特許第5953917号(P5953917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5953917
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   B29D30/30
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-107951(P2012-107951)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233740(P2013-233740A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】平地 稔
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−321290(JP,A)
【文献】 特開2012−016865(JP,A)
【文献】 特開2011−156887(JP,A)
【文献】 特開2010−046729(JP,A)
【文献】 特公昭39−014501(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト層と、前記ベルト層の外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コードから成る補強層とを有する空気入りタイヤの製造方法であって、
成形ドラム上に前記ベルト層を設置するベルト層設置ステップと、前記ベルト層に対して前記補強コードを巻き付けて前記補強層を成形する補強層成形ステップとを備え、且つ、
前記ベルト層設置ステップにて、前記成形ドラムの外周面にベルト成形治具を着脱可能に装着すると共に、前記ベルト成形治具の外周面に前記ベルト層を配置し、
前記補強層成形ステップにて、コード巻付装置が、ゴムコーティングを施した複数本の前記補強コードから成るストリップ材を前記成形ドラムに向けて供給し、切断装置が、前記コード巻付装置と前記成形ドラムとの間で前記ストリップ材を切断して前記複数の補強コードに分断し、前記成形ドラムが、分断された補強コードを巻き取って前記ベルト層に巻き付け、且つ、
前記ベルト成形治具が、前記ベルト層よりも幅広なリング形状を有すると共に、前記ベルト層の内径よりも縮径可能な構造を有することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ベルト成形治具が、前記ベルト成形治具を前記成形ドラムに対して位置決めするための位置決め部を有し、且つ、前記位置決め部が、前記ベルト成形治具上における前記ベルト層の配置領域の外にある請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記補強コードを巻き付けた前記ベルト層を前記ベルト成形治具から取り外し、前記ベルト成形治具から取り外された前記ベルト層および前記補強コードの組立体に対してトレッドを配置する請求項1または2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記切断装置が、回転可能な丸刃状の切断部を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記切断部の先端角度θが、5[deg]≦θ≦90[deg]の範囲内にある請求項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記切断装置が、複数の前記切断部を有すると共に、すべての前記切断部が、同軸上かつ所定間隔で配置される請求項4または5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記切断装置が、前記切断部を加温するヒータを備える請求項4〜6のいずれか一つに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
ベルト層と、前記ベルト層の外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コードから成る補強層とを有する空気入りタイヤの製造方法であって、
成形ドラム上に前記ベルト層を設置するベルト層設置ステップと、前記ベルト層に対して前記補強コードを巻き付けて前記補強層を成形する補強層成形ステップとを備え、且つ、
前記補強層成形ステップにて、コード巻付装置が、ゴムコーティングを施した複数本の前記補強コードから成るストリップ材を前記成形ドラムに向けて供給し、切断装置が、前記コード巻付装置と前記成形ドラムとの間で前記ストリップ材を切断して前記複数の補強コードに分断し、前記成形ドラムが、分断された前記複数の補強コードを巻き取って1つの前記ベルト層に同時に巻き付けることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている一般的な空気入りタイヤは、カーカス層の外周側に一つまたは複数のベルト層を設け、このベルト層の外周側にトレッドを設けて構成されている。そして、このベルト層として、タイヤ周方向に対する巻付け角度が実質的に0度となるようにスチールコードなどを巻き付ける補強層を設けることが提案されている。
【0003】
また、従来、空気入りタイヤを製造する場合、カーカスやインナーライナなどのシート状部材をバンドドラムに巻き付けて筒状のバンド部材を成形する一方、ベルト層やトレッドなどのシート状部材をベルトドラムに巻き付けて筒状のベルト部材を成形し、バンド部材を外側のベルト部材の内側に組付けてタイヤの形状に成形し、加硫処理をなしている。
【0004】
ここで、補強層を有する空気入りタイヤを製造する場合には、ベルト層をベルトドラムに巻き付けた上にスチールコードを巻き付け、その上にトレッドを巻き付けて筒状のベルト部材を成形する必要がある。このスチールコードは、1本巻きの場合、長さが200m〜500mであり、ベルトドラムに巻き付けるのに長時間を要してしまう。そのため、バンド部材の成形時間に対して、ベルト部材の成形時間が長くなり、待ち時間が増加することでタイヤ成形時間が長くなり、タイヤ製造の生産性が大幅に低下してしまうという問題がある。
【0005】
このような課題に関する従来の空気入りタイヤの製造方法として、特許文献1に記載される技術が知られている。従来の空気入りタイヤの製造方法では、巻付け装置が、タイヤベルト形成用の狭幅部材を巻き付けた3つのヘッドを備え、ヘッドからそれぞれ巻き出された狭幅部材をドラムに同時に巻き付けることにより、被巻付け体への狭幅部材の巻き付け時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−260186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤの製造方法は、ベルト層と、前記ベルト層の外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コードから成る補強層とを有する空気入りタイヤの製造方法であって、成形ドラム上に前記ベルト層を設置するベルト層設置ステップと、前記ベルト層に対して前記補強コードを巻き付けて前記補強層を成形する補強層成形ステップとを備え、且つ、前記ベルト層設置ステップにて、前記成形ドラムの外周面にベルト成形治具を着脱可能に装着すると共に、前記ベルト成形治具の外周面に前記ベルト層を配置し、前記補強層成形ステップにて、コード巻付装置が、ゴムコーティングを施した複数本の前記補強コードから成るストリップ材を前記成形ドラムに向けて供給し、切断装置が、前記コード巻付装置と前記成形ドラムとの間で前記ストリップ材を切断して前記複数の補強コードに分断し、前記成形ドラムが、分断された補強コードを巻き取って前記ベルト層に巻き付け、且つ、前記ベルト成形治具が、前記ベルト層よりも幅広なリング形状を有すると共に、前記ベルト層の内径よりも縮径可能な構造を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤの製造方法は、ベルト層と、前記ベルト層の外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コードから成る補強層とを有する空気入りタイヤの製造方法であって、成形ドラム上に前記ベルト層を設置するベルト層設置ステップと、前記ベルト層に対して前記補強コードを巻き付けて前記補強層を成形する補強層成形ステップとを備え、且つ、前記補強層成形ステップにて、コード巻付装置が、ゴムコーティングを施した複数本の前記補強コードから成るストリップ材を前記成形ドラムに向けて供給し、切断装置が、前記コード巻付装置と前記成形ドラムとの間で前記ストリップ材を切断して前記複数の補強コードに分断し、前記成形ドラムが、分断された前記複数の補強コードを巻き取って1つの前記ベルト層に同時に巻き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかる空気入りタイヤの製造方法は、複数の補強コードをゴム被覆させたストリップ材を分断して、ゴム被覆された1本の補強コードを形成し、この補強コードを成形ドラムに巻き付けるので、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの製造方法を示す説明図である。
図2図2は、図1に記載したベルト成形装置を示す概略構成図である。
図3図3は、図1に記載したベルト成形装置におけるベルト層の貯留状態を示す概略図である。
図4図4は、図1に記載したベルト成形装置のベルト成形治具を示す概略図である。
図5図5は、図4に記載したベルト成形治具の位置決め構造を示す概略図である。
図6図6は、図4に記載したベルト成形治具における別の締結装置を示す概略図である。
図7図7は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図8図8は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図9図9は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図10図10は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図11図11は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図12図12は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図13図13は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図14図14は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示す説明図である。
図15図15は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例1を示す説明図である。
図16図16は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例1を示す説明図である。
図17図17は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例1を示す説明図である。
図18図18は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例2を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0012】
[空気入りタイヤの製造方法]
図1図14は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの製造方法を示す説明図である。これらの図において、図1は、ベルト成形治具を用いたベルト成形方法およびベルト成形装置の概略図を示している。図2は、図1に記載したベルト成形装置の概略構成図を示している。図3は、図1に記載したベルト成形装置におけるベルト層の貯留状態を示している。図4は、図1に記載したベルト成形装置のベルト成形治具を示している。図5は、図4に記載したベルト成形治具の位置決め構造の概略図を示し、図6は、図4に記載したベルト成形治具における別の締結装置の概略図を示している。図7図14は、図1に記載したベルト成形装置の動作を示している。
【0013】
この実施の形態で適用される空気入りタイヤは、図示しないが、トレッド部と、このトレッド部の両側に配置されるショルダー部と、この各ショルダー部から順次連続するサイドウォール部およびビード部から構成されるものである。そして、この空気入りタイヤは、内側から、カーカス層、インナーライナ層、第一ベルト層、第二ベルト層、補強層、第三ベルト層、第四ベルト層、ベルトエッジクッション(BEC)、トレッド層などが積層されて構成されている。
【0014】
なお、空気入りタイヤの補強層は、ゴムコーティングを施したスチールコードをタイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内で傾斜させつつベルト層の外周に螺旋状に巻き付けて構成される。この補強層は、タイヤ周方向の剛性を補強することにより、タイヤの耐久性能を向上させ得る。
【0015】
ベルト成形装置は、上記した空気入りタイヤにおける一部のベルト層を成形するものである。図1のベルト成形装置は、第一ベルト層と第二ベルト層とベルトエッジクッションと補強層からなるベルト層を成形するものである。
【0016】
この実施の形態において、ベルト成形装置10は、図1および図2に示すように、回転可能な成形ドラム11と、成形ドラム11に対して着脱自在なベルト保持治具(ベルト成形治具)12と、成形ドラム11に取付けられたベルト保持治具12の外周面にベルト層を巻き付けるベルト層巻付装置13と、ベルト保持治具12の外周面に補強コードを巻き付けるコード巻付装置14とから構成されている。
【0017】
成形ドラム11は、第一ドラム21と第二ドラム22からなり、この第一ドラム21と第二ドラム22の各駆動軸23、24が直線上に配置され、支持装置25により回転可能に支持されている。そして、第一、第二駆動装置26、27により各駆動軸23、24を介して第一、第二ドラム21、22を正転方向およびまたは逆転方向に回転させることができる。また、支持装置25は、回転装置(反転装置)28により駆動することで、この支持装置25を支点として第一、第二ドラム21、22を横方向に180度だけ回転させることで、その位置を反転することができる。
【0018】
また、成形ドラム11(第一ドラム21、第二ドラム22)は、図3に示すように、ベルト保持治具12を着脱可能となっている。この成形ドラム11は、リング形状に配列された複数のセグメント29を有しており、図示しない駆動装置によりこの複数のセグメント29を同期して径方向に移動させることができる。従って、複数のセグメント29を径方向における内方に移動させる状態で、その外側にベルト保持治具12を配置し、複数のセグメント29を径方向における外方に移動させると、各セグメント29がベルト保持治具12の内周面を押圧することで、このベルト保持治具12を保持することができる。一方、各セグメント29がベルト保持治具12を保持した状態で、各セグメント29を径方向における内方に移動すると、各セグメント29がベルト保持治具12の内周面から離間して押圧を解除することで、このベルト保持治具12の保持を解除することができる。
【0019】
ベルト層巻付装置13は、図1および図2に示すように、第一ベルト(第一ベルト層)B1を供給する第一ベルト供給装置31と、第二ベルト(第二ベルト層)B2を供給する第二ベルト供給装置32と、ベルトエッジクッション(BEC)E1を供給するBEC供給装置33とから構成されている。この場合、第一ベルトB1と第二ベルトB2は、ゴムで被覆されるコードがタイヤ周方向、つまり、タイヤ赤道線に対して、所定の角度を有して配置されている。また、この第一ベルトB1と第二ベルトB2は、タイヤ周方向に対して角度をなすコードが積層された相互のベルトに交差するように配置されている。
【0020】
コード巻付装置14は、補強層を形成するためのスチールコード(補強コード)Sを供給するものである。このコード巻付装置14は、スチールコードSを収容するコードリール41と、スチールコードSにゴムを連続的に被覆するゴム被覆機42と、ゴムが被覆されたスチールコードSを送給する送給機43と、スチールコードSを上下動自在の複数のローラ間に掛け回してこのスチールコードSの過不足を調整するフェスツーン44と、スチールコードSを成形ドラム11に貼り付ける貼り付け機45と、フェスツーン44の前後に設けられるガイドローラ46、47とから構成されている。この場合、ゴムが被覆されたスチールコードSは、タイヤ周方向、つまり、タイヤ赤道線に対して平行(略0度、例えば、0〜5度)な方向に沿って配置されるように、ベルト保持治具12の周方向に供給されて巻き付けられる。
【0021】
ベルト保持治具12は、図4および図5に示すように、成形するベルト層に対応した所定幅のリング形状をなし、金属(スチールなど)や樹脂など形状の変化しにくい硬質な材料により構成されている。このベルト保持治具12は、成形ドラム11における第一ドラム21と第二ドラム22に対して、複数のセグメント29により着脱可能となっている。そして、ベルト保持治具12は、その外周面にベルト層として、少なくともスチールコードSが巻き付けられて形成される補強層を保持可能となっている。具体的にベルト保持治具12は、その外周面にベルト層として、第一ベルトB1と第二ベルトB2とベルトエッジクッションE1とスチールコードSとが積層されたベルト層Bを保持可能となっている。
【0022】
また、ベルト保持治具12は、成形したベルト層Bを保持可能であると共に、この保持したベルト層Bを取り外すことができることから、ベルト層Bの内径より縮径可能となっている。即ち、ベルト保持治具12は、所定幅および所定長さのスチール板をリング形状に湾曲形成し、長手方向(周方向)における各端部を連結する連結部を設けている。
【0023】
具体的に説明すると、ベルト保持治具12において、本体51は、所定幅および所定長さのスチール板をリング形状に湾曲形成したリング形状をなし、その内径が成形ドラム11における第一ドラム21および第二ドラム22の外径に対応して設定され、外径が成形するベルト層Bの内径に対応して設定されている。上記した連結部は、この本体51の長手方向における端部同士が内周側に折曲して形成される一対のフランジ部52、53であり、この各フランジ部52、53同士は、締結装置としての複数のボルト54(図示しないナット)により締結可能となっている。
【0024】
なお、この締結装置としては、複数のボルト54とナットに限るものではない。例えば、図6に示すように、トグル式締結装置61としてもよい。このトグル式締結装置61は、コ字形状をなして各フランジ部52、53に挿入するケーシング62と、ハンドル63と、ハンドル63によりトグル機構(図示略)によりフランジ部52を押圧してケーシング62と共に挟持する締結部材64とから構成されている。
【0025】
また、ベルト保持治具12において、図4および図5に示すように、本体51は、複数の貫通孔55が形成されており、パンチングメタル形状となっている。この複数の貫通孔55は、本体51の全域にわたって略均一に設けられている。
【0026】
また、本体51は、成形ドラム11における第一ドラム21および第二ドラム22への装着時に、所定の位置に位置決めするための複数の位置決め穴(位置決め部)56が設けられている。即ち、ベルト保持治具12は、成形ドラム11(第一ドラム21、第二ドラム22)とほぼ同幅を有している一方、形成するベルト層Bより所定量だけ広幅に設定されている。そして、成形ドラム11の各ドラム21、22は、外周面における幅方向の外端で、周方向に均等間隔で2つ、合計4つの突起部21a(22a)が形成されている。一方、ベルト保持治具12は、幅方向の外端で、周方向に均等間隔で2つ、合計4つの位置決め穴56が形成されている。
【0027】
従って、ベルト保持治具12を各ドラム21、22に装着するとき、各突起部21a(22a)に各位置決め穴56が嵌合するように位置決めすることで、ベルト保持治具12を各ドラム21、22における所定の位置に装着することができる。この場合、各突起部21a(22a)と各位置決め穴56は、ベルト保持治具12における幅方向の外端、つまり、ベルト層Bを形成する領域外にあることから、ベルト成形時に支障をきたすことはない。
【0028】
この実施の形態では、図1に示すように、ベルト成形装置10によりベルト保持治具12の外周面にベルト層B(第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードS)が巻き付けられた後、この状態で貯留される。そして、別のベルト成形装置100によりベルト積層体が成形される。このベルト成形装置100は、第三ベルト(第三ベルト層)B3を供給する第三ベルト供給装置101と、第四ベルト(第四ベルト層)B4を供給する第四ベルト供給装置102と、ベルトエッジクッション(BEC)E2を供給するBEC供給装置103、トレッドTを供給するトレッド供給装置104とから構成されている。
【0029】
即ち、ベルト成形装置100は、ベルト保持治具12から取外したベルト層B(第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードS)に対して、その外周面に第三ベルトB3と第四ベルトB4とベルトエッジクッションE2とトレッドTを巻き付けた後、図示しないカーカスの内側にインナーライナが装着されたものを内周面に供給され、グリーンタイヤを成形する。
【0030】
そして、このように構成されたベルト成形装置10は、以下の工程をもってベルトを成形することができる。
1.成形ドラム11にベルト保持治具12を取付ける治具取付工程
2.成形ドラム11を回転しながらベルト保持治具12の外周面に第一、第二ベルトB1、B2を巻き付ける内側ベルト巻付工程
3.成形ドラム11を回転しながらベルト保持治具12に巻き付けられた第一、第二ベルトB1、B2の外側にスチールコードSを巻き付けるコード巻付工程
4.第一、第二ベルトB1、B2およびスチールコードSが巻き付けられたベルト保持治具12を成形ドラム11から取外す治具取外工程
【0031】
以下、このベルト成形装置10によるベルト成形方法について、図7図14を用いて具体的に説明する。
【0032】
このベルト成形装置10によるベルト成形方法において、まず、図7に示すように、成形ドラム11における第一ドラム21をベルト層巻付装置13に対向する位置に配置する一方、第二ドラム22をコード巻付装置14に対向する位置に配置する。そして、図8に示すように、第一ドラム21にベルト保持治具12を装着し、各セグメント29によりこのベルト保持治具12を保持する。
【0033】
次に、図9に示すように、第一ドラム21を駆動回転し、この第一ドラム21と共にベルト保持治具12を回転する。一方、ベルト層巻付装置13を作動し、第一ベルト供給装置31により第一ベルトB1を供給し、回転するベルト保持治具12の外周面に第一ベルトB1を巻き付けていく。続いて、第二ベルト供給装置32により第二ベルトB2を供給し、回転するベルト保持治具12(第一ベルトB1)の外周面に第二ベルトB2を巻き付けていく。更に、BEC供給装置33によりベルトエッジクッションE1を供給し、回転するベルト保持治具12(ベルトB1、B2)の外周面にベルトエッジクッションE1を巻き付けていく。
【0034】
そして、ベルト保持治具12の外周面に第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1が巻き付けられたら、図10に示すように、回転装置28により成形ドラム11を180度回転し、第一ドラム21と第二ドラム22の位置を逆にする。即ち、成形ドラム11における第一ドラム21をコード巻付装置14に対向する位置に配置する一方、第二ドラム22をベルト層巻付装置13に対向する位置に配置する。この状態で、コード巻付装置14を作動し、スチールコードSを供給し、回転するベルト保持治具12における第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1の外周面にスチールコードSを巻き付けていく。
【0035】
一方、第二ドラム22にベルト保持治具12を装着し、各セグメント29によりこのベルト保持治具12を保持する。そして、図11に示すように、第二ドラム22を駆動回転し、この第二ドラム22と共にベルト保持治具12を回転する。一方、ベルト層巻付装置13を作動し、第一ベルト供給装置31により第一ベルトB1を供給し、回転するベルト保持治具12の外周面に第一ベルトB1を巻き付けていく。続いて、第二ベルト供給装置32により第二ベルトB2を供給し、回転するベルト保持治具12(第一ベルトB1)の外周面に第二ベルトB2を巻き付けていく。更に、BEC供給装置33によりベルトエッジクッションE1を供給し、回転するベルト保持治具12(ベルトB1、B2)の外周面にベルトエッジクッションE1を巻き付けていく。
【0036】
第一ドラム21にて、図12に示すように、スチールコードSの巻き付けが完了すると、スチールコードSを切断して端末処理をする。そして、図13に示すように、回転装置28により成形ドラム11を180度回転し、第一ドラム21と第二ドラム22の位置を逆にする。即ち、成形ドラム11における第一ドラム21をベルト層巻付装置13に対向する位置に配置する一方、第二ドラム22をコード巻付装置14に対向する位置に配置する。この状態で、第二ドラム22に対して、コード巻付装置14を作動し、スチールコードSを供給し、回転するベルト保持治具12における第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1の外周面にスチールコードSを巻き付けていく。
【0037】
一方、第一ドラム21のベルト保持治具12に対して第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードSが巻き付けられたことから、図14に示すように、第一ドラム21からベルト保持治具12を取外す。この第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードSからなるベルト層Bがベルト保持治具12に保持された状態で、これを所定の位置に貯留する。そして、図8に示すように、第一ドラム21に再び別のベルト保持治具12を装着し、各セグメント29によりこのベルト保持治具12を保持し、図9以降の処理を繰り返し行う。
【0038】
また、第二ドラム22にて、スチールコードSの巻き付けが完了すると、スチールコードSを切断して端末処理をし、回転装置28により成形ドラム11を180度回転し、第一ドラム21と第二ドラム22の位置を逆にする。そして、第二ドラム22のベルト保持治具12に対して第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードSが巻き付けられたことから、第二ドラム22からベルト保持治具12を取外す。この第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードSからなるベルト層Bがベルト保持治具12に保持された状態で、これを所定の位置に貯留する。そして、第二ドラム22に再び別のベルト保持治具12を装着し、各セグメント29によりこのベルト保持治具12を保持し、図11以降の処理を繰り返し行う。
【0039】
その後、図1に示すように、ベルト成形装置100は、ベルト層Bが保持されているベルト保持治具12からこのベルト層Bを取外し、成形ドラムに装着する。そして、このベルト層B(第一ベルトB1、第二ベルトB2、ベルトエッジクッションE1、スチールコードS)に対して、その外周面に第三ベルトB3と第四ベルトB4とベルトエッジクッションE2とトレッドTを順に巻き付けた後、カーカスの内側にインナーライナが装着されたものを内周面に供給され、グリーンタイヤを成形する。
【0040】
このように、このベルト成形治具にあっては、ベルト保持治具12を回転可能な成形ドラム11における第一、第二ドラム21、22の外周面に装着可能とすると共に、その外周面に第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1とスチールコードSからなるベルト層Bを保持可能としている。
【0041】
従って、ベルト保持治具12を第一、第二ドラム21、22の外周面に装着可能であり、この装着状態で外周面に第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1とスチールコードSを巻き付け、この第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1とスチールコードSにより形成されるベルト層Bを保持可能であることから、他のベルト層とは別に、ベルト層Bを保持した状態を形成して貯留することができ、必要に応じて、ベルト層Bを取り外して使用することができ、タイヤ成形作業を連続して効率良く行うことで、タイヤの生産性を向上することができる。
【0042】
また、このベルト成形治具では、ベルト保持治具12を所定幅のリング形状とし、保持するベルト層Bの内径より縮径可能としている。即ち、ベルト保持治具12の周方向における少なくとも1箇所に連結部として、内周側に折曲する一対のフランジ部52、53を設け、ボルト54により締結可能としている。従って、ボルト54によりフランジ部52、53の締結を解除することで、ベルト保持治具12を縮径させることができ、外周面に保持したベルト層Bを容易に取外すことができる一方で、ベルト層Bの巻き付けによる変形を防止することができる。
【0043】
また、このベルト成形治具では、ベルト保持治具12に複数の貫通孔55を形成している。従って、複数の貫通孔55により軽量化および低コスト化を可能とすることができると共に、ベルト層Bとの密着面積を減少して分離を容易とし、作業性を向上することができる。
【0044】
また、このベルト成形治具では、成形ドラム11における各ドラム21、22に突起部21a、22aを形成する一方、ベルト保持治具12に突起部21a、22aに嵌合する位置決め穴56を設けている。従って、突起部21a、22aおよび位置決め穴56により各ドラム21、22にベルト保持治具12を適正位置に装着することができ、ベルト層Bを適正位置に高精度に形成することができる。
【0045】
そして、このベルト成形方法にあっては、成形ドラム11にベルト保持治具12を取付ける治具取付工程と、成形ドラム11を回転しながらベルト保持治具12の外周面に第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1を巻き付ける内側ベルト巻付工程と、成形ドラム11を回転しながらベルト保持治具12に巻き付けられた各ベルトB1、B2およびベルトエッジクッションE1の外周面にスチールコードSを巻き付けるコード巻付工程と、各ベルトB1、B2、E1とスチールコードSが巻き付けられたベルト保持治具12を成形ドラム11から取外す治具取外工程とを設けている。
【0046】
従って、成形ドラム11にベルト保持治具12を取付け、成形ドラム11を回転しながらベルト保持治具12の外周面に第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1を巻き付け、この第一、第二ベルトB1、B2およびベルトエッジクッションE1の外周面にスチールコードSを巻き付け、各ベルトB1、B2、E1とスチールコードSからなるベルト層Bが巻き付けられたベルト保持治具12を成形ドラム11から取外すこととなる。そのため、ベルトB1、B2、E1とスチールコードSからなるベルト層Bをベルト保持治具12に保持した状態を形成して貯留することとなり、必要に応じて、ベルト層Bをベルト保持治具12から外して使用することができ、タイヤ成形作業を連続して効率良く行うことで、タイヤの生産性を向上することができる。
【0047】
また、このベルト成形装置にあっては、回転可能な成形ドラム11と、成形ドラム11に対して着脱自在なベルト保持治具12と、成形ドラム11に取付けられたベルト保持治具12の外周面に第一、第二ベルトB1、B2とベルトエッジクッションE1を巻き付けるベルト層巻付装置13と、成形ドラム11に取付けられたベルト保持治具12の外周面にスチールコードSを巻き付けるコード巻付装置14とを設けている。
【0048】
従って、成形ドラム11にベルト保持治具12を取付け、ベルト層巻付装置13によりベルト保持治具12の外周面に第一、第二ベルトB1、B2を巻き付け、コード巻付装置14によりベルトB1、B2、E1の外周面にスチールコードSを巻き付ける。そのため、ベルトB1、B2、E1とスチールコードSからなるベルト層Bをベルト保持治具12に保持した状態を形成して貯留することとなり、必要に応じて、ベルト層Bをベルト保持治具12から外して使用することができ、タイヤ成形作業を連続して効率良く行うことで、タイヤの生産性を向上することができる。
【0049】
なお、上記した実施形態では、ベルト保持治具12における連結部としてフランジ部52、53を設けたが、連結部はフランジ部52、53に限るものではない。また、連結部(フランジ部52、53)の数も1つに限らず、2つ以上形成してもよい。また、ベルト保持治具12は、少なくともスチールコードSを巻き付けて保持可能であればよく、スチールコードSに加えて1つ以上のベルトを巻き付けて保持可能としてもよい。
【0050】
また、上記した実施形態では、コード巻付装置14が1本のスチールコードSを連続して巻き付けるように構成したが、複数のスチールコードSを順に、または、同時に巻き付けるように構成してもよい。この構成によれば、成形ドラム11を回転しながら、スチールコードSを分割して複数巻き付けることで、スチールコードSの巻き付け時間を短縮することができる。
【0051】
また、上記した実施形態では、成形ドラム11が、一対のドラム(第一ドラム21および第二ドラム22)から構成されている(図1および図2参照)。しかし、これに限らず、成形ドラム11が、単一のドラムあるいは2つ以上のドラムから構成されても良い。
【0052】
[コード巻付方法]
図15図17は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例1を示す説明図である。これらの図は、複数ある成形ドラム11a〜11dの第一ドラム21(第二ドラム22)上のベルト層B(第一ベルトB1および第二ベルトB2)に対してスチールコードSをそれぞれ巻き付ける工程を示している。
【0053】
この空気入りタイヤの製造方法では、上記のように、成形ドラム11(第一ドラム21および第二ドラム22)の外周面にベルト保持治具12が装着され(図8参照)、このベルト保持治具12の外周面に第一ベルトB1、第二ベルトB2およびベルトエッジクッションE1が配置される(図9参照)。その後に、コード巻付装置14がスチールコードSを成形ドラム11に供給し、成形ドラム11が回転してスチールコードSを巻き取ることにより、スチールコードSがベルトB1、B2の外周面に螺旋状に巻き付けられて、補強層が成形される(図10図12参照)。
【0054】
このとき、図15および図16に示すように、ストリップ材STを切断して複数本のゴム被覆された1本のスチールコードSに分断しつつ、これらのスチールコードSを複数の成形ドラム11a〜11dに供給して、各成形ドラム11a〜11d上にあるベルト層Bに対して同時かつ独立して巻き付け得る。かかる構成では、かかる構成では、複数の補強コードをゴム被覆させたストリップ材STを分断して、ゴム被覆された1本のスチールコードSを形成し、この補強コードを成形ドラム11に巻き付けるので、1本のスチールコードS毎にゴムを被覆するよりも、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる。また、1つのコード巻付装置14を用いて、複数の成形ドラム11にスチールコードSを供給できるので、設備投資を低減できる。
【0055】
具体的には、ゴムコーティングGを施した複数本のスチールコードSから成るストリップ材STが使用される。例えば、図15および図16の構成では、図17(a)に示すように、4本のスチールコードSが並列かつ一列に配置され、これらのスチールコードSが層状のゴムコーティングGにより被覆された構造を有している。かかるストリップ材STは、例えば、ゴム押出機などの既存の被覆装置(図示省略)により容易に成形できる。
【0056】
また、図15に示すように、ベルト成形装置10が、1つのコード巻付装置14と、4つの成形ドラム11a〜11dとを備える。これらの成形ドラム11a〜11dは、コード巻付装置14からのスチールコードSの供給流れに対して、相互に並列に配置される。また、前工程(図9図10参照)にて、第一ベルトB1および第二ベルトB2が、各成形ドラム11a〜11dに第一ドラム21(第二ドラム22)に対してそれぞれ設置される。
【0057】
また、図15および図16に示すように、ベルト成形装置10が、切断装置15を備える。この切断装置15は、コード巻付装置14から各成形ドラム11a〜11dへの補強コードの供給路上に配置される。また、切断装置15は、切断部151を有し、この切断部151により、隣り合うスチールコードS、S間のゴムコーティングGを切断して、1本のストリップ材STを複数本のスチールコードSに分断する。かかる切断部151としては、例えば、丸刃式カッターあるいは平刃式カッターが採用され得る。
【0058】
例えば、図15および図16の構成では、図17(b)に示すように、切断部151が円盤形状を有する丸刃式カッターであり、3つの切断部151が同軸上かつ所定間隔で配置されて相互に独立してフリー回転できる。これらの切断部151は、5[deg]≦θ≦90[deg]の先端角度θを有し、好ましくは、60[deg]≦θ≦70[deg]の先端角度θを有する。また、ベルト成形装置10が、ローラ部152を有し、このローラ部152が、3つの切断部151に対向して配置されてフリー回転できる。
【0059】
スチールコードSの巻付工程では、コード巻付装置14が、1本のストリップ材STを所定速度かつ連続的に巻き出して供給する(図15および図16参照)。また、ストリップ材STが切断装置15の切断部151とローラ部152との間を通過することにより、1本のストリップ材STが切断されて4本のスチールコードSに分断される(図17(a)および(b)参照)。また、これらのスチールコードSが、各成形ドラム11a〜11dに供給される。そして、各成形ドラム11a〜11dが、第一ドラム21(第二ドラム22)を所定速度にて回転させることにより、各スチールコードSが、各成形ドラム11a〜11dの第一ドラム21に巻き取られて、ベルト層Bの外周面に同時に巻き付けられる(図16および図17(c)参照)。また、ストリップ材STの送りローラ16が切断装置15と各成形ドラム11a〜11dとの間にそれぞれ配置され、各送りローラ16が各第一ドラム21の軸方向に移動することにより、各第一ドラム21に対するスチールコードSの巻き付け位置が第一ドラム21の軸方向に移動する。これにより、各スチールコードSが、各第一ドラム21のベルトB1、B2に対してそれぞれ螺旋状に巻き付けられる。
【0060】
なお、上記の構成では、切断装置15が、ヒータを備え、このヒータにより切断部151およびローラ部152の少なくとも一方を加温しつつ、ストリップ材STを切断しても良い(図示省略)。これにより、ストリップ材STの切断が容易となる。
【0061】
また、図16の構成では、上記のように、ストリップ材STが4本のスチールコードSから成り、切断装置15が3つの切断部151によりストリップ材STを切断して、これらのスチールコードSを相互に分断している。しかし、これに限らず、ストリップ材STが、2本、3本あるいは5本以上のスチールコードSから構成されても良い(図示省略)。かかる場合には、切断装置15がスチールコードSの本数に対応した数の切断部151を有することとなる。
【0062】
図18は、図1に記載したベルト成形方法におけるコード巻付方法の変形例2を示す説明図である。同図は、1つの成形ドラム11(第一ドラム21あるいは第二ドラム22)上のベルト層Bに対して2本のスチールコードSを同時に巻き付ける工程を示している。
【0063】
図18の構成では、ベルト成形装置10が、1つのコード巻付装置14と、第一ドラム21(第二ドラム22)を有する成形ドラム11とを備える。また、前工程にて、第一ベルトB1および第二ベルトB2が、成形ドラム11の第一ドラム21に設置される。また、ゴムコーティングGを施した2本のスチールコードSから成るストリップ材STが使用される。
【0064】
スチールコードSの巻付工程では、コード巻付装置14が、1本のストリップ材STを所定速度かつ連続的に巻き出して供給する。また、1本のストリップ材STが、切断装置15の切断部151とローラ部152との間を通過することにより、2本のスチールコードSに分断される。また、これらのスチールコードSが、成形ドラム11の第一ドラム21に供給される。そして、成形ドラム11が、第一ドラム21を所定速度にて回転させることにより、各スチールコードSが、第一ドラム21に同時に巻き取られて、第一ドラム21のベルト層Bの相互に異なる位置に同時に巻き付けられる。また、一対の送りローラ16が切断装置15と第一ドラム21との間に配置され、各送りローラ16、16が第一ドラム21の軸方向に移動することにより、第一ドラム21に対するスチールコードSの巻き付け位置が移動する。これにより、各スチールコードSが、第一ドラム21のベルトB1、B2に対してそれぞれ螺旋状に巻き付けられる。なお、分断されたスチールコードSのうち成形ドラム11に供給されないものについて、一旦巻き取った後に、成形ドラムに巻き付けるようにしてもよい。
【0065】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤの製造方法は、ベルト層B(第一ベルトB1および第二ベルトB2)と、ベルト層Bの外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コード(スチールコードS)から成る補強層とを有する空気入りタイヤに適用される。この空気入りタイヤの製造方法では、成形ドラム11上にベルト層Bを設置するベルト層設置ステップ(図9参照)と、ベルト層Bに対して補強コードを巻き付けて補強層を成形する補強層成形ステップ(図10図12参照)とを備える。また、補強層形成ステップにて、コード巻付装置14が、ゴムコーティングGを施した複数本の補強コードSから成るストリップ材STを成形ドラム11に供給する(図15および図16参照)。また、切断装置15が、コード巻付装置14と成形ドラム11との間でストリップ材STを切断して複数の補強コードSに分断する。そして、成形ドラム11が、分断された補強コードSを巻き取ってベルト層Bに巻き付ける(図17および図18参照)。
【0066】
かかる構成では、複数の補強コードをゴム被覆させたストリップ材STを分断して、ゴム被覆された1本の補強コードを形成し、この補強コードを成形ドラム11に巻き付けるので、1本の補強コード毎にゴムを被覆するよりも、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる利点がある。
【0067】
また、この空気入りタイヤの製造方法は、ベルト層B(第一ベルトB1および第二ベルトB2)と、ベルト層Bの外周面に螺旋状に巻き付けられた補強コード(スチールコードS)から成る補強層とを有する空気入りタイヤに適用される。この空気入りタイヤの製造方法では、複数の成形ドラム11a〜11d上にベルト層Bをそれぞれ設置するベルト層設置ステップ(図9および図15参照)と、各ベルト層Bに対して補強コードをそれぞれ巻き付けて補強層を成形する補強層成形ステップ(図10図12参照)とを備える。また、補強層成形ステップにて、コード巻付装置14が、ゴムコーティングGを施した複数の補強コードSから成るストリップ材STを成形ドラム11a〜11dに供給する(図15図17参照)。また、切断装置15が、コード巻付装置14と複数の成形ドラム11a〜11dとの間でストリップ材STを切断して複数本の補強コードSに分断する。そして、複数の成形ドラム11a〜11dが、補強コードをそれぞれ巻き取ってベルト層Bに同時に巻き付ける。
【0068】
かかる構成では、複数の成形ドラム11に対して補強コードを同時かつ独立して巻き付け得るので、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる利点がある。また、1つのコード巻付装置14を用いて、複数の成形ドラム11に補強コードSを供給できるので、設備投資を低減できる利点がある。
【0069】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、成形ドラム11上にベルト層Bを設置するベルト層設置ステップ(図9参照)と、ベルト層Bに対して補強コードSを巻き付けて補強層を成形する補強層成形ステップ(図10図12参照)とを備える。また、補強層成形ステップにて、コード巻付装置15が、ゴムコーティングGを施した複数本の補強コードSから成るストリップ材STを成形ドラム11に供給する(図18参照)。また、切断装置15が、コード巻付装置15と成形ドラム11との間でストリップ材STを切断して複数本の補強コードSに分断する。また、成形ドラム11が、これらの補強コードSを巻き取って1つのベルト層Bに同時に巻き付ける。
【0070】
かかる構成では、成形ドラム11に対して2本の補強コードSを同時に巻き付け得るので、補強層の成形工程に要する時間を短縮できる利点がある。また、1つのコード巻付装置14を用いて、成形ドラム11に2本の補強コードSを供給できるので、設備投資を低減できる利点がある。
【0071】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、切断装置15が、回転可能な丸刃状の切断部151を有する(図17(b)参照)。かかる構成では、丸刃状の切断部151が回転しつつストリップ材STを切断するので、ストリップ材STを精度良く切断できる利点がある。
【0072】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、切断部151の先端角度θが、5[deg]≦θ≦90[deg]の範囲内にある(図17(b)参照)。これにより、切断部151の先端角度θが適正化されて、ストリップ材STを精度良く切断できる利点がある。
【0073】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、前記ベルト層設置ステップにて、成形ドラム11の外周面にベルト成形治具(ベルト保持治具12)を装着する(図8参照)と共に、ベルト成形治具12の外周面にベルト層Bを配置する(図9参照)。かかる構成では、ベルト成形治具12が成形ドラム11の外周面に装着可能であり、このベルト成形治具12の外周面に補強コードを巻き付けることにより、成形ドラム11上に補強層を保持できる。すると、他のベルト層B(第三ベルトB3、第四ベルトB4、ベルトエッジクッションE2)とは別に、補強コードにより構成された補強層をベルト成形治具12に保持した状態を形成して貯留できる。したがって、必要に応じて、補強層をベルト保持治具12から外して使用できる。これにより、タイヤ成形作業を連続して効率良く行い得るので、タイヤの生産性を向上できる利点がある。
【0074】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12が、所定幅を有するリング形状をなし、補強層の内径より縮径可能である(図3参照)。かかる構成では、ベルト成形治具12を縮径させることで、ベルト成形治具12の外周面に保持した補強層を容易に取外しできる利点がある。
【0075】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12が、所定幅で所定長さを有する板形状をなす本体51と、この本体51の周方向における端部同士を連結する少なくとも1箇所に連結部52、53とを有する(図4参照)。かかる構成では、ベルト成形治具12が、連結部52、53にて、本体51の端部同士の連結を解除して縮径できる。これにより、ベルト成形治具12の外周面に保持した補強層を容易に取外しできる利点がある。
【0076】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12の連結部52、53が、湾曲形状をなす本体の端部同士を内周側に折曲させた一対のフランジ部を有し、この一対のフランジ部同士が、締結装置(ボルト54)により締結される(図4参照)。かかる構成では、連結部として一対のフランジ部を設け、このフランジ部同士を締結装置により締結可能とすることで、ベルト成形治具12を容易に縮径できる利点があり、また、補強コードの巻き付けによる変形を防止できる利点がある。
【0077】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12の外周面に複数の貫通孔55が形成される(図4参照)。かかる構成では、複数の貫通孔55によりベルト成形治具12を軽量化および低コスト化できる利点があり、また、ベルト成形治具12と補強層との分離を容易化して作業性を向上できる利点がある。
【0078】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12を成形ドラム11に対して位置決めして装着するための位置決め部が設けられる。かかる構成では、ベルト成形治具12を成形ドラム11に対して適正に位置決めして装着できるので、補強コードを成形ドラム11に対して高精度に巻き付け得る利点がある。
【0079】
また、この空気入りタイヤの製造方法では、ベルト成形治具12が、その外周面に少なくともベルトと補強層とを積層して成るベルト層を保持できる。かかる構成では、ベルト成形治具12の外周面に複数のベルト層Bを積層して保持できるので、ベルト成形治具12の汎用性を向上できる利点がある。
【符号の説明】
【0080】
10 ベルト成形装置、11 成形ドラム、12 ベルト保持治具(ベルト成形治具)、13 ベルト層巻付装置、14 コード巻付装置、15 切断装置、151 切断部、152 ローラ部、21 第一ドラム、22 第二ドラム、25 支持装置、29 セグメント、31 第一ベルト供給装置、32 第二ベルト供給装置、33 BEC供給装置、51 本体、52、53 フランジ部(連結部)、54 ボルト(締結装置)、61 トグル式締結装置、101 第三ベルト供給装置、102 第四ベルト供給装置、103 BEC供給装置、104 トレッド供給装置、B ベルト層、B1 第一ベルト(第一ベルト層)、B2 第二ベルト(第二ベルト層)、B3 第三ベルト(第三ベルト層)、B4 第四ベルト(第四ベルト層)、E1、E2 ベルトエッジクッション(BEC)、G ゴムコーティング、S スチールコード(補強コード、補強層)、ST ストリップ材、T トレッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18