特許第5953650号(P5953650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953650
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】戸閉力増強装置を備えた扉装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/08 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   B66B13/08 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-52938(P2011-52938)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-188222(P2012-188222A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 祐志
(72)【発明者】
【氏名】染田 雅弘
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−153383(JP,A)
【文献】 特開2004−323204(JP,A)
【文献】 特開2000−086131(JP,A)
【文献】 特開平11−079630(JP,A)
【文献】 特開平08−143252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部を開閉する扉を備えた扉装置において、
前記扉には、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたときに扉を全閉位置に向けて押圧する戸閉力増強装置が連繋しており、
前記戸閉力増強装置は、ヘッダーに設けられたカムと、
ハンガーに設けられた軸を支点に回動自在なレバーを有し、
前記レバーは一端にローラを有すると共に、他端と前記ハンガーとの間に付勢部材を有し、
該ローラは前記付勢部材によって前記カムに押し付けられ、
前記カムは、傾斜カム面を間口方向両端に備え、かつ間口方向両端の前記傾斜カム面の間に水平カム面を有し、
前記水平カム面は間口方向の長さが戸当り側の前記傾斜カム面の鉛直下方から見た投影長より長く、かつ戸袋側の前記傾斜カム面の鉛直下方から見た投影長より短く形成され、
扉が全開位置から全閉位置まで移動する過程で前記ローラが前記カムの戸袋側の傾斜カム面に当接した際、前記レバーが前記戸袋側の傾斜カム面と反対方向に前記軸を支点に回動し、かつ前記戸袋側の傾斜カム面によって案内され、
さらに戸当たり側の傾斜カム面に圧接されて、扉を全閉位置に向かって押圧する力を発生させることを特徴とするエレベータの扉装置。
【請求項2】
前記カムは戸当たり側の傾斜カム面の水平面に対する傾斜角度αと、戸袋側の傾斜カム面の水平面に対する傾斜角度βの関係が、α>βであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの扉装置。
【請求項3】
前記カムは、戸袋側の傾斜カム面が、前記ローラと前記カムが当接する部分で、接触角が略0度であり、戸当たり側に向かって、凹状の曲面からなり、前記戸袋側の傾斜カム面終端が凸状の曲面からなることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの扉装置。
【請求項4】
前記扉は、開口部を中央から両側へ開く複数枚の引き戸によって構成されている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のエレベータの扉装置。
【請求項5】
前記扉は、開口部を片側から一方向に開く複数枚の引き戸によって構成されている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のエレベータの扉装置。
【請求項6】
前記扉を構成する戸当たり端の対向する2枚の引き戸の内、一方の引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置が連繋すると共に、他方の引き戸に前記戸閉力増強装置が連繋している請求項4に記載のエレベータの扉装置。
【請求項7】
前記扉を構成する引き戸の内、最も戸当たり側にある引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置および前記戸閉力増強装置が連繋している請求項5に記載のエレベータの扉装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部に設置された扉を常に完全に閉じるための扉装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示す如くエレベータにおいては、乗場12から昇降路に通じる開口部を包囲して、上枠91及び左右一対の縦枠92、92が配備されると共に、該開口部には、例えば片側へ開く2枚の片開きの引き戸9、9が配備されており、該扉は、例えばベルト駆動によるかご開閉装置と係合することによって開閉方向に駆動される。又、開口部の下方縁には、敷居93が配備されている。
【0003】
図6に示す従来の扉装置の一例においては、乗場から昇降路に通じる開口部(図示省略)の上方位置にヘッダー3が取り付けられており、該ヘッダー3にはレール4が水平に設置され、該レール4に対して、乗り場扉を構成する2枚の引き戸(図示省略)を吊り下げるための一対のハンガー51、52が周知のとおり移動自在に設けられている。ヘッダー3には、その両端部に一対のプーリ6、7が配置され、両プーリ6、7にはコード5が巻き付けられ、該コードの両端は一方のハンガー51に連結されている。又、両プーリ6、7間に掛け渡されたコード5の中間位置にはグリップ8が固定され、該グリップ8は他方のハンガー52に連結されている。これによって、両ハンガー51、52は互いに逆方向に移動することになる。一方のハンガー52には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。さらに、ハンガー52とヘッダー3との間にはスプリング11が張設され、該スプリング11によって一対のハンガー51、52が常に戸閉方向に付勢されている。
【0004】
しかしながら、図6に示す従来の扉装置においては、スプリング11によって扉が全開位置から全閉位置までの全長を閉じ方向に付勢される構成が採用されていたので、全開時にはスプリング11が大きく伸張して最大の付勢力が得られるが、全閉時には、スプリング11が収縮して付勢力が最も小さくなり、場合によっては扉を完全に閉じることが出来ない虞があった。特に、火災時に発生する煙が昇降路内へ流入したり昇降路から流出したりすることを防止するために遮煙機構を装備した扉装置や、戸外に設置されて風の影響を強く受ける扉装置では、扉が全閉位置に近づいたときに抵抗力が増大するので、扉を完全に閉じることが困難となる。
【0005】
そこで、図6にあるように、戸閉力増強装置20を付加して、扉を完全に閉じる技術が提案されている。(特許文献1参照)
【0006】
特許文献1の発明に係る扉装置は、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたときに扉を全閉位置に向けて押圧する戸閉力増強装置20を備えている。該戸閉力増強装置20は、ヘッダー3にカム21が固定されている。ハンガー51には、ブラケット24を介して、レバー23の中間部が枢支され、該レバー23の基端部にはスプリング25が連結されて、該スプリング25によってレバー23が常に反時計方向に回転付勢されている。レバー23の先端部にはローラ22が回転自在に枢支され、該ローラ22は、スプリング25による付勢力を受けてカム21に圧接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−323204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カゴ開閉装置では、電気的な駆動装置があり戸閉終端で力が弱まることが無い為、戸閉終端のみに設置したカムにローラが乗り上げる構造を採用しているが、乗場開閉装置では建築基準法施行令第129条の10条3項第2号に準拠する為、自閉する事を必要とし、戸閉途中でその妨げにならないようカムを水平に伸ばす必要があった。
【0009】
図7は従来技術に係る右勝手の片開き2枚扉の場合を示す。図示しないが、図6におけるロック装置10と同様に、ハンガー1の戸当たり側には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。また、図示しないが、ハンガー2(図示省略)とヘッダー3との間には、図6におけるスプリング11と同様に、スプリングが張設され、当該スプリングによってハンガー2とコードドライブによって連結されたハンガー1が常に戸閉方向に付勢されている。
【0010】
また、図4は戸閉力増強装置20の詳細を示す。図7において、二点鎖線は扉全開状態におけるハンガー1、ハンガー2(図示省略)及びローラ22の位置を表わし、実線は扉全閉状態におけるハンガー1及びローラ22の位置を表わしている。扉全開状態から扉全閉状態に移行する過程で、ローラ22は先ずカム21の水平カム面によって案内される。ここで、ローラ22には、スプリング25によって水平カム面36に対して垂直方向の反力が作用し、水平方向の分力は発生しないので、扉は従来装置と同様にスプリング11(図示省略)の付勢を受けて閉じ方向に駆動される。その後、扉全閉状態の直前まで移行すると、ローラ22がカム21の傾斜カム面に圧接されることとなり、該ローラ22には、傾斜カム面に対して垂直方向の反力が作用する。該反力は水平方向の成分を有しているので、水平方向の分力によってハンガー1が閉じ方向に付勢される。従って、扉には、スプリング11の付勢による戸閉力と前記水平方向の分力による戸閉力が同時に加わって、戸閉力が増強されることになる。
【0011】
図7においてヘッダー3に設置されたカム21はローラ22の移動距離に合わせて間口方向に伸ばしており、ローラ22は扉の開閉動作中に常時カム21に接触している(負荷がかかっている)状態である為、
【0012】
1.戸閉力増強装置20を取付・交換する場合も負荷がかかり、作業性が悪い。また、その負荷をなくす為には、作業の間、該戸閉力増強装置20内の前記スプリング25を弱める必要があり、これも作業性が悪い。
【0013】
2.前記カム21の長さは前記ローラ22の移動距離すなわち入口幅に合わせて変更する必要がある。
【0014】
3.図7に示すように、片開き2枚扉の場合、ヘッダー3に設置されているコードドライブ(図示せず)のコード挟持部品32がカム21で隠れ、交換・調整する場合に作業性が悪い。
【0015】
また、カゴ開閉装置で採用している戸閉終端のみのカムを使用した場合、
【0016】
4.かご開閉装置は電動力によって戸閉方向に力をかけるため問題無いが、乗場扉装置においては、スプリングや重りによる自閉装置による付勢のみであるから、戸閉時にローラがカムに乗り上げる際に、戸閉の妨げになる力が発生し自閉力不足となる。
【0017】
5.戸閉時にローラがカムに乗り上げる際の衝突音や、戸開時にローラがカムから離れる際のレバーとストッパーとの衝突音が発生する。
【0018】
そこで本発明の目的は、扉に作用する抵抗力の大小に拘わらず扉を完全に閉じることが出来て、組立作業性向上と自閉への抵抗および異音の低減を図ったエレベータの扉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願に係る発明は、エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部を開閉する扉を備えた扉装置において、前記扉には、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたときに扉を全閉位置に向けて押圧する戸閉力増強装置が連繋しており、前記戸閉力増強装置は、ヘッダーに設けられたカムと、ハンガーに設けられた軸を支点に回動自在なレバーを有し、前記レバーは一端にローラを有すると共に、他端と前記ハンガーとの間に付勢部材を有し、該ローラは前記付勢部材によって前記カムに押し付けられ、前記カムは、傾斜カム面を間口方向両端に備え、かつ間口方向両端の前記傾斜カム面の間に水平カム面を有し、前記水平カム面は間口方向の長さが戸当り側の前記傾斜カム面の鉛直下方から見た投影長より長く、かつ戸袋側の前記傾斜カム面の鉛直下方から見た投影長より短く形成され、
扉が全開位置から全閉位置まで移動する過程で前記ローラが前記カムの戸袋側の傾斜カム面に当接した際、前記レバーが前記戸袋側の傾斜カム面と反対方向に前記軸を支点に回動し、かつ前記戸袋側の傾斜カム面によって案内され、さらに戸当たり側の傾斜カム面に圧接されて、扉を全閉位置に向かって押圧する力を発生させることを特徴とする。
【0020】
また、前記カムは戸当たり側の傾斜カム面の水平面に対する傾斜角度αと、戸袋側の傾斜カム面の水平面に対する傾斜角度βの関係が、α>βであっても良い。また、前記カムは、戸袋側の傾斜カム面が、前記ローラと前記カムが当接する部分で、接触角が略0度であり、戸当たり側に向かって、凹状の曲面からなり、前記戸袋側の傾斜カム面終端が凸状の曲面からなっても良い。

【0021】
また、前記扉は、開口部を中央から両側へ開く複数枚の引き戸によって構成しても良い。また、前記扉は、開口部を片側から一方向に開く複数枚の引き戸によって構成しても良い。さらにまた、前記扉を構成する戸当たり端の対向する2枚の引き戸の内、一方の引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置が連繋すると共に、他方の引き戸に前記戸閉力増強装置が連繋しても良い。
【0022】
また、前記扉を構成する引き戸の内、最も戸当たり側にある引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置および前記戸閉力増強装置が連繋しても良い。
【発明の効果】
【0023】
戸閉力増強装置の簡素化による作業性向上と自閉への抵抗及び異音の低減を図る。
【0024】
1.カムに負荷のかからない扉の位置ができ、戸閉力増強装置の取付作業性が良くなり、発送時も無理な力がかからなくなる。
【0025】
2.入口幅に関係なく同一のカムを使用でき、部品を共通化できる。
【0026】
3.他機器の取付スペースができ、コード挟持部品の取付・交換・調整の作業性が良くなる。
【0027】
4.全閉時の戸閉保持力を確保しながら、戸閉時にローラがカムに乗り上げる際の戸閉の妨げになる力を小さく抑えることができる。
【0028】
5.ローラがカムに乗り上げる際の衝突音、またローラがカムから離れる際のレバーとストッパーとの衝撃音を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】エレベータの乗場出入口を示す斜視図
図2】この発明の実施形態に係る扉装置の扉全閉時裏面図
図3】この発明の実施形態に係る扉装置の扉全開時裏面図
図4】この発明の実施形態に係る戸閉力増加装置の詳細図
図5】この発明の実施形態1に係るカムの詳細図
図6】先行技術の実施形態に係る両開き扉装置の扉全閉時裏面図
図7】先行技術の実施形態に係る2枚片開き扉装置の扉全閉時裏面図
図8】この発明の実施形態2に係るカムの詳細図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例につき、図面に沿って具体的に説明する。
【実施例1】
【0031】
乗場から昇降路に通じる開口部の上方位置には、図2に示すヘッダー3が取り付けられている。図2は右勝手の片開き2枚扉の場合を示すヘッダーである。ここで図7と同一符号のものは図7と同一のものを示しており、ヘッダー3には、レール4が水平に設置され、該レール4には、一対のハンガー1およびハンガー2(図示せず)がレール4に沿って移動自在に設けられている。又、図示しないが、ヘッダー3には、図6と同様に、ハンガー1,2がコードドライブのコードによって連結されており、該コードドライブによって、戸当たり側の扉の半分の速度で戸袋側の扉は移動することになる。
【0032】
片開き2枚扉において、戸当たり側の扉をファストドア、戸袋側の扉をスロードアと称す。戸開動作中、ファストドアはコードドライブ(図示省略)により、スロードアの2倍の速さで戸開動作を行い、全開位置ではファストドアとスロードアが同時に全開位置に収まるように構成されている。同様に戸閉動作中も、ファストドアはコードドライブ(図示省略)により、スロードアの2倍の速さで戸閉動作を行う。
【0033】
図示しないが、図6におけるロック装置10と同様に、前記ハンガー1の戸当たり側には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。また、図示しないが、前記ハンガー2とヘッダー3との間には、図6におけるスプリング11と同様に、スプリングが張設され、当該スプリングによってハンガー2とコードドライブによって連結されたハンガー1が常に戸閉方向に付勢されている。
【0034】
又、前記一方のハンガー1には、本発明に係る戸閉力増強装置20が連繋している。該戸閉力増強装置20においては、ヘッダー3にカム21が固定されている。
【0035】
図4に該戸閉力増強装置20の詳細を示す。前記ハンガー1には、ブラケット24を介して、レバー23の中間部が軸31によって枢支され、該レバー23の基端部にはスプリング25が連結されて、該スプリング25が圧縮することによって、レバー23が反時計方向に回転付勢される。レバー23の先端部にはローラ22が回転自在に枢支され、該ローラ22は、スプリング25による付勢力を受けてカム21に圧接されている。ストッパ33は前記ローラ22がカム21から離れる際、前記スプリング25が圧縮から開放され、前記レバー23と前記ブラケット24が接触した際、衝突音を低減する機能を持つ。
【0036】
尚、戸閉力増強装置20には、戸閉力増強の大きさ、或いは増強を開始する扉位置を調整するための調整機構を設けることが可能であって、例えば、ローラ22及びレバー23からなるローラ支持機構の位置を上下或いは水平にずらす調整機構や、スプリング25の初期変形量を調節する調整機構などを採用することが出来る。これによって、現場にて容易に戸閉力などを調整することが出来る。
【0037】
図2および図5を用いて本発明に係るエレベータの扉装置を説明する。ヘッダー3に固定されたカム21は従来技術と同様に戸当たり側に傾斜カム面34を有し、さらに、戸袋側にも傾斜カム面35を有する。図5に示すように、前記傾斜カム面34は水平面に対してα度傾斜し、前記傾斜カム面35は水平面に対してβ度傾斜している。傾斜角度αおよびβはα>βの関係を有す。
【0038】
前記傾斜角度αは、戸閉力を強化するために必要な角度で構成されており、各扉装置によって異なり、スプリングのばね係数などによる計算および実験によって決定される。
【0039】
前記カム21は、前記ハンガー1に連繋した前記戸閉力増強装置20の前記ローラ22が、戸閉動作時に、前記傾斜カム面35の先端に接触せずに、前記傾斜カム面35と接することが可能となるように、前記カム21の長さおよび傾斜角度βを構成する。
【0040】
前記ヘッダー3には前記コードドライブのコードの一端をヘッダー3に固定するコード挟持部32が螺着されている。
【0041】
前記カム21は前記コード挟持部32と重ならない長さであり、前記の通り、戸当たり側と戸袋側にそれぞれ、角度αとβの傾斜カム面34および傾斜カム面35を有している。
【0042】
前記カム21が前記コード挟持部32と重なっていないため、前記コード挟持部32の取付あるいは調整や交換等の保守作業を行う場合に、前記カム21が障害にならず、容易にアクセスすることが可能であり、作業性効率や保守効率が向上する。
【0043】
図2において、二点鎖線は扉全開状態におけるハンガー1及びローラ22の位置を表わし、実線は扉全閉状態におけるハンガー1及びローラ22の位置を表わしている。扉全開状態から扉全閉状態に移行する過程で、前記ローラ22は先ず前記カム21の前記傾斜カム面35に圧接し、前記傾斜カム面35に沿って、水平カム面36に案内される。
【0044】
ここで、前記カム21の前記傾斜カム面34の傾斜角度αおよび前記傾斜カム面35の傾斜角度βがα>βの関係であり、前記傾斜角度βを小さくすることによって、前記ローラ22と前記傾斜カム面35の接触が滑らかに行われ、前記ローラ22と前記傾斜カム面35との衝突音が小さくなり、また、扉開の際、前記ローラ22が前記傾斜カム面35から離れる時に、図4における前記戸閉力増強装置20のストッパ33と前記レバー23との衝突音も小さくすることができる。尚、傾斜角度αは戸閉力強化の為に、一定以上の角度が必要であり、当該一定以上の角度以下に小さくできない。
【0045】
前記ローラ22には、前記スプリング25によって前記水平カム面36に対して垂直方向の反力が作用し、水平方向の分力は発生しないので、扉は従来装置と同様にスプリング11の付勢を受けて閉じ方向に駆動される。その後、扉全閉状態の直前まで移行すると、前記ローラ22が前記カム21の前記傾斜カム面34に圧接されることとなり、該ローラ22には、傾斜カム面34に対して垂直方向の反力が作用する。該反力は水平方向の成分を有しているので、水平方向の分力によってハンガー1が閉じ方向に付勢される。従って、扉には、前記スプリング11の付勢による戸閉力と前記水平方向の分力による戸閉力が同時に加わって、戸閉力が増強されることになる。
【0046】
図7における従来技術は扉が移動する範囲に亘って、水平カム面36が必要であったが、本発明によれば、図2に示すように、扉全閉状態におけるローラ22の位置に本発明に係るカム21を設置すれば良く、入口幅、すなわち扉の移動範囲に関わらず、同一のカム21を使用することが可能であり、部品の共通化による設計負担の低減やコスト低減を図ることが可能である。
【0047】
また、図7における従来技術によれば、前記戸閉力増強装置20を前記ハンガー1に取り付ける際、前記スプリング25に抗するように、前記軸31を軸に前記ローラ22を時計回り方向に回転させながら、ねじ等で固定しなければならず、作業性が悪かった。
【0048】
本発明に係る前記カム21の間口方向全長が短いため、図3に示すように、扉全開状態等、前記ローラ22が前記カム21と接しない位置で、前記戸閉力増強装置20を取り付けることが可能であり、取付作業性の向上を図ることができる。
【0049】
さらに、前記ローラ22と前記カム21が常に圧接しない構造のため、前記ローラ22をゴム等弾性材で構成させている場合に、弾性材の寿命が延び、また、前記戸閉力増強装置20の前記スプリング25も常に圧縮されていないため寿命が延びる。
【実施例2】
【0050】
カム21の形状が異なる場合の実施例について、図8を使用して説明する。前記カム21を除く構成は、実施例1と同様である。従って、前記カム21についてのみ説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0051】
ヘッダー3に固定されたカム21は従来技術と同様に戸当たり側に傾斜カム面34を有し、さらに、戸袋側に凹状曲面37および凸状曲面38を有する。図8に示すように、前記凹状曲面37の戸袋側終端における前記ローラ22と前記カム21が当接する部分で、接触角が略0度であり、戸当たり側に向かい、曲面にそって徐々に傾斜角度が大きくなり、さらに前記凸状曲面38にかかると徐々に傾斜角度が小さくなる。
【0052】
前記ローラ22と前記カム21が当接する部分の接触角が略0度であるため、前記ローラ22と前記凹状曲面37の接触が滑らかに行われ、前記ローラ22と前記凹状曲面37との衝突音が小さくなり、また、扉開の際、前記ローラ22が前記凹状曲面37から離れる時に、図4における前記戸閉力増強装置20のストッパ33と前記レバー23との衝突音も小さくすることができる。
【0053】
実施例2における前記カム21は金属あるいは樹脂材等からなり、押し出し成形や射出成形等によって実現することが可能である。
【実施例3】
【0054】
戸閉力増強装置20の形状が異なる場合の実施例について説明する。前記戸閉力増強装置20を除く構成は、実施例1と同様である。従って、前記戸閉力増強装置20についてのみ説明し、その他の構成については説明を省略する
【0055】
実施例1および実施例2における戸閉力増強装置20は、軸31を支点にレバー23が回動自在に揺動することによって、ローラ22が前記軸31を中心とした円弧上に沿って上下左右に揺動する。
【0056】
図5におけるカム21の傾斜カム面35が急な場合、すなわち、前記傾斜カム面35と前記ローラ22の衝突における衝撃を考慮されず、傾斜角度βが大きい場合は、前記ローラが前記傾斜カム面35に沿うように上下動する必要があると共に、前記ローラ22が前記傾斜カム面35と衝突した際の衝撃を受け流すために、左右に揺動する必要があった。
【0057】
しかしながら、実施例1および実施例2のように、前記カム21の前記傾斜カム面35のように、接触角を0に近づけるなど、前記ローラ22と前記傾斜カム面35の衝突におけるる衝撃を緩和するように考慮されているならば、前記ローラ22が左右方向に揺動して、衝撃を受け流す必要はない。
【0058】
従って、前記ローラ22が取り付けられた、レバー23は上下方向に動けば良く、前記レーバー23を、例えば、ばねなどの弾性材によって、上下方向に弾性変位するように、ブラケット24に保持するような構成が考えられる。
【0059】
前記各実施例はファストドアとスロードアを備えた2枚片開き扉の例を示したが、1枚片開き扉、3枚片開き扉、4枚片開き扉、2枚中央開き扉、4枚中央開き扉あるいは6枚中央開き扉など、片側の戸袋に少なくとも1枚の扉が収納される扉装置であれば良い。
【0060】
前記各実施例は戸閉方向に力を付勢する自閉装置として、スプリング11によるものを記載したが、重りを利用した一般的な自閉装置においても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
前記各実施例はカム21をヘッダー3に取り付け、戸閉力増強装置20をドアハンガー1等に取り付けた構造としているが、前記カム21を前記ドアハンガー1等に取り付け、前記戸閉力増強装置20を前記ヘッダー3に取り付けても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1、2、51,52 ドアハンガー
3 ヘッダー
4 レール
5 コード
6、7 プーリ
8 グリップ
9 引き戸
10 ロック装置
11 スプリング
12 乗場
20 戸閉力増強装置
21 カム
22 ローラ
23 レバー
24 ブラケット
25 スプリング
31 軸
32 コード挟持部
33 ストッパ
34、35 傾斜カム面
36 水平カム面
37 凹状曲面
38 凸状曲面
91 上枠
92 縦枠
93 敷居
α、β 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8