特許第5953643号(P5953643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5953643ガラス化保存胚入り移植用ストロー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953643
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ガラス化保存胚入り移植用ストロー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20160707BHJP
   C12M 1/24 20060101ALI20160707BHJP
   C12M 1/28 20060101ALI20160707BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160707BHJP
   A61D 19/04 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C12N1/04
   C12M1/24
   C12M1/28
   C12M1/00 Z
   A61D19/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-14304(P2013-14304)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-143950(P2014-143950A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利清
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−176946(JP,A)
【文献】 特開平10−248860(JP,A)
【文献】 特開2006−149231(JP,A)
【文献】 特開2009−005584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 1/00−7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植用ストローの中に、移植液層と、第1の希釈液層と、哺乳動物の胚(ヒト胚を除く)およびガラス化液を含む胚含有部と、第2の希釈液層とをこの順に備え、
前記移植液層、前記第1の希釈液層、および、前記第2の希釈液層は、それぞれ凍結され、前記胚含有部は、ガラス化保存されたものであり、
前記移植液層は空気層を介して分割されており、
前記移植液層と前記第1の希釈液層との間には空気層が設けられた
ことを特徴とするガラス化保存胚入り移植用ストロー。
【請求項2】
前記胚含有部は、哺乳動物の胚(ヒト胚を除く)およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下することによりガラス化させたものであることを特徴とする請求項1記載のガラス化保存胚入り移植用ストロー。
【請求項3】
前記第2の希釈液層は、前記移植用ストローよりも内径が小さい細管に希釈液を吸引して凍結させたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガラス化保存胚入り移植用ストロー。
【請求項4】
前記移植用ストローにおいて前記第2の希釈液層の側の端部は、一部に開口を設けて閉鎖されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載のガラス化保存胚入り移植用ストロー。
【請求項5】
移植用ストローの中に、空気層を介して分割して凍結した移植液層と、この移植層との間に空気層を設けて凍結した第1の希釈液層とを、この順に配置して形成する工程と、哺乳動物の胚(ヒト胚を除く)およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下し、ガラス化させることにより形成した胚含有部を、移植液層および第1の希釈液層を形成した移植用ストローの中に挿入し、移植液層、第1の希釈液層、胚含有部の順となるように配置する工程と、胚含有部を挿入した移植用ストローの中に凍結した第2の希釈液層を形成し、移植液層、第1の希釈液層、胚含有部、第2の希釈液層の順となるように配置する工程と
を含むことを特徴とするガラス化保存胚入り移植用ストローの製造方法。
【請求項6】
前記第2の希釈液層は、移植用ストローよりも内径が小さい細管に希釈液を吸引して凍結させて形成したのち、細管から取り出し、移植用ストローの中に挿入することを特徴とする請求項5記載のガラス化保存胚入り移植用ストローの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物胚を超急速にガラス化保存し、胚移植時にこれを用いて直接移植することのできるガラス化保存胚入り移植用ストロー及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
優良な形質をもった動物を増産するために、雌の生殖器から回収した受精卵(胚)や体外受精によって作製した胚をレシピエント(受卵動物)に移植して子畜を得る胚移植技術が普及してきた。胚は、レシピエントの性周期に応じた時期に移植する必要があるため、生存性を低下させずに胚を超低温保存する技術が必要である。
【0003】
この超低温保存方法としては、例えば、緩慢凍結法が知られている。緩慢凍結法は、比較的低濃度の耐凍剤を用いて、胚を毎分0.3〜0.5℃の速度で−30℃前後まで冷却した後に、液体窒素に浸漬して凍結する方法である。胚は、液体窒素の温度まで冷却されると、細胞内外がガラス化されて固化して、実質的に分子の動きが無くなり、ガラス化された細胞は、液体窒素中で半永久的に保存できると考えられている。また、耐凍剤の濃度は比較的低濃度であるので、凍結した胚は、大がかりな装置を用いることなく融解されて希釈され、農家の庭先等において直接移植に供される。
【0004】
しかし、緩慢凍結法は、冷却の過程において、細胞外に氷晶が形成され、この氷晶が胚に物理的な損傷を与えるため、胚の生存性が低くなるとともに受胎率も低くなる傾向がある。特に、同じ血統構成でありながら低品質と判別された低品質胚や、遺伝子診断を行った遺伝子診断胚は、生存性が非常に低くなるので、超低温保存が難しかった。
【0005】
そこで、このよう問題を解決するガラス化保存法が提案されている。この超低温法は、保存溶液として高濃度の耐凍剤(ガラス化液)を用いて、胚を液体窒素に浸漬して液体窒素の温度まで急速に冷却することにより、細胞内外に氷晶を形成することなく、細胞の内外をガラス化するものである。このガラス化保存法は、温度制御が不要であるため、高価で大がかりな装置が不要であるという利点がある反面、高濃度の耐凍剤(ガラス化液)が胚に与える毒性が高いという欠点がある。
【0006】
このような欠点を補うガラス化保存法も提案されている。このガラス化保存法は、特許文献1〜3に記載されているように、胚を少量のガラス化液とともに液体窒素に浸漬する超急速ガラス化保存という方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−40073号公報
【特許文献2】特開2005−239685号公報
【特許文献3】特開2002−212001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のガラス化保存法では、特殊な容器や用具を胚の保存用に使用しているので、胚を移植する場合には、胚を融解した後に一旦容器から取り出して希釈し、移植用の容器に移し直す必要がある。この作業は無菌室等で顕微鏡を用いて行うので、超低温保存された胚を農家の庭先で融解して直接に移植することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、高い生存性を得ることができると共に、庭先で融解して直接移植することができるガラス化保存胚入り移植用ストロー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガラス化保存胚入り移植用ストローは、移植用ストローの中に、移植液層と、第1の希釈液層と、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む胚含有部と、第2の希釈液層とをこの順に備え、移植液層、第1の希釈液層、および、第2の希釈液層は、それぞれ凍結され、胚含有部は、ガラス化保存されたものである。
【0011】
本発明のガラス化保存胚入り移植用ストローの製造方法は、移植用ストローの中に、凍結した移植液層と、凍結した第1の希釈液層とを、この順に配置して形成する工程と、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下し、ガラス化させることにより形成した胚含有部を、移植液層および第1の希釈液層を形成した移植用ストローの中に挿入し、移植液層、第1の希釈液層、胚含有部の順となるように配置する工程と、胚含有部を挿入した移植用ストローの中に凍結した第2の希釈液層を形成し、移植液層、第1の希釈液層、胚含有部、第2の希釈液層の順となるように配置する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガラス化保存胚入り移植用ストローによれば、移植用ストローの中に、移植液層と、第1の希釈液層と、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む胚含有部と、第2の希釈液層とをこの順に備えるようにしたので、融解時にガラス化液を自動的に希釈することができると共に、移植後は、移植液と希釈液とが混ざり、ガラス化液を更に希釈することができる。よって、生存性を高く保持したまま移植することができると共に、庭先で融解し、簡単に直接移植することができる。
【0013】
特に、胚含有部は、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下してガラス化させたものにより構成するようにすれば、少量のガラス化液でガラス化させることができると共に、容易に移植用ストローの中に挿入して配置することができる。
【0014】
また、第2の希釈液層は、移植用ストローよりも内径が小さい細管に希釈液を吸引して凍結させたものにより構成するようにすれば、胚含有部を挟んで第1の希釈液層とは反対側に、容易に第2の希釈液層を配置することができる。
【0015】
更に、移植用ストローにおいて第2の希釈液層15の側の端部11Bは一部に開口を設けて閉鎖するようにすれば、融解時に移植用ストローの内部が膨張し、破裂してしまうことを抑制することができる。
【0016】
本発明のガラス化保存胚入り移植用ストローの製造方法によれば、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下し、ガラス化させることにより形成した胚含有部を、移植液層および第1の希釈液層を形成した移植用ストローの中に挿入し、移植液層、第1の希釈液層、胚含有部の順となるように配置するようにしたので、本発明のガラス化保存胚入り移植用ストローを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るガラス化保存胚入り移植用ストローの構成を表す断面図である。
図2図1に示したガラス化保存胚入り移植用ストローの一製造工程を表す図である。
図3図2に続く製造工程を表す図である。
図4図3に続く製造工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るガラス化保存胚入り移植用ストロー10の構成を表すものである。このガラス化保存胚入り移植用ストロー10は、例えば、移植用ストロー11の中に、移植液層12と、第1の希釈液層13と、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む胚含有部14と、第2の希釈液層15とをこの順に備えている。本発明において、哺乳動物とは、牛、馬、豚、山羊、兎、マウス等の家畜や実験動物の他、他の哺乳動物全てが含まれるが、本実施の形態では、牛の胚を移植するためのガラス化保存胚入り移植用ストロー10を例に挙げて説明する。
【0020】
移植用ストロー11は、例えば、細い筒状であり、プラスチックにより構成されている。移植用ストロー11の直径は、例えば、1.59mm程度である。移植用ストロー11の一方の端部11Aは、例えば、綿繊維などにより閉鎖され、他方の端部11Bは、例えば、融着により、一部に開口11Cを設けて閉鎖されている。なお、一方の端部11Aは、移植液層12の側の端部であり、他方の端部11Cは、第2の希釈液層15の側の端部である。開口11Cは、融解時に移植用ストロー11の内部が膨張し、破裂してしまうことを抑制するためのものである。開口11Cの長さ、すなわち、未封入部分の長さは、例えば、1mm程度とすることが好ましい。
【0021】
移植液層12は、例えば、移植液を凍結した層である。移植液は受精卵の培養液であり、移植液としては、例えば、ウシ血清アルブミンを含むm−199などの水溶液が挙げられる。ウシ血清アルブミンの濃度は、例えば、0.4%程度が好ましい。移植液層12は、例えば、2つに分割されており、間に空気層16Aが設けられていることが好ましい。これは、万一、融解時に希釈液と混ざった際に希釈倍率変化を少なくするためである。
【0022】
第1の希釈液層13および第2の希釈液層15は、例えば、希釈液を凍結した層である。希釈液はガラス化液を希釈するものであり、希釈液としては、例えば、蔗糖とウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの水溶液が挙げられる。蔗糖の濃度は、例えば、0.2M程度が好ましく、ウシ血清アルブミンの濃度は、例えば、0.4%程度が好ましい。第1の希釈液層13と移植液層12との間には、例えば、空気層16Bが設けられることが好ましい。融解した時に移植前に胚が移植液と混ざってしまうことを抑制するためである。
【0023】
胚含有部14は、例えば、牛の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体に滴下することによりガラス化保存させたものである。ガラス化液は、例えば、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、蔗糖、および、ウシ血清アルブミンを含むm−199などの水溶液が挙げられる。エチレングリコールの濃度は、例えば、15%程度、ジメチルスルホキシドの濃度は、例えば、15%程度、蔗糖の濃度は、例えば、0.5M程度、ウシ血清アルブミンの濃度は、例えば、0.4%程度が好ましい。冷却体は、例えば、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属体により構成されることが好ましい。
【0024】
胚含有部14は、例えば、直径が移植用ストロー11の内径よりも小さい球状、楕円球状、半球状、又は、ドーム状である。具体的には、直径が1mm以下であることが好ましい。ガラス化液の量は必要以上に多くない方が好ましいからである。
【0025】
第2の希釈液層15は、移植用ストロー11よりも内径が小さい細管に希釈液を吸引して凍結させることにより形成されたものであることが好ましい。胚含有部14を挟んで第1の希釈液層13とは反対側に、容易に第2の希釈液層15を配置することができるからである。
【0026】
このガラス化保存胚入り移植用ストロー10は、例えば、次のようにして移植に用いられる。まず、例えば、ガラス化保存胚入り移植用ストロー10を30℃程度のお湯に入れて融解し、他方の端部11Bを切断する。次いで、ガラス化保存胚入り移植用ストロー10を移植用の鞘に挿入し、注入器と内芯を装着したのち、牛の子宮内に胚を移植する。このように、このガラス化保存胚入り移植用ストロー10によれば、庭先で融解して直接移植することが可能である。
【0027】
このガラス化保存胚入り移植用ストロー10は、例えば、次のようにして製造することができる。図2から図4はガラス化保存胚入り移植用ストロー10の各製造工程を表すものである。まず、例えば、一方の端部11Aを綿繊維などで閉鎖した状態の移植用ストロー11を用意する。次いで、例えば、図2に示したように、移植ストロー11の中に移植液および希釈液を吸引し、超低温に冷却したアルミニウム板の上で凍結することにより移植液層12および第1の希釈液層13を形成する。その際、移植液層12は、移植液を2回に分けて吸引し、間に空気層16Aを形成するようにすることが好ましい。移植液層12と第1の希釈液層13との間にも空気層16Bを形成するようにすることが好ましい。
【0028】
また、例えば、図3に示したように、マイクロピペット21を用いてガラス化液を含む液と胚とを吸引し、液体窒素22により冷却したアルミニウムよりなる冷却体23の上に、マイクロピペット21から液滴を滴下してガラス化保存することにより、胚含有部14を形成する。胚含有部14の大きさは、液滴の直径が1mm以下となるようにすることが好ましい。続いて、移植液層12および第1の希釈液層13を形成した移植用ストロー11の中に作成した胚含有部14を挿入し、移植液層12、第1の希釈液層13、胚含有部14の順となるように配置する。
【0029】
更に、例えば、移植用ストロー11よりも内径が小さい細管に希釈液を吸引し、図3に示したアルミニウムよりなる冷却体23の上に載置したり、又は、液体窒素中に浸漬することにより凍結し、第2の希釈液層15を形成する。次いで、この細管を液体窒素中より取り出し、表面を温めて、細管から第2の希釈液層15を金属棒等により押し出す。続いて、例えば、図4に示したように、胚含有部14を挿入した移植用ストロー11の中に細管から取り出した第2の希釈液層15を挿入し、移植液層12、第1の希釈液層13、胚含有部14、第2の希釈液層15の順となるように配置する。
【0030】
そののち、例えば、移植用ストロー11の他方の端部11B、すなわち第2の希釈液層15の側の端部を熱融着により、一部に開口11Cを設けて閉鎖する。その際、第2の希釈液層15の一部を溶解することが好ましい。次いで、例えば、両端を閉鎖した移植用ストロー11を液体窒素中に浸漬する。これにより、溶解した第2の希釈液層15の希釈液が凍結し、他方の端部11Bの開口11Cを閉鎖する。以上により、ガラス化保存胚入り移植用ストロー10が得られる。
【0031】
このように本実施の形態のガラス化保存胚入り移植用ストロー10によれば、移植用ストロー11の中に、移植液層12と、第1の希釈液層13と、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む胚含有部14と、第2の希釈液層15とをこの順に備えるようにしたので、融解時にガラス化液を自動的に希釈することができると共に、移植後は、移植液と希釈液とが混ざり、ガラス化液を更に希釈することができる。よって、生存性を高く保持したまま移植することができると共に、庭先で融解し、簡単に直接移植することができる。
【0032】
特に、胚含有部14は、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体23に滴下してガラス化させたものにより構成するようにすれば、少量のガラス化液でガラス化させることができると共に、容易に移植用ストロー11の中に挿入して配置することができる。
【0033】
また、第2の希釈液層15は、移植用ストロー11よりも内径が小さい細管に希釈液を吸引して凍結させたものにより構成するようにすれば、胚含有部14を挟んで第1の希釈液層13とは反対側に、容易に第2の希釈液層15を配置することができる。
【0034】
更に、移植用ストロー11において第2の希釈液層15の側の端部11Bは一部に開口11Cを設けて閉鎖するようにすれば、融解時に移植用ストロー11の内部が膨張し、破裂してしまうことを抑制することができる。
【0035】
本実施の形態のガラス化保存胚入り移植用ストロー10の製造方法によれば、哺乳動物の胚およびガラス化液を含む液滴を冷却した冷却体23に滴下し、ガラス化させることにより形成した胚含有部14を、移植液層12および第1の希釈液層13を形成した移植用ストロー11の中に挿入し、移植液層12、第1の希釈液層13、胚含有部14の順となるように配置するようにしたので、本実施の形態のガラス化保存胚入り移植用ストロー10を容易に製造することができる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
牛の低品質胚を用いて上述したガラス化保存胚入り移植用ストロー10を作製し、移植を行った。その際、移植液には0.4%のウシ血清アルブミンを含むm−199液用い、希釈液には0.2Mの蔗糖と0.4%のウシ血清アルブミンとを含むPBSを用い、ガラス化液には15%のエチレングリコールと15%のジメチルスルホキシドと0.5Mの蔗糖と0.4%のウシ血清アルブミンとを含むm−199液を用いた。移植は14頭について行った。その結果、受胎頭数は8頭であり、受胎率は57.1%であった。表1に受胎の結果を示す。
【0037】
本実施例に対する比較例として、従来の緩慢凍結法により、牛の低品質胚を用いた移植を行った。移植は12頭について行った。その結果、受胎頭数は3頭であり、受胎率は25.0%であった。表1に比較例の結果も併せて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示したように、比較例の緩慢凍結法によれば、25%程度の受胎率であったのが、本実施例によれば、57%程度まで受胎率を向上させることができた。すなわち、本発明のガラス化保存胚入り移植用ストロー10を用いれば、低品質胚であっても、高い受胎率を得られることが分かった。
【0040】
(実施例2)
牛の遺伝子診断胚を用いて実施例1と同様にしてガラス化保存胚入り移植用ストロー10を作製し、移植を行った。移植は22頭について行った。その結果、受胎頭数は11頭であり、受胎率は50.0%であった。表2に受胎の結果を示す。このように、本実施例によれば、遺伝子診断胚を用いても、50%程度の高い受胎率を得られることが分かった。すなわち、すなわち、本発明のガラス化保存胚入り移植用ストロー10を用いれば、遺伝子診断胚であっても、高い受胎率を得られることが分かった。
【0041】
【表2】
【0042】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、牛の胚を例にして説明したが、本願発明を牛以外の哺乳動物の胚に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ガラス化保存胚入り移植用ストロー、11…移植用ストロー、11A…端部、11B…端部、11C…開口、12…移植液層、13…第1の希釈液層、14…胚含有部、15…第2の希釈液層、16A,16B…空気層
図1
図2
図3
図4