特許第5953758号(P5953758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953758
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】モータ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-7512(P2012-7512)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-150403(P2013-150403A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】阪田 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】西崎 勝利
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−353536(JP,A)
【文献】 特表2011−514135(JP,A)
【文献】 特開2005−261089(JP,A)
【文献】 特開2010−200575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に油が流入する構造のモータと、
前記モータに隣接して設けられ、前記モータを駆動制御するコントローラと、を備えたモータ装置において、
前記モータは、その回転軸に設けられたロータと、
コイルが巻回されたインシュレータと、
該インシュレータが装着されたステータコアと、
該ステータコアが前記ロータの外周面の外側に環状に固定されたステータアッシーと、
該ステータアッシーと一体にモールドされた状態で設けられた樹脂製のモータハウジングと、を備え、
前記モータハウジングは、制御室と、該制御室に収容された前記コントローラの基板と、
前記インシュレータに設けられ、端子部が前記コイルに接続され、且つピン部が前記基板に穿設された貫通孔と接続されたバスバーと、
前記制御室内に設けられ且つ前記バスバーと同心に設けられた円筒状の凹部と、
前記バスバーと前記凹部とで設けられたシール溝と、
前記シール溝に嵌入した状態で前記制御室をシールする円環状のシール部材と、
前記凹部の開口端を閉鎖した抜け止め部材と、を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記インシュレータに設けられた前記バスバーの前記端子部は第1バスバーであり、前記ピン部は前記第1バスバーに連結された第2バスバーであり、前記第2バスバーは、前記第2バスバーと同心に形成された円筒状の前記凹部との間で環状の前記シール溝を形成する大径の基端部と、前記基端部に同軸に設けられ前記基端部より小径の先端部から形成されることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ装置において、
前記第2バスバーは、前記基板の前記貫通孔に挿入された状態で、前記モータハウジングに固定された前記基板と電気的に接続されており、前記モータハウジングは、前記制御室を覆う樹脂カバーを備えることを特徴とするモータ装置
【請求項4】
内部に油が流入する構造を有し、回転軸に設けられたロータと、ステータコアにインシュレータが装着され、前記インシュレータにコイルが巻回された複数のステータサブアッシーをステータリングにより環状に固定して前記ロータの外周面の外側に固定されたステータアッシーと、前記ステータアッシーと一体にモールド成形された樹脂製のモータハウジングと、を備えたモータと、
前記モータに隣接して設けられ、前記モータを駆動制御するコントローラと、を備えたモータ装置の製造方法において、
前記ステータアッシーの前記インシュレータに設けられ、前記コイルに接続された第1バスバーに第2バスバーを圧入する圧入工程と、
前記ステータアッシーの内周面に、前記第2バスバーと嵌合する複数の孔が穿設された治具を嵌め合わせ、隣接する前記ステータサブアッシーにより形成されるオープンスロットと前記治具の突起とにより回転方向の位相を合わせ、前記治具を前記ステータアッシーの軸線方向に移動させて、前記第2バスバーを前記軸線方向と平行に矯正する矯正工程と、
前記第2バスバーが矯正された前記ステータアッシーを下型に設置し上型を型合わせして金型を形成し、前記金型に樹脂を注入して前記モータハウジングをモールド成形する成形工程と、を備え、
前記成形工程では、前記第2バスバーの外周を囲むシール溝を形成するための凸状部、および前記第2バスバーを収容するための嵌合部が形成された前記上型によって、前記コントローラを収納する前記モータハウジングの制御室内に円筒状の凹部を形成することを特徴とするモータ装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ装置の製造方法において、
円筒状の前記凹部の開口端には、前記凹部と前記第2バスバーとで形成された前記シー
ル溝に前記シール部材を嵌入した後に、前記開口端を閉鎖する樹脂製の抜け止め部材を固
着させる第1固着工程を備えるモータ装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のモータ装置の製造方法において、
前記第2バスバーを前記コントローラを構成する基板の貫通孔に挿入し電気的に接続するために、前記基板を前記モータハウジングに固定する固定工程と、
前記モータハウジングに前記制御室を覆う樹脂製のカバーを固着する第2固着工程と、を備えるモータ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動オイルポンプ装置には、流体(油)を循環させるオイルポンプとオイルポンプを駆動するモータとを組み合わせたものがある。また、モータとオイルポンプとが回転軸を共用し、オイルポンプの中心軸方向に並んで配置され、モータハウジングをポンプハウジングに一体に結合して小型、軽量とした電動オイルポンプ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術によれば、ポンプハウジング内の作動油が回転軸の外周とポンプハウジングとの隙間を通ってモータの回転するロータを収容するモータハウジング内の室に流入し、ロータの外周面の外側に固定されたステータとの接触によりモータを冷却するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−317772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電動オイルポンプ装置では、例えば、エンジンルーム内のトランスミッション近傍に配置されるモータと、車室内に設置されモータを駆動制御するコントローラとは、ハーネスで接続した構成がとられるので、ハーネスによるコスト増加を生じるとともに、外部からのノイズによる影響でコントローラの動作が不安定になったり、コントローラから外部に悪影響を与える場合がある。そこで、モータとコントローラとを接続するハーネスを不要とし、コントローラを電動オイルポンプ装置に一体化することでさらに小型化を図ることができる。しかしながら、モータ内部に油を流入させモータを冷却する構造の電動オイルポンプ装置をコントローラと一体化すると、油やシール部材の経年変化によりステータのコイルが接続されたバスバーの境界面を通してモータハウジング内を流入する油がコントローラ側へ流入する可能性がある。その結果、コントローラ内の基板の膨潤による変形や基板に搭載された電子部品の破損によってコントローラの動作不良が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、モータとコントローラとが一体に形成され、内部に油が流入する構造のモータの油がコントローラ側へ流入することを、モータハウジングとバスバーとの間をシールすることにより防止できるモータ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は内部に油が流入する構造のモータと、
前記モータに隣接して設けられ、前記モータを駆動制御するコントローラと、を備えたモータ装置において、
前記モータは、その回転軸に設けられたロータと、
コイルが巻回されたインシュレータと、
該インシュレータが装着されたステータコアと、
該ステータコアが前記ロータの外周面の外側に環状に固定されたステータアッシーと、
該ステータアッシーと一体にモールドされた状態で設けられた樹脂製のモータハウジングと、を備え、
前記モータハウジングは、制御室と、該制御室に収容された前記コントローラの基板と、
前記インシュレータに設けられ、端子部が前記コイルに接続され、且つピン部が前記基板に穿設された貫通孔と接続されたバスバーと、
前記制御室内に設けられ且つ前記バスバーと同心に設けられた円筒状の凹部と、
前記バスバーと前記凹部とで設けられたシール溝と、
前記シール溝に嵌入した状態で前記制御室をシールする円環状のシール部材と、
前記凹部の開口端を閉鎖した抜け止め部材と、を備えることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、バスバーとモータハウジングの円筒状の凹部とで形成される環状のシール溝に円環状のシール部材を挿入することにより、シール部材を均一の面圧で押圧してモータハウジングとバスバーとの間を良好にシールすることができる。また抜け止め部材によりシール部材の抜けが防止されるので、モータハウジング内の油のコントローラへの漏れの発生が抑制され、膨潤による基板の変形や電子部品の破損を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ装置において、
前記インシュレータに設けられた前記バスバーの前記端子部は第1バスバーであり、前記ピン部は前記第1バスバーに連結された第2バスバーであり、前記第2バスバーは、前記第2バスバーと同心に形成された円筒状の前記凹部との間で環状の前記シール溝を形成する大径の基端部と、前記基端部に同軸に設けられ前記基端部より小径の先端部から形成されることを要旨とする。上記構成によれば、第2バスバーは、モータハウジングの円筒状の凹部との間で同心に環状のシール溝を形成する大径の基端部を有するので、モータハウジングの凹部との間を円環状のシール部材により確実にシールできる。これにより、モータハウジング内の油のコントローラへの漏れの発生が大径の基端部で確実に抑制でき、また基端部より小径の先端部を有するので、基板に容易に接続できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のモータ装置において、前記第2バスバーは、前記コントローラを構成する基板の貫通孔に挿入された状態で、前記モータハウジングに固定された前記基板と電気的に接続されており、前記モータハウジングは、前記制御室を覆う樹脂カバーを備えることを要旨とする。上記構成によれば、第2バスバーを基板に直接接続することができ、基板の配線、およびカバーの取り付けが容易にできる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、内部に油が流入する構造を有し、回転軸に設けられたロータと、ステータコアにインシュレータが装着され、前記インシュレータにコイルが巻回された複数のステータサブアッシーをステータリングにより環状に固定して前記ロータの外周面の外側に固定されたステータアッシーと、前記ステータアッシーと一体にモールド成形された樹脂製のモータハウジングと、を備えたモータと、前記モータに隣接して設けられ、前記モータを駆動制御するコントローラと、を備えたモータ装置の製造方法において、前記ステータアッシーの前記インシュレータに設けられ、前記コイルに接続された第1バスバーに第2バスバーを圧入する圧入工程と、前記ステータアッシーの内周面に、前記第2バスバーと嵌合する複数の孔が穿設された治具を嵌め合わせ、隣接する前記ステータサブアッシーにより形成されるオープンスロットと前記治具の突起とにより回転方向の位相を合わせ、前記治具を前記ステータアッシーの軸線方向に移動させて、前記第2バスバーを前記軸線方向と平行に矯正する矯正工程と、前記第2バスバーが矯正された前記ステータアッシーを下型に設置し上型を型合わせして金型を形成し、前記金型に樹脂を注入して前記モータハウジングをモールド成形する成形工程と、を備え、前記成形工程では、前記第2バスバーの外周を囲むシール溝を形成するための凸状部、および前記第2バスバーを収容するための嵌合部が形成された前記上型によって、前記コントローラを収納する前記モータハウジングの制御室内に円筒状の凹部を形成することを要旨とする。
上記構成によれば、ステータアッシーに第2バスバーと嵌合する治具を嵌め合わせて位相を合わせ軸線方向に移動することにより、第2バスバーを軸線方向と平行に矯正することができる。これにより、モータハウジングをモールド成形する成形工程では、コントローラを収納するモータハウジングの制御室内に円筒状の凹部を第2バスバーと同軸に形成することができ、第2バスバーと円筒状の凹部とで環状のシール溝を形成することができる。このシール溝にシール部材を嵌め込むので電動オイルポンプ装置の油に対するシール性を向上することができる。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のモータ装置の製造方法において、円筒状の前記凹部の開口端には、前記凹部と前記第2バスバーとで形成された前記シール溝に前記シール部材を嵌入した後に、前記開口端を閉鎖する樹脂製の抜け止め部材を固着させる第1固着工程を備えることを要旨とする。上記構成によれば、抜け止め部材をモータハウジングの円筒状の凹部の開口端に固着させることにより円環状のシール部材の抜けが防止され、モータハウジング内の油のコントローラへの漏れの発生が抑制される。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項または請求項に記載のモータ装置の製造方法において、前記第2バスバーを前記コントローラを構成する基板の貫通孔に挿入し電気的に接続するために、前記基板を前記モータハウジングに固定する固定工程と、前記モータハウジングに前記制御室を覆う樹脂製のカバーを固着する第2固着工程と、を備えることを要旨とする。上記構成によれば、コントローラの基板をモータハウジングの端面に固定し、第2バスバーを基板に直接接続することができる。これにより、基板の配線、およびカバーの取り付けが容易にできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バスバーとモータハウジングの円筒状の凹部とで形成される環状のシール溝に円環状のシール部材を挿入することにより、シール部材を均一の面圧で押圧してバスバーとモータハウジングとの間を良好にシールすることができるモータ装置およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による電動オイルポンプ装置の概略構成を示す軸線方向の断面図。
図2】ステータサブアッシーの構成を示す正面図。
図3】ステータアッシーに嵌合する治具の斜視図。
図4】治具をステータアッシーに嵌合した状態を示す断面図。
図5】ステータアッシーを下型に設置し上型を型合わせして金型を形成し、モータハウジングを成形する工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態の一例として、電動オイルポンプ装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電動オイルポンプ装置の概略構成を示す軸線方向の断面図、図2は、ステータサブアッシーの構成を示す正面図である。図1および図2に示すように、電動オイルポンプ装置1は、自動車のトランスミッション用油圧ポンプとして用いられ、オイルポンプ(例えば、内接ギヤポンプ)2とオイルポンプ2を回転駆動する電動モータ(以下、ブラシレスモータという)3とが隣接してユニット化(一体化)されている。また、コントローラ4もモータハウジング15内に組み込まれている。なお、図1に示すブラシレスモータ3は、ダブルスター結線された3相巻線を有するセンサレスブラシレスモータである。
【0016】
オイルポンプ2は、ここではトロコイド曲線型ポンプを用いていて、トロコイド歯形を有する内歯を備えたポンプ用アウタロータ(以下、アウタロータという)10の内周側に、外歯を備えたポンプ用インナロータ(以下、インナロータという)11を噛み合わせ、ポンプハウジング15内にこれらのアウタロータ10およびインナロータ11を偏心して回転自在に配置したポンプ部12を構成したものである。
【0017】
インナロータ11は、回転駆動軸7におけるロータ6を形成した部分より一方に寄った部分(図1左側)に外嵌固着されて、この回転駆動軸7とともに回転するようになっている。アウタロータ10は、このインナロータ11の外歯よりも1歯多い内歯を備え、回転駆動軸7に対して偏心した位置を中心にポンプハウジング15内で回転自在となるように配置されている。また、インナロータ11は、外歯がこのアウタロータ10の内歯に全周の一部で噛み合うとともに、各外歯がこのアウタロータ10の内面に全周の各所でそれぞれほぼ内接しながら回転するようになっている。
【0018】
したがって、ブラシレスモータ3により回転駆動軸7が回転駆動されると、このオイルポンプ2のアウタロータ10およびインナロータ11の間隙の容積がこの回転駆動軸7の1回転の間に拡大と縮小を繰り返すので、これらの間隙に通じるポンププレート14に設けられた図示しないインポートからアウトポートに向けてオイルを送り出すポンプ動作が行われることになる。
【0019】
ブラシレスモータ3は、回転するモータ用ロータ(以下、ロータという)6と、このロータ6の外周面の外側に固定されたモータ用ステータ(ステータアッシー、以下、ステータという)5とで構成される。ロータ6は、回転駆動軸7の外周面に、例えば、複数個の永久磁石8を周方向に沿って並べて配置して形成したものである。回転駆動軸7は、ブラシレスモータ3とオイルポンプ2とで共用する回転軸であり、両端部をポンプハウジング15とロータ保持部材23の内部に配置された軸受(例えば、転がり軸受)32,33によって回転自在に軸支されている。
【0020】
ステータ5は、ロータ6の外周面の外側にわずかなエアギャップを介して分割されたステータコア9の内向きの図示しないティースを複数配置している。このステータコア9の各ティースには、コイル17をステータコア9から絶縁するための樹脂製(例えば、PPS)のインシュレータ21が軸線方向両端から装着されそれぞれ3相のコイル17が巻回されている。また、ステータ5は、複数のステータサブアッシー16から構成され、各ステータサブアッシー16は、周囲を円筒状薄肉の金属製(例えば、鉄)のステータリング(以下、カラーという)22によって、締め付け固定されている。
【0021】
コイル17の一端部は、インシュレータ21にモールドされたバスバー18と接続されている。コイル17のバスバー18と係合されたコイル接続部19a(図2参照)はさらにヒュージング加工により抵抗溶接されている。また、ブラシレスモータ3の駆動出力端子となる3相の第2バスバー20は、インシュレータ21の右端部から軸線方向に平行に延びている。この第2バスバー20は、モータハウジング15と嵌合する基端部20aが円筒形状に、基板28を挿通する先端部20bがピン形状にそれぞれ形成されている。
さらに、第2バスバー20は、第2バスバー20と同心に形成された円筒状の凹部25との間に環状のシール溝26を形成する大径の基端部20aと、基端部20aと同軸に設けられ基端部20aより小径の先端部20bから形成されている。
【0022】
上記ステータ5、ロータ保持部材23、およびバスバー18は、モータハウジング15と一体にモールドされ、モータハウジング15の底部端面に形成された複数(例えば、3個)の環状のシール溝26にゴム製の円環状のシール部材(例えば、Oリング)27が嵌め込まれ、バスバー18の円筒状の基端部20aに当接しモータハウジング15とバスバー18との間をシールしている。さらに、シール部材27の抜けを防止する樹脂製の抜け止め部材36が凹部25の開口端を閉鎖してモータハウジング15に溶着されている。
【0023】
また、ステータコア9に装着されたインシュレータ21には、図示しない金属製(例えば、鉄、銅等)のナットがインサート成形により埋設されている。そして、ポンププレート14からポンプハウジング13を通して挿入された図示しないボルトをインシュレータ21に埋設されたナットにねじ止めすることにより、ブラシレスモータ3のステータ5が固定されている。
【0024】
ポンププレート14およびポンプハウジング13は、非磁性材料(例えば、アルミダイカスト)で構成される。ブラシレスモータ3およびコントローラ4を収容するモータハウジング15およびカバー31は、樹脂材料(例えば、熱可塑性樹脂)により形成される。電動オイルポンプ装置1のハウジング本体は、上記ポンププレート14,ポンプハウジング13、カラー22、モータハウジング15、およびカバー31により構成されている。ここで、モータハウジング15およびカバー31は、防水カバーを形成している。
【0025】
また、本実施形態の電動オイルポンプ装置1には、ブラシレスモータ3を制御するためのコントローラ4の制御基板(以下、基板という)28がモータハウジング15の反モータ側に設けた制御室24に収容されモータハウジング15の端面にねじ止めで取り付けられている。基板28には、直流電源を交流に変換してブラシレスモータ3の各コイル17に駆動電流を供給するインバータ回路、およびホール素子等のセンサが検出したアウタロータ10の回転位置の情報に基づいて、このインバータ回路を制御する制御回路からなる制御回路部29が搭載されている。コントローラ4の制御回路部29を構成する上記インバータ回路および制御回路のマイコンやコイル、コンデンサ等の電子部品が基板28の両面に実装されている。
【0026】
各コイル17と接続されインシュレータ21に絶縁支持されたブラシレスモータ3の相出力端子であるバスバー18は、基板28に挿通され、基板28上の制御回路部29に接続されている。また、モータハウジング15の側面には図示しないコネクタシェルがモータハウジング15と一体に設けられ、その内部のコネクタピンが基板28上の制御回路部29と接続されている。
【0027】
そして、上記構成により、制御回路部29によって制御された駆動電流がブラシレスモータ3の各コイル17に供給される。これにより、コイル17に回転磁界が発生し、永久磁石8にトルクが生じてロータ6が回転駆動される。このようにして、インナロータ11が回転駆動されると、アウタロータ10がこれに従動して回転し、これらのアウタロータ10の内歯と,インナロータ11の外歯の間隙が拡縮を繰り返すので、インポートおよびアウトポートを通じてオイルを吸入・吐出するポンプ動作が行われる。
【0028】
図2に示すようにコイル17の端部は、インシュレータ19にモールドされた第1バスバー19のコイル接続部19aと接続されている。ブラシレスモータ3の相出力端子となる第2バスバー20が第1バスバー19の他端部である第2バスバー接続部19bに電気的に接続されてバスバー18を形成している。バスバー18は、長尺の金属板材(例えば、銅、銅合金)が平板を折り曲げる等の加工を施すことで、所定の形状に成形されたものである。この第1バスバー19には、一端が開いたスリット状部を有する端子部19aと端部に円環状の第2バスバー接続部19bとが形成されており、この第1バスバー19の円環状の第2バスバー接続部19bに第2バスバー20の円筒状の基端部20aが嵌め込まれている。
【0029】
次に、本発明の電動オイルポンプ装置の製造方法について説明する。
図3は、ステータに嵌合する治具の斜視図、図4は、治具をステータに嵌合した状態を示す断面図、図5は、ステータアッシーを下型に設置し上型を型合わせして金型を形成し、モータハウジングを成形する工程を説明する断面図である。
まず、複数のステータサブアシー16をカラー22に圧入する。ステータサブアシー16の数は、本実施例では6個としている。続いて、図2を参照してステータ5の3個の円環状の第1バスバー19の第2バスバー接続部19bに第2バスバー20の円筒状の基端部20aを圧入する(圧入工程)。次に、図3および図4に示すように、隣接するステータサブアッシー16の内周に形成されるオープンスロットに第2バスバー20と嵌合する複数の孔41が形成された金属製(例えば、鉄)の治具39の突起40を合わせて治具39をステータ5の内周面に嵌め合わせる。そして、治具39を回転方向に位相合わせし、軸線方向に移動させて第2バスバー20の軸芯が軸線方向と平行になるように矯正する(矯正工程)。
【0030】
次に、図5に示すように、治具39により芯合わせされたステータ5およびロータ保持部材23を固定側である下型35に設置し、可動側となる上型34を型合わせして金型を形成する。続いて、金型に樹脂を注入してモータハウジング15をモールド成形する(成形工程)。上型34には、モータハウジング15の底部端面に第2バスバーの基端部20aを囲む環状のシール溝26を形成するための凸状部37と、第2バスバー20を収容するための嵌合部38とが設けられており、制御室24内に円筒状の凹部25が形成され、最終的にシール溝26が形成される。
【0031】
図1を参照して、モータハウジング15の円筒状の凹部25に形成され、第2バスバー20の円筒状の基端部20aを囲む環状のシール溝26に円環状のシール部材27を嵌め込む。そして、円筒状の凹部25の開口端を閉鎖する樹脂製の抜け止め部材36を開口端に溶着させる(第1固着工程)。第2バスバー20の先端部20bをコントローラ4の基板28の貫通孔30に挿入した状態で基板28をモータハウジング15の外側端面に一体にねじ止めし、はんだ付けして電気的に接続する(固定工程)。以上の工程を経て、図1に例示するモータハウジング15が形成される。続いて、ともに樹脂材料により形成されたモータハウジング15とカバー31とを接合する(第2固着工程)。ここでは、スピン溶着が用いられる。モータハウジング15の開口部を覆うカバー31の裏面側には、円環状の溶着用リブが形成されており、カバー31を回転させながら溶着用リブを加熱溶融させ、固定した相手部品のモータハウジング15の凹状部に押し付けることで溶着される。さらに、ロータ6をモータハウジング15の中心部に挿入し、ポンプハウジング13およびポンププレート14を取り付けステータ5に固定して電動オイルポンプ装置1が完成する。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施形態である電動オイルポンプ装置の作用および効果について説明する。
【0033】
上記構成によれば、インシュレータ21に一体に設けられた第1バスバーのコイル接続部19aがコイル17と接続され、第1バスバーの第2バスバー接続部19bに圧入された第2バスバーの先端部20bが基板28と接続されたバスバー18がモータハウジング15にモールドされている。第2バスバーの先端部20bが基板28の貫通孔30を貫通可能な状態で、モータハウジング15の制御室24内で第2バスバー20と同心に形成される円筒状の凹部25と第2バスバーの円筒状の基端部20aとで形成される環状のシール溝26に円環状のシール部材27を嵌入することにより、制御室24がシールされている。
【0034】
ステータ5の内周面に第2バスバー20と嵌合する治具39を嵌め合わせ回転方向に位相を合わせ、軸線方向に平行に移動させて、第2バスバー20を矯正しモータハウジング15のシール溝26と第2バスバー20との軸線を一致させる。そして、ステータ5およびモータハウジング15をモールド成形し、シール溝26にシール部材27を嵌め込みモータハウジング15と第2バスバー20との間をシールする。ここで、シール溝26の内面と第2バスバーの円筒状の基端部20aの外周とは、円環状のシール部材27により油に対してシールされる。さらに、コントローラ4の基板28はモータハウジング15の外側端面に固定され、基板28の貫通孔30を挿通させた第2バスバーの先端部20bを直接はんだ付けして接続される。
【0035】
これにより、第2バスバー20の軸線と円環状のシール部材27を嵌め込む環状のシール溝26の軸線とを合わせてモータハウジング15をモールド成形することができるので、第2バスバー20に対してシール部材27を押圧する面圧が均一になり油の漏れを防止できる。さらに、抜け止め部材36を円筒状の凹部25の開口端に溶着することによりシール部材27の抜けを防止できる。このため、油に対するシール性を向上させることができ、モータハウジング15内の油のバスバー18を介してコントローラ4への漏れの発生が良好に抑制される。その結果、膨潤による基板28の変形や電子部品の破損を防止することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、バスバーとモータハウジングの円筒状の凹部とで形成される環状のシール溝に円環状のシール部材を挿入することにより、シール部材を均一の面圧で押圧してバスバーとモータハウジングとの間を良好にシールすることができる電動オイルポンプ装置およびその製造方法を提供できる。
【0037】
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することも可能である。
【0038】
上記実施形態では、コントローラをオイルポンプの軸線方向に配置しブラシレスモータに一体化する場合を示したが、これに限定されるものでなく、コントローラを取り付けスペースに応じてブラシレスモータの径方向に隣接して設置してもよい。
また、上記実施形態では、オイルポンプとして内接ギヤポンプを用いる場合を示したが、これに限定されるものでなく、ベーン駆動や外接ギアなどを用いた回転型ポンプであってもよい。
また、上記実施形態では、ブラシレスモータを電動オイルポンプ装置に適用する場合を示したが、これに限定されるものでなく、同様のブラシレスモータを用いた他の装置に適用してもよい。さらに、ブラシ付モータも適用が可能である。
【0039】
上記実施形態では、モータハウジングとカバーとの樹脂材料同士の接合方法として、スピン溶着による場合を示したが、これに限定されるものでなく、熱板溶着、超音波溶着、振動溶着、赤外線溶着など、または、接着剤による接着であってもよい。また、モータハウジングと樹脂製の抜け止め部材との接合方法も溶着に限らず、接着剤による接着であってもよい。
さらに、上記実施形態では、基板をねじ止めによりモータハウジングに固定する場合を示したが、これに限定されるものでなく、例えば、スナップ方式のスペーサを用いて固定してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:電動オイルポンプ装置、2:オイルポンプ、3:ブラシレスモータ(電動モータ)、4:コントローラ、5:モータ用ステータ(ステータアッシー)、6:モータ用ロータ、7:回転駆動軸(回転軸)、8:永久磁石、9:ステータコア、10:ポンプ用アウタロータ、11:ポンプ用インナロータ、12:ポンプ部、13:ポンプハウジング、14:ポンププレート、15:モータハウジング、16:ステータサブアッシー、17:モータコイル、18:バスバー、19,19a,19b:第1バスバー(端子部),コイル接続部,第2バスバー接続部、20,20a,20b:第2バスバー(ピン部),基端部,先端部、21:インシュレータ、22:カラー(ステータリング)、23:ロータ保持部材、24:制御室、25:凹部、26:シール溝、27:シール部材、28:基板、29:制御回路部,30:貫通孔、31:カバー、32,33:軸受、34,35:上型,下型、36:抜け止め部材、37:上型凸状部、38:上型嵌合部、39:治具、40:突起、41:嵌合孔
図1
図2
図3
図4
図5