおける電波の干渉度合いが、他の周波数チャネルにおける電波の干渉度合いより大きいとき、前記親アクセスポイントに周波数チャネルの変更要求を行い、自アクセスポイントが親アクセスポイントである場合、使用している周波数チャネルにおけるチャネル切替の閾値と、前記子アクセスポイントからのチャネル変更要求に基づいて子アクセスポイントに周波数チャネルを割当てるチャネル制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記チャネル制御部が前記アクセスポイントに割当てる前記周波数チャネルは、互いに重複しない前記周波数チャネルであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記チャネル制御部は、前記周波数チャネルそれぞれに割当てられている前記アクセスポイントの数に基づいて前記閾値を算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記チャネル制御部は、前記周波数チャネルそれぞれを利用しているステーションの数に基づいて前記閾値を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記親アクセスポイントは、自らが停止した場合に次に親アクセスポイントとなるアクセスポイントを予め定めることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記に記載の発明において、自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、アクセスポイント間の通信において、該通信を実行する間だけ親アクセスポイントが使用するチャネルに変更して通信を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、複数の周波数チャネルを有する無線通信システムにおけるアクセスポイントの制御方法であって、自アクセスポイント以外に他のアクセスポイントが通信を行っているか否かを周波数チャネル毎に検知するチャネルスキャンを定期的に実行するチャネルスキャン手順と、起動時に実行される前記チャネルスキャンにおいて親アクセスポイントが検知されない場合、自アクセスポイントを親アクセスポイントとし、起動時に実行される前記チャネルスキャンにより前記親アクセスポイントが検知された場合、自アクセスポイントを子アクセスポイントとする親AP子AP制御手順と、自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、前記チャネルスキャンの結果に基づき周波数チャネルにおける電波の干渉度合いを判定するチャネル干渉度判定手順と、自アクセスポイントが子アクセスポイントである場合、自アクセスポイントが使用している周波数チャネルにおける電波の干渉度合いが、他の周波数チャネルにおける電波の干渉度合いより大きいとき、前記親アクセスポイントに周波数チャネルの変更要求を行い、自アクセスポイントが親アクセスポイントである場合、使用している周波数チャネルにおけるチャネル切替の閾値と、前記子アクセスポイントからのチャネル変更要求に基づいて子アクセスポイントに周波数チャネルを割当てるチャネル制御手順と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、無線通信システムにおけるアクセスポイントが親または子となるネットワークを形成する。アクセスポイントは、現状の干渉度合いに応じて、互いに干渉しない周波数チャネルのうちのいずれかを利用することで電波干渉の抑制を図る。また、同一の周波数チャネルに多くのアクセスポイントが集中しないようにすることにより、各周波数チャネルを利用するアクセスポイントの数が平滑化され、互いに干渉しないチャネルを使用し、かつ通信のスループットを下げないように通信負荷の平滑化を図ることができる。また、各周波数チャネルを利用するアクセスポイントが分散されるので、各アクセスポイントに接続するステーション(STA:Station)が利用する周波数チャネルも分散されることになり、周波数チャネルの利用効率も平滑化され、通信のスループットの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおける親アクセスポイントと子アクセスポイントとのネットワーク構成の概略を示す図である。
図2】同実施形態におけるアクセスポイントの機能ブロックを示す図である。
図3】同実施形態における親AP管理DBにおけるデータ構成の一例を示す図である。
図4】同実施形態における親セル内SSID数DBにおけるデータ構成の一例を示す図である。
図5】同実施形態における親子SSID数DBにおけるデータ構成の一例を示す図である。
図6】同実施形態におけるSTA数DBにおけるデータ構成の一例を示す図である。
図7】同実施形態における干渉度テーブルにおけるデータ構成の一例を示す図である。
図8】同実施形態におけるビーコンフレーム内の情報要素におけるデータ構成の一例を示す図である。
図9】同実施形態における親AP子AP設定処理を説明するフローチャートである。
図10】同実施形態における親APにおける次親AP決定処理を説明するフローチャートである。
図11】同実施形態における親APが行うAP制御の概念図である。
図12】同実施形態における子APチャネル制御処理のフローチャートを説明する図である。
図13】同実施形態における子APにおける親AP停止時処理を説明するフローチャートである。
図14】同実施形態における親APチャネル制御処理を説明するフローチャートである。
図15】同実施形態におけるAPチャネル切替上限閾値算出パターンの概念図である。
図16】同実施形態におけるチャネル切替上限閾値算出処理を説明するフローチャートである。
図17】同実施形態における親AP停止時の親AP引継処理を説明するシーケンス図である。
図18】同実施形態における親AP異常停止時の親AP引継処理を説明するシーケンス図である。
図19】同実施形態におけるAP間通信時のチャネル設定を示す概念図である。
図20】同実施形態におけるAP間通信時のチャネル設定制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおける親アクセスポイントと子アクセスポイントとのネットワーク構成の概略を示す図である。
無線通信システム1は、複数の親アクセスポイント100(100−1,100−2)、複数の子AP200(200−1,200−2,200−3)、及び複数のステーション(以下、STAと称する)300(300−1,300−2,・・・,300−11)を具備する。以下、アクセスポイントをAPと称する。すなわち親アクセスポイントを親APと称し、子アクセスポイントを子APと称する。なお、親AP100と子AP200とを区別する必要のない説明については単にAPと称する。
親AP100、子AP200はそれぞれ複数のSTA300と通信を行う。各APから電波の届く範囲をセル400といい、図1においては例として親AP100−1、100−2の各セル400を示している。
【0016】
図2は、本実施形態におけるアクセスポイントの機能ブロックを示す図である。
APは、親AP100と子AP200とにおいて同じ機能ブロック構成を有しており、後述するAP起動時やAP停止時の処理によって親AP100か子AP200かのいずれかとして動作する。
APは、アンテナ105、無線通信部110、通信制御部120、及び記憶部160を備える。
アンテナ105は、他のAP100,200及びSTA300との間において、無線信号の送受信を行う。
無線通信部110は、アンテナ105を介して、他のAP100,200及びSTA300から受信する無線信号の復調処理、及び他のAP100,200及びSTA300に送信するデータの変調処理を行う。
【0017】
通信制御部120は、ビーコン制御部121、タイミング制御部122、チャネルスキャン部123、チャネル制御部124、親AP子AP制御部125、及びチャネル干渉度判定部126を備える。
ビーコン制御部121は、セル内に存在するAPとSTAとに周期的に送信するビーコン(Beacon)信号(以下、ビーコンと称する)を生成する。また、セル内に存在するAPから周期的に受信するビーコンを解析する。
タイミング制御部122は、無線信号を送信並びに受信するためのタイミングの制御を
行う。AP100,200及びSTA300を含む他の通信装置とのデータ送受信タイミング、周期的に実行される処理のタイミング制御を行う。例えば、100msec毎にビーコンを送信し、5分毎にチャネルスキャンを実行するといった制御を行う。なお、処理を実行する時間間隔は、ユーザからの入力により任意の値を設定可能とする。
【0018】
チャネルスキャン部123は、定期的に全ての周波数チャネルに対し、自アクセスポイント以外に他のアクセスポイントが通信を行っているか否かを検知するキャリアセンスを行う。例えば、他のアクセスポイントが通信を行っている場合は、ビーコンやパケットを受信することにより他のアクセスポイントを検知する。
チャネル制御部124は、無線通信システム1におけるアクセスポイントが利用する周波数チャネルのチャネル制御を行う。
親AP子AP制御部125は、無線通信システム1におけるアクセスポイントが形成する親子ネットワークの制御を行う。
チャネル干渉度判定部126は、チャネルスキャンにより自アクセスポイントが受信したビーコンから周波数チャネルの干渉度を判定する。例えば、干渉度の判定には他アクセスポイントが送信するビーコンから得られる電波強度等の情報が使用される。
【0019】
記憶部160は、親AP管理DB161、親セル内SSID(Service Set IDentifier)数DB162、親子SSID数DB163、STA数DB164、干渉度テーブル165、及びチャネル切替上限閾値算出パターン設定ファイル166を記憶する。
SSIDは、ユーザによりアクセスポイントに設定されるネットワーク識別名である。アクセスポイントとSTAとの両方に設定され、SSIDが一致するもの同士でしか通信できないようにすることで、無線の混信が防止される。
チャネル切替上限閾値算出パターン設定ファイル166は、図16において後述するチャネル上限閾値算出処理における設定情報を記憶する。設定する内容はユーザからの入力により設定可能とする。本実施形態の一例では、複数のチャネル切替上限閾値算出パターン毎に、有効とするか無効とするかを記憶する。
【0020】
図3は、本実施形態における親AP管理DB161におけるデータ構成の一例を示す図である。
親AP管理DB161は、親APと次親APを識別するデータを記憶する。ここで、次親APは、親APの機能が停止した場合、親APの機能を引継ぎ新しく親APとなるAPである。次親APの決定処理については後述する。
親AP管理DB161は、帰属NO、MACアドレス、CH、SSID、ステータスの各項目を含むテーブルを記憶する。図3に示す例では、帰属NO“1”、MACアドレス“00:1A:2B:3C:4D:5E:5F”、CH“1”、SSID“SSID01”、ステータス“親”が示されている。項目「帰属NO」の1は、帰属NO.1に対応するMACアドレスのAPが現在の親APであることを示す。また、項目「ステータス」には親を示す任意のコード、例えば“親”が記憶される。一方、項目「帰属NO」2は、帰属NO.2に対応するMACアドレスのAPが現在の次親APであることを示す。また、項目「ステータス」には次親を示す任意のコード、例えば“次親”が記憶される。項目「MACアドレス」は各APに固有の12桁の16進数の値を示す。項目「CH」、「SSID」には、親AP、次親APともに該MACアドレスの利用している周波数チャネル、及びSSID名が示される。
【0021】
図4は、本実施形態における親セル内SSID数DB162におけるデータ構成の一例を示す図である。
親セル内SSID数DB162は、親APセル範囲内のSSID数をAPが利用するチャネル毎に項目「対象CH」、「親APセル範囲内SSID数」、「取得時間」、「SSID平均値」を含むレコードを記憶する。この例では、対象チャネルが1,6,11であり、レコードとして、例えば、対象チャネル“1”、親APセル範囲内SSID数“A”、取得時間“YYYY/MM/DD/hh/mm/ss”、SSID平均値“(A+B+C)/対象チャネル数”が示されている。
【0022】
図5は、本実施形態における親子SSID数DB163におけるデータ構成の一例を示す図である。
親子SSID数DB163は、親APセル範囲内の親AP及び子APのSSID数をAPが利用するチャネル毎に項目「対象CH」、「親AP及び子AP SSID数」、「取得時間」、「SSID平均値」を含むレコードを記憶する。この例では、対象チャネルが1,6,11であり、レコードとして、例えば、対象チャネル“1”、親AP及び子AP SSID数“A”、取得時間“YYYY/MM/DD/hh/mm/ss”、SSID平均値“(A+B+C)/対象チャネル数”が示されている。
【0023】
図6は、本実施形態におけるSTA数DB164におけるデータ構成の一例を示す図である。
STA数DB164は、親APセル範囲内の親APに帰属するSTA数と子APに帰属するSTA数の総数を各APに割当てられている固有のMACアドレス毎に項目「対象AP MACアドレス」、「STA数」、「取得時間」、「STA数平均値」を含むレコードを記憶する。この例では、対象APのMACアドレス“00:1A:2B:3C:4D:5E”に対するレコードとして、例えば、STA数“A”、取得時間“YYYY/MM/DD/hh/mm/ss”、STA数平均値“(A+B+・・・+X)/対象チャネル数”が示されている。
【0024】
図7は、本実施形態における干渉度テーブル165におけるデータ構成の一例を示す図である。
干渉度テーブル165は、例えば、APが利用できる周波数チャネルである1CH,2CH,・・・,13CHを含む13の周波数チャネルを有する無線通信システム1において、それぞれの周波数チャネル毎の干渉度合いを判定する際に使用する値を“干渉度合い参考値”として記憶する。
干渉度合い参考値は、チャネルスキャン部123が全ての周波数チャネルに対しキャリアセンスを実行した結果から得られる受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)や、SSID数、STA数のいずれか、または組合せた値を使用するものとする。ここでは、受信信号強度を干渉度合い参考値として使用する例を示している。
【0025】
図8は、本実施形態におけるビーコンフレーム内の情報要素におけるデータ構成の一例を示す図である。
APは、ビーコンに含まれる「Information Element(情報要素)」に周波数チャネル制御に使用するデータを割り当て、そのビーコンを送受信する。それによりAPは、AP間での周波数チャネル制御に必要な情報を得る。
例えば、図8に示すように、ビーコン制御部121が、親AP、次親APのMACアドレス情報を項目「Vendor−Specific−content」に割り当てることにより、AP間通信で情報を送受信する。例では親AP: 00:1A:2B:3C:4D:5E(親AP情報)、次親AP: 00:1A:2B:3C:4D:6E(次親AP情報)が割り当てられている。上述のようにビーコンの「Vendor−Specific−content」に割り当てられた親AP情報、次親AP情報は、後述の図9において説明する親AP子AP制御処理で用いられる。
また、ビーコン制御部121は、SSID毎、すなわち本実施形態ではAP毎の該APに帰属するSTA数を項目「Vendor−Specific−content」に割り当てる。例ではSSID名が“SSID01”のAPに帰属するSTA数が3であり、SSID名が“SSID02”のAPに帰属するSTA数が4であることを示す「SSID01:3STA,SSID02:4STA」が割り当てられている。
【0026】
図9は、本実施形態における親AP子AP制御処理を説明するフローチャートである。
まず、例えばユーザによってアクセスポイント100,200が起動される(ステップS101)。
チャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行し、全ての周波数チャネルに対しキャリアセンスを実行する(ステップS102)。
親AP子AP制御部125は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS103)。ここで、他に通信を行うAP100,200が存在する場合、キャリアセンスの結果に他APに送信され自APが受信したビーコンが含まれる。
【0027】
親AP子AP制御部125は、キャリアセンスの結果に親AP情報を含むビーコンが含まれているか否かを判定する(ステップS104)。
親AP情報を有すビーコンが含まれている場合(ステップS104:YES)、2つ以上のAPから親AP情報を受信したか否かを判定する(ステップS105)。
2つ以上のAPから親AP情報を受信した場合(ステップS105:YES)、自APは、電波強度の強い方の親APに帰属する。すなわち自APを該親APの子APとして設定する(ステップS106)。
親AP管理DB161に親AP情報を登録し(ステップS107)、処理を終了する。
【0028】
ステップS104の処理において、親AP情報を有すビーコンが含まれていない場合(ステップS104:NO)、自APを親APとして設定する(ステップS108)。
次に、ビーコン制御部121は、親AP情報を含むビーコンを送信する(ステップS109)。そして、次親AP決定処理を実行し(ステップS110)、処理を終了する。次親決定処理は、後述の図10において説明する。
【0029】
ステップS105の処理において、2つ以上のAPから親AP情報を受信していなかった場合(ステップS105:NO)、自APを子APとして設定する(ステップS111)。そして、親AP子AP制御部125は、親AP管理DB161に親AP情報を登録し(ステップS112)、処理を終了する。
【0030】
図10は、本実施形態における親APにおける次親AP決定処理を説明するフローチャートである。
まず、親APのチャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行する。すなわち、全周波数チャネルに対し、キャリアセンスを実行する(ステップS201)。
親AP子AP制御部125は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS202)。
【0031】
親AP子AP制御部125は、キャリアセンスの結果に他APが発信したビーコンが含まれているか否かを判定する(ステップS203)。
他APが発信したビーコンが含まれている場合(ステップS203:YES)、最も電波強度の強いAPに次親APとなるよう要請する要求信号を無線通信部110を介して送信する(ステップS204)。
親AP子AP制御部125は、ステップS204における要求信号に対する応答信号を無線通信部を介して受信する(ステップS205)。
そして、ビーコン制御部121は、親AP情報を含むビーコンを送信し(ステップS206)、処理を終了する。
ステップS203の処理において、キャリアセンスの結果に他APが発信したビーコンが含まれていない場合(ステップS203:NO)、ステップS201の処理に戻る。
【0032】
図11は、本実施形態における親APが行うAP制御の概念図である。
SSIDがそれぞれ異なるAPが複数存在する無線通信システムにおいて、互いに干渉しないチャネル1、チャネル6、及びチャネル11が複数のAPに利用されている一例を示している。なお、それぞれ異なるSSIDが設定されたAPであることを前提としているため、AP数がすなわちSSID数となる。
【0033】
図11(a)は、子APがチャネル変更を希望し、希望通りにチャネル変更が実行される一例を示す。まず、チャネル6を利用している子AP200が干渉度合いが低いチャネル11への変更希望を親AP100に要求する。そして、親AP100は、チャネル11のSSID数が上限閾値未満のため、子APのチャネルをチャネル11に変更させる。
【0034】
図11(b)は、子APがチャネル変更を希望し、希望通りにチャネル変更が実行されない一例を示す。まず、チャネル1を利用している子AP200は干渉度合いが低いチャネル6への変更希望を親AP100に要求する。そして、親AP100は、チャネル6のSSID数が上限閾値のため、子AP200が希望するチャネル6への切替はNGと応答する。さらに、親AP100は、他チャネルにSSID数が上限閾値未満かつ干渉度合いが低いチャネルがあるか否かを判定する。判定の結果チャネル11が判定条件を満たす場合、親AP100は子AP200にチャネルをチャネル11に変更するよう指示する。
【0035】
以下にAPが実行するチャネル制御処理の詳細をフローチャートを用いて説明する。
図12は、本実施形態における子APチャネル制御処理のフローチャートを説明する図である。
まず、子APのチャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行する。すなわち、全周波数チャネルに対し、キャリアセンスを実行する(ステップS301)。
チャネル制御部124は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS302)。
【0036】
チャネル制御部124は、キャリアセンスの結果に親AP管理DBに登録されている親APからのビーコンが含まれているか否かを判定する(ステップS303)。キャリアセンスの結果に親APからのビーコンが含まれていない場合(ステップS303:NO)、子APにおける親AP停止時処理を実行し(ステップS312)、ステップS304に進む。子APにおける親AP停止時処理については図13において後述する。
【0037】
ステップS303の処理において、キャリアセンスの結果に親APからのビーコンが含まれている場合(ステップS303:YES)、チャネル干渉度判定部126は、キャリアセンスの結果から干渉度テーブル165を作成し、記憶部160に記憶する(ステップS304)。
チャネル干渉度判定部126は、記憶部160から干渉度テーブル165を読み込む(ステップS305)。
チャネル干渉度判定部126は、現行チャネルの干渉度合いが他チャネルの干渉度合いより大きいか否かを判定する(ステップS306)。
【0038】
チャネル干渉度判定部126は、現行チャネルの干渉度合いが他チャネルの干渉度合いより大きい場合(ステップS306:YES)、使用するチャネルのうち最も干渉度合いの小さいチャネルをチャネル変更要求の希望チャネルとする(ステップS307)。
チャネル制御部124は、無線通信部110を介し親APへチャネル変更要求を送信する(ステップS308)。
チャネル制御部124は、無線通信部110を介し親APからの応答を受信する(ステップS309)。
【0039】
チャネル制御部124は、親APからの応答は変更OKか否かを判定する(ステップS310)。親APからの応答が変更OKの場合(ステップS310:YES)、チャネル制御部124は要求したチャネルに変更し(ステップS311)、処理を終了する。
ステップS310の処理において、親APからの応答が変更OKでない場合(ステップS310:NO)、親APの指示するチャネルに変更し(ステップS313)、処理を終了する。
【0040】
図13は、本実施形態における子APにおける親AP停止時処理を説明するフローチャートである。
まず、チャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行する。すなわち、全周波数チャネルに対し、キャリアセンスを実行する(ステップS401)。
チャネル制御部124は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS402)。
【0041】
チャネル制御部124は、キャリアセンスを実行した結果、受信したビーコンに含まれるAP情報が更新され、次親APが新しい親APとなっているか否かを判定する(ステップS403)。AP情報が更新され、次親APが新しい親APとなっている場合(ステップS403:YES)、親AP管理DBを新しい情報に更新し(ステップS404)、処理を終了する。
【0042】
図14は、本実施形態における親APチャネル制御処理を説明するフローチャートである。
まず、チャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行する。すなわち、全周波数チャネルに対し、キャリアセンスを実行する(ステップS501)。
チャネル制御部124は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS502)。
チャネル切替上限閾値算出処理を実行する(ステップS503)。この処理については後述の図16において詳しく説明する。
【0043】
チャネル制御部124は、子APからのチャネル変更要求があるか否かを判定する(ステップS504)。子APからのチャネル変更要求がある場合(ステップS504:YES)、子APからのチャネル変更要求データを読み込む(ステップS505)。
次に、チャネル制御部124は、チャネル切替上限閾値を記憶部160から読み込む(ステップS506)。
【0044】
チャネル制御部124は、子APの変更要求先チャネルにおけるSSID数がチャネル切替上限閾値より小さいか否かを判定する(ステップS507)。子APの変更要求先チャネルにおけるSSID数がチャネル切替上限閾値より小さい場合(ステップS507:YES)、子APへチャネル変更OKと応答し(ステップS508)、処理を終了する。
【0045】
ステップS507の処理において、子APの変更要求先チャネルにおけるSSID数がチャネル切替上限閾値以上の場合(ステップS507:NO)、チャネル制御部124は、チャネルスキャンの結果から干渉度テーブル165を作成し、記憶部160に記憶する(ステップS509)。
チャネル制御部124は、記憶部160から干渉度テーブル165を読み込む(ステップS510)。
【0046】
チャネル制御部124は、要求先以外のチャネルにおいて、SSID数がチャネル切替上限閾値より小さく、かつ干渉度合いが要求元のチャネルより低いチャネルがあるか否かを判定する(ステップS511)。要求先以外のチャネルにおいて、SSID数がチャネル切替上限閾値より小さく、かつ干渉度合いが要求元のチャネルより低いチャネルがある場合(ステップS511:YES)、チャネル制御部124は、子APへ希望チャネルへの変更はNGと応答する(ステップS512)。そして、子APに、SSID数がチャネル切替上限閾値より小さく、かつ干渉度合いが要求元のチャネルより低いチャネルへのチャネル変更を指示し(ステップS513)、処理を終了する。
【0047】
ステップS511の処理において、要求先以外のチャネルにおいて、SSID数がチャネル切替上限閾値より小さく、かつ干渉度合いが要求元のチャネルより低いチャネルがない場合(ステップS511:NO)、チャネル制御部124は、子APへチャネル変更NGと応答し(ステップS514)、処理を終了する。
【0048】
なお、上述の説明ではSSID数をチャネル切替上限閾値と比較する方法を説明したがこれに限らない。図16で後述するようにSSID数の算出方法は複数のパターンがある。さらにSTA数とチャネル切替上限閾値とを比較する方法もある。チャネル切替の判定の際には、これらの複数のパターンを組合せてもよいし、各パターンを予め定めた順序に従い実行してもよい。
【0049】
図15は、本実施形態におけるAPチャネル切替上限閾値算出パターンの概念図である。
図15(a)は、親AP100−1が、自セル内に存在する全てのAPのSSID数を算出するパターンを示す。具体的には、親AP100−1は、全周波数チャネルに対してキャリアスキャンを行い、受信したビーコンに含まれる情報から自セル内に存在する全てのAPの全SSID数を算出する。ここで自セル内に存在する全てのAPが意味するのは、例えば、図15(a)に示すように他の親AP100−2に帰属する子AP200−4であっても、親AP100−1のセル内に存在すればSSID数の算出対象となることである。すなわち、子AP200−1から200−4が親AP100−1のセル内に存在する全てのAPとなる。
なお、各APは、それぞれ異なるSSIDが設定されていることを前提としているため、AP数が、すなわちSSID数となる。
【0050】
図15(b)は、親AP100−1が、自APに帰属する子APのSSID数を算出するパターンを示す。具体的には、親AP100−1は、全周波数チャネルに対してキャリアスキャンを行い、受信したビーコンに含まれる情報から自APに帰属する子AP200−1,200−2,200−3のSSID数を算出する。
【0051】
図15(c)は、親AP100−1が、自APに接続するSTA数、及び自APに帰属する子APに接続するSTA数を算出するパターンを示す。具体的には、親AP100−1は、全周波数チャネルに対してキャリアスキャンを行い、受信したビーコンに含まれる情報から自APに接続するSTA300−1,300−2の数、自APに帰属する子AP200−1,200−2に接続するSTA300−3,300−4,300−5の数を算出する。
【0052】
図16は、本実施形態におけるチャネル切替上限閾値算出処理を説明するフローチャートである。
まず、チャネルスキャン部123は、定期チャネルスキャンを実行する。すなわち、全周波数チャネルに対し、キャリアセンスを実行する(ステップS601)。
チャネル制御部124は、キャリアセンス結果を読み込む(ステップS602)。
チャネル制御部124は、記憶部160から、チャネル切替上限閾値算出パターン設定ファイル166を読み込む(ステップS603)。
【0053】
チャネル制御部124は、自セル内の全てのSSID数を算出するパターンが有効と設定されているか否かを判定する(ステップS604)。自セル内の全てのSSID数を算出するパターンが有効と設定されている場合(ステップS604:YES)、自APのSSIDと、受信したビーコンに含まれる全てのSSIDの総数を算出する(ステップS605)。
チャネル制御部124は、算出したSSID数を利用チャネル数で割って算出した値をチャネル切替上限閾値Aとし、記憶部160に記憶する(ステップS606)。
ステップS604の処理について、自セル内の全てのSSID数を算出するパターンが有効と設定されていない場合(ステップS604:NO)、ステップS607へ進む。
【0054】
チャネル制御部124は、親AP(自AP)と子APのSSID数を算出するパターンが有効と設定されているか否かを判定する(ステップS607)。親APと子APのSSID数を算出するパターンが有効と設定されている場合(ステップS607:YES)、自APのSSIDと、子APから受信したビーコンに含まれるSSIDの総数を算出する(ステップS608)。
チャネル制御部124は、算出したSSID数を利用チャネル数で割って算出した値をチャネル切替上限閾値Bとし、記憶部160に記憶する(ステップS608)。
ステップS607の処理について、親APと子APのSSID数を算出するパターンが有効と設定されていない場合(ステップS607:NO)、ステップS610へ進む。
【0055】
チャネル制御部124は、親AP(自AP)に帰属するSTA数と子APに帰属するSTA数を算出するパターンが有効と設定されているか否かを判定する(ステップS610)。親APに帰属するSTA数と子APに帰属するSTA数を算出するパターンが有効と設定されている場合(ステップS610:YES)、親APに帰属するSTA数と子APから受信したビーコンに含まれる子APのSTA数との総数を算出する(ステップS611)。
チャネル制御部124は、算出したSTA数を利用チャネル数で割って算出した値をチャネル切替上限閾値Cとし、記憶部160に記憶し(ステップS612)、処理を終了する。
ステップS607の処理について、親APと子APのSSID数を算出するパターンが有効と設定されていない場合(ステップS610:NO)、処理を終了する。
【0056】
図17は、本実施形態における親AP停止時の親AP引継処理を説明するシーケンス図である。
まず、親APは、例えばユーザの操作に応じて機能停止処理が実行されると、自APが機能を停止することを通知する親AP機能停止通知を次親APに送信する(ステップS701)。
次親APは、親APからの親AP機能停止通知を受信すると、親AP機能停止応答を親APに送信する(ステップS702)。
親APは、次親APからの親AP機能停止応答を受信すると、AP機能を停止する(ステップS703)。
次に、次親APは、自APを新しい親APとして設定する(ステップS704)。
そして、新しい親APは、定期チャネルスキャン(ステップS705)の結果から自セル範囲内における最も電波強度の強いAPを検出する(ステップS706)。
【0057】
新しい親APは、検出したAPに新しく次親APとなるよう要求する次親AP要請を送信する(ステップS707)。
次親AP要請を受信したAPは、新しい親APに次親AP要請応答を送信し(ステップS708)、自APを新しい次親APとして設定する(ステップS709)。
次親AP要請応答を受信した新しい親APは、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンをブロードキャストする(ステップS710)。
新しい次親APは、新しい親APと同様に、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンをブロードキャストする(ステップS711)。
子APは、定期的に実行しているチャネルスキャンにおいて(ステップS712)、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンを受信すると、親AP情報、次親AP情報を更新する(ステップS713)。
【0058】
図18は、本実施形態における親AP異常停止時の親AP引継処理を説明するシーケンス図である。
親APが正常に動作している間は、次親APは定期チャネルスキャン(ステップS801)により親AP情報、次親AP情報を含むビーコンを受信する(ステップS802)。
故障等が生じ親APが異常停止すると、AP機能異常停止の状態となる(ステップS803)。
次親APは、親APからのAP機能停止通知を受信することなく、定期チャネルスキャン(ステップS804)により親AP情報を含むビーコンを受信しなければ(ステップS805)、自APを新しい親APとして設定する(ステップS806)。
新しい親APは定期チャネルスキャン(ステップS807)の結果から自セル範囲内における最も電波強度の強いAPを検出する(ステップS808)。
【0059】
次に、新しい親APは、検出したAPに新しく次親APとなるよう要求する次親AP要請を送信する(ステップS809)。
次親AP要請を受信したAPは、新しい親APに次親AP要請応答を送信し(ステップS810)、自APを新しい次親APとして設定する(ステップS811)。
次親AP要請応答を受信した新しい親APは、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンをブロードキャストする(ステップS812)。
新しい次親APは、新しい親APと同様に、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンをブロードキャストする(ステップS813)。
子APは、定期的に実行しているチャネルスキャンにおいて(ステップS814)、親AP情報、次親AP情報を含むビーコンを受信すると、親AP情報、次親AP情報を更新する(ステップS815)。
【0060】
図19は、本実施形態におけるAP間通信時のチャネル設定を示す概念図である。
図19(a)は、APとSTAとの間で通信が行われている例を示す。親AP100−1は、チャネル1を利用しSTA300−1と通信している。親AP100−1に帰属する子AP200−1は、チャネル11を利用しSTA300−2と通信している。親AP100−1に帰属する子AP200−2は、チャネル6を利用しSTA300−3と通信している。
図19(b)は、APとAPとの間で通信が行われている例を示す。親AP100−1は、チャネル1を利用しSTA300−1と通信している。親AP100−1に帰属する子AP200−2は、STA300−3との通信時はチャネル6を利用しているが、図に示すようにAP間で通信を行う場合は親APが使用している周波数チャネル、例ではチャネル1に自APの周波数チャネルを変更して通信を行う。
【0061】
図20は、本実施形態におけるAP間通信時のチャネル設定制御処理を説明するフローチャートである。
AP間通信が行われている間(ステップS901)、子APは自APのチャネルを親APのチャネルに一時的に変更する(ステップS902)。
子APは、AP間での通信が終了すると、自APのチャネルをもともと設定されているチャネルに戻し(ステップS903)、処理を終了する。
【0062】
以上より、本実施形態における無線通信システム1におけるアクセスポイントによれば、無線通信システム1におけるアクセスポイントが親または子となるネットワークを形成する。アクセスポイントは、現状の周波数チャネルの電波の干渉度合いに応じて、互いに干渉しない周波数チャネルのうちのいずれかを利用することで電波干渉の抑制を図ることができる。さらに、同一の周波数チャネルに多くのアクセスポイントまたはSTAが集中しないように、アクセスポイントが利用する周波数チャネルが選択されることにより、互いに干渉しないチャネルを使用し、かつ通信のスループットの低下を抑えるように通信負荷の平滑化を図ることができる。
【0063】
また、上述の親アクセスポイントは、各周波数チャネルを利用するアクセスポイントの数に基づいて、子アクセスポイントに対して周波数チャネルを割当てることにより、各周波数チャネルを利用するアクセスポイントの数を平滑化することができ、システム全体のスループットの低下を抑えることができる。また、親アクセスポイントは、各周波数チャネルを利用するステーションの数に基づいて、子アクセスポイントに対して周波数チャネルを割当てることにより、各周波数チャネルを利用するステーションの数も平滑化することができ、システム全体のスループットの低下を抑えることができる。
また、上述の親アクセスポイントは、自らが停止した場合、次に親アクセスポイントとなるアクセスポイントを予め定めることにより、ネットワーク制御を停止することなく引き継ぐことができる。
また、上述の子アクセスポイントは、アクセスポイント間における通信を実行する間は親アクセスポイントが使用するチャネルに変更することにより、アクセスポイントは親子間で形成したネットワークを制御することができる。
【0064】
また、上述の実施形態では、互いに電波が干渉することのない周波数チャネルを利用し、制御対象とする方法について説明した。しかし、これに限ることなく、例えば、多少干渉しても実用上許容できる範囲であればその他の周波数チャネルを利用する周波数チャネルに加えるようにしてもよい。
【0065】
なお、上述の実施形態では、ユーザによりアクセスポイントに設定されるネットワークの識別名としてSSIDが使用される例について説明した。しかしこれに限らず、ESSID(Extended Service Set IDentifier)がネットワークの識別名として使用されることがある。ESSIDは、無線通信システムにおけるネットワークグループを識別するための識別名であり、個別のアクセスポイントの識別名であるSSIDを、複数のアクセスポイントで同じSSIDが設定できるよう拡張したものである。
ESSIDがネットワークの識別名として利用される場合は、アクセスポイントの数を算出するためにBSSID(Basic Service Set IDentifier)を利用してもよい。BSSIDは、通信端末を識別するための識別子であり、通常はネットワークのアクセスポイントのMACアドレスと同じものが使用される。すなわちアクセスポイント毎に固有の識別名となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…無線通信システム
100,100−1,100−2…親AP
105…アンテナ
110…無線通信部
120…通信制御部
121…ビーコン制御部
122…タイミング制御部
123…チャネルスキャン部
124…チャネル制御部
125…親AP子AP制御部
126…チャネル干渉度判定部
160…記憶部
161…親AP管理DB
162…親セル内SSID数DB
163…親子SSID数DB
164…STA数DB
165…干渉度テーブル
166…チャネル切替上限閾値算出パターン設定ファイル
200,200−1,200−2,200−3…子AP
300,300−1,300−2,・・・,300−11…STA
400…セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20