(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮空気はコンプレッサによって生成する必要があるため、当該圧縮空気を大量に消費してしまうとコスト増の原因になる。このため、上記クリーニングノズルにおいては、より少ない流量で、より確実に糸屑を除去できることが望まれる。そこで、クリーニングノズルの配置や形状を工夫して、糸屑除去の効率と確実性を向上させることが考えられる。
【0006】
しかし特許文献1は、「ヤーンクリアラの上面に対向するようにしてクリーニングノズルを配置した」ことを開示するのみであって、当該クリーニングノズルの配置や形状に関する詳細な記述は無い。
【0007】
本発明の目的は、糸監視装置において、付着した糸屑を効率的かつ確実に除去できる構成を提供することにある。
【0008】
本発明の観点によれば、糸監視装置は、糸通路形成部材と、検出部と、吹出部と、を備える。前記糸通路形成部材には、所定の糸道に沿って走行する糸を通過させるための糸通路が形成される。前記検出部は、前記糸通路の壁面の少なくとも一部において、前記糸の状態を検出する。前記吹出部は、所定の噴出方向に流体を噴出して、前記糸通路の壁面に吹き付ける。
前記糸通路は、前記糸道に沿って溝状に形成されている。前記吹出部は、前記糸通路の内部に向けて前記流体を噴出し、かつ、向かい合う1組の前記壁面のうち一方にのみ流体を吹き付けるように構成されている。そして、
前記噴出方向が、前記糸道に直交し、かつ前記壁面と平行な方向で見たときに
、前記壁面に対して斜めに設定されている
とともに、前記糸道に平行な方向で見たときにも、前記壁面に対して斜めに設定されている。
【0009】
このように、壁面に対して斜め方向から流体を吹き付けることで、壁面に当たった流体は、当該壁面に沿うようにして流れる。これにより、壁面の広い範囲に流体を作用させることができるので、壁面に付着した糸屑を、少ない流量で効率的に除去できる。
また、別の方向から見たときにも斜めとなるように流体を吹き付けることで、より広い範囲で壁面の糸屑を除去できる。更には、溝状の糸通路の内部に向けて斜め方向に流体を吹き込むことにより、糸通路内で螺旋状の流れを発生させる。これにより、より少ない流量でより確実に壁面の糸屑を除去できる。
【0014】
上記の糸監視装置において、前記吹出部は、スリット状の吹き出し口から前記流体を噴出することが好ましい。
【0015】
このように、スリットから流体を噴出することにより、帯状の流体を壁面に作用させることができるので、広い範囲で糸屑を除去できる。
【0016】
上記の糸監視装置において、前記吹出部は、前記糸の走行方向の上流側から下流側に向けて前記流体を噴出することが好ましい。
【0017】
仮に、壁面に対して下流側から流体を吹き付けた場合、当該流体によって上流側に吹き飛ばしたはずの糸屑が、走行する糸に連れられて戻ってきてしまう可能性がある。そこで上記のように、壁面に対して上流側から流体を吹き付けることで、糸屑は下流側に吹き飛ばされるので、当該糸屑が糸に連れられて戻ってくることはない。これにより、糸屑の除去を効率的に行うことができる。
【0018】
上記の糸監視装置は、前記糸通路形成部材を有する第1ブロックと、前記吹出部を有する第2ブロックと、を備える。前記第1ブロック及び第2ブロックは、前記糸道に平行な方向に並べて配置される。前記吹出部に対する流体の供給路は第2ブロックに形成される。
【0019】
これによれば、第1ブロック及び糸通路形成部材には流体の供給路を形成しなくても良いので、第1ブロック及び糸通路形成部材を単純な形状に形成できる。
【0020】
上記の糸監視装置は、前記糸を切断するためのカッタと、前記カッタに対して前記流体を吹き付けるカッタ用吹出部と、を前記第2ブロックに備えることが好ましい。
【0021】
このように、カッタ専用の吹出部を設けることで、カッタに対してピンポイントで流体を吹き付けることができる。これにより、カッタに引っかかった糸の切れ端等を確実に除去できる。また、第2ブロックにカッタ等を設けることで、第1ブロック側はシンプルな形状とすることができる。
【0022】
本発明の別の観点によれば、糸を巻取る巻取部と、前記巻取部によって巻き取られる前記糸を監視する上記の糸監視装置と、を備える糸巻取機が提供される。
【0023】
この糸巻取機は、糸監視装置の糸通路に付着した糸屑の除去を、少ない流体流量で確実に行うことができる。従って、糸監視装置による糸監視の精度を低コストで維持することができ、巻き取られる糸の品質を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。
図1に示す糸巻取機としての精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、を主に備えている。
【0026】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置4と、紡績装置5と、糸監視装置6と、糸貯留装置7と、巻取部8と、を備えている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束及び紡績糸の走行方向における上流及び下流を意味する。
【0027】
ドラフト装置4は、スライバ(繊維束の原料)9を引き伸ばして繊維束10とする。ドラフト装置4は、複数のドラフトローラ11,12,13及び14と、各ドラフトローラに対向するように配置された対向ローラを有している。複数のドラフトローラ11,12,13及び14は、それぞれ所定の回転速度で回転駆動されている。ドラフト装置4は、図略のスライバケースから供給されるスライバ9を、回転するドラフトローラ11,12,13及び14と、これに対向する対向ローラとの間で挟み込んで搬送することにより、引き伸ばして(ドラフトして)繊維束10とする。ドラフト装置4でドラフトされた繊維束10は、紡績装置5に供給される。
【0028】
紡績装置5は、繊維束10に撚りを加えて、紡績糸15を生成する。紡績装置5の構成は特に限定されないが、本実施形態の紡績装置5は、空気式の紡績装置として構成されている。この空気式の紡績装置5は、その内部に旋回気流を発生させ、当該旋回気流を繊維束10に作用させることにより、当該繊維束10に撚りを与える。
【0029】
紡績装置5で生成された紡績糸15は、糸監視装置6を通過する。糸監視装置6は、走行する紡績糸15の状態を監視し、当該紡績糸15の品質に異常がある箇所(糸欠点)を検出する。また、糸監視装置6には、紡績糸15を切断するためのカッタ16が付設されている。なお、糸監視装置6の詳細な構成は後述する。
【0030】
糸監視装置6を通過した紡績糸15は、巻取部8によってボビン17に巻き取られる。巻取部8は、クレードルアーム19と、巻取ドラム20と、トラバース装置21と、を備えている。
【0031】
クレードルアーム19は、紡績糸15を巻き取るためのボビン17を回転可能に支持する。巻取ドラム20は、前記ボビン17の外周面に接触して回転駆動されることにより、前記ボビン17を従動回転させる。トラバース装置21は、紡績糸15に係合して左右(ボビン17の巻幅方向)に駆動されるトラバースガイド22を備えている。このトラバース装置21によって、ボビン17に巻き取られる紡績糸15を綾振り(トラバース)する。
【0032】
以上の構成の紡績ユニット2により、スライバ9から紡績糸15を生成して、ボビン17に巻き取っていくことができる。なお、このように紡績糸15が巻き取られた状態のボビン17のことを「パッケージ」と呼ぶ。
【0033】
また、本実施形態の精紡機1では、糸監視装置6と巻取部8の間に、糸貯留装置7が配置されている。糸貯留装置7は、
図2に示すように、糸貯留ローラ23と、当該糸貯留ローラ23を回転駆動する電動モータ25と、を備えている。
【0034】
糸貯留ローラ23は、その外周面に一定量の紡績糸15を巻き付けて一時的に貯留できる。このように紡績糸15を一時的に貯留するので、糸貯留装置7は一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置5における紡績速度と、巻取部8における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば紡績糸15の弛みなど)を解消することができる。
【0035】
また、各紡績ユニット2は、ユニット制御部26を備えている。ユニット制御部26は、紡績ユニット2が備える各構成を適宜制御する。
【0036】
糸継台車3は、
図1及び
図2に示すように、糸継装置27と、吸引装置(サクションパイプ28及びサクションマウス29)を備えている。
【0037】
糸継装置27は、糸端同士を接合(糸継ぎ)するための装置である。糸継装置27の構成は特に限定されないが、例えば旋回気流によって糸端同士を撚り合わせる空気式のスプライサを採用できる。前記サクションパイプ28は、紡績装置5から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉して、糸継装置27へ案内する。サクションマウス29は、巻取部8に支持されたパッケージ18から糸端を吸引しつつ捕捉して、糸継装置27へ案内する。
【0038】
続いて、糸監視装置6で糸欠点が検出された場合の動作について簡単に説明する。
【0039】
糸監視装置6は、糸欠点(紡績糸15に異常がある箇所)を検出した場合は、前述のユニット制御部26に糸欠点検出信号を送信する。ユニット制御部26は、糸欠点検出信号を受けたときには、直ちにカッタ16を作動させて紡績糸15を切断する。切断された箇所よりも下流側の紡績糸15は、パッケージ18にいったん巻き取られる。なお、このときパッケージ18に巻き取られる紡績糸15には、糸監視装置6で検出された糸欠点の部分が含まれている。更に、ユニット制御部26は、巻取部8における巻き取りを停止させる。続いてユニット制御部26は、糸継台車3に制御信号を送り、糸欠点が検出された紡績ユニット2の前まで走行させる。
【0040】
糸継台車3は、紡績ユニット2の前で停止すると、紡績装置5から送出される糸端を、サクションパイプ28によって吸引捕捉して糸継装置27に案内する。また、これと前後して、糸継台車3は、パッケージ18に巻き取られた糸端を、サクションマウス29によって吸引捕捉して糸継装置27に案内する。このとき、パッケージ18に巻き取られていた糸欠点の部分は、サクションマウス29によって吸引されて引き出される。これにより、糸監視装置6によって検出された糸欠点の部分が、パッケージ18から除去される。
【0041】
糸継装置27は、サクションパイプ28及びサクションマウス29によって案内された糸端同士の接合(糸継ぎ)を行う。これにより、カッタ16によって切断された紡績糸15が、紡績装置5と巻取部8の間で再び連続状態になる。
【0042】
糸継装置27における糸継ぎ動作が完了すると、ユニット制御部26は、巻取部8による紡績糸15の巻き取りを再開させる。以上の動作により、糸監視装置6によって検出された糸欠点を除去し、パッケージ18への紡績糸15の巻き取りを再開できる。
【0043】
次に、糸監視装置6の構成について詳しく説明する。
【0044】
図3に示すように、本実施形態の糸監視装置6は、ホルダ(センサ保持部材)30と、ハウジング31と、糸道ガイド32及び33と、を主に備えている。
【0045】
ホルダ30はプラスチック製の部材であり、その内部には、紡績糸15の状態を検出するための検出部(センサ等)が組み込まれている。また、ホルダ30には、紡績糸15が通過するための第1糸通路34が形成されている。従って、ホルダ30は、糸通路形成部材であると言うことができる。ホルダ30に形成されている第1糸通路34は、紡績糸15の走行経路(以下、「糸道」と呼ぶ)に沿って溝状に形成されている。
【0046】
この第1糸通路34は、糸道に直交する平面で切断したときの内側の壁面の輪廓形状が略U字状(又はコ字状)に形成されている。つまり、第1糸通路34は、糸道と平行な方向で見たときに、その一側の端部が開放され、他側の端部が閉鎖された形状となっている(
図4参照)。なお、糸監視装置6についての以下の説明では、糸道に平行な方向で見たときに、第1糸通路34が開放されている側が向く方向(
図4(b)の向かって上方)を「前」、反対方向を「後」として、糸監視装置6の前後方向を定義する。つまり、第1糸通路34が開放している側を、糸監視装置6の前側とする。
【0047】
この第1糸通路34は、糸道を挟んで互いに平行に配置された一組の側壁面35及び35を有している。側壁面35及び35は、糸監視装置6の前後方向(
図4(b)の上下方向)及び糸道に対して平行に配置されている。第1糸通路34を通過する紡績糸15は、側壁面35及び35の間を走行する。
【0048】
続いて、検出部の構成について、
図4を参照して説明する。実施形態の糸監視装置6は、紡績糸15に光を照射することにより当該紡績糸15の状態を検知する光学式の糸監視装置として構成されている。具体的には、検出部は、発光素子37と受光素子38とを備えている。発光素子37としては、例えばLEDなどの適宜の発光素子を採用できる。受光素子38はフォトダイオードとして構成され、受光した光の強度を電気信号に変換して出力する。
【0049】
受光素子38は、その受光面が第1糸通路34の側壁面35の一部を構成するように配置されている。また、受光素子38とは反対側の側壁面35の一部には、樹脂製の透明板39が設けられている。透明板39を挟んで第1糸通路34の反対側(ホルダ30の内部)には、発光素子37が配置されている。発光素子37は、透明板39を介して、第1糸通路34に光を照射する。発光素子37と受光素子38は、糸道を挟んで向い合うように配置されている。
【0050】
以上の構成で、発光素子37からの光は、その一部が紡績糸15によって遮られて受光素子38に受光される。このため、受光素子38に受光される光の強度は、紡績糸15の太さによって変わる。従って、糸監視装置6は、受光素子38が受光した光の強度に基づいて、紡績糸15の太さを検出できる。
【0051】
以上のように、糸監視装置6の検出部は、第1糸通路34の側壁面35の一部において、当該側壁面35の間を通過する紡績糸15の状態(具体的には、紡績糸15の太さ)を監視する。
【0052】
続いて、糸監視装置6のハウジング31について説明する。このハウジング31は、糸道と平行な方向に並べて配置された、第1ブロック41と第2ブロック42を備えている。第1ブロック41と第2ブロック42はそれぞれプラスチック製である。また、第1ブロック41と第2ブロック42は別体として形成されており、分離可能である。
【0053】
図6に示すように、第1ブロック41には、ホルダ30が取り付けられている。また、この第1ブロック41は、検出部の発光素子37及び受光素子38を制御するための回路基板44を収容している。
【0054】
第2ブロック42は、第1ブロック41の上流側に配置されている。
図3及び
図7等に示すように、この第2ブロック42には、紡績糸15が通過する第2糸通路43が形成されている。第2糸通路43は、糸道に沿って溝状に形成されており、断面形状が略U字状(又は略コ字状)となっている。また、この第2糸通路43は、ホルダ30側の第1糸通路34と連通するように形成されている。
【0055】
第2ブロック42には、前述のカッタ16が配置されている。このカッタ16は、第2糸通路43内を走行する紡績糸15を切断可能である。また、第2ブロック42内には、カッタ16を駆動して紡績糸15を切断するためのカッタ駆動機構(図略)が配置されている。
【0056】
糸道ガイド32及び33は、紡績糸15の糸道を規制するための部材であって、耐摩耗性を有する素材(本実施形態ではセラミック)で構成されている。また、糸道ガイド32及び33は、ホルダ30の上流側と下流側に1つずつ配置されている。紡績糸15は、上下の糸道ガイド32及び33に接触しながら走行する。これにより、ホルダ30に対する紡績糸15の走行位置が安定するため、検出部において紡績糸15の状態を安定して監視できる。
【0057】
また、本実施形態の糸監視装置6は、第1糸通路34の側壁面35に対して流体(具体的には圧縮空気)を噴出する吹出部45を備えている。これにより、側壁面35に付着した糸屑等を吹き飛ばすことができる。なお、圧縮空気の噴出は、定期的に行っても良いし、適宜のタイミングで不定期的に行っても良い。これにより、側壁面35(特に、透明板39と、受光素子38の受光面)を清浄な状態に保つことができるので、糸監視装置6は、紡績糸15の状態を精度良く監視できる。
【0058】
続いて、本実施形態の糸監視装置6における吹出部45の構成について詳しく説明する。
【0059】
吹出部45の目的は、圧縮空気を噴出することにより、受光素子38の受光面及び/又は透明板39に付着している糸屑を吹き飛ばすことである。そこで、吹出部45を、透明板39と受光素子38の近傍に形成し、透明板39と受光素子38に対してピンポイントで空気を吹き付けるという構成も考え得る。
【0060】
しかし、透明板39及び受光素子38に対してピンポイントで空気を吹き付けるためには、例えばホルダ30に吹出部45を形成する必要がある。この場合、吹出部45に対する空気の供給路をホルダ30に形成する必要があり、ホルダ30の形状が複雑になってしまう。吹出部45をハウジング31の第1ブロック41に形成することも考えられるが、この場合は空気の供給路を第1ブロック41に形成する必要がある。しかし、第1ブロック41内には回路基板44等が配置されているため、スペースの余裕が少なく、空気の通路を形成することは困難である。しかも、第1ブロック41に空気の通路を形成した場合は、当該第1ブロック41の形状が複雑になってしまう。
【0061】
また、仮に圧縮空気をピンポイントで吹き付けるように構成した場合は、透明板39及び受光素子38の狭い範囲にしか空気の流れを作用させることができない。従って、透明板39及び受光素子38の受光面を全体的に清掃するためには、吹出部を複数形成する必要がある。吹出部の数が多くなると、圧縮空気の消費量が多くなって効率が悪い。
【0062】
そこで本実施形態の吹出部45は、第1糸通路34の側壁面35に対して、圧縮空気を斜め方向から吹き付けるように構成されている。このように、側壁面35に対して圧縮空気を斜め方向に吹き付けることで、当該圧縮空気を側壁面35に沿うように流すことができる。このように、側壁面35に沿わせて空気を流すことで、側壁面35の広い範囲に空気の流れを作用させることができる。これにより、透明板39及び受光素子38に対して全体的に圧縮空気を当てることができるので、透明板39及び/又は受光素子38に付着した糸屑を、少ない空気流量で効率良く吹き飛ばすことができる。
【0063】
吹出部45からの空気の噴出方向を、
図3及び
図5から
図7に細線の矢印で示す。
図5に示すように、糸道に直交し、かつ第1糸通路34の側壁面35に平行な方向で見たときに、吹出部45からの圧縮空気の噴出方向が、側壁面35に対して斜めに設定されている。従って、吹出部45からの空気の噴出方向は、糸道と平行な方向(第1糸通路34の長手方向、
図5の上下方向)のベクトル成分を有している。この方向で側壁面35に吹き付けられた空気は、当該側壁面35に沿いつつ、第1糸通路34の長手方向に向かって勢い良く流れる。これにより、第1糸通路34の側壁面35を全体的に清掃できる。
【0064】
また、
図5に示すように、吹出部45は、第1糸通路34の側壁面35に対して、走行方向の上流側から下流側に向けて空気を吹き付けるように構成されている。これにより、側壁面35に付着している糸屑を、下流側に向けて吹き飛ばすことができる。これによれば、吹き飛ばした糸屑が、走行する紡績糸15に連れられて糸監視装置6に戻ってきてしまうこともない。
【0065】
また、本実施形態の吹出部45からの圧縮空気の噴出方向は、糸道と平行な方向で見たときにも、側壁面35に対して斜めに設定されている(
図6参照)。つまり、吹出部45からの空気の噴出方向は、糸監視装置6の前後方向(第1糸通路34の奥行き方向、
図6の上下方向)のベクトル成分を有している。この方向で側壁面35に吹き付けられた空気は、当該側壁面35に沿いつつ、第1糸通路34の奥行き方向にも流れる。これにより、吹出部45からの噴出空気を、側壁面35のより広い範囲に作用させることができる。
【0066】
また、
図3及び
図6等に示すように、吹出部45は、第1糸通路34の外側に配置されている。より具体的には、糸道と平行な方向で見たときに、吹出部45は、略U字状の第1糸通路34の開放端よりも前方に配置されている。これにより、吹出部45は、第1糸通路34の内側に向けて空気を吹き込む。このように、溝状の第1糸通路34の内側に向けて、斜め方向から空気を吹き込むことにより、第1糸通路34内に螺旋状の空気の流れを発生させることができる(
図6参照)。
【0067】
ところで、本実施形態の吹出部45は、第1糸通路34の向かい合う1組の側壁面35及び35のうち、一方にのみ、圧縮空気を吹き付けるように構成されている。従って、もう一方の側壁面35には、吹出部45からの圧縮空気は直接的には当たらない。しかし上記のように、第1糸通路34内に螺旋状の空気の流れを発生させることにより、吹出部45から圧縮空気が直接的に吹き付けられなかった側の側壁面35にも、空気の流れが作用することになる。これにより、1組の側壁面35及び35の両方に空気の流れを作用させることができる。従って、透明板39と、受光素子38の受光面と、の両方を、1つの吹出部45からの噴出空気によって清掃することができる。
【0068】
また、本実施形態では、吹出部45は、スリット状の吹き出し口から圧縮空気を噴出するように構成されている。これにより、幅を有する帯状の圧縮空気を側壁面35に吹き付けることができるので、当該側壁面35に対してより広い範囲で空気を作用させることができる。
【0069】
また、
図3、
図5、及び
図7に示すように、本実施形態の糸監視装置6は、カッタ用吹出部46を、吹出部45とは別に有している。このカッタ用吹出部46は、第2糸通路43の内側に形成されており、前記カッタ16に対して圧縮空気を吹き付けるように構成されている。
【0070】
このカッタ用吹出部46により、カッタ16に引っかかった紡績糸15の切れ端などを吹き飛ばすことができる。なお、カッタ16に紡績糸15の切れ端等が引っかかる位置は決まっているので、カッタ16に対しては、広い範囲で空気を吹き付けるよりも、ピンポイントで空気を吹き付けた方が効率が良い。そこで、カッタ用吹出部46は、丸孔状のノズルとして構成されている。これにより、カッタ16に対してピンポイントで空気を吹き付けることができる。
【0071】
図7に示すように、糸道と平行な方向で見たときに、カッタ用吹出部46は、U字状の第2糸通路43の閉鎖側端部(第2糸通路43の奥)に形成されている。そして、カッタ用吹出部46は、第2糸通路43の開放側に向けて(前方に向けて)圧縮空気を吹き出すように構成されている。これにより、カッタ16に引っかかった紡績糸15の切れ端等を、第2糸通路43の外側に向けて吹き飛ばすことができる。
【0072】
以上のように、本実施形態の糸監視装置6では、側壁面35に対してはスリット状の吹き出し口から帯状の空気を噴出して広い範囲に空気を作用させ、カッタ16に対しては丸穴状のノズルからピンポイントで空気を吹き付けている。このように、対象に応じて圧縮空気を吹き付ける方法を異ならせているので、糸屑等の除去をより効果的に行うことができる。結果的に、少ない流量で効率的にクリーニングの効果を得ることができるので、圧縮空気の消費量を低減できる。
【0073】
続いて、吹出部45の具体的な構成について説明する。
【0074】
前述のように、吹出部45は、ホルダ30に形成された第1糸通路34の側壁面35に対して、紡績糸15の走行方向上流側から斜め方向に空気を吹き付けるように構成されている。従って、吹出部45は、走行方向でホルダ30よりも上流側に配置されていれば良く、ホルダ30と吹出部45が走行方向で同じ位置に配置されている必要はない。
【0075】
そこで本実施形態の糸監視装置6では、ホルダ30を保持している第1ブロック41ではなく、当該第1ブロック41の上流側に配置された第2ブロック42に吹出部45を形成している。このように、ホルダ30及び第1ブロック41には吹出部45を形成しないので、ホルダ30及び第1ブロック41をシンプルに構成できる。
【0076】
図7等に示すように、この第2ブロック42には、糸監視装置6に圧縮空気を供給する圧空供給ホース48が接続されている。また、第2ブロック42内には、圧空供給ホース48から吹出部45まで圧縮空気を供給する供給路49が形成されている。また本実施形態では、カッタ用吹出部46への空気の供給路50も、第2ブロック42に形成されている。このように、圧縮空気の供給路49及び50を第2ブロック42に形成するので、ホルダ30及び第1ブロック41には、空気の供給路を形成する必要がない。従って、ホルダ30及び第1ブロック41の形状をシンプルに構成できる。
【0077】
以上で説明したように、本実施形態の糸監視装置6は、ホルダ30と、検出部と、吹出部45と、を備える。ホルダ30には、所定の糸道に沿って走行する紡績糸15を通過させるための第1糸通路34が形成される。検出部は、第1糸通路34の側壁面35の一部において、紡績糸15の状態を検出する。吹出部45は、所定の噴出方向に圧縮空気を噴出して、第1糸通路34の側壁面35に吹き付ける。そして、糸道に直交し、かつ側壁面35と平行な方向で見たときに、前記噴出方向が側壁面35に対して斜めに設定されている。
【0078】
このように、側壁面35に対して斜め方向から圧縮空気を吹き付けることで、側壁面35に当たった圧縮空気は、当該側壁面35に沿うようにして流れる。これにより、側壁面35の広い範囲に空気流を作用させることができるので、側壁面35に付着した糸屑を、少ない流量で効率的に除去できる。
【0079】
本実施形態の糸監視装置6では、前記糸道に平行な方向で見たときに、前記噴出方向が側壁面35に対して斜めに設定されている。
【0080】
このように、別の方向から見たときにも斜めとなるように圧縮空気を吹き付けることで、より広い範囲で側壁面35の糸屑を除去できる。
【0081】
本実施形態の糸監視装置6において、第1糸通路34は、糸道に沿って溝状に形成されており、吹出部45は、第1糸通路34の内部に向けて圧縮空気を噴出する。
【0082】
このように、溝状の第1糸通路34の内部に向けて斜め方向に圧縮空気を吹き込むことにより、第1糸通路34内で螺旋状の流れを発生させる。これにより、より少ない流量でより確実に側壁面35の糸屑を除去できる。
【0083】
本実施形態の糸監視装置6において、吹出部45は、スリット状の吹き出し口から圧縮空気を噴出する。
【0084】
このように、スリットから圧縮空気を噴出することにより、帯状の空気流を側壁面35に作用させることができるので、広い範囲で糸屑を除去できる。
【0085】
本実施形態の糸監視装置6において、吹出部45は、紡績糸15の走行方向の上流側から下流側に向けて圧縮空気を噴出する。
【0086】
仮に、側壁面35に対して下流側から圧縮空気を吹き付けた場合、当該圧縮空気によって上流側に吹き飛ばしたはずの糸屑が、走行する紡績糸15に連れられて戻ってきてしまう可能性がある。そこで上記のように、側壁面35に対して上流側から圧縮空気を吹き付けることで、糸屑は下流側に吹き飛ばされるので、当該糸屑が紡績糸15に連れられて戻ってくることはない。これにより、糸屑の除去を効率的に行うことができる。
【0087】
本実施形態の糸監視装置6は、ホルダ30を有する第1ブロック41と、吹出部45を有する第2ブロック42と、を備える。第1ブロック41及び第2ブロック42は、糸道と平行な方向に並べて配置される。吹出部45に対する圧縮空気の供給路49は第2ブロック42に形成される。
【0088】
これによれば、第1ブロック41及びホルダ30には圧縮空気の供給路49を形成しなくても良いので、第1ブロック41及びホルダ30を単純な形状に形成できる。
【0089】
本実施形態の糸監視装置6は、紡績糸15を切断するためのカッタ16と、カッタ16に対して圧縮空気を吹き付けるカッタ用吹出部46と、を第2ブロック42に備える。
【0090】
このように、吹出部45とは別に、カッタ用吹出部46を設けることで、カッタ16に対してピンポイントで流体を吹き付けることができる。これにより、カッタ16に引っかかった紡績糸15の切れ端等を確実に除去できる。また、第2ブロック42にカッタ16等を設けることで、第1ブロック41側はシンプルな形状とすることができる。
【0091】
また、本実施形態の精紡機1は、紡績糸15を巻取る巻取部8と、巻取部8によって巻き取られる紡績糸15を監視する糸監視装置6と、を備えている。
【0092】
この精紡機1は、糸監視装置6の第1糸通路34に付着した糸屑の除去を、少ない流体流量で確実に行うことができる。従って、糸監視装置6による糸監視の精度を低コストで維持することができ、巻き取られる紡績糸15の品質を高めることができる。
【0093】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0094】
本願の構成は、精紡機に限らず、例えば自動ワインダ等の他の種類の糸巻取機にも適用できる。なお、自動ワインダとは、給糸ボビンの糸を解舒して、当該糸に所定のテンションを付与しつつ、巻取ボビンに巻き返す装置である。この自動ワインダに本願発明の糸監視装置を採用することで、巻き返される糸の状態を精度良く監視できる。
【0095】
以上の説明では、糸監視装置は1つの発光素子と1つの受光素子を備える光学式の糸監視装置であると説明したが、これに限らず、複数の発光素子及び/又は複数の受光素子を備えていても良い。また、上記実施形態の糸監視装置では、糸によって遮られた光の強さを監視することで当該糸の太さを検出しているが、これに限らず、例えば糸からの反射光の強さを監視することで当該糸に含まれる異物の有無を検出しても良い。
【0096】
検出部は、光学式のセンサに限らず、例えば静電容量式のセンサで糸の状態を検知するように構成されていても良い。この場合であっても、第1糸通路34に糸屑が蓄積すると検出精度が低下するので、上記の構成によって糸屑を除去するメリットがある。
【0097】
上記の実施形態では、糸に異常がある箇所(糸欠点)を糸監視装置6によって検出する構成としたが、これに限らない。糸監視装置は、例えば糸の走行速度、糸の走行長さなど、走行する糸の何らかの状態を少なくとも1つ検出して監視する構成であれば良い。
【0098】
ユニット制御部26は、各紡績ユニット2ごとに設ける代わりに、複数の紡績ユニット2ごとに設けて、1つのユニット制御部26で複数の紡績ユニット2を制御しても良い。