【実施例1】
【0031】
乗場から昇降路に通じる開口部の上方位置には、
図2に示すヘッダー3が取り付けられている。
図2は右勝手の片開き2枚扉の場合を示すヘッダーである。ここで
図7と同一符号のものは
図7と同一のものを示しており、ヘッダー3には、レール4が水平に設置され、該レール4には、一対のハンガー1およびハンガー2(図示せず)がレール4に沿って移動自在に設けられている。又、図示しないが、ヘッダー3には、
図6と同様に、ハンガー1,2がコードドライブのコードによって連結されており、該コードドライブによって、戸当たり側の扉の半分の速度で戸袋側の扉は移動することになる。
【0032】
片開き2枚扉において、戸当たり側の扉をファストドア、戸袋側の扉をスロードアと称す。戸開動作中、ファストドアはコードドライブ(図示省略)により、スロードアの2倍の速さで戸開動作を行い、全開位置ではファストドアとスロードアが同時に全開位置に収まるように構成されている。同様に戸閉動作中も、ファストドアはコードドライブ(図示省略)により、スロードアの2倍の速さで戸閉動作を行う。
【0033】
図示しないが、
図6におけるロック装置10と同様に、前記ハンガー1の戸当たり側には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。また、図示しないが、前記ハンガー2とヘッダー3との間には、
図6におけるスプリング11と同様に、スプリングが張設され、当該スプリングによってハンガー2とコードドライブによって連結されたハンガー1が常に戸閉方向に付勢されている。
【0034】
又、前記一方のハンガー1には、本発明に係る戸閉力増強装置20が連繋している。該戸閉力増強装置20においては、ヘッダー3にカム21が固定されている。
【0035】
図4に該戸閉力増強装置20の詳細を示す。前記ハンガー1には、ブラケット24を介して、レバー23の中間部が軸31によって枢支され、該レバー23の基端部にはスプリング25が連結されて、該スプリング25が圧縮することによって、レバー23が反時計方向に回転付勢される。レバー23の先端部にはローラ22が回転自在に枢支され、該ローラ22は、スプリング25による付勢力を受けてカム21に圧接されている。ストッパ33は前記ローラ22がカム21から離れる際、前記スプリング25が圧縮から開放され、前記レバー23と前記ブラケット24が接触した際、衝突音を低減する機能を持つ。
【0036】
尚、戸閉力増強装置20には、戸閉力増強の大きさ、或いは増強を開始する扉位置を調整するための調整機構を設けることが可能であって、例えば、ローラ22及びレバー23からなるローラ支持機構の位置を上下或いは水平にずらす調整機構や、スプリング25の初期変形量を調節する調整機構などを採用することが出来る。これによって、現場にて容易に戸閉力などを調整することが出来る。
【0037】
図2および
図5を用いて本発明に係るエレベータの扉装置を説明する。ヘッダー3に固定されたカム21は従来技術と同様に戸当たり側に傾斜カム面34を有し、さらに、戸袋側にも傾斜カム面35を有する。
図5に示すように、前記傾斜カム面34は水平面に対してα度傾斜し、前記傾斜カム面35は水平面に対してβ度傾斜している。傾斜角度αおよびβはα>βの関係を有す。
【0038】
前記傾斜角度αは、戸閉力を強化するために必要な角度で構成されており、各扉装置によって異なり、スプリングのばね係数などによる計算および実験によって決定される。
【0039】
前記カム21は、前記ハンガー1に連繋した前記戸閉力増強装置20の前記ローラ22が、戸閉動作時に、前記傾斜カム面35の先端に接触せずに、前記傾斜カム面35と接することが可能となるように、前記カム21の長さおよび傾斜角度βを構成する。
【0040】
前記ヘッダー3には前記コードドライブのコードの一端をヘッダー3に固定するコード挟持部32が螺着されている。
【0041】
前記カム21は前記コード挟持部32と重ならない長さであり、前記の通り、戸当たり側と戸袋側にそれぞれ、角度αとβの傾斜カム面34および傾斜カム面35を有している。
【0042】
前記カム21が前記コード挟持部32と重なっていないため、前記コード挟持部32の取付あるいは調整や交換等の保守作業を行う場合に、前記カム21が障害にならず、容易にアクセスすることが可能であり、作業性効率や保守効率が向上する。
【0043】
図2において、二点鎖線は扉全開状態におけるハンガー1及びローラ22の位置を表わし、実線は扉全閉状態におけるハンガー1及びローラ22の位置を表わしている。扉全開状態から扉全閉状態に移行する過程で、前記ローラ22は先ず前記カム21の前記傾斜カム面35に圧接し、前記傾斜カム面35に沿って、水平カム面36に案内される。
【0044】
ここで、前記カム21の前記傾斜カム面34の傾斜角度αおよび前記傾斜カム面35の傾斜角度βがα>βの関係であり、前記傾斜角度βを小さくすることによって、前記ローラ22と前記傾斜カム面35の接触が滑らかに行われ、前記ローラ22と前記傾斜カム面35との衝突音が小さくなり、また、扉開の際、前記ローラ22が前記傾斜カム面35から離れる時に、
図4における前記戸閉力増強装置20のストッパ33と前記レバー23との衝突音も小さくすることができる。尚、傾斜角度αは戸閉力強化の為に、一定以上の角度が必要であり、当該一定以上の角度以下に小さくできない。
【0045】
前記ローラ22には、前記スプリング25によって前記水平カム面36に対して垂直方向の反力が作用し、水平方向の分力は発生しないので、扉は従来装置と同様にスプリング11の付勢を受けて閉じ方向に駆動される。その後、扉全閉状態の直前まで移行すると、前記ローラ22が前記カム21の前記傾斜カム面34に圧接されることとなり、該ローラ22には、傾斜カム面34に対して垂直方向の反力が作用する。該反力は水平方向の成分を有しているので、水平方向の分力によってハンガー1が閉じ方向に付勢される。従って、扉には、前記スプリング11の付勢による戸閉力と前記水平方向の分力による戸閉力が同時に加わって、戸閉力が増強されることになる。
【0046】
図7における従来技術は扉が移動する範囲に亘って、水平カム面36が必要であったが、本発明によれば、
図2に示すように、扉全閉状態におけるローラ22の位置に本発明に係るカム21を設置すれば良く、入口幅、すなわち扉の移動範囲に関わらず、同一のカム21を使用することが可能であり、部品の共通化による設計負担の低減やコスト低減を図ることが可能である。
【0047】
また、
図7における従来技術によれば、前記戸閉力増強装置20を前記ハンガー1に取り付ける際、前記スプリング25に抗するように、前記軸31を軸に前記ローラ22を時計回り方向に回転させながら、ねじ等で固定しなければならず、作業性が悪かった。
【0048】
本発明に係る前記カム21の間口方向全長が短いため、
図3に示すように、扉全開状態等、前記ローラ22が前記カム21と接しない位置で、前記戸閉力増強装置20を取り付けることが可能であり、取付作業性の向上を図ることができる。
【0049】
さらに、前記ローラ22と前記カム21が常に圧接しない構造のため、前記ローラ22をゴム等弾性材で構成させている場合に、弾性材の寿命が延び、また、前記戸閉力増強装置20の前記スプリング25も常に圧縮されていないため寿命が延びる。
【実施例2】
【0050】
カム21の形状が異なる場合の実施例について、
図8を使用して説明する。前記カム21を除く構成は、実施例1と同様である。従って、前記カム21についてのみ説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0051】
ヘッダー3に固定されたカム21は従来技術と同様に戸当たり側に傾斜カム面34を有し、さらに、戸袋側に凹状曲面37および凸状曲面38を有する。
図8に示すように、前記凹状曲面37の戸袋側終端における前記ローラ22と前記カム21が当接する部分で、接触角が略0度であり、戸当たり側に向かい、曲面にそって徐々に傾斜角度が大きくなり、さらに前記凸状曲面38にかかると徐々に傾斜角度が小さくなる。
【0052】
前記ローラ22と前記カム21が当接する部分の接触角が略0度であるため、前記ローラ22と前記凹状曲面37の接触が滑らかに行われ、前記ローラ22と前記凹状曲面37との衝突音が小さくなり、また、扉開の際、前記ローラ22が前記凹状曲面37から離れる時に、
図4における前記戸閉力増強装置20のストッパ33と前記レバー23との衝突音も小さくすることができる。
【0053】
実施例2における前記カム21は金属あるいは樹脂材等からなり、押し出し成形や射出成形等によって実現することが可能である。
【実施例3】
【0054】
戸閉力増強装置20の形状が異なる場合の実施例について説明する。前記戸閉力増強装置20を除く構成は、実施例1と同様である。従って、前記戸閉力増強装置20についてのみ説明し、その他の構成については説明を省略する
【0055】
実施例1および実施例2における戸閉力増強装置20は、軸31を支点にレバー23が回動自在に揺動することによって、ローラ22が前記軸31を中心とした円弧上に沿って上下左右に揺動する。
【0056】
図5におけるカム21の傾斜カム面35が急な場合、すなわち、前記傾斜カム面35と前記ローラ22の衝突における衝撃を考慮されず、傾斜角度βが大きい場合は、前記ローラが前記傾斜カム面35に沿うように上下動する必要があると共に、前記ローラ22が前記傾斜カム面35と衝突した際の衝撃を受け流すために、左右に揺動する必要があった。
【0057】
しかしながら、実施例1および実施例2のように、前記カム21の前記傾斜カム面35のように、接触角を0に近づけるなど、前記ローラ22と前記傾斜カム面35の衝突におけるる衝撃を緩和するように考慮されているならば、前記ローラ22が左右方向に揺動して、衝撃を受け流す必要はない。
【0058】
従って、前記ローラ22が取り付けられた、レバー23は上下方向に動けば良く、前記レーバー23を、例えば、ばねなどの弾性材によって、上下方向に弾性変位するように、ブラケット24に保持するような構成が考えられる。
【0059】
前記各実施例はファストドアとスロードアを備えた2枚片開き扉の例を示したが、1枚片開き扉、3枚片開き扉、4枚片開き扉、2枚中央開き扉、4枚中央開き扉あるいは6枚中央開き扉など、片側の戸袋に少なくとも1枚の扉が収納される扉装置であれば良い。
【0060】
前記各実施例は戸閉方向に力を付勢する自閉装置として、スプリング11によるものを記載したが、重りを利用した一般的な自閉装置においても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
前記各実施例はカム21をヘッダー3に取り付け、戸閉力増強装置20をドアハンガー1等に取り付けた構造としているが、前記カム21を前記ドアハンガー1等に取り付け、前記戸閉力増強装置20を前記ヘッダー3に取り付けても同様の効果を得ることができる。