(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953611
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】鋼板製枠体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/38 20060101AFI20160707BHJP
E06B 3/988 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
E04C2/38 E
E06B3/988 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-190525(P2012-190525)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47520(P2014-47520A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】川上 寛明
(72)【発明者】
【氏名】白岩 史年
【審査官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−049793(JP,A)
【文献】
特開2002−285660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/38
E06B 3/96 − 3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚2.3mm未満の鋼板を用い、断面が角形あるいは溝形に曲げられた枠体であって、該枠体の内側角部に対応して互いに交差する方向に形成された側片部と、該側片部間を結ぶ中間部よりなる補助部材を、前記枠体の端部における内側側面に前記側片部を接合して前記枠体角部に取り付け、前記枠体の角部内側側面と前記補助部材の中間部との間にビスホールを形成したことを特徴とする鋼板製枠体。
【請求項2】
前記補助部材が前記鋼板の端部に鋼板と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼板製枠体。
【請求項3】
前記鋼板がめっき鋼板であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板製枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、窓、ドア等のサッシや、その他、支柱や柵などに用いられる鋼板製の枠体に関するもので、特に、その枠体と直行して取り付けられる他の部材(直行部材)との接続構造を有する枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サッシ枠や障子枠用の枠材としては、従来、アルミ押出し型材を用いた枠材が多用されている。このアルミ製の枠材では、強度を確保する点から枠体断面を大きくせざるを得ないことのほか、耐火性能や製造コストの点などでも問題を有している。このため、強度が高く、耐火性能や製造コストの点でも有利な鋼板製の枠材も利用されている。
【0003】
ところで、2つの直行する枠体をサッシなどに組み立てる場合、アルミ押出し型材を用いた枠体では、枠体長手方向に断面C型のビスホールが枠体と一体に形成されており、これを利用してビス止めにより簡単に組み立てを行うことができるが、鋼板製の枠体では、鋼板の合わせ部にビス止め用の穴をあけて、そこのビスをねじ込んで両者を接合したり、溶接により接合したりしている。
【0004】
しかし、鋼板の合わせ部をビス止めする場合、板厚が2.3mm未満の薄鋼板では、ビスとの係合長さを十分に取れないという問題がある。また、溶接では設備や専門の作業者が必要になるなどの問題がある。そこで、鋼板製の枠体においても、枠体長手方向のビスホールを有することが望ましい。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には、枠材の端縁から長手方向に、所定の間隔をおいて横方向の切込み線を複数形成するとともに、前記端縁と前記切込み線とに挟まれた連架部、および切込み線と切込み線とに挟まれた連架部を順に、枠材の板面を境に一方側と他方側とに交互に半円弧状に曲げ加工してビスホールを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−242363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されている技術では、押出し型材製の枠体と同様、ビスホールを枠体と一体に形成することができるが、枠体に切り込み線を入れるなどビスホールの成形加工自体が複雑であるという問題がある。
そこで、本発明は、簡単な手段によって形成できるビスホールを有する枠体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した結果、断面が角形や溝形の枠体では、角部の内側に補助部材を取り付けて、角部と補助部材との間でビスホールを形成するようにすれば複雑な加工をしないで、ビスホールが形成できることを見出した。
そのようになされた本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 板厚2.3mm未満の鋼板
を用い、断面が角形あるいは溝形に
曲げられた枠体であって、該枠体の
内側角部に対応して互いに交差する方向に形成された側片部と、該側片部間を結ぶ中間部よりなる補助部材を
、前記枠体の端部における内側側面に前記側片部を接合して
前記枠体角部に取り付け、前記枠体の
角部内側側面と前記補助部材の中間部との間にビスホールを形成したことを特徴とする鋼板製枠体。
(2) 前記補助部材が鋼板の端部に鋼板と一体に形成されていることを特徴とする(1)に記載の鋼板製枠体。
(3) 前記鋼板がめっき鋼板であることを特徴とする(1)または(2)に記載の鋼板製枠体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄鋼板を用いた、省エネ性能や防火性能に優れ、窓、ドア等のサッシとして利用することができる枠体であって、ビスにより直行部材との接合が容易な枠体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】角形断面の枠体端部内側に枠体長手方向に沿ったビスホールを有する枠体の一例を示す図である。
【
図2】ビスホールを形成するための補助部材の一例を示す図である。
【
図3】ビスホールを有する枠体の他の例を示す図である。
【
図5】溝型断面の枠体に設けられたビスホールを説明するための図であり、(a)は枠体の断面形状を示し、(b)は枠体にガラス障子をはめ込んだ状態を示す。
【
図6】溝型断面の枠体にビスホールを設ける他の方法を説明するための図である。
【
図7】枠体の組立方法を説明するための図であり、(a)は組立前の態様を示し、(b)は組立後のビス止め前の態様を示し、(c)は一方の枠体のD−D線の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、鋼板2に曲げ加工を施して角形断面に成形し、端部を一部重ね合わせ、重ね合わせ部3を溶接や接着などにより接合して形成した枠体1の内側角部に、別途取り付けられた補助部材10を利用してビスホール4を形成した例を示す。
【0012】
補助部材10は、
図2に示すように、枠体1の内側角部に対応して互いに交差する方向に形成された第1と第2の側片部11、12と、該側片部間を結ぶ中間部13より構成されており、アングル材の頂部が欠けた形状とされている。
該補助部材10の側片部11、12は、枠体1の角部を構成する2つの内側側面にそれぞれ当接するように取り付けられる。中間部13は、第1と第2の側片部11、12間において前記角部と対向し、該角部との間でビスホール4となる空間を形成する。
【0013】
この補助部材10を、
図1のように、溶接や接着などの接合手段により枠体1の端部の角部に固定することにより、枠体1の角部と補助部材11、12の中間部13の間に枠体1の長手方向に沿った空間が形成される。この空間を予めビスと係合するような形に形成することにより、その空間をビスホール4として利用できるようになる。
なお、補助部材10の側片部11、12は、必ずしも両方が枠体の内側側面に固定される必要はない。片側だけを固定し、他側を拘束しないようにする方が補助部材に無理な力がかかった場合でも、それを逃がすことができるので好ましい。
【0014】
このように、枠体1の端部にビスホール4を形成することにより、この枠体に他の枠体を直交して取り付ける場合には、アルミ押出し型材の場合と同様に、両者の枠体を直行して配置し、他の枠体側からタッピングビスをビスホール4にねじ込むことにより、両者を結合することができる。
なお、枠体としては、端部を一部重ね合わせ形成する例で説明したが、重ね合わせずに端部を突合せ、溶接して形成することもできる。
【0015】
補助部材10の形状、特に中間部13の形状は、
図4(a)〜(c)に示すように、(a)途中で折れ曲がって、ビス5と2箇所で係合するもの、(b)途中で円弧状に湾曲し、ビス5と円弧で係合するのもの、(c)第1と第2の側片部間を直線で結んで、ビスとは1箇所で係合するものがある。
いずれの補助部材でも、枠体の側面の2箇所と補助部材の中間部とでビスと係合することができる。(c)の直線の中間部では、ねじとの係合長さが短くなるが、3箇所で係合するので、必要な強度を確保することができる。
【0016】
補助部材10は、
図1の例のように、枠体の角部ごとにそれぞれ別体としてもよいが、
図3の例のように、2カ所の角部にビスホールを形成できるように中間部を両端部に備えるものであってもよい。この場合は、補助部材10を共通する枠体側面に固定するだけでよく、取付けに要する手間を低減することができる。
補助部材10の長さは、
図1〜3ではビスとの係合長さが確保される長さとしたが、枠体1の長さと同じであってもよい。この場合は、より枠体の剛性を高めることができる。
【0017】
補助部材10の端部は、枠体1の端部と面一に配置されるほうが好ましいが、ビスと補助部材との係合長さが十分確保されるのであれば、枠体の端部より中に端部が来るように取り付けられていてもよい。
【0018】
以上では、断面角形の枠体を例に説明したが、鋼板を曲げ加工して形成された一面が開口する断面溝形の枠体にも同様に実施できる。
図5(a)に、鋼板1を曲げ成形して、底壁部21とその両側の側壁部22よりなり、一面が開口する溝形の枠体20に適用した例を示す。また、この枠体20は、障子枠の枠体としての利用に適するもので、
図5(b)に側壁部22間の開口部にガラス障子30を収納した例を示す。
【0019】
図5(a)に示す枠体20では、鋼板1を側壁部22の開口端23で折り返して、側壁を二重にした状態で、折り返された側壁部に連なるようにクランク状に折れ曲がった補助部材10を枠体20の角部に固定している。補助部材10としては、枠体を形成する鋼板と同じ板厚の鋼板を用いて内側に段差が生じないようにしている。
これにより、枠体20の角部と補助部材10の中間部の間に枠体20の長手方向に沿った空間が形成される。この空間を予めビスの形に適合するように形成することにより、その空間をビスホール4として利用できるようになる。
【0020】
なお、この例では、鋼板1と補助部材10とが別体に形成されている例を示したが、
図6に示すように、補助部材10を鋼板と一体とすることもできる。
図6の例では、鋼板1の端部に補助部材10となる部分を予め形成しておき、鋼板を側壁部22の開口端23で折り返して、側壁を二重にするとともに補助部材となる部分を枠体20の角部に位置するようにし、その位置で、補助部材を溶接や接着などの手段で固定されている。
【0021】
図5、6のようなビスホール4が形成された枠体を縦枠20aとして用い、これに直交する上枠として、縦枠20aと同様に鋼板を曲げ成形して形成され、側壁部22の開口端部23が、
図7(c)に示すように、折り返し曲げ加工によって二重にされた上枠20bを組み合わせることにより、障子枠を形成することができる。
このような縦枠20aと上枠20bとの接合は
図7のようにして行われる。
上枠20bの端部は、
図7(a)に示すように側壁部22が切欠かれて、中央張り出し部24と切欠き部25が形成されており、
図7(b)に示すように、その空間に縦枠体20aの端部を嵌め合わせて障子枠が組み立てられる。ついで、上枠体20b側からタッピングビス27をビスホール26にねじ込んで両者を結合する。
【0022】
本発明は、一般的に薄鋼板に含まれる板厚2.3mm未満の鋼板を用いて成形された鋼板製枠体を対象とする。特に亜鉛めっき鋼板やアルミめっき鋼板などのめっき鋼板を用いれば、サッシなどの外気にさらされる部材では、耐食性を高めることができる。
そのような鋼板やめっき鋼板は、各種の自動車製品、スチール家具、大型家電品などの用途に使用され大量生産されており、素材コストを低減するのに効果的である。
【符号の説明】
【0023】
1 角形断面の枠体
2 枠体を構成する鋼板
3 枠体の重ね合わせ部
4 ビスホール
5 ビス
10 補助部材
11、12 補助部材の側片部
13 補助部材の中間部
20 溝形断面の枠体
20a 障子枠の縦枠
20b 障子枠の上枠
21 溝形断面の枠体の底壁部
22 溝形断面の枠体の側壁部
23 側壁部の開口端部
24 上枠の中央張り出し部
25 上枠の切欠き部
26 縦枠のビスホール
27 タッピングビス
30 ガラス障子