特許第5953663号(P5953663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953663
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】交通信号制御機
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/095 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   G08G1/095 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-151693(P2011-151693)
(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公開番号】特開2013-20341(P2013-20341A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 佳孝
【審査官】 小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−310079(JP,A)
【文献】 特開2005−192282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器の灯色切り替えタイミングを制御する交通信号制御機であって、
商用電源及び自然エネルギーによって発電する発電装置から充電可能なバッテリを備え、前記信号灯器の駆動のための電源として、前記商用電源及び前記バッテリのいずれか一方に切り替えられるよう構成され、前記バッテリの充電のための電力供給源として前記商用電源及び前記発電装置のいずれが選択されているかにかかわらず、前記信号灯器の駆動のための電源として、前記商用電源を選択可能であり、
決められた放電量になるまで前記バッテリの充電量の一部を放電させる部分放電のための部分放電処理を実行する制御部を備え、
前記部分放電処理において、前記制御部は、前記信号灯器の駆動のための電源として前記商用電源が選択されているときに、前記発電装置による発電量が所定の発電基準量を超えると、前記信号灯器の駆動のための電源として、前記バッテリを選択して前記部分放電を行わせ、前記部分放電の完了後、前記信号灯器の駆動のための電源として前記商用電源が選択された状態に戻す
交通信号制御機。
【請求項2】
前記制御部は、前記発電装置による発電量が所定の発電基準量を超え、かつ、前記バッテリの充電量が所定の充電基準量に達している場合に、前記部分放電を実行する
請求項1記載の交通信号制御機。
【請求項3】
前記制御部は、前記発電装置による発電量又は前記発電装置による発電量に影響を与える要因に関する情報に基づいて放電量を調整する
請求項1又は2記載の交通信号制御機。
【請求項4】
前記発電装置は、太陽光発電を行う発電装置を含み、
前記発電装置による発電量に影響を与える要因に関する前記情報は、日射に関する情報を含む
請求項3記載の交通信号制御機。
【請求項5】
前記充電基準量は、前記バッテリがほぼ満充電であるときの充電量である
請求項2記載の交通信号制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号灯器の点灯又は消灯などを制御する交通信号制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点又は横断歩道には、信号灯器の青、黄、赤、青矢印等の点灯又は消灯を所定の時間間隔で繰り返すように制御する、交通信号制御機が設置されている。
【0003】
また、この種の交通信号制御機として、商用電源が災害等で遮断された場合でも電源を確保して交通信号制御の信頼性を高めるため、信号灯器を含む機器の電源に商用電源のAC100Vを用いる通常運転と、バッテリの直流電圧を用いるバッテリ運転とのいずれかに切り替え可能なものが知られている(特許文献1参照)。
バッテリが設けられていることで、商用電源が遮断された場合であっても、バッテリ運電を行うことで、交通信号制御機の動作を維持することができる。
【0004】
また、特許文献1記載の交通信号機では、太陽電池が接続されており、太陽電池で発電された電力によりバッテリを充電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−71176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリを、太陽電池で発電した電力で充電できるように構成されていても、バッテリが満充電の場合は、太陽電池が発電しても電力を貯めることができない。このため、発電したエネルギーを使用せず、商用電源を利用することとなり、無駄が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、太陽電池などの自然エネルギーによって発電する発電装置が発電する電力を蓄える際の無駄を少なくするとともに、商用電源の利用を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、信号灯器の灯色切り替えタイミングを制御する交通信号制御機であって、商用電源及び自然エネルギーによって発電する発電装置から充電可能なバッテリと、前記発電装置による発電量が所定の発電基準量を超えている場合に、前記信号灯器を前記バッテリで駆動させることで、前記バッテリの充電量の一部を放電させる部分放電を実行する制御部と、を備えていることを特徴とする交通信号制御機である。
【0009】
上記本発明によれば、バッテリの充電量が多くても、バッテリの充電量の一部を放電させる部分放電を実行することで、充電量が少なくなり、さらなる充電が可能となる。したがって、自然エネルギーによって発電する発電装置が発電する電力を蓄える機会が増えるとともに、商用電源の利用を抑制できるため、無駄が少なくなる。
【0010】
(2)前記制御部は、前記発電装置による発電量が所定の発電基準量を超え、かつ、前記バッテリの充電量が所定の充電基準量に達している場合に、前記部分放電を実行するのが好ましい。この場合、バッテリの充電量が所定の充電基準量に達しているほどに多い場合に、部分放電が実行される。バッテリの充電量が少ない場合に部分放電を行うと、再充電までに非常に長い時間がかかり、バッテリ駆動が必要とされる事態が発生したときに、十分な充電量が確保できないおそれがある。これに対し、バッテリの充電量が所定の充電基準量に達しているほどに多い場合に、部分放電が実行されるのであれば、部分放電を行っても充電され易く、バッテリ駆動が必要とされる事態が発生したときにでも、十分な充電量を確保するのが容易である。
【0011】
(3)前記制御部は、前記発電装置による発電量又は前記発電装置による発電量に影響を与える要因に関する情報に基づいて放電量を調整するのが好ましい。この場合、放電量を適切に調整することができる。
【0012】
(4)前記発電装置による発電量に影響を与える要因に関する前記情報は、日射に関する情報であるのが好ましい。太陽光発電の発電量は日射の状況によって左右されるため、放電量も、日射に関する情報に基づいて調整すると、過放電とならないように調整できる。
【0013】
(5)前記制御部は、前記部分放電の完了後、前記信号灯器を前記商用電源で駆動させるのが好ましい。
【0014】
この場合、部分放電の完了後に、信号灯器を商用電源で駆動することにより、発電装置によるバッテリの再充電を効率的に行うことができる。
【0015】
(6)前記充電基準量は、前記バッテリがほぼ満充電であるときの充電量であるのが好ましい。この場合、バッテリがほぼ満充電であるときに部分放電が行われるため、バッテリの残容量が少なくなり難く、停電時バックアップというバッテリの機能を損なうところが少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バッテリの充電量が多くても、バッテリの充電量の一部を放電させる部分放電を実行することで、充電量が少なくなり、さらなる充電が可能となる。したがって、自然エネルギーによって発電する発電装置が発電する電力を蓄える機会が増えるとともに、商用電源の利用を抑制できるため、無駄が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る交通信号制御機の構成例を示すブロック図である。
図2】交通信号制御機の電源制御の第1の処理のフローチャートである。
図3】交通信号制御機の電源制御の第2の処理(部分放電処理)のフローチャートである。
図4】変形例に係る部分放電処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔交通信号制御機の構成〕
図1は、本発明に係る交通信号制御機1の構成例を示すブロック図である。
本実施形態の交通信号制御機1は、通信部2、制御部3、電源部4、バッテリ10、灯器駆動部11、及びインタフェース部12を備えている。なお、図1では、信号灯器51を駆動する灯器駆動部11が1つだけ図示されているが、実際の灯器駆動部11は、信号灯器51の数に応じて複数設けられている。
また、交通信号制御機1は、外部装置と信号をやり取りするためのインタフェース部12を備えている。インタフェース部12には、超音波車両感知器52、光ビーコン53、画像処理式車両感知器54、交通情報板55、押しボタン装置56、他の交通信号制御機101などが接続されており、これらの機器との間でデータのやりとりを行うことができる。
【0019】
交通信号制御機1の通信部2には、交通管制センターに設置された中央装置6(交通管制装置ともいう。)が所定の通信回線を通じて接続されている。なお、中央装置6は、交通管制センター以外の建物に設置されていてもよい。
中央装置6は、自装置の管轄エリア内の複数の集中型の交通信号制御機1と通信回線を通じて接続されており、この中央装置6と集中型の各交通信号制御機1とから、交通信号制御システムが構成されている。
なお、交通信号制御機1は、中央装置6との通信を行わずに単独で信号灯器の制御を行う地点型であってもよい。
【0020】
交通信号制御機1の制御部3は、信号灯器51等を制御するためのものであり、信号灯器51の点灯又は消灯の切り替えタイミングを決定する処理などを行う。
【0021】
交通信号制御機1の電源部4には、外部電源として商用電源7(例えば、AC100Vの交流電源)と、内部電源としてのバッテリ10と、が接続されている。また、電源部4には、太陽電池(ソーラーパネル)8及び/又は風力発電装置9などの、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した発電装置8,9が接続されている。発電装置8,9は、発電電力計20を介して、電源部4に接続されている。なお、太陽電池(ソーラーパネル)8及び/又は風力発電装置9などの発電装置は、信号灯器15の近傍に設置されている。
【0022】
電源部4は、バッテリ10の充電のための電力供給源を切り替える第1切替部41、及び、信号灯器51及び交通信号制御機1を駆動するための電源を切り替える第2切替部42を備えている。
【0023】
第1切替部41は、スイッチ回路よりなり、充電のための電力供給源として商用電源7を用いる第1充電モード(通常モード)と、充電のための電力供給原として発電装置8,9を用いる第2充電モードと、を切り替えることができる。
第2切替部42は、スイッチ回路よりなり、信号灯器51等の駆動のための電源として商用電源を用いる第1駆動モード(通常モード)と、信号灯器51等の駆動のための電源としてバッテリ10を用いる第2駆動モードと、を切り替えることができる。
【0024】
電源部4は、第1切替部41及び第2切替部42などの制御のために電源制御部43を備えている。
電源制御部43は、第1切替部41及び第2切替部42に対して、切替制御信号を出力することで、各切替部41,42のモードを切り替えることができる。
【0025】
交通信号制御機1は、通常時においては、通常モードである第1駆動モード及び第1充電モードにある。つまり、通常時においては、商用電源7によって信号灯器51などが動作し、商用電源7にてバッテリ10が充電される。なお、商用電源7からの交流電力は、コンバータ45によって直流電力に変換され、第1切替部41を介して、バッテリ10に与えられる。
【0026】
電源制御部43は、必要に応じて、第2充電モード及び/又は第2駆動モードに切り替える制御を行い、バッテリ10にて信号灯器51などを動作させ、発電装置8,9にてバッテリ10を充電させることもできる。バッテリ10による信号灯器51などの動作と、発電装置8,9によるバッテリ10の充電とは、同時に実施してもかまわない。
なお、バッテリ10から放電された直流電力は、インバータ44によって交流電力に変換され、第2切替部42を介して、交通信号制御機1内の機器2,3,11,12及び信号灯器51に供給される。
【0027】
バッテリ10は、節電のために商用電源7の電力を使用すべきでないとき、又は停電のために商用電源7を利用できないときのためのバックアップ用電源である。バッテリ10は、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、或いは、ニッケル水素電池などの二次電池よりなる。バッテリ10は、交通信号制御機1の筐体内に内蔵していてもよいし、その筐体の外部に別体で設けられていてもよい。
【0028】
バッテリ10は、充放電制御部10aを備えており、充放電制御部10aは、充電制御、過充電保護のための制御、及び過放電保護のための制御を行う。充放電制御部10aは、バッテリ10が満充電(所定の充電基準量に達した状態)になると、バッテリ10への充電を停止させる。充放電制御部10aは、満充電でないときに、バッテリ10への電力供給があると、所定の充電制御手順に従って、バッテリ10への充電を制御する。また、充放電制御部10aは、バッテリ10の充電量を示す信号を、電源制御部43に対して出力する。
【0029】
〔電源制御処理〕
バッテリ10は、節電時又は停電時などにおけるバックアップ用電源であるため、商用電源7が利用可能であるときに、充電量が十分に多い状態(満充電)にしておき、その状態を保って、節電時又は停電時に備えることが望まれる。つまり、信号灯器51などがバッテリ10にて駆動されてバッテリ10の電力が放電される第2駆動モードとなるのは、節電が必要となったとき又は商用電源7が遮断され停電になったときなど、商用電源7の利用が制限されたときに限られるべきである、というのが本来的な考え方である。
【0030】
しかし、バッテリ10が満充電であると、太陽電池8や風力発電装置9などの自然エネルギーを利用した発電装置8,9が発電しても、バッテリ10にそれ以上電力を貯めることができない。
そこで、本実施形態の電源制御部43は、節電時又は停電時にだけ信号灯器51などをバッテリ10にて駆動する第2駆動モードに切り替えるのではなく、商用電源7を利用可能なときであっても、所定の条件に合致した場合には、信号灯器51などをバッテリ10にて駆動する第2駆動モードに切り替える。これにより、バッテリ10の電力が放電され、自然エネルギーを利用した発電装置8,9が発電した電力を、バッテリ10に蓄える余地が生じる。しかも、バッテリ10の電力放電によって信号灯器51などを駆動できるため、その分、商用電源7の電力利用を抑制することができる。
なお、節電のために信号灯器51などをバッテリ10にて駆動するよう切り替えるのは、中央装置1からの指令(節電のためにバッテリ駆動とする指令)を契機として行っても良いし、交通信号制御機1が有するタイマーによって節電すべき時間になったことが検出されたことを契機として行っても良い。
【0031】
図2は、電源制御部43が行う電源制御の第1の処理(第1切替部の切替処理)のフローチャートを示し、図3は、電源制御部43が行う電源制御の第2の処理(第2切替部の切替処理)のフローチャートを示している。
なお、図2及び図3に示す処理は、周期的に実行される。また、図2及び図3に示す電源制御の処理は、バッテリ10の充放電制御部10aが行っても良い。
【0032】
図2の電源制御の第1の処理では、まず、発電装置8,9による発電量が、所定の充電切替基準値(第1の閾値)を超えているか否かが判定される(ステップS1)。電源制御部43は、発電電力計20が出力した発電量に基づいて、判定を行う。充電切替基準値は、バッテリ10へ充電するための十分な発電量を示す値である。
【0033】
悪天候である場合や無風である場合などの原因により発電装置8,9による発電量が、充電切替基準値に満たない場合には、商用電源7にてバッテリ10が充電されるように、電源制御部43は、第1切替部41を商用電源7側に切り替え、第1充電モードにする(ステップS2)。第1モードでは、商用電源7から電力がバッテリ10に与えられ、バッテリ10が満充電になると、充放電制御部10aによって充電が停止する。
【0034】
晴天である場合や風が吹いている場合などの原因により発電装置8,9による発電量が、充電切替基準値を超えた場合には、発電装置8,9にてバッテリ10が充電されるように、電源制御部43は、第1切替部41を発電装置8,9側に切り替え、第2充電モードにする(ステップS3)。
【0035】
図3の電源制御の第2の処理(部分放電処理)では、まず、バッテリ10が満充電(所定の充電基準量に達した状態)であるか否かを判定する(ステップS41)。電源制御部43は、充放電制御部10aから出力された充電量を示す信号に基づいて、満充電であるか否かを判定する。
【0036】
バッテリ10が満充電でなければ、部分放電処理を終了し、満充電であれば、次のステップS42に進む。
なお、ステップS42への処理の移行は、バッテリ10が満充電である場合に限る必要はなく、バッテリ10が所定の充電基準量に達している場合に行っても良い。なお、所定の充電基準量は、ほぼ満充電であると評価できる充電量(例えば、満充電の99%又は98%程度の充電量)であるのが好ましい。
バッテリの充電量が少ない場合に部分放電を行うと、再充電までに非常に長い時間がかかり、節電時又は停電時などのようにバッテリ駆動が必要とされる事態が発生したときに、十分な充電量が確保できないおそれがある。これに対し、バッテリの充電量がほぼ満充電であるときに、部分放電が実行されるのであれば、節電時又は停電時などのようにバッテリ駆動が必要とされる事態が発生したときにでも、十分な充電量を確保するのが容易である。
【0037】
ステップS42では、発電装置8,9の発電量が、所定の発電基準量(第2の閾値)を超えているか否かの判定が行われる。この発電基準量は、バッテリ10から電力を部分放電しても、発電装置8,9によって再充電するための十分な発電量を示す値である。発電基準量は、前述の充電切替基準値と同じ値であっても良いし、異なる値であってもよい。
【0038】
発電装置8,9の発電量が発電基準量を下回った場合には、バッテリ10の放電を行うと、自然エネルギーによる再充電に支障があるとみなし、バッテリ10の部分放電を行わずに、部分放電処理は終了する。発電装置8,9の発電量が発電基準量を超えた場合には、次のステップS43に移行する。
【0039】
ステップS43では、部分放電による放電量を決定するために、発電装置8,9の発電量と、所定の閾値(第3の閾値;第3の閾値>発電基準量(第2の閾値))と、の比較を行う。発電装置8,9による発電量が比較的多い場合(晴天時・強風時)には、バッテリ10の放電を多めに行っても、確実な再充電が期待できる。一方、発電装置8,9による発電量が比較的少ない場合(曇天時・弱風時)には、バッテリ10の放電を少なめにしたほうが再充電を確実に行える。
【0040】
そこで、ステップS43にて、発電量が所定の閾値以上であると判定されると、放電量として、充電量の90%までの放電(比較的多い放電量)を決定する(ステップS44)。一方、ステップS43にて、発電量が所定の閾値未満であると判定されると、放電量として、充電量の95%までの放電(比較的少ない放電量)を決定する(ステップS45)。なお、ステップS43〜S45では、2種類の放電量のうちの一つが決定されるが、決定される放電量の候補は、3以上あってもよい。また、複数の放電量の候補から選択するのではなく、発電量から放電量を算出する演算式に基づいて、放電量を決定してもよい。
【0041】
放電量が決定されると、電源制御部43は、第2切替部42をバッテリ10側に切り替えて、バッテリ10によって信号灯器51などが駆動される第2駆動モードにする(ステップS46)。これにより、バッテリ10の部分放電が実行され、充電量が低下する。
【0042】
電源制御部43は、ステップS44,45で決定した放電量になるまで、ステップS42〜ステップS47の処理を繰り返す(ステップS47)。なお、決定した放電量になるまで、単に、ステップS47だけを繰り返しても良いが、ステップS42〜ステップS47の処理を繰り返すことで、部分放電中に発電装置8,9の発電量が変動した場合に、適切な放電量に変更することが可能となる。
【0043】
なお、電源制御部43による放電量の管理は、充放電制御部10aから出力された放電量を示す信号に基づいて行っても良いし、放電量を直接的に監視することなく、単に放電時間の長さの管理で行っても良い(放電量は放電時間に応じて増加する)。
【0044】
決定した放電量までの部分放電が完了すると、電源制御部43は、第2切替部42を商用電源7側に切り替えて、商用電源7によって信号灯器51などが駆動される第1駆動モードに戻す。これにより、バッテリ10の部分放電が停止し、その後、再充電がなされる。自然エネルギーを利用した発電装置8,9の発電量が十分に大きいときに放電を行ったため、その後の再充電も、自然エネルギーを利用した発電装置8,9から充電が行われることが期待できる(図2参照)。
【0045】
したがって、自然エネルギーを利用した発電装置8,9が発電する電力を蓄電できる機会が増加し、無駄を少なくすることができる。
しかも、発電装置8,9の発電量が、直ちに再充電が可能なレベルにあるときにだけ放電するため、放電しても直ちに満充電に戻ることが期待でき、バッテリ10の本来的な機能である節電時又は停電時のバックアップ機能にほとんど影響を及ぼさない。
【0046】
なお、放電と同時に充電も行えるバッテリ10であれば、バッテリ10の部分放電中であっても、第1切替部41がバッテリ10側に切り替えられている場合には、部分放電完了前であっても充電が行われる。この結果、自然エネルギーを利用した発電装置8,9の発電量が、信号灯器51などによる消費電力量以上であるときには、図2のステップS42からステップS47のループが回り続けるため、商用電源7の電力を使用せずに、動作することが可能となる。
また、万が一、部分放電後の再充電時に、自然エネルギーを利用した発電装置8,9の発電量が予想外に低下した場合であっても、商用電源7からの充電が可能であるため、再充電自体は可能である。
【0047】
〔部分放電処理の変形例〕
図4は、図3に示す部分放電処理の変形例を示している。図3のステップS43では、放電量を決定するために、発電装置8,9の発電量と所定の閾値(第3の閾値)とを比較していたが、図4のステップS43では、発電量を直接的に考慮するのではなく、発電装置8,9による発電量に影響を与える要因に関する情報に基づいて、部分放電を行うか否かを決定する。
【0048】
放電・再充電にはある程度の時間を要するため、現在の発電量が十分なレベルであっても、再充電が完了するまでの間においても、十分なレベルの発電量が維持できるとは限らない。
例えば、太陽電池の場合、発電量は、日射量に左右されるため、日射量が少ない時間帯(典型的には、夜)においては、十分な発電量を期待できない。したがって、現在の発電量は十分にあっても、日の入が近い場合には、再充電が完了する前に発電量が低下するおそれがある。したがって、現在の発電量だけでなく、将来の発電量をも考慮して、部分放電の実行の可否を決定した方がよい。
【0049】
そこで、例えば、図4のステップS43では、現在時刻が”日の入の2時間以上”であるか否かの判定を行い、”日の入の2時間以上”であれば、充電量の90%までの放電を決定し(ステップS44)、”日の入の2時間以上”でなければ、部分放電を行わずに、部分放電処理を終了する。
【0050】
このように、時刻情報という発電量に影響を与える要因に関する情報(日射に関する情報)に基づいて、部分放電を実行するか否かを判定することで、より確実な再充電が行える。すなわち、太陽光発電の発電量は日射の状況によって左右されるため、放電量も、日射に関する情報に基づいて調整すると、過放電とならないように調整できる。
なお、日射の有無を判断する場合、単に時刻で判断するのではなく、例えば、太陽電池の設置位置及び高さ、太陽電池の周辺の建物の位置及び高さ、日時と太陽の位置の関係、現在の日時などの情報を総合して、太陽電池が影に入らないかどうかを考慮してもよい。また、日射の有無を判断する場合、気象情報(天気予報情報)を考慮してもよい。
【0051】
また、発電量に影響を与える要因に関する情報としては、春夏秋冬の各シーズンの平均日射量や平均風速といった過去の統計データであってもよい。例えば、発電量が所定の閾値以上になる時間帯を統計データに基づいて特定しておき、現在時刻が当該時間帯内であれば、部分放電を行うようにしてもよい。
また、部分放電のための電源制御処理を頻繁に行わない場合には、所定期間(所定期間としては、1又は複数時間、1又は複数日、1又は複数月など)毎の平均日射量又は平均風速が、所定の閾値以上であれば、部分放電を行うようにしてもよい。
【0052】
なお、図4では、”日の入の2時間以上”でなければ、部分放電を行わずに、部分放電処理を終了していたが、将来の発電量に影響を与える要因に関する情報に基づいて、放電量を調整してもよい。
【0053】
〔付記〕
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 交通信号制御機
4 電源部
7 商用電源
8 太陽電池(発電装置)
9 風力発電装置
10 バッテリ
10a 充放電制御部
20 発電電力計
41 第1切替部
42 第2切替部
43 電源制御部(制御部)
51 信号灯器
図1
図2
図3
図4