特許第5953567号(P5953567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953567
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】蓄電装置およびその充放電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160707BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H01M10/44 P
   H01M10/44
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-276498(P2011-276498)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-128347(P2013-128347A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大内 良孝
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】郷内 敏夫
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3313647(JP,B2)
【文献】 特開2011−078276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、
前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる充放電電流を独立して制御する電流制御手段と、
前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる充放電電流を制御する制御手段とを有するとともに、
前記制御手段は、満充電検知電圧、該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧、放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、充電動作時には、何れかの前記セル電圧が前記充電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルへ供給される充電電流が小さくなるようにするとともに、全ての電池セルのセル電圧が充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にして小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させる一方、放電動作時には、何れかのセル電圧が前記放電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、
前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段と、
前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる充電電流を制御する制御手段とを有するとともに、
前記制御手段は、満充電検知電圧および該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、充電動作時には、何れかの前記セル電圧が前記充電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルについて供給される充電電流を小さくした状態で充電を続けるとともに、全ての電池セルのセル電圧が充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にして小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、
前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段と、
前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる放電電流を制御する制御手段とを有するとともに、
前記制御手段は、放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、放電動作時には、何れかのセル電圧が前記放電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を制御することにより前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載する蓄電装置において、
前記電流制御手段は、各々がインピーダンス素子とスイッチ手段を直列接続した構成からなり前記各電池セルにそれぞれ並列に接続された複数のバイパス回路で構成され、
前記制御手段は、各々が前記各電池セルのセル電圧を監視する複数の電圧監視回路の監視結果に基づき前記各スイッチ手段を開閉制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の充放電方法であって、
充電時には、何れかの前記セル電圧が、満充電であることを表す満充電検知電圧よりも低い電圧として予め設定した充電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルへ供給される充電電流が小さくなるようにするとともに、全ての電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態とすることにより小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧よりも高い満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させる一方、
放電時には、何れかの前記セル電圧が、放電下限電圧であることを表す放電下限検知電圧よりも高い電圧として予め設定した放電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が前記放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させることを特徴とする蓄電装置の充放電方法。
【請求項6】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の充電方法であって、
何れかの前記セル電圧が、満充電検知電圧よりも低い電圧として予め設定した充電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルについて供給される充電電流を小さくした状態で充電を続けるとともに、全ての電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にすることにより小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧よりも高い満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させることを特徴とする蓄電装置の充電方法。
【請求項7】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の放電
方法であって、
何れかの前記セル電圧が、放電下限検知電圧よりも高い電圧として予め設定した放電制
御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに
流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達してい
ない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池
セルのセル電圧が前記放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセ
ル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させることを特徴とする蓄電装
置の放電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置およびその充放電方法に関し、特に複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットに充電あるいは放電を行う際には、電池セルによって過充電や過放電が生じないように制御することが必要となる。電池セルに対する過充電や過放電は電池セルそのものの劣化を生じる原因となるためである。過放電や過充電が生じることを抑制する技術として、電池セルユニットの場合には、充電で電池セル間にバラツキが生じるのを抑制するために、各電池セル間で充電状態を均等化する、いわゆるバランス調整を行うことが知られている。バランス調整を行う技術としては例えば、特許文献1〜4に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285162号公報
【特許文献2】特開平07−336905号公報
【特許文献3】特開2007−318950号公報
【特許文献4】特開平05−064377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献3では、満充電の目標電圧より低い制御開始電圧に到達した二次電池セルの充電電流を小さくして全ての二次電池セルが満充電の目標電圧に到達するまで充電を行うものであるが、制御開始電圧から満充電の目標電圧までは充電電流を小さくして行うため、その電圧値の差が大きいと充電に時間がかかり、その差が小さいと一部の二次電池セルは早々に満充電の目標電圧に達している一方で他の二次電池セルは小さな充電電流での充電が継続されることとなり、その時間が長いと満充電レベルに達している二次電池セルに対して過充電を生じ得る恐れがある。
【0005】
特許文献2では、組電池を構成する複数の単電池毎に端子電圧制御部で端子電圧を一定に保つように充電電流をバイパスし、バイパス電流が飽和したら組電池への充電電流を減少させるようにするもので、端子電圧を一定に保つように常時端子電圧を制御したり、バイパス電流の飽和を検出して充電電流を減少させる制御を行う等、複雑な制御が必要となる。また、充電電流値は満充電に向かうにつれて下げられていくこととなり、満充電近くでは充電電流値も小さくなるので満充電近くで充電まで時間がかかることが懸念される。
【0006】
特許文献4では満充電になった電池セルに対する充電電流をバイパスすることを開示するに過ぎず、全ての電池セルが満充電となるまでに満充電と判断済みの電池セルへ充電電流を小さくしての充電が継続されることとなり、他の電池セルが満充電となるまでの時間が長いと満充電と判断済みの電池セルへの過放電となる恐れがある。
【0007】
また、いずれの文献においても充電時のバランス調整についての記載があるに過ぎず、放電時におけるバランス調整については特に述べられていない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、電池セルの過充電や過放電を確実に防止するとともに、電池セル間での充電状態の均等化を迅速に実現し得る蓄電装置およびその充放電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる充放電電流を独立して制御する電流制御手段と、前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる充放電電流を制御する制御手段とを有するとともに、前記制御手段は、満充電検知電圧、該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧、放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、充電動作時には、何れかの前記セル電圧が前記充電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルへ供給される充電電流が小さくなるようにするとともに、全ての電池セルのセル電圧が充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にして小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させる一方、放電動作時には、何れかのセル電圧が前記放電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置にある。
【0010】
本態様によれば、充電動作においては、2つの閾値電圧(充電制御開始電圧、満充電検知電圧)を設けて充電を2段階で制御するものであるので、所定の充電動作を過充電等の可能性を除去しつつ適正に短時間で行うことができると同時に、放電動作においては、他の2つの閾値電圧(放電制御開始電圧、放電下限検知電圧)を設けて放電を2段階で制御するものであるので、放電動作を過放電等の可能性を除去しつつ放電制御開始から終了までの動作を適正に行うことができる。また、充電時においては、全ての電池セルが充電制御開始電圧に達すると電流制御手段により小さくなった充電電流を大きくするので過充電等となることを低減しつつ適正に短時間での充電動作が実現できる。
【0011】
本発明の第2の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段と、前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる充電電流を制御する制御手段とを有するとともに、前記制御手段は、満充電検知電圧および該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、充電動作時には、何れかの前記セル電圧が前記充電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルについて供給される充電電流を小さくした状態で充電を続けるとともに、全ての電池セルのセル電圧が充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にして小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置にある。
【0012】
本態様によれば、充電動作を、2つの閾値電圧(充電制御開始電圧、満充電検知電圧)を設けて充電を2段階で制御するものであるので、充電動作を過充電等の可能性を除去しつつ適正に短時間で行うことができる。特に、全ての電池セルが充電制御開始電圧に達すると電流制御手段により小さくなった充電電流を大きくするので過充電等となることを低減しつつ適正に短時間での充電動作が実現できる。
【0013】
本発明の第3の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットと、前記複数の電池セルに対応させて設けられ、前記各電池セルに流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段と、前記各電池セルのセル電圧に基づき前記電流制御手段を介して前記各電池セルに流れる放電電流を制御する制御手段とを有するとともに、前記制御手段は、放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧がパラメータとして設定されており、放電動作時には、何れかのセル電圧が前記放電制御開始電圧に到達すると、前記電流制御手段を制御することにより前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させるように構成されていることを特徴とする蓄電装置にある。
【0014】
本態様によれば、放電動作を、他の2つの閾値電圧(放電制御開始電圧、放電下限検知電圧)を設けて2段階で制御するものであるので、放電動作を過放電等の可能性を除去しつつ放電制御開始から終了までの動作を適正に行うことができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれか一つに記載する蓄電装置において、前記電流制御手段は、各々がインピーダンス素子とスイッチ手段を直列接続した構成からなり前記各電池セルにそれぞれ並列に接続された複数のバイパス回路で構成され、前記制御手段は、各々が前記各電池セルのセル電圧を監視する複数の電圧監視回路の監視結果に基づき前記各スイッチ手段を開閉制御することを特徴とする蓄電装置にある。
【0016】
本態様によれば、対応する電池セルの電流をバイパスさせることで、容易かつ適正に制御することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の充放電方法であって、充電時には、何れかの前記セル電圧が、満充電であることを表す満充電検知電圧よりも低い電圧として予め設定した充電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段を第1の状態とすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルへ供給される充電電流が小さくなるようにするとともに、全ての電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態とすることにより小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧よりも高い満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させる一方、放電時には、何れかの前記セル電圧が、放電下限電圧であることを表す放電下限検知電圧よりも高い電圧として予め設定した放電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が前記放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させることを特徴とする蓄電装置の充放電方法にある。
【0018】
本態様によれば、充電動作においては、2つの閾値電圧(充電制御開始電圧、満充電検知電圧)を設けて充電を2段階で制御するものであるので、充電動作を過充電等の可能性を除去しつつ適正に短時間で行うことができると同時に、放電動作においては、他の2つの閾値電圧(放電制御開始電圧、放電下限検知電圧)を設けて放電を2段階で制御するものであるので、過放電等の可能性を除去しつつ放電制御開始から終了までの動作を適正に行うことができる。また、充電時においては、全ての電池セルが充電制御開始電圧に達すると電流制御手段により小さくなった充電電流を大きくするので過充電等となることを低減しつつ適正に短時間での充電動作が実現できる。
【0019】
本発明の第6の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の充電方法であって、何れかの前記セル電圧が、満充電検知電圧よりも低い電圧として予め設定した充電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる充電電流を独立して制御する電流制御手段を第1の状態にすることにより前記充電制御開始電圧に達した電池セルについて供給される充電電流を小さくした状態で充電を続けるとともに、全ての電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧に達すると前記電流制御手段を第2の状態にすることにより小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行い、何れかの電池セルのセル電圧が前記充電制御開始電圧よりも高い満充電検知電圧に達すると充電動作を終了させることを特徴とする蓄電装置の充電方法にある。
【0020】
本態様によれば、充電動作を、2つの閾値電圧(充電制御開始電圧、満充電検知電圧)を設けて充電を2段階で制御するものであるので、過充電動作を過充電等の可能性を除去しつつ適正に短時間で行うことができる。特に、全ての電池セルが充電制御開始電圧に達すると電流制御手段により小さくなった充電電流を大きくするので過充電等となることを低減しつつ適正に短時間での充電動作が実現できる。
【0021】
本発明の第7の態様は、複数の電池セルを直列に接続して構成される電池セルユニットを有する蓄電装置の放電方法であって、何れかの前記セル電圧が、放電下限検知電圧よりも高い電圧として予め設定した放電制御開始電圧に到達すると、前記各電池セルに対応させて設けられ、かつ前記各電池セルに流れる放電電流を独立して制御する電流制御手段により前記放電制御開始電圧に達していない電池セルから放電される放電電流が大きくなるようにするとともに、全ての前記電池セルのセル電圧が前記放電制御開始電圧に達した後であって、何れかの前記電池セルのセル電圧が前記放電下限検知電圧に達すると放電動作を終了させることを特徴とする蓄電装置の放電方法にある。
【0022】
本態様によれば、放電動作を、他の2つの閾値電圧(放電制御開始電圧、放電下限検知電圧)を設けて2段階で制御するものであるので、放電動作を過放電等の可能性を除去しつつ放電制御開始から終了までの動作を適正に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、充電時あるいは放電時にそれぞれ2段階の閾値、すなわち充電制御開始電圧と満充電検知電圧および/または放電制御開始電圧と放電下限検知電圧を設定して各閾値毎に電池セルユニットを構成する各電池セルの充電電流および/または放電電流を制御することができる。この結果、複雑な制御となることなく過充電や過放電を生起しないように適格に制御するとともに、電池セル間での充電状態・放電状態を均等化することをより所定の充放電を迅速に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る蓄電装置を示すブロック線図である。
図2図1に示す蓄電装置における充電動作を示す動作フローチャートである。
図3図1に示す蓄電装置における放電動作を示す動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態に係る蓄電装置を示すブロック線図である。同図に示すように、蓄電装置Iは、直列接続された複数の電池セル10A〜10E(複数(本形態では5個)の電池セル10A〜10Eをまとめて電池セルユニット10と称する)と、各々が、インピーダンス素子20A〜20Eの1つとスイッチ30A〜30Eの1つが直列接続した構成からなり電池セルユニット10の各電池セル10A〜10Eの対応する1つにそれぞれ並列に接続された複数のバイパス回路で構成される電流制御手段と、充電の進行に伴い上昇するとともに放電の進行に伴い減少する各電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視し、この監視結果により、予め設定された満充電検知電圧、充電制御開始電圧、放電制御開始電圧または放電下限検知電圧に基づきスイッチ30A〜30Eをそれぞれ開閉制御することで電池セルユニット10の充放電動作を制御する制御手段1とを有している。
【0027】
ここで、制御手段1は、電池セルユニット10への充電時には、電池セル10A〜10Eのうちセル電圧が満充電検知電圧より低い充電制御開始電圧に到達した電池セルに対してはスイッチ30A〜30Eのうち対応するスイッチを閉状態にすることによりバイパス回路を動作させて電池セル10A〜10Eのうち対応する電池セルへ供給される充電電流の量を小さくする。全ての電池セル10A〜10Eのセル電圧が充電制御開始電圧に達すると全てのスイッチ30A〜30Eを開状態にすることによりバイパス回路の動作を停止させて小さくなった充電電流を再び大きくして充電を行わせる。かくして、いずれかの電池セル10A〜10Eのセル電圧が満充電検知電圧に達すると充電を終了する。このときの充電電流は充電用電源100から供給される。
【0028】
一方、電池セルユニット10からの放電時には、セル電圧が放電下限検出電圧より高い放電制御開始電圧に電池セル10A〜10Eの何れかが到達すると、電池セル10A〜10Eのうち放電制御開始電圧に到達した電池セルに関してはスイッチ30A〜30Eのうちの対応するものを開状態、それ以外の電池セルのスイッチを閉状態とすることにより、電池セル10A〜10Eのうちバイパス回路を動作させて放電制御開始電圧に到達していない電池セルからの放電電流の量を増加させる。全ての電池セル10A〜10Eのセル電圧が放電制御開始電圧に達すると全てのスイッチ30A〜30Eを開状態にしてバイパス回路の動作を停止することにより全ての電池セル10A〜10Eでの放電を行わせる。かくして、いずれかの電池セル10A〜10Eのセル電圧が放電下限検知電圧に達すると放電を終了させる。このときの放電電流は負荷110に供給される。
【0029】
かかる一連の制御、特にスイッチ30A〜30Eの制御を行う本形態における制御手段1は、電圧監視回路40A,40B,40C,40D,40E、格納回路50、記憶回路60、一致検出回路70、制御装置80、充電/放電終了検出回路90およびスイッチ制御回路95A,95B,95C,95D,95Eを有している。ここで、電圧監視回路40A〜40Eは、充電が進むにつれて上昇し、放電が進むにつれて減少する各電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視し、その監視結果に応じてスイッチ30A〜30Eをそれぞれ開閉制御する信号を出力する。格納回路50は電圧監視回路40A〜40Eにおいてセル電圧との比較に用いられる設定電圧に相当するデータを格納する。記憶回路60は、格納回路50に格納するためのデータを記憶し、制御装置80からの出力指示に基づき所定のデータを出力するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)のようなメモリ等で構成される。一致検出回路70は電圧監視回路40A〜40Eの出力信号を入力する論理積ゲートである。充電/放電終了検出回路90は電圧監視回路40A〜40Eの出力信号を入力する論理和ゲートである。制御装置80は、一致検出回路70の出力を受け、この出力等に基づき記憶回路60へ格納回路50に格納すべきデータを出力する出力指示の信号を送出するとともに、充電/放電終了検出回路90の出力を受け、充電や放電の終了処理を行う等の制御を行う。スイッチ制御回路95A〜95Eの各々は、制御装置80からの制御信号に応じてそれぞれスイッチ30A〜30Eの対応する1つに対する開閉制御を行う信号を出力する。
【0030】
かかる制御手段1における充放電動作時の具体的な制御は図2および図3に示すような態様で行われる。図2は充電動作を説明する動作フローチャート、図3は放電動作を説明する動作フローチャートを示す。また、充電時には充電用電源100から充電電流が電池セルユニット10へ供給され、充電開始時点ではスイッチ30A〜30Eがいずれも開状態(オフ状態とも称する)とされている。一方、放電時には電池セルユニット10から放電電流が負荷110へ供給され、放電開始時点ではスイッチ30A〜30Eがいずれも開状態(オフ状態とも称する)とされている。
【0031】
<充電動作時の制御>
1)制御装置80が、図示されていない操作部からの充電指示や電池セル10A〜10Eの充電状態(SOC)が設定下限(例えば、SOCが30%以下)に到達した等の任意の条件を満たした時点における自動処理によって、蓄電装置Iが充電状態となったことを認識するとことで充電処理が開始される(S101参照)。このとき、制御装置80は、充電時におけるセル電圧の監視に用いられる設定電圧に相当するデータを記憶回路60から読み出して出力させる出力指示信号を発生する。充電時における設定電圧には、満充電になったことを検知するための満充電検知電圧と、満充電検知電圧より低い充電制御開始電圧とがある。ここで、記憶回路60には満充電検知電圧値と充電制御開始電圧値のそれぞれに相当するデータが格納されている。充電時は制御装置80からの出力指示信号により、まず充電制御開始電圧値に相当するデータが記憶回路60から読み出されて出力されることにより、充電制御開始電圧値に相当するデータが格納回路50に格納される。
【0032】
2)格納回路50に格納されたデータが電圧監視回路40A〜40Eに送出される(S102参照)。
【0033】
3)電圧監視回路40A〜40Eがそれぞれ対象の電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視するための計測を行う(S103参照)。
【0034】
4)電圧監視回路40A〜40Eは、計測したセル電圧を、ディジタルデータとして格納回路50から送られてくる充電制御開始電圧値に相当するデータと比較する。かかる比較の結果、電圧監視回路40A〜40Eはそれぞれ、自身が監視する電池セル10A〜10Eの何れかが充電制御開始電圧に到達したか否かの判断結果を表す信号を出力する(S104参照)。例えば、電圧監視回路40Cが、監視対象の電池セル10Cのセル電圧が充電制御開始電圧に到達したと判断した場合、電圧監視回路40Cは、例えばハイレベル(5Vレベル)の信号を出力し、それ以外の電圧監視回路40A,40B,40D,40Eはローレベル(0Vレベル)の信号を出力する。
【0035】
5)電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が充電制御開始電圧に到達したか否かを一致検出回路70により判断する(S105参照)。
【0036】
6)電池セル10A〜10Eのいずれかが充電制御開始電圧に到達した時には、充電/放電終了検出回路90はハイレベルの信号を制御装置80へ出力する。また、電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が充電制御開始電圧に到達していない場合には、一致検出回路70がローレベルの信号を制御装置80に出力する。この結果、制御装置80は一致検出回路70と充電/放電終了検出回路90との出力信号に基づき、スイッチ制御回路95A〜95Eに対して電圧監視回路40A〜40Eからの出力に応じてスイッチ30A〜30Eの開閉を制御するための制御信号を出力する。スイッチ制御回路95A〜95Eは制御装置80からの指示に応じて、対応する電圧監視回路40A〜40Eからの出力に基づくスイッチ制御信号を出力する。電圧監視回路40A〜40Eからの出力の何れかが、電池セル10A〜10Eの何れかのセル電圧が充電制御開始電圧に到達していることを指示するものであった場合は、その電池セル10A〜10Eに流れる充電電流が小さくなるようにするため、本実施例ではその電池セルに並列接続されたバイパス回路のスイッチを閉状態(オン状態)とし、それ以外の電池セルに並列接続されたバイパス回路のスイッチを開状態(オフ状態)のままとする(S106参照)。
【0037】
例えば、電池セル10Cのセル電圧が充電制御開始電圧に到達した場合は、充電制御開始電圧に到達したと判断された電池セル10Cに対応するスイッチ制御回路95Cからはスイッチ30Cを閉状態(オン状態)とする信号を出力し、充電制御開始電圧に到達していない電池セル10A,10B,10D,10Eに対応するスイッチ制御回路95A,95B,95D,95Eはそれぞれ対応するスイッチ30A,30B,30D,30Eを開状態(オフ状態)のままとする信号を出力する。
【0038】
この結果、スイッチ30Cを閉状態とすることでインピーダンス素子20Cとスイッチ30Cで構成されるバイパス回路が有効となるので、電池セル10Cに供給されていた充電電流はバイパス回路にも流れることとなり、電池セル10Cに供給されていた充電電流の量は低減される。充電が進行して、電池セル10A,10B,10D,10Eのセル電圧が充電制御開始電圧に到達する毎に、その対象の電池セル10A,10B,10D,10Eのバイパス回路を有効とするために対象のスイッチ30A,30B,30D,30Eを閉状態とする。
【0039】
7)かかる制御の結果、電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が充電制御開始電圧に到達したことが一致検出回路70で検出された場合には、制御装置80に一致検出した旨の信号として、本形態ではハイレベルの信号を送る。この結果、制御装置80はその信号に応じて、充電時における次の設定電圧である満充電検知電圧値に相当するデータを格納回路50へ格納するように記憶回路60へ指示する。かくして、記憶回路60からは、満充電検知電圧値に相当するデータが読み出されて格納回路50へ出力されることで、満充電検知電圧値に相当するデータが格納回路50に格納される。格納回路50に格納されたデータは、各電圧監視回路40A〜40Eへ送られるとともに、制御装置80はスイッチ30A〜30Eを全て開状態に戻すようにスイッチ制御回路95A〜95Eに指示する(S107参照)。スイッチ30A〜30Eを開状態(オフ状態)とすることに伴い、一致検出回路70の出力もローレベルの信号に戻り、充電/放電終了検出回路90の出力もローレベルの信号に戻ることとなる。
【0040】
8)この後、電圧監視回路40A〜40Eの各々は対象の電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視するための所定の計測を行い、計測したセル電圧をディジタルデータ化して格納回路50から送られてくる満充電検知電圧値に相当するデータと比較する(S108参照)。
【0041】
9)S108における電圧監視回路での比較の結果、電圧監視回路40A〜40Eにより電池セル10A〜10Eのうちの何れかのセル電圧が満充電検知電圧に到達したと判断されたことで充電/放電終了検出回路90からの出力信号がハイレベルになることに応じて制御装置80が充電を終了するための処理を行う(S109参照)。
【0042】
以上、詳述したように、本形態に係る蓄電装置Iにおいては、2つの閾値電圧(充電制御開始電圧、満充電検知電圧)を設けて充電を2段階で制御するものとしている。特に、全ての電池セルのセル電圧が充電制御開始電圧に達した場合にはバイパス回路を構成するスイッチ30A〜30Eを一旦全て開状態に戻してバイパス回路を無効化して満充電検知電圧に到達するまで充電を行うようにしている。このように、満充電検知電圧に到達するまでの充電電流を再び大きくした電流値で行うので、バイパス制御している時間を短縮でき、バイパスにより消費される電力を低減することが期待できる。
【0043】
また、充電制御開始電圧から満充電検知電圧までの充電の時間を短縮することができる。この結果、過充電となることを抑制し、効率的な充電を実現することが可能となる。
【0044】
<放電動作時の制御>
1)制御装置80が、図示されていない操作部からの放電指示や負荷110の接続を認識したことによる自動処理によって、蓄電装置Iが放電状態となったことを認識することで放電処理が開始される(S201参照)。このとき、制御装置80は、放電時におけるセル電圧の監視に用いられる設定電圧に相当するデータを記憶回路60から読み出して出力させる出力指示信号を発生する。放電時における設定電圧には、放電下限になったことを検知するための放電下限検知電圧と、放電下限検知電圧より高い放電制御開始電圧とがある。ここで、記憶回路60には放電下限検知電圧値と放電制御開始電圧値のそれぞれに相当するデータが格納されている。放電時は制御装置80からの出力指示信号により、まず放電制御開始電圧値に相当するデータが記憶回路60から読み出されて出力されることにより、放電制御開始電圧値に相当するデータが格納回路50に格納される。
【0045】
2)格納回路50に格納されたデータが電圧監視回路40A〜40Eに送出される(S202参照)。
【0046】
3)電圧監視回路40A〜40Eがそれぞれ対象の電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視するための計測を行う(S203参照)。
【0047】
4)電圧監視回路40A〜40Eは、計測したセル電圧を、ディジタルデータとして格納回路50から送られてくる放電制御開始電圧値に相当するデータと比較する。かかる比較の結果、電圧監視回路40A〜40Eはそれぞれ、自身が監視する電池セル10A〜10Eの何れかが放電制御開始電圧に到達したか否かの判断結果を表す信号を出力する(S204参照)。例えば、電圧監視回路40Cが、監視対象の電池セル10Cのセル電圧が放電制御開始電圧に到達したと判断した場合、電圧監視回路40Cは、例えばハイレベルの信号を出力し、それ以外の電圧監視回路40A,40B,40D,40Eはローレベルの信号を出力する。
【0048】
5)電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が放電制御開始電圧に到達したか否かを一致検出回路70により判断する(S205参照)。
【0049】
6)電池セル10A〜10Eのいずれかが放電制御開始電圧に到達した時には、充電/放電終了検出回路90はハイレベルの信号を制御装置80へ出力する。また、電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が放電制御開始電圧に到達していない場合には、一致検出回路70がローレベルの信号を制御装置80に出力する。この結果、制御装置80は一致検出回路70と充電/放電終了検出回路90との出力信号に基づき、スイッチ制御回路95A〜95Eに対して電圧監視回路40A〜40Eからの出力に応じてスイッチ30A〜30Eの開閉を制御するための制御信号を出力する。スイッチ制御回路95A〜95Eは制御装置80からの指示に応じて、対応する電圧監視回路40A〜40Eからの出力に基づくスイッチ制御信号を出力する。電圧監視回路40A〜40Eからの出力の何れかが、電池セル10A〜10Eの何れかのセル電圧が充電制御開始電圧に到達していることを指示するものであった場合は、その電池セル10A〜10Eに流れる充電電流が小さくなるようにするため、本実施例ではその電池セルに並列接続されたバイパス回路のスイッチを開状態(オフ状態)のままとし、それ以外の電池セルに並列接続されたバイパス回路のスイッチを閉状態(オン状態)とする(S206参照)。
【0050】
例えば、電池セル10Cのセル電圧が放電制御開始電圧に到達した場合は、放電制御開始電圧に到達したと判断された電池セル10Cに対応するスイッチ制御回路95Cからはスイッチ30Cを開状態(オフ状態)のままとする信号を出力し、放電制御開始電圧に到達していない電池セル10A,10B,10D,10Eに対応するスイッチ制御回路95A,95B,95D,95Eはそれぞれ対応するスイッチ30A,30B,30D,30Eを閉状態(オン状態)とする信号を出力する。
【0051】
この結果、スイッチ30A,30B,30D,30Eを閉状態とすることでインピーダンス素子20A,20B,20D,20Eとスイッチ30A,30B,30D,30Eで構成されるバイパス回路が有効となって閉ループが形成されるので、充電制御開始電圧に達していない電池セル10A,10B,10D,10Eに対する放電電流量が増加されることとなる。放電が進行して、電池セル10A,10B,10D,10Eのセル電圧が放電制御開始電圧に到達する毎に、その対象の電池セル10A,10B,10D,10Eのバイパス回路を無効とするために対象のスイッチ30A,30B,30D,30Eを開状態とする。
【0052】
7)かかる制御の結果、電池セル10A〜10Eの全てのセル電圧が放電制御開始電圧に到達したことが一致検出回路70で検出された場合には、制御装置80に一致検出した旨の信号として、本形態ではハイレベルの信号を送る。この結果、制御装置80はその信号に応じて、放電時における次の設定電圧である放電下限検知電圧値に相当するデータを格納回路50へ格納するように記憶回路60へ指示する。かくして、記憶回路60からは、放電下限検知電圧値に相当するデータが読み出されて格納回路50へ出力されることで、放電下限検知電圧値に相当するデータが格納回路50に格納される。格納回路50に格納されたデータは各電圧監視回路40A〜40Eへ送られる(S207参照)。
【0053】
8)この後、電圧監視回路40A〜40Eの各々は対象の電池セル10A〜10Eのセル電圧を監視するための所定の計測を行い、計測したセル電圧をディジタルデータ化して格納回路50から送られてくる放電下限検知電圧値に相当するデータと比較する(S208参照)。
【0054】
9)S208における電圧監視回路での比較の結果、電圧監視回路40A〜40Eにより電池セル10A〜10Eのうちの何れかのセル電圧がさらに低下して放電下限検知電圧に到達したと判断されたことで充電/放電終了検出回路90からの出力信号がハイレベルになることに応じて制御装置80が放電を終了するための処理を行う(S209参照)。
【0055】
以上、詳述したように、本形態に係る蓄電装置Iにおいては、2つの閾値電圧(放電制御開始電圧、放電下限検知電圧)を設けて放電を2段階で制御するものとしている。特に、いずれか1つの電池セル10A〜10Eが放電制御開始電圧に到達すると、その電池セル10A〜10E以外の電池セル10A〜10Eに並列配置するバイパス回路を構成するスイッチ30A〜30Eを全て閉状態とするものとし、放電制御開始電圧に到達する毎にその電池セル10A〜10Eのスイッチ30A〜30Eを開状態としていった後に、全ての電池セル10A〜10Eが放電制御開始電圧に到達した後にはスイッチ30A〜30Eが開状態で各電池セル10A〜10Eに対して放電下限検知電圧に到達するまで放電を行うようにしている。このように、全ての電池セルに対し、放電下限検知電圧に到達するまでの放電電流をバイパス回路を無効にした状態での電流値で行うので、バイパス制御している時間を短縮でき、バイパスにより消費される電力を低減することが期待できる。
【0056】
また、放電制御開始電圧から放電下限検知電圧までの充電の時間を短くすることもできる。この結果、過放電となることを抑制し、効率的な放電を実現することが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施の形態に示すものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0058】
例えば、本発明における制御装置は、満充電検知電圧および該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧で上述の如く各電流制御手段を動作させるか、または放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧で上述の如く各電流制御手段を動作させるような構成となっていれば本発明の技術思想に含まれる。そこで、記憶回路60や格納回路50を用いる代わりに、満充電検知電圧および該満充電検知電圧よりも低い充電制御開始電圧をパラメータとして各電流制御手段に持たせて上述の如く各電流制御手段を動作させるか、または放電下限検知電圧および該放電下限検知電圧よりも高い放電制御開始電圧をパラメータとして各電流制御手段に持たせて上述の如く各電流制御手段を動作させるような構成とすることもできる。
【0059】
また、電流制御手段を、直列接続されたインピーダンス素子20A〜20Eとスイッチ30A〜30Eを直列に接続してなるバイパス回路に限定する必要もない。上記実施の形態とすれば簡易な回路構成で実現することが可能であるが、各電池セル10A〜10Eに対応させて設けられ、各電池セル10A〜10Eに流れる充電電流または放電電流を独立して制御することができるような構成となっていれば本発明に対して適用可能である。また、直列に接続されて電池セルユニット10を構成する電池セル10A〜10Eの数は、当然任意である。
【0060】
さらに、一致検出回路70、充電/放電終了検出回路90は前述の構成に限るものではなく、一致検出回路70は否定論理和ゲートとしてもよく、充電/放電終了検出回路90は否定論理積ゲートであってもよい。このように、同様な機能を奏するものであれば、一致検出回路70や充電/放電終了検出回路90を他の構成とすることを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は直流電源としての蓄電装置を製造販売するとともに、これを利用した電源システムを構築する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
I 蓄電装置
1 制御手段
10 電池セルユニット
10A〜10E 電池セル
20A〜20E インピーダンス素子
30A〜30E スイッチ
100 充電用電源
110 負荷
図1
図2
図3