(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953775
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ビトリファイドボンド砥石の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
B24D3/00 330D
B24D3/00 320B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-18046(P2012-18046)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154440(P2013-154440A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】小野 直人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 伸司
(72)【発明者】
【氏名】春日 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−515234(JP,A)
【文献】
特表2005−509724(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/072912(WO,A1)
【文献】
特開平10−202533(JP,A)
【文献】
特開平07−108461(JP,A)
【文献】
特開平07−096464(JP,A)
【文献】
特開平07−188645(JP,A)
【文献】
特開平06−279155(JP,A)
【文献】
特開平04−331076(JP,A)
【文献】
特開昭62−297070(JP,A)
【文献】
特開平04−269172(JP,A)
【文献】
特開平03−245973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
cBN又はダイヤモンドの砥粒に被覆層を形成した後、所定形状に加圧成形し、焼結するビトリファイドボンド砥石の製造方法において、
前記被覆層を、前記砥粒の表面にガラスとcBN微粒から成る第1被覆層を成形後に、前記第1被覆層の外側にガラスと添加物を混合した第2被覆層を形成することで形成するビトリファイドボンド砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス質結合材を用いたビトリファイドボンド砥石の製造方法およびビトリファイドボンド砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
cBN又はダイヤモンドの砥粒を用いたビトリファイドボンド砥石において、砥粒の分散性の向上を図るために、砥粒の表面にガラス質のみ、又はガラス質と金属酸化物等の硬質粒子を混合した被覆層を形成した被覆砥粒を加圧成形後に焼結して砥石を製造する従来技術(例えば、特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−132771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、砥粒の分布は均一化されるが、ガラスのみ又はガラスに金属酸化物等の硬質粒子を混合した同一組成のボンド層が形成される。ガラスに硬質粒子を混合した場合は、焼結時に硬質粒子がガラスの流動性を妨げるため砥粒とボンドの密着性が悪く砥粒の保持力が低くなる。一方、ガラスのみのボンド層の場合は、砥粒とボンドの密着性は良いが、ボンドが研削時に磨耗しやすいため砥粒の周囲のボンドが消失し短時間に保持力が低下する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、砥粒の周囲のボンド層が、砥粒との密着性と耐摩耗性の良好な特性を備えるビトリファイドボンド砥石を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、cBN又はダイヤモンドの砥粒に被覆層を形成した後、所定形状に加圧成形し、焼結するビトリファイドボンド砥石の製造方法において、
前記被覆層を、前記砥粒の表面にガラスとcBN
微粒から成る第1被覆層を成形後に、前記第1被覆層の外
側にガラスと添加物を混合した第2被覆層を形成
することで形成することである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、焼結時に第1被覆層はcBN微粒によりガラスの流動性が妨げられず、砥粒の周囲にはガラスにcBN微粒が分散し砥粒と密着
した層が形成され、砥粒から離れた部位である第2被覆層は、焼結時に添加粒子によってガラスの流動性が低下し、ガラスに添加物が分散
した層が形成される。cBN微粒は耐摩耗性が高く、砥粒の周囲
の層は密着性と耐磨耗性が高く、砥粒保持力が長時間持続する。砥粒から離れた部
位では、所定の添加物を添加することで所望のドレッシング特性を備えることができる。研削能率が大きくても砥粒の脱落が少なく、ドレッシング性の良いビトリファイドボンド砥石を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の被覆砥粒の断面の模式図である。
【
図2】本実施形態の被覆砥粒の加圧成形時の組織の模式図である。
【
図3】本実施形態のビトリファイドボンド砥石の組織の模式図である。
【
図4】本実施形態のビトリファイドボンド砥石の研削作用面の模式図である。
【
図5】従来のビトリファイドボンド砥石の研削作用面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、ビトリファイドボンド砥石の焼結時にガラスは軟化して流動するが、通常の添加粒子が混在するとガラスの流動性が低下し砥粒とガラスの密着性が低下する。この課題を解決すべく研究の結果、cBN
微粒を添加した場合はガラスの流動性の低下が少なく、砥粒とガラスの密着性の低下が少ないことを見出した。本発明はこの知見を応用したものである。
【0011】
以下、本発明の実施の形態をcBNビトリファイドボンド砥石の例で説明する。
図1に模式的に示すように、被覆砥粒1はcBN砥粒11の外側にガラスとcBN微粒混合したcBN被覆層12(第1被覆層)を備え、その外側にガラスと硬質粒子(添加物)からなる混合被覆層13(第2被覆層)を備えている。
【0012】
cBN被覆層12の被覆は粒径数μm以下のガラス粉末とcBN粉末をポリビニルアルコールなどのバインダーでcBN砥粒に接着後乾燥させて形成する。
混合被覆層13は、cBN被覆層12の上に、粒径数μm以下のガラス粉末とムライト、アルミナ、酸化チタン、珪酸ジルコニウム等の粒径数μm以下の硬質粒子の混合粉を、上記バインダーにより接着後乾燥させて形成する。
【0013】
次に、上記により製造した被覆砥粒1に必要に応じて成形用バインダーを添加して混合し、所定の形状に加圧成形し、バインダー揮発温度以上の所定温度で脱脂処理する。このときの組織
を模式的に図2に示す。図2に示すように、
加圧成形時は被覆砥粒1の間に空間2を備えている。
【0014】
その後、焼結すると、
図3に示すようなビトリファイドボンド砥石6ができる。cBN砥粒11の周囲は、焼成時に軟化したガラスが十分に流動し、cBN微粒を添加してもガラスの流動性の低下が少なく、cBN砥粒11の全周に密着したガラスとcBN微粒の混合層であるcBN添加層3(第1層)が形成される。また、cBN砥粒11から離れた部分では、焼成時に軟化したガラスが流動し、ガラスに添加粒子が混在しているのでガラスの流動性が低下し、ガラスに添加粒子が混在
し内部に空孔5を備える混合層4(第2層)となる。
【0015】
本発明のビトリファイドボンド砥石6のドレッシングと、これを用いた研削について説明する。
研削の前に、ビトリファイドボンド砥石6の研削作用面をダイアモンドホイール等を用いてドレッシングすることにより、
図4に示すような、cBN砥粒11の先端が所定の形状に合わせて揃い、ボンド部に適正な深さのチップポケット7を備えた研削作用面とする必要がある。この時、cBN砥粒11の周囲は耐摩耗性の高いcBN添加層3があるため、ドレッシングにより生じるビトリファイドボンド砥石6の破砕片に触れても磨耗が少ない。一方、cBN砥粒11から離れた混合層4では、砥粒の破砕片に触れたとき微細な破砕を伴う混合層4の除去が行われるが、硬質粒子の種類や添加量を変えることで破砕の大きさを変えることができる。研削時に必要なチップポケットの大きさに応じた硬質粒子を添加することで、所望の研削作用面を形成することができる。
比較のため、従来のビトリファイドボンド砥石100の研削作用面の模式図を
図5に示す。砥粒101の周囲のボンド層102の耐摩耗性が大きくないため磨耗しやすく、砥粒の把持深さが小さくなり脱落しやすい。
【0016】
研削中には、cBN砥粒11により研削された切屑がcBN添加層3に接触しながら成長し、チップポケットに貯留した後に工作物と砥石の接触が終了した後に排出される。
この場合も、cBN添加層3の磨耗が少ないため、砥粒の保持力の低下が少なく砥粒が脱落しにくい。また、適切なチップポケットの大きさを備えているので、切屑と研削表面の圧接が起きないので焼けや発熱を防止できる。
【0017】
このように、ドレッシング直後から研削品位が良く、研削時の消耗の少ないビトリファイドボンド砥石6を実現できる。
【0018】
上記の実施例では、砥粒にcBN砥粒を用いたがダイヤモンドを砥粒として用いてもよい、また添加物として中空粒子等の破砕性の大きな粒子を添加してドレッシング性を良くしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1:被覆砥粒 2:空間 3:cBN添加層 4:混合層 5:空孔 6:ビトリファイドボンド砥石 7:チップポケット 11:cBN砥粒 12:cBN被覆層 13:混合被覆層