特許第5953640号(P5953640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953640
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】複式注入燃料電池およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/24 20160101AFI20160707BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20160707BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160707BHJP
【FI】
   H01M8/24 R
   H01M8/24 E
   H01M8/24 Z
   H01M8/04 J
   H01M8/04 N
   !H01M8/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-509668(P2014-509668)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2014-517989(P2014-517989A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012058012
(87)【国際公開番号】WO2012152623
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】1153955
(32)【優先日】2011年5月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ポワロ−クルヴジエ、ジャン−フィリップ
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−179000(JP,A)
【文献】 特開2007−294291(JP,A)
【文献】 特開2008−147178(JP,A)
【文献】 特開2009−146721(JP,A)
【文献】 特開2007−080756(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/148793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの反応物質間の電気化学的な反応によって電力を生成する燃料電池であって、前記電池が、おのおの電解質、アノード、およびカソードのアセンブリから構成されているセルの少なくとも1つのスタックを含み、前記スタックが、前記反応物質の少なくとも1つを供給するための手段であって、前記手段が前記スタックの前記セルに前記反応物質を送ることができる手段と、前記反応の副生成物を排出するための手段とを備える燃料電池において、
− 前記電池の前記セルがN群に分割され(GA、GB)、N>1であり、前記反応物質を供給するための前記手段がセルの各群に供給するためのそれぞれの供給マニホールド(HIN−A、HIN−B)を含み、前記マニホールドは群の前記セルに前記反応物質を選択的に提供することが、それを別の群の前記セルに提供することなく可能であり、
− 前記供給手段は、前記マニホールドのおのおのに前記反応物質の通過を許可および防止をするための、選択的なスイッチ手段(V、V)をさらに含み、
− 前記排出手段は少なくとも1つの排出マニホールド(EVAN)を含み、それは、前記反応によって消費されなかった反応物質がセルの前記N群の間で流れることを許可するために配置され、かつ、それは除去弁(V)を含み、
前記様々な群の前記セルは、交互配置された方法で全く同一のスタックに積み重ねられ、つまり、1つの群のセルが、前記スタック中の別の群のセルに隣接する、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記排出マニホールドが、セルの前記スタックを通過し、すべての前記群の前記セルと連通することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記供給手段が前記N群の前記供給マニホールドに水素を供給し、群のマニホールドが前記アノード側からのこの群の前記セルと連通することを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記供給手段が前記N群の前記供給マニホールドに酸素を供給し、群のマニホールドが前記カソード側からのこの群の前記セルと連通することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
セルの少なくとも1つのスタックを含む燃料電池に少なくとも1つの反応物質を供給する方法において、前記電池(N>1)のセルのN群が少なくとも3つの段階、
−セルの第1の群(GA)が供給されるが、第2の群(GB)が供給されず、しかしながら前記消費されなかった反応物質は、前記2つの群の前記セルに接続された少なくとも1つの排出マニホールド(EVAN)経由で前記2つの群の間に流れることができる第1段階、
−前記第2の群が供給されるが、前記第1の群が供給されず、しかしながら前記消費されなかった反応物質は、前記排出マニホールド経由で前記2つの群の間に流れることができる第2段階、および
−前記2つの群が最初に同時に供給され、次いで前記排出マニホールドの除去弁(V)が開かれ、次いで閉じられる第3の段階
で前記反応物質を選択的に供給されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記様々な群の前記セルが、交互配置された方法で全く同一のスタックに積み重ねられ、つまり、1つの群のセルが、前記スタック中の別の群のセルに隣接することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の段階に渡される前に、前記2つの最初の段階が連続の交番で複数回繰り返され、その後1つの周期が再開することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
Nが2を超え、1つの段階の間に単一の群が供給されるか、または、前記供給の徐々の順列による一連の連続の段階の間に、供給される前記群の構成の変更により、すべてではなく複数の前記群が供給されるかであり、次いで、同時にすべての前記供給を開き、直ちに前記除去弁経由で共通の除去が続けられることを含む除去段階が実行されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一連の段階が、前記除去段階の前に複数回繰り返されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電池が燃料電池であり、かつ、前記反応物質が、前記供給マニホールドによって各群の前記セルの前記アノード側に送達された水素であることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に水素燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、反応により消費されるとともに徐々に導入される反応物質間で電気化学的な反応が中で起こる基本セルのスタックである。燃料は、水素燃料電池の場合水素であるがアノードと接触させられ、酸化体は、水素燃料電池に対しては酸素または空気であるがカソードと接触させられる。反応の成分のすべてではないがいくらかに対して透過性がある、電解質、恐らくは固体の膜によってアノードとカソードは分離される。反応は2つの半反応(酸化と還元)へ細分され、それは、一方ではアノード/電解質の界面において起こり、他方ではカソード/電解質の界面において起こる。実際上、この固体電解質は、水素イオンHに対して透過性があるが、分子の二水素のHまたは電子には透過性がない膜である。アノードでの還元反応は、Hイオンを生成する水素の酸化であり、Hイオンは膜を通過し、電子はアノードにより収集される。カソードではこれらのイオンは酸素の還元に関与し、電子を要求し、水を生成し、熱も発せられる。
【0003】
セルのスタックは反応の場所にすぎず、したがって、反応物質をそこへ供給しなければならず、かつ、生成物と非反応性化学種は、生成した熱とちょうど同様にそこから排出しなければならない。最後に、セルは互いに直列に接続され、1個のセルのアノードは隣接セルのカソードに接続される。セルのスタックの末端においては、一つの側で電子を排出するためにアノードは負端子に接続され、かつ、もう一つの側でカソードは正端子に接続される。外部回路はこれらの端子に接続される。電気化学的な反応が進行するにつれて、電池からこのように電力を供給される外部回路を経由して、アノードからカソードまで電子が流れる。
【0004】
燃料電池は、おのおのが電気的な端子、ならびに、反応性流体および冷却材の供給のための界面を有する複数のスタックに分割されてもよく、その際、これらのサブアセンブリは、流体の視点、および電気的な視点から並列にまたは直列に接続される。流体の接続に関して、並列接続は現在のところ最も頻繁に遭遇するものである。
【0005】
反応物質として水素と大気を用いるシステムにおいて、圧縮空気がバッテリーに送られ、カソード側のバッテリーに入り込む前に一連の構成要素(フィルタ、熱交換器、給湿機など)を通して通過する。カソード出口で、給湿に必要な水を回収するために空気は通常乾燥され、次いで、最も多くの場合背圧調整器(すなわち上流圧力の調整器)を介して排出され、管路の圧力が維持されることを可能にする。アノード側で、水素は多くの異なる源から得られてもよく、例えば、ガスを圧縮するための装置を用いることを回避可能にする加圧式タンクがある。したがって最も多くの場合、水素は、管路で要求される圧力を加える簡単な減圧弁または電磁弁を通過した後、バッテリーに送られる。ほとんどのこれらの可能性のある源は乾燥水素を提供する。
【0006】
電池の出口では、多くのシナリオが可能であり、以下に述べる。電池に注入され、反応によって消費されなかった水素は、一部分は電池の入口で、源から生じる乾燥水素と共に再注入されてもよく、それは電池中の混合物の均質化のためであり、すなわち、乾燥水素を、反応生成物、および、反応に関与せずそれどころか反応を阻害する傾向があり存在している非反応性化学種(特に、膜を通って透過によってカソードから来る窒素)と混合するためであり;この再循環は、セルに到着する水素にある一定の給湿を維持することをさらに可能にし;特に、反応生成物の中で、消費されなかった水素と混合された水蒸気があり、この水蒸気は水素と共に再循環され;給湿は、水素を電解質の膜に関してそれほど攻撃的でないようにするために望ましい。しかしながらこの再注入を可能にする再循環システムは複雑で高価である。
【0007】
一方、セルは、反応の生成物および特に窒素を排出するために一定間隔で除去することができる。しかしながら、除去前にセルに窒素が多量になりすぎるまで待つことは、電気化学的な反応が止まるために、可能ではない。障害になる生成物の除去は、同時に、ある程度の量の水素を除去することなく行なうことができず、これは、水素のコストのために不利な損失であり、このように除去される水素の量を最小限にすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的のうちの1つは、除去中に反応物質(特に水素)の損失を低減し、しかしながら複雑な再循環システムを必要とすることのないシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、少なくとも2つの反応物質間の電気化学的な反応によって電力を生成する燃料電池が提供され、この電池が、おのおの電解質、アノード、およびカソードのアセンブリから構成されているセルの少なくとも1つのスタックを含み、このスタックが、反応物質の少なくとも1つを供給するための手段において、この手段がスタックのセルにこの反応物質を送ることができる手段と、この反応の副生成物を排出するための手段とを備え、
− 電池のセルがN群に分割され、Nは1を上回る整数であり、反応物質を供給するための手段がセルの群に供給するためのそれぞれの供給マニホールドを含み、このマニホールドは群のセルに選択的に反応物質を提供することが、それを別の群のセルに提供することなく可能であり、
− 供給手段は、マニホールドのおのおのに反応物質の通過を許可および防止をするための、選択的なスイッチ手段を含み、
− 排出手段は1つまたは複数の排出マニホールドを含み、それは、反応によって消費されなかった反応物質がセルのN群の間で流れることを許可するために配置され、かつ、それは除去弁を含む、
ことを特徴とする。
【0010】
様々な群のセルは、交互配置された方法で好適には積み重ねられ、交互配置された方法とはつまり、1つの群のセルが、全く同一のスタック中の別の群のセルに隣接するということである。電池が、複数のスタックから形成され、おのおののスタックがセルのそれぞれの群に対応することも意図することは可能であるが、この構成はそれほど小型ではないので、それほど有利ではない。
【0011】
排出マニホールドは、セルのスタックを通過するが、共通であることが好適であり、すなわち、すべての群のセルはこのマニホールドと直接通じている。しかしながら、各群に対して別個のマニホールドを提供することもでき、その際、1つの群から他方の群に自由な流れを保証するために、それらの別個のマニホールドはスタックの出口に接続されるであろう。
【0012】
供給手段は、N群の供給マニホールドに水素を供給してもよく、群のマニホールドはアノード側面からこの群のセルと通じている。しかしながら、N群の供給マニホールドに酸素を供給する供給手段のためにも準備が行なわれてもよく、群のマニホールドは、カソード側面からこの群のセルと通じている。
【0013】
相応して、本発明は、燃料電池を運転する方法を提供し、この燃料電池はそのような電池構造体と共に構築されてもよい。
【0014】
その方法は、燃料電池のセルのスタックに少なくとも1つの反応物質を供給する方法であり、それはスタックのセルのN群が、反応物質を少なくとも3つの段階
− セルの第1の群が供給されるが、第2の群が供給されず、しかしながら消費されなかった反応物質が、2つの群のセルに接続された少なくとも1つの排出マニホールド経由で2つの群の間に流れることができる第1段階、
− 第2の群が供給されるが、第1の群が供給されず、しかしながら消費されなかった反応物質が、排出マニホールド経由で2つの群の間に流れることができる第2段階、および
− 2つの群が最初に同時に供給され、次いで排出マニホールドの除去弁が開かれ、次いで閉じられる第3の、除去の、段階
で選択的に供給されることを特徴とする。
【0015】
第3の段階に渡される前に、2つの最初の段階が連続の交番で複数回好適には繰り返され、その後1つの周期が再開する。
【0016】
数Nが2を上回る場合、原理は同じままであるが、第3の群、第4の群などが電池の中で提供され、相補的な段階が工程に挿入される。単一の群が1つの段階中に供給されるか、または、供給の徐々の置換と共に、一連の連続の段階中の各段階の中で供給される群の構成の変更により、複数の(しかし全てではない)群が供給される。次に、除去段階が実行され、それはすべての供給を同時に開くことを含み、直ちに、通常の除去(除去弁を開き、次いで閉じる)を続ける。
【0017】
1つまたは複数の排出マニホールド経由でセルのある群から別の群まで消費されなかった反応物質を流れさせることは可能であるので、電池をそれほど頻繁に除去しないことにより水素消費量を削減することが可能であり;具体的には、セルの全てではないがある一定の群が同時に供給され、反応は直接供給されない1つまたは複数の群の中で継続し;反応生成物の飽和は反応物質の不足を局所的に引き起こすことにより電気化学的な反応を止める傾向があるが、その危険性は、供給を連続的に変化させることによって達成される反応生成物の混合により、かつ、供給された群の中で消費されなかった反応物質が排出マニホールド経由で1つまたは複数の供給されていない群に達し、反応生成物と混合し、反応が継続することを可能にする事実により低減される。例えば、酸化体として空気を用い、かつ、膜を通しての透過を介してアノードで窒素を発生させる水素燃料電池の中で、水素のメインの供給を有するセルは窒素で飽和するようになる危険性を削減されるが、一群の(供給された)セルによって消費されなかった水素は、2つの群の1つまたは複数の排出マニホールド経由で他方の(供給されていない)群に達する。供給されていない群のセルでの反応から結果として得られる窒素の混合は供給の変化によって行なわれ、この混合は2つの群の出口間での開いた接続によって容易になる。この混合が窒素に飽和している区域に水素を供給するのは小さな割合だけにもかかわらず、その混合およびこの小さな割合は、適切な反応を持続させるのに十分である。
【0018】
さらに、このように回収された水素は水分を含まされ、供給されていない群へこの水分を導入し、その結果、この群がもう一度供給されるときに、電解質の膜は湿った水素と乾燥水素との混合物の存在下にあり続ける。この水分は膜の寿命に関して有益な効果がある。
【0019】
本発明の、他の特徴と利点は、添付図面を参照する以下の詳細な記載を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による燃料電池の構造の原理を図式的に示す。
図2】本発明による方法の一実施形態での電池の3つの運転段階を示す。
図3】別々に供給することができる2つの群に属するセルのスタックを示し、セルの群は交互配置され、2つの隣接セルは2つの異なる群に属する。
図4】スタック型セルのプレートに対して3つの異なる面でのバイポーラプレートの概略図を示し、3つの面はすなわち、カソード側のセルの面、アノード側の第1の群のセルの面、およびアノード側の第2の群のセルの面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、アノード側で水素が供給され、カソード側で空気で供給される水素燃料電池に関して記述され、本方法の実施形態は、ここでは水素、すなわちアノード側に適用される。本発明は、カソード側に、すなわち、酸化体の供給にも、この酸化体が主として酸素から成る(乾燥気体中の50%を超える含有量)場合適用可能である。最後に、本発明は、水素燃料電池に主として適用可能であるが、それは別の反応物質にも適用可能であり、酸化体の供給の側でもあるいは燃料の供給の側でもよい。
【0022】
水素燃料電池は複数のセルを含み、おのおのは、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間の電解質を含む。ここでは、電解質がイオン交換膜から成る場合だけが考慮される。実際上、流体的な、かつ、電気的な観点から一緒に接続される1つまたは複数のスタックを形成するために、多くのセルが積み重ねられる。
【0023】
セルに加圧された水素を供給する手段が提供される。それはアノード側の各セルの内部において水素を分配するための手段を含む。同様に、空気を供給するための手段が提供され、カソード側のおのおののセルにおいて空気を分配するための手段を備える。再び同様に、反応の生成物(窒素、水および特に液状水)を排出するための手段が提供され、この手段は、すべてのセルから反応生成物を集めて排出するために分配されている。ここでは、アノード側からの反応生成物および不活性な化学種の排出のみが注目され、特に、カソード側に当初現われるが、電解質の膜を通してアノード側に渡される水および窒素が注目される。最後に、すべてのセルにわたって分配される冷却手段が、そのような冷却を必要とする燃料電池のためにさらに提供されてもよい。
【0024】
図1は、セルの2つの群を非常に図式的に示す。すなわち群GAおよび群GBであり、水素を供給するための手段の上流部(セルのスタックの上流の)と、排出する手段の下流部(セルのスタックの下流の)とを備える。上記に記述された別の要素は示されていない。
【0025】
セルの2つの群は全く同じであるが、別々に供給される。したがって、供給手段の上流部は、以下を含む。
− 加圧された水素のタンクRESH2(または加圧された水素を提供するための任意の別の手段)、
− 電池に供給するためのメインの全体供給ダクトCALで、このダクトはタンクから水素を提供する、
− セルの2つの群のおのおのに全体ダクトCALから水素を提供する2つの2次入口ダクトCIN−AおよびCIN−B;電池はこれらの2次ダクトの下流に各群のそれぞれの供給マニホールド含み;このマニホールドはセルのスタックを通過し、セルに水素を分配し;それは図1に示されない、および
− 全体ダクトからの水素の通路上で、水素を群GAの供給マニホールドの方へ、もしくは群GBの供給マニホールドの方へ、または同時に両方の方へ向けるための切り替え弁;2つの別個の弁VおよびVが示され、おのおのはそれぞれの2次ダクトに配置されているが、メインダクトと2次ダクトの間の接合において配置される単一の3位置弁を用いることができることは理解されよう。
【0026】
図1は分かりやすくするために、セルの2つの群を隣り合わせで示すが、実際、セルはすべて積み重ねられ、セルの群はスタックの中で互いが交互配置され、すなわち、スタックは、群Aのセルおよび群Bのセルの規則的な交番を含み、1つの群のセルは他方の群のセルに好適には常に隣接する。
【0027】
アノード側から反応の生成物の排出するために、1つまたは2つの排出マニホールド(図示せず)が提供され、このマニホールドはセルのスタックを通過し、各セルからアノードで反応によって発生した生成物を集める。このマニホールド下流に、排出手段は、メイン排出ダクトCEVに合流する1つまたは2つの出口ダクトCOUT−AおよびCOUT−B(1つまたは2つの排出マニホールドがあるかどうかに依存して)を含んでもよい。除去弁VPはメインダクトCEVの中で提供される。それは、セルの2つの群から同時に来る窒素と水を除去する役目をする、すなわち群はおのおの別々には除去されない。
【0028】
図と説明を簡単にするために、図1は、別個のマニホールドを有する2つの群のセルを示すが、実際上2つの交互配置された群のすべてのセルに接続される単一のマニホールドが好適になろう。
【0029】
図2は、電池の主要な運転段階を、図1と同じであるが非常に単純化した図面と共に示す。
【0030】
第1段階において、弁Vは開いており、弁Vは閉まっており、また、弁Vは閉まっており;セルの群GAは加圧された乾燥水素が弁V経由で供給され;圧力が反応生成物、すなわち窒素、液状水および水蒸気を、しかしまた弁Vが開かれる前に反応によって消費されなかった水素も出口ダクトCOUT−Aの方へ押す。この(湿った)水素はダクトCOUT−B経由で群GBに達し、このダクトCOUT−BはダクトCOUT−Aと自由に通じており(または2つの群に共通の排出マニホールドが存在する場合、それを経由して直接に群GBに達し);湿った水素は乾燥水素が供給されない群GBで継続する反応の生成物と混合する。水素の供給との混合は、窒素の高すぎる濃度を有する反応域の局所的な飽和を防止し;したがって、電気化学的な反応は、乾燥水素の供給の欠如にもかかわらずこの段階の間に継続し得る。
【0031】
第2段階において、状況は全く簡単に逆転され、弁Vは閉じられ、弁Vが開かれる。弁Vは閉じたままである。反応生成物、および消費されなかった水素の流れは逆転し、ダクトCOUT−BからダクトCOUT−Aまで通過する。
【0032】
これらの2つの段階の後、第3の段階を続けてもよく、または、実際には2つの段階をX回交互にした後に第3の段階を実行してもよい。この交番の間に、蓄積された窒素の量は、出口ダクトを通して、または共通の排出マニホールド経由でセルの1つの群から他方に移動される。この混合により、窒素層形成または窒素の局所的な蓄積を制限することが可能になるが、この窒素は除去弁が開かれるまで、連続的に生成されるが排出されないものである。この混合がない場合、頻繁に除去することが必要となろうが、この混合があると、除去の頻度を下げることが可能である。
【0033】
したがって、第3の段階は、反応生成物および特に窒素をセルの2つの群から同時に排出するための除去段階である。進入弁VおよびVが一緒に開かれ、次いで、除去弁Vも開かれ、次いで、閉じられる。
【0034】
除去段階が実行される頻度(群GAおよびGBの供給での交番の頻度よりX倍低い)は以下の通りであってもよい。
− 固定のプリセットされた頻度、
− 2つの第1段階の交番の頻度に相関する頻度セット(交番の頻度自体は固定でも可変でもよい)、
− 電池運転パラメータ、例えば送達された電流または温度の関数として変化する頻度、または
− 送達された電圧閾値レベルの関数として変化する頻度で、このしきい値は恐らくそれ自体電池の運転パラメータの関数として変化する。
【0035】
2つの第1段階の交番の頻度は、セルの端子の両端の出力電圧などのパラメータの検知により実験的に、または現場でのいずれかで設定されてもよく、それは電圧降下が許容できるしきい値(例えば、数十ミリボルト)を超える場合、この電圧降下は、反応が遅くなっていること、および、したがって群の供給をそのときに切り替えることの有用性を示すからである。
【0036】
同一の原理は、水素が別々に供給され、互いに連通するそれらの排出出口を有するセルの群が2つを超えて適用されてもよい。
【0037】
例えば、3つの群があってもよく、また、それらの供給は第4の共通の除去段階の前にX回繰り返される3つの段階の円順列で変えられてもよい:
− 段階1:群GAは供給され、2つの群GBおよびGCは供給されない、
− 段階2:群GBは供給され、2つの群GCおよびGAは供給されない、
− 段階3:群GCは供給され、2つの群GAおよびGBは供給されない、および
− 段階4、3つの順列のX回の連続の後に:群GA、GBおよびGCは供給され、次いで、除去弁は開かれ、次いで閉じられる。
【0038】
2つの群が同時に供給され、1つだけが供給されない条件にすることも可能である。
【0039】
群の数Nが3を超えて増加される場合、別の多くの組合せが可能である。例えば、共通の除去弁と接続された出口を有する4群のGA、GB、GC、GDでは、2つの群が同時に供給され、かつ、他の2つは供給されない、4つの段階の円順列を用いることができるであろう:
− 段階1:2つの群GA、GBは供給され、2つの群GC、GDは供給されない、
− 段階2:2つの群GB、GCは供給され、2つの群GD、GAは供給されない、
− 段階3:2つの群GC、GDは供給され、2つの群GA、GBは供給されない、
− 段階4:2つの群GD、GAは供給され、2つの群GB、GCは供給されない、および
− 段階5、4つの順列のX回の連続の後に:群GA、GB、GCおよびGDは供給され、次いで、除去弁は開けられ、次いで閉じられる。
【0040】
その際、窒素のよりよい混合が保証され、窒素は、セルの1つの群からもう一つにより頻繁に転送される。
【0041】
水素燃料電池が酸化体として空気で働く場合、このように記述された方法のステップは特に有利であり、それはそれらが窒素による欠点を回避することを可能にするためである。しかしながら、酸化体が窒素を含んでいなくても、アノード側での燃料電池の入口で膜の乾燥を制限するために、この方法に由来する混合は有利である。
【0042】
本発明を実施するには出発点はスタック型セルの従来の配置であるが、この配置は、反応物質、例えば水素をある特定のセルに分配し、他のセルには分配しないことができる分配手段をそこに含むのに適している。
【0043】
スタック型セルを含む従来の燃料電池は、バイポーラプレートと呼ばれるものの重ね合わせを含み、そのバイポーラプレートの間に、電解質の膜およびその膜の各側に電極を同時に含むアセンブリが配置されている。バイポーラプレートは、特定の構成を有するシールと任意選択的に組み合わせられ、電流を集めて、かつ反応性ガス(水素および空気、または水素および酸素)を膜に分配する役目をし、その膜の適切な側に、すなわち、アノード側に水素、カソード側に空気または酸素を分配する。それらは、アノードに面する分配チャネルと、カソードに面する他の分配チャネルを含む。それらの周囲上で、プレートは、反応性ガスを送達する役目をする開口、および、反応の生成物を排出する役目をする開口で貫通されている。反応性ガスを送達するための開口は、互いに密接な接触をするプレートの重ね合わせによって、反応性ガスを供給するためのマニホールドを形成する。排出開口は、同一の方法で、反応の生成物を排出するためのマニホールドを形成する。シールは、流体がこれらのマニホールドに閉じ込められ続けるように提供されるが、バイポーラプレート、および/または、シールの設計は、マニホールド内に、セルに流体を配達することが求められる位置において、所望の側で反対側に横断することなく流体がこのセルに入り込むように流路が形成されるようなものにされる。これらの流路は、プレートに形成された分配チャネル経由で反応性ガスをセルへ向け、分配チャネルはガスを電解質の膜の上にできるだけ一様に分配する。
【0044】
同じことは反応生成物に当てはまり、プレートとシールは、反応生成物が集められ、アノード側、および/または、カソード側で排出マニホールドに排出されることを可能にするために設計されている。
【0045】
したがって従来のセルに水素を供給するための供給マニホールドは、水素がアノード側のセルにおいて広がることができるが、カソード側で絶対に広がらないように設計されたプレートとシールのスタックから成る。それを逆にしたものが空気または酸素を供給する供給マニホールドに対して当てはまる。
【0046】
スタックの末端においては、プレートに形成されたこれらの開口は、各反応物質を供給するためのそれぞれの供給ダクト、および反応の生成物を排出するための排出ダクトにそれぞれ接続される。
【0047】
本発明によれば、そのために本発明を実施することが求められる反応物質の供給のために、この構造はN個の供給マニホールド(Nは、少なくとも2に等しい整数である)でプレートに穴をあけることにより変更され、ここで、N個の水素供給マニホールドが提供される。したがって、水素がスタックのすべてのセルのアノード側の供給マニホールドに入り込むことができるように、積み重ねられた開口を備えたプレートおよびシールを設計する代わりに、以下の条件が設けられる。
− プレートとシールのおのおのが、1個の代わりにN個の供給マニホールドを形成し、各マニホールドはセルのそれぞれの群に供給するために、単一の連続の代わりに、N個の連続の積み重ねられた開口(N>1)を含むこと、および
− スタックのプレートおよびシールが、流路についてのN個の異なる設計の有し、ガスが1つの連続のマニホールドとセルとの間に通過することを可能にし、その結果連続の積み重ねられた開口が、対応する群のセルに供給するが、別の群のセルには供給しないこと。
【0048】
好適には、セルは規則的に交互にされる、すなわち、2つの隣接セルが異なる群に属する。
【0049】
したがって、ある群に属するセルは、この群の供給マニホールドと連通しているが、そのセルを通過する他の供給マニホールドとは連通していないという事実により、群は識別される。
【0050】
スタックの末端においては、それぞれの水素供給マニホールドを形成する開口が、それぞれの供給ダクト(CIN−A、CIN−B)に接続される。N個のダクトのうちの1つにそれぞれ接続されたN個の供給マニホールドがある。さらに、V、Vなどの弁が、それぞれのダクトへの、したがって供給マニホールドを形成する一連のそれぞれの開口への水素の注入を許可するまたは防止するために提供される。
【0051】
排出マニホールドに対応する開口について(アノード反応生成物のマニホールドにのみ注目するが、カソードもマニホールドを備え得る)、以下の2つの可能性が構想されてもよい。
− 重ね合わせられたバイポーラプレートに開口によって形成された単一の排出マニホールドがあり、このマニホールドは、セルが属する群が何であろうともすべてのセルと通じ;そのため、セルは排出マニホールド経由で直接互いと通じ得るか;
− または、供給マニホールドのように構成された、すなわちある特定のセルに接続され、他のセルには接続されない複数の排出マニホールドが提供され(必ずしもN個でなく);この場合、これらのマニホールドはスタックの末端において複数の排出ダクトに接続され、図1および図2で、簡潔さのためにダクトCOUT−AおよびCOUT−Bと示す。
【0052】
図3は、本発明による電池における複数のセルの実例スタックによる断面図を示す。セルは、2つのバイポーラプレートBPとBP’との間の中央の電解質の膜Mからおのおのできている。各膜に対して、アノードは左側にあり、カソードは右側にある。図面を簡単にするために、示したプレートは平らであり、また、空気と水素を供給するための供給マニホールドを含むプレート部分だけ(原則としてプレートの周囲での)を示した。排出マニホールドは示していない。それらは空気供給マニホールドと同一の形態をとってもよい。冷却マニホールドは、任意選択的にあってもよいが、同じく示していない。
【0053】
シール、特に、完全に不浸透性の外周シールは各プレートから膜を分離する。
【0054】
図3の図面において、排出マニホールドとセルとの間の連通または連通の欠如は、セルの位置において、および問題の(アノードまたはカソードの)側の開口を取り囲むシール、例えばリングジョイントによって制御されると考えられる。連続的に開口を取り囲むシール、すなわち連通開口を含んでいないものは、連通を防止する。連通開口を含むインジェクターシールはこの連通を可能にする。
【0055】
これらのリングジョイント以外の手段、例えば複雑な形状のシール、または特定の設計を備えたバイポーラプレートにより、連通が防止され得るか、または許可され得ることは理解されよう。
【0056】
図3を検討すると、ダクトCIN−Aによって供給される水素供給マニホールドは、アノード側の2つのうちの1つのセルと連通しており、カソード側との連通は決してしてないことが認められよう。さらに、ダクトCIN−Bによって供給される別の供給マニホールドは、アノード側の別のセルと連通しており、カソード側との連通は決してしてないことが認められよう。空気供給マニホールドは、カソード側のすべてのセルと連通しているが、アノード側では決して連通していない。
【0057】
図4は、2つの水素供給マニホールドを備えた配置を示すバイポーラプレートについての3つの図を再び示すが、マニホールドのおのおのは、1つの群のセルと連通しているが、別の群のセルとは連通していない。この実例において、群Aのセル用に1つの水素供給マニホールドHIN−A、群Bのセル用に別のHIN−B、すべてのセル用に空気供給マニホールドAIRIN、アノード側生成物用に排出マニホールドEVAN、およびカソード側生成物用に排出マニホールドEVCAがある。
【0058】
第1の図4−Aは、カソード側バイポーラプレートの正面を示すが、以下を備える:
− マニホールドAIRINを表わす開口および連通開口を備えるシール、
− 開口のないシールを備えたマニホールドHIN−AおよびHIN−Bを表わす2つの開口で、したがって連通が防止されている、
− カソード側の反応生成物用で、穴があけられ開口のあるシール付きの排出マニホールドEVCAを表わす開口、および
− アノード側の反応生成物用で、開口のないシール付きの排出マニホールドEVANを表わす開口。
【0059】
第2の図4−Bは、群GAのセルのアノード側バイポーラプレートの正面を示すが、以下を備える。
− マニホールドAIRIN、および連通開口を含まないシールを表わす開口、
− 連通開口を備えるシール付きのマニホールドHIN−Aを表わす開口、
− 連通開口を含まないシール付きのマニホールドHIN−Bを表わす開口、
− アノード反応生成物用で、開口のあるシール付きの排出マニホールドEVANを表わす開口、および
− カソード反応生成物用で、開口のないシール付きの排出マニホールドEVCAを表わす開口。
【0060】
第3の図4〜Cは、群GBのセルのアノード側バイポーラプレートの正面を示すが、以下を備える。
− マニホールドAIRIN、および連通開口を含まないシールを表わす開口、
− 連通開口を含まないシール付きのマニホールドHIN−Aを表わす開口、
− 連通開口を備えるシール付きのマニホールドHIN−Bを表わす開口、
− アノード反応生成物用で、穴があけられ開口のあるシール付きの排出マニホールドEVANを表わす開口、および
− カソード反応生成物用で、開口のないシール付きの排出マニホールドEVCAを表わす開口。
【0061】
1つまたは別のマニホールドにおける水素の選択的な分配を確実にするために、CINAおよびCINBなどの2次ダクトの長さは最小限にされてもよい。特に、スタックの末端のプレートにおいてガスを向ける手段の生成は可能である。最小の消費電力でプレートの開口を供給されるダクトと連通させるために、これらの手段は、弁であり得るが、また、より簡単には切り替え可能なシャッターであり得て、または回転自在にまたは並進可能に可動なように搭載される多孔板さえあり得る。
図1
図2
図3
図4-A】
図4-B】
図4-C】