(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整部は、前記第1段階の調整においては、前記第1および第2のLC回路のリアクタンス成分が互いに相殺されるように前記第2のLC回路に含まれる第1の可変キャパシタを調整し、前記第2段階の調整においては、前記第2および第1のLC回路それぞれに含まれる第2および第3のキャパシタを調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス受電装置。
給電コイルと受電コイルの磁場共振現象に基づき、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス給電するためのシステムであって、ワイヤレス給電装置およびワイヤレス受電装置を備え、
前記ワイヤレス給電装置は、
前記給電コイルと、
前記給電コイルに交流電力を供給することにより、前記給電コイルから前記受電コイルに前記交流電力を給電させる送電制御回路と、を含み、
前記ワイヤレス受電装置は、
前記受電コイルと、
前記受電コイルと磁気結合することにより前記受電コイルから前記交流電力を受電するロードコイルと、前記ロードコイルから前記交流電力を供給される負荷とを含むロード回路と、
前記負荷の受電電力を制御する電力制御回路と、を含み、
前記電力制御回路は、更に、
前記受電電力を計測する計測部と、
前記ロード回路のインピーダンスを変化させることにより前記受電電力を極大化させる調整部と、を含み、
前記ロード回路は、第1および第2のLC回路を含み、
前記調整部は、前記第1および第2のLC回路のリアクタンス成分を相殺させる第1段階の調整と、前記第1および第2のLC回路のリアクタンス成分を相殺させた状態を保ちつつ前記受電電力を極大化させる第2段階の調整により前記インピーダンスを調整することを特徴とするワイヤレス電力伝送システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0021】
図1は、第1、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の原理図である。第1、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置116は給電LC共振回路300を含む。ワイヤレス受電装置118は、受電コイル回路130とロード回路140を含む。そして、受電コイル回路130により受電LC共振回路302が形成される。
【0022】
給電LC共振回路300は、キャパシタC2と給電コイルL2を含む。受電LC共振回路302は、キャパシタC3と受電コイルL3を含む。給電コイルL2と受電コイルL3の磁場結合を無視できるほど両者が充分に離れた状態において給電LC共振回路300および受電LC共振回路302それぞれの共振周波数が同一となるように、キャパシタC2、給電コイルL2、キャパシタC3、受電コイルL3が設定される。この共通の共振周波数をfr0とする。
【0023】
給電コイルL2と受電コイルL3を充分に磁場結合できる程度に近づけた状態では、給電LC共振回路300、受電LC共振回路302およびその間に発生する相互インダクタンスにより新たな共振回路が形成される。この新共振回路は、相互インダクタンスの影響により2つの共振周波数fr1、fr2を有する(fr1<fr0<fr2)。ワイヤレス給電装置116が、給電源VGから共振周波数fr1にて交流電力を給電LC共振回路300に供給すると、新共振回路の一部である給電LC共振回路300は共振点1(共振周波数fr1)で共振する。給電LC共振回路300が共振すると、給電コイルL2は共振周波数fr1の交流磁場を発生させる。同じく新共振回路の一部である受電LC共振回路302もこの交流磁場により共振する。給電LC共振回路300と受電LC共振回路302が同一の共振周波数fr1にて共振するとき、給電コイルL2から受電コイルL3に最大の電力伝送効率にてワイヤレス給電がなされる。ワイヤレス受電装置118の負荷LDから受電電力が出力電力として取り出される。なお、新共振回路は、共振点1(共振周波数fr1)だけでなく共振点2(共振周波数fr2)でも共振可能である。
【0024】
この原理図に示すワイヤレス給電装置116はエキサイトコイルを含んでいないが、エキサイトコイルを含む場合でも基本的な原理は同じである。
【0025】
図2は、第1、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。送電制御回路200は、交流電源として機能し、駆動周波数foの交流電力を給電コイルL2に供給する。本実施形態における送電制御回路200は、単なる給電源VG(
図1参照)として機能する。駆動周波数foは固定周波数であってもよい。たとえば、駆動周波数foは共振周波数fr1と同一となるように設定されてもよい。もちろん、送電制御回路200は駆動周波数foを変更できてもよい。
【0026】
ワイヤレス受電装置118は、受電コイル回路130とロード回路140を含む。受電コイル回路130においては、受電コイルL3とキャパシタC3により受電LC共振回路302が形成される(
図1参照)。給電コイルL2が共振周波数fr1にて交流磁場を発生させると、給電コイルL2と受電コイルL3が強く磁場結合し、受電コイル回路130に交流電流が流れる。給電コイルL2が発生させる交流磁場によってワイヤレス給電装置116と受電コイル回路130はどちらも共振する。
【0027】
ロード回路140は、ロードコイルL4と負荷LDが直列接続された回路である。受電コイルL3とロードコイルL4は互いに向かい合っている。受電コイルL3とロードコイルL4は重なっている、すなわち、距離ゼロである。このため、受電コイルL3とロードコイルL4は電磁的に強く結合(電磁誘導による結合)している。受電コイルL3に交流電流が流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140にも交流電流が流れる。
【0028】
ワイヤレス給電装置116の給電コイルL2から送電された交流電力は、ワイヤレス受電装置118の受電コイルL3により受電され、負荷LDから取り出される。
【0029】
負荷LDのインピーダンスZLは調整可能である。インピーダンスZLは、電力制御回路400により調整される。ZL=RL+jXLとする。受電コイル回路130からみたロード回路140のインピーダンスZは、Z=R+jXとして表現される。RLやRは抵抗成分(実数部)であり、XLやXはリアクタンス成分(虚数部)である。なお、jは虚数単位である。後述の第1実施形態においては抵抗成分Rを、第2実施形態においてはリアクタンス成分Xを調整することにより、負荷LDの受電電力を最大化する方法について説明する。
【0030】
図3は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の等価回路図である。説明をシンプルにするため、給電コイルL2と受電コイルL3のインダクタンスは共にL、キャパシタC2とキャパシタC3のキャパシタンスは共にCであるとする。また、給電コイルL2と受電コイルL3の相互インダクタンスをLmとする。結合係数k(=Lm/L)は、給電コイルL2と受電コイルL3の磁場結合の強度を示す。コイル間距離が大きいほど結合係数kは小さくなる。Riは、送電制御回路200の出力インピーダンスの抵抗成分である。
【0031】
図3では、Z=ZL=RLとして単純化している。実際にはリアクタンス成分XやXLが含まれるが、
図3から
図5では抵抗成分R(=RL)のみを対象として説明する。
【0032】
図4は、コイル間距離と電力伝送効率の関係を示すグラフである。コイル間距離に応じて共振周波数fr1は変化する。送電制御回路200は、駆動周波数foを共振周波数fr1に追随させれば、コイル間距離が変化しても電力伝送効率を維持できる。
図4では、このような周波数追随型における電力伝送効率の変化を示している。
図4に示すグラフによれば、コイル間距離が200mm以下のときには電力伝送効率を最大に維持できているが、それ以上離れると駆動周波数を追随させるだけでは電力伝送効率を維持できなくなっている。
【0033】
図5は、抵抗RLと抵抗Riを同時に調整するときの電力伝送効率の変化を示すグラフである。同図は、インダクタンスLが8.5μH、キャパシタンスCが10pF、駆動周波数foが17.272MHzの場合を示す。駆動周波数fo=1/(2・π・(L・C)1/2)である。また、抵抗RLと抵抗Riは抵抗値が同じであり、それらを同時に調整した場合の電力伝送効率の変化を示している。抵抗RLと電力伝送効率には相関があるため、コイル間距離に応じて抵抗RLを調整すれば電力伝送効率を維持できる。
図5によれば、結合係数kが小さいとき、すなわち、コイル間距離が長いときほど、電力伝送効率を維持するためには抵抗RLを小さくする必要がある。たとえば、結合係数k=0.2のときにはRL=Ri=184.4(Ω)で電力伝送効率は最大となり、結合係数k=0.05のときにはRL=Ri=46.1(Ω)で電力伝送効率が最大となっている。
図3の等価回路から、電力伝送効率が最大となるインピーダンスZ(=Ri=RL)は、Z2=Lm2/(L・C)=k2・L/Cで表される。したがって、結合係数kに応じてインピーダンスZを調整することより電力伝送効率を制御できる。
【0034】
図6は、抵抗Riを固定した上で抵抗RLを調整するときの電力伝送効率の変化を示すグラフである。同図は、インダクタンスLが8.5μH、キャパシタンスCが10pF、抵抗Riが20Ω、駆動周波数foが17.272MHzの場合を示す。この場合にも、電力伝送効率が最大となるインピーダンスZを計算することができ、抵抗RLの調整により電力伝送効率を制御できる。
【0035】
コイル間距離が変化すると共振周波数fr1が変化する。電力伝送効率を維持するための一つの方法は、送電制御回路200が駆動周波数foを共振周波数fr1に追随させ、受電LC共振回路302等の共振状態を維持する方法である。もう一つは、受電側のインピーダンスZ(たとえば、抵抗RL)を調整することにより、電力伝送効率(受電電力)を最大化する方法である。本実施形態においては、後者について説明する。以下においては、駆動周波数foは固定値であるとして説明するが、可変値であっても本発明の適用は可能である。
【0036】
[第1実施形態]
図7は、第1実施形態における電力制御回路400とロード回路140の接続部分の回路図である。第1実施形態においては、インピーダンスZの実数部Rが調整対象となる。Z=R+jX、ZL=RLであり、R=RLであるとして説明する。電力制御回路400は、抵抗RLの電力(受電電力)を測定し、抵抗RLの抵抗値を変化させながら受電電力が極大値となるときの抵抗値を探索する。
【0037】
抵抗RLに印加される電圧Voはミキサ402に入力される。一方、抵抗RLに流れる電流Ioの大きさは、トランスT1により電圧値として計測され、ミキサ402に入力される。より具体的には、トランスT1の並列抵抗R5にはIo×R5の電圧値が印加され、この電圧値がミキサ402に入力される。この結果、ミキサ402は、2つの入力(VoおよびIo×R5)の乗算値であるVo×Io×R5を出力する。すなわち、ミキサ402からは、受電電力に比例する電力信号P1が電力制御回路400に入力される。電力制御回路400は、電力信号P1が極大値となるように抵抗RLを調整する。
【0038】
図8は、受電電力を極大化する方法を説明するための模式図である。ここでは、コイル間距離の変化等のなんらかの理由により、受電電力と抵抗RLの関係が変化前特性102から変化後特性104に変化したとして説明する。変化前特性102においては、RL=RL1のとき受電電力(電力伝送効率)は最大(極大値)となっている。
【0039】
RL=RL1に設定されているとき、変化前特性102から変化後特性104に変化したとする。変化後特性104においては、RL=RL1における受電電力が低下する(S1)。電力制御回路400は、変化前特性102の極大値から実際の受電電力が所定値以上低下すると、抵抗RLを増加または減少させることにより、新たな極大値を探索する。
図8の場合には、抵抗RLをRL1からRL2まで増加させたとき、受電電力は再び極大値となる(S2)。なお、変化前特性102における受電電力(電力伝送効率)の極大値が変化後特性104における受電電力(電力伝送効率)の極大値よりも小さい場合、変化後においてむしろRL=RL1における受電電力が上昇することもありうる。この場合にも、電力制御回路400は、抵抗RLを増加または減少させることにより新たな極大値を探索する。
【0040】
特許文献5のように理論的に目標値を設定するのではなく、受電電力を計測しつつ最適な抵抗値を実際に試行錯誤しながら探索する方式となっている。
【0041】
図9は、第1実施形態における電力制御回路400の回路図である。電力制御回路400の機能は、電力信号P1を監視する計測部404と抵抗RLを調整する調整部406に大別される。ミキサ402から出力される電力信号P1(=Vo×Io×R5)は、ローパスフィルタLPFによって信号成分が除去され、傾き検出回路とコンパレータAに電圧信号V1として入力される。傾き検出回路は、電圧信号V1(電力信号P1)の変化を検出する回路であり、たとえば、ハイパスフィルタ(HPF)により構成される。より具体的には、電圧信号V3は、コイル間距離の変化や抵抗RLの調整(後述)を契機とする電圧信号V1(電力信号P1)の変化の方向と大きさを表す。電圧信号V3は、電圧信号V1の増減方向とその大きさそのものを表してもよいし、所定の基準電位との比較により電圧信号V1の増減とその大きさを表してもよい。以下においては、電圧信号V3は、電圧信号V1の増減方向と増減の大きさそのものを示すものとして説明する。なお、所定の基準電位との比較により電圧信号V1の増減とその大きさを表す場合には、後述するコンパレータBおよびコンパレータCの反転入力端子に、基準電位を設定すればよい。電力制御回路400に含まれる各種回路のうち、特に重要な役割を担うのは、コンパレータA、コンパレータB、コンパレータCであるため、まずはこれらのコンパレータについて説明する。
【0042】
コンパレータA:
コンパレータAは、調整機能を起動する回路であり、サンプルホールド回路108が保持する電圧信号V1と、新たに計測された電圧信号V1を比較する。サンプルホールド回路108は、以前の極大値に対応する電圧信号V1を保持する。
図8のように変化前特性102から変化後特性104に変化したときには、サンプルホールド回路108は変化前特性102の極大値に対応する電圧信号V1を保持している。
【0043】
計測後の電圧信号V1が保持中の電圧信号V1(以下、「V1SH」よぶ)よりも所定値以上低下、または、TH1以上上昇したとき、コンパレータAは信号S1をハイレベルに活性化する。いいかえれば、変化前特性102から変化後特性104への特性変化により、受電電力が有意に低下または上昇すると、コンパレータAは信号S1をアサートする。より具体的には、信号S1は、V1≧V1SH+TH1またはV1≦V1SH−TH1のときハイレベルとなりそれ以外のときにはローレベルとなる信号である。TH1は、コンパレータAが過度に反応しすぎないように設定される閾値である。信号S1がハイレベルに活性化されると、スイッチ回路D、負荷抵抗ホールド信号生成回路F、スイッチ回路Hの出力信号も順次活性化されることにより調整部406が活性化されるが、詳細については後述する。
【0044】
コンパレータB:
コンパレータBは、受電電力が増加傾向にあるか減少傾向にあるかをチェックする回路である。前述のように、傾き検出回路は電圧信号V1の増減方向とその大きさを示す電圧信号V3を出力する。電圧信号V3は、コンパレータBとコンパレータCに入力される。コンパレータBは、電圧信号V3が増加しているとき、すなわち、受電電力が増加しているときには信号S2をハイレベルに活性化する。受電電力が減少しているときには信号S2をローレベルに不活性化する。抵抗RLの増減によって受電電力が増加する傾向(調整によって改善される傾向)にあるときには信号S2はハイレベルとなり、受電電力が減少する傾向(調整によって改善されない傾向)にあるときには信号S2はローレベルとなる。信号S2により、抵抗RLの調整がうまくいっているかどうかを確認できる。
【0045】
コンパレータC:
コンパレータCは、抵抗RLを変化させても受電電力がほとんど変化しなくなったときに信号S9をローレベルに不活性化する回路である。極大値付近においては抵抗RLを変化させても受電電力はほとんど変化しない。すなわち、コンパレータCは、受電電力が極大値に近いかどうかを判定する回路である。まず、受電電力が極大値に近いかどうかを判定するために閾値TH2を設定しておく。V3≧TH2またはV3≦−TH2のとき、出力信号S9はハイレベルとなりそれ以外のとき(−TH2<V3<TH2のとき)にはローレベルとなる。TH2は受電電力が充分に極大値に近いときだけコンパレータCが反応するように設定される閾値である。
【0046】
以上の前提を踏まえて、電力制御回路400の動作について説明する。ここでは、変化前特性102から変化後特性104に変化することにより、抵抗RLの最適値がRL1からRL2に変化する場合を想定して説明する。
【0047】
コンパレータAの入力部分に設置されるサンプルホールド回路108は、変化前特性102の極大値に対応する電圧信号V1、いいかえれば、抵抗値RL1に対応する電圧信号V1を保持している。負荷制御回路106は、制御信号S7から、抵抗値RL1に対応する負荷制御信号を生成・保持する。負荷制御信号は、抵抗RLの抵抗値を指定する信号である。
【0048】
変化前特性102から変化後特性104への特性変化により、電圧信号V1が低下する(
図8参照)。コンパレータAは、新たに計測された電圧信号V1が保持中の電圧信号V1に比べてTH1以上低下したとき、信号S1をハイレベルに活性化する。スイッチ回路Dは信号S3をハイレベルに活性化し、負荷抵抗ホールド信号生成回路Fは信号S4をハイレベルに活性化し、スイッチ回路Hは制御信号S5をハイレベルに活性化する。制御信号S5の活性化により、不活性化されていたスイッチ回路Eが活性化され、調整機能が有効となる。制御信号S5の活性化によりスイッチ回路Dは不活性化され、コンパレータAはいったん無効化する。更に、制御信号S5の活性化により負荷制御回路106が活性化される。負荷制御回路106は、活性化されると、後述の信号S7にしたがって抵抗RLを調整する。
更に具体的には、制御信号S5がローレベルのとき、コンパレータAの出力がスイッチ回路Dの出力信号S3となる。したがって、信号S1がハイレベルに活性化すると信号S3もハイレベルに活性化され、負荷抵抗ホールド信号生成回路Fは信号S4をハイレベルに活性化し、スイッチ回路Hは制御信号S5をハイレベルに活性化する。負荷抵抗ホールド信号生成回路Fは、スイッチ回路Dの出力の立ち上り(ライズエッジ:rise edge)でハイレベルとなり、スイッチ回路Eの立ち下り(フォールエッジ:fall edge)でローレベルとなる。ただし、無効化回路DL2の出力がハイレベルのときは、スイッチ回路Eの出力がローレベルになった時でも、信号S4はローレベルには戻らない。無効化回路DL2は、信号S7の立ち上がり、もしくは立ち下り後の所定期間ハイレベル信号の出力を維持する。これは、信号S7が反転する度に、信号V1の傾きがゼロとなり、信号S9がローレベルになり、その結果、信号S5がローレベルになるのを防ぐためである(詳細なロジックについては後述)。また、スイッチ回路Hの制御端子に入力されるPON(パワーオン信号)は、電源の立ち上り時にハイレベルとなって電源電圧VCCを選択し、コンパレータCの出力の立ち下りでローレベルとなって負荷抵抗ホールド信号生成回路Fの信号S4を選択する。スイッチ回路Iについても同様である。初期段階では、制御信号S5、S7はどちらもハイレベルに設定される。制御信号S5の活性化により、不活性化されていたスイッチ回路Eは活性化され、コンパレータCの出力が選択され、調整機能が有効となる。ここで、スイッチ回路Eは、制御信号S5がローレベルになり、負荷抵抗RLが固定されているときでも、給電側と受電側の距離などにより、信号S9がハイレベルやローレベルになるのを防ぐ目的で設けられている。すなわち、制御信号S5がローレベルの時には、スイッチ回路Eの出力はグランド電位となる。制御信号S5が活性化するとスイッチ回路Dの出力はローレベルとなり、コンパレータAはいったん無効化する。スイッチ回路Dは、制御信号S5が活性化された後は、信号S3をグランド電位に設定する。この結果、負荷抵抗ホールド信号生成回路Fは、信号S9により制御される。更に、制御信号S5の活性化により負荷制御回路106が活性化される。負荷制御回路106は、活性化されると、後述の信号S7を負荷抵抗コントロール信号に変換し、抵抗RLを調整する。
【0049】
制御信号S5が活性化されると、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは信号S6を活性化し、スイッチ回路Iは信号S7をハイレベルに活性化する。信号S7がハイレベルに活性化されると、負荷制御回路106は抵抗RLを増加させる。初期段階では増加でも減少でもよいが、本実施形態においてはまずは抵抗RLの増加からスタートする。
ここで、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは、信号S2がハイレベルの時には信号S6の値を保持し、信号S2がローレベルの時には信号S6の値を反転させる。ただし、無効化回路DL1の出力がハイレベルのときは、信号S2がローレベルの時でも、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは信号S6を反転させないまま保持する。無効化回路DL1は、信号S7の立ち上り、もしくは立ち下り後の所定期間、出力をハイレベルに維持する。信号S2がローレベルとなると信号S6は反転を繰り返すが、無効化回路DL1により反転信号が繰り返し負荷抵抗制御指示信号生成回路Gに入力されるのを防いでいる。具体的には、無効化回路DL1は、信号S7が反転しても、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gをしばらく無効化することにより、信号S7を反転後のレベルでしばらく維持する。図示していないが、信号S7と負荷抵抗制御指示信号生成回路Gの入力までの経路に、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gの無効期間以上の遅延時間を生成するためのバッファが設けられる。なお、制御信号S5がハイレベルになった時のみ信号S6はハイレベルになる。
【0050】
(1)抵抗RLの増加により、受電電力が増加する場合:
抵抗RLが増加すると、電圧信号V1、V3も変化する。電圧信号V3が増加している場合には、抵抗RLの増加により受電電力が順調に増加していることになるため、抵抗RLの調整が奏功している。コンパレータCは電圧信号V3の値がTH2以上になると信号S9を活性化するが、後段の負荷抵抗ホールド信号生成回路Fには影響は生じない。
【0051】
受電電力が増加しているため、コンパレータBの出力信号S2はハイレベルとなる。信号S2がハイレベルのとき、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは出力をそのまま維持する。抵抗RLはそのまま増加し続けることになる。なお、抵抗RLの減少により受電電力が増加する場合には、抵抗RLはそのまま減少し続けることになる。
【0052】
(2)抵抗RLの増加により、受電電力が減少する場合:
抵抗RLを増加させると受電電力が減少した場合には、抵抗RLは増加ではなく減少させるべきである。このときにもコンパレータCは、電圧信号V3の値が−TH2以下になると信号S9を活性化するが、後段の負荷抵抗ホールド信号生成回路F等には影響しない。
【0053】
受電電力が減少しているため、コンパレータBの出力信号S2はローレベルとなる。信号S2がローレベルの時、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは出力を反転させる。この結果、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gが出力する信号S6はハイレベルからローレベルに変化する。スイッチ回路Iの信号S7もハイレベルからローレベルに変化するため、負荷制御回路106は抵抗RLを減少させる。なお、抵抗RLの減少により受電電力が減少する場合には、抵抗RLは増加させられる。
【0054】
上述のように、信号S2がローレベルの期間においては、信号S6は反転を繰り返してしまう。そこで、このような反転の繰り返しを防ぐために無効化回路DL1を導入している。無効化回路DL1は、信号S7が反転したとき、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gをしばらく無効化する。このため、しばらくは、信号S7は反転後のレベルのまま維持される。信号S7が反転し、抵抗RLが増加方向から減少方向に変化すると、受電電力は減少から増加に転じ、信号S2はハイレベルとなる。信号S2がハイレベルになったあとに負荷抵抗制御指示信号生成回路Gを有効にすれば、以降においても信号S7のレベルを維持できる。無効化回路DL2は負荷抵抗ホールド信号生成回路Fに対応して設けられるものであり、無効化回路DL1と役割は同じである。
【0055】
(3)抵抗RLの増減にともなう受電電力の増減が鈍化した場合:
抵抗RLを適切に増加または減少させることにより、受電電力が極大値に近づいてくると電圧信号V3の増加率が鈍化する。受電電力が極大値付近に至ると、コンパレータCは信号S9をローレベルに不活性化する。
図8の例でいえば、RLがRL2付近まで増加したときコンパレータCが不活性化する。このとき、スイッチ回路E、負荷抵抗ホールド信号生成回路Fの出力もローレベルに不活性化し、スイッチ回路Hから出力される信号S5はローレベルとなり、スイッチ回路Eの出力はグランド電位となり、調整部406は不活性化される。スイッチ回路Dは活性化され、計測機能は再活性化される。負荷制御回路106は、制御信号S5により、信号S7から生成される負荷抵抗制御信号をホールドする。このときの信号S7から生成される負荷抵抗制御信号は、抵抗値RL2に対応する。抵抗値RL2に対応する。サンプルホールド回路108は、制御信号S5により電圧信号V1をホールドする。すなわち、抵抗値RL2に対応する電圧信号V1が次回調整時の目標値となる。こうして、抵抗RLの調整は完了する。
【0056】
以下にまとめる。まず、計測部404は活性化、調整部406は不活性化されている。コンパレータAが受電電力の低下を検出すると、調整部406が活性化され、抵抗RLの調整が開始する。抵抗RLを変化させながら、コンパレータBにより受電電力の増減をチェックする。抵抗RLを増加または減少のいずれか一方向に変化させるとき受電電力が低下したならば増減方向を反転させる。受電電力が極大値に近づくと、コンパレータCが反応し、信号S9が不活性化され、調整部406は不活性化される。極大値に対応する電圧信号V1や、信号S7から生成される負荷抵抗制御信号はホールドされる。このような制御方法によれば、受電電力が低下した場合にも、抵抗RLの最適値を自動的に探索・設定できる。
【0057】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の等価回路図である。ここでも説明をシンプルにするため、給電コイルL2と受電コイルL3のインダクタンスは共にL、キャパシタC2とキャパシタC3の静電容量は共にCであるとして説明する。給電コイルL2と受電コイルL3の相互インダクタンスをLmとする。第2実施形態においてはインピーダンスZのレジスタンス成分(実部)とリアクタンス成分(虚部)を調整の対象とする。
【0058】
第2実施形態においては、新たにリアクタンス部110が追加される。リアクタンス部110は、第1リアクタンス部120、第2リアクタンス部122、第3リアクタンス部124を含む。電力制御回路400は、リアクタンス部110のリアクタンスを調整することにより、負荷LDにおける受電電力を最大化する。
【0059】
抵抗成分RLには、ノイズクリアのためにコイルL6とキャパシタC6が追加される。ZL=RL+jXLのリアクタンス成分XLには、コイルL6のインダクタンスやキャパシタC6の静電容量が含まれる。インピーダンスZLは、調整対象にはならない。リアクタンス成分XLには、実際には、負荷LDの各種リアクタンス成分が含まれる。
【0060】
図11は、リアクタンス部110の回路図である。第3リアクタンス部124は、コイルL7、コイルL9、可変キャパシタCv1、Cv2を含む(第1の可変キャパシタと第2の可変キャパシタ)。第1リアクタンス部120は、可変キャパシタCv3を含む(第3の可変キャパシタ)。第2リアクタンス部122は、コイルL8を含む。第1リアクタンス部120、第2リアクタンス部122それぞれのインピーダンスにインピーダンスZLを追加したインピーダンスをZ1=R1+jX1とする。また、第3リアクタンス部124のインピーダンスをZ2=R2+jX2とする。受電コイル回路130からロード回路140をみたときの入力インピーダンスZは、Z=Z1+Z2となる。インピーダンスZのリアクタンス成分とレジスタンス成分は、可変キャパシタCv1、Cv2、Cv3により調整される。
【0061】
図12は、リアクタンス部110および負荷LDの等価回路図である。第3リアクタンス部124はコイルとキャパシタのみを含むため、インピーダンスZ2=R2+jX2においてR2=0である。インピーダンスZ2は、等価的にLC回路のインピーダンスとして表現可能である(第2LC回路128)。
【0062】
負荷LDには抵抗成分(RL)が含まれるため、インピーダンスZ1=R1+jX1には抵抗成分とリアクタンス成分の両方が含まれる。ここで、インピーダンスZ1のリアクタンス成分は、コイルL8、可変キャパシタCv3およびコイルL6による等価的なLC回路(第1LC回路126)のインピーダンス成分として考えることが可能である。抵抗RLの抵抗値やキャパシタC6のキャパシタンスは、インピーダンスZ1のリアクタンス成分にほとんど影響を及ぼさない値であるため、インピーダンスZ1のリアクタンス成分を考える際には、抵抗RLやキャパシタC6を実質的に考慮する必要がない。第1LC回路126と第2LC回路128は直列接続されているため、インピーダンスZのリアクタンス成分Xは、第1LC回路126のリアクタンス成分X1と第2LC回路128のリアクタンス成分X2の合成となる。ここで、第1LC回路126と第2LC回路128は共に回路構成が類似している。すなわち、第2LC回路128では、インダクタL9と可変キャパシタ(Cv1+Cv2)の直列接続回路に対してインダクタL7が並列接続されている。第1LC回路126では、インダクタL6と可変キャパシタCv3の直列接続回路に対してインダクタL8が並列接続されている。したがって、インピーダンスZのリアクタンス成分Xを容易に調整できる。
【0063】
受電電力を大きくするためには、インピーダンスZ=Z1+Z2=R1+j(X1+X2)の虚部(X1+X2)をゼロにすることが望ましい。X1がX2を相殺するとき、すなわち、X1=−X2となるとき、インピーダンスZの虚部はゼロとなる。第2実施形態においては、可変キャパシタCv1、Cv2、Cv3の調整により、受電電力を極大化する。より具体的には、第1段階として可変キャパシタCv1を調整し、X1とX2を相殺させる。これにより受電電力を大きくする。その上で、第2段階としてX1とX2とが相殺する状態を保ちながら(インピーダンスZの虚部をゼロに保ちながら)可変キャパシタCv2、Cv3を調整し、インピーダンスZの実部を調整することにより受電電力を極大化させる。可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量の合計は一定である。以下、可変キャパシタCv1、Cv2、Cv3の静電容量の大きさをCc1、Cc2、Cc3と表記することにする。なお、上記手順で受電電力を極大化するためには、第1LC回路126のインダクタL8と第2LC回路128のインダクタL7とは同じインダクタンスを有し、第1LC回路126のインダクタL6と第2LC回路128のインダクタL9とは同じインダクタンスを有することが好ましい。
【0064】
図13は、可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量を制御する減算器112の図である。可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量Cc2、Cc3は、コントロール電圧VCT2、VCT3により制御される。これらのコントロール電圧VCT2、VCT3の間には、減算器112によりVT−VCT2=VCT3の関係が成立している。VTは所定の固定電圧である。すなわち、VCT2+VCT3は常に一定となるように制御される。
【0065】
図14は、可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量とコントロール電圧の関係を示すグラフである。コントロール電圧VCT2を減少させると、可変キャパシタCv2の静電容量Cc2が増加する。VCT2+VCT3=一定なので、コントロール電圧VCT3は増加し、可変キャパシタCv3の静電容量Cc3は減少する。このように、Cc2+Cc3=一定という関係を維持したままCc2、Cc3は調整される。Cc2+Cc3=一定という関係を維持したままCc2、Cc3を調整するためには、コントロール電圧VCT2、VCT3に対してキャパシタCc2、Cc3の静電容量が線形にて変化することが好ましい。コントロール電圧VCT2が増加するときには、静電容量Cc2は減少し、静電容量Cc3は増加する。
【0066】
図15は、一般的なLC並列回路における静電容量とリアクタンスの関係を示すグラフである。コイルとキャパシタが並列に接続されるLC回路のリアクタンスXは、X=ω・L/(1−ω
2LC)である。ωは2π×周波数、Lはインダクタンス、Cは静電容量を示す。
図15においては、所定の静電容量Cmを中心とした点対称のグラフとなっている。
【0067】
第2LC回路128の静電容量はCc1+Cc2であり、第1LC回路126の静電容量はCc3である。
図12において、第1LC回路126のインダクタL8のインダクタンスと第2LC回路128のL7のインダクタンスとを同じ値にして、さらに、第1LC回路126のインダクタL6のインダクタンスと第2LC回路128のインダクタンスLL9をゼロとした場合は、第1LC回路126と第2LC回路128は、キャパシタの静電容量のみが異なるLC並列回路となる。したがって、Cc3=Cl(=Cm−W)のときX1=Xp、Cc1+Cc2=Ch(=Cm+W)のときX2=−Xpとなるならば、第1LC回路126のリアクタンス成分X1は第2LC回路128のリアクタンス成分X2を相殺する。
【0068】
第1段階の調整においては、Cc2、Cc3を固定した上でCc1を調整することにより入力インピーダンスZのリアクタンス成分を除去する。第2段階の調整においては、X1とX2とが相殺する状態を保ちながらCc2とCc3を調整し、インピーダンスZの実部を調整することにより受電電力が極大化する。たとえば、Cm=8.5pF、Cc2=13pF、Cc3=3.5pFに初期設定されているとする。W=8.5−3.5=5.0なので、8.5+5.0=(Cc1+13)を解くと、Cc1=0.5pFとなる。すなわち、Cc2、Cc3が上記のように初期設定されているときには、Cc1を0.5pFに設定すれば、入力インピーダンスZのリアクタンスを除去できる。実際には、インピーダンスZLに含まれるリアクタンス成分XLも考慮した上でインピーダンスZのリアクタンス成分を除去できるCc1を探索することになる。詳しくは後述するが、そのようなCc1の最適値を探索することは難しくない。なお、第1LC回路126のインダクタL6のインダクタンス、または、第2LC回路128のインダクタL9のインダクタンスがゼロではない場合には、インピーダンスZのリアクタンス成分を完全に除去することはできないが、リアクタンスX1とリアクタンスX2とは実質的に相殺するため受電電力を極大化できる。
【0069】
Cc1が確定すると、Cc2+Cc3=一定の関係(上記の場合、3.5+13=16.5pF)を保ちつつ、減算器112のコントロール電圧VCT2によりCc2、Cc3を調整する。このときには、Cc1の調整によりリアクタンス成分が除去された状態のまま、受電電力を調整できる。これが第2段階の調整となる。
【0070】
図16は、第2実施形態における電力制御回路400とロード回路140の接続部分の回路図である。第2実施形態における電力制御回路400は、第1調整回路132と第2調整回路134を含む。第1調整回路132は第1段階の調整を担当し、第2調整回路134は第2段階の調整を担当する。第2実施形態においては、抵抗RLに印加される電圧(出力電圧)を計測し、それを最大化することを調整の目的とする。なお、抵抗RLの受電電力を第1実施形態と同様の方法にて計測してもよい。受電電力は出力電圧の二乗を負荷抵抗RLで除したものであり、受電電力と出力電圧とは相関性があるため、第2実施形態においては出力電圧を計測対象としている。
【0071】
まず、第1調整回路132は、減算増幅器114から出力される電圧信号V0を計測する。第1調整回路132は、電圧信号V0を計測し、コントロール電圧VCT1により可変キャパシタCv1を調整する。第1段階の調整においては、可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量Cc2、Cc3は初期値に固定される。第1調整回路132は、電圧信号V0が極大値となるとき静電容量Cc1を確定させる。このとき、第1LC回路126のリアクタンスは第2LC回路128のリアクタンスにより相殺されることになる。以上が第1段階の調整である。
【0072】
第1段階の調整が完了すると、第2調整回路134が活性化される。第2調整回路134は、コントロール電圧VCT2により可変キャパシタCv2、Cv3を調整する。可変キャパシタCv1の調整により電圧信号V0を最大化させたあとでも、可変キャパシタCv2、Cv3を調整すればさらに電圧信号V0を大きくできる。電圧信号V0が極大値となるとき静電容量Cc2、Cc3を確定させる。第2調整回路134は、
図13に関連して説明した減算器112により、Cc2+Cc3=一定の関係を保ちながら、いいかえれば、第1LC回路126のリアクタンスと第2LC回路128のリアクタンスが相殺された状態を維持しながら、可変キャパシタCv2、Cv3を調整する。
【0073】
図17は、第1調整回路132の回路図である。上述のように、第1段階の調整として、第1調整回路132は可変キャパシタCv1を調整する。可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量は初期値に固定される。減算増幅器114から出力される電圧信号V0は、ローパスフィルタLPFによって信号成分が除去されたあと、計測部404の傾き検出回路(たとえば、ハイパスフィルタ(HPF))やコンパレータAに電圧信号V1として入力される。第1調整回路132の回路構成は、第1実施形態における電力制御回路400の構成と基本的に同様である。
【0074】
サンプルホールド回路108は、受電電力の極大値に対応する電圧信号V1を保持する。静電容量制御回路136は、
図9の負荷制御回路106と同様に、制御信号S7からキャパシタCv1の制御電圧を生成するとともに、受電電力の極大値に対応する制御電圧を保持する。制御信号S7から生成される制御電圧は、可変キャパシタCv1の静電容量Cc1を指定する信号である。
【0075】
電圧信号V1が減少すると、コンパレータAが反応する。スイッチ回路Dは信号S3をハイレベルに活性化し、負荷抵抗ホールド信号生成回路Fは信号S4をハイレベルに活性化し、スイッチ回路Hは制御信号S5をハイレベルに活性化する。制御信号S5の活性化により、不活性化されていたスイッチ回路Eが活性化され、調整機能が有効となる。制御信号S5の活性化によりスイッチ回路Dは不活性化され、コンパレータAはいったん無効化する。更に、制御信号S5の活性化により静電容量制御回路136が活性化される。静電容量制御回路136は、活性化されると、信号S7から生成される静電容量制御電圧にしたがって静電容量Cc1を調整する。
【0076】
制御信号S5が活性化されると、負荷抵抗制御指示信号生成回路Gは信号S6を活性化し、スイッチ回路Iは信号S7をハイレベルに活性化する。信号S7がハイレベルに活性化されると、負荷制御回路106は静電容量Cc1を増加させる。初期段階では増加でも減少でもよいが、本実施形態においてはまずは静電容量Cc1の増加からスタートする。
【0077】
静電容量Cc1を増加させることにより電圧信号V0が増加している場合には、静電容量Cc1の増加を継続する。電圧信号V0が減少している場合には、静電容量Cc1を減少させる。いずれにしても電圧信号V0が極大値に近づくと、コンパレータCが反応し、スイッチ回路Eの出力がローレベルに不活性化される。スイッチ回路Hの信号S5はローレベルに不活性化され、スイッチ回路Eが不活性化し、調整部406が不活性化される。また、スイッチ回路Dは、信号S5がローレベルになっても、後述のように、端点Eからの入力値がハイレベルであるため、この時点では活性化されない。また、新たな極大値に対応する電圧信号V1は、後述のように、この時点ではまだサンプルホールと回路106にホールドされない。静電容量制御回路136は不活性化され、静電容量Cc1の調整も終了する。
【0078】
インピーダンスZのリアクタンス成分がゼロとなるとき、負荷LDにおける受電電力が最大となる。いいかえれば、静電容量Cc2、Cc3が所与である場合においては、電圧信号V0が最大となるときの静電容量Cc1は、インピーダンスZのリアクタンス成分をゼロにしているといえる。第1段階の調整の目的は、第1LC回路126のリアクタンス成分が第2LC回路128のリアクタンス成分を相殺するときの静電容量Cc1を探索することである。
【0079】
図18は、第2調整回路134の回路図である。静電容量Cc1の調整により電圧信号V0が極大値に近づくと、第1調整回路132のスイッチ回路Hがローレベルに不活性化され、第2調整起動回路Qは一時的にハイレベルに活性化される。ここで、スイッチ回路P、第2調整起動回路Qは、入力信号の立ち下りで一瞬ハイレベルになり、その後ローレベルに戻る出力信号を生成する。また、第2調整起動回路Qの出力信号の立ち上りで、スイッチ回路RのPON1の値をローレベルにし、スイッチ回路Rの出力をグランド電位からスイッチ回路Mの出力に切り替える。また、スイッチ回路Sは、信号S9がローレベルとなって第2調整が終わるまでは、端点Eの電位をハイレベルに維持する。スイッチ回路SのPON2は、PON1がローレベルになったときにローレベルになる信号である。第2調整が終了した後に、
図17のスイッチ回路Dが活性化する。すなわち、第1調整段階の終了を契機として、第2調整起動回路Qが反応し、スイッチ回路L、M、負荷抵抗制御指示信号生成回路Nが連鎖的に反応し、負荷抵抗制御指示信号生成回路Nは信号S8をハイレベルに活性化する。スイッチ回路Mが出力する制御信号S9の活性化により、ホールド回路138が活性化される。
【0080】
信号S8がハイレベルになると、ホールド回路138はその出力であるコントロール電圧VCT2を増加させる。この結果、
図14に示した関係にしたがい、可変キャパシタCv2、Cv3の静電容量Cc2、Cc3はそれぞれ減少、増加する。
【0081】
電圧信号V0が増加しているか減少しているかはコンパレータBによりチェックされる。電圧信号V0が増加しているときには、負荷抵抗制御指示信号生成回路Nは信号S8をハイレベルのまま維持する。電圧信号V0が減少しているときには、スイッチ信号Nは信号S8を反転させる。この結果、ホールド回路138はコントロール電圧VCT2を減少させる。無効化回路DL3、DL4は、第1実施形態の電力制御回路400や第2実施形態の第1調整回路132における無効化回路DL1、DL2と同様であり、信号S8が反転した時に信号S8およびS9が意図しない反転をすることを防止するためのタイミング調整のために設けられる。
【0082】
電圧信号V0が極大値に近づくと、コンパレータCが反応する。スイッチ回路K、Mが不活性化されるため、信号S9も不活性化され、ホールド回路138はそのときのS8信号をホールドする。こうして、可変キャパシタCv2、Cv3も確定する。
【0083】
第1段階においてインピーダンスZのリアクタンス成分はすでに除去されている。第2段階においては可変キャパシタCv2と可変キャパシタCv3を連動して制御するため、リアクタンス成分が除去された状態はそのまま保たれる。可変キャパシタCv2、Cv3の調整により、リアクタンス成分の除去を前提とした上で、電圧信号V0が極大値となるときの静電容量Cc2、Cc3を探索できる。
【0084】
[第3実施形態]
図19は、第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の原理図である。第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100も、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ただし、ワイヤレス受電装置118は受電LC共振回路302を含むが、ワイヤレス給電装置116は給電LC共振回路300を含まない。すなわち、給電コイルL2は、LC共振回路の一部とはなっていない。より具体的には、給電コイルL2は、ワイヤレス給電装置116に含まれる他の回路要素とは共振回路を形成しない。給電コイルL2に対しては、直列・並列のいずれにもキャパシタが挿入されない。したがって、電力を伝送するときの周波数においては、給電コイルL2は非共振となる。
【0085】
給電源VGは、共振周波数fr1の交流電流を給電コイルL2に供給する。給電コイルL2は共振しないが、共振周波数fr1の交流磁場を発生させる。受電LC共振回路302は、この交流磁場により共振する。この結果、受電LC共振回路302には大きな交流電流が流れる。検討により、ワイヤレス給電装置116においては必ずしもLC共振回路を形成する必要がないことが判明した。給電コイルL2は、給電LC共振回路の一部ではないため、ワイヤレス給電装置116としては共振周波数fr1にて共振状態には移らない。一般的には、磁場共振型のワイヤレス給電は、給電側と受電側双方に共振回路を形成し、それぞれの共振回路を同一の共振周波数fr1(=fr0)で共振させることにより、大電力の送電が可能となると解釈されている。しかし、給電LC共振回路300を含まないワイヤレス給電装置116であっても、ワイヤレス受電装置118が受電LC共振回路302を含んでさえいれば、磁場共振型のワイヤレス給電を実現可能であることがわかった。
【0086】
給電コイルL2と受電側コイルL3とが磁場結合しても、キャパシタC2が省略されているため新たな共振回路(共振回路同士の結合による新たな共振回路)が形成されない。この場合、給電コイルL2と受電側コイルL3との磁場結合は、その結合が強くなればなるほど受電LC共振回路302の共振周波数に影響を及ぼす。この共振周波数、すなわち共振周波数fr1近傍の周波数の交流電流を給電コイルL2に供給することにより、磁場共振型のワイヤレス給電が実現可能となる。また、キャパシタC2が不要であるためサイズやコスト面でも有利となる。
【0087】
図20は、第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。
図20に示す第3実施形態のワイヤレス電力伝送システム100においては、キャパシタC2が省略されている。その他の点は、
図2に示した第1、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100と同様である。
【0088】
以上、各実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム100を説明した。第1実施形態においては、受電電力を極大値に近づけることを目標として抵抗成分RLを調整している。第2実施形態においては、同様の目標にて、リアクタンスX1とX2を相殺させつつ、インピーダンスZの虚部Xおよび実部Rを調整している。いずれの場合も、受電電力や出力電圧を実際に計測しながらインピーダンスZを調整することにより、受電電力を極大化している。
【0089】
なお、抵抗成分RLの調整とインピーダンスZの虚部Xおよび虚部Rの調整は組み合わせてもよい。また、送電制御回路200は、駆動周波数foを共振周波数fr1に追随させてもよい。たとえば、駆動周波数foを共振周波数fr1に追随させ、受電電力を維持できなくなったときにはインピーダンスZの虚部Xおよび実部Rを調整し、それでも補償できなくなったときには負荷抵抗としての抵抗成分RLを調整するとしてもよい。
【0090】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0091】
たとえば、第2の実施の形態では、インダクタL9と可変キャパシタ(Cv1+Cv2)との直列接続回路に対してインダクタL7が並列接続される第2LC回路128と、インダクタL6と可変キャパシタCv3との直列接続回路に対してインダクタL8が並列接続される第1LC回路126を用いていたが、インダクタL9とインダクタL7との直列接続回路に対して可変キャパシタ(Cv1+Cv2)が並列接続される第2LC回路128と、インダクタL6とインダクタL8との直列接続回路に対して可変キャパシタCv3が並列接続される第1LC回路126を用いてもよい。この場合も、インピーダンスの虚部をゼロにできる。ただし、インピーダンスZのレジスタンスを負荷抵抗RLの値より小さい値に調整できないため、負荷抵抗RLの値が小さい場合に用いるのが好ましい。
【0092】
ワイヤレス電力伝送システム100において伝送される「交流電力」は、エネルギーに限らず、信号として伝送されてもよい。アナログ信号やデジタル信号をワイヤレスにて送電する場合にも、本発明におけるワイヤレス電力伝送方法を適用可能である。